本願は、2019年5月3日に出願された英国特許公開第1906291.8号、2019年5月10日に出願された英国特許公開第1906597.8号、2020年1月24日に出願された英国特許公開第2001013.8号、2020年2月12日に出願された英国特許公開第2001896.6号および2020年2月14日に出願された英国特許公開第2002030.1号の優先権を主張するものであり、これらの文献に記載の内容および構成要素は、本明細書の一部を構成するものとして引用によりあらゆる目的で援用される。
本発明は、代謝性疾患の診断、治療および予防に関する。
肥満、糖尿病およびこれらに関連する状態
肥満とは、WHOの定義によれば、健康を損なう可能性のある過剰な脂肪の蓄積であり、30kg/m2以上のBMIにより肥満の診断が下される。肥満は、代謝性疾患(2型糖尿病(T2D)および脂肪性肝疾患を含む)、心血管疾患(高血圧、心筋梗塞および脳卒中を含む)、筋骨格疾患(例えば、変形性関節症)、アルツハイマー病、うつ病、ならびにいくつかの種類のがん(乳房がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、腎臓がんおよび結腸がん)のリスクを大幅に上昇させる。例えば、Bluher, et al., Nat Rev Endocrinol. (2019) 15:288-298およびProspective Studies Collaboration, Lancet. (2009) 373(9669):1083-96を参照されたい。また、肥満は、生活の質の低下、失業、生産性の低下および社会的不利益につながる可能性もある(Berrington de Gonzalez et al., N Engl J Med (2010) 363:2211-2219)。さらに、肥満は平均余命の短縮にも関連しており、病態の重症度と併存疾患に応じて推定で5~20年短くなるとされている(Fontaine et al., JAMA (2003) 289: 187-193)。
肥満の有病率は過去50年間でパンデミックレベルにまで増加した。世界的な肥満の有病率も小児および青年において驚くべき速さで増加しており、1975年~2016年にかけて男児で0.7%から5.6%に増加し、女児で0.9%から7.8%に増加している(NCD-RisC, Lancet (2017) 390(10113):26227-2642)。生活様式の「欧米化」と高カロリー食品が肥満の主な原因であるとされている。
世界的に人類の健康を脅かしている最も重要なものの1つとして、肥満に伴う2型糖尿病の発生率の増加がある。Menkeら(JAMA (2015) 314: 1021-1029)がBMI分類により糖尿病の傾向を調べたところ、糖尿病は肥満を有する対象のみで増加していたことから(18.0%~20.1%)、糖尿病の有病率の増加の大部分は肥満の有病率の増加に起因することが示唆された。特に、アジア人において糖尿病の有病率が高いことが懸念され、アジア人は白人よりもBMIが低いにもかかわらず、糖尿病の発症率が30%~50%高い(Lee et al., Diabetes Care (2011) 34, 353-357)。
メトホルミンの治療有効性が示されており、抗肥満効果を得るための定期的な運動を含む健康的な生活様式を採用することに加えて、糖尿病の第一選択治療としてメトホルミンが使用されている(Yerevanian et al., Curr Obes Rep (2019))。最近では、糖尿病の治療標的としてインターロイキン1を利用することにより、2型糖尿病における軽度の炎症を調節できることが示されている(Kataria et al., Semin Immunopathol. (2010))。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の世界的な有病率は25%と推定されている(Friedman et al., Nat Med. (2018) 24(7): 908-922)。NAFLDは可逆的な疾患ではあるが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進行する可能性がある。NASHは、脂肪変性により誘発される炎症、肝細胞死および肝線維症を特徴とし、最終的には肝不全を起こす。NASHの病因において肝星細胞(HSC)が極めて重要な役割を果たしており、肝臓の筋線維芽細胞の最大で95%は肝星細胞から生じ(Mederacke et al. Nat Commun (2013) 4:2823)、この筋線維芽細胞からNASHの重要な病態の大部分、すなわち肝線維症、炎症および肝実質の機能不全が起こる(Friedman, Physiol Rev (2008) 88:125-172; Friedman, J Biol Chem (2000) 275:2247-2250; Higashi et al., Adv Drug Deliv Rev (2017) 121:27-42)。
肝星細胞の活性化と形質転換には様々な因子が関与しており、例えば、一般的な線維化促進因子であるトランスフォーミング成長因子β1(TGFβ1)および血小板由来成長因子(PDGF;Hellerbrand J Hepatol (1999) 30:77-87; Tsuchida and Friedman Nat Rev Gastroenterol Hepatol (2017) 14:397-411)が関与しており、さらに、CCL2、TNFα、CCL5などの炎症促進性因子も関与している(Friedman, J Biol Chem (2000) 275:2247-2250; Tsuchida and Friedman Nat Rev Gastroenterol Hepatol (2017) 14:397-411; Kim et al., Sci Rep (2018) 8:7499)。恐らくは、このような複雑さと潜在的な冗長性を反映して、NASHを発症させる上流の単一因子を標的とした治療は失敗に終わっており、承認を受けたNASHの治療薬も存在しない。現在、NASHの臨床試験においていくつかの薬剤が試験中であるが、これらの多くは代謝を標的としており、臨床転帰を予測する肝線維症がこれらの薬剤により改善されるのかどうかは明らかではない(Friedman et al., Nat Med. (2018) 24(7): 908-922; Banini et al., Curr Opin Gastroenterol (2017) 33:134-141)。
静止状態の肝星細胞はビタミンA貯蔵細胞であり、線維芽細胞とは大きく異なる。しかしながら、肝星細胞と線維芽細胞は、共通の因子により活性化され、共通の特徴を備えた筋線維芽細胞への転換が促進される(Mederacke et al. Nat Commun (2013) 4:2823; Iwaisako et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2014;111:E3297-305)。近年、IL-11は、心血管および肺において、線維芽細胞から筋線維芽細胞への形質転換に関与する重要な因子であることが特定された(Schafer et al., Nature 2017;552:110-115; Cook et al., (2018) https://doi.org/10.1101/336537)。肝臓におけるIL-11に関する知見は非常に限られているものの、組換えヒトIL-11に関しては、げっ歯類に非常に高用量で注射すると保護効果があることが報告されている(Zhu et al., PLoS One (2015) 10:e0126296; Yu et al., Clin Res Hepatol Gastroenterol (2016) 40:562-570)。組換えヒトIL-11は、進行性肝炎の炎症を軽減することを目的としてヒトでの臨床試験が行われた(Lawitz et al., Am J Gastroenterol 2004;99:2359-2364)。
消耗疾患
るい痩は、体重の減少として現れることがある脂肪量の減少を伴うことがある筋肉の減少として定義することができる。様々な急性疾患および慢性疾患ならびに加齢は、るい痩に関連していることが多い。るい痩は、栄養状態の悪化、筋肉量の減少と筋肉の機能の喪失、生活の質の低下、および罹患リスクと死亡リスクの上昇につながる場合がある。るい痩に最もよく見られる共通の特徴は筋肉のるい痩であるが、脂肪組織のるい痩が筋肉のるい痩とは独立して起こることもあり、筋肉のるい痩と同時に起こることもある。消耗疾患の例としては、悪液質、サルコペニア(例えば、加齢に伴う骨格筋量の減少と筋力の低下、または筋肉を使わないことによる骨格筋量の減少と筋力の低下)、食欲不振症(食欲の低下または喪失)、ミオペニア(筋肉のるい痩を広く説明するために提案された用語)、リポジストロフィー(特定の部位における脂肪蓄積のるい痩)および脂肪萎縮症が挙げられる。現在、悪液質の定義としては、「通常の栄養補給では完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、(脂肪量減少の有無を問わない)骨格筋量の持続的な減少を特徴とする多因子性の症候群」という定義が広く受け入れられている(Evans et al. Clin Nutr. 2008 (6):793-9)。
るい痩は、慢性疾患の後期の患者に非常に多く見られる。the Society on Sarcopenia, Cachexia and Wasting Disorders(SCWS)によれば、慢性心不全または慢性閉塞性肺疾患の患者の約5~15%が消耗疾患を呈し、進行性がんの患者の60~80%が消耗疾患を経験する。悪液質は、がんによる死亡の20%において直接的な原因となっている(Skipworth et al, Clin Nutr. 2007; 26:667-76)。また、るい痩は、HIV/AIDS、マラリア、結核などの感染症の患者や、嚢胞性線維症、肝硬変、腎不全、クローン病、関節リウマチ、脳卒中、神経変性疾患などの慢性疾患の患者においても認められている。さらに、外傷、術後、無重力状態、慢性アルコール中毒および敗血症もるい痩の発症に関連している(Farkas et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle (2013) 4:173-178)。
るい痩および消耗疾患は、基礎疾患の治療に悪影響を与えることが多く、基礎疾患の治療に対する患者の応答性を低下させ、免疫系を損ない、基礎病態の症状を悪化させることがある。したがって、るい痩を改善する治療により、基礎疾患/基礎状態の治療の有効性が向上し、患者の予後が改善される可能性がある。
例えば、進行性がんに伴う悪液質は、抗がん治療に予後不良をもたらすことが多い。体重が減少しているがん患者が化学療法を受けようとする場合や化学療法を受けている場合、体重が安定している患者よりも初回投与量が少なくなり、より頻繁に重度の用量制限毒性を経験する。したがって、受けられる治療が顕著に少なくなったり、発症時から治療計画から除外されてしまうことがある(Vaughan et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle (2013) 4:95-109)。るい痩の効果的な治療により、このような患者に肯定的な結果をもたらすことができる。
現在、るい痩の治療として、食欲刺激剤の投与と筋肉量を増やすための運動が行われている。しかしながら、栄養補給や薬剤による食欲刺激だけでは、るい痩を回復させることは難しく、特に重度の疾患や疾患の後期では、るい痩の回復は不可能であることが多い。がん患者の悪液質を改善する効果について、エイコサペンタエン酸(EPA;魚油から抽出されるオメガ3脂肪酸)が試験されているが、臨床試験の結果は矛盾したものであった(Jatoi et al , J Clin Oncol. 2004; 22:2469-76)。また、抗酸化剤と非ステロイド系抗炎症剤の臨床試験も行われており、例えば、EPA、酸化ストレス阻害剤および/または食欲刺激剤とこれらの治療薬の併用は、るい痩の治療に有望であると考えられている。ユビキチンタンパク質分解経路(UPP)の抑制は特に興味深い。ミオスタチンなどの筋肉阻害物質による抑制は、臨床試験では成功を収めていない。
基礎疾患を伴うるい痩が、多因子性の性質を有するということは、るい痩に対して広範囲に有効な治療法や広く認められた治療法がなく、承認された薬物療法さえもないことを意味している。実際、基礎疾患に伴うるい痩の唯一の治療法は、基礎疾患を治癒することであると一般に認識されている(Vaughan et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle (2013) 4:95-109)。したがって、るい痩の新たな治療法が求められている。
本発明は、代謝性疾患の治療方法または予防方法において使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を提供する。
また、代謝性疾患の治療方法または予防方法において使用するための医薬品の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の使用を提供する。
さらに、代謝性疾患を治療または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の治療有効量または予防有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態において、前記代謝性疾患は、肥満、2型糖尿病(T2D)、1型糖尿病(T1D)、糖尿病前症、過体重、メタボリックシンドローム、妊娠に関連する高血糖、胆汁うっ滞性肝疾患、高血糖、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、るい痩、悪液質、化学療法に関連する体重減少、膵機能不全、膵炎、急性膵炎、慢性膵炎、脂肪変性、脂肪毒性、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、リポジストロフィー、脂肪肥大症、脂肪萎縮症、インスリン抵抗性もしくは高グルカゴン血症であるか、またはこれらの疾患を含む。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、インターロイキン11受容体(IL-11R)へのインターロイキン11(IL-11)の結合を阻止または低減することができる薬剤である。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11受容体(IL-11R)に結合することができる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、抗体またはその抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーおよび小分子からなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、抗体またはその抗原結合断片である。
いくつかの実施形態において、前記薬剤はデコイ受容体である。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11アンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片である。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11のデコイ受容体である。いくつかの実施形態において、前記IL-11のデコイ受容体は、(i)gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列と、(ii)IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列とを含む。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11のムテインである。いくつかの実施形態において、前記IL-11のムテインは、W147A置換を有するムテインである。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11受容体(IL-11R)の発現を阻止または低減することができる薬剤である。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、オリゴヌクレオチドまたは小分子である。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11の発現を阻止または低減することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、IL-11の発現を阻止または低減することができる前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号12、13、14または15の配列を含むIL-11標的siRNAである。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11Rαの発現を阻止または低減することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、IL-11Rαの発現を阻止または低減することができる前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号16、17、18または19の配列を含むIL-11Rα標的siRNAである。
いくつかの実施形態において、前記インターロイキン11受容体は、IL-11Rαであるか、IL-11Rαを含む。
いくつかの実施形態において、前記方法は、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11受容体(IL-11R)の発現がアップレギュレートされている対象に前記薬剤を投与することを含む。
いくつかの実施形態において、前記方法は、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11受容体(IL-11R)の発現のアップレギュレーションが確認された対象に前記薬剤を投与することを含む。
いくつかの実施形態において、前記方法は、対象においてインターロイキン11(IL-11)またはIL-11受容体(IL-11R)の発現がアップレギュレートされているのかどうかを判定すること、およびインターロイキン11(IL-11)またはIL-11受容体(IL-11R)の発現がアップレギュレートされている対象に前記薬剤を投与することを含む。
インターロイキン11およびIL-11受容体
脂肪細胞化抑制因子としても知られているインターロイキン11(IL-11)は多形質発現性サイトカインであり、IL-6、IL-11、IL-27、IL-31、オンコスタチン、白血病抑制因子(LIF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびneuropoetin(NP-1)を含むIL-6サイトカインファミリーのメンバーである。
インターロイキン11(IL-11)は、様々な間葉系細胞において発現される。IL-11のゲノム配列は、7番染色体の動原体領域と19番染色体にマッピングされており、IL-11を細胞から効率的に分泌させる古典的シグナルペプチドが付加された状態で転写される。IL-11遺伝子のプロモーター配列内にあるアクチベータータンパク質複合体(cJun/AP-1)は、IL-11の基礎転写調節に重要である(Du and Williams., Blood 1997, Vol 89: 3897-3908)。ヒトIL-11の前駆体は199個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、成熟型のIL-11は178個のアミノ酸残基からなるタンパク質である(Garbers and Scheller. , Biol. Chem. 2013; 394(9):1145-1161)。ヒトIL-11のアミノ酸配列はUniProtアクセッション番号P20809(P20809.1 GI:124294;配列番号1)から入手可能である。組換えヒトIL-11(オプレルベキン)も市販されている。その他の生物種由来のIL-11のいくつか、例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、硬骨魚の数種、霊長類などのIL-11もクローニングされており、その配列が決定されている。
本明細書において、「IL-11」は、あらゆる生物種由来のIL-11を指し、あらゆる生物種から得られたIL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態において、この生物種はヒト(ホモ・サピエンス)である。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、所定の生物種(例えばヒト)に由来するIL-11前駆体または成熟型IL-11のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、(好ましくは同じ生物種由来の)IL-11Rαと結合することにより、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞のシグナル伝達を刺激することができる能力(例えばCurtis et al. Blood, 1997, 90(11)またはKarpovich et al. Mol. Hum. Reprod. 2003 9(2): 75-80に記載されているような能力)を特徴としてもよい。IL-11断片の長さは、どのような長さ(アミノ酸長)であってもよいが、成熟型IL-11の長さの少なくとも25%であってもよく、最長で成熟型IL-11の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であってもよい。IL-11断片の長さは、最短で10アミノ酸長であってもよく、最長で15アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長、60アミノ酸長、70アミノ酸長、80アミノ酸長、90アミノ酸長、100アミノ酸長、110アミノ酸長、120アミノ酸長、130アミノ酸長、140アミノ酸長、150アミノ酸長、160アミノ酸長、170アミノ酸長、180アミノ酸長、190アミノ酸長または195アミノ酸長であってもよい。
IL-11は、普遍的に発現される糖タンパク質130(gp130;糖タンパク質130、IL-6ST、IL-6-βまたはCD130としても知られている)のホモダイマーを介してシグナルを伝達する。gp130は膜貫通タンパク質であり、IL-6受容体ファミリーと会合することによってI型サイトカイン受容体を形成する受容体サブユニットである。特異性は個々のインターロイキン11受容体αサブユニット(IL-11Rα)によって発揮される。IL-11α受容体はシグナル伝達に直接関与はしないものの、α受容体にサイトカインが結合すると、gp130と会合して最終的な複合体を形成する。
ヒトgp130(22個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含む)は、918個のアミノ酸からなるタンパク質であり、その成熟形態は866個のアミノ酸からなり、597個のアミノ酸からなる細胞外ドメイン、22個のアミノ酸からなる膜貫通ドメインおよび277個のアミノ酸からなる細胞内ドメインを含む。ヒトgp130の細胞外ドメインは、gp130のサイトカイン結合モジュール(CBM)を含む。gp130のCBMは、Ig様ドメインD1と、gp130のフィブロネクチンIII型ドメインD2およびD3とを含む。ヒトgp130のアミノ酸配列は、UniProtアクセッション番号P40189-1(配列番号2)から入手可能である。
ヒトIL-11Rαは422個のアミノ酸からなるポリペプチド(UniProt Q14626;配列番号3)であり、マウスIL-11Rαと約85%のヌクレオチド配列同一性およびアミノ酸配列同一性を有する。IL-11Rαは、細胞内ドメインが異なる2種のアイソフォームが存在することが報告されている(DuおよびWilliams,前掲)。IL-11受容体α鎖(IL-11Rα)は、IL-6受容体α鎖(IL-6Rα)と構造および機能の面で多くの類似点がある。IL-11RαとIL-6Rαの細胞外ドメインは24%のアミノ酸同一性を有し、特徴的なTrp-Ser-X-Trp-Ser(WSXWS)保存モチーフを含む。IL-11RαとIL-6αの短い細胞内ドメイン(34アミノ酸長)には、JAK/STATシグナル伝達経路の活性化に必要とされるBox1領域およびBox2領域が含まれていない。
マウスIL-11の受容体結合部位はマッピングされており、3つの部位(部位I、部位IIおよび部位III)が同定されている。部位II領域の置換や部位III領域の置換によって、gp130への結合力が低下する。部位III変異は検出可能なアゴニスト活性を示さず、IL-11Rαに対してアンタゴニスト活性を示す(Cytokine Inhibitors Chapter 8; Gennaro Ciliberto, Rocco Savino共編、Marcel Dekker, Inc. 2001)。
本明細書において、IL-11受容体(IL-11R)は、IL-11に結合可能なポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11に結合することができ、かつIL-11受容体を発現する細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。
IL-11受容体は、どのような生物種に由来するものであってもよく、あらゆる生物種から得られたIL-11受容体のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態において、この生物種はヒト(ホモ・サピエンス)である。
いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11Rαであってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11Rαを含むポリペプチド複合体であってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11Rαおよびgp130を含むポリペプチド複合体であってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11受容体は、IL-11が結合するgp130またはgp130含有複合体であってもよい。
IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、所定の生物種(例えばヒト)に由来するIL-11Rαのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、(好ましくは同じ生物種由来の)IL-11と結合することにより、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞のシグナル伝達を刺激する能力(例えばCurtis et al. Blood, 1997, 90(11)またはKarpovich et al. Mol. Hum. Reprod. 2003 9(2): 75-80に記載されているような能力)を特徴としてもよい。IL-11受容体の断片の長さは、どのような長さ(アミノ酸長)であってもよいが、成熟型IL-11Rαの長さの少なくとも25%であってもよく、最長で成熟型IL-11Rαの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であってもよい。IL-11受容体の断片の長さは、最短で10アミノ酸長であってもよく、最長で15アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長、100アミノ酸長、110アミノ酸長、120アミノ酸長、130アミノ酸長、140アミノ酸長、150アミノ酸長、160アミノ酸長、170アミノ酸長、180アミノ酸長、190アミノ酸長、200アミノ酸長、250アミノ酸長、300アミノ酸長、400アミノ酸長または415アミノ酸長であってもよい。
IL-11のシグナル伝達
IL-11は、低い親和性(Kd=約10nmol/L)でIL-11Rαに結合し、これらの結合パートナー間での相互作用のみでは生体シグナルを伝達することはできない。高い親和性(Kd=約400~800pmol/L)で結合してシグナルを伝達できる受容体の形成には、IL-11Rαとgp130の共発現が必要とされる(Curtis et al Blood 1997; 90 (11):4403-12; Hilton et al., EMBO J 13:4765, 1994; Nandurkar et al., Oncogene 12:585, 1996)。細胞表面のIL-11RαにIL-11が結合すると、ヘテロ二量体化、チロシンのリン酸化、gp130の活性化および下流のシグナル伝達が誘導され、このシグナル伝達は、主として、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードおよびヤヌスキナーゼ/シグナル伝達兼転写活性化因子(Jak/STAT)経路を介して行われる(GarbersおよびScheller、前掲)。
さらに、原則として、可溶性IL-11RαはIL-11と結合して生物学的に活性な可溶性複合体を形成することができることから(Pflanz et al., 1999 FEBS Lett, 450, 117-122)、IL-6と同様に、IL-11は、細胞表面のgp130に結合する前に、可溶性IL-11Rαに結合する場合があると考えられる(GarbersおよびScheller、前掲)。Curtisら(Blood 1997 Dec 1; 90 (11):4403-12)は、可溶性マウスIL-11受容体α鎖(sIL-11R)を発現させて、gp130発現細胞におけるシグナル伝達を検討したことを報告している。この研究では、gp130は存在するが、膜貫通型IL-11Rが存在しない条件下において、膜貫通型IL-11Rを介したシグナル伝達と同様に、可溶性IL-11Rによって、IL-11依存性のM1白血病細胞の分化とBa/F3細胞の増殖、および初期の細胞内事象(gp130、STAT3およびSHP2のリン酸化など)が誘導されたことが報告されている。可溶性IL-11Rαに結合したIL-11による膜結合型gp130を介したシグナル伝達の活性化が、近年実証されている(Lokau et al., 2016 Cell Reports 14, 1761-1773)。このいわゆるIL-11のトランスシグナル伝達は、疾患の発生機序に重要である可能性があるが、ヒト疾患におけるその役割はさらなる研究が待たれる。
本明細書において、「IL-11のトランスシグナル伝達」は、IL-11Rαに結合したIL-11が、さらにgp130に結合することによって惹起されるシグナル伝達を指す。IL-11は、非共有結合によりIL-11Rαと結合して複合体を形成することができる。gp130は、膜結合型であり、細胞により発現され、IL-11:IL-11Rα複合体がgp130に結合することによってシグナル伝達が起こる。いくつかの実施形態において、IL-11Rαは、可溶性IL-11Rαであってもよい。いくつかの実施形態において、可溶性IL-11Rαは、(例えば膜貫通ドメインを欠く)IL-11Rαの可溶性(分泌型)アイソフォームである。いくつかの実施形態において、可溶性IL-11Rαは、膜結合型IL-11Rαの細胞外ドメインがタンパク質分解されることによって遊離した産物である。いくつかの実施形態において、IL-11Rαは、膜結合型であってもよく、gp130を介したシグナル伝達は、膜結合型IL-11RαにIL-11が結合することによって惹起されてもよい。これを「IL-11のシスシグナル伝達」と呼ぶ。好ましい一実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性シスシグナル伝達を破壊することによって達成される。
IL-11媒介性シグナル伝達は、造血および血小板生成を刺激し、破骨細胞の活性を刺激し、神経新生を刺激し、脂肪細胞化を抑制し、炎症促進性サイトカインの発現を低減し、細胞外マトリックス(ECM)の代謝を調節し、かつ消化管上皮細胞の正常な増殖制御を媒介することが示されている(DuおよびWilliams、前掲)。
インターロイキン11(IL-11)の生理学的役割は未だ解明されていない。IL-11は、造血細胞の活性化および血小板産生との関連が最も強く示されている。また、IL-11は、移植片対宿主病、炎症性関節炎および炎症性腸疾患に対する保護効果を付与することも示されており、このことから、IL-11は、抗炎症性サイトカインであると考えられている(Putoczki and Ernst, J Leukoc Biol 2010, 88(6):1109-1117)。一方で、IL-11は、炎症促進性でも抗炎症性でもあり、血管新生促進性でもあり、腫瘍形成において重要であることも示唆されている。最近の研究では、マウス関節炎モデルおよびがんにおけるウイルス誘発性炎症においてIL-11が容易に検出されることが示されており、このことから、IL-11の発現が病的刺激によって誘導されることが示唆されている。さらに、IL-11は、腫瘍性消化管上皮においてStat3に依存的な腫瘍促進性標的遺伝子の活性化に関連することが報告されている(PutoczkiおよびErnst、前掲)。
本明細書において、「IL-11のシグナル伝達」および「IL-11媒介性シグナル伝達」は、IL-11受容体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達、または成熟IL-11分子の機能を有するIL-11断片のIL-11受容体への結合を介したシグナル伝達を指す。また、「IL-11のシグナル伝達」および「IL-11媒介性シグナル伝達」は、例えば、IL-11受容体への結合などを介してIL-11またはその機能性断片により開始されるシグナル伝達を指すことは十分に理解できるであろう。したがって、「シグナル伝達」は、細胞活動を制御するシグナル伝達およびその他の細胞プロセスを指す。
代謝性疾患
本発明は、代謝性疾患の治療および/または予防に関する。
本明細書において、「代謝性疾患」は、代謝異常により引き起こされるあらゆる疾患もしくは状態、または代謝異常を特徴とするあらゆる疾患もしくは状態を指す。本明細書の文脈において、「代謝」は、体内において、エネルギー源(例えば、摂取することにより栄養を得ることができる物質)をエネルギーに転換/処理し、かつ/またはエネルギー源を貯蔵用に転換/処理することを指す。
「正常な代謝」は、疾患に罹患していない健常な対象の代謝、例えば、代謝性疾患に罹患していない健常な対象の代謝、または代謝性疾患の症状/相関因子を持たない健常な対象の代謝であってもよい。
代謝性疾患を有する対象は、代謝異常を示す対象であってもよい。代謝性疾患を有する対象は、代謝異常の症状/相関因子を有する対象であってもよい。代謝性疾患を有する対象は、代謝性疾患を有すると診断された対象であってもよい。対象は、代謝性疾患を診断するための診断基準を満たした対象であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記代謝性疾患は、肥満、2型糖尿病(T2D)、1型糖尿病(T1D)、糖尿病前症、過体重、メタボリックシンドローム、妊娠に関連する高血糖(すなわち妊娠糖尿病)、胆汁うっ滞性肝疾患、高血糖、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、るい痩、悪液質、化学療法に関連する体重減少、膵機能不全、膵炎、急性膵炎、慢性膵炎、脂肪変性、脂肪毒性、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、リポジストロフィー、脂肪肥大症、脂肪萎縮症、インスリン抵抗性もしくは高グルカゴン血症であるか、またはこれらの疾患を含む(例えば、これらの疾患を特徴とする)。
本発明の態様は、代謝において一定の役割を有する細胞/組織/器官/器官系の機能異常および/または機能不全の治療および/または予防に関する。特に、本明細書では、膵細胞/膵組織/膵臓の機能異常および/または機能不全の治療および/または予防を想定しており、肝細胞/肝組織/肝臓の機能異常および/または機能不全の治療および/または予防も想定している。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、肥満であるか、肥満を含む。肥満は、過剰な体脂肪を特徴とする。肥満の診断は、例えば、Orzano and Scott, J Am Board Fam Pract (2004) 17(5): 359-369において概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。肥満の対象は、30kg/m2を超えるボディマス指数(BMI;その人の体重を身長の2乗で割ることにより算出)を有する。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、過体重であるか、過体重を含む。過体重は、BMIが25kg/m2を超え、かつ30kg/m2未満であることを特徴とする(「ファクトシートNo.311」WHO(2015))。肥満および過体重は、過剰量の食物摂取、身体活動の不足および遺伝的感受性が組み合わさって引き起こされることが多い。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、真性糖尿病(単に「糖尿病」と呼ばれることが多い)であるか、真性糖尿病を含む。糖尿病は、長期にわたる高血糖を特徴とする代謝性疾患群を指す(「糖尿病ファクトシートNo.312」WHO(2013)).American Diabetes Association(ADA)による糖尿病の診断では、ヘモグロビンA1c値が6.5%以上であること、(8時間以上の絶食において測定される)空腹時血漿グルコース(FPG)値が126mg/dl(7.0mmol/l)以上であること、もしくは75gの経口糖負荷の摂取から2時間後の血漿グルコース値が200 mg/dl(11.1mmol/l)以上であることの検出が必要とされ、または高血糖もしくは高血糖緊急症の古典的症状を有する患者において、随時血漿グルコース値が200 mg/dl(11.1mmol/l)以上であることの検出が必要とされる(American Diabetes Association, Diabetes Care (2010) 33(Suppl 1): S62-S69)。糖尿病の症状として、頻尿、口渇の増加および空腹感の増加が挙げられる。糖尿病の根本的な原因として、一般に、膵臓によるインスリンの産生が不足すること、または産生されたインスリンに対して生体の細胞が適切に反応しないことが挙げられる。
