腎障害(特に急性腎障害)の有効な予防および治療が依然として必要とされている。
サイトカインの一種であるIL-11は、虚血再灌流障害の発症後の急性腎障害に対して保護効果を有することが報告されている(Leeら、前掲)。また、ヒト尿細管上皮細胞およびマウス腎臓において、イソフルランによる化学的損傷の発生後にIL-11がアップレギュレートされ、このアップレギュレートされたIL-11により保護効果が発揮されることが報告されている(Hamら、前掲)。
これに対して、本発明者らは、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することにより、尿細管上皮細胞を効果的に保護することができ、この結果、尿細管上皮細胞を増殖させ、急性腎障害の一般的な原因因子である腎損傷を回復できることを見出した。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、IL-11を抑制することにより、尿細管上皮細胞の増殖が可能になるとともに、SNAILの発現が阻止または低減されて腎組織の再生および回復が起こると考えている。
インターロイキン11およびIL-11受容体
脂肪細胞化抑制因子としても知られているインターロイキン11(IL-11)は多形質発現性サイトカインであり、IL-6、IL-11、IL-27、IL-31、オンコスタチン、白血病抑制因子(LIF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびneuropoetin(NP-1)を含むIL-6サイトカインファミリーのメンバーである。
インターロイキン11(IL-11)は、様々な間葉系細胞において発現される。IL-11のゲノム配列は、7番染色体の動原体領域と19番染色体にマッピングされており、IL-11を細胞から効率的に分泌させる古典的シグナルペプチドが付加された状態で転写される。IL-11遺伝子のプロモーター配列内にあるアクチベータータンパク質複合体(cJun/AP-1)は、IL-11の基礎転写調節に重要である(Du and Williams., Blood 1997, Vol 89: 3897-3908)。ヒトIL-11の前駆体は199個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、成熟型のIL-11は178個のアミノ酸残基からなるタンパク質である(Garbers and Scheller. , Biol. Chem. 2013; 394(9):1145-1161)。ヒトIL-11のアミノ酸配列はUniProtアクセッション番号P20809(P20809.1 GI:124294;配列番号1)から入手可能である。組換えヒトIL-11(オプレルベキン)も市販されている。その他の生物種由来のIL-11のいくつか、例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、硬骨魚の数種、霊長類などのIL-11もクローニングされており、その配列が決定されている。
本明細書において、「IL-11」は、あらゆる生物種由来のIL-11を指し、あらゆる生物種から得られたIL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態において、この生物種はヒト(ホモ・サピエンス)である。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、所定の生物種(例えばヒト)に由来するIL-11前駆体または成熟型IL-11のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、(好ましくは同じ生物種由来の)IL-11Rαと結合することにより、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞のシグナル伝達を刺激することができる能力(例えばCurtis et al. Blood, 1997, 90(11)またはKarpovich et al. Mol. Hum. Reprod. 2003 9(2): 75-80に記載されているような能力)を特徴としてもよい。IL-11断片の長さは、どのような長さ(アミノ酸長)であってもよいが、成熟型IL-11の長さの少なくとも25%であってもよく、最長で成熟型IL-11の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であってもよい。IL-11断片の長さは、最短で10アミノ酸長であってもよく、最長で15アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長、60アミノ酸長、70アミノ酸長、80アミノ酸長、90アミノ酸長、100アミノ酸長、110アミノ酸長、120アミノ酸長、130アミノ酸長、140アミノ酸長、150アミノ酸長、160アミノ酸長、170アミノ酸長、180アミノ酸長、190アミノ酸長または195アミノ酸長であってもよい。
IL-11は、普遍的に発現される糖タンパク質130(gp130;糖タンパク質130、IL-6ST、IL-6-βまたはCD130としても知られている)のホモダイマーを介してシグナルを伝達する。gp130は膜貫通タンパク質であり、IL-6受容体ファミリーと会合することによってI型サイトカイン受容体を形成する受容体サブユニットである。特異性は個々のインターロイキン11受容体αサブユニット(IL-11Rα)によって発揮される。IL-11α受容体はシグナル伝達に直接関与はしないものの、α受容体にサイトカインが結合すると、gp130と会合して最終的な複合体を形成する。
ヒトgp130(22個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含む)は、918個のアミノ酸からなるタンパク質であり、その成熟形態は866個のアミノ酸からなり、597個のアミノ酸からなる細胞外ドメイン、22個のアミノ酸からなる膜貫通ドメインおよび277個のアミノ酸からなる細胞内ドメインを含む。ヒトgp130の細胞外ドメインは、gp130のサイトカイン結合モジュール(CBM)を含む。gp130のCBMは、Ig様ドメインD1と、gp130のフィブロネクチンIII型ドメインD2およびD3とを含む。ヒトgp130のアミノ酸配列は、UniProtアクセッション番号P40189-1(配列番号2)から入手可能である。
ヒトIL-11Rαは422個のアミノ酸からなるポリペプチド(UniProt Q14626;配列番号3)であり、マウスIL-11Rαと約85%のヌクレオチド配列同一性およびアミノ酸配列同一性を有する。IL-11Rαは、細胞内ドメインが異なる2種のアイソフォームが存在することが報告されている(DuおよびWilliams,前掲)。IL-11受容体α鎖(IL-11Rα)は、IL-6受容体α鎖(IL-6Rα)と構造および機能の面で多くの類似点がある。IL-11RαとIL-6Rαの細胞外ドメインは24%のアミノ酸同一性を有し、特徴的なTrp-Ser-X-Trp-Ser(WSXWS)保存モチーフを含む。IL-11RαとIL-6αの短い細胞内ドメイン(34アミノ酸長)には、JAK/STATシグナル伝達経路の活性化に必要とされるBox1領域およびBox2領域が含まれていない。
マウスIL-11の受容体結合部位はマッピングされており、3つの部位(部位I、部位IIおよび部位III)が同定されている。部位II領域の置換や部位III領域の置換によって、gp130への結合力が低下する。部位III変異は検出可能なアゴニスト活性を示さず、IL-11Rαに対してアンタゴニスト活性を示す(Cytokine Inhibitors Chapter 8; Gennaro Ciliberto, Rocco Savino共編、Marcel Dekker, Inc. 2001)。
本明細書において、IL-11受容体(IL-11R)は、IL-11に結合可能なポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11に結合することができ、かつIL-11受容体を発現する細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。
IL-11受容体は、どのような生物種に由来するものであってもよく、あらゆる生物種から得られたIL-11受容体のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態において、この生物種はヒト(ホモ・サピエンス)である。
いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11Rαであってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11Rαを含むポリペプチド複合体であってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11Rαおよびgp130を含むポリペプチド複合体であってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11が結合するgp130またはgp130含有複合体であってもよい。
IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、所定の生物種(例えばヒト)に由来するIL-11Rαのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、(好ましくは同じ生物種由来の)IL-11と結合することにより、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞のシグナル伝達を刺激する能力(例えばCurtis et al. Blood, 1997, 90(11)またはKarpovich et al. Mol. Hum. Reprod. 2003 9(2): 75-80に記載されているような能力)を特徴としてもよい。IL-11受容体の断片の長さは、どのような長さ(アミノ酸長)であってもよいが、成熟型IL-11Rαの長さの少なくとも25%であってもよく、最長で成熟型IL-11Rαの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であってもよい。IL-11受容体の断片の長さは、最短で10アミノ酸長であってもよく、最長で15アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長、100アミノ酸長、110アミノ酸長、120アミノ酸長、130アミノ酸長、140アミノ酸長、150アミノ酸長、160アミノ酸長、170アミノ酸長、180アミノ酸長、190アミノ酸長、200アミノ酸長、250アミノ酸長、300アミノ酸長、400アミノ酸長または415アミノ酸長であってもよい。
IL-11のシグナル伝達
IL-11は、低い親和性(Kd=約10nmol/L)でIL-11Rαに結合し、これらの結合パートナー間での相互作用のみでは生体シグナルを伝達することはできない。高い親和性(Kd=約400~800pmol/L)で結合してシグナルを伝達できる受容体の形成には、IL-11Rαとgp130の共発現が必要とされる(Curtis et al Blood 1997; 90 (11):4403-12; Hilton et al., EMBO J 13:4765, 1994; Nandurkar et al., Oncogene 12:585, 1996)。細胞表面のIL-11RαにIL-11が結合すると、ヘテロ二量体化、チロシンのリン酸化、gp130の活性化および下流のシグナル伝達が誘導され、このシグナル伝達は、主として、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードおよびヤヌスキナーゼ/シグナル伝達兼転写活性化因子(Jak/STAT)経路を介して行われる(GarbersおよびScheller、前掲)。
さらに、原則として、可溶性IL-11RαはIL-11と結合して生物学的に活性な可溶性複合体を形成することができることから(Pflanz et al., 1999 FEBS Lett, 450, 117-122)、IL-6と同様に、IL-11は、細胞表面のgp130に結合する前に、可溶性IL-11Rαに結合する場合があると考えられる(GarbersおよびScheller、前掲)。Curtisら(Blood 1997 Dec 1; 90 (11):4403-12)は、可溶性マウスIL-11受容体α鎖(sIL-11R)を発現させて、gp130発現細胞におけるシグナル伝達を検討したことを報告している。この研究では、gp130は存在するが、膜貫通型IL-11Rが存在しない条件下において、膜貫通型IL-11Rを介したシグナル伝達と同様に、可溶性IL-11Rによって、IL-11依存性のM1白血病細胞の分化とBa/F3細胞の増殖、および初期の細胞内事象(gp130、STAT3およびSHP2のリン酸化など)が誘導されたことが報告されている。可溶性IL-11Rαに結合したIL-11による膜結合型gp130を介したシグナル伝達の活性化が、近年実証されている(Lokau et al., 2016 Cell Reports 14, 1761-1773)。このいわゆるIL-11のトランスシグナル伝達は、疾患の発生機序に重要である可能性があるが、ヒト疾患におけるその役割はさらなる研究が待たれる。好ましい一実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性シスシグナル伝達を破壊することによって達成される。
本明細書において、「IL-11のトランスシグナル伝達」は、IL-11Rαに結合したIL-11が、さらにgp130に結合することによって惹起されるシグナル伝達を指す。IL-11は、非共有結合によりIL-11Rαと結合して複合体を形成することができる。gp130は、膜結合型であり、細胞により発現され、IL-11:IL-11Rα複合体がgp130に結合することによってシグナル伝達が起こる。いくつかの実施形態において、IL-11Rαは、可溶性IL-11Rαであってもよい。いくつかの実施形態において、可溶性IL-11Rαは、(例えば膜貫通ドメインを欠く)IL-11Rαの可溶性(分泌型)アイソフォームである。いくつかの実施形態において、可溶性IL-11Rαは、膜結合型IL-11Rαの細胞外ドメインがタンパク質分解されることによって遊離した産物である。いくつかの実施形態において、IL-11Rαは、膜結合型であってもよく、gp130を介したシグナル伝達は、膜結合型IL-11Rαに結合したIL-11が、さらにgp130に結合することによって惹起されてもよい。これを「IL-11のシスシグナル伝達」と呼ぶ。
IL-11媒介性シグナル伝達は、造血および血小板生成を刺激し、破骨細胞の活性を刺激し、神経新生を刺激し、脂肪細胞化を抑制し、炎症促進性サイトカインの発現を低減し、細胞外マトリックス(ECM)の代謝を調節し、かつ消化管上皮細胞の正常な増殖制御を媒介することが示されている(DuおよびWilliams、前掲)。
インターロイキン11(IL-11)の生理学的役割は未だ解明されていない。IL-11は、造血細胞の活性化および血小板産生との関連が最も強く示されている。また、IL-11は、移植片対宿主病、炎症性関節炎および炎症性腸疾患に対する保護効果を付与することも示されており、このことから、IL-11は、抗炎症性サイトカインであると考えられている(Putoczki and Ernst, J Leukoc Biol 2010, 88(6):1109-1117)。一方で、IL-11は、炎症促進性でも抗炎症性でもあり、血管新生促進性でもあり、腫瘍形成において重要であることも示唆されている。最近の研究では、マウス関節炎モデルおよびがんにおけるウイルス誘発性炎症においてIL-11が容易に検出されることが示されており、このことから、IL-11の発現が病的刺激によって誘導されることが示唆されている。さらに、IL-11は、腫瘍性消化管上皮においてStat3に依存的な腫瘍促進性標的遺伝子の活性化に関連することが報告されている(PutoczkiおよびErnst、前掲)。
本明細書において、「IL-11のシグナル伝達」および「IL-11媒介性シグナル伝達」は、IL-11受容体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達、または成熟IL-11分子の機能を有するIL-11断片のIL-11受容体への結合を介したシグナル伝達を指す。また、「IL-11のシグナル伝達」および「IL-11媒介性シグナル伝達」は、例えば、IL-11受容体への結合などを介してIL-11またはその機能性断片により開始されるシグナル伝達を指すことは十分に理解できるであろう。したがって、「シグナル伝達」は、細胞活動を制御するシグナル変換およびその他の細胞プロセスを指す。
腎障害
本発明の態様は、腎障害、特に急性腎障害(AKI)(急性腎不全としても知られている)および/または腎障害(例えば急性腎障害)の診断、治療および予防に関する。
本明細書において、「腎障害」は、腎臓、腎組織および/または1個以上の腎細胞の損傷を指す。細胞/組織/器官の損傷は、これらの細胞/組織/器官への傷害に起因するものであってもよく、例えば化学的な処置/経験または物理的な処置/経験を原因とするものであってもよい。いくつかの実施形態において、例えば、薬物誘発性腎障害(例えば、シスプラチン誘発性腎障害)の場合、腎障害は化学的傷害に起因するのものであってもよい。いくつかの実施形態において、例えば、圧挫により生じた腎障害の場合、腎障害は物理的傷害に起因するものであってもよく、または、例えば、疾患の治療および/もしくは腎移植のための外科手術中に生じることがある腎組織の外科的損傷により生じた腎障害の場合も、腎障害は物理的傷害に起因するものであってもよい(例えば、腎障害は、医原性のものであってもよい)。いくつかの実施形態において、腎障害は、低酸素を原因とするものであってもよく、例えば、虚血を原因とするものであってもよく、再灌流を原因とするものであってもよい。いくつかの実施形態において、腎障害は、感染症、感染症に対する免疫応答、がんおよび/または自己免疫に起因するものであってもよい。損傷は、可逆的なものであってもよく、不可逆的なものであってもよい。
いくつかの実施形態において、腎障害は、一方の腎臓または両方の腎臓の損傷を含む。いくつかの実施形態において、腎障害は、腎被膜、腎皮質、腎髄質、腎乳頭、腎錐体、腎柱、腎杯、小腎杯、大腎杯、腎門、腎盂、尿管、腎動脈および腎静脈のうちの1つ以上の損傷を含む。いくつかの実施形態において、腎障害は、腎上皮細胞、尿細管上皮細胞、近位尿細管上皮細胞、遠位尿細管上皮細胞、腎壁細胞、足細胞、ヘンレのループの細い部分の細胞、太い上行脚の細胞、集合管主細胞、集合管介在細胞および腎間質細胞のうちの1つ以上の損傷を含む。いくつかの態様において、腎障害は、腎上皮細胞、例えば尿細管上皮細胞、例えば近位尿細管上皮細胞の損傷を含む。
細胞/組織/器官の損傷は、細胞/組織/器官の構造および/またはその機能の変化を特徴としてもよい。例えば、細胞/組織/器官の損傷は、細胞/組織/器官の正常な機能の相関因子のレベルの低下、および/または細胞/組織/器官の機能障害の相関因子の増加を特徴としてもよい。例を挙げると、腎臓/腎組織/腎細胞の損傷は、腎損傷を発症している対象における尿量の減少、および/または腎損傷を発症している対象における血清中クレアチン濃度の上昇を特徴としてもよい。また、細胞/組織/器官の損傷は、細胞死、例えば、損傷を受けた器官/組織の細胞の死滅を特徴としてもよい。このような細胞死は、アポトーシス(すなわちプログラム細胞死)または壊死(損傷を受けたことによる早期の細胞死)に起因するものであってもよい。
本明細書において、「急性腎障害」は、通常、腎機能の急激な低下を指す。急性腎障害は、血清中クレアチニンの急激な増加および/または尿量の急激な減少を特徴としてもよい。
急性腎障害は、the Summary of Recommendation Statements of the Kidney Disease Improving Global Outcomes (KDIGO) group, Kidney International Supplements (2012) 2, 8-12に従って定義および病期分類してもよい(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
いくつかの実施形態において、急性腎障害は、(i)48時間以内に血清中クレアチンが0.3mg/dl以上(26.5μmol/l以上)増加すること、(ii)血清中クレアチンがベースラインの1.5倍以上に増加すること(これにより、過去7日以内の発症が分かるか、過去7日以内の発症を推測することができる)、または(iii)6時間の尿量が0.5ml/kg/時未満であることとして定義される。
いくつかの実施形態において、急性腎障害は、ステージ1、ステージ2またはステージ3の急性腎障害であってもよい。ステージ1の急性腎障害は、(i)血清中クレアチンがベースラインの1.5~1.9倍に増加すること、(ii)血清中クレアチンが0.3mg/dl以上(26.5μmol/l以上)増加すること、または(iii)6~12時間の尿量が0.5ml/kg/時未満であることとして定義してもよい。ステージ2の急性腎障害は、(i)血清中クレアチンがベースラインの2.0~2.9倍に増加すること、または(ii)12時間以上にわたり尿量が0.5ml/kg/時未満であることとして定義してもよい。ステージ3の急性腎障害は、(i)血清中クレアチンがベースラインの3.0倍以上に増加すること、(ii)血清中クレアチンが4.0mg/dl以上(353.6μmol/l以上)に増加すること、(iii)腎代替療法が開始されること、(iv)18歳未満の患者において推算糸球体濾過量(eGFR)が1.73m2あたり35ml/分未満に減少すること、(v)24時間以上にわたり尿量が0.3ml/kg/時未満であること、または(vi)12時間以上にわたり無尿であることとして定義してもよい。
腎障害は、尿細管上皮細胞(TEC)の損傷および/または尿細管上皮細胞の上皮間葉転換細胞様の表現型への転換(すなわち上皮間葉転換(EMT))を特徴としてもよい。尿細管上皮細胞の間葉系細胞様表現型への転換は、例えば、E-カドヘリンの発現低下、SNAILの発現上昇および/またはACTA2の発現上昇を特徴としてもよい。
腎障害の原因はどのようなものであってもよく、例えば、機械的損傷もしくは機械的障害(すなわち物理的損傷もしくは物理的障害)、化学的損傷もしくは化学的障害、虚血または遺伝的素因に起因する腎障害が挙げられる。腎障害の原因または腎損傷は、通常、腎機能障害を起こし、腎不全に至ることもある。
機械的損傷または機械的障害には、対象、腎臓、尿細管上皮細胞または足細胞の物理的障害が含まれていてもよい。また、機械的損傷または機械的障害には、例えば尿路などの尿細管閉塞/閉鎖が含まれていてもよい。
化学的損傷または化学的障害は、対象に投与された薬物、医薬品、毒素、ハーブ系サプリメント、栄養サプリメントもしくはその他の化学薬剤、または対象により吸収もしくは摂取された薬物、医薬品、毒素、ハーブ系サプリメント、栄養サプリメントもしくはその他の化学薬剤により引き起こされたものであってもよい。いくつかの実施形態において、化学的損傷は、腎臓以外の組織で発生した疾患または状態を治療するために投与されたこのような薬剤の副作用であるか、あるいは腎臓および1つ以上のその他の組織で発生した疾患または状態を治療するために投与されたこのような薬剤の副作用である。いくつかの実施形態において、化学的損傷は、がんの予防または治療を目的として対象に投与された化学療法剤の投与による副作用である。いくつかの実施形態において、腎障害は、薬物誘発性腎障害または薬物誘発性急性腎障害である。いくつかの実施形態において、例えば尿路などの尿細管閉塞/閉鎖は、特定の化学薬剤、例えば、スルホンアミド、メトトレキサート、アシクロビル、ジエチレングリコール、トリアムテレンなどの投与により発症したものであってもよい。
虚血性障害は、腎血流の減少に起因するものであってもよく、腎血流の減少は、様々な要因によって起こる可能性があり、例えば、敗血症、失血、外科手術などによる低血圧;または別の疾患、障害もしくは状態の治療を目的として対象に投与された化学薬剤(例えば、医薬品もしくは薬物)の効果によって起こりうる。虚血により引き起こされる腎障害は、虚血誘発性腎障害または虚血誘発性急性腎障害であってもよい。圧挫障害により引き起こされる腎障害は、血管収縮を伴う虚血誘発性腎障害であってもよく、あるいは尿細管円柱による機械的因子により引き起こされる腎障害であってもよく、循環因子(例えばミオグロビン)の毒性作用により引き起こされる腎障害であってもよい。
いくつかの実施形態において、腎障害は急性腎障害(AKI)であってもよく、腎障害は、腎臓の尿細管上皮細胞(TEC)(すなわち腎尿細管上皮細胞)の損傷を特徴とし、場合によって、腎障害は、尿細管上皮細胞の死滅を含んでいてもよく、あるいは尿細管上皮細胞の死滅を生じることがある。尿細管上皮細胞は、近位尿細管上皮細胞であってもよく、遠位尿細管上皮細胞であってもよく、これらはいずれも急性腎障害において損傷を受けることがあり、腎糸球体の足細胞も急性腎障害において損傷を受けることがある。また、尿細管上皮細胞の障害は、どのような種類の損傷、障害または傷害であってもよく、前述したように、例えば、機械的障害、化学的障害または虚血性障害であってもよい。尿細管上皮細胞の障害は、腎障害、特に急性腎障害の原因因子としてよく見られる。尿細管上皮細胞の増殖により、腎機能が回復し修復されるという機構が得られるが、尿細管上皮細胞の増殖不全は、例えば慢性腎疾患や腎不全などの疾患の発症および進行に至る可能性がある。足細胞の前駆細胞の増殖により糸球体機能が回復することもあるが、尿細管上皮細胞の増殖ほどには十分な説明はなされていない。
いくつかの実施形態において、腎障害は腎毒性であるか、または腎毒性を特徴とする。本明細書中において、「腎毒性」は、腎臓への毒性を指す。また、「毒性」は、例えば、本明細書に記載されているような障害を指す。腎毒性は、ある特定の物質の腎機能に対する毒性作用に起因して生じることがあり、したがって、化学的損傷または化学的障害の結果と見なしてもよい。化学的損傷または化学的障害と同様に、腎毒性は、腎臓以外の組織で発生した疾患または状態を治療するために投与された薬剤の副作用であるか、あるいは腎臓および1つ以上のその他の組織で発生した疾患または状態を治療するために投与された薬剤の副作用である。いくつかの実施形態において、腎毒性は、がんの予防または治療を目的として対象に投与された化学療法剤の投与による副作用である。したがって、腎毒性は、薬物誘発性腎障害または薬物誘発性急性腎障害の一形態であってもよい。
前述したように、薬物誘発性腎障害、薬物誘発性急性腎障害または薬物誘発性腎毒性は、腎臓以外の組織もしくは腎臓内の組織またはその両方に生じた疾患、障害または状態を治療する目的で投与された薬物または医薬品の副作用として発症しうる。このような副作用は、多くの薬物で見られることが知られており、治療を実施中の病態、治療を実施中の対象、投与量、投薬計画または投与方法、および治療前に対象が呈した部分的な腎不全の重症度に左右されうる。例えば、腎障害を誘発する可能性があることが報告されている薬剤として、利尿薬、β遮断薬、血管拡張薬、ACE阻害薬、アミノグリコシド系抗生物質(例えばゲンタマイシン)、アムホテリシンB、シスプラチン、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク)、シクロスポリン、リチウム塩、シクロホスファミド、スルホンアミド、メトトレキサート、アシクロビル、ジエチレングリコール、トリアムテレン、βラクタム系抗生物質、バンコマイシン、リファンピシン、シプロフロキサシン、ラニチジン、シメチジン、フロセミド、チアジドおよびフェニトインが挙げられる。薬物誘発性腎障害は葉酸誘発性腎障害でなくてもよい。