糖尿病には、主に3つの種類があり、例えば、糖尿病ファクトシートNo.312(WHO(2013))に説明されている。1型糖尿病(T1D)は、インスリンを産生する膵島β細胞の数が不十分であることから、十分な量のインスリンが産生できなくなる膵不全に起因する。1型糖尿病およびその診断は、例えば、Kahanovitz et al., Point Care. (2017) 16(1): 37-40に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。2型糖尿病(T2D)は、対象の体内の細胞がインスリンに対して適切な反応を示さなくなったことによって起こり、病態の進行に伴ってインスリンの産生が不十分になることがある。2型糖尿病は、過体重および運動不足によって起こることが最も多い。2型糖尿病は、DeFronzo, Nature Reviews Disease Primers (2015) 1:15019に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。妊娠糖尿病(妊娠に関連する高血糖とも呼ぶ)は、妊婦の血糖値が高くなった場合に起こる。妊娠糖尿病は、妊娠に付随してインスリン抵抗性が生じることによって、妊娠中に必要とされるインスリンの量が増え、インスリンの産生が追いつかないことによって引き起こされる。妊娠糖尿病は、例えば、Kampmann et al., World J Diabetes. (2015) 6(8):1065-1072に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、インスリン欠乏症であるか、インスリン欠乏症を含む。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、インスリン抵抗性であるか、インスリン抵抗性を含む。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高血糖であるか、高血糖を含む。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、2型糖尿病(T2D)であるか、2型糖尿病(T2D)を含む。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、1型糖尿病(T1D)であるか、1型糖尿病(T1D)を含む。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、妊娠に関連する高血糖であるか、妊娠に関連する高血糖を含む。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、糖尿病前症であるか、糖尿病前症を含む。糖尿病前症は、血糖値が長期間にわたり上昇しているが、糖尿病の診断に必要とされる血糖値を下回っている高血糖状態を指す。糖尿病前症およびその診断は、例えば、Bansal World J Diabetes. (2015) 6(2):296-303に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。WHOは、糖尿病前症を中程度の高血糖状態として定義しており、空腹時血漿グルコース(FPG)値が6.1~6.9mmol/L(110~125mg/dL)であること、および75gの経口糖負荷の摂取から2時間後の血漿グルコース値が7.8~11.0mmol/L(140~200mg/dL)であることにより診断される。ADAによる糖尿病前症の診断では、75gの経口糖負荷の摂取から2時間後の血漿グルコース値が7.8~11.0mmol/L(140~200mg/dL)であること、空腹時血漿グルコース(FPG)値が100~125mg/dLであること、およびヘモグロビンA1c値が5.7%~6.4%であることが必要とされる。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、メタボリックシンドロームであるか、メタボリックシンドロームを含む。メタボリックシンドロームは、例えば、Rochlani et al., Cardiovascular Disease (2017) 215-225に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。WHOの定義によれば、メタボリックシンドロームは、肥満、高脂血症(高トリグリセリド血症または高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールが低いこと)、高血圧および微量アルブミン尿のうちのいずれか2つに加えて、インスリン抵抗性(空腹時血糖値の異常、耐糖能異常または2型糖尿病)が存在する状態を指す。メタボリックシンドロームの定義は他にもいくつか存在し、前掲のRochlaniらの文献の表1に要約されている。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、胆汁うっ滞であるか、胆汁うっ滞を含む。胆汁うっ滞は、肝臓から十二指腸への胆汁の流れが減少することを指す。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、胆汁うっ滞性肝疾患であるか、胆汁うっ滞性肝疾患を含む。胆汁うっ滞性肝疾患は、胆汁合成が不十分であること、胆管を通した胆汁の分泌が不十分であること、および/または胆管を通した胆汁の流れが不十分であることにより起こる。胆汁うっ滞性肝疾患は、例えば、Jansen et al., Hepatology (2017) 65(2):722-738およびPollock and Minuk, J Gastroenterol Hepatol (2017) 32(7):1303-1309に概説されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。胆汁うっ滞性肝疾患には、原発性胆汁性胆管炎(PBC)および原発性硬化性胆管炎(PSC)が含まれる。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高脂血症であるか、高脂血症を含む。高脂血症は、血液中の脂質またはリポタンパク質の量が多くなることを指す。高脂血症には、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症および複合型高脂血症(高トリグリセリド血症と高コレステロール血症の組み合わせ)が含まれる。高脂血症は、例えば、アテローム性動脈硬化症および心血管疾患に関連している。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高トリグリセリド血症であるか、高トリグリセリド血症を含む。高トリグリセリド血症は、例えば、Berglund et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. (2012) 97(9):2969-89において説明されており、血中トリグリセリド値が150mg/dL以上(1.7 mmol/L以上)であることと定義されている。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高コレステロール血症であるか、高コレステロール血症を含む。高コレステロール血症は、例えば、Bhatnagar et al., BMJ (2008) 337:a993において説明されている。英国のNHSは、高コレステロール血症を、血中総コレステロール値が5mmol/L以上、または血中低密度リポタンパク質(LDL)値が3mmol/L以上であることとして定義している。米国のNIHは、高コレステロール血症を、血中総コレステロール値が240mg/dL以上であることとして定義している。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、膵機能不全であるか、膵機能不全を含む。膵機能不全は、内分泌機能不全であってもよく、外分泌機能不全であってもよい。膵内分泌機能不全は、インスリン、アミリン、グルカゴン、ソマトスタチン、グレリンおよび膵ポリペプチド(PP)のうちの1つ以上の産生が不十分であることを特徴としてもよい。膵外分泌機能不全は、膵液、消化酵素、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼ、ヌクレアーゼおよびアミラーゼのうちの1つ以上の産生が不十分であること、ならびにこれらの産生が不十分であることから、食物の適切な消化ができないことを特徴としてもよい。膵機能不全は、通常、これらの関連因子を産生する膵細胞の喪失により起こり、例えば、内分泌機能不全の場合であれば島細胞の喪失により起こり、外分泌機能不全の場合であれば腺房細胞の喪失により起こる。膵外分泌機能不全は、例えば、Struyvenberg et al., BMC Med (2017) 15:29において説明されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。膵機能不全の最も一般的な原因は膵炎であるが、嚢胞性線維症、外科手術、セリアック病および糖尿病によっても起こることがある。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、膵障害であるか、膵障害を含む。本明細書において、「障害」は、関連する器官および/もしくは組織の損傷または関連する器官の細胞の損傷を指す。細胞/組織/器官の損傷は、これらの細胞/組織/器官への傷害に起因するものであってもよく、例えば化学的な処置/経験または物理的な処置/経験を原因とするものであってもよい。いくつかの実施形態において、例えば、薬物誘発性障害の場合、障害は化学的傷害に起因するのものであってもよい。いくつかの実施形態において、障害は物理的傷害に起因するものであってもよく、例えば、疾患の治療および/もしくは移植のための外科手術中に生じることがある外科的損傷により生じた障害であってもよい(例えば、障害は、医原性のものであってもよい)。いくつかの実施形態において、障害は、低酸素を原因とするものであってもよく、例えば、虚血を原因とするものであってもよく、再灌流を原因とするものであってもよい。いくつかの実施形態において、障害は、感染症、感染症に対する免疫応答、がんおよび/または自己免疫に起因するものであってもよい。損傷は、可逆的なものであってもよく、不可逆的なものであってもよい。細胞/組織/器官の損傷は、細胞/組織/器官の構造および/またはその機能の変化を特徴としてもよい。例えば、細胞/組織/器官の損傷は、細胞/組織/器官の正常な機能の相関因子の量の低下、および/または細胞/組織/器官の機能障害の相関因子の増加を特徴としてもよい。また、細胞/組織/器官の損傷は、細胞死を特徴としてもよく、例えば、損傷を受けた器官/組織の細胞の死滅を特徴としてもよい。このような細胞死は、アポトーシス(すなわちプログラム細胞死)または壊死(損傷を受けたことによる早期の細胞死)に起因するものであってもよい。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、膵炎であるか、膵炎を含む。膵炎は膵臓の炎症を特徴とする。膵炎は、急性膵炎であってもよく、慢性膵炎であってもよい。急性膵炎は、例えば、Shah et al., J Inflamm Res (2018) 11:77-85に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。急性膵炎は、胆石によって起こることが最も多いが、アルコール性疾患や代謝性疾患などによっても起こることがある。慢性膵炎は、例えば、Pham et al Version 1. F1000Res (2018) 7: F1000 Faculty Rev-607に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。慢性膵炎は、慢性炎症、線維症、ならびに腺房細胞および島細胞の脱落を含む症候群であり、外分泌不全および内分泌不全として症状が現れることがある。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、脂肪変性であるか、脂肪変性を含む。脂肪変性は、細胞/組織/器官における脂質の異常な蓄積を指す。脂肪変性は、大滴性脂肪変性であってもよく、小滴性脂肪変性であってもよい。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、非脂肪組織における脂質部分を含む分子(またはその誘導体)の蓄積を特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、脂肪毒性であるか、脂肪毒性を含むか、脂肪毒性を特徴とするか、脂肪毒性に関連している。
本明細書において、「脂肪毒性」は、非脂肪組織における脂質部分を含む分子(またはその誘導体)の蓄積を原因とする細胞/組織の損傷、機能不全および/または死滅を指す。本開示によれば、いくつかの実施形態において、脂肪毒性は、肝臓、腎臓、心臓および/または骨格筋の細胞における脂肪毒性である。いくつかの実施形態において、脂肪毒性は、肝臓の細胞(例えば肝細胞)における脂肪毒性である。
脂肪毒性を特徴とする代謝性疾患または脂肪毒性に関連する代謝性疾患として、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。肝細胞に脂質が蓄積すること、および肝細胞における脂質蓄積とNAFLD(特にNASH)が関連していることは、Friedman et al., Nat. Med. (2018) 24(7):908-922およびFarrell et al., Adv. Exp. Med. Biol. (2018) 1061: 19-44において述べられている (これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
NASHなどのNAFLDは、肝細胞に対する脂肪毒性に起因して起こると考えられている。脂肪毒性の要因として、遊離(非エステル型)コレステロール、飽和遊離脂肪酸(例えばパルミチン酸)、ジアシルグリセロール、リソホスファチジルコリン、スフィンゴ脂質およびセラミドが含まれると考えられている。肝細胞は、このような化学的反応性脂質分子を隔離することができず、ミトコンドリアの損傷、小胞体(ER)ストレスおよびオートファジーを起こす。脂肪毒性は、肝細胞のアポトーシスや、肝細胞の壊死、ネクロトーシスおよびピロトーシスを起こして自然免疫系を活性化し、炎症促進因子の発現を惹起する。炎症促進性サイトカインおよびケモカインが発現されると、マクロファージや好中球などの炎症性細胞が動員される。
本明細書の実施例(特に実施例5)では、オートクリンなIL-11媒介性シグナル伝達が、(例えば肝細胞における)脂肪毒性シグナル伝達の重要な構成要素であること、ならびにIL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用により脂肪毒性(およびその下流の影響)を抑制することができることが実証されている。したがって、本開示の態様によれば、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を介して、脂肪毒性または脂肪毒性を特徴とする疾患もしくは脂肪毒性に関連する疾患を治療/予防することができる。
重要なことには、本明細書の実施例5.3.5において示したように、肝細胞におけるIL-11媒介性シグナル伝達は、NAFLと関連する脂肪毒性を構成する因子として重要であり、IL-11を介して肝星細胞が活性化されて筋線維芽細胞へと形質転換するよりも前に、これとは別の経路でNASHを引き起こすことが実証された。したがって、本開示の態様によれば、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を介して、肝細胞における脂肪毒性を抑制することにより、NAFLD(例えばNASH)を治療/予防することができる。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である。NAFLDは、例えば、Benedict and Zhang, World J Hepatol. (2017) 9(16): 715-732およびAlbhaisi et al., Version 1. F1000Res. (2018) 7: F1000 Faculty Rev-720に概説されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。NAFLDは、肝臓(特に肝細胞)の脂肪変性を特徴とする。NAFLDは、非アルコール性脂肪肝(NAFL)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む。NAFLは、肝実質の5%超を占める脂肪変性を特徴とし、肝細胞障害は認められない。NAFLはNASHに進行することがあり、NASHは、炎症および/または線維症を伴う脂肪変性(脂肪性肝炎)である。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、リポジストロフィーであるか、リポジストロフィーを含む。リポジストロフィーは、例えば、Fiorenza et al., Nature Reviews Endocrinology (2011) 7: 137-150に概説されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。リポジストロフィーは、正常な脂肪組織の生成ができず、かつ/または正常な脂肪組織を維持できない状態を指し、脂肪組織の完全な喪失または部分的な喪失(脂肪萎縮症)が認められ、脂肪組織の病的な蓄積(脂肪肥大症)に併発することがある。リポジストロフィーは、遺伝性または後天性であるが、遺伝性のリポジストロフィー症候群はまれである。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、脂肪萎縮症であるか、脂肪萎縮症を含む。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、脂肪肥大症であるか、脂肪肥大症を含む。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高グルカゴン血症であるか、高グルカゴン血症を含む。高グルカゴン血症は、例えば、Wewer Albrechtsen et al., Biomark Med. (2016) (11):1141-1151において説明されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、るい痩であるか、るい痩を含む。本明細書において、「るい痩」は、意図しない体重減少を指し、進行性および/または変性性であってもよい。るい痩は、脂肪量の減少を伴うことがある筋肉量の減少として定義することができ、一般に、通常意図しない(骨格筋を含む)体重の大幅な減少が見られ、脂肪組織の減少を伴うことがある。場合によっては、リポジストロフィー疾患で見られるような、脂肪組織の消耗が孤立して起こる場合がある。るい痩は、食物摂取量の減少と代謝異常の様々な組み合わせにより誘発されるタンパク質およびエネルギーの不足を特徴としてもよい(Fearon et al. Lancet Oncol. (2011) 12(5):489-95)。るい痩は、進行性機能障害、生活の質の低下、罹患リスクと死亡リスクの上昇を引き起こすことがある。また、るい痩は、無力症(異常な身体の衰弱もしくはエネルギーの不足)および/または貧血(血液中の赤血球もしくはヘモグロビンの不足)を引き起こすこともある。るい痩は、従来の栄養補給や現在試みられている治療的介入では完全には回復することができない場合もある。患者の体重の減少が、安定した既往体重の30%に達すると、通常、死に至る(Tisdale, Nature Reviews Cancer, 2, 862-871 (2002))。
るい痩を特徴とする疾患/状態として、悪液質(年齢が関係しない筋肉量の減少)、サルコペニア(筋肉量の減少:例えば、加齢に関連した筋肉量の減少、廃用による筋肉量の減少、宇宙旅行による筋肉量の減少または除神経による筋肉量の減少)、摂食障害(タンパク質・エネルギー栄養失調症)、筋ジストロフィー、リポジストロフィー(例えば、脂肪組織の異常な状態または変性状態)、脂肪萎縮症(顔およびその他の組織における加齢に関連した皮下脂肪の減少)およびミオペニア(何らかの慢性疾患における筋肉の消耗;Fearon et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2011; 2:1-3により提唱された)が挙げられる。本明細書では、るい痩を特徴とする疾患/状態を「消耗疾患」とも呼ぶ。いくつかの実施形態において、本開示による消耗疾患は、悪液質、前悪液質、不応性悪液質、サルコペニア、食欲不振症、リポジストロフィー、脂肪萎縮症および/またはミオペニアである。本明細書に記載の様々な態様による実施形態のいくつかにおいて、消耗疾患は、悪液質、前悪液質および/または不応性悪液質である。
慢性疾患に起因する消耗疾患として、「軽度の筋肉消耗疾患」(フレイルを伴うことがある)、「中程度の筋肉消耗疾患」(フレイルを伴うことがあり;「前悪液質」としても知られる)、または「重度の筋肉消耗疾患」(「悪液質」とも呼ばれ、フレイルを伴うことが多い)が挙げられる。
悪液質は、基礎疾患(急性疾患または慢性疾患)に関連した複合的な炎症性/代謝性症候群であり、るい痩を特徴とする。悪液質の顕著な臨床的特徴として、成人では、(体液量で標準化した)体重の減少が認められ、小児では、(内分泌障害を除く)成長不良が認められる。さらに、悪液質では、食欲不振症、炎症、インスリン抵抗性、筋タンパク質分解の増加および基礎代謝率の増加がよく認められる。また、悪液質患者では、脂質値の低下と脂肪肝が見られることから、悪液質の病因に肝代謝が関与していることが示唆される。したがって、肝臓を標的として、脂肪肝、肝損傷または肝臓代謝を予防する治療法は、悪液質に直接的な意義がある可能性がある。悪液質は、飢餓、加齢に関連した筋肉量の減少、一次性うつ病、吸収不良および甲状腺機能亢進とは区別され、罹患率の上昇と関連する(Evans et al. Clin Nutr. 2008 (6):793-9)。
悪液質は、安定した既往体重からの5%を超える意図しない体重の減少があること、ボディマス指数(BMI)が(65歳未満の人で)20kg/m2未満または(65歳以上の人で)22kg/m2未満であり、かつ2%を超える体重の減少があること、またはサルコペニアと診断される骨格筋量指数を有し、かつ2%を超える体重減少があることとして定義される。悪液質患者は、さらに、10%未満の体脂肪率および/または35g/L未満の低い血中アルブミン値を示すことがある。これらの基準は、消耗疾患を発症する「リスク」のある集団の特定に有用であってもよい(Fearon et al. Lancet Oncol. 2011; 12(5):489-95)。
悪液質を3段階に分類することが提唱されており、この分類では、継続中の体重減少の程度と組み合わせて、エネルギー貯蔵と体タンパク質(BMI)の欠乏の程度に従って重症度が分類される。
1.前悪液質-患者の体重減少が5%未満であり、重度の合併症を発症していない。
2.悪液質-複合的な炎症性/代謝性症候群が進行しており、体重減少が5%を超えているが、治療が可能である。
3.不応性悪液質-悪液質が治療に応答性を示さなくなっているか、治療による利益よりも治療の負担およびリスクの方が大きい状態である(Fearonら、前掲)。不応期は、後述する基礎疾患の全体的な病期および患者の状態より決まることが多い。
代謝性疾患は、急性期であってもよく、慢性期であってもよい。本発明の態様は、代謝性疾患に関連する疾患/状態を治療/予防することができる。代謝性疾患に関連する疾患/状態として、代謝性疾患の発症と正の関連を示す疾患/状態が挙げられる。いくつかの実施形態において、代謝性疾患に関連する疾患/状態は、代謝性疾患の原因となりうる疾患/状態、代謝性疾患の原因となる疾患/状態、または代謝性疾患の原因となった疾患/状態(すなわち、代謝性疾患を起こしうる疾患/状態、代謝性疾患を起こす疾患/状態、または代謝性疾患を起こした疾患/状態)である。
また、代謝性疾患に関連する疾患/状態として、代謝性疾患により発症した疾患/状態および/または代謝性疾患により悪化した疾患/状態(代謝性疾患により増悪する疾患/状態、代謝性疾患により進行する疾患/状態、および/もしくは代謝性疾患に合併する疾患/状態)が挙げられる。いくつかの実施形態において、代謝性疾患に関連する疾患/状態は、代謝性疾患の発症と正の関連を示すものであってもよく、代謝性疾患により悪化するものであってもよい。「関連する」疾患/状態は、代謝性疾患に関連する病態を含む疾患/状態であってもよい。
本発明の実施形態において、代謝性疾患または代謝性疾患に関連する疾患/状態は、どのような器官/組織に存在するものであってもよく、どのような器官/組織に影響を及ぼすものであってもよく、例えば、心臓、肝臓、腎臓、脳、皮膚、筋肉系、胃、小腸、大腸、膵臓、口腔、唾液腺、咽頭、食道、胆嚢、気管、喉頭、膀胱、卵巣、子宮、精巣、内分泌腺(例えば下垂体または甲状腺)、リンパ系(例えば脾臓)などの器官/組織に存在するものであってもよく、このような器官/組織に影響を及ぼすものであってもよい。
本発明の実施形態において、代謝性疾患に関連する疾患/状態は、がん、心臓疾患、腎疾患、肺疾患、肝疾患、慢性感染症、神経変性疾患、急性損傷、外傷、術後状態または加齢/老化のうちの1つ以上であってもよい。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、該代謝性疾患の1つ以上のバイオマーカーまたは相関因子を使用して検出/同定/診断してもよい。
IL-11の作用を抑制することができる薬剤
本発明の態様は、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制を含む。
本明細書において、「抑制」は、コントロール条件と比較して減少、低下または低減していることを指す。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤によるIL-11の作用の抑制とは、該薬剤の非存在下かつ/または適切なコントロール薬剤の存在下でのIL-11媒介性シグナル伝達の強度/程度が、減少、低下または低減することを指す。
また、本明細書において、「抑制」は、中和または拮抗作用を指してもよい。すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達(例えば、IL-11またはIL-11含有複合体を介した相互作用、シグナル伝達またはその他の活性)を抑制することができる薬剤は、関連する機能またはプロセスに対する「中和」剤または「拮抗」剤であると言ってもよい。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を、IL-11媒介性シグナル伝達を中和することができる薬剤と呼んでもよく、またはIL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストと呼んでもよい。
IL-11のシグナル伝達経路には、IL-11のシグナル伝達を抑制することができる複数のルートが存在する。IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、例えば、IL-11受容体を介したシグナル伝達に関与する1つ以上の因子の作用、またはIL-11受容体を介したシグナル伝達に必要な1つ以上の因子の作用を抑制することによって、IL-11のシグナル伝達を抑制してもよい。
例えば、IL-11のシグナル伝達の抑制は、IL-11(またはIL-11含有複合体、例えばIL-11とIL-11Rαからなる複合体)とIL-11受容体(例えばIL-11Rα、IL-11Rαを含む受容体複合体、gp130、またはIL-11Rαとgp130を含む受容体複合体)の間の相互作用を破壊することによって達成してもよい。いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、例えばIL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の遺伝子またはタンパク質の発現を抑制することによって達成される。
別の実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性トランスシグナル伝達を破壊せずに、IL-11媒介性シスシグナル伝達を破壊することによって達成され、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、膜結合型IL-11Rαを含むgp130媒介性シス複合体を抑制することによって達成される。別の実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性シスシグナル伝達を破壊せずに、IL-11媒介性トランスシグナル伝達を破壊することによって達成され、すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、可溶性IL-11Rαに結合したIL-11や、可溶性IL-6Rに結合したIL-6などの、gp130媒介性トランスシグナル伝達複合体を抑制することによって達成される。別の実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、IL-11媒介性シスシグナル伝達およびIL-11媒介性トランスシグナル伝達を破壊することによって達成される。IL-11媒介性シスシグナル伝達および/またはIL-11媒介性トランスシグナル伝達の抑制には、本明細書に記載の薬剤のいずれを使用してもよい。
別の例において、IL-11のシグナル伝達の抑制は、IL-11/IL-11Rα/gp130の下流のシグナル伝達経路を破壊することによって達成してもよい。すなわち、いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抑制/拮抗作用は、IL-11とIL-11受容体からなる複合体を介したシグナル伝達の下流のシグナル伝達経路/シグナル伝達プロセス/シグナル伝達因子の抑制を含む。
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抑制/拮抗作用は、IL-11とIL-11受容体からなる複合体により活性化される細胞内シグナル伝達経路を介したシグナル伝達の抑制を含む。いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抑制/拮抗作用は、IL-11とIL-11受容体からなる複合体を介したシグナル伝達により発現/活性がアップレギュレートされる1つ以上の因子の抑制を含む。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、JAK/STATシグナル伝達を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、JAK/STATシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5Bおよび/またはSTAT6の作用を抑制することができる。例えば、JAK/STATシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、JAK/STATタンパク質の活性化を抑制可能であってもよく、JAKタンパク質もしくはSTATタンパク質と細胞表面受容体(例えばIL-11Rαもしくはgp130)の間の相互作用を抑制可能であってもよく、JAKタンパク質のリン酸化を抑制可能であってもよく、JAKタンパク質とSTATタンパク質の間の相互作用を抑制可能であってもよく、STATタンパク質のリン酸化を抑制可能であってもよく、STATタンパク質の二量体化を抑制可能であってもよく、STATタンパク質の細胞核への輸送を抑制可能であってもよく、STATタンパク質のDNAへの結合を抑制可能であってもよく、かつ/またはJAKタンパク質および/もしくはSTATタンパク質の分解を促進可能であってもよい。いくつかの実施形態において、JAK/STAT阻害剤は、ルキソリチニブ(Jakafi/ジャカビ;インサイト)、トファシチニブ(Xeljanz/Jakvinus;NIH/ファイザー)、オクラシチニブ(Apoquel)、バリシチニブ(オルミエント;インサイト/イーライリリー)、フィルゴチニブ(G-146034/GLPG-0634;Galapagos NV)、ガンドチニブ(LY-2784544;イーライリリー)、レスタウルチニブ(CEP-701;テバ)、モメロチニブ(GS-0387/CYT-387;ギリアド・サイエンシズ)、パクリチニブ(SB1518;CTI)、PF-04965842(ファイザー)、ウパダシチニブ(ABT-494;アッヴィ)、ペフィシチニブ(ASP015K/JNJ-54781532;アステラス)、フェドラチニブ(SAR302503;セルジーン)、ククルビタシンI(JSI-124)およびCHZ868から選択される。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、MAPK/ERKシグナル伝達を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、MAPK/ERKシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、GRB2の作用を抑制することができ、RAFキナーゼの作用を抑制することができ、MEKタンパク質の作用を抑制することができ、MAP3K/MAP2K/MAPKおよび/もしくはMycの活性化を抑制することができ、かつ/またはSTATタンパク質のリン酸化を抑制することができる。いくつかの実施形態において、ERKシグナル伝達を抑制することができる薬剤は、ERK p42/44を抑制することができる。いくつかの実施形態において、ERK阻害剤は、SCH772984、SC1、VX-11e、DEL-22379、ソラフェニブ(ネクサバール;バイエル/Onyx)、SB590885、PLX4720、XL281、RAF265(ノバルティス)、エンコラフェニブ(LGX818/ビラフトビ;Array BioPharma)、ダブラフェニブ(タフィンラー;GSK)、ベムラフェニブ(ゼルボラフ;ロシュ)、コビメチニブ(Cotellic;ロシュ)、CI-1040、PD0325901、ビニメチニブ(MEK162/メクトビ;Array BioPharma)、セルメチニブ(AZD6244;Array/アストラゼネカ)およびトラメチニブ(GSK1120212/メキニスト;ノバルティス)から選択される。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)のシグナル伝達/活性を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、JNKのシグナル伝達/活性を抑制することができる薬剤は、JNK(例えばJNK1やJNK2など)の作用および/またはリン酸化を抑制することができる。いくつかの実施形態において、JNK阻害剤は、SP600125、CEP 1347、TCS JNK 6o、c-JUNペプチド、SU3327、AEG 3482、TCS JNK 5a、BI78D3、IQ3、SR3576、IQ1S、JIP-1(153-163)およびCC401二塩酸塩から選択される。
本発明の実施例において、本発明者らは、IL-11/IL-11Rα/gp130を介したシグナル伝達によりNOX4の発現および活性がアップレギュレートされることを実証している。NOX4は、NADPHオキシダーゼであり、活性酸素種(ROS)の供給源である。Nox4の発現は、肝細胞特異的にIL-11を発現させたトランスジェニックマウスにおいてアップレギュレートされ、IL-11でヒト初代肝細胞を刺激することによっても、NOX4の発現がアップレギュレートされる。
いくつかの実施形態において、本発明は、NOX4の発現(遺伝子もしくはタンパク質の発現)またはその機能を抑制することができる薬剤を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、IL-11を介したNOX4の発現/機能のアップレギュレーションを抑制することができる薬剤を使用する。NOX4の発現またはその機能を抑制することができる薬剤は、本明細書においてNOX4阻害剤と呼ぶこともある。例えば、NOX4阻害剤は、NOX4の発現(例えば、遺伝子および/もしくはタンパク質の発現)の低減が可能であってもよく、NOX4をコードするRNAの発現量の低減が可能であってもよく、NOX4タンパク質の発現量の低減が可能であってもよく、かつ/またはNOX4の活性レベルの低減が可能であってもよい(例えば、NOX4を介したNADPHオキシダーゼの活性の低減が可能であってもよく、かつ/もしくはNOX4を介したROSの産生の低減が可能であってもよい)。
NOX4阻害剤には、NOX4に結合する分子、およびNOX4の発現を低減することができる分子が含まれる。NOX4に結合する阻害剤として、NOX4の機能に対するアンタゴニストとして挙動するペプチド/核酸アプタマー、抗体(および抗体の断片)、およびNOX4の相互作用パートナーの断片、ならびにNOX4の低分子阻害剤が挙げられる。NOX4の発現を低減することができる分子には、NOX4のアンチセンスRNA(例えば、siRNAやshRNAなど)が含まれる。いくつかの実施形態において、NOX4阻害剤は、Altenhofer et al., Antioxid Redox Signal. (2015) 23(5): 406-427またはAugsburder et al., Redox Biol. (2019) 26: 101272に記載のNOX4阻害剤から選択され、例えば、GKT137831が挙げられる。
結合薬剤
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、IL-11に結合してもよい。いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、IL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合してもよい。このような薬剤がIL-11またはIL-11受容体に結合すると、IL-11受容体に対するIL-11の結合能が低減/阻害されて、IL-11媒介性シグナル伝達が抑制され、その結果、下流のシグナル伝達が抑制されてもよい。また、このような薬剤がIL-11またはIL-11受容体に結合すると、IL-11受容体(例えばIL-11Rαおよび/またはgp130)に対するIL-11の結合能が低減/阻害されて、IL-11媒介性シスシグナル伝達および/またはIL-11媒介性トランスシグナル伝達が抑制され、その結果、下流のシグナル伝達が抑制されてもよい。前記薬剤は、IL-11と可溶性IL-11Rαからなる複合体などのトランスシグナル伝達複合体に結合して、gp130媒介性シグナル伝達を抑制してもよい。
IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、どのような種類のものであってもよいが、いくつかの実施形態において、該薬剤は、抗体、その抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマー、小分子のいずれであってもよい。前記薬剤は、単離または精製された形態で提供してもよく、医薬組成物または医薬品として製剤化してもよい。
抗体および抗原結合断片
いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、ポリペプチド、例えばデコイ受容体分子である。いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、アプタマーであってもよい。
いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤は、抗体またはその抗原結合断片である。本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、関連する標的分子に対して結合性を示すモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および抗体断片を包含する。
近年のモノクローナル抗体技術に関する手法によれば、大部分の抗原に対して抗体を作製することが可能である。抗原結合部分は、抗体の一部(例えばFab断片)であってもよく、合成抗体断片(例えば一本鎖Fv断片[ScFv])であってもよい。選択された抗原に対するモノクローナル抗体は、公知の技術によって作製してもよく、このような公知技術として、例えば、“Monoclonal Antibodies: A manual of techniques”, H Zola (CRC Press, 1988)に記載されているものや、“Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications ”, J G R Hurrell (CRC Press, 1982)に記載されているものが挙げられる。また、キメラ抗体は、Neubergerら(1988, 8th International Biotechnology Symposium Part 2, 792-799)によって報告されている。モノクローナル抗体(mAb)は、本発明の方法において特に有用である。モノクローナル抗体(mAb)とは、抗原上の単一のエピトープを特異的な標的とする均質な抗体集団である。
また、本発明の方法では、ポリクローナル抗体も有用である。単一特異性ポリクローナル抗体が好ましい。好適なポリクローナル抗体は、当技術分野でよく知られている方法を使用して作製することができる。
Fab断片やFab2断片などの、抗体の抗原結合断片を使用/提供してもよく、遺伝子組換え抗体および遺伝子組換え抗体断片を使用/提供することもできる。抗体の重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域は、抗原の認識に関与することが知られているが、これは、初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に見出され、げっ歯類の抗体を「ヒト化」した実験においても確認されている。げっ歯類由来の可変領域をヒト由来の定常領域に融合させて、げっ歯類由来の親抗体の抗原特異性を保持した抗体を作製することができる(Morrison et al (1984) Proc. Natl. Acad. Sd. USA 81, 6851-6855)。
本開示による抗体および抗原結合断片は、関連する標的分子(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体)に結合することができる抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。
IL-11に結合することができる抗体としては、例えばBockhorn et al. Nat. Commun. (2013) 4(0):1393において使用されたモノクローナルマウス抗ヒトIL-11抗体クローン#22626;カタログNo.MAB218(R&Dシステムズ、米国ミネソタ州)、クローン6D9A(Abbiotec)、クローンKT8(Abbiotec)、クローンM3103F11(BioLegend)、クローン1F1(Abnova Corporation)、クローン3C6(Abnova Corporation)、クローンGF1(LifeSpan Biosciences)、クローン13455(Source BioScience)、11h3/19.6.1(Hermann et al., Arthritis Rheum. (1998) 41(8):1388-97)、AB-218-NA(R&Dシステムズ)、X203(Ng et al., Sci Transl Med. (2019) 11(511) pii: eaaw1237)ならびに米国特許公開第2009/0202533(A1)号明細書、WO99/59608(A2)、WO2018/109174(A2)およびWO 2019/238882(A1)に開示されている抗IL-11抗体が挙げられる。
特に、抗IL-11抗体クローン22626(MAB218としても知られている)は、例えば、Schaefer et al., Nature (2017) 552(7683):110-115において、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストであることが示されている。Hermann et al., Arthritis Rheum. (1998) 41(8):1388-97では、モノクローナル抗体11h3/19.6.1が、抗IL-11 IgG1中和抗体であることが開示されている。例えば、McCoy et al., BMC Cancer (2013) 13:16などにおいて使用されているR&DシステムズのAB-218-NAは、抗IL-11中和抗体の別の一例である。WO 2018/109174(A2)およびWO 2019/238882(A1)では、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11アンタゴニスト抗体のさらに別の例が開示されている。また、Ng, et al., "IL-11 is a therapeutic target in idiopathic pulmonary fibrosis." bioRxiv 336537; doi: https://doi.org/10.1101/336537およびWO 2019/238882 (A1)に開示されているX203(Enx203とも呼ぶ)は、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL11アンタゴニスト抗体であり、WO 2019/238882(A1)において配列番号92(本開示での配列番号22)で示されるVH領域と、WO 2019/238882(A1)において配列番号94(本開示での配列番号23)で示されるVL領域とを含む。ヒト化されたX203は、WO 2019/238882(A1)に記載されており、これにはhEnx203が含まれ、hEnx203は、WO 2019/238882(A1)において配列番号117(本開示での配列番号30)で示されるVH領域と、WO 2019/238882(A1)において配列番号122(本開示での配列番号31)で示されるVL領域とを含む。Enx108Aは、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11アンタゴニスト抗体のさらに別の例であり、WO 2019/238882(A1)において配列番号8(本開示での配列番号26)で示されるVH領域と、WO 2019/238882(A1)において配列番号20(本開示での配列番号27)で示されるVL領域とを含む。
IL-11Rαに結合することができる抗体としては、例えば、モノクローナル抗体クローン025(Sino Biological)、クローンEPR5446(Abcam)、クローン473143(R&Dシステムズ)、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書に記載されているクローン8E2、8D10および8E4、ならびに8E2の親和性成熟バリアント、Blancら(J. Immunol Methods. 2000 Jul 31;241(1-2);43-59)に記載されているモノクローナル抗体、X209(Widjaja et al., Gastroenterology (2019) 157(3):777-792に報告されており、Widjaja, et al., "IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH." bioRxiv 470062; doi: https://doi.org/10.1101/470062としても報告されている)、WO2014121325(A1)および米国特許公開第2013/0302277(A1)号明細書に開示されている抗体、ならびに米国特許公開第2009/0202533(A1)号明細書、WO99/59608(A2)、WO2018/109170(A2)およびWO 2019/238884(A1)に開示されている抗IL-11Rα抗体が挙げられる。
特に、抗IL-11Rα抗体クローン473143(MAB1977としても知られている)は、例えば、Schaefer et al., Nature (2017) 552(7683):110-115において、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストであることが示されている。米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書では、抗ヒトIL-11Rα抗体クローン8E2、8D10および8E4の配列が提供されており、これらの抗ヒトIL-11Rα抗体クローンが、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を有することが開示されている(例えば、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書の段落[0489]~[0490]を参照されたい)。さらに、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書では、クローン8E2の62種の親和性成熟バリアントの配列情報も提供されており、そのうちの61種が、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を有することが開示されている(米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書の表3を参照されたい)。WO 2018/109170(A2)およびWO 2019/238884(A1)では、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体のさらに別の例が開示されている。また、Widjaja, et al., "IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH." bioRxiv 470062; doi: https://doi.org/10.1101/470062およびWO 2019/238884(A1)に開示されているX209(Enx209とも呼ぶ)は、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体であり、WO 2019/238884(A1)において配列番号7(本開示での配列番号24)で示されるVH領域と、WO 2019/238884(A1)において配列番号14(本開示での配列番号25)で示されるVL領域とを含む。ヒト化されたX209は、WO 2019/238884(A1)に記載されており、これにはhEnx209が含まれ、hEnx209は、WO 2019/238884(A1)において配列番号11(本開示での配列番号32)で示されるVH領域と、WO 2019/238884(A1)において配列番号17(本開示での配列番号33)で示されるVL領域とを含む。
当業者であれば、所定の生物種/対象での治療用途に適した抗体を作製する技術を熟知しているであろう。例えば、ヒトでの治療用途に適した抗体を作製するための手順は、Park and Smolen Advances in Protein Chemistry (2001) 56: 369-421に記載されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
所定の標的タンパク質(例えば、IL-11またはIL-11Rα)に対する抗体は、モデル生物種(例えば、げっ歯類やウサギ)において作製することができ、次いで、所定の生物種/対象における治療用途での適合性を向上させるために遺伝子組換えを行うことができる。例えば、モデル生物種の免疫処置により作製したモノクローナル抗体の1個以上のアミノ酸を置換することにより、ヒト生殖細胞系の免疫グロブリンの配列により近い抗体配列を得ることができる(これにより、この抗体による処置を受けるヒト対象において、抗異種抗体により免疫応答が起こる可能性を低減することができる)。抗体可変ドメインの修飾を行う際には、抗体のパラトープの保存を目的として、フレームワーク領域に焦点を当てて修飾を行ってもよい。抗体のヒト化は、抗体技術の分野で日常的に行われており、例えば、Almagro and Fransson, Frontiers in Bioscience (2008) 13:1619-1633, Safdari et al., Biotechnology and Genetic Engineering Reviews (2013) 29(2): 175-186およびLo et al., Microbiology Spectrum (2014) 2(1)においてレビューされている(これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に援用される)。抗体のヒト化は省略が可能であり、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックモデル生物種において、所定の標的タンパク質(例えば、IL-11またはIL-11Rα)に対する抗体を作製して、完全ヒト型抗体を得ることによって省略することができる(例えば、Bruggemann et al., Arch Immunol Ther Exp (Warsz) (2015) 63(2):101-108に記載されており、この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
また、ファージディスプレイ技術を使用して、所定の標的タンパク質(例えばIL-11またはIL-11Rα)に対する抗体を同定してもよく、この方法は当業者によく知られている。ファージディスプレイを使用した、ヒト標的タンパク質に対する完全ヒト型抗体の同定は、例えば、Hoogenboom, Nat. Biotechnol. (2005) 23, 1105-1116およびChan et al., International Immunology (2014) 26(12): 649-657においてレビューされている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
前記抗体/断片は、IL-11の生物学的活性を抑制または低減するアンタゴニスト抗体/断片であってもよい。前記抗体/断片は、IL-11の生物学的効果を中和する中和抗体であってもよく、例えば、IL-11受容体を介してタンパク質合成シグナル伝達を刺激するIL-11の能力を中和する中和抗体であってもよい。中和活性は、T11マウス形質細胞腫細胞株においてIL-11誘導性増殖に対する中和能を評価することによって測定してもよい(Nordan, R. P. et al. (1987) J. Immunol. 139:813)。
IL-11に結合する抗体またはIL-11Rαに結合する抗体は、例えば、米国特許公開第2014/0219919(A1)号明細書やBlancら(J. Immunol Methods. 2000 Jul 31;241(1-2);43-59)に記載されているアッセイを使用して、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用を評価することができる。簡潔に述べると、IL-11に結合する抗体およびIL-11Rαに結合する抗体は、適切な生物種由来のIL-11による刺激に応答して適切な生物種に由来するIL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞の増殖を抑制する能力をインビトロで評価することができる。別の方法では、IL-11に結合する抗体およびIL-11Rαに結合する抗体は、(例えば、WO 2018/109174(A2)(実施例6)およびWO 2018/109170(A2)(実施例6)ならびにNg et al., Sci Transl Med. (2019) 11(511) pii: eaaw1237およびWidjaja et al., Gastroenterology (2019) 157(3):777-792に記載されているように)TGFβ1で線維芽細胞を刺激した後、αSMAの発現を評価することによって、線維芽細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制する能力をインビトロで分析することができる。
抗体は、通常、軽鎖可変領域(VL)の3つのCDR(LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3)と、重鎖可変領域(VH)の3つのCDR(HC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3)からなる6つのCDRを含む。これら6つのCDRが一緒になって抗体のパラトープを定義しており、パラトープとは、標的分子に結合する抗体の一部分を指す。VH領域およびVL領域は、各CDRの両端にフレームワーク領域(FR)を含み、このフレームワーク領域は、CDRに足場を提供する。VH領域の構造は、N末端からC末端の方向に順に、N末端-[HC-FR1]-[HC-CDR1]-[HC-FR2]-[HC-CDR2]-[HC-FR3]-[HC-CDR3]-[HC-FR4]-C末端を含み、VL領域の構造は、N末端からC末端の方向に順に、N末端-[LC-FR1]-[LC-CDR1]-[LC-FR2]-[LC-CDR2]-[LC-FR3]-[LC-CDR3]-[LC-FR4]-C末端を含む。
抗体のCDRおよびFRを定義する慣例的な方法はいくつかあり、例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)に記載の方法、ならびにRetter et al., Nucl. Acids Res. (2005) 33 (suppl 1): D671-D674に記載のVBASE2などが挙げられる。本明細書に記載の抗体のVH領域およびVL領域のCDRおよびFRは、Kabatシステムに従って定義される。
いくつかの実施形態において、本開示による抗体またはその抗原結合断片は、IL-11に特異的に結合する抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)に由来するものである。いくつかの実施形態において、本開示による抗体またはその抗原結合断片は、IL-11Rαに特異的に結合する抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)に由来するものである。
本開示による抗体および抗原結合断片は、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することが好ましい。そのような抗体/抗原結合断片は、IL-11媒介性シグナル伝達に対するアンタゴニストであると説明されてもよく、かつ/またはIL-11媒介性シグナル伝達に対する中和能を有するものとして説明されてもよい。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11に結合する抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11に結合する抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)のCDRを含むか、これらの抗体のCDRに由来するCDRを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(1)
配列番号34のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号35のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および
配列番号36のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または
HC-CDR1、HC-CDR2またはHC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVH領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(2)
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号38のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および
配列番号39のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、または
LC-CDR1、LC-CDR2またはLC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(3)
配列番号40のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号41のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および
配列番号42のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または
HC-CDR1、HC-CDR2またはHC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVH領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(4)
配列番号43のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号44のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および
配列番号45のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、または
LC-CDR1、LC-CDR2またはLC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(1)に記載のCDRが組み込まれたVH領域と、(2)に記載のCDRが組み込まれたVL領域とを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(3)に記載のCDRが組み込まれたVH領域と、(4)に記載のCDRが組み込まれたVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11に結合する抗体のVH領域とVL領域とを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11に結合する抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)のVH領域およびVL領域を含むか、これらの抗体のVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11Rαに結合する抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11Rαに結合する抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)のCDRを含むか、これらの抗体のCDRに由来するCDRを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(5)
配列番号46のアミノ酸配列を有するHC-CDR1、
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および
配列番号48のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、または
HC-CDR1、HC-CDR2またはHC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVH領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、
(6)
配列番号49のアミノ酸配列を有するLC-CDR1、
配列番号50のアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および
配列番号51のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、または
LC-CDR1、LC-CDR2またはLC-CDR3の1つ以上において、1個、2個または3個のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されたバリアント
が組み込まれたVL領域を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(5)に記載のCDRが組み込まれたVH領域と、(6)に記載のCDRが組み込まれたVL領域とを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、IL-11Rαに結合する抗体のVH領域とVL領域とを含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、本明細書に記載のIL-11Rαに結合する抗体(例えば、Enx209または hEnx209)のVH領域およびVL領域を含むか、これらの抗体のVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
基準となるアミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のCDR配列、VH領域配列またはVL領域配列)の1個以上のアミノ酸が別のアミノ酸で置換された本発明の実施形態において、この置換は、例えば、以下の表に従った保存的置換であってもよい。いくつかの実施形態では、中央の列の同じ枠内のアミノ酸同士で置換される。いくつかの実施形態では、右側の列の同じ枠内のアミノ酸同士で置換される。
いくつかの実施形態において、置換は、機能的に保存された置換であってもよい。すなわち、いくつかの実施形態において、置換は、置換されていない同じ分子と比較したときに、置換を含む抗体/断片の1つ以上の機能的特性(例えば、標的への結合性)に影響を与えないものであってもよい(または実質的に影響を与えないものであってもよい)。
いくつかの実施形態では、基準となるVH領域配列またはVL領域配列に対する置換は、VH領域配列またはVL領域配列のうちの特定の1つの領域または複数の領域に着目して行ってもよい。例えば、基準となるVH領域配列またはVL領域配列からの変更は、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3および/またはFR4)の1つ以上に着目して行ってもよい。
本開示による抗体および抗原結合断片は、関連する標的分子に結合することができるモノクローナル抗体(mAb)の配列を使用して設計および調製してもよい。また、一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、Fab2断片などの、抗体の抗原結合領域を使用/提供してもよい。「抗原結合領域」または「抗原結合断片」は、元の抗体が特異性を示す標的に結合することが可能な抗体断片である。
いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のVL領域およびVH領域を含む。抗体の抗原結合領域にあるVL領域およびVH領域は、一緒になってFv領域を構成する。いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のFv領域を含むか、またはこのFv領域からなる。Fv領域は、例えば柔軟なオリゴペプチドなどで共有結合されたVH領域およびVL領域を含む一本鎖として発現されてもよい。したがって、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のVL領域およびVH領域を含むscFvを含んでいてもよく、このscFvからなっていてもよい。
抗体の抗原結合領域にある軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)と重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域1(CH1)は、一緒になってFab領域を構成する。いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗体のFab領域を含むか、またはこのFab領域からなる。
いくつかの実施形態において、前記抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる全長抗体を含むか、またはこの全長抗体からなる。「全長抗体」は、免疫グロブリン(Ig)の構造と実質的に似た構造を有する抗体を指す。例えば、Schroeder and Cavacini J Allergy Clin Immunol. (2010) 125(202): S41-S52(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に、様々な種類の免疫グロブリンおよびそれらの構造が記載されている。免疫グロブリンG(すなわちIgG)は、2つの重鎖と2つの軽鎖を含む約150kDaの糖タンパク質である。重鎖は、N末端からC末端の方向に、重鎖可変領域(VH)と、それに続く3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む重鎖定常領域とを含み、これと同様に、軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)とそれに続く軽鎖定常領域(CL)とを含む。免疫グロブリンは、重鎖の種類によって、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えばIgA1、IgA2)、IgD、IgEまたはIgMに分類されてもよい。軽鎖は、κ鎖であってもよく、λ鎖であってもよい。
いくつかの実施形態において、本開示の抗体/抗原結合断片は、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列であってもよい。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgEまたはIgM、例えば、ヒトIgG(例えば、hIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4)、hIgA(例えば、hIgA1、hIgA2)、hIgD、hIgEまたはhIgMの重鎖定常領域の配列であってもよく、これらの抗体の重鎖定常領域の配列に由来する配列であってもよい。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒトIgG1のアロタイプ(例えば、G1m1、G1m2、G1m3またはG1m17)の重鎖定常領域の配列であるか、またはヒトIgG1のアロタイプの重鎖定常領域の配列に由来する配列である。
いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンG1定常領域(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるか、またはヒト免疫グロブリンG1の定常領域の定常領域配列に由来する配列である。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、K214R置換、D356E置換およびL358M置換を含むヒト免疫グロブリンG1定常領域(すなわち、アロタイプG1m3)(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるか、またはこのヒト免疫グロブリンG1定常領域に由来する配列である。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンG4定常領域(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるか、またはヒト免疫グロブリンG4の定常領域の定常領域配列に由来する配列である。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの重鎖定常領域の配列は、S241P置換および/またはL248E置換を含むヒト免疫グロブリンG4定常領域(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるか、またはこのヒト免疫グロブリンG4定常領域配列に由来する配列である。S241P変異は、ヒンジを安定化させ、L248E変異は、既に低く抑えられているIgG4のADCCエフェクター機能をさらに低減させる(Davies and Sutton, Immunol Rev. 2015 Nov; 268(1):139-159; Angal et al Mol Immunol. 1993 Jan;30(1):105-8)。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、本開示の抗体/抗原結合断片は、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列であってもよい。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、κ軽鎖またはλ軽鎖の配列であってもよく、κ軽鎖またはλ軽鎖に由来する配列であってもよい。κ軽鎖またはλ軽鎖の例として、ヒト免疫グロブリンの定常領域のκ鎖(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2)、またはヒト免疫グロブリンの定常領域のλ鎖(IGLC;Cλ)が挙げられ、例えば、IGLC1(UniProt:P0CG04-1、v1)、IGLC2(UniProt:P0DOY2-1、v1)、IGLC3(UniProt:P0DOY3-1、v1)、IGLC6(UniProt:P0CF74-1、v1)またはIGLC7(UniProt:A0M8Q6-1、v3)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの定常領域のκ鎖(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2;配列番号90)の配列であるか、またはこのヒト免疫グロブリンの定常領域のκ鎖に由来する配列である。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンの軽鎖定常領域の配列は、ヒト免疫グロブリンの定常領域のλ鎖(IGLC;Cλ)の配列、例えば、IGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6またはIGLC7の配列である。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号54のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(i)配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(ii)配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドとを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(i)配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(ii)配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドとを含む。
いくつかの実施形態において、前記抗体/抗原結合断片は、(i)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドと、(ii)配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはこのアミノ酸配列からなるポリペプチドとを含む。
Fab抗体断片、Fv抗体断片、scFv抗体断片およびdAb抗体断片はいずれも、大腸菌において発現させて分泌させることが可能であることから、容易に大量生産することができる。
全長抗体およびF(ab’)2断片は「二価」である。「二価」とは、全長抗体およびF(ab’)2断片が、2つの抗原結合部位を有していることを意味する。これに対して、Fab断片、Fv断片、scFv断片およびdAb断片は、1つの抗原結合部位しか持たないため、一価である。IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる合成抗体は、当技術分野でよく知られているファージディスプレイ技術を使用して作製することもできる。
抗体は、非修飾の親抗体と比較して抗原に対する親和性が向上された修飾抗体を作製するための親和性成熟法によって作製してもよい。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手法によって作製してもよく、親和性成熟抗体を作製するための手法は、例えば、Marks et al.,Rio/Technology 10:779-783 (1992); Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Yelton et al. J. Immunol. 155:1994-2004 (1995); Jackson et al., J. Immunol. 154(7):331 0-15 9 (1995);およびHawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)に記載されている。
抗体/断片は、二重特異性抗体を含み、二重特異性抗体は、例えば、2種の抗体のそれぞれに由来する2種の断片で構成されており、それによって2種の抗原に結合することができる。二重特異性抗体は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる本明細書に記載の抗体/断片を含む。二重特異性抗体は、第2の抗原に対する親和性を有する別の断片を含んでいてもよく、この第2の抗原は所望のものであればどのような抗原であってもよい。二重特異性抗体の作製技術は当技術分野でよく知られており、例えば、Mueller, Dら(2010 Biodrugs 24 (2): 89-98)、Wozniak-Knopp Gら(2010 Protein Eng Des 23 (4): 289-297.)、およびBaeuerle, PAら(2009 Cancer Res 69 (12): 4941-4944)を参照されたい。二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、好適であればどのような形態で提供してもよく、例えば、Kontermann MAbs 2012, 4(2): 182-197(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているような形態で提供してもよい。例えば、二重特異性抗体または二重特異性抗原結合断片は、二重特異性抗体複合体(例えばIgG2、F(ab’)2またはCovX-Body)、二重特異性IgGまたはIgG様分子(例えばIgG、scFv4-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、2 in 1-IgG、mAb2、または軽鎖(LC)が共通化されたTandemab)、非対称性の二重特異性IgGまたはIgG様分子(例えばkih IgG、軽鎖(LC)が共通化されたkih IgG、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、電荷対を有するIgG、またはSEED-body)、小さな二重特異性抗体分子(例えばDiabody(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAb、tandem scFv(taFv)、tandem dAb/VHH、triple body、triple head、Fab-scFvまたはF(ab’)2-scFv2)、二重特異性Fc-CH3融合タンパク質(例えばtaFv-Fc、Di-diabody、scDb-CH3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih-FcまたはscFv-kih-CH3)、二重特異性融合タンパク質(例えばscFv2-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-毒素、DNL-Fab3、DNL-Fab4-IgG、DNL-Fab4-IgG-cytokine2)のいずれであってもよい。具体的には、Kontermann MAbs 2012, 4(2): 182-19の図2を参照されたい。