いくつかの実施形態において、薬物誘発性腎障害、薬物誘発性急性腎障害または薬物誘発性腎毒性は、対象におけるがんを治療または予防する目的で投与された化学療法剤の副作用として発症しうる。化学療法剤の例として、シスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミドなどのアルキル化剤;アザチオプリンやメルカプトプリンなどのプリン代謝拮抗薬またはピリミジン代謝拮抗薬;ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン)、ポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、タキサン(例えばパクリタキセル(タキソール(商標))、ドセタキセル)などのアルカロイド類およびテルペノイド類;I型トポイソメラーゼ阻害薬(カンプトテシン、イリノテカンおよびトポテカン)や、II型トポイソメラーゼ阻害薬(アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド)などのトポイソメラーゼ阻害薬;ダクチノマイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(商標))、エピルビシン、ブレオマイシン、ラパマイシンなどの抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン系抗生物質);抗VEGF抗体、抗TNFα抗体、抗IL-2抗体、抗GpIIb/IIIa抗体、抗CD52抗体、抗CD20抗体、抗RSV抗体、抗HER2/neu(erbB2)抗体、抗TNF受容体抗体、抗EGFR抗体、モノクローナル抗体または抗体断片(具体例として、セツキシマブ、パニツムマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、アブシキシマブ、ダクリズマブ、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ(Mabthera(登録商標))、パリビズマブ、トラスツズマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ニモツズマブ)などの抗体ベースの薬剤;ならびにエルロチニブ、セツキシマブ、ゲフィチニブなどのEGFR阻害薬が挙げられる。
好ましい実施形態のいくつかにおいて、本発明は、シスプラチン誘発性腎障害の診断、治療および/または予防に関する。シスプラチン誘発性腎障害として、シスプラチン誘発性急性腎障害またはシスプラチン誘発性腎毒性が挙げられる。シスプラチン(ジクロロジアミノ白金;(SP-4-2)-ジアンミンジクロロ白金(II))は、頭頸部がん、乳がん、肺がん、精巣がん、卵巣がん、脳腫瘍、膀胱がんなどの様々ながんの治療に広く使用されている化学療法剤であり、尿細管障害および尿細管壊死を伴う腎障害および腎機能不全をもたらすことが広く認められている(例えば、Oh et al., Electrolyte Blood Press 2014 Dec; 12(2): 55-65; PA Arunkumar et al., Asian Pac J Trop Biomed 2012 Aug 2(8): 640-644を参照されたい)。その他の白金系化学療法剤も腎損傷を起こす。
腎障害を有する対象は、腎臓の線維症を発症する場合があることが認識されており、この腎線維症は、腎障害と区別可能な病因を有する病態として発症するか、あるいは腎障害の二次的作用として発症するが、いくつかの実施形態では、診断、治療または予防が行われる腎障害は、腎臓の線維症(例えば腎線維症)ではない。いくつかの実施形態において、対象は線維症には罹患していない。いくつかの実施形態において、尿細管上皮細胞の損傷は、線維症の不在下で起こる。いくつかの実施形態において、線維症は、これとは別に(例えば二次的に)急性腎障害を発症し、例えば尿細管上皮細胞の不完全な再生に起因して急性腎障害を発症する。いくつかの実施形態において、対象において損傷を受けた尿細管上皮細胞は、線維化促進性の尿細管上皮細胞ではない。いくつかの実施形態では、線維症を発症することはない。
IL-11の作用を抑制することができる薬剤
本発明の態様は、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制を含む。
本明細書において、「抑制」は、コントロール条件と比較して減少、低下または低減していることを指す。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤によるIL-11の作用の抑制とは、該薬剤の非存在下かつ/または適切なコントロール薬剤の存在下でのIL-11媒介性シグナル伝達の強度/程度が、減少、低下または低減することを指す。
また、本明細書において、「抑制」は、中和または拮抗作用を指してもよい。すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達(例えば、IL-11またはIL-11含有複合体を介した相互作用、シグナル伝達またはその他の活性)を抑制することができる薬剤は、関連する機能またはプロセスに対する「中和」剤または「拮抗」剤であると言ってもよい。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を、IL-11媒介性シグナル伝達を中和することができる薬剤と呼んでもよく、またはIL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストと呼んでもよい。
IL-11のシグナル伝達経路には、IL-11のシグナル伝達を抑制することができる複数のルートが存在する。IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、例えば、IL-11受容体を介したシグナル伝達に関与する1つ以上の因子の作用、またはIL-11受容体を介したシグナル伝達に必要な1つ以上の因子の作用を抑制することによって、IL-11のシグナル伝達を抑制してもよい。
例えば、IL-11のシグナル伝達の抑制は、IL-11(またはIL-11含有複合体、例えばIL-11とIL-11Rαからなる複合体)とIL-11受容体(例えばIL-11Rα、IL-11Rαを含む受容体複合体、gp130、またはIL-11Rαとgp130を含む受容体複合体)の間の相互作用を破壊することによって達成してもよい。いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、例えばIL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の遺伝子またはタンパク質の発現を抑制することによって達成される。
別の実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性トランスシグナル伝達を破壊せずに、IL-11媒介性シスシグナル伝達を破壊することによって達成され、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、膜結合型IL-11Rαを含むgp130媒介性シス複合体を抑制することによって達成される。別の実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性シスシグナル伝達を破壊せずに、IL-11媒介性トランスシグナル伝達を破壊することによって達成され、すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、可溶性IL-11Rαに結合したIL-11や、可溶性IL-6Rに結合したIL-6などの、gp130媒介性トランスシグナル伝達複合体を抑制することによって達成される。別の実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性シスシグナル伝達およびIL-11媒介性トランスシグナル伝達を破壊することによって達成される。IL-11媒介性シスシグナル伝達および/またはIL-11媒介性トランスシグナル伝達の抑制には、本明細書に記載の薬剤のいずれを使用してもよい。
別の例において、IL-11のシグナル伝達の抑制は、IL-11/IL-11Rα/gp130の下流のシグナル伝達経路を破壊することによって達成してもよい。すなわち、いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抑制/拮抗作用は、IL-11とIL-11受容体からなる複合体を介したシグナル伝達の下流のシグナル伝達経路/シグナル伝達プロセス/シグナル伝達因子の抑制を含む。
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抑制/拮抗作用は、IL-11とIL-11受容体からなる複合体により活性化される細胞内シグナル伝達経路を介したシグナル伝達の抑制を含む。いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抑制/拮抗作用は、IL-11とIL-11受容体からなる複合体を介したシグナル伝達により発現/活性がアップレギュレートされる1つ以上の因子の抑制を含む。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、JAK/STATシグナル伝達を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、JAK/STATシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5Bおよび/またはSTAT6の作用を抑制することができる。例えば、JAK/STATシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、JAK/STATタンパク質の活性化を抑制可能であってもよく、JAKタンパク質もしくはSTATタンパク質と細胞表面受容体(例えばIL-11Rαもしくはgp130)の間の相互作用を抑制可能であってもよく、JAKタンパク質のリン酸化を抑制可能であってもよく、JAKタンパク質とSTATタンパク質の間の相互作用を抑制可能であってもよく、STATタンパク質のリン酸化を抑制可能であってもよく、STATタンパク質の二量体化を抑制可能であってもよく、STATタンパク質の細胞核への輸送を抑制可能であってもよく、STATタンパク質のDNAへの結合を抑制可能であってもよく、かつ/またはJAKタンパク質および/もしくはSTATタンパク質の分解を促進可能であってもよい。いくつかの実施形態において、JAK/STAT阻害剤は、ルキソリチニブ(Jakafi/ジャカビ;インサイト)、トファシチニブ(Xeljanz/Jakvinus;NIH/ファイザー)、オクラシチニブ(Apoquel)、バリシチニブ(オルミエント;インサイト/イーライリリー)、フィルゴチニブ(G-146034/GLPG-0634;Galapagos NV)、ガンドチニブ(LY-2784544;イーライリリー)、レスタウルチニブ(CEP-701;テバ)、モメロチニブ(GS-0387/CYT-387;ギリアド・サイエンシズ)、パクリチニブ(SB1518;CTI)、PF-04965842(ファイザー)、ウパダシチニブ(ABT-494;アッヴィ)、ペフィシチニブ(ASP015K/JNJ-54781532;アステラス)、フェドラチニブ(SAR302503;セルジーン)、ククルビタシンI(JSI-124)およびCHZ868から選択される。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、MAPK/ERKシグナル伝達を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、MAPK/ERKシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、GRB2の作用を抑制することができ、RAFキナーゼの作用を抑制することができ、MEKタンパク質の作用を抑制することができ、MAP3K/MAP2K/MAPKおよび/もしくはMycの活性化を抑制することができ、かつ/またはSTATタンパク質のリン酸化を抑制することができる。いくつかの実施形態において、ERKシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、ERK p42/44を抑制することができる。いくつかの実施形態において、ERK阻害剤は、SCH772984、SC1、VX-11e、DEL-22379、ソラフェニブ(ネクサバール;バイエル/Onyx)、SB590885、PLX4720、XL281、RAF265(ノバルティス)、エンコラフェニブ(LGX818/ビラフトビ;Array BioPharma)、ダブラフェニブ(タフィンラー;GSK)、ベムラフェニブ(ゼルボラフ;ロシュ)、コビメチニブ(Cotellic;ロシュ)、CI-1040、PD0325901、ビニメチニブ(MEK162/メクトビ;Array BioPharma)、セルメチニブ(AZD6244;Array/アストラゼネカ)およびトラメチニブ(GSK1120212/メキニスト;ノバルティス)から選択される。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)のシグナル伝達/活性を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、JNKのシグナル伝達/活性を抑制することができる薬剤は、JNK(例えばJNK1やJNK2など)の作用および/またはリン酸化を抑制することができる。いくつかの実施形態において、JNK阻害剤は、SP600125、CEP 1347、TCS JNK 6o、c-JUNペプチド、SU3327、AEG 3482、TCS JNK 5a、BI78D3、IQ3、SR3576、IQ1S、JIP-1(153-163)およびCC401二塩酸塩から選択される。
Widjaja et al., bioRxiv (2019) 830018では、IL-11/IL-11Rα/gp130を介したシグナル伝達によりNOX4の発現および活性がアップレギュレートされることが示されている。NOX4は、NADPHオキシダーゼであり、活性酸素種(ROS)の供給源である。Nox4の発現は、肝細胞特異的にIL-11を発現させたトランスジェニックマウスにおいてアップレギュレートされ、IL-11でヒト初代肝細胞を刺激することによっても、NOX4の発現がアップレギュレートされる。
いくつかの実施形態において、本発明は、NOX4の発現(遺伝子もしくはタンパク質の発現)またはその機能を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、IL-11を介したNOX4の発現/機能のアップレギュレーションを抑制することができる薬剤を使用する。NOX4の発現またはその機能を抑制することができる薬剤は、本明細書においてNOX4阻害剤と呼ぶこともある。例えば、NOX4阻害剤は、NOX4の発現(例えば、遺伝子および/もしくはタンパク質の発現)の低減が可能であってもよく、NOX4をコードするRNAの発現量の低減が可能であってもよく、NOX4タンパク質の発現量の低減が可能であってもよく、かつ/またはNOX4の活性レベルの低減が可能であってもよい(例えば、NOX4を介したNADPHオキシダーゼの活性の低減が可能であってもよく、かつ/もしくはNOX4を介したROSの産生の低減が可能であってもよい)。
NOX4阻害剤には、NOX4に結合する分子、およびNOX4の発現を低減することができる分子が含まれる。NOX4に結合する阻害剤として、NOX4の機能に対するアンタゴニストとして挙動するペプチド/核酸アプタマー、抗体(および抗体の断片)、およびNOX4の相互作用パートナーの断片、ならびにNOX4の低分子阻害剤が挙げられる。NOX4の発現を低減することができる分子には、NOX4のアンチセンスRNA(例えば、siRNAやshRNAなど)が含まれる。いくつかの実施形態において、NOX4阻害剤は、Altenhofer et al., Antioxid Redox Signal. (2015) 23(5): 406-427またはAugsburder et al., Redox Biol. (2019) 26: 101272に記載のNOX4阻害剤から選択され、例えば、GKT137831が挙げられる。
結合薬剤
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、IL-11に結合してもよい。いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、IL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合してもよい。このような薬剤がIL-11またはIL-11受容体に結合すると、IL-11受容体に対するIL-11の結合能が低減/阻害されて、IL-11媒介性シグナル伝達が抑制され、その結果、下流のシグナル伝達が抑制されてもよい。また、このような薬剤がIL-11またはIL-11受容体に結合すると、IL-11受容体(例えばIL-11Rαおよび/またはgp130)に対するIL-11の結合能が低減/阻害されて、IL-11媒介性シスシグナル伝達および/またはIL-11媒介性トランスシグナル伝達が抑制され、その結果、下流のシグナル伝達が抑制されてもよい。前記薬剤は、IL-11と可溶性IL-11Rαからなる複合体などのトランスシグナル伝達複合体に結合して、gp130媒介性シグナル伝達を抑制してもよい。
IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、どのような種類のものであってもよいが、いくつかの実施形態において、該薬剤は、抗体、その抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマー、小分子のいずれであってもよい。前記薬剤は、単離または精製された形態で提供してもよく、医薬組成物または医薬品として製剤化してもよい。
抗体および抗原結合断片
いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、ポリペプチド、例えばデコイ受容体分子である。いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、アプタマーであってもよい。
いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、抗体またはその抗原結合断片である。本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、関連する標的分子に対して結合性を示すモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および抗体断片を包含する。
近年のモノクローナル抗体技術に関する手法によれば、大部分の抗原に対して抗体を作製することが可能である。抗原結合部分は、抗体の一部(例えばFab断片)であってもよく、合成抗体断片(例えば一本鎖Fv断片[ScFv])であってもよい。選択された抗原に対するモノクローナル抗体は、公知の技術によって作製してもよく、このような公知技術として、例えば、“Monoclonal Antibodies: A manual of techniques”, H Zola (CRC Press, 1988)に記載されているものや、“Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications ”, J G R Hurrell (CRC Press, 1982)に記載されているものが挙げられる。また、キメラ抗体は、Neubergerら(1988, 8th International Biotechnology Symposium Part 2, 792-799)によって報告されている。モノクローナル抗体(mAb)は、本発明の方法において特に有用である。モノクローナル抗体(mAb)とは、抗原上の単一のエピトープを特異的な標的とする均質な抗体集団である。
また、本発明の方法では、ポリクローナル抗体も有用である。単一特異性ポリクローナル抗体が好ましい。好適なポリクローナル抗体は、当技術分野でよく知られている方法を使用して作製することができる。
Fab断片やFab2断片などの、抗体の抗原結合断片を使用/提供してもよく、遺伝子組換え抗体および遺伝子組換え抗体断片を使用/提供することもできる。抗体の重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域は、抗原の認識に関与することが知られているが、これは、初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に見出され、げっ歯類の抗体を「ヒト化」した実験においても確認されている。げっ歯類由来の可変領域をヒト由来の定常領域に融合させて、げっ歯類由来の親抗体の抗原特異性を保持した抗体を作製することができる(Morrison et al (1984) Proc. Natl. Acad. Sd. USA 81, 6851-6855)。
本開示による抗体および抗原結合断片は、関連する標的分子(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体)に結合することができる抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。
IL-11に結合することができる抗体としては、例えばBockhorn et al. Nat. Commun. (2013) 4(0):1393において使用されたモノクローナルマウス抗ヒトIL-11抗体クローン#22626;カタログNo.MAB218(R&Dシステムズ、米国ミネソタ州)、クローン6D9A(Abbiotec)、クローンKT8(Abbiotec)、クローンM3103F11(BioLegend)、クローン1F1(Abnova Corporation)、クローン3C6(Abnova Corporation)、クローンGF1(LifeSpan Biosciences)、クローン13455(Source BioScience)、11h3/19.6.1(Hermann et al., Arthritis Rheum. (1998) 41(8):1388-97)、AB-218-NA(R&Dシステムズ)、X203(Ng et al., Sci Transl Med. (2019) 11(511) pii: eaaw1237に報告されており、また、Ng, et al., "IL-11 is a therapeutic target in idiopathic pulmonary fibrosis." bioRxiv 336537; doi: https://doi.org/10.1101/336537としても報告されている)ならびに米国特許公開第2009/0202533(A1)号明細書、WO99/59608(A2)、WO2018/109174(A2)およびWO 2019/238882(A1)に開示されている抗IL-11抗体が挙げられる。
特に、抗IL-11抗体クローン22626(MAB218としても知られている)は、例えば、Schaefer et al., Nature (2017) 552(7683):110-115において、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストであることが示されている。Hermann et al., Arthritis Rheum. (1998) 41(8):1388-97では、モノクローナル抗体11h3/19.6.1が、抗IL-11 IgG1中和抗体であることが開示されている。例えば、McCoy et al., BMC Cancer (2013) 13:16などにおいて使用されているR&DシステムズのAB-218-NAは、抗IL-11中和抗体の別の一例である。WO 2018/109174(A2)およびWO 2019/238882(A1)では、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11アンタゴニスト抗体のさらに別の例が開示されている。また、Ng, et al., "IL-11 is a therapeutic target in idiopathic pulmonary fibrosis." bioRxiv 336537; doi: https://doi.org/10.1101/336537およびWO 2019/238882 (A1)に開示されているX203(Enx203とも呼ぶ)は、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL11アンタゴニスト抗体であり、WO 2019/238882(A1)において配列番号92(本開示での配列番号22)で示されるVH領域と、WO 2019/238882(A1)において配列番号94(本開示での配列番号23)で示されるVL領域とを含む。ヒト化されたX203は、WO 2019/238882(A1)に記載されており、これにはhEnx203が含まれ、hEnx203は、WO 2019/238882(A1)において配列番号117(本開示での配列番号30)で示されるVH領域と、WO 2019/238882(A1)において配列番号122(本開示での配列番号31)で示されるVL領域とを含む。Enx108Aは、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11アンタゴニスト抗体のさらに別の例であり、WO 2019/238882(A1)において配列番号8(本開示での配列番号26)で示されるVH領域と、WO 2019/238882(A1)において配列番号20(本開示での配列番号27)で示されるVL領域とを含む。
IL-11Rαに結合することができる抗体としては、例えば、モノクローナル抗体クローン025(Sino Biological)、クローンEPR5446(Abcam)、クローン473143(R&Dシステムズ)、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書に記載されているクローン8E2、8D10および8E4、ならびに8E2の親和性成熟バリアント、Blancら(J. Immunol Methods. 2000 Jul 31;241(1-2);43-59)に記載されているモノクローナル抗体、X209(Widjaja et al., Gastroenterology (2019) 157(3):777-792に報告されており、Widjaja, et al., "IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH." bioRxiv 470062; doi: https://doi.org/10.1101/470062としても報告されている)、WO2014121325(A1)および米国特許公開第2013/0302277(A1)号明細書に開示されている抗体、ならびに米国特許公開第2009/0202533(A1)号明細書、WO99/59608(A2)、WO2018/109170(A2)およびWO 2019/238884(A1)に開示されている抗IL-11Rα抗体が挙げられる。