二重特異性抗体の製造方法としては、例えばSegal and Bast, 2001. Production of Bispecific Antibodies. Current Protocols in Immunology. 14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているように、例えば還元可能なジスルフィド結合または還元不能なチオエーテル結合を介して、抗体または抗体断片を化学的に架橋する方法が挙げられる。例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオナート(SPDP)を使用して、ヒンジ領域のSH-基を介して、例えばFab断片を化学的に架橋することによって、ジスルフィド結合で連結された二重特異性F(ab)2ヘテロ二量体を作製することができる。
二重特異性抗体の別の製造方法としては、例えばD. M. and Bast, B. J. 2001. Production of Bispecific Antibodies. Current Protocols in Immunology. 14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16に記載されているように、抗体を産生するハイブリドーマを、例えばポリエチレングリコールを使用して融合させ、二重特異性抗体を分泌することができるクアドローマ細胞を作製する方法が挙げられる。
二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、組換え技術によって作製することもでき、例えばAntibody Engineering: Methods and Protocols, Second Edition (Humana Press, 2012)のChapter 40: Production of Bispecific Antibodies: Diabodies and Tandem scFv (Hornig and Farber-Schwarz)、またはFrench, How to make bispecific antibodies, Methods Mol. Med. 2000; 40:333-339に記載されているように、例えば抗原結合分子のポリペプチドをコードする核酸構築物から二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片を発現させることができる。
例えば、2種の抗原結合領域の軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードし(すなわち、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる抗原結合領域の軽鎖可変領域および重鎖可変領域と、別の標的タンパク質に結合することができる抗原結合領域の軽鎖可変領域および重鎖可変領域とをコードし)、かつこれらの抗原結合領域を連結する適切なリンカーまたは二量体化領域をコードする配列を含むDNA構築物を、分子クローニング技術によって作製することができる。次いで、このDNA構築物を好適な宿主細胞(例えば哺乳動物の宿主細胞)において(例えばインビトロで)発現させて、組換え二重特異性抗体を産生させることができ、発現された組換え二重特異性抗体を必要に応じて精製することができる。
デコイ受容体
IL-11またはIL-11含有複合体に結合することが可能な、ペプチドベースまたはポリペプチドベースの薬剤は、IL-11受容体に基づいて作製されたものであってもよく、例えばIL-11受容体のIL-11結合断片に基づいて作製されたものであってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、IL-11Rα鎖のIL-11結合断片を含んでいてもよく、好ましくは可溶性であってもよく、かつ/または1つ以上の膜貫通ドメインを含んでいなくてもよく、膜貫通ドメインを全く含んでいなくてもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、gp130のIL-11結合断片を含んでいてもよく、好ましくは可溶性であってもよく、かつ/または1つ以上の膜貫通ドメインを含んでいなくてもよく、膜貫通ドメインを全く含んでいなくてもよい。このような分子をデコイ受容体と呼んでもよい。このような薬剤がIL-11に結合すると、IL-11受容体(例えばIL-11Rαまたはgp130)に対するIL-11の結合能が低減/阻害されて、IL-11媒介性シスシグナル伝達および/またはトランスシグナル伝達が抑制され、その結果、下流のシグナル伝達が抑制されてもよい。
Curtisら(Blood 1997 Dec 1; 90 (11):4403-12)は、膜貫通型のIL-11Rおよびgp130を発現する細胞で試験した場合に、可溶性マウスIL-11受容体α鎖(sIL-11R)がIL-11の活性に対して拮抗作用を発揮することができたことを報告している。この研究で観察されたIL-11に対するsIL-11Rの拮抗作用は、膜貫通型IL-11Rを既に発現している細胞上における利用可能なgp130分子の数に依存することが提唱されている。
シグナル伝達の抑制および治療的介入を目的とした可溶性デコイ受容体の使用は、例えばVEGFとVEGF受容体などの他のシグナル伝達分子とその受容体のペアでも報告されている(De-Chao Yu et al., Molecular Therapy (2012); 20 5, 938-947; Konner and Dupont Clin Colorectal Cancer 2004 Oct;4 Suppl 2:S81-5)。
このように、いくつかの実施形態において、結合薬剤はデコイ受容体であってもよく、例えば、IL-11および/またはIL-11含有複合体の可溶性受容体であってもよい。デコイ受容体によってIL-11および/またはIL-11含有複合体に対する競合が起こり、IL-11に対する拮抗作用が発揮されることが報告されている(Curtisら,前掲)。IL-11のデコイ受容体は、WO 2017/103108(A1)およびWO 2018/109168(A1)にも記載されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
IL-11のデコイ受容体は、IL-11および/またはIL-11含有複合体と結合することによって、gp130、IL-11Rαおよび/またはgp130:IL-11Rα受容体へのIL-11および/またはIL-11含有複合体の結合を阻害できることが好ましい。このように、IL-11のデコイ受容体は、TNFαのデコイ受容体として作用するエタネルセプトと非常によく似た方法で、IL-11およびIL-11含有複合体の「デコイ」受容体として作用する。IL-11媒介性シグナル伝達は、デコイ受容体の非存在下でのシグナル伝達よりも減少する。
IL-11のデコイ受容体は、1つ以上のサイトカイン結合モジュール(CBM)を介してIL-11に結合することが好ましい。CBMは、天然のIL-11受容体分子のCBMであるか、天然のIL-11受容体分子のCBMに由来するものであるか、あるいは天然のIL-11受容体分子のCBMと相同なものである。例えば、IL-11のデコイ受容体は、gp130および/またはIL-11Rαの1つ以上のCBMを含むもの、gp130および/またはIL-11Rαの1つ以上のCBMからなるもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMに由来する1つ以上のCBMを含むもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMに由来する1つ以上のCBMからなるもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMと相同な1つ以上のCBMを含むもの、gp130および/またはIL-11RαのCBMと相同な1つ以上のCBMからなるものうちのいずれであってもよい。
いくつかの実施形態において、IL-11のデコイ受容体は、gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでいてもよく、gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列からなっていてもよい。いくつかの実施形態において、IL-11のデコイ受容体は、IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでいてもよい。本明細書において、所定のペプチド/ポリペプチドの参照領域または参照配列に「対応する」アミノ酸配列は、この参照領域/参照配列のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有しており、例えば、この参照領域/参照配列のアミノ酸配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有している。
いくつかの実施形態において、デコイ受容体は、例えば、少なくとも100μM以下の結合親和性でIL-11に結合することが可能であってもよく、10μM以下、1μM以下、100nM以下、または約1~100nMの結合親和性でIL-11に結合してもよい。いくつかの実施形態において、デコイ受容体は、IL-11結合ドメインの全体またはその一部を含んでいてもよく、膜貫通ドメインの全体またはその一部を欠損していてもよい。デコイ受容体は、免疫グロブリンの定常領域(例えばIgG Fc領域)に融合させたものであってもよい。
阻害剤
本発明は、IL-11、IL-11含有複合体、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体のうちの1つ以上に結合して、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる阻害剤分子の使用を想定している。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11、例えばIL-11の変異体、バリアントまたは結合断片に基づいた、ペプチドベースまたはポリペプチドベースの結合薬剤である。好適なペプチドベースまたはポリペプチドベースの薬剤は、IL-11受容体(例えばIL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合することによってシグナル伝達の開始を阻害したり、不十分なシグナル伝達しか起こさないものであってもよい。このようなタイプのIL-11変異体は、内因性IL-11の競合阻害物質として作用してもよい。
例えば、W147Aは、147番目のアミノ酸をトリプトファンからアラニンに変異させたことによって、IL-11のいわゆる「部位III」が破壊されたIL-11アンタゴニストである。この変異体はIL-11Rαに結合することができるが、gp130ホモダイマーとの会合は起こらず、その結果、IL-11のシグナル伝達が効率的に遮断される(Underhill-Day et al., 2003; Endocrinology 2003 Aug;144(8):3406-14)。また、Leeら(Am J respire Cell Mol Biol. 2008 Dec; 39(6):739-746)は、IL-11RαへのIL-11の結合を特異的に抑制することができるIL-11アンタゴニスト変異体(「ムテイン」)の作製を報告している。IL-11のムテインは、WO 2009/052588(A1)にも記載されている。
Menkhorstら(Biology of Reproduction May 1, 2009 vol.80 no.5 920-927)は、雌性マウスにおいてIL-11の作用を効果的に抑制できるペグ化IL-11アンタゴニストPEGIL11A(CSL Limited、オーストラリア、ビクトリア州パークビル)を報告している。
さらに、Pasqualiniら(Cancer (2015) 121(14):2411-2421)は、IL-11Rαに結合することができるリガンド標的ペプチド模倣薬bone metastasis-targeting peptidomimetic-11(BMTP-11)を報告している。
いくつかの実施形態において、IL-11受容体に結合することができる結合薬剤は、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体の小分子阻害剤の形態で提供してもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の小分子阻害剤の形態で提供してもよく、例えば、Lay et al., Int. J. Oncol. (2012); 41(2): 759-764(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)に記載のIL-11阻害剤の形態で提供してもよい。
アプタマー
いくつかの実施形態において、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合することができる薬剤は、アプタマーである。核酸リガンド/ペプチドリガンドとも呼ばれるアプタマーは、高い特異性および高い親和性で標的分子に結合する能力を特徴とする核酸分子またはペプチド分子である。現在までに同定されたアプタマーの大部分は非天然分子である。
所定の標的(例えば、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体)に結合するアプタマーは、Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEXTM)法で同定および/または作製してもよく、あるいはSOMAmer(slow off-rate modified aptamers)(Gold L et al. (2010) PLoS ONE 5(12):e15004)を構築することにより、同定および/または作製してもよい。アプタマーおよびSELEX法は、TuerkおよびGold(Science (1990) 249(4968):505-10)によって報告されており、WO91/19813にも記載されている。SELEX法およびSOMAmer技術では、例えばアプタマーの化学的多様性を拡大するためにアミノ酸側鎖を模倣した官能基の付加が行われる。その結果、標的に対して高親和性のアプタマーが濃縮され、同定されうる。
アプタマーはDNA分子であってもよく、RNA分子であってもよく、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。また、アプタマーは化学的に修飾された核酸を含んでいてもよく、例えば、糖、リン酸塩および/または塩基が化学的に修飾された核酸を含んでいてもよい。このような修飾は、アプタマーの安定性を向上させるものであってもよく、アプタマーに分解抵抗性を付与するものであってもよく、リボースの2’位に修飾を含んでいてもよい。
アプタマーは、当業者によく知られている方法によって合成してもよい。例えば、アプタマーを、例えば固相支持体上で化学的に合成してもよい。ホスホロアミダイト法を用いた固相合成法を使用してもよい。簡潔に述べると、固相化したヌクレオチドを脱トリチル化した後、適切に活性化されたヌクレオシドホスホロアミダイトとカップリングさせ、亜リン酸トリエステル結合を形成させる。次いでキャッピングを行い、酸化剤(通常ヨウ素)で亜リン酸トリエステルを酸化することができる。このサイクルを繰り返し、アプタマーを構築することができる(例えば、Sinha, N. D.; Biernat, J.; McManus, J.; Koster, H. Nucleic Acids Res. 1984, 12, 4539; およびBeaucage, S. L.; Lyer, R. P. (1992). Tetrahedron 48 (12): 2223を参照されたい)。
好適な核酸アプタマーの長さの下限は、10ヌクレオチド長、11ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、13ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長のいずれであってもよい。好適な核酸アプタマーの長さの上限は、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、41ヌクレオチド長、42ヌクレオチド長、43ヌクレオチド長、44ヌクレオチド長、45ヌクレオチド長、46ヌクレオチド長、47ヌクレオチド長、48ヌクレオチド長、49ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長、51ヌクレオチド長、52ヌクレオチド長、53ヌクレオチド長、54ヌクレオチド長、55ヌクレオチド長、56ヌクレオチド長、57ヌクレオチド長、58ヌクレオチド長、59ヌクレオチド長、60ヌクレオチド長、61ヌクレオチド長、62ヌクレオチド長、63ヌクレオチド長、64ヌクレオチド長、65ヌクレオチド長、66ヌクレオチド長、67ヌクレオチド長、68ヌクレオチド長、69ヌクレオチド長、70ヌクレオチド長、71ヌクレオチド長、72ヌクレオチド長、73ヌクレオチド長、74ヌクレオチド長、75ヌクレオチド長、76ヌクレオチド長、77ヌクレオチド長、78ヌクレオチド長、79ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長のいずれであってもよい。好適な核酸アプタマーの長さは、10ヌクレオチド長、11ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、13ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、41ヌクレオチド長、42ヌクレオチド長、43ヌクレオチド長、44ヌクレオチド長、45ヌクレオチド長、46ヌクレオチド長、47ヌクレオチド長、48ヌクレオチド長、49ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長、51ヌクレオチド長、52ヌクレオチド長、53ヌクレオチド長、54ヌクレオチド長、55ヌクレオチド長、56ヌクレオチド長、57ヌクレオチド長、58ヌクレオチド長、59ヌクレオチド長、60ヌクレオチド長、61ヌクレオチド長、62ヌクレオチド長、63ヌクレオチド長、64ヌクレオチド長、65ヌクレオチド長、66ヌクレオチド長、67ヌクレオチド長、68ヌクレオチド長、69ヌクレオチド長、70ヌクレオチド長、71ヌクレオチド長、72ヌクレオチド長、73ヌクレオチド長、74ヌクレオチド長、75ヌクレオチド長、76ヌクレオチド長、77ヌクレオチド長、78ヌクレオチド長、79ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長のいずれであってもよい。
アプタマーは、特定の標的分子に結合するように選択または構築されたペプチドであってもよい。ペプチドアプタマーならびにその作製方法および同定方法は、Reverdatto et al., Curr Top Med Chem. (2015) 15(12):1082-101(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)でレビューされている。ペプチドアプタマーの長さの下限は、2アミノ酸長、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長のいずれであってもよい。ペプチドアプタマーの長さの上限は、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、21アミノ酸長、22アミノ酸長、23アミノ酸長、24アミノ酸長、25アミノ酸長、26アミノ酸長、27アミノ酸長、28アミノ酸長、29アミノ酸長、30アミノ酸長、31アミノ酸長、32アミノ酸長、33アミノ酸長、34アミノ酸長、35アミノ酸長、36アミノ酸長、37アミノ酸長、38アミノ酸長、39アミノ酸長、40アミノ酸長、41アミノ酸長、42アミノ酸長、43アミノ酸長、44アミノ酸長、45アミノ酸長、46アミノ酸長、47アミノ酸長、48アミノ酸長、49アミノ酸長、50アミノ酸長のいずれであってもよい。好適なペプチドアプタマーの長さは、2~30アミノ酸長、2~25アミノ酸長、2~20アミノ酸長、5~30アミノ酸長、5~25アミノ酸長、5~20アミノ酸長のいずれであってもよい。
アプタマーは、nMオーダーまたはpMオーダーのKDを有していてもよく、KDは、例えば、500nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、1nM未満、500pM未満、100pM未満のいずれであってもよい。
IL-11結合薬剤の特性
IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる本発明の薬剤は、以下の特性のいずれか1つ以上を示してもよい。
・IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に対する特異的結合
・10μM以下のKD、好ましくは5μM以下、1μM以下、500nM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下または100pM以下のKDでの、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体への結合
・IL-11とIL-11Rαの間の相互作用の抑制
・IL-11とgp130の間の相互作用の抑制
・IL-11とIL-11Rα:gp130受容体複合体の間の相互作用の抑制
・IL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用の抑制
これらの特性は、適切なアッセイにおいて関連因子を分析することによって測定することができ、適切なコントールと性能を比較することを含んでいてもよい。当業者であれば、所定のアッセイにおける適切なコントロール条件を決定することができる。
例えば、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体に対する試験抗体/抗原結合断片の結合能の分析に適したネガティブコントロールは、非標的タンパク質に対する抗体/抗原結合断片(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体に特異的ではない抗体/抗原結合断片)であってもよい。適切なポジティブコントロールは、検証済みの(例えば市販の)、IL-11に結合する公知の抗体またはIL-11受容体に結合する公知の抗体であってもよい。コントロールは、分析対象としての、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合すると推定される抗体/抗原結合断片と同じアイソタイプのものであってもよく、例えば同じ定常領域を有していてもよい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に特異的に結合可能であってもよい。所定の標的分子に特異的に結合する薬剤は、他の非標的分子に対する結合よりも高い親和性および/または長い持続期間で該標的分子に結合することが好ましい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-6サイトカインファミリーのその他のメンバー(例えば、IL-6、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC))のうちの1つ以上に対する結合よりも高い親和性でIL-11またはIL-11含有複合体に結合してもよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、その他のIL-6受容体ファミリーのメンバーの1つ以上に対する結合よりも高い親和性でIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)に結合してもよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-6Rα、白血病抑制因子受容体(LIFR)、オンコスタチンM受容体(OSMR)、毛様体神経栄養因子受容体α(CNTFRα)およびサイトカイン受容体様因子1(CRLF1)のうちの1つ以上に対する結合よりも高い親和性でIL-11Rαに結合してもよい。
いくつかの実施形態において、例えば、ELISA、SPR、バイオレイヤー干渉法(BLI)、マイクロスケール熱泳動(MST)またはラジオイムノアッセイ(RIA)で測定した場合、非標的分子に対する結合薬剤の結合の程度は、標的分子に対する該結合薬剤の結合の程度の約10%未満である。あるいは、結合特異性は、結合親和性として反映されてもよく、この場合、結合薬剤は、非標的分子に対するKDよりも少なくとも0.1桁(すなわち0.1×10n(nは桁数を表す整数))小さいKDでIL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合する。この桁数は、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0のいずれであってもよい。
標的に対する所定の結合薬剤の結合親和性は、その解離定数(KD)で表されることが多い。結合親和性は、当技術分野で公知の方法により測定することができ、このような方法として、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えばHearty et al., Methods Mol Biol (2012) 907:411-442;またはRich et al., Anal Biochem. 2008 Feb 1; 373(1):112-20を参照されたい)、バイオレイヤー干渉法(例えばLad et al., (2015) J Biomol Screen 20(4): 498-507;またはConcepcion et al., Comb Chem High Throughput Screen. 2009 Sep; 12(8):791-800を参照されたい)、マイクロスケール熱泳動(MST)分析(例えばJerabek-Willemsen et al., Assay Drug Dev Technol. 2011 Aug; 9(4): 342-353を参照されたい)、または放射標識抗原結合アッセイ(RIA)などが挙げられる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、50μM以下のKD、好ましくは、10μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM以下、500nM以下、100nM以下、75nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、15nM以下、12.5nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下または100pM以下のKDで、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、(例えばELISAで測定した場合)EC50が10,000ng/ml以下、好ましくはEC50が5,000ng/ml以下、1000ng/ml以下、900ng/ml以下、800ng/ml以下、700ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、400ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、90ng/ml以下、80ng/ml以下、70ng/ml以下、60ng/ml以下、50ng/ml以下、40ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、15ng/ml以下、10ng/ml以下、7.5ng/ml以下、5ng/ml以下、2.5ng/ml以下または1ng/ml以下の結合親和性でIL-11、IL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合する。ELISAは、例えばAntibody Engineering, vol. 1 (2nd Edn), Springer Protocols, Springer (2010), Part V, pp657-665の記載に従って実施することができる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11受容体またはIL-11含有複合体の受容体(例えばgp130またはIL-11Rα)への結合に重要な領域においてIL-11またはIL-11含有複合体に結合し、それによって、IL-11またはIL-11含有複合体とIL-11受容体の間の相互作用を抑制し、かつ/またはIL-11受容体を介したシグナル伝達を抑制する。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体への結合に重要な領域においてIL-11受容体に結合し、それによって、IL-11またはIL-11含有複合体とIL-11受容体の間の相互作用を抑制し、かつ/またはIL-11受容体を介したシグナル伝達を抑制する。
2つのタンパク質間の相互作用に対する所定の結合薬剤(例えば、IL-11もしくはIL-11含有複合体またはIL-11受容体に結合することができる薬剤)の抑制能は、例えば、該結合薬剤の存在下において、または該結合薬剤を相互作用パートナーの片方もしくは両方とインキュベートした後に、これらの相互作用パートナー間の相互作用を分析することにより測定することができる。所定の結合薬剤が2つの相互作用パートナー間の相互作用を抑制できるかどうかを判定することができる好適なアッセイとしては、競合ELISAが挙げられる。
所定の相互作用(例えばIL-11とIL-11Rαの間の相互作用、IL-11とgp130の間の相互作用、IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用、またはIL-11:IL-11Rαとgp130の間の相互作用)を抑制することができる結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)相互作用の程度と比較して、該結合薬剤の存在下において、または該結合薬剤を相互作用パートナーの片方もしくは両方とインキュベートした後に、これらの相互作用パートナー間の相互作用の程度が低下/減少していることから同定される。好適な分析は、例えば、組換え相互作用パートナーまたは相互作用パートナーを発現する細胞を使用してインビトロで実施することができる。相互作用パートナーを発現する細胞は、内因性に該相互作用パートナーを発現してもよく、細胞に導入された核酸から該相互作用パートナーを発現してもよい。このようなアッセイを行う目的で、相互作用パートナーの片方もしくは両方および/または結合薬剤を、検出可能な物質で標識するか、このような標識とともに使用して、相互作用の程度を検出および/または測定してもよい。例えば、放射性原子、色素分子、蛍光分子、またはその他の任意の方法で容易に検出することができる分子で結合薬剤を標識してもよい。検出可能な分子として好適なものとしては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、酵素基質および放射性標識が挙げられる。結合薬剤は、検出可能な標識で直接標識してもよく、間接的に標識してもよい。例えば、結合薬剤は、標識されていなくてもよく、標識された別の結合薬剤を使用して検出してもよい。あるいは、第2の結合薬剤をビオチンに結合してもよく、標識されたストレプトアビジンを該ビオチンに結合させて、第1の結合薬剤を間接的に標識してもよい。
また、2つの結合パートナー間の相互作用に対する結合薬剤の抑制能は、このような相互作用の下流の機能の帰結(例えばIL-11媒介性シグナル伝達)を分析することによって同定することもできる。例えば、IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用またはIL-11:IL-11Rαとgp130の間の相互作用の下流の機能の帰結としては、例えば、IL-11媒介性プロセス、または例えば、コラーゲンもしくはIL-11の遺伝子発現/タンパク質発現が含まれていてもよい。
IL-11またはIL-11含有複合体とIL-11受容体の間の相互作用の抑制は、例えばCurtis et al. Blood, 1997, 90(11)およびKarpovich et al. Mol. Hum. Reprod. 2003 9(2): 75-80に記載されているような、3H-チミジン取り込みアッセイ、および/またはBa/F3細胞増殖アッセイを使用して分析することもできる。Ba/F3細胞は、IL-11Rαとgp130を共発現する。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rαの間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11とIL-11Rαの間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rαの間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11とIL-11Rαの間の相互作用を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11とgp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11とgp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11とIL-11Rα:gp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下における(または適切なコントロール結合薬剤の存在下における)IL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記結合薬剤は、該結合薬剤の非存在下におけるIL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用の程度と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130の間の相互作用を抑制することができる。
IL-11またはIL-11受容体の発現を低減することができる薬剤
本発明の態様において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減できる薬剤であってもよい。
前記発現は、遺伝子発現であってもよく、タンパク質発現であってもよく、本明細書に記載の方法で測定してもよく、当業者によく知られている当技術分野の方法で測定してもよい。前記発現は、対象における細胞/組織/器官/器官系による発現であってもよい。
好適な薬剤はどのような種類のものであってもよいが、いくつかの実施形態において、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減することができる薬剤は、小分子であってもよく、オリゴヌクレオチドであってもよい。
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減することができる薬剤は、例えば、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードする遺伝子の転写の抑制、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの転写後プロセシングの抑制、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの安定性の低減、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの分解の促進、IL-11ポリペプチド、IL-11Rαポリペプチドもしくはgp130ポリペプチドの翻訳後プロセシングの抑制、IL-11ポリペプチド、IL-11Rαポリペプチドもしくはgp130ポリペプチドの安定性の低減、またはIL-11ポリペプチド、IL-11Rαポリペプチドもしくはgp130ポリペプチドの分解の促進を介して、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上の発現を阻止または低減してもよい。
Takiら(Clin Exp Immunol (1998) Apr; 112(1): 133-138)は、インドメタシン、デキサメタゾンまたはインターフェロンγ(IFNγ)で処理したリウマチ滑膜細胞においてIL-11の発現が低下することを報告している。
さらに本発明は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止/低減するための、アンチセンス核酸の使用を想定している。いくつかの実施形態において、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止または低減することができる薬剤は、RNA干渉(RNAi)によって該発現を低減してもよい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、アンチセンスRNAや低分子干渉RNAなどの抑制性核酸であってもよく、shRNAまたはsiRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、前記抑制性核酸は、ベクターに組み込まれて提供される。例えば、いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つ以上に対するshRNAをコードするレンチウイルスベクターであってもよい。
オリゴヌクレオチド分子(特にRNA)を使用して遺伝子の発現を調節してもよい。このようなオリゴヌクレオチド分子としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド;低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAを標的とした分解;転写後遺伝子サイレンシング(PTG);マイクロRNA(miRNA)を使用した、発生過程で調節される配列に特異的なmRNA翻訳の抑制;および標的化された転写遺伝子サイレンシングが挙げられる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的オリゴヌクレオチド(例えばmRNA)を標的とし、相補配列結合を介してこれに結合するオリゴヌクレオチド(好ましくは一本鎖オリゴヌクレオチド)である。標的オリゴヌクレオチドがmRNAである場合、mRNAにアンチセンスオリゴヌクレオチドが結合することによって、mRNAの翻訳が阻害されて、遺伝子産物の発現が阻害される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ゲノム核酸のセンス鎖に結合して標的ヌクレオチド配列の転写を抑制するように設計してもよい。
公知のIL-11、IL-11Rαまたはgp130の核酸配列(例えば、アクセッション番号:BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)でGenBankから入手可能な公知のmRNA配列)を考慮に入れて、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制またはサイレンシングするオリゴヌクレオチドを設計してもよい。
このようなオリゴヌクレオチドはどのような長さであってもよいが、短いことが好ましく、例えば100ヌクレオチド長未満、例えば10~40ヌクレオチド長、または20~50ヌクレオチド長であってもよく、標的オリゴヌクレオチド(例えばIL-11 mRNA、IL-11Rα mRNAまたはgp130 mRNA)中の対応する長さのヌクレオチド配列と、完全な相補性または実質的な相補性(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相補性)を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよい。ヌクレオチド配列の相補領域はどのような長さであってもよいが、少なくとも5ヌクレオチド長であることが好ましく、50ヌクレオチド長以下であってもよく、例えば、6ヌクレオチド長、7ヌクレオチド長、8ヌクレオチド長、9ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長、11ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、13ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、21ヌクレオチド長、22ヌクレオチド長、23ヌクレオチド長、24ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、26ヌクレオチド長、27ヌクレオチド長、28ヌクレオチド長、29ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、31ヌクレオチド長、32ヌクレオチド長、33ヌクレオチド長、34ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、36ヌクレオチド長、37ヌクレオチド長、38ヌクレオチド長、39ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、41ヌクレオチド長、42ヌクレオチド長、43ヌクレオチド長、44ヌクレオチド長、45ヌクレオチド長、46ヌクレオチド長、47ヌクレオチド長、48ヌクレオチド長、49ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長のいずれであってもよい。
IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制することによって、細胞/組織/器官/器官系/対象により発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量が低下することが好ましい。例えば、適切な核酸の投与により所定の細胞におけるIL-11、IL-11Rαまたはgp130を抑制することによって、該細胞により発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量が非処理細胞よりも低下する。抑制は部分的であってもよい。抑制の程度は少なくとも50%であることが好ましく、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%のいずれかであることがより好ましい。抑制の程度が90%~100%である場合、発現または機能が「サイレンシング」されていると考えられる。
ヘテロクロマチン複合体のターゲティングおよび特定の染色体座位のエピジェネティックな遺伝子サイレンシングにおいて、RNAi機構およびsmall RNAが果たす役割が実証されている。RNA干渉(RNAi)としても知られている二本鎖RNA(dsRNA)依存性転写後サイレンシングは、dsRNA複合体が、特定の遺伝子の相同部分を標的として短時間でサイレンシングすることができる現象である。RNAiは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するシグナルとして作用する。20ntのsiRNAであれば、通常、遺伝子特異的なサイレンシングを誘導するのに十分に長く、宿主応答を回避するのに十分に短い。標的遺伝子産物の発現の低下は、何種類かのsiRNA分子を使用することによって、90%にも達するサイレンシングを誘導することができる。RNAiを用いた治療薬は、様々な適応症を対象に第I相、第II相および第III相の臨床試験まで進んでいる(Nature 2009 Jan 22; 457(7228):426-433)。
当技術分野において、上述のようなRNA配列は、その由来に応じて「短鎖干渉RNA」もしくは「低分子干渉RNA(siRNA)」または「マイクロRNA(miRNA)」と呼ばれる。これらのRNA配列を使用して、相補的RNAに結合させてmRNAの排除を誘導すること(RNAi)によって、遺伝子発現をダウンレギュレートしてもよく、あるいはmRNAからタンパク質への翻訳を阻害することによって遺伝子発現をダウンレギュレートしてもよい。siRNAは、長い二本鎖RNAがプロセシングされることによって得られ、天然のsiRNAは、通常、外因性である。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、内因性にコードされた小さな非コードRNAであり、短いヘアピン構造がプロセシングされることによって得られる。siRNAおよびmiRNAはいずれも、RNAを切断することなく、部分的に相補的な標的配列を有するmRNAの翻訳を抑制することができ、完全な相補配列を有するmRNAを分解することができる。
siRNAリガンドは、通常、二本鎖であり、このRNAによる標的遺伝子の機能のダウンレギュレーションの有効性を最適化するためには、siRNAによる標的mRNAの認識を仲介するRISC複合体によってsiRNAが正確に認識されるように十分に長く、かつ宿主応答を低く抑えることができるように十分に短くなるように、siRNA分子の長さを選択することが好ましい。
miRNAリガンドは、通常、一本鎖であり、ヘアピン構造を形成することが可能な部分相補領域を有している。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列はmiRNAよりも長く、miRNA配列と、これとほぼ相補的な逆向きの配列とを含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写されると、miRNA配列とその逆相補配列からなる塩基対から、部分的に二本鎖のRNAセグメントが形成される。マイクロRNA配列の設計は、John et al, PLoS Biology, 11(2), 1862-1879, 2004において報告されている。
siRNAまたはmiRNAの効果を模倣した前記RNAリガンドは、通常、10~40リボヌクレオチド長であり(またはその合成類似体であり)、17~30リボヌクレオチド長であることがより好ましく、19~25リボヌクレオチド長であることがより好ましく、21~23リボヌクレオチド長であることが最も好ましい。二本鎖siRNAを使用した本発明の実施形態のいくつかにおいて、二本鎖siRNA分子は対称な3’末端オーバーハングを有していてもよく、この3’末端オーバーハングは、例えば1個または2個の(リボ)ヌクレオチドで構成されていてもよく、通常、3’末端UUまたはdTdTオーバーハングである。当業者であれば、本明細書の開示に基づき、例えばAmbion siRNA finderなどのライブラリーを使用して、適切なsiRNA配列および適切なmiRNA配列を容易に設計することができる。siRNA配列およびmiRNA配列は、合成的に作製し、細胞外から添加することによって遺伝子のダウンレギュレーションを誘導することができ、あるいは発現系(例えばベクター)を使用して作製することもできる。好ましい一実施形態において、siRNAは合成的に作製される。
長鎖の二本鎖RNAを細胞内でプロセシングしてsiRNAを作製してもよい(例えばMyers (2003) Nature Biotechnology 21:324-328を参照されたい)。長鎖dsRNA分子は、対称な3’末端または5’末端オーバーハングを有していてもよく、この3’末端または5’末端オーバーハングは、例えば1個または2個の(リボ)ヌクレオチドで構成されていてもよく、あるいは長鎖dsRNA分子は平滑末端を有していてもよい。長鎖dsRNA分子は、25ヌクレオチド長以上であってもよい。長鎖dsRNA分子は、25~30ヌクレオチド長であることが好ましい。長鎖dsRNA分子は、25~27ヌクレオチド長であることがより好ましい。長鎖dsRNA分子は、27ヌクレオチド長であることが最も好ましい。30ヌクレオチド長以上のdsRNAは、pDECAPベクターを使用して発現させてもよい(Shinagawa et al., Genes and Dev., 17, 1340-5, 2003)。
別の方法では、ショートヘアピン構造のRNA分子(shRNA)を細胞において発現させる。shRNAは合成siRNAよりも安定である。shRNAは、短いループ配列で連結された短い逆方向反復配列からなる。一方の逆方向反復配列は、標的遺伝子に相補的である。細胞内においてshRNAは、DICERによるプロセシングを受けてsiRNAになり、このsiRNAが標的遺伝子のmRNAを分解して、その発現を抑制する。好ましい一実施形態において、shRNAは、ベクターからの転写によって内因性に(細胞内で)生成される。shRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーター(ヒトH1プロモーターやヒト7SKプロモーターなど)またはRNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下でshRNA配列をコードするベクターで細胞をトランスフェクトすることによって細胞内で生成させてもよい。あるいは、shRNAは、ベクターからの転写によって外因性に(インビトロで)合成してもよい。次いで得られたshRNAを細胞内に直接導入してもよい。shRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含むことが好ましい。shRNA配列の長さは40~100塩基長であることが好ましく、40~70塩基長であることがより好ましい。ヘアピン構造のステム部分の長さは19~30塩基対であることが好ましい。ステム部分は、ヘアピン構造を安定化させるためにG-U対を含んでいてもよい。
siRNA分子、長鎖dsRNA分子またはmiRNA分子は、(好ましくはベクター内に組み込まれた)核酸配列の転写による組換え技術によって作製してもよい。siRNA分子、長鎖dsRNA分子またはmiRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含むことが好ましい。
一実施形態において、siRNA、長鎖dsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって内因性に(細胞内で)生成される。ベクターは、当技術分野で公知の方法であればどのような方法で細胞に導入してもよい。これらのRNA配列の発現は、必要に応じて、組織に特異的な(例えば心臓、肝臓または腎臓に特異的な)プロモーターを使用して調節することができる。さらなる一実施形態において、siRNA、長鎖dsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって外因性に(インビトロで)生成される。
好適なベクターは、IL-11、IL-11Rαまたはgp130を抑制することができるオリゴヌクレオチド薬を発現するように構成されたオリゴヌクレオチドベクターであってもよい。このようなベクターは、ウイルスベクターであってもよく、プラスミドベクターであってもよい。オリゴヌクレオチド治療薬は、ウイルスベクターのゲノム中に組み込まれてもよく、発現を誘導する調節配列(例えばプロモーター)に作動可能に連結されていてもよい。「作動可能に連結する」とは、ヌクレオチド配列が調節配列の影響下または制御下で発現されるように、選択されたヌクレオチド配列と調節ヌクレオチド配列が共有結合で連結されている状態を含んでいてもよい。したがって、調節配列が、選択されたヌクレオチド配列の全体またはその一部を構成するヌクレオチド配列の転写を誘導することができる場合、該調節配列は、選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
プロモーターによって発現が誘導されるsiRNA配列をコードするウイルスベクターは、当技術分野で公知であり、オリゴヌクレオチド治療薬を長期にわたって発現できるという利点がある。ウイルスベクターとしては、レンチウイルス(Nature 2009 Jan 22; 457(7228):426-433)、アデノウイルス(Shen et al., FEBS Lett 2003 Mar 27;539(1-3)111-4)およびレトロウイルス(Barton and Medzhitov PNAS November 12, 2002 vol.99, no.23 14943-14945)が挙げられる。
別の実施形態において、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制が必要とされる部位へのオリゴヌクレオチド治療薬の送達を補助するように構成された担体を使用してもよい。このような担体としては、一般に、オリゴヌクレオチドと複合体化された正電荷を持つ担体(例えば、細胞透過性カチオン性ペプチド、カチオン性ポリマー、カチオン性デンドリマー、およびカチオン性脂質);オリゴヌクレオチドに結合された小分子(例えば、コレステロール、胆汁酸および脂質)、ポリマー、抗体およびRNA;または、ナノ粒子製剤中にカプセル化されたオリゴヌクレオチド(Wang et al., AAPS J. 2010 Dec; 12(4): 492-503)が挙げられる。
一実施形態において、ベクターは、核酸配列がRNAとして発現された場合に、センス鎖部分とアンチセンス鎖部分とが会合して二本鎖RNAが形成されるように、センス鎖方向とアンチセンス鎖方向の両方に核酸配列を含んでいてもよい。
あるいは、siRNA分子は、当技術分野で公知の標準的な固相合成法または液相合成法を使用して合成してもよい。ヌクレオチド間の結合は、リン酸ジエステル結合またはその他の結合であってもよく、例えば、P(O)S(チオエート);P(S)S(ジチオエート);P(O)NR’2;P(O)R’;P(O)OR6;CO;またはCONR’2(式中、RはH(または塩)またはアルキル(C1~12)であり、R6はアルキル(C1~9)である)の式で表される連結基が、-O-または-S-を介して隣接するヌクレオチドに連結したものが挙げられる。
天然の塩基に加えて、修飾ヌクレオチド塩基を使用することができ、修飾ヌクレオチド塩基は、これらを含むsiRNA分子に有利な特性を付与してもよい。
例えば、修飾塩基は、siRNA分子の安定性を向上させ、それによって、サイレンシングに必要とされるsiRNA分子の量を低減してもよい。修飾塩基を付加することによって、未修飾のsiRNAよりも安定性が向上または低下したsiRNA分子を作製してもよい。
「修飾ヌクレオチド塩基」は、修飾塩基および/または修飾糖が共有結合されたヌクレオチドを包含する。例えば、修飾ヌクレオチドとしては、3’位のヒドロキシル基および5’位のリン酸基以外の低分子量有機基が共有結合された糖を有するヌクレオチドが挙げられる。したがって、修飾ヌクレオチドとして、さらに、2’-O-メチルリボース、2’-O-アルキルリボース、2’-O-アリルリボース、2’-S-アルキルリボース、2’-S-アリルリボース、2’-フルオロリボース、2’-ハロリボース、2’-アジドリボースなどの2’位置換糖;炭素環式糖類似体;α-アノマー糖;アラビノース、キシロース、リキソースなどのエピマー糖;ピラノース糖、フラノース糖、およびセドヘプツロースが挙げられる。
修飾ヌクレオチドは当技術分野で公知であり、例えば、アルキル化プリン、アルキル化ピリミジン、アシル化プリン、アシル化ピリミジン、その他の複素環が挙げられる。このような部類のピリミジンおよびプリンは当技術分野で公知であり、例えば、プソイドイソシトシン、N4,N4-エタノシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデニン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、-D-マンノシルケウオシン、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、プソイドウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、ケウオシン、2-チオシトシン、5-プロピルウラシル、5-プロピルシトシン、5-エチルウラシル、5-エチルシトシン、5-ブチルウラシル、5-ペンチルウラシル、5-ペンチルシトシン、2,6-ジアミノプリン、メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニンおよび1-メチルシトシンが挙げられる。
RNAiを使用して、C.elegans、ショウジョウバエ、植物および哺乳動物の遺伝子をサイレンシングする方法は、当技術分野で公知である(Fire A, et al., 1998 Nature 391:806-811; Fire, A. Trends Genet. 15, 358-363 (1999); Sharp, P. A. RNA interference 2001. Genes Dev. 15, 485-490 (2001); Hammond, S. M., et al., Nature Rev. Genet. 2, 110-1119 (2001); Tuschl, T. Chem. Biochem. 2, 239-245 (2001); Hamilton, A. et al., Science 286, 950-952 (1999); Hammond, S. M., et al., Nature 404, 293-296 (2000); Zamore, P. D., et al., Cell 101, 25-33 (2000); Bernstein, E., et al., Nature 409, 363-366 (2001); Elbashir, S. M., et al., Genes Dev. 15, 188-200 (2001); WO0129058; WO9932619およびElbashir S M, et al., 2001 Nature 411:494-498)。
したがって、本発明は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130を発現する哺乳動物細胞(例えばヒト細胞)に適切に導入または発現された場合に、RNAi法によってIL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制することができる核酸を提供する。
IL-11、IL-11Rαまたはgp130(例えば、アクセッション番号:BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)でGenBankから入手可能な公知のmRNA配列)に対するオリゴヌクレオチドの核酸配列は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制またはサイレンシングするように設計してもよい。
前記核酸は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のmRNAの一部と実質的な配列同一性を有していてもよく、例えば、GenBankアクセッション番号NM_000641.3 GI:391353405(IL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(IL-11Rα)もしくはNM_001190981.1 GI:300244534(gp130)で示される配列またはこれらのmRNAに相補的な配列などの一部と実質的な配列同一性を有していてもよい。
前記核酸は二本鎖siRNAであってもよい。(当業者であれば十分に理解できるように、siRNA分子は3’末端に短いDNA配列をさらに含んでいてもよく、これについては後で詳しく説明する。)
あるいは、前記核酸はDNA(通常二本鎖DNA)であってもよく、このDNAが哺乳動物細胞内で転写されると、スペーサーを介して連結された2つの相補的部分を有するRNAが得られ、このRNAは、2つの相補的部分が互いにハイブリダイズした場合にヘアピン構造を取る。哺乳動物細胞において、このヘアピン構造部分は、DICERと呼ばれる酵素によってRNA分子から切断されて、2本の異なるRNA分子がハイブリダイズされた二本鎖RNAを得ることができる。
好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記核酸は、通常、配列番号4~7(IL-11)のいずれかで示す配列、または配列番号8~11(IL-11Rα)のいずれかで示す配列を標的とする。
mRNA転写産物の一本鎖領域(すなわち自己ハイブリダイズしていない領域)のみがRNAiの標的として適していると予想される。したがって、IL-11またはIL-11RαのmRNA転写産物のうち、配列番号4~7および8~11のいずれかによって示される配列に非常に類似しているその他の配列もRNAiの標的として適していると考えられる。このような標的配列の長さは、17~23ヌクレオチド長であることが好ましく、配列番号4~7および8~11のいずれかと(一方の末端で)少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個もしくは18個のヌクレオチドまたは19個のヌクレオチドすべてがオーバーラップしていることが好ましい。
したがって、本発明は、IL-11またはIL-11Rαを発現する哺乳動物細胞に適切に導入または発現された場合に、RNAi法によってIL-11またはIL-11Rαの発現を抑制することができる核酸を提供し、この核酸は、通常、配列番号4~7および8~11のいずれかで示される配列を標的とする。
「通常の標的とする」とは、前記核酸が、配列番号4~7および8~11のいずれかとオーバーラップする配列を標的としてもよいことを指す。具体的には、前記核酸は、配列番号4~7および8~11のいずれかで示される配列よりもわずかに長いか、わずかに短いことを除いては、これらの配列と同一のヒトIL-11 mRNA配列またはヒトIL-11Rα mRNA配列(好ましくは17~23ヌクレオチド長)を標的としてもよい。
本発明の核酸と標的配列の間で完全な同一性/相補性があることが好ましいが、これは必須ではないと予想される。したがって、本発明の核酸は、IL-11 mRNAまたはIL-11Rα mRNAと比較して単一塩基ミスマッチを含んでいてもよい。しかしながら、単一塩基ミスマッチであっても、その存在によって効率の低下が予想されるため、ミスマッチが存在しないことが好ましい。3’末端オーバーハングが存在する場合、3’末端オーバーハングはミスマッチの数として考慮に入れなくてもよい。
「相補性」とは、通常見られるような、天然のリボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドからなる核酸同士の塩基対合に限定されず、非天然ヌクレオチドを含む本発明の核酸とmRNAの間の塩基対合も包含する。
一実施形態において、前記核酸(本明細書において二本鎖siRNAと呼ぶ)には、配列番号12~15に示す二本鎖RNA配列が含まれる。別の一実施形態において、前記核酸(本明細書において二本鎖siRNAと呼ぶ)には、配列番号16~19に示す二本鎖RNA配列が含まれる。
しかしながら、同じIL-11 mRNA領域またはIL-11Rα mRNA領域を標的とするわずかに短いか、わずかに長い配列でも、効果的であると予想される。具体的には、17~23bpの長さの二本鎖配列でも効果的であると予想される。
前記二本鎖RNAを構成する各鎖は2塩基の短い3’末端オーバーハングを有していてもよく、このオーバーハングはDNAであってもよく、RNAであってもよい。3’末端DNAオーバーハングは、3’末端RNAオーバーハングを使用した場合と比べてsiRNA活性に対する効果が見られないが、核酸鎖を化学合成する際のコストが低くなる(Elbashirら,2001c)。この理由から、2塩基のDNAが好ましい場合がある。
両3’末端に2塩基のオーバーハングが存在する場合、これらのオーバーハングは互いに対称であってもよいが、対称であることが必須ではない。実際、センス鎖(上の鎖)の3’末端オーバーハングは、mRNAの認識と分解に関与しないため、RNAi活性には関連しない(Elbashirら,2001a,2001b,2001c)。
ショウジョウバエでのRNAi実験では、アンチセンス鎖の3’末端オーバーハングがmRNAの認識および標的指向性に関与している可能性が示されているが(Elbashirら,2001c)、哺乳動物細胞では、3’末端オーバーハングはsiRNAのRNAi活性に必要だとは考えられていない。したがって、3’末端オーバーハングが誤ったアニーリングを起こしても、哺乳動物細胞では影響はほとんどないと考えられる(Elbashirら,2001c;Czaudernaら,2003)。
したがって、siRNAのアンチセンス鎖においては、どのような2塩基オーバーハングを使用してもよい。しかしながら、2塩基のオーバーハングは-UUまたは-UG(オーバーハングがDNAである場合は-TTまたは-TG)であることが好ましく、-UU(または-TT)であることがより好ましい。-UU(または-TT)からなる2塩基オーバーハングが最も効果的であり、RNAポリメラーゼIIIの転写終結シグナル(転写終結シグナルはTTTTTである)と一致する(すなわち転写終結シグナルの一部を構成することができる)。したがって、この2塩基が最も好ましい。AA、CCおよびGGの2塩基を使用してもよいが、それほど効果的ではなく、よってあまり好ましくない。
さらに、siRNAは3’末端オーバーハングを全く含んでいなくてもよい。
さらに、本発明は、前述の二本鎖核酸の一方を構成鎖とする一本鎖核酸(本明細書において一本鎖siRNAと呼ぶ)を提供し、この一本鎖siRNAは、3’末端オーバーハングを有していることが好ましいが、3’末端オーバーハングを有していなくてもよい。さらに、本発明は、このような一本鎖核酸のペアを含むキットを提供し、これらの一本鎖核酸はインビトロで互いにハイブリダイズして前述の二本鎖siRNAを形成することができ、この二本鎖siRNAは次いで細胞に導入されてもよい。
さらに、本発明は、哺乳動物細胞において、2つの相補的部分が自己ハイブリダイズして二本鎖モチーフを形成することができるRNA(本明細書においてshRNAとも呼ぶ)に転写されるDNAを提供し、形成される二本鎖モチーフとしては、例えば、配列番号12~15および16~19からなる群から選択される配列、またはこれらの配列のいずれかにおいて単一の塩基対が置換されている配列が挙げられる。
前記相補的部分は、通常、スペーサーによって連結され、このスペーサーは、これら2つの相補的部分が互いにハイブリダイズすることが可能となるような適切な長さと配列を有する。2つの相補的部分(すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖)は、5’末端と3’末端で連結されていてもよく、どちらが5’末端側であってもよい。前記スペーサーは、通常、約4~12ヌクレオチド長、好ましくは4~9ヌクレオチド長、より好ましくは6~9ヌクレオチド長の短い配列であってもよい。
前記スペーサーの5’末端(上流の相補的部分の3’末端の直後)は、-UU-または-UG-の2塩基からなることが好ましく、ここでも、-UU-がより好ましい(しかし、ここでも、これらの特定の2塩基の使用は必須ではない)。OligoEngine社(米国ワシントン州シアトル)のpSuperシステムでの使用に推奨される好適なスペーサーはUUCAAGAGAである。このスペーサーやその他のスペーサーを用いた場合、スペーサーの両末端は互いにハイブリダイズされるため、例えば、配列番号12~15または16~19に示される配列そのものよりも、少数の塩基対(例えば1塩基対または2塩基対)だけ長い二本鎖モチーフが得られる。
同様に、転写されたRNAは、下流の相補的部分に由来する3’末端オーバーハングを含むことが好ましい。ここでも、このオーバーハングとしては-UUまたは-UGが好ましく、-UUがより好ましい。
前述したように、このようなshRNA分子は哺乳動物細胞内でDICER酵素によって切断され、ハイブリダイズされたdsRNAを構成する各一本鎖の一方またはその両方が3’末端オーバーハングを含む二本鎖siRNAを形成してもよい。
本発明の核酸を合成するための技術は当技術分野においてよく知られていることは言うまでもない。
当業者であれば、よく知られている技術および市販の材料を使用して、本発明のDNAに適した転写ベクターを容易に構築することができるであろう。具体的には、本発明のDNAには、プロモーターや転写終結配列などの制御配列が連結される。
OligoEngine社製(米国ワシントン州シアトル)の市販品であるpSuperシステムおよびpSuperiorシステムが特に好適である。これらのシステムでは、ポリメラーゼIIIプロモーター(H1)とT5転写終結配列を使用しており、T5転写終結配列は転写産物の3’末端に2個のU残基を付加する(この転写産物がDICERでプロセシングされることによって、一方のRNA鎖に3’末端UUオーバーハングが付加されたsiRNAが得られる)。
別の好適なシステムは、Shinら(RNA, 2009 May; 15(5): 898-910)に記載されており、このシステムでは、別のポリメラーゼIIIプロモーター(U6)が使用されている。
本発明の二本鎖siRNAは、後述するような公知の技術を使用して、インビトロまたはインビボにおいて哺乳動物細胞に導入することにより、IL-11またはIL-11受容体の発現を抑制してもよい。
同様に、本発明のDNAを含む転写ベクターは、後述するような公知の技術を使用してインビトロまたはインビボにおいて腫瘍細胞に導入し、RNAを一時的または安定に発現させることにより、IL-11またはIL-11受容体の発現を抑制してもよい。
したがって、本発明はさらに、哺乳動物(例えばヒト)細胞においてIL-11またはIL-11受容体の発現を抑制する方法であって、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを前記細胞に投与することを含む方法を提供する。
同様に、本発明はさらに、代謝性疾患を治療する方法であって、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを対象に投与することを含む方法を提供する。
さらに、本発明は、治療方法、好ましくは、代謝性疾患を治療する方法において使用するための、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターを提供する。
さらに、本発明は、代謝性疾患の治療用医薬品の調製における、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターの使用を提供する。
さらに、本発明は、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターと、1種以上の薬学的に許容される担体との混合物を含む組成物を提供する。好適な担体としては、細胞膜透過性を向上させることができる親油性担体または小胞が挙げられる。
本発明の二本鎖siRNAおよびDNAベクターの投与に適した材料および方法は当技術分野でよく知られており、RNAi技術は様々な可能性を秘めていることから、改良された方法が開発中である。
核酸を哺乳動物細胞に導入するにあたり、通常、様々な技術を利用することができる。使用する技術は、核酸をインビトロで培養細胞に導入するのか、それともインビボで患者の細胞に導入するのかによって選択される。インビトロにおける哺乳動物細胞への核酸の導入に適した技術としては、リポソームの使用、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、細胞融合法、DEAEデキストラン法およびリン酸カルシウム沈殿法が挙げられる。インビボにおける遺伝子導入技術としては、ウイルスベクター(通常、レトロウイルスベクター)を使用したトランスフェクション、ウイルス外被タンパク質-リポソーム複合体を使用したトランスフェクション(Dzau et al. (2003) Trends in Biotechnology 11, 205-210)が挙げられる。
具体的には、インビトロまたはインビボにおいて本発明の核酸を細胞に投与するのに好適な技術は、以下の文献に記載されている。
総説:Borkhardt, A. 2002. Blocking oncogenes in malignant cells by RNA interference--new hope for a highly specific cancer treatment? Cancer Cell. 2:167-8. Hannon, G.J. 2002. RNA interference. Nature. 418:244-51. McManus, M.T., and P.A. Sharp. 2002. Gene silencing in mammals by small interfering RNAs. Nat Rev Genet. 3:737-47. Scherr, M., M.A. Morgan, and M. Eder. 2003b. Gene silencing mediated by small interfering RNAs in mammalian cells. Curr Med Chem. 10:245-56. Shuey, D.J., D.E. McCallus, and T. Giordano. 2002. RNAi: gene-silencing in therapeutic intervention. Drug Discov Today. 7:1040-6.
リポソームを使用した全身送達:Lewis, D.L., J.E. Hagstrom, A.G. Loomis, J.A. Wolff, and H. Herweijer. 2002. Efficient delivery of siRNA for inhibition of gene expression in postnatal mice. Nat Genet. 32:107-8. Paul, C.P., P.D. Good, I. Winer, and D.R. Engelke. 2002. Effective expression of small interfering RNA in human cells. Nat Biotechnol. 20:505-8. Song, E., S.K. Lee, J. Wang, N. Ince, N. Ouyang, J. Min, J. Chen, P. Shankar, and J. Lieberman. 2003. RNA interference targeting Fas protects mice from fulminant hepatitis. Nat Med. 9:347-51. Sorensen, D.R., M. Leirdal, and M. Sioud. 2003. Gene silencing by systemic delivery of synthetic siRNAs in adult mice. J Mol Biol. 327:761-6.
ウイルスを使用した移入:Abbas-Terki, T., W. Blanco-Bose, N. Deglon, W. Pralong, and P. Aebischer. 2002. Lentiviral-mediated RNA interference. Hum Gene Ther. 13:2197-201. Barton, G.M., and R. Medzhitov. 2002. Retroviral delivery of small interfering RNA into primary cells. Proc Natl Acad Sci U S A. 99:14943-5. Devroe, E., and P.A. Silver. 2002. Retrovirus-delivered siRNA. BMC Biotechnol. 2:15. Lori, F., P. Guallini, L. Galluzzi, and J. Lisziewicz. 2002. Gene therapy approaches to HIV infection. Am J Pharmacogenomics. 2:245-52. Matta, H., B. Hozayev, R. Tomar, P. Chugh, and P.M. Chaudhary. 2003. Use of lentiviral vectors for delivery of small interfering RNA. Cancer Biol Ther. 2:206-10. Qin, X.F., D.S. An, I.S. Chen, and D. Baltimore. 2003. Inhibiting HIV-1 infection in human T cells by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA against CCR5. Proc Natl Acad Sci U S A. 100:183-8. Scherr, M., K. Battmer, A. Ganser, and M. Eder. 2003a. Modulation of gene expression by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA. Cell Cycle. 2:251-7. Shen, C., A.K. Buck, X. Liu, M. Winkler, and S.N. Reske. 2003. Gene silencing by adenovirus-delivered siRNA. FEBS Lett. 539:111-4.
ペプチドの送達:Morris, M.C., L. Chaloin, F. Heitz, and G. Divita. 2000. Translocating peptides and proteins and their use for gene delivery. Curr Opin Biotechnol. 11:461-6. Simeoni, F., M.C. Morris, F. Heitz, and G. Divita. 2003. Insight into the mechanism of the peptide-based gene delivery system MPG: implications for delivery of siRNA into mammalian cells. Nucleic Acids Res. 31:2717-24.
標的細胞へのsiRNAの送達に適していると考えられる他の技術としては、米国特許第6,649,192(B)号明細書および米国特許第5,843,509(B)号明細書に記載されているような、ナノ粒子またはナノカプセルを使用した方法が挙げられる。
IL-11媒介性シグナル伝達の抑制
本発明の実施形態において、IL-11の作用を抑制することができる薬剤は、以下の機能特性のうちの1つ以上を有していてもよい。
・IL-11媒介性シグナル伝達の抑制
・IL-11Rα:gp130受容体複合体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達の抑制
・gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達(すなわちIL-11のトランスシグナル伝達)の抑制
・IL-11媒介性プロセスの抑制
・IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子発現/タンパク質発現の抑制
これらの特性は、適切なアッセイにおいて関連因子を分析することによって測定することができ、適切なコントールと前記薬剤の性能を比較することを含んでいてもよい。当業者であれば、所定のアッセイにおいて適切なコントロール条件を決定することができる。