特に、抗IL-11Rα抗体クローン473143(MAB1977としても知られている)は、例えば、Schaefer et al., Nature (2017) 552(7683):110-115において、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストであることが示されている。米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書では、抗ヒトIL-11Rα抗体クローン8E2、8D10および8E4の配列が提供されており、これらの抗ヒトIL-11Rα抗体クローンが、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を有することが開示されている(例えば、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書の段落[0489]~[0490]を参照されたい)。さらに、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書では、クローン8E2の62種の親和性成熟バリアントの配列情報も提供されており、そのうちの61種が、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を有することが開示されている(米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書の表3を参照されたい)。WO 2018/109170(A2)およびWO 2019/238884(A1)では、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体のさらに別の例が開示されている。また、Widjaja, et al., "IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH." bioRxiv 470062; doi: https://doi.org/10.1101/470062およびWO 2019/238884(A1)に開示されているX209(Enx209とも呼ぶ)は、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体であり、WO 2019/238884(A1)において配列番号7(本開示での配列番号24)で示されるVH領域と、WO 2019/238884(A1)において配列番号14(本開示での配列番号25)で示されるVL領域とを含む。ヒト化されたX209は、WO 2019/238884(A1)に記載されており、これにはhEnx209が含まれ、hEnx209は、WO 2019/238884(A1)において配列番号11(本開示での配列番号32)で示されるVH領域と、WO 2019/238884(A1)において配列番号17(本開示での配列番号33)で示されるVL領域とを含む。
当業者であれば、所定の生物種/対象での治療用途に適した抗体を作製する技術を熟知しているであろう。例えば、ヒトでの治療用途に適した抗体を作製するための手順は、Park and Smolen Advances in Protein Chemistry (2001) 56: 369-421に記載されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
所定の標的タンパク質(例えば、IL-11またはIL-11Rα)に対する抗体は、モデル生物種(例えば、げっ歯類やウサギ)において作製することができ、次いで、所定の生物種/対象における治療用途での適合性を向上させるために遺伝子組換えを行うことができる。例えば、モデル生物種の免疫処置により作製したモノクローナル抗体の1個以上のアミノ酸を置換することにより、ヒト生殖細胞系の免疫グロブリンの配列により近い抗体配列を得ることができる(これにより、この抗体による処置を受けるヒト対象において、抗異種抗体により免疫応答が起こる可能性を低減することができる)。抗体可変ドメインの修飾を行う際には、抗体のパラトープの保存を目的として、フレームワーク領域に焦点を当てて修飾を行ってもよい。抗体のヒト化は、抗体技術の分野で日常的に行われており、例えば、Almagro and Fransson, Frontiers in Bioscience (2008) 13:1619-1633, Safdari et al., Biotechnology and Genetic Engineering Reviews (2013) 29(2): 175-186およびLo et al., Microbiology Spectrum (2014) 2(1)においてレビューされている(これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に援用される)。抗体のヒト化は省略が可能であり、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックモデル生物種において、所定の標的タンパク質(例えば、IL-11またはIL-11Rα)に対する抗体を作製して、完全ヒト型抗体を得ることによって省略することができる(例えば、Bruggemann et al., Arch Immunol Ther Exp (Warsz) (2015) 63(2):101-108に記載されており、この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
また、ファージディスプレイ技術を使用して、所定の標的タンパク質(例えばIL-11またはIL-11Rα)に対する抗体を同定してもよく、この方法は当業者によく知られている。ファージディスプレイを使用した、ヒト標的タンパク質に対する完全ヒト型抗体の同定は、例えば、Hoogenboom, Nat. Biotechnol. (2005) 23, 1105-1116およびChan et al., International Immunology (2014) 26(12): 649-657においてレビューされている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
前記抗体/断片は、IL-11の生物学的活性を抑制または低減するアンタゴニスト抗体/断片であってもよい。前記抗体/断片は、IL-11の生物学的効果を中和する中和抗体であってもよく、例えば、IL-11受容体を介してタンパク質合成シグナル伝達を刺激するIL-11の能力を中和する中和抗体であってもよい。中和活性は、T11マウス形質細胞腫細胞株においてIL-11誘導性増殖に対する中和能を評価することによって測定してもよい(Nordan, R. P. et al. (1987) J. Immunol. 139:813)。
IL-11に結合する抗体またはIL-11Rαに結合する抗体は、例えば、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書やBlancら(J. Immunol Methods. 2000 Jul 31;241(1-2);43-59)に記載されているアッセイを使用して、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を評価することができる。簡潔に述べると、IL-11に結合する抗体およびIL-11Rαに結合する抗体は、適切な生物種由来のIL-11による刺激に応答して適切な生物種に由来するIL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞の増殖を抑制する能力をインビトロで評価することができる。別の方法では、IL-11に結合する抗体およびIL-11Rαに結合する抗体は、(例えば、WO 2018/109174(A2)(実施例6)およびWO 2018/109170(A2)(実施例6)ならびにNg et al., Sci Transl Med. (2019) 11(511) pii: eaaw1237およびWidjaja et al., Gastroenterology (2019) 157(3):777-792に記載されているように)TGFβ1で線維芽細胞を刺激した後、αSMAの発現を評価することによって、線維芽細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制する能力をインビトロで分析することができる。
抗体は、通常、軽鎖可変領域(VL)の3つのCDR(LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3)と、重鎖可変領域(VH)の3つのCDR(HC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3)からなる6つのCDRを含む。これら6つのCDRが一緒になって抗体のパラトープを定義しており、パラトープとは、標的分子に結合する抗体の一部分を指す。VH領域およびVL領域は、各CDRの両端にフレームワーク領域(FR)を含み、このフレームワーク領域は、CDRに足場を提供する。VH領域の構造は、N末端からC末端の方向に順に、N末端-[HC-FR1]-[HC-CDR1]-[HC-FR2]-[HC-CDR2]-[HC-FR3]-[HC-CDR3]-[HC-FR4]-C末端を含み、VL領域の構造は、N末端からC末端の方向に順に、N末端-[LC-FR1]-[LC-CDR1]-[LC-FR2]-[LC-CDR2]-[LC-FR3]-[LC-CDR3]-[LC-FR4]-C末端を含む。
抗体のCDRおよびFRを定義する慣例的な方法はいくつかあり、例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)に記載の方法、ならびにRetter et al., Nucl. Acids Res. (2005) 33 (suppl 1): D671-D674に記載のVBASE2などが挙げられる。本明細書に記載の抗体のVH領域およびVL領域のCDRおよびFRは、Kabatシステムに従って定義される。
いくつかの実施形態において、本開示による抗体またはその抗原結合断片は、IL-11に特異的に結合する抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)に由来するものである。いくつかの実施形態において、本開示による抗体またはその抗原結合断片は、IL-11Rαに特異的に結合する抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)に由来するものである。
本開示による抗体および抗原結合断片は、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することが好ましい。そのような抗体/抗原結合断片は、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストであると説明されてもよく、かつ/またはIL-11媒介性シグナル伝達に対する中和能を有するものとして説明されてもよい。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11に結合する抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11に結合する抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)のCDRを含むか、これらの抗体のCDRに由来するCDRを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(1)
配列番号34のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号35のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および
配列番号36のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または
HC-CDR1、HC-CDR2またはHC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVH領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(2)
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号38のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および
配列番号39のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、または
LC-CDR1、LC-CDR2またはLC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(3)
配列番号40のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号41のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および
配列番号42のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または
HC-CDR1、HC-CDR2またはHC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVH領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(4)
配列番号43のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号44のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および
配列番号45のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、または
LC-CDR1、LC-CDR2またはLC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(1)に記載のCDRが組み込まれたVH領域と、(2)に記載のCDRが組み込まれたVL領域とを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(3)に記載のCDRが組み込まれたVH領域と、(4)に記載のCDRが組み込まれたVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11に結合する抗体のVH領域とVL領域とを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11に結合する抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)のVH領域およびVL領域を含むか、これらの抗体のVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11Rαに結合する抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11Rαに結合する抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)のCDRを含むか、これらの抗体のCDRに由来するCDRを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(5)
配列番号46のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および
配列番号48のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または
HC-CDR1、HC-CDR2またはHC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVH領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(6)
配列番号49のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号50のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および
配列番号51のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、または
LC-CDR1、LC-CDR2またはLC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(5)に記載のCDRが組み込まれたVH領域と、(6)に記載のCDRが組み込まれたVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11Rαに結合する抗体のVH領域とVL領域とを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11Rαに結合する抗体(例えば、Enx209または hEnx209)のVH領域およびVL領域を含むか、これらの抗体のVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
基準となるアミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のCDR配列、VH領域配列またはVL領域配列)の1個以上のアミノ酸が別のアミノ酸で置換された本発明の実施形態において、この置換は、例えば、以下の表に従った保存的置換であってもよい。いくつかの実施形態では、中央の列の同じ枠内のアミノ酸同士で置換される。いくつかの実施形態では、右側の列の同じ枠内のアミノ酸同士で置換される。
いくつかの実施形態において、置換は、機能的に保存された置換であってもよい。すなわち、いくつかの実施形態において、置換は、置換されていない同じ分子と比較したときに、置換を含む抗体/断片の1つ以上の機能的特性(例えば、標的への結合性)に影響を与えないものであってもよい(または実質的に影響を与えないものであってもよい)。
いくつかの実施形態では、基準となるVH領域配列またはVL領域配列に対する置換は、VH領域配列またはVL領域配列のうちの特定の1つの領域または複数の領域に着目して行ってもよい。例えば、基準となるVH領域配列またはVL領域配列からの変更は、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3および/またはFR4)の1つ以上に着目して行ってもよい。
本開示による抗体および抗原結合断片は、関連する標的分子に結合することができるモノクローナル抗体(mAb)の配列を使用して設計および調製してもよい。また、一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、Fab2断片などの、抗体の抗原結合領域を使用/提供してもよい。「抗原結合領域」または「抗原結合断片」は、元の抗体が特異性を示す標的に結合することが可能な抗体断片である。
いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のVL領域およびVH領域を含む。抗体の抗原結合領域にあるVL領域およびVH領域は、一緒になってFv領域を構成する。いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のFv領域を含むか、またはこのFv領域からなる。Fv領域は、例えば柔軟なオリゴペプチドなどで共有結合されたVH領域およびVL領域を含む一本鎖として発現されてもよい。したがって、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のVL領域およびVH領域を含むscFvを含んでいてもよく、このscFvからなっていてもよい。
抗体の抗原結合領域にある軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)と重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域1(CH1)は、一緒になってFab領域を構成する。いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のFab領域を含むか、またはこのFab領域からなる。
いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる全長抗体を含むか、またはこの全長抗体からなる。「全長抗体」は、免疫グロブリン(Ig)の構造と実質的に似た構造を有する抗体を指す。例えば、Schroeder and Cavacini J Allergy Clin Immunol. (2010) 125(202): S41-S52(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に、様々な種類の免疫グロブリンおよびそれらの構造が記載されている。免疫グロブリンG(すなわちIgG)は、2つの重鎖と2つの軽鎖を含む約150kDaの糖タンパク質である。重鎖は、N末端からC末端の方向に、重鎖可変領域(VH)と、それに続く3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む重鎖定常領域とを含み、これと同様に、軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)とそれに続く軽鎖定常領域(CL)とを含む。免疫グロブリンは、重鎖の種類によって、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えばIgA1、IgA2)、IgD、IgEまたはIgMに分類されてもよい。軽鎖は、κ鎖であってもよく、λ鎖であってもよい。
いくつかの実施形態において、本開示の抗体/抗原結合断片は、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列であってもよい。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgEまたはIgM、例えば、ヒトIgG(例えば、hIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4)、hIgA(例えば、hIgA1、hIgA2)、hIgD、hIgEまたはhIgMの重鎖定常領域の配列であってもよく、これらの抗体の重鎖定常領域の配列に由来する配列であってもよい。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒトIgG1のアロタイプ(例えば、G1m1、G1m2、G1m3またはG1m17)の重鎖定常領域の配列であるか、またはヒトIgG1のアロタイプの重鎖定常領域の配列に由来する配列である。
いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンG1定常領域(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるか、またはヒト免疫グロブリンG1の定常領域の定常領域配列に由来する配列である。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、K214R置換、D356E置換およびL358M置換を含むヒト免疫グロブリンG1定常領域(すなわち、アロタイプG1m3)(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるか、またはこのヒト免疫グロブリンG1定常領域に由来する配列である。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンG4定常領域(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるか、またはヒト免疫グロブリンG4の定常領域の定常領域配列に由来する配列である。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、S241P置換および/またはL248E置換を含むヒト免疫グロブリンG4定常領域(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるか、またはこのヒト免疫グロブリンG4定常領域配列に由来する配列である。S241P変異は、ヒンジを安定化させ、L248E変異は、既に低く抑えられているIgG4のADCCエフェクター機能をさらに低減させる(Davies and Sutton, Immunol Rev. 2015 Nov; 268(1):139-159; Angal et al Mol Immunol. 1993 Jan;30(1):105-8)。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体/抗原結合断片は、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列であってもよい。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、κ軽鎖またはλ軽鎖の配列であってもよく、κ軽鎖またはλ軽鎖に由来する配列であってもよい。κ軽鎖またはλ軽鎖の例として、ヒト免疫グロブリンの定常領域のκ鎖(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2)、またはヒト免疫グロブリンの定常領域のλ鎖(IGLC;Cλ)が挙げられ、例えば、IGLC1(UniProt:P0CG04-1、v1)、IGLC2(UniProt:P0DOY2-1、v1)、IGLC3(UniProt:P0DOY3-1、v1)、IGLC6(UniProt:P0CF74-1、v1)またはIGLC7(UniProt:A0M8Q6-1、v3)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの定常領域のκ鎖(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2;配列番号90)の配列であるか、またはこのヒト免疫グロブリンの定常領域のκ鎖に由来する配列である。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの定常領域のλ鎖(IGLC;Cλ)の配列、例えば、IGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6またはIGLC7の配列である。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号54のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(i)配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(ii)配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドとを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(i)配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(ii)配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドとを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(i)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(ii)配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドとを含む。