IL-11媒介性シグナル伝達および/またはIL-11媒介性プロセスは、IL-11断片を介したシグナル伝達、およびIL-11またはその断片を含むポリペプチド複合体を介したシグナル伝達を含む。IL-11媒介性シグナル伝達は、ヒトIL-11および/またはマウスIL-11を介したシグナル伝達であってもよい。IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11またはIL-11含有複合体が結合する受容体に、IL-11またはIL-11含有複合体が結合することによって起こるシグナル伝達であってもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の生物学的活性を抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む受容体(例えばIL-11Rα:gp130)を介したシグナル伝達により活性化される1つ以上のシグナル伝達経路に対するアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む1つ以上の免疫受容体複合体(例えばIL-11Rα:gp130)を介したシグナル伝達を抑制することができる。本発明の様々な態様において、本明細書で提供する薬剤は、IL-11媒介性のシスシグナル伝達および/またはトランスシグナル伝達を抑制することができる。本発明の様々な態様によるいくつかの実施形態において、本明細書で提供する薬剤は、IL-11媒介性シスシグナル伝達を抑制することができる。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11媒介性シグナル伝達の量と比較して、その100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11媒介性シグナル伝達を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11媒介性シグナル伝達の量と比較して、その1倍未満、例えば0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11媒介性シグナル伝達を低減することができる。
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11Rα:gp130受容体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達であってもよい。このようなシグナル伝達は、例えばIL-11Rαおよびgp130を発現する細胞をIL-11で処理するか、またはIL-11Rαとgp130を発現する細胞においてIL-11の産生を刺激することによって分析することができる。
本発明の薬剤によるIL-11媒介性シグナル伝達の抑制のIC50は、例えば、IL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞を、ヒトIL-11および本発明の薬剤の存在下で培養し、DNAへの3H-チミジンの取り込みを測定することによって測定してもよい。いくつかの実施形態において、このようなアッセイにおける本発明の薬剤のIC50値は、10μg/ml以下であってもよく、好ましくは、5μg/ml以下、4μg/ml以下、3.5μg/ml以下、3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.9μg/ml以下、0.8μg/ml以下、0.7μg/ml以下、0.6μg/ml以下または0.5μg/ml以下である。
いくつかの実施形態において、IL-11媒介性シグナル伝達は、gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達であってもよい。いくつかの実施形態において、IL-11:IL-11Rα複合体は可溶性であってもよく、例えばIL-11Rαの細胞外ドメインとIL-11の複合体であってもよく、可溶性IL-11Rαアイソフォーム/断片とIL-11の複合体であってもよい。いくつかの実施形態において、可溶性IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶性(分泌型)アイソフォームであるか、または膜結合型IL-11Rαの細胞外ドメインがタンパク質分解されることによって遊離した産物である。
いくつかの実施形態において、IL-11:IL-11Rα複合体は、膜結合型であってもよく、例えば膜結合型IL-11RαとIL-11からなる複合体であってもよい。gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達は、IL-11:IL-11Rα複合体でgp130発現細胞を処理することによって分析することができ、例えば、ペプチドリンカーを介してIL-11Rαの細胞外ドメインに連結されたIL-11を含む組換え融合タンパク質(例えばhyper IL-11)でgp130発現細胞を処理することによって分析することができる。hyper IL-11は、IL-11Rα(ドメイン1~3を構成する1~317番目のアミノ酸残基;UniProtKB:Q14626)の断片と、IL-11(UniProtKB:P20809の22~199番目のアミノ酸残基)と、20アミノ酸長のリンカー(配列番号20)を使用して構築した。hyper IL-11のアミノ酸配列を配列番号21に示す。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、gp130へのIL-11:IL-11Rα複合体の結合を介したシグナル伝達を抑制可能であってもよく、IL-11Rα:gp130受容体へのIL-11の結合を介したシグナル伝達を抑制することもできる。
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤は、IL-11媒介性プロセスを抑制可能であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を抑制可能であってもよい。遺伝子および/またはタンパク質の発現は、本明細書に記載の方法または当技術分野において当業者によく知られている方法により測定することができる。
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現量と比較して、その100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下にまでIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を抑制可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、該薬剤の非存在下における(または適切なコントロール薬剤の存在下における)IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現量と比較して、その1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下または0.1倍以下にまでIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を抑制することができる。
代謝性疾患の治療/予防
本発明は、例えば、本明細書で述べる代謝性疾患などの代謝性疾患の治療および/または予防のための方法ならびに発明品(薬剤および組成物)を提供する。
治療は、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制(すなわちIL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用)により達成される。すなわち、本発明は、例えば、細胞、組織/器官/器官系、対象などにおいて、IL-11媒介性シグナル伝達の抑制を介して、代謝性疾患を治療/予防するものである。いくつかの実施形態において、本開示によるIL-11媒介性シグナル伝達の抑制は、肝臓の細胞(例えば肝細胞)においてIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することを含む。
したがって、本発明は、代謝性疾患の治療方法または予防方法において使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を提供する。
また、代謝性疾患の治療方法または予防方法において使用するための医薬品の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の使用を提供する。
さらに、代謝性疾患を治療または予防する方法であって、治療を必要とする対象に、インターロイキン11(IL-11)媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
本発明の有用性は、あらゆる代謝性疾患の治療/予防に及ぶ。本発明は、代謝性疾患により引き起こされる疾患/状態または代謝性疾患により悪化する疾患/状態を治療/予防するものである。いくつかの実施形態において、本発明は、予後不良の代謝性疾患を有する対象の疾患/状態を治療/予防するものである。
いくつかの実施形態において、治療/予防が行われる代謝性疾患は、代謝性疾患による影響を受ける器官/組織/対象において、例えば、正常な器官/組織/対象と比較して(すなわち、代謝性疾患の不在下の器官/組織/対象と比較して)、IL-11および/またはIL-11Rαの発現(すなわち、その遺伝子および/またはタンパク質の発現)が増加していることを特徴としてもよい。
本発明による代謝性疾患の治療/予防は、IL-11のアップレギュレーションに関連する代謝性疾患の治療/予防であってもよく、例えば、代謝性疾患の症状が認められるか、代謝性疾患の症状を発症する可能性のある細胞または組織におけるIL-11のアップレギュレーションに関連する代謝性疾患の治療/予防であってもよく、細胞外IL-11またはIL-11Rαのアップレギュレーションに関連する代謝性疾患の治療/予防であってもよい。
代謝性疾患は、どのような組織、器官または器官系に影響を及ぼすものであってもよい。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、いくつかの組織/器官/器官系に影響を及ぼすものであってもよい。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、肝臓、膵臓、循環器系、消化器系、排泄器系、呼吸器系、腎臓系、生殖器系、循環系、筋肉系、内分泌系、外分泌系、リンパ系、免疫系、神経系および/または骨格系のうちの1つ以上に影響を及ぼす。
本明細書で開示された様々な態様によれば、いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝機能が低下していること、または肝臓の細胞(例えば肝細胞)の機能が低下していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、(例えば血清中の)ALT値および/もしくはAST値が上昇していること、ならびに/またはGSH値が低下していることを特徴とする。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、肝臓の炎症および/または線維症を特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞(例えば肝細胞)による炎症促進因子および/または線維化促進因子(例えば、IL-11、IL-6、CCL2および/またはCCL5)の遺伝子/タンパク質の発現が増加していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞によるコラーゲンの遺伝子/タンパク質の発現が増加していること、および/または肝臓中のコラーゲン含有量が増加していることを特徴とする。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓中の筋線維芽細胞の数/割合が増加していることを特徴とする。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞(例えば肝細胞)のアポトーシスおよび/または壊死が増加していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、アポトーシスを起こした肝細胞および/または壊死を起こした肝細胞の数/割合が増加していることを特徴とする。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞(例えば肝細胞)による脂肪酸合成酵素(FASN)の遺伝子/タンパク質の発現が増加していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞(例えば肝細胞)における活性酸素種(ROS)量が増加していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞(例えば肝細胞)によるNOX4の遺伝子/タンパク質の発現が増加していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞(例えば肝細胞)におけるERKおよび/またはJNKの活性化レベルが増加していることを特徴とする。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝臓の細胞(例えば肝細胞)または肝臓におけるトリグリセリド値が増加していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高血糖を特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高トリグリセリド血症を特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、高コレステロール血症を特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、体重が増加していることを特徴とする。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、代謝性疾患の不在下と比較して、肝重量が増加していることを特徴とする。
治療は、代謝性疾患の発症または進行の抑制/遅延/予防に効果的であってもよい。治療は、代謝性疾患の1つ以上の症状の悪化の抑制/遅延/予防に効果的であってもよい。治療は、代謝性疾患の1つ以上の症状の改善に効果的であってもよい。治療は、代謝性疾患の重症度の低下および/または代謝性疾患の1つ以上の症状の回復に効果的であってもよい。治療は、代謝性疾患の影響の回復に効果的であってもよい。
「予防」は、代謝性疾患の発症の予防および/または代謝性疾患の悪化の予防であってもよく、例えば、代謝性疾患の後期または慢性期への進行の予防であってもよい。
本発明の様々な態様によれば、代謝性疾患を治療および/または予防する本発明の方法は、
血中脂質値を低減すること;
血糖値を低減すること;
(例えば、グルコース不耐性の対象において)耐糖能を増強すること;
(例えば、インスリン抵抗性の対象において)インスリン耐性を増強すること;
膵機能を増強すること;
(例えば、過体重/肥満の対象において)体重を低減すること;
体脂肪量を低減すること;
除脂肪体重を増加させること;
空腹時血糖値を低減すること;
血清トリグリセリド値を低減すること;
血清コレステロール値を低減すること;
耐糖能を増強すること;
膵機能(例えば、外分泌機能および/または内分泌機能)を増強すること;
膵組織の増殖を増強すること;
膵組織を再生すること;
膵重量を増加させること;
膵星細胞(PSC)による、膵星細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制すること;
膵臓内の筋線維芽細胞の数/割合を低減すること;
膵臓中のヒドロキシプロリン量を低減すること;
膵臓中のコラーゲン量を低減すること;
膵損傷を低減すること;
膵島細胞過形成を低減すること;
グルカゴンの発現を低減すること;
インスリンの発現を増強すること;
(例えば、消耗疾患(例えば、悪液質)を有する対象において)体重を増加させること;
肝臓においてIL-11タンパク質の発現を低減すること;
肝臓においてErkの活性化を低減すること;
肝臓においてJNKの活性化を低減すること;
肝臓においてカスパーゼ3の切断を低減すること;
肝臓中のROS量を低減すること;
肝臓においてNOX4の発現を低減すること;
例えば肝臓などの脂肪変性を抑制すること;
肝臓中のトリグリセリド量を低減すること;
脂肪酸合成酵素の発現を低減すること;
血清ALT値および/または血清AST値を低減すること;
炎症促進性因子(例えば、TNFα、CCL2、CCL5、IL-6、CXCL5および/またはCXCL1)の発現を低減すること;
線維化促進因子(例えば、IL-11、TIMP1、ACTA2、TGFβ1、MMP2、TIMP2、MMP9、COL1A2、COL1A1および/またはCOL3A1)の発現を低減すること;
血清TGFβ1値を低減すること;
肝星細胞による、IL-11、ACTA2、MMP2、TGFβ1、PDGF、ANGII、bFGF、CCL2および/またはH2O2の発現/産生を低減すること;
肝星細胞による、肝星細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制すること;
肝臓内の筋線維芽細胞の数/割合を低減すること;
肝臓中のヒドロキシプロリン量を低減すること;
肝臓中のコラーゲン量を低減すること;
肝機能を増強すること;
血清GSH値を上昇させること;
代謝性疾患により影響を受ける器官/組織の機能を増強すること;
肝損傷を低減すること;
肝細胞死を低減すること;
脂肪毒性を原因とする細胞死を低減すること;
肝細胞においてIL-11媒介性シグナル伝達を低減すること;ならびに
肝臓においてCD45+細胞の数/割合を低減すること
のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
本明細書に記載の様々な態様および実施形態によれば、代謝性疾患の治療/予防は、より具体的には、例えば、所定の器官系/器官/組織/細胞種における、脂肪毒性の抑制、低減または予防を含む。いくつかの実施形態において、代謝性疾患の治療/予防は、肝臓(例えば、肝細胞)における脂肪毒性の抑制/低減/予防を含む。
投与
IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の投与は、対象が利益を受けるのに十分な「治療に有効な」量または「予防に有効な」量で行うことが好ましい。
実際の投与量、投与速度および投与後の時間推移は、前記疾患の特性および重症度ならびに薬剤の特性に左右される。治療の処方(例えば用量の決定など)は、一般医およびその他の分野の医師の責任下で行われ、通常、治療の対象となる疾患/状態、個々の対象の状態、送達部位、投与方法、および医師によく知られているその他の要因を考慮に入れて行われる。このような手法およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsに記載されている。
本発明の薬剤は、複数回投与してもよい。1回以上の投与または各回の投与と同時にまたは連続して別の治療剤を投与してもよい。
複数回の投与は所定の時間間隔を空けて行ってもよく、この時間間隔は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日もしくは31日、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月もしくは6ヶ月であってもよい。一例として、7日ごとに1回、14日ごとに1回、21日ごとに1回、または28日ごとに1回(±3日、±2日または±1日)投与してもよい。
治療用途において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤は、当業者によく知られている1種以上の薬学的に許容されるその他の成分とともに医薬品または医薬製剤として製剤化することが好ましい。薬学的に許容されるその他成分としては、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤および甘味剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において、「薬学的に許容される」とは、合理的なベネフィット・リスク比に相応して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題や合併症を引き起こすことなく、妥当な医学的判断の範囲内において、投与対象(例えばヒト)の組織との接触における使用に適した化合物、成分、材料、組成物、剤形などを指す。さらに、担体、アジュバント、賦形剤などはそれぞれ、製剤中の他の成分との適合性の点において「許容される」ものでなければならない。
好適な担体、アジュバント、賦形剤などは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 1994などの、医薬品についての標準的な教科書に記載されている。
前記製剤は、薬学分野でよく知られている方法であれば、どのような方法で調製してもよい。このような方法は、1種以上の副成分を構成する担体と活性化合物とを混合する工程を含む。一般に、製剤は、担体(例えば、液体担体、微粉砕された固体担体など)と活性化合物を均一かつ密に混合し、得られた混合物を必要に応じて成形することによって調製される。
前記製剤は、局所投与経路、非経口投与経路、全身投与経路、静脈内投与経路、動脈内投与経路、筋肉内投与経路、髄腔内投与経路、眼内投与経路、結膜内投与経路、皮下投与経路、経口投与経路、経皮投与経路(注射を含んでいてもよい)で投与される製剤として調製してもよい。注射製剤は、滅菌溶媒または等張溶媒中に選択された薬剤を含んでいてもよい。前記製剤および投与方法は、本発明の薬剤および治療を受ける疾患に応じて選択してもよい。
IL-11およびIL-11受容体の検出
本発明の態様および実施形態のいくつかは、対象から得られた試料における、IL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)の発現の検出に関する。
いくつかの態様および実施形態において、本発明は、(タンパク質としての、またはIL-11もしくはIL-11受容体をコードするオリゴヌクレオチドとしての)IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーション(過剰発現)と、IL-11の作用を抑制することができる薬剤またはIL-11もしくはIL-11受容体の発現を阻害もしくは低減することができる薬剤を用いた治療に対する適合性の指標としての、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションの検出に関する。
発現のアップレギュレーションは、所定の種類の細胞または組織において通常予想される発現量を上回る発現を含む。細胞または組織において関連因子の発現量を測定することによってアップレギュレーションを測定してもよい。対象から得られた細胞試料または組織試料における関連因子の発現量を、該関連因子の基準量(例えば、同じ種類の細胞もしくは組織または対応する細胞もしくは組織における該関連因子の正常な発現量を示す数値または数値範囲)と比較してもよい。いくつかの実施形態において、基準量は、コントロール試料(例えば、健常対象から得られた対応する細胞もしくは組織、または同じ対象の健常組織から得られた対応する細胞もしくは組織)におけるIL-11またはIL-11受容体の発現を検出することによって決定してもよい。いくつかの実施形態において、基準量は、標準曲線または標準データセットから得てもよい。
発現量は、絶対比較で定量してもよく、あるいは相対比較で定量してもよい。
いくつかの実施形態において、試験試料中の発現量が基準量の少なくとも1.1倍である場合に、IL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)がアップレギュレートされていると考えてもよい。より好ましくは、アップレギュレートされている場合の発現量は、基準量の少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも5.0倍、少なくとも6.0倍、少なくとも7.0倍、少なくとも8.0倍、少なくとも9.0倍および少なくとも10.0倍から選択してもよい。
発現量は、PCRを用いたアッセイ、インサイチューハイブリダイゼーションアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、免疫学的アッセイ、免疫組織化学的アッセイなどの公知の様々なインビトロ分析技術のいずれかによって測定してもよい。
一例として、好適な技術は、IL-11またはIL-11受容体に結合することができる薬剤と試料を接触させ、IL-11またはIL-11受容体と該薬剤からなる複合体の形成を検出することによって、該試料中のIL-11またはIL-11受容体の量を検出する方法を含む。前記薬剤は、適切な結合分子であればどのようなものであってもよく、例えば、抗体、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、小分子などであってもよく、形成された複合体が検出(例えば可視化)できるように標識されていてもよい。このような複合体の検出に適した標識および方法は当技術分野でよく知られており、例えば、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、エオシン、NDB、緑色蛍光タンパク質(GFP);ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)などの希土類元素キレート;テトラメチルローダミン、テキサスレッド、4-メチルウンベリフェロン、7-アミノ-4-メチルクマリン、Cy3、Cy5)、同位体マーカー、放射性同位元素(例えば、32P、33P、35S)、化学発光標識(例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール)、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ)、抗体、リガンドおよび受容体が挙げられる。検出技術は当業者によく知られており、標識剤に応じて選択することができる。適切な技術としては、オリゴヌクレオチドタグのPCR増幅、質量分析、(例えばレポータータンパク質による基質の酵素変換によって生成される)蛍光または色の検出、または放射能の検出が挙げられる。
アッセイは、試料中のIL-11またはIL-11受容体の量を定量できるように構成されていてもよい。試験試料から定量したIL-11またはIL-11受容体の量を基準量と比較してもよく、このような比較によって、試験試料中に含まれるIL-11またはIL-11受容体の量が、選択した統計学的有意差の程度で基準値よりも高いのか、あるいは低いのかを判断してもよい。
検出されたIL-11またはIL-11受容体を定量することによって、IL-11またはIL-11受容体をコードする遺伝子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションまたは増幅を測定してもよい。試験試料が線維化細胞を含んでいる場合、このようなアップレギュレーション、ダウンレギュレーションまたは増幅を基準量と比較して、統計学的有意差の有無を判断してもよい。
対象から得られる試料はどのような種類のものであってもよい。生体試料は、どのような組織または体液から得てもよく、例えば、血液試料、血液由来試料、血清試料、リンパ液試料、精液試料、唾液試料、滑液試料のいずれであってもよい。血液由来試料は、患者の血液に由来する選択された画分であってもよく、例えば、選択された細胞含有画分、血漿画分、血清画分のいずれであってもよい。試料は、組織試料もしくは生検試料、または対象から単離した細胞を含んでいてもよい。また、試料は、生検や穿刺吸引などの公知の技術で採取してもよい。さらに、試料は、IL-11の発現量を測定するまで保存し、かつ/またはIL-11の発現量を測定する前に処理を行ってもよい。
対象から得られた試料を使用して、該対象におけるIL-11またはIL-11受容体のアップレギュレーションを測定してもよい。
好ましい実施形態のいくつかにおいて、試料は、代謝性疾患により影響を受ける組織/器官から得られた組織試料(例えば生検試料)であってもよい。試料は細胞を含んでいてもよい。
対象においてIL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)の発現のアップレギュレーションが確認されたことに基づいて、本発明に従って治療/予防を行う対象を選択してもよい。また、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションを、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に適した代謝性疾患のマーカーとして使用してもよい。
アップレギュレーションは、所定の組織におけるアップレギュレーションであってもよく、所定の組織に由来する選択された細胞におけるアップレギュレーションであってもよい。好ましい組織は、肝組織であってもよく、膵組織であってもよい。IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションは、循環体液(例えば血液)において測定してもよく、または血液由来試料において測定してもよい。アップレギュレーションは、細胞外IL-11またはIL-11Rαのアップレギュレーションであってもよい。いくつかの実施形態において、発現は、局所または全身でアップレギュレートされていてもよい。
以下の節で述べる説明では、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を対象に投与してもよい。
診断および予後
IL-11またはIL-11受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含む複合体)の発現のアップレギュレーションの検出は、代謝性疾患を診断して、代謝性疾患の発症のリスクがある対象を特定する方法において使用してもよく、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定または予測を行う方法において使用してもよい。
「発症する」および「発症」という用語、ならびに「発症する」という用語のその他の形態は、障害/疾患の発症、または障害/疾患の継続もしくは進行を指してもよい。
いくつかの実施形態において、例えば、対象の生体またはこれに由来する選択された細胞/組織において代謝性疾患の存在を示すその他の症状の有無などに基づいて、対象が代謝性疾患を保有または罹患している疑いがあると判断してもよく、あるいは、例えば、遺伝的素因があること、または代謝性疾患の危険因子であることが知られている環境条件への曝露があることから、代謝性疾患の発症のリスクがあると考えてもよい。また、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションを測定することによって、診断の確定または疑いがあるという診断の確定を行ってもよく、あるいは対象が代謝性疾患を発症するリスクがあることを確認してもよい。また、IL-11またはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションを測定することによって、代謝性疾患または素因が、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤による治療に適していることを診断してもよい。
したがって、代謝性疾患に罹患している対象、または代謝性疾患に罹患している疑いがある対象に予後を提供する方法であって、前記対象から得られた試料において、IL-11またはIL-11受容体の発現がアップレギュレートされているのかどうかを判定すること、および前記判定に基づいて、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた前記対象の治療の予後を提供することを含む方法を提供してもよい。
いくつかの態様において、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定もしくは予測を行う方法または診断方法は、IL-11またはIL-11受容体の発現量の測定を必要としなくてもよいが、IL-11またはIL-11受容体の発現または活性のアップレギュレーションを予測する遺伝因子を対象において測定することに基づいていてもよい。そのような遺伝因子としては、IL-11もしくはIL-11受容体の発現もしくは活性のアップレギュレーションまたはIL-11媒介性シグナル伝達のアップレギュレーションと相関し、かつ/またはこれらを予測可能な、IL-11、IL-11Rαおよび/またはgp130の遺伝子変異、一塩基変異多型(SNP)または遺伝子増幅の測定が挙げられる。遺伝因子を使用して病態の素因または治療に対する反応性を予測することは当技術分野で知られており、例えば、Peter Starkel Gut 2008;57:440-442; Wright et al., Mol. Cell. Biol. March 2010 vol. 30 no. 6 1411-1420を参照されたい。
遺伝因子は、PCRを用いたアッセイ、例えば定量PCRや競合PCRなどの、当業者に公知の方法で分析してもよい。例えば、対象から得られた試料などにおいて、遺伝因子の有無を測定することによって、診断を確定してもよく、代謝性疾患の発症のリスクがあるとして対象を分類してもよく、かつ/またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対象が適していることを特定してもよい。
いくつかの方法は、代謝性疾患の発症に対する感受性またはIL-11の分泌に関連した1つ以上のSNPの有無を特定することを含んでいてもよい。SNPは、通常、二対立遺伝子であり、したがって、当業者に公知の様々な従来のアッセイのいずれかを使用して容易に特定することができる(例えば、Anthony J. Brookes. The essence of SNPs. Gene Volume 234, Issue 2, 8 July 1999, 177-186; Fan et al., Highly Parallel SNP Genotyping. Cold Spring Harb Symp Quant Biol 2003. 68: 69-78; Matsuzaki et al., Parallel Genotyping of Over 10,000 SNPs using a one-primer assay on a high-density oligonucleotide array. Genome Res. 2004. 14: 414-425を参照されたい)。
前記方法は、対象から得られた試料中にどのSNPアレルが存在するのかを特定することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、マイナーアレルの有無を特定することによって、代謝性疾患の発症に対する感受性またはIL-11の分泌の増加を特定してもよい。
したがって、本発明の一態様において、対象をスクリーニングする方法であって、
対象から核酸試料を得る工程;および
前記試料中において、WO 2017/103108(A1)(この文献は引用により本明細書に援用される)の図33、図34または図35に挙げた1つ以上のSNPの多型ヌクレオチドの位置に、どのアレルが存在するのかを特定するか、またはこれらの図に挙げたSNPのいずれか1つとr2≧0.8の連鎖不均衡を示すSNPを特定する工程
を含む方法を提供する。
アレルまたはSNPを特定する前記工程は、試料中において、選択された多型ヌクレオチドの位置においてマイナーアレルの有無を特定することを含んでいてもよい。また、この工程は、0個、1個または2個のマイナーアレルの有無を特定することを含んでいてもよい。
前記スクリーニング方法は、代謝性疾患の発症に対する対象の感受性を特定する方法、または前述の診断方法もしくは予後判定方法であってもよく、これらの方法の一部を構成してもよい。
前記方法は、例えば、対象が前記多型ヌクレオチドの位置にマイナーアレルを有していると特定された場合に、代謝性疾患の発症に対する感受性を有しているものとして、または代謝性疾患を発症するリスクが高いものとして前記対象を特定する工程をさらに含んでいてもよい。前記方法は、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療を行う対象を選択する工程、および/またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を前記対象に投与して、該対象における代謝性疾患を治療するか、または代謝性疾患の発症もしくは進行を前記対象において予防する工程をさらに含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患を診断して、代謝性疾患を発症するリスクがある対象を特定する方法、またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定もしくは予測を行う方法は、IL-11もしくはIL-11受容体の発現のアップレギュレーションの検出用ではなく、遺伝因子でもない指標を使用する。
いくつかの実施形態において、代謝性疾患を診断して、代謝性疾患を発症するリスクがある対象を特定する方法、またはIL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤を用いた治療に対する対象の反応性の予後判定もしくは予測を行う方法は、代謝性疾患の1つ以上の指標の検出、測定および/または同定に基づく。
診断方法または予後判定方法は、対象から得られた試料を用いてインビトロで行ってもよく、あるいは対象から得られた試料を処理した後にインビトロで行ってもよい。試料が採取された患者は、インビトロでの診断方法または予後判定方法が実施されるまで待機しておく必要はなく、したがって、これらの方法はヒトまたは動物の生体上で実施する必要はない。対象から得られた試料は、前述したように、どのような種類のものであってもよい。
本明細書に記載の方法は、その他の診断検査または予後検査と併用してもよく、これによって、診断または予後判定の精度を高めたり、本明細書に記載の試験方法を使用して得られた結果を確認したりすることができる。
対象
対象は、動物であってもよく、ヒトであってもよい。対象は、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。対象は、非ヒト哺乳動物であってもよいが、ヒトであることがより好ましい。対象は、雄性であってもよく、雌性であってもよい。対象は患者であってもよい。
前記患者は、本明細書に記載の代謝性疾患を有していてもよい。対象は、治療を必要とする代謝性疾患に罹患していると診断された対象であってもよく、このような代謝性疾患に罹患している疑いがある対象であってもよく、代謝性疾患を発症するリスクのある対象であってもよい。
本発明による実施形態において、前記対象はヒト対象であることが好ましい。本発明による実施形態において、代謝性疾患の特定のマーカーの特性評価に基づいて、本発明の方法による治療を行う対象を選択してもよい。
本発明において提供される別の方法および使用