Fab抗体断片、Fv抗体断片、scFv抗体断片およびdAb抗体断片はいずれも、大腸菌において発現させて分泌させることが可能であることから、容易に大量生産することができる。
全長抗体およびF(ab’)2断片は「二価」である。「二価」とは、全長抗体およびF(ab’)2断片が、2つの抗原結合部位を有していることを意味する。これに対して、Fab断片、Fv断片、scFv断片およびdAb断片は、1つの抗原結合部位しか持たないため、一価である。IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる合成抗体は、当技術分野でよく知られているファージディスプレイ技術を使用して作製することもできる。
抗体は、非修飾の親抗体と比較して抗原に対する親和性が向上された修飾抗体を作製するための親和性成熟法によって作製してもよい。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手法によって作製してもよく、親和性成熟抗体を作製するための手法は、例えば、Marks et al.,Rio/Technology 10:779-783 (1992); Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Yelton et al. J. Immunol. 155:1994-2004 (1995); Jackson et al., J. Immunol. 154(7):331 0-15 9 (1995);およびHawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)に記載されている。
抗体/断片は、二重特異性抗体を含み、二重特異性抗体は、例えば、2種の抗体のそれぞれに由来する2種の断片で構成されており、それによって2種の抗原に結合することができる。二重特異性抗体は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる本明細書に記載の抗体/断片を含む。二重特異性抗体は、第2の抗原に対する親和性を有する別の断片を含んでいてもよく、この第2の抗原は所望のものであればどのような抗原であってもよい。二重特異性抗体の作製技術は当技術分野でよく知られており、例えば、Mueller, Dら(2010 Biodrugs 24 (2): 89-98)、Wozniak-Knopp Gら(2010 Protein Eng Des 23 (4): 289-297.)、およびBaeuerle, PAら(2009 Cancer Res 69 (12): 4941-4944)を参照されたい。二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、好適であればどのような形態で提供してもよく、例えば、Kontermann MAbs 2012, 4(2): 182-197(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているような形態で提供してもよい。例えば、二重特異性抗体または二重特異性抗原結合断片は、二重特異性抗体複合体(例えばIgG2、F(ab’)2またはCovX-Body)、二重特異性IgGまたはIgG様分子(例えばIgG、scFv4-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、2 in 1-IgG、mAb2、または軽鎖(LC)が共通化されたTandemab)、非対称性の二重特異性IgGまたはIgG様分子(例えばkih IgG、軽鎖(LC)が共通化されたkih IgG、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、電荷対を有するIgG、またはSEED-body)、小さな二重特異性抗体分子(例えばDiabody(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAb、tandem scFv(taFv)、tandem dAb/VHH、triple body、triple head、Fab-scFvまたはF(ab’)2-scFv2)、二重特異性Fc-CH3融合タンパク質(例えばtaFv-Fc、Di-diabody、scDb-CH3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih-FcまたはscFv-kih-CH3)、二重特異性融合タンパク質(例えばscFv2-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-毒素、DNL-Fab3、DNL-Fab4-IgG、DNL-Fab4-IgG-cytokine2)のいずれであってもよい。具体的には、Kontermann MAbs 2012, 4(2): 182-19の図2を参照されたい。
二重特異性抗体の製造方法としては、例えばSegal and Bast, 2001. Production of Bispecific Antibodies. Current Protocols in Immunology. 14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているように、例えば還元可能なジスルフィド結合または還元不能なチオエーテル結合を介して、抗体または抗体断片を化学的に架橋する方法が挙げられる。例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオナート(SPDP)を使用して、ヒンジ領域のSH-基を介して、例えばFab断片を化学的に架橋することによって、ジスルフィド結合で連結された二重特異性F(ab)2ヘテロ二量体を作製することができる。
二重特異性抗体の別の製造方法としては、例えばD. M. and Bast, B. J. 2001. Production of Bispecific Antibodies. Current Protocols in Immunology. 14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16に記載されているように、抗体を産生するハイブリドーマを、例えばポリエチレングリコールを使用して融合させ、二重特異性抗体を分泌することができるクアドローマ細胞を作製する方法が挙げられる。
二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、組換え技術によって作製することもでき、例えばAntibody Engineering: Methods and Protocols, Second Edition (Humana Press, 2012)のChapter 40: Production of Bispecific Antibodies: Diabodies and Tandem scFv (Hornig and Farber-Schwarz)、またはFrench, How to make bispecific antibodies, Methods Mol. Med. 2000; 40:333-339に記載されているように、例えば抗原結合分子のポリペプチドをコードする核酸構築物から二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片を発現させることができる。
例えば、2種の抗原結合領域の軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードし(すなわち、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗原結合領域の軽鎖可変領域および重鎖可変領域と、別の標的タンパク質に結合することができる抗原結合領域の軽鎖可変領域および重鎖可変領域とをコードし)、かつこれらの抗原結合領域を連結する適切なリンカーまたは二量体化領域をコードする配列を含むDNA構築物を、分子クローニング技術によって作製することができる。次いで、このDNA構築物を好適な宿主細胞(例えば哺乳動物の宿主細胞)において(例えばインビトロで)発現させて、組換え二重特異性抗体を産生させることができ、発現された組換え二重特異性抗体を必要に応じて精製することができる。
デコイ受容体
IL-11またはIL-11含有複合体に結合することが可能な、ペプチドベースまたはポリペプチドベースの薬剤は、IL-11受容体に基づいて作製されたものであってもよく、例えばIL-11受容体のIL-11結合断片に基づいて作製されたものであってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、IL-11Rα鎖のIL-11結合断片を含んでいてもよく、好ましくは可溶性であってもよく、かつ/または1つ以上の膜貫通ドメインを含んでいなくてもよく、膜貫通ドメインを全く含んでいなくてもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、gp130のIL-11結合断片を含んでいてもよく、好ましくは可溶性であってもよく、かつ/または1つ以上の膜貫通ドメインを含んでいなくてもよく、膜貫通ドメインを全く含んでいなくてもよい。このような分子をデコイ受容体と呼んでもよい。このような薬剤がIL-11に結合すると、IL-11受容体(例えばIL-11Rαまたはgp130)に対するIL-11の結合能が低減/阻害されて、IL-11媒介性シスシグナル伝達および/またはトランスシグナル伝達が抑制され、その結果、下流のシグナル伝達が抑制されてもよい。
Curtisら(Blood 1997 Dec 1; 90 (11):4403-12)は、膜貫通型のIL-11Rおよびgp130を発現する細胞で試験した場合に、可溶性マウスIL-11受容体α鎖(sIL-11R)がIL-11の活性に対して拮抗作用を発揮することができたことを報告している。この研究で観察されたIL-11に対するsIL-11Rの拮抗作用は、膜貫通型IL-11Rを既に発現している細胞上における利用可能なgp130分子の数に依存することが提唱されている。
シグナル伝達の抑制および治療的介入を目的とした可溶性デコイ受容体の使用は、例えばVEGFとVEGF受容体などの他のシグナル伝達分子とその受容体のペアでも報告されている(De-Chao Yu et al., Molecular Therapy (2012); 20 5, 938-947; Konner and Dupont Clin Colorectal Cancer 2004 Oct;4 Suppl 2:S81-5)。
このように、いくつかの実施形態において、結合薬剤はデコイ受容体であってもよく、例えば、IL-11および/またはIL-11含有複合体の可溶性受容体であってもよい。デコイ受容体によってIL-11および/またはIL-11含有複合体に対する競合が起こり、IL-11に対する拮抗作用が発揮されることが報告されている(Curtisら,前掲)。IL-11のデコイ受容体は、WO 2017/103108(A1)およびWO 2018/109168(A1)にも記載されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
IL-11のデコイ受容体は、IL-11および/またはIL-11含有複合体と結合することによって、gp130、IL-11Rαおよび/またはgp130:IL-11Rα受容体へのIL-11および/またはIL-11含有複合体の結合を阻害できることが好ましい。このように、IL-11のデコイ受容体は、TNFαのデコイ受容体として作用するエタネルセプトと非常によく似た方法で、IL-11およびIL-11含有複合体の「デコイ」受容体として作用する。IL-11媒介性シグナル伝達は、デコイ受容体の非存在下でのシグナル伝達よりも減少する。
IL-11のデコイ受容体は、1つ以上のサイトカイン結合モジュール(CBM)を介してIL-11に結合することが好ましい。CBMは、天然のIL-11受容体分子のCBMであるか、天然のIL-11受容体分子のCBMに由来するものであるか、あるいは天然のIL-11受容体分子のCBMと相同なものである。例えば、IL-11のデコイ受容体は、gp130および/またはIL-11Rαの1つ以上のCBMを含むもの、gp130および/またはIL-11Rαの1つ以上のCBMからなるもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMに由来する1つ以上のCBMを含むもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMに由来する1つ以上のCBMからなるもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMと相同な1つ以上のCBMを含むもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMと相同な1つ以上のCBMからなるものうちのいずれであってもよい。
いくつかの実施形態において、IL-11のデコイ受容体は、gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでいてもよく、gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列からなっていてもよい。いくつかの実施形態において、IL-11のデコイ受容体は、IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでいてもよい。本明細書において、所定のペプチド/ポリペプチドの参照領域または参照配列に「対応する」アミノ酸配列は、この参照領域/参照配列のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有しており、例えば、この参照領域/参照配列のアミノ酸配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有している。
いくつかの実施形態において、デコイ受容体は、例えば、少なくとも100μM以下の結合親和性でIL-11に結合することが可能であってもよく、10μM以下、1μM以下、100nM以下、または約1~100nMの結合親和性でIL-11に結合してもよい。いくつかの実施形態において、デコイ受容体は、IL-11結合ドメインの全体またはその一部を含んでいてもよく、膜貫通ドメインの全体またはその一部を欠損していてもよい。デコイ受容体は、免疫グロブリンの定常領域(例えばIgG Fc領域)に融合させたものであってもよい。
阻害剤
本発明は、IL-11、IL-11含有複合体、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体のうちの1つ以上に結合して、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる阻害剤分子の使用を想定している。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11、例えばIL-11の変異体、バリアントまたは結合断片に基づいた、ペプチドベースまたはポリペプチドベースの結合薬剤である。好適なペプチドベースまたはポリペプチドベースの薬剤は、IL-11受容体(例えばIL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合することによってシグナル伝達の開始を阻害したり、不十分なシグナル伝達しか起こさないものであってもよい。このようなタイプのIL-11変異体は、内因性IL-11の競合阻害物質として作用してもよい。
例えば、W147Aは、147番目のアミノ酸をトリプトファンからアラニンに変異させたことによって、IL-11のいわゆる「部位III」が破壊されたIL-11アンタゴニストである。この変異体はIL-11Rαに結合することができるが、gp130ホモダイマーとの会合は起こらず、その結果、IL-11のシグナル伝達が効率的に遮断される(Underhill-Day et al., 2003; Endocrinology 2003 Aug;144(8):3406-14)。また、Leeら(Am J respire Cell Mol Biol. 2008 Dec; 39(6):739-746)は、IL-11RαへのIL-11の結合を特異的に抑制することができるIL-11アンタゴニスト変異体(「ムテイン」)の作製を報告している。IL-11のムテインは、WO 2009/052588(A1)にも記載されている。
Menkhorstら(Biology of Reproduction May 1, 2009 vol.80 no.5 920-927)は、雌性マウスにおいてIL-11の作用を効果的に抑制できるペグ化IL-11アンタゴニストPEGIL11A(CSL Limited、オーストラリア、ビクトリア州パークビル)を報告している。
さらに、Pasqualiniら(Cancer (2015) 121(14):2411-2421)は、IL-11Rαに結合することができるリガンド標的ペプチド模倣薬bone metastasis-targeting peptidomimetic-11(BMTP-11)を報告している。
いくつかの実施形態において、IL-11受容体に結合することができる結合薬剤は、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体の小分子阻害剤の形態で提供してもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の小分子阻害剤の形態で提供してもよく、例えば、Lay et al., Int. J. Oncol. (2012); 41(2): 759-764(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に記載のIL-11阻害剤の形態で提供してもよい。
アプタマー
いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合することができる薬剤は、アプタマーである。核酸リガンド/ペプチドリガンドとも呼ばれるアプタマーは、高い特異性および高い親和性で標的分子に結合する能力を特徴とする核酸分子またはペプチド分子である。現在までに同定されたアプタマーの大部分は非天然分子である。
所定の標的(例えば、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体)に結合するアプタマーは、Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEXTM)法で同定および/または作製してもよく、あるいはSOMAmer(slow off-rate modified aptamers)(Gold L et al. (2010) PLoS ONE 5(12):e15004)を構築することにより、同定および/または作製してもよい。アプタマーおよびSELEX法は、TuerkおよびGold(Science (1990) 249(4968):505-10)によって報告されており、WO91/19813にも記載されている。SELEX法およびSOMAmer技術では、例えばアプタマーの化学的多様性を拡大するためにアミノ酸側鎖を模倣した官能基の付加が行われる。その結果、標的に対して高親和性のアプタマーが濃縮され、同定されうる。
アプタマーはDNA分子であってもよく、RNA分子であってもよく、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。また、アプタマーは化学的に修飾された核酸を含んでいてもよく、例えば、糖、リン酸塩および/または塩基が化学的に修飾された核酸を含んでいてもよい。このような修飾は、アプタマーの安定性を向上させるものであってもよく、アプタマーに分解抵抗性を付与するものであってもよく、リボースの2’位に修飾を含んでいてもよい。
アプタマーは、当業者によく知られている方法によって合成してもよい。例えば、アプタマーを、例えば固相支持体上で化学的に合成してもよい。ホスホロアミダイト法を用いた固相合成法を使用してもよい。簡潔に述べると、固相化したヌクレオチドを脱トリチル化した後、適切に活性化されたヌクレオシドホスホロアミダイトとカップリングさせ、亜リン酸トリエステル結合を形成させる。次いでキャッピングを行い、酸化剤(通常ヨウ素)で亜リン酸トリエステルを酸化することができる。このサイクルを繰り返し、アプタマーを構築することができる(例えば、Sinha, N. D.; Biernat, J.; McManus, J.; Koster, H. Nucleic Acids Res. 1984, 12, 4539; およびBeaucage, S. L.; Lyer, R. P. (1992). Tetrahedron 48 (12): 2223を参照されたい)。
好適な核酸アプタマーの長さの下限は、10ヌクレオチド長、11ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、13ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長のいずれであってもよい。好適な核酸アプタマーの長さの上限は、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、41ヌクレオチド長、42ヌクレオチド長、43ヌクレオチド長、44ヌクレオチド長、45ヌクレオチド長、46ヌクレオチド長、47ヌクレオチド長、48ヌクレオチド長、49ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長、51ヌクレオチド長、52ヌクレオチド長、53ヌクレオチド長、54ヌクレオチド長、55ヌクレオチド長、56ヌクレオチド長、57ヌクレオチド長、58ヌクレオチド長、59ヌクレオチド長、60ヌクレオチド長、61ヌクレオチド長、62ヌクレオチド長、63ヌクレオチド長、64ヌクレオチド長、65ヌクレオチド長、66ヌクレオチド長、67ヌクレオチド長、68ヌクレオチド長、69ヌクレオチド長、70ヌクレオチド長、71ヌクレオチド長、72ヌクレオチド長、73ヌクレオチド長、74ヌクレオチド長、75ヌクレオチド長、76ヌクレオチド長、77ヌクレオチド長、78ヌクレオチド長、79ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長のいずれであってもよい。好適な核酸アプタマーの長さは、10ヌクレオチド長、11ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、13ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、41ヌクレオチド長、42ヌクレオチド長、43ヌクレオチド長、44ヌクレオチド長、45ヌクレオチド長、46ヌクレオチド長、47ヌクレオチド長、48ヌクレオチド長、49ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長、51ヌクレオチド長、52ヌクレオチド長、53ヌクレオチド長、54ヌクレオチド長、55ヌクレオチド長、56ヌクレオチド長、57ヌクレオチド長、58ヌクレオチド長、59ヌクレオチド長、60ヌクレオチド長、61ヌクレオチド長、62ヌクレオチド長、63ヌクレオチド長、64ヌクレオチド長、65ヌクレオチド長、66ヌクレオチド長、67ヌクレオチド長、68ヌクレオチド長、69ヌクレオチド長、70ヌクレオチド長、71ヌクレオチド長、72ヌクレオチド長、73ヌクレオチド長、74ヌクレオチド長、75ヌクレオチド長、76ヌクレオチド長、77ヌクレオチド長、78ヌクレオチド長、79ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長のいずれであってもよい。
アプタマーは、特定の標的分子に結合するように選択または構築されたペプチドであってもよい。ペプチドアプタマーならびにその作製方法および同定方法は、Reverdatto et al., Curr Top Med Chem. (2015) 15(12):1082-101(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)でレビューされている。ペプチドアプタマーの長さの下限は、2アミノ酸長、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長のいずれであってもよい。ペプチドアプタマーの長さの上限は、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、21アミノ酸長、22アミノ酸長、23アミノ酸長、24アミノ酸長、25アミノ酸長、26アミノ酸長、27アミノ酸長、28アミノ酸長、29アミノ酸長、30アミノ酸長、31アミノ酸長、32アミノ酸長、33アミノ酸長、34アミノ酸長、35アミノ酸長、36アミノ酸長、37アミノ酸長、38アミノ酸長、39アミノ酸長、40アミノ酸長、41アミノ酸長、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長のいずれであってもよい。好適なペプチドアプタマーの長さは、2~30アミノ酸長、2~25アミノ酸長、2~20アミノ酸長、5~30アミノ酸長、5~25アミノ酸長、5~20アミノ酸長のいずれであってもよい。
アプタマーは、nMオーダーまたはpMオーダーのKdを有していてもよく、Kdは、例えば、500nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、1nM未満、500pM未満、100pM未満のいずれであってもよい。
IL-11結合薬剤の特性
IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる本発明の薬剤は、以下の特性のいずれか1つ以上を示してもよい。
・IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に対する特異的結合
・10μM以下のKD、好ましくは5μM以下、1μM以下、500nM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下または100pM以下のKDでの、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体への結合
・IL-11とIL-11Rαの間の相互作用の抑制
・IL-11とgp130の間の相互作用の抑制
・IL-11とIL-11Rα:gp130受容体複合体の間の相互作用の抑制
・IL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用の抑制
これらの特性は、適切なアッセイにおいて関連因子を分析することによって測定することができ、適切なコントールと性能を比較することを含んでいてもよい。当業者であれば、所定のアッセイにおける適切なコントロール条件を決定することができる。