本発明は、さらに、血中脂質値を低減する方法、血糖値を低減する方法、(例えば、グルコース不耐性の対象において)耐糖能を増強する方法、(例えば、インスリン抵抗性の対象において)インスリン耐性を増強する方法、膵機能を増強する方法、(例えば、過体重/肥満の対象において)体重を低減する方法、体脂肪量を低減する方法、除脂肪体重を増加させる方法、空腹時血糖値を低減する方法、血清トリグリセリド値を低減する方法、血清コレステロール値を低減する方法、耐糖能を増強する方法、膵機能(例えば、外分泌機能および/または内分泌機能)を増強する方法、膵組織の増殖を増強する方法、膵組織を再生する方法、膵重量を増加させる方法、膵星細胞(PSC)による、膵星細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制する方法、膵臓内の筋線維芽細胞の数/割合を低減する方法、膵臓中のヒドロキシプロリン量を低減する方法、膵臓中のコラーゲン量を低減する方法、膵損傷を低減する方法、膵島細胞過形成を低減する方法、グルカゴンの発現を低減する方法、インスリンの発現を増強する方法、(例えば、消耗疾患(例えば、悪液質)を有する対象において)体重を増加させる方法、肝臓においてIL-11タンパク質の発現を低減する方法、肝臓においてErkの活性化を低減する方法、肝臓においてJNKの活性化を低減する方法、肝臓においてカスパーゼ3の切断を低減する方法、肝臓中のROS量を低減する方法、肝臓においてNOX4の発現を低減する方法、例えば肝臓などの脂肪変性を抑制する方法、肝臓中のトリグリセリド量を低減する方法、脂肪酸合成酵素の発現を低減する方法、血清ALT値および/または血清AST値を低減する方法、炎症促進性因子(例えば、TNFα、CCL2、CCL5、IL-6、CXCL5および/またはCXCL1)の発現を低減する方法、線維化促進因子(例えば、IL-11、TIMP1、ACTA2、TGFβ1、MMP2、TIMP2、MMP9、COL1A2、COL1A1および/またはCOL3A1)の発現を低減する方法、血清TGFβ1値を低減する方法、肝星細胞による、IL-11、ACTA2、MMP2、TGFβ1、PDGF、ANGII、bFGF、CCL2および/またはH2O2の発現/産生を低減する方法、肝星細胞による、肝星細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制する方法、肝臓内の筋線維芽細胞の数/割合を低減する方法、肝臓中のヒドロキシプロリン量を低減する方法、肝臓中のコラーゲン量を低減する方法、肝機能を増強する方法、血清GSH値を上昇させる方法、代謝性疾患により影響を受ける器官/組織の機能を増強する方法、肝損傷を低減する方法、肝細胞死を低減する方法、脂肪毒性を原因とする細胞死(例えば肝細胞の死滅)を低減する方法、肝細胞においてIL-11媒介性シグナル伝達を低減する方法、または肝臓においてCD45+細胞の数/割合を低減する方法において使用するための、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤、またはこれらの方法における、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の使用を提供する。
また、本発明は、血中脂質値を低減する方法、血糖値を低減する方法、(例えば、グルコース不耐性の対象において)耐糖能を増強する方法、(例えば、インスリン抵抗性の対象において)インスリン耐性を増強する方法、膵機能を増強する方法、(例えば、過体重/肥満の対象において)体重を低減する方法、体脂肪量を低減する方法、除脂肪体重を増加させる方法、空腹時血糖値を低減する方法、血清トリグリセリド値を低減する方法、血清コレステロール値を低減する方法、耐糖能を増強する方法、膵機能(例えば、外分泌機能および/または内分泌機能)を増強する方法、膵組織の増殖を増強する方法、膵組織を再生する方法、膵重量を増加させる方法、膵島細胞過形成を低減する方法、グルカゴンの発現を低減する方法、インスリンの発現を増強する方法、(例えば、消耗疾患(例えば、悪液質)を有する対象において)体重を増加させる方法、肝臓においてIL-11タンパク質の発現を低減する方法、肝臓においてErkの活性化を低減する方法、肝臓においてJNKの活性化を低減する方法、肝臓においてカスパーゼ3の切断を低減する方法、肝臓中のROS量を低減する方法、肝臓においてNOX4の発現を低減する方法、例えば肝臓などの脂肪変性を抑制する方法、肝臓中のトリグリセリド量を低減する方法、脂肪酸合成酵素の発現を低減する方法、血清ALT値および/または血清AST値を低減する方法、炎症促進性因子(例えば、TNFα、CCL2、CCL5、IL-6、CXCL5および/またはCXCL1)の発現を低減する方法、線維化促進因子(例えば、IL-11、TIMP1、ACTA2、TGFβ1、MMP2、TIMP2、MMP9、COL1A2、COL1A1および/またはCOL3A1)の発現を低減する方法、血清TGFβ1値を低減する方法、肝星細胞による、IL-11、ACTA2、MMP2、TGFβ1、PDGF、ANGII、bFGF、CCL2および/またはH2O2の発現/産生を低減する方法、肝星細胞による、肝星細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制する方法、肝臓内の筋線維芽細胞の数/割合を低減する方法、肝臓中のヒドロキシプロリン量を低減する方法、肝臓中のコラーゲン量を低減する方法、肝機能を増強する方法、血清GSH値を上昇させる方法、代謝性疾患により影響を受ける器官/組織の機能を増強する方法、肝損傷を低減する方法、肝細胞死を低減する方法、脂肪毒性を原因とする細胞死(例えば肝細胞の死滅)を低減する方法、肝細胞においてIL-11媒介性シグナル伝達を低減する方法、または肝臓においてCD45+細胞の数/割合を低減する方法において使用される組成物の製造における、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することができる薬剤の使用を提供する。
さらに、本発明は、血中脂質値を低減する方法、血糖値を低減する方法、(例えば、グルコース不耐性の対象において)耐糖能を増強する方法、(例えば、インスリン抵抗性の対象において)インスリン耐性を増強する方法、膵機能を増強する方法、(例えば、過体重/肥満の対象において)体重を低減する方法、体脂肪量を低減する方法、除脂肪体重を増加させる方法、空腹時血糖値を低減する方法、血清トリグリセリド値を低減する方法、血清コレステロール値を低減する方法、耐糖能を増強する方法、膵機能(例えば、外分泌機能および/または内分泌機能)を増強する方法、膵組織の増殖を増強する方法、膵組織を再生する方法、膵重量を増加させる方法、膵島細胞過形成を低減する方法、グルカゴンの発現を低減する方法、インスリンの発現を増強する方法、(例えば、消耗疾患(例えば、悪液質)を有する対象において)体重を増加させる方法、肝臓においてIL-11タンパク質の発現を低減する方法、肝臓においてErkの活性化を低減する方法、肝臓においてJNKの活性化を低減する方法、肝臓においてカスパーゼ3の切断を低減する方法、肝臓中のROS量を低減する方法、肝臓においてNOX4の発現を低減する方法、例えば肝臓などの脂肪変性を抑制する方法、肝臓中のトリグリセリド量を低減する方法、脂肪酸合成酵素の発現を低減する方法、血清ALT値および/または血清AST値を低減する方法、炎症促進性因子(例えば、TNFα、CCL2、CCL5、IL-6、CXCL5および/またはCXCL1)の発現を低減する方法、線維化促進因子(例えば、IL-11、TIMP1、ACTA2、TGFβ1、MMP2、TIMP2、MMP9、COL1A2、COL1A1および/またはCOL3A1)の発現を低減する方法、血清TGFβ1値を低減する方法、肝星細胞による、IL-11、ACTA2、MMP2、TGFβ1、PDGF、ANGII、bFGF、CCL2および/またはH2O2の発現/産生を低減する方法、肝星細胞による、肝星細胞から筋線維芽細胞への転換を抑制する方法、肝臓内の筋線維芽細胞の数/割合を低減する方法、肝臓中のヒドロキシプロリン量を低減する方法、肝臓中のコラーゲン量を低減する方法、肝機能を増強する方法、血清GSH値を上昇させる方法、代謝性疾患により影響を受ける器官/組織の機能を増強する方法、肝損傷を低減する方法、肝細胞死を低減する方法、脂肪毒性を原因とする細胞死(例えば肝細胞の死滅)を低減する方法、肝細胞においてIL-11媒介性シグナル伝達を低減する方法、または肝臓においてCD45+細胞の数/割合を低減する方法を提供する。
配列同一性
2つ以上のアミノ酸配列間または核酸配列間の同一性(%)を求めるためのペアワイズ配列アラインメントおよび多重配列アラインメントは、当業者に公知の様々な方法を使用して行うことができ、例えば、ClustalOmegaソフトウェア(Soding, J. 2005, Bioinformatics 21, 951-960)、T-coffeeソフトウェア(Notredame et al. 2000, J. Mol. Biol. (2000) 302, 205-217)、Kalignソフトウェア(Lassmann and Sonnhammer 2005, BMC Bioinformatics, 6(298))、MAFFTソフトウェア(Katoh and Standley 2013, Molecular Biology and Evolution, 30(4) 772-780)などの一般公開されているコンピュータソフトウェアを使用して行うことができる。このようなソフトウェアを使用する場合、例えばギャップペナルティや伸長ペナルティなどにおいて、デフォルトパラメータを使用することが好ましい。
本発明は、本明細書に記載の態様や好ましい特徴の組み合わせを包含し、そのような組み合わせが明らかに許容できない場合や明らかに回避すべき場合は除かれる。
前述の詳細な説明、後述の請求項もしくは添付の図面において、特定の形態として、もしくは開示された機能を実行するための手段として表現された本開示の特徴、または本開示の結果を適宜得るための方法もしくはプロセスは、様々な形態で本発明を実現するために、別個にまたは組み合わせて使用してもよい。
誤解を避けるために明記しておくと、本明細書で提供する論理的説明は、読み手の理解を深める目的で記載されている。本発明者らは、これらの論理的説明により本発明が拘束されることを望むものではない。
本明細書において使用された節の見出しは、いずれも本発明を系統立てて述べることのみを目的として設けられており、本明細書に記載の主題を制限するものであると解釈すべきではない。
後述の請求項を包含する本明細書を通して、特に記載がない限り、「含む(comprise)」および「含む(include)」という用語、ならびにこれらの変化形である「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」および「含んでいる(including)」という用語は、記載の要素もしくは工程または要素群もしくは工程群を包含すると理解されるが、記載されているもの以外の要素もしくは工程または要素群もしくは工程群を除外するものではない。
本明細書および添付の請求項において使用されているように、単数形の「a」、「an」および「the」は、明確な記載がない限り、複数のものを含むことに留意されたい。本明細書において数値範囲は、「おおよその(about)」特定の値、および/または「おおよその」特定の値から「おおよその」別の特定の値までの範囲として示される。このような範囲が記載されている場合、別の一実施形態は、概数ではない前記特定の値、および/または概数ではない前記特定の値から前記別の特定の値までの範囲を含む。同様に、「約(about)」という先行詞を使用することによって特定の値がおおよその値として記載されている場合、概数ではない前記特定の値によって別の一実施形態を構成することができると理解される。数値に関連する「約」という用語は、任意であることを示し、平均値(例えば±10%)を意味する。
本明細書に開示されている方法は、インビトロ、エクスビボ、インビボのいずれで行ってもよく、また、本発明の製品は、インビトロ製品、エクスビボ製品、インビボ製品のいずれであってもよい。「インビトロ」は、実験室条件または培養において、材料、生体物質、細胞および/または組織を使用した実験を包含する。これに対して、「インビボ」は、生きたままの多細胞生物を使用した実験および操作を包含する。いくつかの実施形態において、インビボで行われる方法は、ヒト以外の動物において行ってもよい。「エクスビボ」は、例えばヒトまたは動物の体外などの生体外に存在するもの、または生体外で実施されるものを指し、生物から採取された組織(例えば器官全体)または細胞に存在するものや、このような組織または細胞において実施されるものであってもよい。
本明細書において核酸配列が開示されている場合、その逆相補鎖も明確に想定されている。
標準的な分子生物学的技術については、Sambrook, J., Russel, D.W. Molecular Cloning, A Laboratory Manual. 3 ed. 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
本発明の態様および実施形態を、添付の図面を参照しながら以下に述べる。さらなる態様および実施形態は、当業者であれば容易に理解できるであろう。本明細書において引用された文献はいずれも、本明細書の一部を構成するものとしてその全体が援用される。以下の代表的な実施形態とともに本発明を述べるが、当業者であれば、本開示を参照することにより、様々な等価の変更および変形を容易に理解できるであろう。したがって、前述した本発明の代表的な実施形態は、一例であり、本発明を何ら限定するものではないことが考慮される。本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に様々な変更を加えてもよい。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の原理を示す実施形態および実験を説明する。
(図1A)通常の固形飼料(NCD)または(図1B)フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与えた、IL-11RAノックアウトマウス(Il11ra1-/-)またはIL-11RAを発現する野生型マウス(Il11ra1+/+)の経時的な体重の変化率を示したグラフである。
(図2A)通常の固形飼料(NCD)または(図2B)フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与えた、IL-11RAノックアウトマウス(Il11ra1KO)またはIL-11RAを発現する野生型マウス(Il11raWT)の総体脂肪量の変化率を示した棒グラフである。
通常の固形飼料(NC)またはフルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与えた、IL-11RAノックアウトマウス(KO)またはIL-11RAを発現する野生型マウス(WT)の空腹時血糖値(mM)を示したグラフである。
通常の固形飼料(NC)またはフルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与えた、IL-11RAノックアウトマウス(KO)またはIL-11RAを発現する野生型マウス(WT)の血清トリグリセリド値(mg/g)を示したグラフである。
(図5A)通常の固形飼料(NC)または(図5B)フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与えた、IL-11RAノックアウトマウス(KO)またはIL-11RAを発現する野生型マウス(WT)の血清コレステロール値(mg/dl)を示したグラフである。
通常の固形飼料(NC)またはフルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与え、抗IL-11RA抗体またはIgGコントロールで処置したマウスの体重の変化を示したグラフおよび箱ひげ図である。(図6A)経時的な(週ごとの)体重の変化率を示す。(図6B)総体脂肪量と除脂肪体重の差の割合を示す。*P<0.05。
フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与え、抗IL-11RA抗体またはIgGコントロールで処置したマウスの耐糖能を腹腔内糖負荷試験(ipGTT)で測定し、その結果を示したグラフ、模式図および棒グラフである。(図7A)1分の時点からの血糖値(mM)の変化を示す。(図7B)曲線下面積を示す。*P<0.05、**P<0.01。
通常の固形飼料(NCD)またはフルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与え、様々な時点から抗IL-11RA抗体またはIgGコントロールで処置したマウスの膵重量を示した箱ひげ図である。****P<0.0001。
通常の固形飼料(NCD)またはフルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与え、グラフに示した時点で抗IL-11RA抗体またはIgGコントロールで処置したマウスの(図9A)血清コレステロール値(mg/dl)、(図9B)血清トリグリセリド値(mg/g)および(図9C)空腹時血糖値(mM)を示した箱ひげ図を示す。
通常の固形飼料(NCD)またはフルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与え、16週目から抗IL-11RA抗体またはIgGコントロールで処置したマウスから24週目に採取した膵臓組織の切片における(図10A)グルカゴン含有量および(図10B)インスリン含有量の免疫組織化学的分析の結果を示した画像である。
悪液質に伴う体重減少に対する抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体による処置の効果を示したグラフおよび画像である。(図11A)悪液質を誘発する高脂肪メチオニン・コリン欠乏(HFMCD)飼料を与えたマウスを抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体で週2回処置したところ、正常な体重またはほぼ正常な体重に戻った。コントロールマウスには、通常の固形飼料(NC)またはHFMCD飼料を与え、IgGアイソタイプコントロールで処置した。(図11B)HFMCD飼料を与え、IgGまたは抗IL-11抗体もしくは抗IL-11Rα抗体で処置したマウスの体の大きさの比較の一例を示す。
悪液質に伴う体重減少モデルの体重に対する抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体による処置の効果を示したグラフである。HFMCD飼料を与えたマウスを、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kgの用量の抗IL-11Rα抗体(図12A)または2種の抗IL-11抗体の一方(図12Bおよび図12C)で週2回処置した。コントロールマウスには、通常の固形飼料(NC)またはHFMCD飼料を与え、IgGアイソタイプコントロールで処置した。
悪液質に伴う体重減少モデルの摂食量に対する抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体による処置の効果を示したグラフである。HFMCD飼料を与えたマウスを、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kgの用量の抗IL-11Rα抗体(図13A)または2種の抗IL-11抗体の一方(図13Bおよび図13C)で週2回処置した。コントロールマウスには、通常の固形飼料(NC)またはHFMCD飼料を与え、IgGアイソタイプコントロールで処置した。
葉酸により急性腎障害を誘発させた後の悪液質に伴う体重減少に対する抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体による処置の効果を示したグラフである。(図14A)葉酸により腎障害を誘発したマウスを、腎障害の誘発の1時間前から腎障害の誘発後28日間にわたり、抗IL-11Rα抗体、抗IL-11抗体またはIgGコントロールで処置した。「コントロール」マウスには溶媒のみを投与した。(図14B)葉酸により腎障害を誘発させたマウスを、腎障害の誘発の21日後から、抗IL-11抗体またはIgGコントロールで処置した。FA=葉酸。
片側尿管閉塞術(UUO)による急性腎障害の誘発後の悪液質に伴う体重減少に対する抗IL-11抗体による処置の効果を示したグラフである。片側尿管閉塞術により腎障害を誘発したマウスを、腎障害の誘発後10日間にわたり抗IL-11抗体またはIgGコントロールで処置した。
体重の増加に対するIL-11の過剰発現の効果を示したグラフである。(図16A)組換えマウスIL-11(rmIL11)を投与すると、正常マウスの体重の増加の進行が遅延した。(図16B)マウスにおいてIL-11導入遺伝子(IL-11 Tg)を誘導すると、時間の経過とともに体重が減少した。
IL-11により肝星細胞(HSC)が活性化され、肝線維症が誘導されることを示す。(A)TGFβ1で刺激した肝星細胞においてIL-11 RNAがアップレギュレートされることを示す。(B)TGFβ1で刺激した肝星細胞からIL-11タンパク質が分泌されることを示す。(C)ヒト肝臓の精密薄切片をTGFβ1で刺激し、上清中のIL-11タンパク質を測定した。(D)肝星細胞および活性化したTHP-1細胞におけるIL6RおよびIL11RAの発現を示した免疫蛍光画像を示す(スケールバー=100μm)。肝星細胞に刺激を加えず(-)にインキュベートした場合、またはTGFβ1、PDGFもしくはIL-11で刺激してインキュベートした場合の、(E)免疫蛍光画像(スケールバー=100μm)および(F)ACTA2のウエスタンブロットを示す。TGFβ1、PDGFまたはIL-11で刺激した肝星細胞において(G)I型コラーゲンを染色した免疫蛍光画像(スケールバー=100μm)および(H)この肝星細胞の上清中へのコラーゲンの分泌を示す。(I)IL-11で誘導した肝星細胞の用量依存的なマトリゲルへの浸潤を示す。(J)hyper IL-11により、肝星細胞からIL-11タンパク質の分泌が誘導されることを示す(ELISA)。(A~C、E~H、J)TGFβ1(5ng/ml)、hyper IL-11(0.2ng/ml)、PDGF(20ng/ml)、IL-11(5ng/ml);24時間;(I)48時間。(K)生理食塩水(コントロール)またはrmIl-11(100μg/kg)をマウスに毎日注射する実験の手順を示した模式図を示す。(L~N)図17Kに示した実験において、rmIl-11の注射により得られたデータを示す(n≧7/群)。(L)肝臓中のヒドロキシプロリンの相対含有量、(M)肝臓における線維化促進マーカーおよび炎症促進マーカーのmRNAの発現、および(N)血清ALT値を示す。(A、B、H~J、L、N)データは平均値±s.d.として示す。(C、M)箱ひげ図は、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す。(A~C、J、L~N)両側Studentのt検定;(H~I)両側Dunnettの検定。FC:fold change;I/A:単位面積あたりの強度。
Il11ra1欠損マウスは、NASHによる肝病変、高脂血症および高血糖から保護されることを示す。(A)HFMCD飼料を1週間、4週間、6週間または10週間与えたマウスの肝臓中のIl-11、Gapdh、p-ErkおよびErkのウエスタンブロットを示す。Il11ra+/+(WT)マウスまたはIl11ra-/-(KO)マウスにHFMCD飼料を10週間与えた後の、(B)肝臓の代表的なマッソントリクローム染色の画像(スケールバー=100μm)、(C)肝臓中トリグリセリド値、(D)血清ALT値および(E)肝臓における炎症促進性マーカーのmRNAの発現量を示す(n≧5/群)。(F~N)フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を16週間与えたWTマウスおよびKOマウスのデータを示す。(F)肝臓中のIl-11およびGapdhのウエスタンブロットを示す。(G)肝臓中の炎症促進マーカーのmRNAの相対発現量、(H)血清ALT値、(I)肝臓中のヒドロキシプロリンの相対含有量を示す(n≧4/群)。(J)肝臓の代表的なマッソントリクローム染色の画像を示す(スケールバー=100μm)。(K)肝臓におけるErkの活性化状態を示すウエスタンブロット、(L)空腹時血糖値、(M)血清トリグリセリド値、および(N)血清コレステロール値を示す(n≧3/群)。(C~E、G~I)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(L~N)データは平均値±s.d.として示し、点線は、通常の固形飼料(NC)を与えたWTマウスの平均値を示す。Sidakの補正法を用いたStudentのt検定。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料;WDF:ウエスタンダイエット+15%(w/v)フルクトース。
抗IL-11療法が、ERK依存的に肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換を抑制し、有利な代謝安全性プロファイルを有することを示す。(A)TGFβ1で刺激した肝星細胞によるMMP2の分泌の抑制におけるX203およびX209(61pg/ml~4μg/ml;4倍希釈)の用量反応曲線とIC50値を示す。(B)様々なNASH因子で刺激した肝星細胞からのIL-11の分泌を測定したELISAの結果を示す(≧5/群)。(C)IgG、X203またはX209の存在下において、TGFβ1またはその他のNASH因子で処理した肝星細胞におけるACTA2陽性細胞を撮影した代表的な蛍光画像およびその定量を示す(スケールバーは100μmであり、点線はベースラインの中央値を示す)。(D)PDGFまたはCCL2で誘導した肝星細胞の浸潤に対するX203またはX209の効果を示す。(E)IL-11で刺激した肝星細胞の溶解物におけるp-ERKおよびERKのウエスタンブロット(上図)と、IgGまたはX209の存在下において様々なNASH因子で刺激した肝星細胞の溶解物におけるp-ERKおよびERKのウエスタンブロット(下図)を示す。(F)ERK/MEK阻害剤であるU0126またはPD98059の存在下において、IL-11または重要なNASH因子で処理した肝星細胞においてACTA2陽性細胞を撮影した代表的な蛍光画像およびその定量を示す(スケールバーは100μmであり、点線はベースラインの中央値を示す)。(A~F)TGFβ1(5ng/ml)、IL-11(5ng/ml)、PDGF(20ng/ml)、AngII(100nM)、bFGF(10ng/ml)、CCL2(5ng/ml)、H2O2(0.2mM)、IgG、X203およびX209(2μg/ml)、U0126またはPD98059(10μM);(A、C、E~F)24時間;(B、D)48時間。10mg/kgのX203またはX209の週2回注射を5ヶ月間行ったマウス(≧5/群)における、(G)末梢血血小板数、(H)血清ALT値、(I)血清トリグリセリド値、および(J)血清コレステロール値を示す。(B、D)データは平均値±s.d.として示す。(C、F、G~J)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(B、D、G~J)両側Dunnettの検定;(C、F)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定。FC:fold change。
前臨床モデルにおいてIl-11を治療標的とすることにより、NASHの病態が抑制され、回復することを示す。(A)(B~E)に示す実験を行うために、HFMCD飼料を与えたマウスにX203またはX209(10mg/kg、週2回)を使用して治療を行う手順を示した模式図である。HFMCD飼料を与えた6~10週目にX203、X209またはIgGアイソタイプコントロールを投与した。(B)肝臓の代表的な組織画像(マッソントリクローム染色;スケールバー=100μm)、(C)肝臓中のヒドロキシプロリンの相対含有量、(D)肝臓中の炎症促進性マーカーのmRNAの相対発現量(≧6/群)および(E)血清ALT値を示す。(F)肝臓におけるErkの活性化状態を示したウエスタンブロットを示す。(G)H~Nに示す実験を行うための、MCD飼料を与えたdb/dbマウスへのX203またはIgGの投与を示した模式図である。肝臓中の(H)Il-11およびGapdhならびに(I)p-ErkおよびErkのウエスタンブロットを示す。(J)MCD飼料を与えたdb/dbマウスをX203またはIgGで処置した場合の肝臓の代表的なマッソントリクローム染色の画像を示す(スケールバー=100μm)。(K)肝臓中のトリグリセリド値、(L)肝臓中のヒドロキシプロリンの相対発現量、(M)血清ALT値、および(N)肝臓中の炎症促進マーカーのmRNAの発現量を示す(≧5/群)。(C~E、K~N)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料;MCD:メチオニン・コリン欠乏飼料。
Il-11シグナル伝達の抑制により、前臨床モデルにおけるNASHの病態が回復し、肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換が回復することを示す。(A)(B~G)に示すデータを取得するための、NASH回復実験における治療投与計画を示した模式図である。マウスにWDF飼料を16週間与えてNASHを誘発させ、WDF飼料での飼育を継続しながら、(10mg/kgの)X209またはIgGによる処置を8週間行った。NC飼料を与えたマウス、またはWDF飼料を与え、IgGもしくはX209で処置したマウス(≧5/群)における、(B)肝臓中のヒドロキシプロリンの総含有量、(C)肝臓中のトリグリセリド値、(D)血清ALT値、(E)空腹時血糖値、(F)血清トリグリセリド値および(G)血清コレステロール値を示す。(H)マウスにHFMCD飼料を10週間与えて線維症を確立し、その後、NC飼料に置き換えて、抗体(X203またはX209)による治療を開始する回復実験の手順を示した模式図である。図に示した時点でマウスを安楽死させた。代謝介入(飼料の切り替え)とX203、X209またはIgGによる処置を同時に行った1週目、3週目または6週目における(≧3/群)、(I)肝臓中のヒドロキシプロリンの総含有量(点線は、NC=0.93の平均値を示す)および(J)Mmp2/Timp1のmRNAの相対発現量を示す。X203、X209またはIgGの添加前または添加後に、(K)TGFβ1または(L)PDGFとインキュベートした場合の、ACTA2陽性細胞の免疫染色の定量を示す(n=5/群)(スケールバー=200μm)。(K~L)TGFβ1(5ng/ml)、PDGF(20ng/ml)、IgG、X203およびX209(2μg/ml)。(B~G、K~L)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(I)データは平均値±s.d.として示す。(J)データは折れ線グラフ(平均値)として示し、色を付けた部分はs.d.を示す。(B)両側Studentのt検定;(C~G、K~L)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定;(I~J)二元配置分散分析。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;WDF:ウエスタンダイエット+15%(w/v)フルクトース;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料。
Il-11のシグナル伝達の中和により、初期のNASHにおける肝損傷が回復することを示す。(A)グラフに示した時点までNC飼料またはHFMCD飼料を与えたマウスにおける肝臓中の線維化マーカーおよび炎症マーカーのmRNAの相対発現量を示す。(B)HFMCD飼料により誘発したNASHモデルにおける早期の抗IL-11療法実験の手順を示した模式図を示す。NASH誘発性飼料による飼育を開始してから1週間後に抗体処置を開始し、X209、X203またはIgG(10mg/kg、週2回)を5週間腹腔内投与した。(C~G)図21Bに示した実験のデータを示す。IgGまたはX209で5週間処置した後の、(C)肝臓の代表的な肉眼写真および(D)肝臓のマッソントリクローム染色の画像(スケールバー=100μm)を示す。X209またはIgGで処置したマウスの(E)肝臓中のトリグリセリド値(n≧5/群)、(F)肝臓中のヒドロキシプロリン含有量(n≧5/群)、および(G)血清ALT値(n≧5/群)を示す。(H)肝細胞におけるIL6RおよびIL11RAの発現を示した免疫蛍光画像を示す(スケールバー=100μm)。(I)肝細胞の上清中のALTに対するIL-11の用量依存的な効果および(J)肝細胞におけるストレスファイバーの形成(ローダミンファロイジン染色)(スケールバー=200μm)に対するIL-11の用量依存的な効果を示す。(K)TGFβ1(5ng/ml)で刺激したヒト初代肝細胞からIL-11タンパク質が分泌されることを示す(24時間)。(E)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(F~G、I、K)データは平均値±s.d.として示す。(E)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定;(F、G)二元配置分散分析。(I、K)両側Dunnettの検定。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料。
抗IL11RA療法により、NASHの分子シグネチャーが正常な肝臓プロファイルへと回復するとともに、免疫細胞の活性化が抑制されることを示す。(A~G)図22Bに示した実験のデータを示す。(A)NC飼料またはHFMCD飼料を与えたマウスに、図6Bに示した期間にわたりIgG抗体、X203抗体またはX209抗体を投与した場合の、肝臓における遺伝子発現の主成分分析(PCA)プロットを示す。各矢印は、正常な遺伝子発現(NC飼料)から、NASH(HFMCD飼料+IgG)において最も摂動した遺伝子発現への転換;この最も摂動した遺伝子発現から、復帰した中間の遺伝子発現(HFMCD飼料+抗体(3週間))への転換;および復帰した中間の遺伝子発現から、正常化した遺伝子発現(HFMCD飼料+抗体(6週間))への転換を示す。(B)線維化促進性遺伝子および炎症促進性遺伝子の発現のヒートマップを示す(TPM値(Transcripts Per Million)で評価した)。(C)qPCRで測定したTnfα、Ccl2およびCcl5のmRNAの発現量を示す(n≧5/群)。(D)肝臓中のCD45陽性免疫細胞の数、(E)CD45陽性集団全体におけるLy6C+TGFβ1+細胞、(F)Ly6C+TGFβ1+細胞の検出に使用したゲーティング方法を示した代表的な疑似カラープロットを示す(n≧4/群)。(G)血清TGFβ値を示す(n≧5/群)。(C~E、G)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(C、G)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定;(D、E)両側Studentのt検定。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料。
肝星細胞はIL-11を分泌するとともに、IL-11に応答し、マウスにIl-11を注射すると肝線維症が起こることを示す。(A)TGFβ1で刺激した後の肝星細胞におけるRNA発現のゲノムワイドな変化を示す(n=3、RNAseq)。(B)ヒト肝星細胞において硬さにより誘導されるRNAのアップレギュレーションを示す(RNA-seq14)。FPKM(fragments per kilobase million)に応じて遺伝子に順位を付けた。ゲノムワイドにアップレギュレートされた遺伝子のうち、IL-11のアップレギュレーションが最も顕著であった。(C)ヒト心臓線維芽細胞(HCF)、ヒト肺線維芽細胞(HLF)およびヒト肝星細胞(HSC)におけるIL11RA転写産物を示す。健常者、アルコール性肝臓疾患(ALD)の患者、原発性硬化性胆管炎(PSC)の患者、原発性胆汁性肝硬変(PBC)の患者、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の患者から得たヒト肝臓試料におけるIL-11およびGAPDHの(D)ウエスタンブロットおよび(E)デンシトメーターによる濃度測定を示す。刺激を加えずにインキュベートした場合(-)、またはTGFβ1、PDGFもしくはIL-11で刺激してインキュベートした場合の、(F)ACTA2陽性細胞および(G)I型コラーゲンの免疫染色の自動蛍光定量を示す。(H)刺激を加えない場合(-)、またはTGFβ1もしくはIL-11で刺激した場合の肝星細胞の上清中のMMP-2濃度をELISAで測定した結果を示す。(A、F~H)TGFβ1およびIL-11(5ng/ml)、PDGF(20ng/ml);24時間の刺激。(I)生理食塩水またはrmIl-11を注射したマウスから得た肝切片のマッソントリクローム染色の代表的な画像(スケールバー=100μm)および(J)その定量を示す。(K)Col1a1-GFPマウスにrmIl-11または生理食塩水を毎日注射してGFP陽性細胞を得る実験の手順を示した模式図、および得られたGFP陽性細胞の代表的な蛍光画像を示す。各切片においてActa2を免疫染色し、DAPIで対比染色した(スケールバー=200μm)。(C、F~G)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(E、H、J)データは平均値±s.d.として示す。(F~H)両側Dunnettの検定;(J)両側Studentのt検定。FC:fold change;TPM:Transcript per millions。
Il-11シグナル伝達の遺伝的抑制によって、HFMCD飼料により誘発されたNASHの病態からマウスを保護できることを示す。HFMCD飼料を16週間与えたときの、肝臓中の(A)Il-11 mRNAの量および(B)Il-11タンパク質の量に対する効果をNC飼料と比較した。(A~B)同じマウス(n=5/群)からRNAとタンパク質を抽出した。NC飼料またはHFMCD飼料を1週間、4週間、6週間または10週間与えたマウス(n≧5/群)における(C)肝臓中のヒドロキシプロリンの相対含有量および(D)血清ALT値を示す。(E~I)HFMCD飼料を10週間与えたIl11ra+/+(WT)マウスまたはIl11ra-/-(KO)マウスのデータを示す。(E)肝臓中のヒドロキシプロリンの相対含有量、ならびに(F)肝臓のマッソントリクローム染色の代表的な画像(スケールバー=100μm)および(G)その定量を示す。(H)肝臓中のActa2、Col1a1、Col1a2およびCol3a1のmRNAの相対発現量を示す(n≧5/群)。(I)NC飼料またはHFMCD飼料を10週間与えた後のリン酸化Erk量および総Erk量を検出したウエスタンブロットを示す。(A、E、H)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(C~D、G)データは平均値±s.d.として示す。(A、G)両側Studentのt検定;(C~D)二元配置分散分析;(E、H)Sidakの補正法を用いたStudentのt検定。(C)NC飼料またはHFMCD飼料を6週間与えたマウスにおける数値は、図20Cで使用したものと同じであり、NC飼料またはHFMCD飼料を1週間与えたマウスにおける数値は、図22Fで使用したものと同じである。(D)HFMCD飼料を6週間与えたマウスにおける数値は、図20Dで使用したものと同じであり、NC飼料またはHFMCD飼料を1週間与えたマウスにおける数値は、図22Gで使用したものと同じである。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料。
Il-11シグナル伝達の遺伝的抑制によって、WDF飼料により誘発されたNASHの病態からマウスを保護できることを示す。WDF飼料を16週間与えたときの、(A)Il11ra+/+(WT)マウスおよびIl11ra-/-(KO)マウスの体重(n≧6/群)に対する効果を示す。NC飼料またはWDF飼料を16週間与えたWTマウスまたはKOマウス(n≧5/群)における、(B)肝臓中のトリグリセリド値、(C)肝臓のマッソントリクローム染色の代表的な画像(スケールバー=100μm)および(D)その定量、ならびに(E)肝臓における線維化促進遺伝子のmRNAの相対発現量を示す。(A、D)データは平均値±s.d.として示す;両側Studentのt検定;(B、E)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Sidakの補正法を用いたStudentのt検定。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;WDF:ウエスタンダイエット+15%(w/v)フルクトース。