例えば、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体に対する試験抗体/抗原結合断片の結合能の分析に適したネガティブコントロールは、非標的タンパク質に対する抗体/抗原結合断片(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体に特異的ではない抗体/抗原結合断片)であってもよい。適切なポジティブコントロールは、検証済みの(例えば市販の)、IL-11に結合する公知の抗体またはIL-11受容体に結合する公知の抗体であってもよい。コントロールは、分析対象としての、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合すると推定される抗体/抗原結合断片と同じアイソタイプのものであってもよく、例えば同じ定常領域を有していてもよい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に特異的に結合可能であってもよい。所定の標的分子に特異的に結合する薬剤は、他の非標的分子に対する結合よりも高い親和性および/または長い持続期間で該標的分子に結合することが好ましい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-6サイトカインファミリーのその他のメンバー(例えば、IL-6、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC))のうちの1つ以上に対する結合よりも高い親和性でIL-11またはIL-11含有複合体に結合してもよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、その他のIL-6受容体ファミリーのメンバーの1つ以上に対する結合よりも高い親和性でIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合してもよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-6Rα、白血病抑制因子受容体(LIFR)、オンコスタチンM受容体(OSMR)、毛様体神経栄養因子受容体α(CNTFRα)およびサイトカイン受容体様因子1(CRLF1)のうちの1つ以上に対する結合よりも高い親和性でIL-11Rαに結合してもよい。
いくつかの実施形態において、例えば、ELISA、SPR、バイオレイヤー干渉法(BLI)、マイクロスケール熱泳動(MST)またはラジオイムノアッセイ(RIA)で測定した場合、非標的分子に対する結合薬剤の結合の程度は、標的分子に対する該結合薬剤の結合の程度の約10%未満である。あるいは、結合特異性は、結合親和性として反映されてもよく、この場合、結合薬剤は、非標的分子に対するKDよりも少なくとも0.1桁(すなわち0.1×10n(nは桁数を表す整数))小さいKDでIL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合する。この桁数は、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0のいずれであってもよい。
標的に対する所定の結合薬剤の結合親和性は、その解離定数(KD)で表されることが多い。結合親和性は、当技術分野で公知の方法により測定することができ、このような方法として、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えばHearty et al., Methods Mol Biol (2012) 907:411-442;またはRich et al., Anal Biochem. 2008 Feb 1; 373(1):112-20を参照されたい)、バイオレイヤー干渉法(例えばLad et al., (2015) J Biomol Screen 20(4): 498-507;またはConcepcion et al., Comb Chem High Throughput Screen. 2009 Sep; 12(8):791-800を参照されたい)、マイクロスケール熱泳動(MST)分析(例えばJerabek-Willemsen et al., Assay Drug Dev Technol. 2011 Aug; 9(4): 342-353を参照されたい)、または放射標識抗原結合アッセイ(RIA)などが挙げられる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、50μM以下のKD、好ましくは、10μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM以下、500nM以下、100nM以下、75nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、15nM以下、12.5nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下または100pM以下のKDで、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、(例えばELISAで測定した場合)EC50が10,000ng/ml以下、好ましくはEC50が5,000ng/ml以下、1000ng/ml以下、900ng/ml以下、800ng/ml以下、700ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、400ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、90ng/ml以下、80ng/ml以下、70ng/ml以下、60ng/ml以下、50ng/ml以下、40ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、15ng/ml以下、10ng/ml以下、7.5ng/ml以下、5ng/ml以下、2.5ng/ml以下または1ng/ml以下の結合親和性でIL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合する。ELISAは、例えばAntibody Engineering, vol. 1 (2nd Edn), Springer Protocols, Springer (2010), Part V, pp657-665の記載に従って実施することができる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11受容体またはIL-11含有複合体の受容体(例えばgp130またはIL-11Rα)への結合に重要な領域においてIL-11またはIL-11含有複合体に結合し、それによって、IL-11またはIL-11含有複合体とIL-11受容体の間の相互作用を抑制し、かつ/またはIL-11受容体を介したシグナル伝達を抑制する。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体への結合に重要な領域においてIL-11受容体に結合し、それによって、IL-11またはIL-11含有複合体とIL-11受容体の間の相互作用を抑制し、かつ/またはIL-11受容体を介したシグナル伝達を抑制する。
2つのタンパク質間の相互作用に対する所定の結合薬剤(例えば、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤)の抑制能は、例えば、該結合薬剤の存在下において、または該結合薬剤を相互作用パートナーの片方もしくは両方とインキュベートした後に、これらの相互作用パートナー間の相互作用を分析することにより測定することができる。所定の結合薬剤が2つの相互作用パートナー間の相互作用を抑制できるかどうかを判定することができる好適なアッセイとしては、競合ELISAが挙げられる。
所定の相互作用(例えばIL-11とIL-11Rαの間の相互作用、IL-11とgp130の間の相互作用、IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用、またはIL-11:IL-11Rαとgp130の間の相互作用)を抑制することができる結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)相互作用の程度と比較して、該結合薬剤の存在下において、または該結合薬剤を相互作用パートナーの片方もしくは両方とインキュベートした後に、これらの相互作用パートナー間の相互作用の程度が低下/減少していることから同定される。好適な分析は、例えば、組換え相互作用パートナーまたは相互作用パートナーを発現する細胞を使用してインビトロで実施することができる。相互作用パートナーを発現する細胞は、内因性に該相互作用パートナーを発現してもよく、細胞に導入された核酸から該相互作用パートナーを発現してもよい。このようなアッセイを行う目的で、相互作用パートナーの片方もしくは両方および/または結合薬剤を、検出可能な物質で標識するか、このような標識とともに使用して、相互作用の程度を検出および/または測定してもよい。例えば、放射性原子、色素分子、蛍光分子、またはその他の任意の方法で容易に検出することができる分子で結合薬剤を標識してもよい。検出可能な分子として好適なものとしては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、酵素基質および放射性標識が挙げられる。結合薬剤は、検出可能な標識で直接標識してもよく、間接的に標識してもよい。例えば、結合薬剤は、標識されていなくてもよく、標識された別の結合薬剤を使用して検出してもよい。あるいは、第2の結合薬剤をビオチンに結合してもよく、標識されたストレプトアビジンを該ビオチンに結合させて、第1の結合薬剤を間接的に標識してもよい。
また、2つの結合パートナー間の相互作用に対する結合薬剤の抑制能は、このような相互作用の下流の機能の帰結(例えばIL-11媒介性シグナル伝達)を分析することによって同定することもできる。例えば、IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用またはIL-11:IL-11Rαとgp130の間の相互作用の下流の機能の帰結としては、例えば、IL-11媒介性プロセス、または例えば、コラーゲンもしくはIL-11の遺伝子発現/タンパク質発現が含まれていてもよい。
IL-11またはIL-11含有複合体とIL-11受容体の間の相互作用の抑制は、例えばCurtis et al. Blood, 1997, 90(11)およびKarpovich et al. Mol. Hum. Reprod. 2003 9(2): 75-80に記載されているような、3H-チミジン取り込みアッセイ、および/またはBa/F3細胞増殖アッセイを使用して分析することもできる。Ba/F3細胞は、IL-11Rαとgp130を共発現する。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rαの間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11とIL-11Rαの間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rαの間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11とIL-11Rαの間の相互作用を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11とgp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11とgp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下におけるIL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用を抑制することができる。
IL-11またはIL-11受容体の発現を低減することができる薬剤
本発明の態様において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減できる薬剤であってもよい。
前記発現は、遺伝子発現であってもよく、タンパク質発現であってもよく、本明細書に記載の方法で測定してもよく、当業者によく知られている当技術分野の方法で測定してもよい。前記発現は、対象における細胞/組織/器官/器官系による発現であってもよい。
好適な薬剤はどのような種類のものであってもよいが、いくつかの実施形態において、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減することができる薬剤は、小分子であってもよく、オリゴヌクレオチドであってもよい。
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減することができる薬剤は、例えば、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードする遺伝子の転写の抑制、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの転写後プロセシングの抑制、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの安定性の低減、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの分解の促進、IL-11ポリペプチド、IL-11Rαポリペプチドもしくはgp130ポリペプチドの翻訳後プロセシングの抑制、IL-11ポリペプチド、IL-11Rαポリペプチドもしくはgp130ポリペプチドの安定性の低減、またはIL-11ポリペプチド、IL-11Rαポリペプチドもしくはgp130ポリペプチドの分解の促進を介して、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減してもよい。
Takiら(Clin Exp Immunol (1998) Apr; 112(1): 133-138)は、インドメタシン、デキサメタゾンまたはインターフェロンγ(IFNγ)で処理したリウマチ滑膜細胞においてIL-11の発現が低下することを報告している。
さらに本発明は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止/低減するための、アンチセンス核酸の使用を想定している。いくつかの実施形態において、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止または低減することができる薬剤は、RNA干渉(RNAi)によって該発現を低減してもよい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、アンチセンスRNAや低分子干渉RNAなどの抑制性核酸であってもよく、shRNAまたはsiRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、前記抑制性核酸は、ベクターに組み込まれて提供される。例えば、いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上に対するshRNAをコードするレンチウイルスベクターであってもよい。
オリゴヌクレオチド分子(特にRNA)を使用して遺伝子の発現を調節してもよい。このようなオリゴヌクレオチド分子としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド;低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAを標的とした分解;転写後遺伝子サイレンシング(PTG);マイクロRNA(miRNA)を使用した、発生過程で調節される配列に特異的なmRNA翻訳の抑制;および標的化された転写遺伝子サイレンシングが挙げられる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的オリゴヌクレオチド(例えばmRNA)を標的とし、相補配列結合を介してこれに結合するオリゴヌクレオチド(好ましくは一本鎖オリゴヌクレオチド)である。標的オリゴヌクレオチドがmRNAである場合、mRNAにアンチセンスオリゴヌクレオチドが結合することによって、mRNAの翻訳が阻害されて、遺伝子産物の発現が阻害される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ゲノム核酸のセンス鎖に結合して標的ヌクレオチド配列の転写を抑制するように設計してもよい。
公知のIL-11、IL-11Rαまたはgp130の核酸配列(例えば、アクセッション番号:BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)でGenBankから入手可能な公知のmRNA配列)を考慮に入れて、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制またはサイレンシングするオリゴヌクレオチドを設計してもよい。
このようなオリゴヌクレオチドはどのような長さであってもよいが、短いことが好ましく、例えば100ヌクレオチド長未満、例えば10~40ヌクレオチド長、または20~50ヌクレオチド長であってもよく、標的オリゴヌクレオチド(例えばIL-11 mRNA、IL-11Rα mRNAまたはgp130 mRNA)中の対応する長さのヌクレオチド配列と、完全な相補性または実質的な相補性(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相補性)を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよい。ヌクレオチド配列の相補領域はどのような長さであってもよいが、少なくとも5ヌクレオチド長であることが好ましく、50ヌクレオチド長以下であってもよく、例えば、6ヌクレオチド長、7ヌクレオチド長、8ヌクレオチド長、9ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長、11ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、13ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、41ヌクレオチド長、42ヌクレオチド長、43ヌクレオチド長、44ヌクレオチド長、45ヌクレオチド長、46ヌクレオチド長、47ヌクレオチド長、48ヌクレオチド長、49ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長のいずれであってもよい。
IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制することによって、細胞/組織/器官/器官系/対象により発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量が低下することが好ましい。例えば、適切な核酸の投与により所定の細胞におけるIL-11、IL-11Rαまたはgp130を抑制することによって、該細胞により発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量が非処理細胞よりも低下する。抑制は部分的であってもよい。抑制の程度は少なくとも50%であることが好ましく、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%のいずれかであることがより好ましい。抑制の程度が90%~100%である場合、発現または機能が「サイレンシング」されていると考えられる。
ヘテロクロマチン複合体のターゲティングおよび特定の染色体座位のエピジェネティックな遺伝子サイレンシングにおいて、RNAi機構およびsmall RNAが果たす役割が実証されている。RNA干渉(RNAi)としても知られている二本鎖RNA(dsRNA)依存性転写後サイレンシングは、dsRNA複合体が、特定の遺伝子の相同部分を標的として短時間でサイレンシングすることができる現象である。RNAiは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するシグナルとして作用する。20ntのsiRNAであれば、通常、遺伝子特異的なサイレンシングを誘導するのに十分に長く、宿主応答を回避するのに十分に短い。標的遺伝子産物の発現の低下は、何種類かのsiRNA分子を使用することによって、90%にも達するサイレンシングを誘導することができる。RNAiを用いた治療薬は、様々な適応症を対象に第I相、第II相および第III相の臨床試験まで進んでいる(Nature 2009 Jan 22; 457(7228):426-433)。
当技術分野において、上述のようなRNA配列は、その由来に応じて「短鎖干渉RNA」もしくは「低分子干渉RNA(siRNA)」または「マイクロRNA(miRNA)」と呼ばれる。これらのRNA配列を使用して、相補的RNAに結合させてmRNAの排除を誘導すること(RNAi)によって、遺伝子発現をダウンレギュレートしてもよく、あるいはmRNAからタンパク質への翻訳を阻害することによって遺伝子発現をダウンレギュレートしてもよい。siRNAは、長い二本鎖RNAがプロセシングされることによって得られ、天然のsiRNAは、通常、外因性である。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、内因性にコードされた小さな非コードRNAであり、短いヘアピン構造がプロセシングされることによって得られる。siRNAおよびmiRNAはいずれも、RNAを切断することなく、部分的に相補的な標的配列を有するmRNAの翻訳を抑制することができ、完全な相補配列を有するmRNAを分解することができる。
siRNAリガンドは、通常、二本鎖であり、このRNAによる標的遺伝子の機能のダウンレギュレーションの有効性を最適化するためには、siRNAによる標的mRNAの認識を仲介するRISC複合体によってsiRNAが正確に認識されるように十分に長く、かつ宿主応答を低く抑えることができるように十分に短くなるように、siRNA分子の長さを選択することが好ましい。
miRNAリガンドは、通常、一本鎖であり、ヘアピン構造を形成することが可能な部分相補領域を有している。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列はmiRNAよりも長く、miRNA配列と、これとほぼ相補的な逆向きの配列とを含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写されると、miRNA配列とその逆相補配列からなる塩基対から、部分的に二本鎖のRNAセグメントが形成される。マイクロRNA配列の設計は、John et al, PLoS Biology, 11(2), 1862-1879, 2004において報告されている。
siRNAまたはmiRNAの効果を模倣した前記RNAリガンドは、通常、10~40リボヌクレオチド長であり(またはその合成類似体であり)、17~30リボヌクレオチド長であることがより好ましく、19~25リボヌクレオチド長であることがより好ましく、21~23リボヌクレオチド長であることが最も好ましい。二本鎖siRNAを使用した本発明の実施形態のいくつかにおいて、二本鎖siRNA分子は対称な3’末端オーバーハングを有していてもよく、この3’末端オーバーハングは、例えば1個または2個の(リボ)ヌクレオチドで構成されていてもよく、通常、3’末端UUまたはdTdTオーバーハングである。当業者であれば、本明細書の開示に基づき、例えばAmbion siRNA finderなどのライブラリーを使用して、適切なsiRNA配列および適切なmiRNA配列を容易に設計することができる。siRNA配列およびmiRNA配列は、合成的に作製し、細胞外から添加することによって遺伝子のダウンレギュレーションを誘導することができ、あるいは発現系(例えばベクター)を使用して作製することもできる。好ましい一実施形態において、siRNAは合成的に作製される。
長鎖の二本鎖RNAを細胞内でプロセシングしてsiRNAを作製してもよい(例えばMyers (2003) Nature Biotechnology 21:324-328を参照されたい)。長鎖dsRNA分子は、対称な3’末端または5’末端オーバーハングを有していてもよく、この3’末端または5’末端オーバーハングは、例えば1個または2個の(リボ)ヌクレオチドで構成されていてもよく、あるいは長鎖dsRNA分子は平滑末端を有していてもよい。長鎖dsRNA分子は、25ヌクレオチド長以上であってもよい。長鎖dsRNA分子は、25~30ヌクレオチド長であることが好ましい。長鎖dsRNA分子は、25~27ヌクレオチド長であることがより好ましい。長鎖dsRNA分子は、27ヌクレオチド長であることが最も好ましい。30ヌクレオチド長以上のdsRNAは、pDECAPベクターを使用して発現させてもよい(Shinagawa et al., Genes and Dev., 17, 1340-5, 2003)。
別の方法では、ショートヘアピン構造のRNA分子(shRNA)を細胞において発現させる。shRNAは合成siRNAよりも安定である。shRNAは、短いループ配列で連結された短い逆方向反復配列からなる。一方の逆方向反復配列は、標的遺伝子に相補的である。細胞内においてshRNAは、DICERによるプロセシングを受けてsiRNAになり、このsiRNAが標的遺伝子のmRNAを分解して、その発現を抑制する。好ましい一実施形態において、shRNAは、ベクターからの転写によって内因性に(細胞内で)生成される。shRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーター(ヒトH1プロモーターやヒト7SKプロモーターなど)またはRNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下でshRNA配列をコードするベクターで細胞をトランスフェクトすることによって細胞内で生成させてもよい。あるいは、shRNAは、ベクターからの転写によって外因性に(インビトロで)合成してもよい。次いで得られたshRNAを細胞内に直接導入してもよい。shRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含むことが好ましい。shRNA配列の長さは40~100塩基長であることが好ましく、40~70塩基長であることがより好ましい。ヘアピン構造のステム部分の長さは19~30塩基対であることが好ましい。ステム部分は、ヘアピン構造を安定化させるためにG-U対を含んでいてもよい。
siRNA分子、長鎖dsRNA分子またはmiRNA分子は、(好ましくはベクター内に組み込まれた)核酸配列の転写による組換え技術によって作製してもよい。siRNA分子、長鎖dsRNA分子またはmiRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含むことが好ましい。
一実施形態において、siRNA、長鎖dsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって内因性に(細胞内で)生成される。ベクターは、当技術分野で公知の方法であればどのような方法で細胞に導入してもよい。これらのRNA配列の発現は、必要に応じて、組織に特異的な(例えば心臓、肝臓または腎臓に特異的な)プロモーターを使用して調節することができる。さらなる一実施形態において、siRNA、長鎖dsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって外因性に(インビトロで)生成される。
好適なベクターは、IL-11、IL-11Rαまたはgp130を抑制することができるオリゴヌクレオチド薬を発現するように構成されたオリゴヌクレオチドベクターであってもよい。このようなベクターは、ウイルスベクターであってもよく、プラスミドベクターであってもよい。オリゴヌクレオチド治療薬は、ウイルスベクターのゲノム中に組み込まれてもよく、発現を誘導する調節配列(例えばプロモーター)に作動可能に連結されていてもよい。「作動可能に連結する」とは、ヌクレオチド配列が調節配列の影響下または制御下で発現されるように、選択されたヌクレオチド配列と調節ヌクレオチド配列が共有結合で連結されている状態を含んでいてもよい。したがって、調節配列が、選択されたヌクレオチド配列の全体またはその一部を構成するヌクレオチド配列の転写を誘導することができる場合、該調節配列は、選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
プロモーターによって発現が誘導されるsiRNA配列をコードするウイルスベクターは、当技術分野で公知であり、オリゴヌクレオチド治療薬を長期にわたって発現できるという利点がある。ウイルスベクターとしては、レンチウイルス(Nature 2009 Jan 22; 457(7228):426-433)、アデノウイルス(Shen et al., FEBS Lett 2003 Mar 27;539(1-3)111-4)およびレトロウイルス(Barton and Medzhitov PNAS November 12, 2002 vol.99, no.23 14943-14945)が挙げられる。
別の実施形態において、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制が必要とされる部位へのオリゴヌクレオチド治療薬の送達を補助するように構成された担体を使用してもよい。このような担体としては、一般に、オリゴヌクレオチドと複合体化された正電荷を持つ担体(例えば、細胞透過性カチオン性ペプチド、カチオン性ポリマー、カチオン性デンドリマー、およびカチオン性脂質);オリゴヌクレオチドに結合された小分子(例えば、コレステロール、胆汁酸および脂質)、ポリマー、抗体およびRNA;または、ナノ粒子製剤中にカプセル化されたオリゴヌクレオチド(Wang et al., AAPS J. 2010 Dec; 12(4): 492-503)が挙げられる。
一実施形態において、ベクターは、核酸配列がRNAとして発現された場合に、センス鎖部分とアンチセンス鎖部分とが会合して二本鎖RNAが形成されるように、センス鎖方向とアンチセンス鎖方向の両方に核酸配列を含んでいてもよい。
あるいは、siRNA分子は、当技術分野で公知の標準的な固相合成法または液相合成法を使用して合成してもよい。ヌクレオチド間の結合は、リン酸ジエステル結合またはその他の結合であってもよく、例えば、P(O)S(チオエート);P(S)S(ジチオエート);P(O)NR’2;P(O)R’;P(O)OR6;CO;またはCONR’2(式中、RはH(または塩)またはアルキル(C1~12)であり、R6はアルキル(C1~9)である)の式で表される連結基が、-O-または-S-を介して隣接するヌクレオチドに連結したものが挙げられる。
天然の塩基に加えて、修飾ヌクレオチド塩基を使用することができ、修飾ヌクレオチド塩基は、これらを含むsiRNA分子に有利な特性を付与してもよい。
例えば、修飾塩基は、siRNA分子の安定性を向上させ、それによって、サイレンシングに必要とされるsiRNA分子の量を低減してもよい。修飾塩基を付加することによって、未修飾のsiRNAよりも安定性が向上または低下したsiRNA分子を作製してもよい。
「修飾ヌクレオチド塩基」は、修飾塩基および/または修飾糖が共有結合されたヌクレオチドを包含する。例えば、修飾ヌクレオチドとしては、3’位のヒドロキシル基および5’位のリン酸基以外の低分子量有機基が共有結合された糖を有するヌクレオチドが挙げられる。したがって、修飾ヌクレオチドとして、さらに、2’-O-メチルリボース、2’-O-アルキルリボース、2’-O-アリルリボース、2’-S-アルキルリボース、2’-S-アリルリボース、2’-フルオロリボース、2’-ハロリボース、2’-アジドリボースなどの2’位置換糖;炭素環式糖類似体;α-アノマー糖;アラビノース、キシロース、リキソースなどのエピマー糖;ピラノース糖、フラノース糖、およびセドヘプツロースが挙げられる。
修飾ヌクレオチドは当技術分野で公知であり、例えば、アルキル化プリン、アルキル化ピリミジン、アシル化プリン、アシル化ピリミジン、その他の複素環が挙げられる。このような部類のピリミジンおよびプリンは当技術分野で公知であり、例えば、プソイドイソシトシン、N4,N4-エタノシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデニン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、-D-マンノシルケウオシン、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、プソイドウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、ケウオシン、2-チオシトシン、5-プロピルウラシル、5-プロピルシトシン、5-エチルウラシル、5-エチルシトシン、5-ブチルウラシル、5-ペンチルウラシル、5-ペンチルシトシン、2,6-ジアミノプリン、メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニンおよび1-メチルシトシンが挙げられる。
RNAiを使用して、C.elegans、ショウジョウバエ、植物および哺乳動物の遺伝子をサイレンシングする方法は、当技術分野で公知である(Fire A, et al., 1998 Nature 391:806-811; Fire, A. Trends Genet. 15, 358-363 (1999); Sharp, P. A. RNA interference 2001. Genes Dev. 15, 485-490 (2001); Hammond, S. M., et al., Nature Rev. Genet. 2, 110-1119 (2001); Tuschl, T. Chem. Biochem. 2, 239-245 (2001); Hamilton, A. et al., Science 286, 950-952 (1999); Hammond, S. M., et al., Nature 404, 293-296 (2000); Zamore, P. D., et al., Cell 101, 25-33 (2000); Bernstein, E., et al., Nature 409, 363-366 (2001); Elbashir, S. M., et al., Genes Dev. 15, 188-200 (2001); WO0129058; WO9932619およびElbashir S M, et al., 2001 Nature 411:494-498)。
したがって、本発明は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130を発現する哺乳動物細胞(例えばヒト細胞)に適切に導入または発現された場合に、RNAi法によってIL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制することができる核酸を提供する。
IL-11、IL-11Rαまたはgp130(例えば、アクセッション番号:BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)でGenBankから入手可能な公知のmRNA配列)に対するオリゴヌクレオチドの核酸配列は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制またはサイレンシングするように設計してもよい。
前記核酸は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のmRNAの一部と実質的な配列同一性を有していてもよく、例えば、GenBankアクセッション番号NM_000641.3 GI:391353405(IL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(IL-11Rα)もしくはNM_001190981.1 GI:300244534(gp130)で示される配列またはこれらのmRNAに相補的な配列などの一部と実質的な配列同一性を有していてもよい。
前記核酸は二本鎖siRNAであってもよい。(当業者であれば十分に理解できるように、siRNA分子は3’末端に短いDNA配列をさらに含んでいてもよく、これについては後で詳しく説明する。)
あるいは、前記核酸はDNA(通常二本鎖DNA)であってもよく、このDNAが哺乳動物細胞内で転写されると、スペーサーを介して連結された2つの相補的部分を有するRNAが得られ、このRNAは、2つの相補的部分が互いにハイブリダイズした場合にヘアピン構造を取る。哺乳動物細胞において、このヘアピン構造部分は、DICERと呼ばれる酵素によってRNA分子から切断されて、2本の異なるRNA分子がハイブリダイズされた二本鎖RNAを得ることができる。
好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記核酸は、通常、配列番号4~7(IL-11)のいずれかで示す配列、または配列番号8~11(IL-11Rα)のいずれかで示す配列を標的とする。
mRNA転写産物の一本鎖領域(すなわち自己ハイブリダイズしていない領域)のみがRNAiの標的として適していると予想される。したがって、IL-11またはIL-11RαのmRNA転写産物のうち、配列番号4~7および8~11のいずれかによって示される配列に非常に類似しているその他の配列もRNAiの標的として適していると考えられる。このような標的配列の長さは、17~23ヌクレオチド長であることが好ましく、配列番号4~7および8~11のいずれかと(一方の末端で)少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個もしくは18個のヌクレオチドまたは19個のヌクレオチドすべてがオーバーラップしていることが好ましい。
したがって、本発明は、IL-11またはIL-11Rαを発現する哺乳動物細胞に適切に導入または発現された場合に、RNAi法によってIL-11またはIL-11Rαの発現を抑制することができる核酸を提供し、この核酸は、通常、配列番号4~7および8~11のいずれかで示される配列を標的とする。
「通常の標的とする」とは、前記核酸が、配列番号4~7および8~11のいずれかとオーバーラップする配列を標的としてもよいことを指す。具体的には、前記核酸は、配列番号4~7および8~11のいずれかで示される配列よりもわずかに長いか、わずかに短いことを除いては、これらの配列と同一のヒトIL-11 mRNA配列またはヒトIL-11Rα mRNA配列(好ましくは17~23ヌクレオチド長)を標的としてもよい。
本発明の核酸と標的配列の間で完全な同一性/相補性があることが好ましいが、これは必須ではないと予想される。したがって、本発明の核酸は、IL-11 mRNAまたはIL-11Rα mRNAと比較して単一塩基ミスマッチを含んでいてもよい。しかしながら、単一塩基ミスマッチであっても、その存在によって効率の低下が予想されるため、ミスマッチが存在しないことが好ましい。3’末端オーバーハングが存在する場合、3’末端オーバーハングはミスマッチの数として考慮に入れなくてもよい。
「相補性」とは、通常見られるような、天然のリボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドからなる核酸同士の塩基対合に限定されず、非天然ヌクレオチドを含む本発明の核酸とmRNAの間の塩基対合も包含する。
一実施形態において、前記核酸(本明細書において二本鎖siRNAと呼ぶ)には、配列番号12~15に示す二本鎖RNA配列が含まれる。別の一実施形態において、前記核酸(本明細書において二本鎖siRNAと呼ぶ)には、配列番号16~19に示す二本鎖RNA配列が含まれる。
しかしながら、同じIL-11 mRNA領域またはIL-11Rα mRNA領域を標的とするわずかに短いか、わずかに長い配列でも、効果的であると予想される。具体的には、17~23bpの長さの二本鎖配列でも効果的であると予想される。
前記二本鎖RNAを構成する各鎖は2塩基の短い3’末端オーバーハングを有していてもよく、このオーバーハングはDNAであってもよく、RNAであってもよい。3’末端DNAオーバーハングは、3’末端RNAオーバーハングを使用した場合と比べてsiRNA活性に対する効果が見られないが、核酸鎖を化学合成する際のコストが低くなる(Elbashirら,2001c)。この理由から、2塩基のDNAが好ましい場合がある。
両3’末端に2塩基のオーバーハングが存在する場合、これらのオーバーハングは互いに対称であってもよいが、対称であることが必須ではない。実際、センス鎖(上の鎖)の3’末端オーバーハングは、mRNAの認識と分解に関与しないため、RNAi活性には関連しない(Elbashirら,2001a,2001b,2001c)。
ショウジョウバエでのRNAi実験では、アンチセンス鎖の3’末端オーバーハングがmRNAの認識および標的指向性に関与している可能性が示されているが(Elbashirら,2001c)、哺乳動物細胞では、3’末端オーバーハングはsiRNAのRNAi活性に必要だとは考えられていない。したがって、3’末端オーバーハングが誤ったアニーリングを起こしても、哺乳動物細胞では影響はほとんどないと考えられる(Elbashirら,2001c;Czaudernaら,2003)。
したがって、siRNAのアンチセンス鎖においては、どのような2塩基オーバーハングを使用してもよい。しかしながら、2塩基のオーバーハングは-UUまたは-UG(オーバーハングがDNAである場合は-TTまたは-TG)であることが好ましく、-UU(または-TT)であることがより好ましい。-UU(または-TT)からなる2塩基オーバーハングが最も効果的であり、RNAポリメラーゼIIIの転写終結シグナル(転写終結シグナルはTTTTTである)と一致する(すなわち転写終結シグナルの一部を構成することができる)。したがって、この2塩基が最も好ましい。AA、CCおよびGGの2塩基を使用してもよいが、それほど効果的ではなく、よってあまり好ましくない。
さらに、siRNAは3’末端オーバーハングを全く含んでいなくてもよい。
さらに、本発明は、前述の二本鎖核酸の一方を構成鎖とする一本鎖核酸(本明細書において一本鎖siRNAと呼ぶ)を提供し、この一本鎖siRNAは、3’末端オーバーハングを有していることが好ましいが、3’末端オーバーハングを有していなくてもよい。さらに、本発明は、このような一本鎖核酸のペアを含むキットを提供し、これらの一本鎖核酸はインビトロで互いにハイブリダイズして前述の二本鎖siRNAを形成することができ、この二本鎖siRNAは次いで細胞に導入されてもよい。
さらに、本発明は、哺乳動物細胞において、2つの相補的部分が自己ハイブリダイズして二本鎖モチーフを形成することができるRNA(本明細書においてshRNAとも呼ぶ)に転写されるDNAを提供し、形成される二本鎖モチーフとしては、例えば、配列番号12~15および16~19からなる群から選択される配列、またはこれらの配列のいずれかにおいて単一の塩基対が置換されている配列が挙げられる。
前記相補的部分は、通常、スペーサーによって連結され、このスペーサーは、これら2つの相補的部分が互いにハイブリダイズすることが可能となるような適切な長さと配列を有する。2つの相補的部分(すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖)は、5’末端と3’末端で連結されていてもよく、どちらが5’末端側であってもよい。前記スペーサーは、通常、約4~12ヌクレオチド長、好ましくは4~9ヌクレオチド長、より好ましくは6~9ヌクレオチド長の短い配列であってもよい。
前記スペーサーの5’末端(上流の相補的部分の3’末端の直後)は、-UU-または-UG-の2塩基からなることが好ましく、ここでも、-UU-がより好ましい(しかし、ここでも、これらの特定の2塩基の使用は必須ではない)。OligoEngine社(米国ワシントン州シアトル)のpSuperシステムでの使用に推奨される好適なスペーサーはUUCAAGAGAである。このスペーサーやその他のスペーサーを用いた場合、スペーサーの両末端は互いにハイブリダイズされるため、例えば、配列番号12~15または16~19に示される配列そのものよりも、少数の塩基対(例えば1塩基対または2塩基対)だけ長い二本鎖モチーフが得られる。
同様に、転写されたRNAは、下流の相補的部分に由来する3’末端オーバーハングを含むことが好ましい。ここでも、このオーバーハングとしては-UUまたは-UGが好ましく、-UUがより好ましい。
前述したように、このようなshRNA分子は哺乳動物細胞内でDICER酵素によって切断され、ハイブリダイズされたdsRNAを構成する各一本鎖の一方またはその両方が3’末端オーバーハングを含む二本鎖siRNAを形成してもよい。
本発明の核酸を合成するための技術は当技術分野においてよく知られていることは言うまでもない。
当業者であれば、よく知られている技術および市販の材料を使用して、本発明のDNAに適した転写ベクターを容易に構築することができるであろう。具体的には、本発明のDNAには、プロモーターや転写終結配列などの制御配列が連結される。
OligoEngine社製(米国ワシントン州シアトル)の市販品であるpSuperシステムおよびpSuperiorシステムが特に好適である。これらのシステムでは、ポリメラーゼIIIプロモーター(H1)とT5転写終結配列を使用しており、T5転写終結配列は転写産物の3’末端に2個のU残基を付加する(この転写産物がDICERでプロセシングされることによって、一方のRNA鎖に3’末端UUオーバーハングが付加されたsiRNAが得られる)。
別の好適なシステムは、Shinら(RNA, 2009 May; 15(5): 898-910)に記載されており、このシステムでは、別のポリメラーゼIIIプロモーター(U6)が使用されている。
本発明の二本鎖siRNAは、後述するような公知の技術を使用して、インビトロまたはインビボにおいて哺乳動物細胞に導入することにより、IL-11またはIL-11受容体の発現を抑制してもよい。
同様に、本発明のDNAを含む転写ベクターは、後述するような公知の技術を使用してインビトロまたはインビボにおいて腫瘍細胞に導入し、RNAを一時的または安定に発現させることにより、IL-11またはIL-11受容体の発現を抑制してもよい。
したがって、本発明はさらに、哺乳動物(例えばヒト)細胞においてIL-11またはIL-11受容体の発現を抑制する方法であって、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを前記細胞に投与することを含む方法を提供する。
同様に、本発明はさらに、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を治療する方法であって、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを対象に投与することを含む方法を提供する。
さらに、本発明は、治療方法、好ましくは、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を治療する方法において使用するための、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターを提供する。
さらに、本発明は、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の治療用医薬品の調製における、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターの使用を提供する。
さらに、本発明は、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターと、1種以上の薬学的に許容される担体との混合物を含む組成物を提供する。好適な担体としては、細胞膜透過性を向上させることができる親油性担体または小胞が挙げられる。
本発明の二本鎖siRNAおよびDNAベクターの投与に適した材料および方法は当技術分野でよく知られており、RNAi技術は様々な可能性を秘めていることから、改良された方法が開発中である。
核酸を哺乳動物細胞に導入するにあたり、通常、様々な技術を利用することができる。使用する技術は、核酸をインビトロで培養細胞に導入するのか、それともインビボで患者の細胞に導入するのかによって選択される。インビトロにおける哺乳動物細胞への核酸の導入に適した技術としては、リポソームの使用、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、細胞融合法、DEAEデキストラン法およびリン酸カルシウム沈殿法が挙げられる。インビボにおける遺伝子導入技術としては、ウイルスベクター(通常、レトロウイルスベクター)を使用したトランスフェクション、ウイルス外被タンパク質-リポソーム複合体を使用したトランスフェクション(Dzau et al. (2003) Trends in Biotechnology 11, 205-210)が挙げられる。
具体的には、インビトロまたはインビボにおいて本発明の核酸を細胞に投与するのに好適な技術は、以下の文献に記載されている。
総説:Borkhardt, A. 2002. Blocking oncogenes in malignant cells by RNA interference--new hope for a highly specific cancer treatment? Cancer Cell. 2:167-8. Hannon, G.J. 2002. RNA interference. Nature. 418:244-51. McManus, M.T., and P.A. Sharp. 2002. Gene silencing in mammals by small interfering RNAs. Nat Rev Genet. 3:737-47. Scherr, M., M.A. Morgan, and M. Eder. 2003b. Gene silencing mediated by small interfering RNAs in mammalian cells. Curr Med Chem. 10:245-56. Shuey, D.J., D.E. McCallus, and T. Giordano. 2002. RNAi: gene-silencing in therapeutic intervention. Drug Discov Today. 7:1040-6.
リポソームを使用した全身送達:Lewis, D.L., J.E. Hagstrom, A.G. Loomis, J.A. Wolff, and H. Herweijer. 2002. Efficient delivery of siRNA for inhibition of gene expression in postnatal mice. Nat Genet. 32:107-8. Paul, C.P., P.D. Good, I. Winer, and D.R. Engelke. 2002. Effective expression of small interfering RNA in human cells. Nat Biotechnol. 20:505-8. Song, E., S.K. Lee, J. Wang, N. Ince, N. Ouyang, J. Min, J. Chen, P. Shankar, and J. Lieberman. 2003. RNA interference targeting Fas protects mice from fulminant hepatitis. Nat Med. 9:347-51. Sorensen, D.R., M. Leirdal, and M. Sioud. 2003. Gene silencing by systemic delivery of synthetic siRNAs in adult mice. J Mol Biol. 327:761-6.
ウイルスを使用した移入:Abbas-Terki, T., W. Blanco-Bose, N. Deglon, W. Pralong, and P. Aebischer. 2002. Lentiviral-mediated RNA interference. Hum Gene Ther. 13:2197-201. Barton, G.M., and R. Medzhitov. 2002. Retroviral delivery of small interfering RNA into primary cells. Proc Natl Acad Sci U S A. 99:14943-5. Devroe, E., and P.A. Silver. 2002. Retrovirus-delivered siRNA. BMC Biotechnol. 2:15. Lori, F., P. Guallini, L. Galluzzi, and J. Lisziewicz. 2002. Gene therapy approaches to HIV infection. Am J Pharmacogenomics. 2:245-52. Matta, H., B. Hozayev, R. Tomar, P. Chugh, and P.M. Chaudhary. 2003. Use of lentiviral vectors for delivery of small interfering RNA. Cancer Biol Ther. 2:206-10. Qin, X.F., D.S. An, I.S. Chen, and D. Baltimore. 2003. Inhibiting HIV-1 infection in human T cells by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA against CCR5. Proc Natl Acad Sci U S A. 100:183-8. Scherr, M., K. Battmer, A. Ganser, and M. Eder. 2003a. Modulation of gene expression by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA. Cell Cycle. 2:251-7. Shen, C., A.K. Buck, X. Liu, M. Winkler, and S.N. Reske. 2003. Gene silencing by adenovirus-delivered siRNA. FEBS Lett. 539:111-4.
ペプチドの送達:Morris, M.C., L. Chaloin, F. Heitz, and G. Divita. 2000. Translocating peptides and proteins and their use for gene delivery. Curr Opin Biotechnol. 11:461-6. Simeoni, F., M.C. Morris, F. Heitz, and G. Divita. 2003. Insight into the mechanism of the peptide-based gene delivery system MPG: implications for delivery of siRNA into mammalian cells. Nucleic Acids Res. 31:2717-24.
標的細胞へのsiRNAの送達に適していると考えられる他の技術としては、米国特許第6,649,192(B)号明細書および米国特許第5,843,509(B)号明細書に記載されているような、ナノ粒子またはナノカプセルを使用した方法が挙げられる。
IL-11媒介性シグナル伝達の抑制
本発明の実施形態において、IL-11の作用を抑制することができる薬剤は、以下の機能特性のうちの1つ以上を有していてもよい。
・IL-11媒介性シグナル伝達の抑制
・IL-11Rα:gp130受容体複合体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達の抑制
・gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達(すなわちIL-11のトランスシグナル伝達)の抑制
・IL-11媒介性プロセスの抑制
・IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子発現/タンパク質発現の抑制
これらの特性は、適切なアッセイにおいて関連因子を分析することによって測定することができ、適切なコントールと前記薬剤の性能を比較することを含んでいてもよい。当業者であれば、所定のアッセイにおいて適切なコントロール条件を決定することができる。
IL-11媒介性シグナル伝達および/またはIL-11媒介性プロセスは、IL-11断片を介したシグナル伝達、およびIL-11またはその断片を含むポリペプチド複合体を介したシグナル伝達を含む。IL-11媒介性シグナル伝達は、ヒトIL-11および/またはマウスIL-11を介したシグナル伝達であってもよい。IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11またはIL-11含有複合体が結合する受容体に、IL-11またはIL-11含有複合体が結合することによって起こるシグナル伝達であってもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の生物学的活性を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む受容体(例えばIL-11Rα:gp130)を介したシグナル伝達により活性化される1つ以上のシグナル伝達経路に対するアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む1つ以上の免疫受容体複合体(例えばIL-11Rα:gp130)を介したシグナル伝達を抑制することができる。本発明の様々な態様において、本明細書で提供する薬剤は、IL-11媒介性のシスシグナル伝達および/またはトランスシグナル伝達を抑制することができる。本発明の様々な態様によるいくつかの実施形態において、本明細書で提供する薬剤は、IL-11媒介性シスシグナル伝達を抑制することができる。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11媒介性シグナル伝達の量と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11媒介性シグナル伝達を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11媒介性シグナル伝達の量と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11媒介性シグナル伝達を低減することができる。
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11Rα:gp130受容体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達であってもよい。このようなシグナル伝達は、例えばIL-11Rαおよびgp130を発現する細胞をIL-11で処理するか、またはIL-11Rαとgp130を発現する細胞においてIL-11の産生を刺激することによって分析することができる。
本発明の薬剤によるIL-11媒介性シグナル伝達の抑制のIC50は、例えば、IL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞を、ヒトIL-11および本発明の薬剤の存在下で培養し、DNAへの3H-チミジンの取り込みを測定することによって測定してもよい。いくつかの実施形態において、このようなアッセイにおける本発明の薬剤のIC50値は、10μg/ml以下であってもよく、好ましくは、5μg/ml以下、4μg/ml以下、3.5μg/ml以下、3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.9μg/ml以下、0.8μg/ml以下、0.7μg/ml以下、0.6μg/ml以下または0.5μg/ml以下である。
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達は、gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達であってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11:IL-11Rα複合体は可溶性であってもよく、例えばIL-11Rαの細胞外ドメインとIL-11の複合体であってもよく、可溶性IL-11Rαアイソフォーム/断片とIL-11の複合体であってもよい。いくつかの実施形態において、可溶性IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶性(分泌型)アイソフォームであるか、または膜結合型IL-11Rαの細胞外ドメインがタンパク質分解されることによって遊離した産物である。
いくつかの実施形態において、IL-11:IL-11Rα複合体は、膜結合型であってもよく、例えば膜結合型IL-11RαとIL-11からなる複合体であってもよい。gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達は、IL-11:IL-11Rα複合体でgp130発現細胞を処理することによって分析することができ、例えば、ペプチドリンカーを介してIL-11Rαの細胞外ドメインに連結されたIL-11を含む組換え融合タンパク質(例えばhyper IL-11)でgp130発現細胞を処理することによって分析することができる。hyper IL-11は、IL-11Rα(ドメイン1~3を構成する1~317番目のアミノ酸残基;UniProtKB:Q14626)の断片と、IL-11(UniProtKB:P20809の22~199番目のアミノ酸残基)と、20アミノ酸長のリンカー(配列番号20)を使用して構築した。hyper IL-11のアミノ酸配列を配列番号21に示す。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達を抑制可能であってもよく、IL-11Rα:gp130受容体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達を抑制することもできる。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11媒介性プロセスを抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を抑制可能であってもよい。遺伝子および/またはタンパク質の発現は、本明細書に記載の方法または当技術分野において当業者によく知られている方法により測定することができる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現量と比較して、その100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現量と比較して、その1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を抑制することができる。
腎障害の治療/予防
本発明は、例えば、本明細書で述べるような、腎障害および腎障害に関連する障害、疾患または状態の治療/予防のための方法ならびに発明品(薬剤および組成物)を提供する。
治療は、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制(すなわちIL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用)により達成される。すなわち、本発明は、例えば、細胞、組織/器官/器官系、対象などにおいて、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制を介して、腎障害ならびに腎障害に関連する障害、疾患および状態を治療/予防するものである。いくつかの実施形態において、本開示によるIL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、腎臓の細胞(例えば尿細管上皮細胞)におけるIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することを含む。
腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の治療方法または予防方法において使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を提供する。
また、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の治療方法または予防方法において使用するための医薬品の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の使用を提供する。
さらに、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を治療または予防する方法であって、治療を必要とする対象に、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、疾患/状態において、腎障害に関連する病理を治療/予防するものである。すなわち、本発明は、腎障害が病理学的に関与する疾患/状態を治療/予防するものである。腎障害に関連する病理は、本明細書において説明されている。腎障害に関連する病理として、より具体的には、尿細管上皮細胞(近位尿細管上皮細胞もしくは遠位尿細管上皮細胞またはこれらの両方)の損傷が挙げられる。
さらに、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、腎障害を回復できることが本明細書において実証されている。すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することにより、腎障害の発症後の腎機能を改善できることが示されている。
したがって、本発明は、例えば、腎障害を原因として腎機能障害を発症した対象において、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストを使用することにより、腎機能を増強/改善することを想定している。
インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、尿細管上皮細胞(TEC)の増殖を促進して、機能性腎組織を形成させるのに有用である。したがって、本明細書において、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、尿細管上皮細胞(TEC)の増殖、生存および/もしくは機能、ならびに/または腎組織の増殖、維持および/もしくは機能を促進する目的で提供される。
本明細書において、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、尿細管上皮細胞(TEC)および/または腎組織の再生を目的として提供される。
尿細管上皮細胞における上皮および/またはactaから間葉系細胞の表現型への転換(本明細書において「上皮間葉転換(EMT)」とも呼ぶ)は、腎機能の低下に関連している。尿細管上皮細胞の上皮間葉転換は、組織障害に伴って産生される可溶性因子(TGFB1など)により誘導される。本明細書において、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用は、尿細管上皮細胞の上皮間葉転換を抑制することにより、腎機能を維持/改善することが示されている。
また、SNAILの発現は、尿細管上皮細胞の増殖能の喪失と上皮間葉転換(EMT)に関与している。本明細書において、IL-11媒介性シグナル伝達は、SNAILの発現のアップレギュレーションにおいて中心的な役割を果たすことが実証されている。したがって、本発明では、例えば、尿細管上皮細胞などにおいて、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストを使用して、SNAILの発現を抑制することを想定している。IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用により、SNAILを介した尿細管上皮細胞の増殖の抑制を解除することができる。
したがって、本発明では、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストを使用して、尿細管上皮細胞の表現型を有する腎臓細胞の数/割合を維持/増加させることを想定している。尿細管上皮細胞の表現型は、例えば、E-カドヘリンの発現を特徴としてもよい。また、本発明では、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストを使用して、間葉系細胞様の表現型を有する腎臓細胞の数/割合を減少させることを想定している。間葉系細胞様の表現型は、例えば、SNAILおよび/またはACTA2の発現を特徴としていてもよく、E-カドヘリンの発現の欠失を伴っていてもよい。
IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストは、尿細管上皮細胞または腎組織の機能レベルを維持/増強させる方法において使用してもよい。尿細管上皮細胞/腎組織の機能の評価は、例えば、前述した活性の相関因子を評価することにより行ってもよい。例えば、尿細管上皮細胞/腎組織の機能は、血清/血液中の尿素濃度および/またはクレアチン濃度(例えば、血液中尿素窒素)の分析により評価してもよく、アルブミン/クレアチン比(ACR)のモニターにより評価してもよい。IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストは、血清/血液中のクレアチン濃度および/もしくは尿素濃度を低下させるための方法、またはアルブミン/クレアチン比(ACR)を低下させるための方法において使用してもよい。
腎障害および/または腎障害に関連する病理の抑制により利益を受け得る疾患/状態であれば実質的にどのようなものであっても、本発明の治療的有用性および予防的有用性を適用できることは、当業者であれば容易に理解できるであろう。本発明の治療的有用性および予防的有用性は、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態に罹患している対象であれば、どのような対象にでも適用することができる。また、本発明の治療的有用性および予防的有用性は、腎障害に関連する病理が存在する疾患に罹患している対象であれば、どのような対象にでも適用することができる。
いくつかの実施形態において、本発明は、腎障害により引き起こされる疾患/状態または腎障害により悪化する疾患/状態を治療/予防するものである。いくつかの実施形態において、予後不良の腎障害を有する対象の疾患/状態の治療/予防を提供する。
急性腎障害の診断および管理は、Rahman M et al., Acute Kidney injury: a guide to diagnosis and management. Am Fam Physician 2012 Oct 1:86(7): 631-9に記載されている。この文献で述べられているように、急性腎障害は、尿量の減少を伴うことがある血清中クレアチニン濃度の上昇を徴候とする腎機能の急激な悪化を特徴とする。
いくつかの実施形態において、本発明により治療/予防される腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態は、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態により病変を起こした器官/組織/対象において、例えば、正常な器官/組織/対象(すなわち、腎障害や腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態のない器官/組織/対象)と比較して、IL-11およびIL-11Rαの一方または両方の発現が増加していることを特徴としてもよい。
いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、本明細書で述べるような、腎障害に関連する疾患/障害/状態における腎障害を治療/予防するものである。いくつかの実施形態において、本発明は、腎障害および腎障害に関連する基礎疾患/障害/状態を治療/予防するものである。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、化学療法に関連する腎障害におけるIL-11の役割に対する拮抗作用として有用であるとともに、がんにおけるIL-11の役割に対する拮抗作用としても有用である。
本発明による、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の治療/予防は、IL-11のアップレギュレーションに関連した、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の治療/予防であってもよく、例えば、前記疾患/障害/状態の症状が現れた細胞もしくは組織、もしくは前記疾患/障害/状態の症状が現れうる細胞もしくは組織におけるIL-11のアップレギュレーション、または細胞外のIL-11もしくはIL-11Rαのアップレギュレーションに関連した、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の治療/予防であってもよい。
腎障害に関連する障害、疾患または状態は、どのような組織、器官または器官系に影響を及ぼすものであってもよい。いくつかの実施形態において、前記疾患/障害/状態は、いくつかの組織/器官/器官系に影響を及ぼすものであってもよい。いくつかの実施形態において、前記疾患/障害/状態は、腎臓に影響を及ぼす。
いくつかの実施形態において、腎障害に関連する障害、疾患または症状は、循環器系、消化器系、排泄器系、呼吸器系、腎臓系、生殖器系、循環系、筋肉系、内分泌系、外分泌系、リンパ系、免疫系、神経系および/または骨格系のうちの1つ以上に影響を与える。
いくつかの実施形態において、本発明は、急性腎障害、腎毒性、薬物誘発性腎障害、薬物誘発性急性腎障害、薬物誘発性腎毒性、シスプラチン誘発性腎障害、シスプラチン誘発性急性腎障害またはシスプラチン誘発性腎毒性における、腎障害に関連する病理を治療/予防するものである。
前記治療は、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の進行の阻止に有効であってもよく、例えば、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の悪化の低減/遅延/予防に有効であってもよく、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症の低減/遅延/予防に有効であってもよい。いくつかの実施形態において、前記治療によって、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の症状が改善されてもよく、例えば、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の症状の重症度が低下してもよく、かつ/または腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の症状が緩和してもよい。いくつかの実施形態において、前記治療によって生存率が上昇してもよい。いくつかの実施形態において、前記治療は、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の作用および/または症状の緩和に効果的である。
「予防」は、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症の予防、ならびに/または腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の悪化の予防を指してもよく、例えば、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の後期段階または慢性段階への進行の予防を指してもよい。
いくつかの実施形態において、本発明は、急性腎障害(AKI)、急性腎不全、急性腎疾患、慢性腎疾患、腎損傷、薬物誘発性腎障害、尿細管壊死、急性尿細管壊死、自己免疫性腎障害および腎臓がんを治療/予防するものである。
急性尿細管壊死は、入院患者において最も一般的に見られる内因性急性腎障害である(Rahman Mら、前掲)。その原因は、(長期にわたる低血圧による)虚血性または(尿細管細胞に対して毒性を発揮する薬剤による)腎毒性であることが多い。急性尿細管壊死により発症する急性腎障害は、血管内容積および腎血流を十分に補充しても改善されないことが多い。虚血性の急性尿細管壊死および腎毒性急性尿細管壊死はいずれも時間の経過とともに回復することがあるが、腎障害の重症度や既存の慢性腎疾患の有無に応じて、一時的な腎代替療法が必要になることがある。
本明細書で述べる「がん」は、望ましくない細胞増殖(もしくは望ましくない細胞増殖によって発症する疾患)、新生物または腫瘍であればどのようなものであってもよく、あるいは望ましくない細胞増殖、新生物もしくは腫瘍のリスクの上昇または望ましくない細胞増殖、新生物もしくは腫瘍の素因であってもよい。がんは良性でも悪性でもよく、原発性でも二次性(転移性)でもよい。新生物または腫瘍は、細胞のどのような異常成長または異常増殖であってもよく、どのような組織で発生したものであってもよい。新生物または腫瘍が発生しうる組織の例として、副腎、副腎髄質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、脳を除く)、小脳、子宮頸部、大腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎臓の上皮)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝臓、肺、リンパ液、リンパ節(腹部リンパ節、腋窩リンパ節、頸部リンパ節、鼠径リンパ節、縦隔リンパ節、骨盤リンパ節、大動脈周囲リンパ節を含む)、リンパ芽球、上顎、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽腔、網、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹腔、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟部組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃腺、気管、子宮、外陰および白血球が挙げられる。
がんは、特定の種類のがんであってもよい。がんの種類の例として、星状細胞腫、癌腫(例えば、腺癌、肝細胞癌、髄様癌、乳頭状癌、扁平上皮癌)、神経膠腫、リンパ腫、髄芽腫、悪性黒色腫、骨髄腫、髄膜腫、神経芽腫、および肉腫(例えば、血管肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫)が挙げられる。
本明細書において、「がん」は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質がん、肛門がん、膀胱がん、血液がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、女性生殖器系のがん、男性生殖器系のがん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児横紋筋肉腫、小児肉腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸・直腸がん、結腸がん、子宮内膜がん、子宮内膜肉腫、食道がん、眼がん、胆嚢がん、胃がん、消化管がん、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、ホジキン病、下咽頭がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、白血病、白血病、肝臓がん、肺がん、悪性線維性組織球腫、悪性胸腺腫、悪性黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄腫、鼻腔・副鼻腔がん、鼻咽腔がん、神経系がん、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、中枢神経原発リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、呼吸器系がん、網膜芽細胞腫、唾液腺がん、皮膚がん、小腸がん、軟部肉腫、胃がん、胃がん、睾丸がん、甲状腺がん、泌尿器系がん、子宮肉腫、膣がん、血管系がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症およびウィルムス腫瘍のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
本発明の様々な態様によれば、本発明の方法は、(例えば、腎障害と関連して)
腎組織および/または腎細胞の壊死を低減すること;
腎臓および/または腎組織の線維化を低減すること;
腎臓および/もしくは腎組織中のコラーゲン含有量を低減すること、ならびに/または腎臓および/もしくは腎組織におけるコラーゲンの沈着を抑制すること;
腎機能を増強/維持すること;
尿量を増加/維持すること;
尿中アルブミン/クレアチニン比を低減すること;
血清中クレアチニン濃度を低減すること;
血清中尿素濃度を低減すること;
血清中TGFβ1濃度を低減すること;
腎重量を増加/維持すること;
腎皮質の体積を増加/維持すること;
体重を増加/維持すること;
尿細管上皮細胞の上皮間葉細胞転換を抑制すること;
腎臓におけるACTA2陽性細胞の数/割合を低減すること;
腎細胞および/または腎臓/腎組織におけるSNAILの発現を低減すること;ならびに
腎細胞および/または腎臓/腎組織におけるE-カドヘリンの発現を増加/維持すること
のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
投与
IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の投与は、対象が利益を受けるのに十分な「治療に有効な」量または「予防に有効な」量で行うことが好ましい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、腎障害の原因の発生前、その発生と同時、またはその発生後に投与してもよく、例えば、腎毒性医薬品の投与もしくは摂取の前、それと同時もしくはその後、または腎障害の環境要因への曝露の前、それと同時、またはその後に投与してもよい。
実際の投与量、投与速度および投与後の時間推移は、腎障害の特性および重症度ならびに薬剤の特性に左右される。治療の処方(例えば用量の決定など)は、一般医およびその他の分野の医師の責任下で行われ、通常、治療の対象となる疾患/状態、個々の対象の状態、送達部位、投与方法、および医師によく知られているその他の要因を考慮に入れて行われる。このような手法およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsに記載されている。
本発明の薬剤は、複数回投与してもよい。1回以上の投与または各回の投与と同時にまたは連続して別の治療剤を投与してもよい。
複数回の投与は所定の時間間隔を空けて行ってもよく、この時間間隔は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日もしくは31日、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月もしくは6ヶ月であってもよい。一例として、7日ごとに1回、14日ごとに1回、21日ごとに1回、または28日ごとに1回(±3日、±2日または±1日)投与してもよい。
治療用途において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、当業者によく知られている1種以上の薬学的に許容されるその他の成分とともに医薬品または医薬製剤として製剤化することが好ましい。薬学的に許容されるその他成分としては、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤および甘味剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において、「薬学的に許容される」とは、合理的なベネフィット・リスク比に相応して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題や合併症を引き起こすことなく、妥当な医学的判断の範囲内において、投与対象(例えばヒト)の組織との接触における使用に適した化合物、成分、材料、組成物、剤形などを指す。さらに、担体、アジュバント、賦形剤などはそれぞれ、製剤中の他の成分との適合性の点において「許容される」ものでなければならない。
好適な担体、アジュバント、賦形剤などは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 1994などの、医薬品についての標準的な教科書に記載されている。
前記製剤は、薬学分野でよく知られている方法であれば、どのような方法で調製してもよい。このような方法は、1種以上の副成分を構成する担体と活性化合物とを混合する工程を含む。一般に、製剤は、担体(例えば、液体担体、微粉砕された固体担体など)と活性化合物を均一かつ密に混合し、得られた混合物を必要に応じて成形することによって調製される。
前記製剤は、局所投与経路、非経口投与経路、全身投与経路、静脈内投与経路、動脈内投与経路、筋肉内投与経路、髄腔内投与経路、眼内投与経路、結膜内投与経路、皮下投与経路、経口投与経路、経皮投与経路(注射を含んでいてもよい)で投与される製剤として調製してもよい。注射製剤は、滅菌溶媒または等張溶媒中に選択された薬剤を含んでいてもよい。前記製剤および投与方法は、本発明の薬剤および治療を受ける疾患/障害/状態に応じて選択してもよい。
場合によっては、本明細書に記載の発明品(例えば薬剤/組成物)は、腎障害に関連する疾患/障害/状態の別の治療と併用して、本明細書に記載の治療を行うために投与される。腎障害に関連する疾患/障害/状態に適した別の治療は、当技術分野で公知である。本発明の組成物は、治療を受ける疾患/障害/状態に応じて、単独で投与してもよく、別の治療と組み合わせて、同時にまたは連続して投与してもよい。例えば、本発明品は、別の治療の前、これと同時またはその後に投与してもよい。本発明品および別の治療剤は、例えば前述したような製剤の形態で、一緒に配合して製剤化してもよく、別々に製剤化してもよい。
IL-11およびIL-11受容体の検出
本発明の態様および実施形態のいくつかは、対象から得られた試料における、IL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)の発現の検出に関する。
いくつかの態様および実施形態において、本発明は、(タンパク質としての、またはIL-11もしくはIL-11受容体をコードするオリゴヌクレオチドとしての)IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーション(過剰発現)と、IL-11の作用を抑制することができる薬剤またはIL-11もしくはIL-11受容体の発現を阻害もしくは低減することができる薬剤を用いた治療に対する適合性の指標としての、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションの検出に関する。
発現のアップレギュレーションは、所定の種類の細胞または組織において通常予想される発現量を上回る発現を含む。細胞または組織において関連因子の発現量を測定することによってアップレギュレーションを測定してもよい。対象から得られた細胞試料または組織試料における関連因子の発現量を、該関連因子の基準量(例えば、同じ種類の細胞もしくは組織または対応する細胞もしくは組織における該関連因子の正常な発現量を示す数値または数値範囲)と比較してもよい。いくつかの実施形態において、基準量は、コントロール試料(例えば、健常対象から得られた対応する細胞もしくは組織、または同じ対象の健常組織から得られた対応する細胞もしくは組織)におけるIL-11またはIL-11受容体の発現を検出することによって決定してもよい。いくつかの実施形態において、基準量は、標準曲線または標準データセットから得てもよい。
発現量は、絶対比較で定量してもよく、あるいは相対比較で定量してもよい。
いくつかの実施形態において、試験試料中の発現量が基準量の少なくとも1.1倍である場合に、IL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)がアップレギュレートされていると考えてもよい。より好ましくは、アップレギュレートされている場合の発現量は、基準量の少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも5.0倍、少なくとも6.0倍、少なくとも7.0倍、少なくとも8.0倍、少なくとも9.0倍および少なくとも10.0倍から選択してもよい。
発現量は、PCRを用いたアッセイ、インサイチューハイブリダイゼーションアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、免疫学的アッセイ、免疫組織化学的アッセイなどの公知の様々なインビトロ分析技術のいずれかによって測定してもよい。
一例として、好適な技術は、IL-11またはIL-11受容体に結合することができる薬剤と試料を接触させ、IL-11またはIL-11受容体と該薬剤からなる複合体の形成を検出することによって、該試料中のIL-11またはIL-11受容体の量を検出する方法を含む。前記薬剤は、適切な結合分子であればどのようなものであってもよく、例えば、抗体、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、小分子などであってもよく、形成された複合体が検出(例えば可視化)できるように標識されていてもよい。このような複合体の検出に適した標識および方法は当技術分野でよく知られており、例えば、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、エオシン、NDB、緑色蛍光タンパク質(GFP);ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)などの希土類元素キレート;テトラメチルローダミン、テキサスレッド、4-メチルウンベリフェロン、7-アミノ-4-メチルクマリン、Cy3、Cy5)、同位体マーカー、放射性同位元素(例えば、32P、33P、35S)、化学発光標識(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール)、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ)、抗体、リガンドおよび受容体が挙げられる。検出技術は当業者によく知られており、標識剤に応じて選択することができる。適切な技術としては、オリゴヌクレオチドタグのPCR増幅、質量分析、(例えばレポータータンパク質による基質の酵素変換によって生成される)蛍光または色の検出、または放射能の検出が挙げられる。
アッセイは、試料中のIL-11またはIL-11受容体の量を定量できるように構成されていてもよい。試験試料から定量したIL-11またはIL-11受容体の量を基準量と比較してもよく、このような比較によって、試験試料中に含まれるIL-11またはIL-11受容体の量が、選択した統計学的有意差の程度で基準値よりも高いのか、あるいは低いのかを判断してもよい。
検出されたIL-11またはIL-11受容体を定量することによって、IL-11またはIL-11受容体をコードする遺伝子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションまたは増幅を測定してもよい。試験試料が線維化細胞を含んでいる場合、このようなアップレギュレーション、ダウンレギュレーションまたは増幅を基準量と比較して、統計学的有意差の有無を判断してもよい。
対象から得られる試料はどのような種類のものであってもよい。生体試料は、どのような組織または体液から得てもよく、例えば、血液試料、血液由来試料、血清試料、リンパ液試料、精液試料、唾液試料、滑液試料のいずれであってもよい。血液由来試料は、患者の血液に由来する選択された画分であってもよく、例えば、選択された細胞含有画分、血漿画分、血清画分のいずれであってもよい。試料は、組織試料もしくは生検試料、または対象から単離した細胞を含んでいてもよい。また、試料は、生検や穿刺吸引などの公知の技術で採取してもよい。さらに、試料は、IL-11の発現量を測定するまで保存し、かつ/またはIL-11の発現量を測定する前に処理を行ってもよい。
対象から得られた試料を使用して、該対象におけるIL-11またはIL-11受容体のアップレギュレーションを測定してもよい。
好ましい実施形態のいくつかにおいて、試料は、腎組織、心組織、内臓器官組織、呼吸器系器官組織または腎・泌尿器系組織から得られた組織試料(例えば生検試料)であってもよい。試料は細胞を含んでいてもよい。
対象においてIL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)の発現のアップレギュレーションが確認されたことに基づいて、本発明に従って治療/予防を行う対象を選択してもよい。また、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションを、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に適した腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態のマーカーとして使用してもよい。
アップレギュレーションは、所定の組織におけるアップレギュレーションであってもよく、所定の組織に由来する選択された細胞におけるアップレギュレーションであってもよい。好ましい組織は、腎組織であってもよい。IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションは、循環体液(例えば血液)において測定してもよく、または血液由来試料において測定してもよい。アップレギュレーションは、細胞外IL-11またはIL-11Rαのアップレギュレーションであってもよい。いくつかの実施形態において、発現は、局所または全身でアップレギュレートされていてもよい。
以下の節で述べる説明では、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を対象に投与してもよい。
診断および予後
IL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)の発現のアップレギュレーションの検出は、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を診断して、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症のリスクがある対象を特定する方法において使用してもよく、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定または予測を行う方法において使用してもよい。
「発症する」および「発症」という用語、ならびに「発症する」という用語のその他の形態は、障害/疾患の発症、または障害/疾患の継続もしくは進行を指してもよい。
いくつかの実施形態において、例えば、対象の生体またはこれに由来する選択された細胞/組織において腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の存在を示すその他の症状の有無などに基づいて、対象が腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を保有または罹患している疑いがあると判断してもよく、あるいは、例えば、遺伝的素因があること、または腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の危険因子であることが知られている環境条件への曝露があることから、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症のリスクがあると考えてもよい。また、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションを測定することによって、診断の確定または疑いがあるという診断の確定を行ってもよく、あるいは対象が腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を発症するリスクがあることを確認してもよい。また、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションを測定することによって、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態または素因が、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤による治療に適していることを診断してもよい。
したがって、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態に罹患している対象、または腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態に罹患している疑いがある対象に予後を提供する方法であって、前記対象から得られた試料において、IL-11またはIL-11受容体の発現がアップレギュレートされているのかどうかを判定すること、および前記判定に基づいて、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた前記対象の治療の予後を提供することを含む方法を提供してもよい。
いくつかの態様において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定もしくは予測を行う方法または診断方法は、IL-11またはIL-11受容体の発現量の測定を必要としなくてもよいが、IL-11またはIL-11受容体の発現または活性のアップレギュレーションを予測する遺伝因子を対象において測定することに基づいていてもよい。そのような遺伝因子としては、IL-11もしくはIL-11受容体の発現もしくは活性のアップレギュレーションまたはIL-11媒介性シグナル伝達のアップレギュレーションと相関し、かつ/またはこれらを予測可能な、IL-11、IL-11Rαおよび/またはgp130の遺伝子変異、一塩基変異多型(SNP)または遺伝子増幅の測定が挙げられる。遺伝因子を使用して病態の素因または治療に対する反応性を予測することは当技術分野で知られており、例えば、Peter Starkel Gut 2008;57:440-442; Wright et al., Mol. Cell. Biol. March 2010 vol. 30 no. 6 1411-1420を参照されたい。
遺伝因子は、PCRを用いたアッセイ、例えば定量PCRや競合PCRなどの、当業者に公知の方法で分析してもよい。例えば、対象から得られた試料などにおいて、遺伝因子の有無を測定することによって、診断を確定してもよく、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症のリスクがあるとして対象を分類してもよく、かつ/またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対象が適していることを特定してもよい。
いくつかの方法は、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症に対する感受性またはIL-11の分泌に関連した1つ以上のSNPの有無を特定することを含んでいてもよい。SNPは、通常、二対立遺伝子であり、したがって、当業者に公知の様々な従来のアッセイのいずれかを使用して容易に特定することができる(例えば、Anthony J. Brookes. The essence of SNPs. Gene Volume 234, Issue 2, 8 July 1999, 177-186; Fan et al., Highly Parallel SNP Genotyping. Cold Spring Harb Symp Quant Biol 2003. 68: 69-78; Matsuzaki et al., Parallel Genotyping of Over 10,000 SNPs using a one-primer assay on a high-density oligonucleotide array. Genome Res. 2004. 14: 414-425を参照されたい)。
前記方法は、対象から得られた試料中にどのSNPアレルが存在するのかを特定することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、マイナーアレルの有無を特定することによって、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症に対する感受性またはIL-11の分泌の増加を特定してもよい。
したがって、本発明の一態様において、対象をスクリーニングする方法であって、
対象から核酸試料を得る工程;および
前記試料中において、WO 2017/103108(A1)(この文献は引用により本明細書に援用される)の図33、図34または図35に挙げた1つ以上のSNPの多型ヌクレオチドの位置に、どのアレルが存在するのかを特定するか、またはこれらの図に挙げたSNPのいずれか1つとr2≧0.8の連鎖不均衡を示すSNPを特定する工程
を含む方法を提供する。
アレルまたはSNPを特定する前記工程は、試料中において、選択された多型ヌクレオチドの位置においてマイナーアレルの有無を特定することを含んでいてもよい。また、この工程は、0個、1個または2個のマイナーアレルの有無を特定することを含んでいてもよい。
前記スクリーニング方法は、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症に対する対象の感受性を特定する方法、または前述の診断方法もしくは予後判定方法であってもよく、これらの方法の一部を構成してもよい。
前記方法は、例えば、対象が前記多型ヌクレオチドの位置にマイナーアレルを有していると特定された場合に、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症に対する感受性を有しているものとして、または腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を発症するリスクが高いものとして前記対象を特定する工程をさらに含んでいてもよい。前記方法は、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療を行う対象を選択する工程、および/またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を前記対象に投与して、該対象における腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を治療するか、または腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の発症もしくは進行を前記対象において予防する工程をさらに含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を診断して、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を発症するリスクがある対象を特定する方法、またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定もしくは予測を行う方法は、IL-11もしくはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションの検出用ではなく、遺伝因子でもない指標を使用する。
いくつかの実施形態において、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を診断して、腎障害および/もしくは腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を発症するリスクがある対象を特定する方法、またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定もしくは予測を行う方法は、以下の指標の1つ以上の検出、測定および/もしくは同定、または以下の分析のいずれか1つの実施に基づく。
・血清中クレアチニン、血中尿素および/または血中窒素の上昇
・尿中ナトリウム濃度および尿中クレアチニン濃度
・尿量の減少
・尿管閉塞の有無を特定するための腎超音波検査
・腎生検
・尿検査の実施
検査室で行われる腎機能検査の基準値は、例えば、Rahmanら(前掲)に記載されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
診断方法または予後判定方法は、対象から得られた試料を用いてインビトロで行ってもよく、あるいは対象から得られた試料を処理した後にインビトロで行ってもよい。試料が採取された患者は、インビトロでの診断方法または予後判定方法が実施されるまで待機しておく必要はなく、したがって、これらの方法はヒトまたは動物の生体上で実施する必要はない。対象から得られた試料は、前述したように、どのような種類のものであってもよい。
本明細書に記載の方法は、その他の診断検査または予後検査と併用してもよく、これによって、診断または予後判定の精度を高めたり、本明細書に記載の試験方法を使用して得られた結果を確認したりすることができる。
対象
対象は、動物であってもよく、ヒトであってもよい。対象は、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。対象は、非ヒト哺乳動物であってもよいが、ヒトであることがより好ましい。対象は、雄性であってもよく、雌性であってもよい。対象は患者であってもよい。該患者は、本明細書に記載の腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を有していてもよい。対象は、治療を必要とする腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態に罹患していると診断された対象であってもよく、このような腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態に罹患している疑いがある対象であってもよく、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態を発症するリスクのある対象であってもよい。
本発明による実施形態において、前記対象はヒト対象であることが好ましい。本発明による実施形態において、腎障害および/または腎障害に関連する障害、疾患もしくは状態の特定のマーカーが特定されたことに基づいて、本発明の方法による治療を行う対象を選択してもよい。
いくつかの実施形態において、前記対象は、腎組織に発症する疾患、状態もしくは障害または腎組織に発症しない疾患、状態もしくは障害の治療を目的として、薬物または医薬品を投与中の対象であってもよい。また、前記対象は、このような治療を原因として(例えばその副作用を原因として)薬物誘発性腎障害を発症している対象であってもよい。さらに、前記対象は、そのような薬物誘発性腎障害を発症していることに基づいて、本発明による治療法または予防療法を行うために選択された対象であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記対象は、化学療法剤による治療を受けた対象であってもよく、化学療法剤により治療中の対象であってもよい。また、前記対象は、がんに罹患している対象、がんの罹患が疑われる対象、がんから回復した対象、がんが寛解した対象のいずれであってもよく、これらの対象の治療の一部に化学療法剤の投与が含まれていてもよい。したがって、前記対象は、化学療法剤誘発性腎障害、化学療法剤誘発性急性腎障害または化学療法剤誘発性腎毒性を有する対象であってもよい。
好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記対象は、シスプラチンによる治療を受けた対象であってもよく、シスプラチンにより治療中の対象であってもよい。また、前記対象は、がんに罹患している対象、がんの罹患が疑われる対象、がんから回復した対象、がんが寛解した対象のいずれであってもよく、これらの対象の治療の一部にシスプラチンの投与が含まれていてもよい。したがって、前記対象は、シスプラチン誘発性腎障害、シスプラチン誘発性急性腎障害またはシスプラチン誘発性腎毒性を有する対象であってもよい。
対象は、間欠的な透析または定期的な透析を受けている対象であってもよい。
配列同一性
2つ以上のアミノ酸配列間または核酸配列間の同一性(%)を求めるためのペアワイズ配列アラインメントおよび多重配列アラインメントは、当業者に公知の様々な方法を使用して行うことができ、例えば、ClustalOmegaソフトウェア(Soding, J. 2005, Bioinformatics 21, 951-960)、T-coffeeソフトウェア(Notredame et al. 2000, J. Mol. Biol. (2000) 302, 205-217)、Kalignソフトウェア(Lassmann and Sonnhammer 2005, BMC Bioinformatics, 6(298))、MAFFTソフトウェア(Katoh and Standley 2013, Molecular Biology and Evolution, 30(4) 772-780)などの一般公開されているコンピュータソフトウェアを使用して行うことができる。このようなソフトウェアを使用する場合、例えばギャップペナルティや伸長ペナルティなどにおいて、デフォルトパラメータを使用することが好ましい。
本発明は、本明細書に記載の態様や好ましい特徴の組み合わせを包含し、そのような組み合わせが明らかに許容できない場合や明らかに回避すべき場合は除かれる。
前述の詳細な説明、後述の請求項もしくは添付の図面において、特定の形態として、もしくは開示された機能を実行するための手段として表現された本開示の特徴、または本開示の結果を適宜得るための方法もしくはプロセスは、様々な形態で本発明を実現するために、別個にまたは組み合わせて使用してもよい。
誤解を避けるために明記しておくと、本明細書で提供する論理的説明は、読み手の理解を深める目的で記載されている。本発明者らは、これらの論理的説明により本発明が拘束されることを望むものではない。
本明細書において使用された節の見出しは、いずれも本発明を系統立てて述べることのみを目的として設けられており、本明細書に記載の主題を制限するものであると解釈すべきではない。
後述の請求項を包含する本明細書を通して、特に記載がない限り、「含む(comprise)」および「含む(include)」という用語、ならびにこれらの変化形である「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」および「含んでいる(including)」という用語は、記載の要素もしくは工程または要素群もしくは工程群を包含すると理解されるが、記載されているもの以外の要素もしくは工程または要素群もしくは工程群を除外するものではない。
本明細書および添付の請求項において使用されているように、単数形の「a」、「an」および「the」は、明確な記載がない限り、複数のものを含むことに留意されたい。本明細書において数値範囲は、「おおよその(about)」特定の値、および/または「おおよその」特定の値から「おおよその」別の特定の値までの範囲として示される。このような範囲が記載されている場合、別の一実施形態は、概数ではない前記特定の値、および/または概数ではない前記特定の値から前記別の特定の値までの範囲を含む。同様に、「約(about)」という先行詞を使用することによって特定の値がおおよその値として記載されている場合、概数ではない前記特定の値によって別の一実施形態を構成することができると理解される。数値に関連する「約」という用語は、任意であることを示し、平均値(例えば±10%)を意味する。
本明細書に開示されている方法は、インビトロ、エクスビボ、インビボのいずれで行ってもよく、また、本発明の製品は、インビトロ製品、エクスビボ製品、インビボ製品のいずれであってもよい。「インビトロ」は、実験室条件または培養において、材料、生体物質、細胞および/または組織を使用した実験を包含する。これに対して、「インビボ」は、生きたままの多細胞生物を使用した実験および操作を包含する。「エクスビボ」は、例えばヒトまたは動物の体外などの生体外に存在するもの、または生体外で実施されるものを指し、生物から採取された組織(例えば器官全体)または細胞に存在するものや、このような組織または細胞において実施されるものであってもよい。
本明細書において核酸配列が開示されている場合、その逆相補鎖も明確に想定されている。
標準的な分子生物学的技術については、Sambrook, J., Russel, D.W. Molecular Cloning, A Laboratory Manual. 3 ed. 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
本発明の態様および実施形態を、添付の図面を参照しながら以下に述べる。さらなる態様および実施形態は、当業者であれば容易に理解できるであろう。本明細書において引用された文献はいずれも、本明細書の一部を構成するものとして援用される。以下の代表的な実施形態とともに本発明を述べるが、当業者であれば、本開示を参照することにより、様々な等価の変更および変形を容易に理解できるであろう。したがって、前述した本発明の代表的な実施形態は、一例であり、本発明を何ら限定するものではないことが考慮される。本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に様々な変更を加えてもよい。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の原理を示す実施形態および実験を説明する。