抗IL-11RAモノクローナル中和抗体の構築を示す。(A)精製した各マウスモノクローナル抗IL11RA抗体候補(6μg/ml)を用いた、TGFβ1で刺激したヒト心房線維芽細胞(上図)、hyper IL-11で刺激したヒト心房線維芽細胞(中央の図)またはTGFβ1で刺激したマウス心房線維芽細胞(下図)のACTA2陽性細胞への形質転換の抑制を示す。(B)表面プラズモン共鳴(SPR)(ラングミュア型の1:1結合モデル)で測定したX209とIL11RAの相互作用を示す。(C)マウス(n=5)における125I-X209の血中薬物動態を示す。結果は二成分指数関数減衰モデルにフィットさせた(R2=0.92)。(D)眼窩後注射を行った後、グラフに示した時点で測定した肝臓による125I-X209の取り込み(%)を示す(n=5)。(E~F)(E)IgGコントロール、X203もしくはX209の存在下、または(F)MEK/ERK阻害剤(U0126もしくはPD98059)の存在下において、様々なNASH因子で処理した肝星細胞のI型コラーゲンの免疫染色の代表的な蛍光画像(スケールバー=100μm)およびその定量を示す。(A、E~F)TGFβ1(5ng/ml)、IL-11(5ng/ml)、PDGF(20ng/ml)、AngII(100nM)、bFGF(10ng/ml)、CCL2(5ng/ml)、H2O2(0.2mM)、IgG、X203およびX209(2μg/ml)、U0126またはPD98059(10μM);24時間の刺激。(C~D)データは平均値±s.d.として示す;(E~F)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;点線は、ベースライン値の平均値を示す;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。FC:fold change;I/A:単位面積あたりの強度。
HFMCD飼料またはWDF飼料により誘発されたNASHの病態が、抗IL-11中和抗体および抗IL11RA中和抗体により抑制されることを示す。(A~D)図20Aに示した実験手順に従って、HFMCD飼料を与えたマウスにX203またはX209を使用して治療を行った際のデータを示す。(A)肝切片のマッソントリクローム染色の定量を示す(点線は、NC飼料を与えたマウスの平均値を示す)。(B)肝臓中の線維化遺伝子のmRNAの相対発現量および(C)肝臓中のトリグリセリド含有量を示す(n≧5/群)。(D)NC飼料を与えたマウス、またはHFMCD飼料を与え、IgGもしくはX203(10mg/kg、週2回)で処置したマウスの肝臓におけるERKの活性化を示したウエスタンブロットを示す。(E)肝切片のマッソントリクローム染色の定量を示し、点線は、12週齢のdb/dbマウスの脂肪肝における平均値を示す(図20G参照)。(F)実験手順を示した模式図(図20G)に従って、MCD飼料を与えたdb/db脂肪変性マウスにIgGまたはX203を注射した場合の、肝臓における線維化促進遺伝子のmRNAの相対発現量を示す(n≧5/群)。(A、E)データは平均値±s.d.として示す;(B~C、F)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(A~C、E~F)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料;MCD:メチオニン・コリン欠乏飼料。
WDF飼料により誘発されたNASHの病態が、抗IL11RA中和抗体療法により回復することを示す。(A~E)実験手順を示した模式図(図21A)に従って、WDF飼料を与えたマウスに抗IL-11RA抗体による治療的介入を行った実験データを示す。WDF飼料を与えたマウスへのIgGまたはX209(10mg/kg)による週2回の処置は、16週目から開始し、屠殺(24週目)するまで8週間継続した。(A)NC飼料またはWDF飼料を24週間与えたマウスの肝臓におけるp-ErkおよびErkのウエスタンブロットを示す。(B)隔月に測定した体重を示す(n≧4/群)。(C)WDF飼料を16週間与えたマウス(左)、WDF飼料を24週間与え、16~24週目にIgGを注射したマウス(中央)、WDF飼料を24週間与え、16~24週目にX209で処置したマウス(右)の肝臓のマッソントリクローム染色の代表的な画像(スケールバー=100μm)および(D)その定量を示す。点線は、NC飼料を与えたマウスの平均値を示す。(E)肝臓における炎症促進性遺伝子のmRNAの相対発現量を示す(n≧5/群)。(B、D)データは平均値±s.d.として示す;(E)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(D、E)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定。
抗IL-11中和抗体または抗IL11RA中和抗体により、HFMCD飼料誘発性肝線維症と、肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換を回復させることができることを示す。(A~D)図5G(HFMCD飼料誘発性肝線維症からの回復実験)に従って、IgG、X203またはX209でマウスを1週間、3週間または6週間処置したデータを示す。(A)肝臓におけるERKの活性化状態を示したウエスタンブロットを示す。(B)IgG、X203またはX209で6週間処置したマウスから得た肝臓のマッソントリクローム染色の代表的な画像(スケールバー=100μm)および(C)その定量を示す。(D~G)図21K~21Lに示した、肝星細胞の形質転換回復実験のデータを示す(TGFβ1(5ng/ml)、PDGF(20ng/ml)、IgG、X203およびX209(2μg/ml))。(D)X203、X209もしくはIgGの添加前または添加後に、TGFβ1またはPDGFとともにインキュベートした場合の、ACTA2陽性細胞の免疫染色の代表的な蛍光画像を示す(スケールバー=200μm)。IgG、X203もしくはX209の添加前または添加後に、(E)TGFβ1または(F)PDGFで刺激した肝星細胞により分泌されたコラーゲンの量を示す(n=5/群)。(G)TGFβ1で処理した肝星細胞をX203またはX209で処理した後のERKの活性化状態を示したウエスタンブロットを示す。(C)データは平均値±s.d.として示す;(E~F)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(C、E~F)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料。
抗IL-11中和抗体および抗IL11RA中和抗体により、HFMCD飼料を与えたマウスを肝線維症および炎症から保護できることを示す。(A)刺激を加えない場合(-)、IL-11で刺激した場合、またはIgG、X203もしくはX209の存在下においてTGFβ1で刺激した場合の肝星細胞の上清中のCCL2をELISAで測定した結果を示す(n=4/群)(IL-11(5ng/ml)、TGFβ1(5ng/ml)、IgG、X203およびX209(2μg/ml))。(B~I)図22Bに示した治療的投与実験のデータを示す。X203またはX209による早期処置を5週間行った後の、(B)肝臓の代表的な肉眼写真、(C)肝臓におけるERKの活性化状態を示したウエスタンブロット、ならびに(D)肝臓のマッソントリクローム染色の代表的な画像(スケールバー=100μm)および(E)その定量を示す。(F)肝臓中のヒドロキシプロリン含有量を示す(NC飼料またはHFMCD飼料を1週間与えたマウスにおける数値は、図25Cで使用したものと同じであり、3週目または6週目のIgG処置マウスにおける数値は、図22Fで使用したものと同じである(n≧5/群))。(G)X203またはX209で5週間処置した後の、肝臓中の線維化マーカーのRNAの相対発現量をqPCRで測定した結果を示し、この結果からRNA-seqのデータが確認された(NC飼料を6週間与えたマウスにおけるCol1a1、Col1a2、Col3a1およびActa2の数値は、図28Dで示したものと同じである(n≧5/群))。(H)血清ALT値を示す(NC飼料またはHFMCD飼料を1週間与えたマウスにおける数値は、図25Dで使用したものと同じであり、3週目または6週目のIgG処置マウス(それぞれ2週間または5週間の処置)の数値は、図22Gで使用したものと同じである(n≧5/群))。(A、E~F、H)データは平均値±s.d.として示す;(G)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小パーセンタイルから最大パーセンタイルの範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(A、E、G)Tukeyの補正法を用いた両側Studentのt検定;(F、H)二元配置分散分析。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料。
抗IL-11中和抗体または抗IL11RA中和抗体により、NASHの分子シグネチャーが正常な肝臓プロファイルへと回復することを示す。(A~D)図22Aに示した早期治療的投与実験のRNA-seq解析および遺伝子セットエンリッチメント解析のデータを示す(n=3/群)。(A~B)各試料において、IgG処置と(A)X209処置の間で統計学的有意差をもって発現されたすべての遺伝子、またはIgG処置と(B)X203処置の間で統計学的有意差をもって発現されたすべての遺伝子の遺伝子発現量のヒートマップを示す(TPM値(Transcripts Per Million)としてマッピングしたリードで評価した)。抗IL-11処置群の発現プロファイルのクラスタリング解析を行ったところ、NC飼料群の発現プロファイルと類似した発現パターンが示されたことから、HFMCD飼料の転写効果からほぼ完全に回復したことが示唆された。(C)脂質生成とβ酸化遺伝子の発現のヒートマップから、IgGと比較してX209により肝臓の脂質代謝が改善したこと、X203では、X209よりもさらに肝臓の脂質代謝が改善したことが示された。(D)NC飼料またはHFMCD飼料を与え、抗体療法を行った6週目に差次的に発現された遺伝子に関する遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)の結果を示したバブルマップを示す。各ドットは、各遺伝子セットの正規化したエンリッチメントスコア(NES)を色別に示し、FDRで補正したその有意水準を大きさで示している。エンリッチメント解析用の遺伝子セットは、MSigDBで公開されている「H(ホールマーク)」セットから選択した。FC:fold change;NC:通常の固形飼料;HFMCD:高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料。
ヒト初代肝細胞におけるIL-11受容体およびIL-6受容体の発現ならびにIL-11のシグナル伝達の効果およびIL-6のシグナル伝達の効果に関する散布図、箱ひげ図、ヒストグラムおよび写真である。(A)肝細胞のIL11RA、IL6Rおよびgp130を染色した代表的なフローサイトメトリーの前方散乱(FSC)プロットと蛍光強度プロットを示す。(B)RNA-seq解析(左側)およびRibo-seq解析(右側)に基づく、基礎状態の肝細胞におけるIL11RA1のリードおよびIL6Rのリードの存在量(Transcripts per million(TPM))を示す。(CおよびD)ヒト肝細胞のRNA-seq解析およびRibo-seq解析に基づく、(C)IL11RA1の転写産物のリードカバレッジおよび(D)IL6Rの転写産物のリードカバレッジを示す(n=3)。(EおよびF)一定の用量範囲のhyper IL11またはhyper IL6で刺激した肝細胞における(E)ERK、JNKおよびSTAT3の活性化状態を示すウエスタンブロットならびに(F)ALTの分泌を示す。(G)hyper IL11単独で刺激した肝細胞の上清中、または徐々に量を増加させた可溶性gp130(sgp130)の存在下においてhyper IL11で刺激した肝細胞の上清中のALT値を示す。(HおよびI)(H)hyper IL11単独での刺激またはsgp130の存在下でのhyper IL11による刺激に応答したリン酸化ERKおよびリン酸化JNKの発現量、ならびにERKおよびJNKの総発現量を示す肝細胞溶解物のウエスタンブロットと、(I)sgp130の存在下または非存在下におけるhyper IL6による刺激に応答したリン酸化STAT3の発現量および総STAT3の発現量を示す肝細胞溶解物のウエスタンブロットを示す。(J)sgp130または可溶性IL11RA(sIL11RA)の存在下においてIL11で刺激した肝細胞のヨウ化プロピジウム(PI)染色の代表的なFSCプロットを示す。(K)IL11単独での刺激またはsgp130もしくはsIL11RAの存在下におけるIL11での刺激に応答した肝細胞におけるp-ERKおよびp-JNKの発現量ならびにERKおよびJNKの総発現量を示すウエスタンブロットを示す。(A~K)ヒト初代肝細胞;(E~K)24時間の刺激;(E~K)hyper IL11、hyper IL6、IL11(20ng/ml)、sgp130、sIL11RA(1μg/ml)。(B、F~G)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。
脂質を負荷した肝細胞によりIL11が分泌され、オートクリンなIL11のシスシグナル伝達を介して様々な脂肪毒性表現型が誘導されることを示したグラフ、散布図および画像である。(A~K)IgG(2μg/ml)、抗IL11RA(X209、2μg/ml)またはsgp130(1μg/ml)の存在下での、ヒト初代肝細胞に対するパルミチン酸塩負荷実験のデータを示す。上清中に分泌された(A)IL11タンパク質、(B)IL6タンパク質、(C)CCL2タンパク質および(D)CCL5タンパク質の各濃度をELISAで測定した結果を示す。(EおよびF)パルミチン酸塩で刺激したPI陽性肝細胞の(E)代表的なFSCプロットおよび(F)その定量を示す。(G)上清中のALT濃度を示す。(H)肝細胞中のグルタチオン(GSH)濃度を示す。(I)DCFDA染色の代表的な蛍光画像を示す(ROSの検出;スケールバー=100μm)。(J)pERK、ERk、pJNK、JNK、切断されたカスパーゼ3、カスパーゼ3、NOX4、FASNおよびGAPDHのウエスタンブロットを示す。(K)オイルレッドO染色の代表的な画像を示す(スケールバー=100μm)。(A~D、F~H)平均値±SD;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。
フルクトースを補充したウエスタンダイエットを与えたマウスにおいて、IL6ファミリーサイトカインのトランスシグナル伝達を抑制しても、NASH表現型や代謝表現型に効果が見られないことを示した模式図、画像および箱ひげ図を示す。(A)(B~P)に示したデータを得るために、肝細胞特異的にsgp130を発現させたマウスにWDF飼料を与える実験の模式図を示す。AAV8-Alb-NullウイルスまたはAAV8-Alb-sgp130ウイルスをマウスに注射した3週間後から、WDF飼料を16週間与えた。(B)肝臓中のsgp130、IL11およびIL6の濃度と、内部コントロールとしてのGAPDHの濃度を示したウエスタンブロットを示す。(C)血清IL11値を示す。(D)血清IL6値を示す。(E)代表的な肝臓の肉眼解剖写真およびH&E染色画像を示す。(F)肝重量を示す。(G)肝臓中のトリグリセリド含有量を示す。(H)血清ALT値を示す。(I)血清AST値を示す。(J)肝臓中のコラーゲン濃度を示す。(K)空腹時血糖値を示す。(L)血清トリグリセリド値を示す。(M)血清コレステロール値を示す。(N)肝臓中のGSH含有量を示す。(O)肝臓における炎症促進性遺伝子および線維化遺伝子の発現を示したヒートマップを示す(数値は図41Dおよび図41Eに示す)。(P)肝臓におけるp-ERK、ERK、p-JNK、JNK、p-STAT3およびSTAT3のウエスタンブロットを示す。(C~N)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定;各条件は、左側から右側に順に、NC Null、WDF NullおよびWDF sgp130を示す。
HFMCD飼料を与えたマウスにおいて、IL11のシスシグナル伝達を肝細胞特異的に抑制することにより、悪液質およびNASHからマウスを保護できることを示した模式図、画像、グラフおよび箱ひげ図を示す。(A)(B~K)に示した実験を行うための、AAV8-Alb-Creを注射したIl11ra1loxP/loxP(条件付きノックアウト;CKO)マウスにHFMCD飼料を与える実験計画を示した模式図である。HFMCD飼料の給餌を開始する3週間前に、Il11ra1loxP/loxPマウスにAAV8-Alb-NullまたはAAV8-Alb-Creを静脈内注射して、肝細胞のIl11ra1を特異的に欠損させた。(B)肝臓中のIL11RAおよびGAPDHのウエスタンブロットを示す。(C)(最初の体重に対する割合(%)として示した)体重を示す。(D)代表的な肝臓の肉眼解剖写真およびH&E染色画像を示す。(E)肝臓中のトリグリセリド含有量を示す。(F)血清ALT値を示す。(G)血清AST値を示す。(H)肝臓中のGSH含有量を示す。(I)肝臓中のコラーゲン濃度を示す。(J)肝臓における炎症促進マーカー(Tnfα、Ccl2、Ccl5)および線維化マーカー(Col1a1、Col1a2、Col3a1、Acta2)のmRNAの発現を示すヒートマップを示す。数値は図43Aおよび図43Bに示す。(K)肝臓におけるERKおよびJNKの活性化状態を示したウエスタンブロットを示す。(C)データは平均値±SEMとして示し、Tukeyの多重比較検定を用いた二元配置分散分析を行った。統計学的有意差は、HFMCD WTとHFMCD CKOの間のP値として示す;(E~I)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Sidakの補正法を用いたStudentのt検定;各条件は、左側から右側に順に、NC WT、NC CKO、HFMCD WTおよびHFMCD CKOを示す。
IL11のシスシグナル伝達を肝細胞特異的に抑制することにより、WDF飼料により誘発させた肥満およびNASHからマウスを保護できること示した模式図、画像、グラフおよび箱ひげ図を示す。(A)(B~M)に示すデータを得るために、WDF飼料を与えたコントロールマウスおよびCKOマウスを作製する実験を示した模式図である。AAV8-Alb-NullウイルスまたはAAV8-Alb-CreウイルスをCKOマウスに注射した3週間後から、WDF飼料を16週間与えた。(B)肝臓中のIL11RAの濃度およびGAPDHの濃度を示したウエスタンブロットを示す。(C)(最初の体重に対する割合(%)として示した)体重を示す。(D)脂肪量を示す。(E)代表的な肝臓の肉眼解剖写真およびH&E染色画像を示す。(F)肝臓中のトリグリセリド含有量を示す。(G)肝重量を示す。(H)血清ALT値を示す。(I)血清AST値を示す。(J)肝臓中のGSH含有量を示す。(K)肝臓中のコラーゲン濃度を示す。(L)肝臓における炎症促進性遺伝子および線維化遺伝子の発現を示したヒートマップを示す(数値は図44Aおよび図44Bに示す)。(M)肝臓中のERKおよびJNKの活性化状態を示したウエスタンブロットを示す。(CおよびD)データは平均値±SEMとして示し、Tukeyの多重比較検定を用いた二元配置分散分析を行った。統計学的有意差は、WDF WTとWDF CKOの間のP値として示す;(F~K)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Sidakの補正法を用いたStudentのt検定。各条件は、左側から右側に順に、NC WT、NC CKO、WDF WTおよびWDF CKOを示す。
WDF飼料を与えたマウスにおいて、肝細胞特異的なIL11のシスシグナル伝達により脂肪性肝炎が誘発されるが、肝細胞特異的なIL11のトランスシグナル伝達では脂肪性肝炎が誘発されないことを示した模式図、画像および箱ひげ図を示す。(A)(B~N)に示した実験を行うための、Il11ra1+/+(WT)マウスおよびIl11ra1-/-(KO)マウスにWDF飼料を与える実験計画を示した模式図である。AAV8-Alb-Null、AAV8-Alb-mbIl11ra1(膜結合型Il11ra1の全長)、またはAAV8-Alb-sIl11ra1(可溶性形態のIl11ra1)をKOマウスに注射し、ウイルスの投与の3週間後からWDF飼料を16週間与えた。(B)肝臓中のIL11RAの濃度およびGAPDHの濃度を示したウエスタンブロットを示す。(C)代表的な肝臓の肉眼解剖写真およびH&E染色画像を示す。(D)肝重量を示す。(E)肝臓中のトリグリセリド含有量を示す。(F)血清ALT値を示す。(G)血清AST値を示す。(H)肝臓中のGSH含有量を示す。(I)肝臓中のコラーゲン含有量を示す。(J)肝臓における炎症促進性遺伝子および線維化遺伝子の発現を示したヒートマップを示す(数値は図45Cおよび図45Dに示す)。(K)肝臓中のERKおよびJNKの活性化状態を示したウエスタンブロットを示す。(L)空腹時血糖値を示す。(M)血清トリグリセリド値を示す。(N)血清コレステロール値を示す。(D~I、L~N)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。各条件は、左側から右側に順に、NC Null WT、WDF Null WT、WDF Null KO、WDF mbIl11ra1 KOおよびWDF sIl11ra1 KOを示す。
本明細書において提唱された、NASHにおけるIL11のシグナル伝達機構の模式図を示す。肝細胞に脂質が過剰に蓄積すると、脂肪毒性が起こり、活性酸素種が産生されてIL11タンパク質の翻訳と分泌が誘導される。IL11は、肝細胞上のIL11RAとgp130に結合し、オートクリンにERK、JNKおよびカスパーゼ3の活性化を開始して、リポアポトーシスを引き起こす。IL11は、パラクリンにも作用し、静止状態の肝星細胞(HSC)を、活性化された筋線維芽細胞に形質転換させる。脂肪毒性を起こした肝細胞および肝星細胞から放出されたサイトカインおよびケモカインは、免疫細胞の活性化と動員を誘導して炎症を引き起こす。したがって、肝細胞におけるオートクリンなIL11のシスシグナル伝達は、あらゆるNASHの病態における重要な起因事象である。
ヒト初代肝細胞におけるIL-11受容体およびIL-6受容体の発現ならびにIL-11のシグナル伝達の効果およびIL-6のシグナル伝達の効果に関する散布図、箱ひげ図、ヒストグラム、写真およびグラフである。(A)活性化されたTHP-1細胞のIL11RA、IL6Rおよびgp130を染色した代表的なFSCプロットを示す。(B)RNA-seq解析およびRibo-seq解析に基づく、ヒト初代肝細胞におけるgp130の転写産物の発現量(Transcripts per million(TPM))を示す。(C)ヒト初代肝細胞のRNA-seq解析およびRibo-seq解析に基づく、gp130の転写産物のリードカバレッジを示す(n=3)。(D)ヒト初代肝細胞および活性化されたTHP-1細胞におけるIL11RA、IL6R、gp130、およびアルブミンの発現を示す免疫蛍光画像を示す(スケールバー=100μm)。(E)肝細胞培地における基礎状態での可溶性IL6Rの濃度を示す。(F)sgp130またはsIL11RAの存在下においてIL11で刺激したヒト初代肝細胞(PI陽性細胞)のPI染色の定量を示す。(G)1μg/mlのsgp130またはsIL11RAの存在下においてIL11の濃度を徐々に増加させた場合の、ヒト初代肝細胞により分泌されるALTの濃度に対するIL11の用量依存的な効果を示す。(H)IL11により誘導されるALTの分泌に対する、徐々に濃度を増加させたsgp130またはsIL11RAの用量依存的な効果を示す。(I)IgG(2μg/ml)、抗IL11RA(X209、2μg/ml)またはsgp130(1μg/ml)の存在下において、パルミチン酸塩で刺激した肝細胞中のトリグリセリド量を示す。(B、G~H)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す。(E~F、I)データは平均値±SEMとして示す。(F~I)Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。(G)各濃度のIL11において、左側から右側に順に、ベースライン条件、sgp130を添加した条件およびsIL11RAを添加した条件をそれぞれ示す。(H)各濃度のIL11+sgp130/IL11RAにおいて、左側から右側に順に、sgp130を添加した条件およびsIL11RAを添加した条件をそれぞれ示す。
sgp130を発現させても、WDF飼料により誘発された肝臓の表現型および肥満の表現型からマウスを保護することができないことを示した模式図、箱ひげ図およびグラフである。(A)gp130タンパク質の各ドメインの構造とそれらのアミノ酸位置(左側)、および本研究においてsgp130を構築するために使用した各ドメイン(右側)をそれぞれ示した模式図である。(B~E)図35Aに示した実験手順に従って、WDF飼料とsgp130を使用したインビボ実験のデータを示す。(B)NC飼料を与えたコントロールマウス、およびAAV8-Alb-NullもしくはAAV8-Alb-sgp130を注射した後にWDF飼料を与えたマウスにおける血清gp130値を示す。(C)AAV8-Alb-Nullを注射したマウスまたはAAV8-Alb-sgp130を注射したマウスにWDF飼料を16週間与えたことによる体重への効果を示す。データは平均値±SEMとして示す。(DおよびE)図35Oに示した、肝臓における(D)炎症促進マーカー(Tnfα、Ccl2、Ccl5)および(E)線維化マーカー(Col1a1、Col1a2、Col3a1、Acta2)のmRNAの発現量を示す。(B、D~E)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。各条件は、左側から右側に順に、NC Null、WDF NullおよびWDF sgp130を示す。
HFMCD飼料を与えたマウスにおいて、IL6ファミリーのメンバーのトランスシグナル伝達だと推定される経路を抑制しても、NASH表現型に対して効果が見られないことを示した模式図、画像および箱ひげ図を示す。(A)(B~N)に示したデータを得るために、HFMCD飼料を与えたマウスにおいてsgp130を肝細胞特異的に発現させた実験の模式図を示す。AAV8-Alb-NullまたはAAV8-Alb-sgp130をマウスに静脈内注射し、HFMCD飼料を4週間与えた。(B)肝臓中のsgp130、IL11およびIL6の濃度と、内部コントロールとしてのGAPDHの濃度を示したウエスタンブロットを示す。(C)血清gp130値を示す。(D)血清IL11値を示す。(E)血清IL6値を示す。(F)代表的な肝臓の肉眼解剖写真およびH&E染色画像を示す。(G)肝臓中のトリグリセリド含有量を示す。(H)血清ALT値を示す。(I)血清AST値を示す。(J)肝臓中のGSH含有量を示す。(K)肝臓中のコラーゲン濃度を示す。(LおよびM)肝臓における(L)炎症促進マーカー(Tnfα、Ccl2、Ccl5)および(M)線維化マーカー(Col1a1、Col1a2、Col3a1、Acta2)のmRNAの発現量を示す。(N)肝臓におけるp-ERK、ERK、p-JNK、JNK、p-STAT3およびSTAT3のウエスタンブロットを示す。(C~E、G~M)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。各条件は、左側から右側に順に、NC Null、HFMCD NullおよびHFMCD sgp130を示す。
肝細胞特異的にIl11ra1を欠損させたマウスは、HFMCD飼料誘発性の遺伝子制御異常から保護されることを示した箱ひげ図である。(AおよびB)図36Jに示した、NC飼料またはHFMCD飼料を与えたコントロールマウスまたはCKOマウスの肝臓における(A)炎症促進マーカー(Tnfα、Ccl2、Ccl5)および(B)線維化マーカー(Col1a1、Col1a2、Col3a1、Acta2)のmRNAの発現量を示す。(A~B)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Sidakの補正法を用いたStudentのt検定。各遺伝子に対する条件は、左側から右側に順に、NC WT、NC CKO、HFMCD WTおよびHFMCD CKOを示す。
肝細胞特異的にIl11ra1を欠損させたマウスは、WDF飼料誘発性のNASH表現型から保護されることを示した箱ひげ図である。(A~E)図37Aに示した実験手順に従ってNC飼料およびWDF飼料を与えたコントロールマウスおよびCKOマウスのデータを示す。(AおよびB)図37Lに示した、肝臓における(A)炎症促進マーカー(Tnfα、Ccl2、Ccl5)および(B)線維化マーカー(Col1a1、Col1a2、Col3a1、Acta2)のmRNAの発現量を示す。(C)空腹時血糖値を示す。(D)血清トリグリセリド値を示す。(E)血清コレステロール値を示す。(A~E)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Sidakの補正法を用いたStudentのt検定。(AおよびB)各遺伝子に対する条件は、左側から右側に順に、NC WT、NC CKO、WDF WTおよびWDF CKOを示す。(C~E)各条件は、左側から右側に順に、NC WT、NC CKO、WDF WTおよびWDF CKOを示す。
肝細胞特異的なIL11のシスシグナル伝達によりWDF飼料誘発性の脂肪性肝炎がマウスにおいて誘発されるが、IL11のトランスシグナル伝達ではWDF飼料誘発性の脂肪性肝炎が誘発されないことを示した模式図および箱ひげ図を示す。(A)膜結合型IL11RAの全長の各ドメインの構造とそれらのアミノ酸位置(左側)、および可溶性IL11RAを構築するために使用した各ドメイン(右側)をそれぞれ示した模式図である。(B~D)図38Aに示した実験手順に従って、Il11ra1+/+(WT)マウスまたはIl11raを広範囲に欠損させたマウス(Il11ra1-/-;KOマウス)に、AAV8-Alb-Null、AAV8-Alb-mbIl11ra1(膜結合型のIl11ra1の全長)またはAAV8-Alb-sIl11ra1(可溶型Il11ra1)を注射し、WDF飼料を与えた給餌計画により得られたデータを示す。(B)AAV8-Alb-NullまたはAAV8-Alb-sIl11ra1をKOマウスに注射し、WDF飼料を与えた場合の血清IL11RA値を示す。(CおよびD)肝臓における(C)炎症促進マーカー(Tnfα、Ccl2、Ccl5)および(D)線維化マーカー(Col1a1、Col1a2、Col3a1、Acta2)のmRNAの発現量を示す。(B~D)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。(CおよびD)各遺伝子に対する条件は、左側から右側に順に、NC Null WT、WDF Null WT、WDF Null KO、WDF mbIl11ra1 KOおよびWDF sIl11ra1 KOを示す。
HFMCD飼料を与えたマウスにおいて、肝細胞特異的なIL11のシスシグナル伝達により脂肪性肝炎が誘発されるが、IL11のトランスシグナル伝達では脂肪性肝炎が誘発されないことを示した模式図、画像および箱ひげ図を示す。(A)HFMCD飼料をWTマウスおよびKOマウスに与えて、(B~L)に示す実験を行ったことを示す模式図である。KOマウスには、AAV8-Alb-Null、AAV8-Alb-mbIl11ra1またはAAV8-ALB-sIl11ra1を静脈内注射し、WTマウスにはコントロールとしてAAV8-Alb-Nullを投与した。各ウイルスをマウスに投与した3週間後からHFMCD飼料を4週間与えた。(B)肝臓中のIL11RAの濃度およびGAPDHの濃度を示したウエスタンブロットを示す。(C)血清IL11RA値を示す。(D)代表的な肝臓の肉眼解剖写真およびH&E染色画像を示す。(E)肝臓中のトリグリセリド含有量を示す。(F)血清ALT値を示す。(G)血清AST値を示す。(H)肝臓中のGSH値を示す。(I)肝臓中のコラーゲン含有量を示す。(JおよびK)肝臓における(J)炎症促進マーカー(Tnfα、Ccl2、Ccl5)および(K)線維化マーカー(Col1a1、Col1a2、Col3a1、Acta2)のmRNAの発現量を示す。(L)肝臓中のERKおよびJNKの活性化状態を示したウエスタンブロットを示す。(C、E~K)データは、中央値(中央線)、25~75パーセンタイル(箱)、および最小値から最大値の範囲(ひげ)を示す箱ひげ図として示す;Tukeyの補正法を用いたStudentのt検定。(E~I)各条件は、左側から右側に順に、NC Null WT、HFMCD Null WT、HFMCD Null KO、HFMCD mbIl11ra1 KOおよびHFMCD sIl11ra1 KOを示す。(JおよびK)各条件は、左側から右側に順に、NC Null WT、HFMCD Null WT、HFMCD Null KO、HFMCD mbIl11ra1 KOおよびHFMCD sIl11ra1 KOを示す。
膵星細胞(PSC)がIL-11Rαおよびgp130を発現するが、IL-6Rαは発現しないことを示したグラフおよび画像である。(A)マウス膵星細胞および膵管細胞におけるIl6st(gp130をコードする)、Il11ra1およびIl6raの発現を調べたシングルセルRNAシーケンシング解析を示す。(B)ヒト膵星細胞におけるgp130タンパク質、IL11RAタンパク質およびIL6RAタンパク質の発現を調べた免疫蛍光分析を示す。
膵星細胞(PSC)が、コラーゲンを発現するαSMA陽性線維化表現型へと活性化することを示した箱ひげ図および画像を示す。(A)インビトロにおいて、抗IL-11RA中和抗体またはIgGアイソタイプコントロール抗体の存在下または非存在下において、図に示した各因子で膵星細胞を24時間刺激し、ACTA2陽性細胞の割合および単位面積あたりのI型コラーゲンの蛍光強度を定量したハイコンテンツイメージングアッセイを示す。(B)インビトロにおいて、抗IL-11RA中和抗体またはIgGアイソタイプコントロール抗体の存在下において、図に示した各因子で膵星細胞を24時間刺激し、単位面積あたりのI型コラーゲンの蛍光強度を分析したハイコンテンツイメージングアッセイの代表的な画像を示す。
線維芽細胞特異的にIL-11の発現を誘導可能なトランスジェニックマウスにおいて、インビボで膵線維症を誘発した実験に関する模式図、箱ひげ図および画像を示す。(A)Col1a2-CreER Rosa26Il11/+(IL11 Tg)トランスジェニックマウスをタモキシフェンで処置することにより、線維芽細胞においてIL-11の発現を誘導した実験の模式図を示す。(B)24日後のコントロールマウスおよびIL11 Tgマウスの膵組織におけるヒドロキシプロリンの含有量を示す。(C)24日後のコントロールマウスおよびIL11 Tgマウスの膵組織のマッソントリクローム染色の代表的な画像を示す。
膵管結紮(PDL)膵障害モデルにおけるIL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用の効果に関する模式図、箱ひげ図および画像を示す。(A)マウスにおいて膵管結紮術により膵障害を誘発した後、抗IL-11RA中和抗体またはIgGアイソタイプコントロール抗体で処置を行う実験の模式図を示す。(B)抗IL-11RA中和抗体またはIgGアイソタイプコントロール抗体で処置した14日後のマウスにおける結紮した膵葉の重量を示す。(C)抗IL-11RA中和抗体またはIgGアイソタイプコントロール抗体で処置した14日後のマウスの膵組織のマッソントリクローム染色の代表的な画像を示す。
以下の実施例において、本発明者らは、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することにより、様々な代謝性疾患の重症度を低下させ、これらの代謝性疾患の症状を回復させることができることを実証している。
実施例1:実施例1~4に関する全般的な方法
IL-11RAノックアウトマウス
C57Bl/6Jを遺伝的背景とするマウス(B6.129S1-Il11rαtm1Wehi/J、ジャクソン・ラボラトリー)から、Il11rα(Il11rα-/-)の機能性アレルを欠損するマウスを作製した。
抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体による処置
10mg/kgの用量の抗IL-11アンタゴニスト抗体もしくは抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体または同量のアイソタイプ適合IgGコントロール抗体をマウスに腹腔内注射した。抗IL-11抗体はマウスIL-11に結合することによりIL-11媒介性シグナル伝達を抑制し、抗IL-11Rα抗体はマウスIL-11Rαに結合することによりIL-11媒介性シグナル伝達を抑制する。
より具体的には、本実施例において使用される抗IL-11抗体はマウス抗マウスIL-11 IgG X203であり、例えば、Ng et al., Sci Transl Med. (2019) 11(511) pii: eaaw1237に記載されている(Ng, et al., “IL-11 is a therapeutic target in idiopathic pulmonary fibrosis.” bioRxiv 336537; doi: https://doi.org/10.1101/336537においても報告されている)。X203は「Enx203」とも呼ばれ、WO 2019/238882(A1)において配列番号92(本開示での配列番号22)で示されるVH領域と、WO 2019/238882(A1)において配列番号94(本開示での配列番号23)で示されるVL領域とを含む。
本実施例において使用される抗IL-11Rα抗体はマウス抗マウスIL-11RαIgG X209であり、例えば、Widjaja et al., Gastroenterology (2019) 157(3):777-792に記載されている(Widjaja, et al., “IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH.” bioRxiv 470062; doi: https://doi.org/10.1101/470062においても報告されている)。X209は「Enx209」とも呼ばれ、WO 2019/238884(A1)において配列番号7(本開示での配列番号24)で示されるVH領域と、WO 2019/238884(A1)において配列番号14(本開示での配列番号25)で示されるVL領域とを含む。
飼料
フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を使用して、肥満、2型糖尿病または非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有するヒトに見られる代謝障害と非常によく似た代謝障害を確立した(Baena et al., Sci Rep (2016) 6: 26149, Machado et al., PLoS One (2015) 10:e0127991)。
具体的には、肥満や2型糖尿病などの代謝性疾患を確立するため、飲料水に溶解した15重量/体積%のフルクトースを補充しながら、ウエスタンダイエット(WDF)(D12079B、Research Diets)を12週齢から16週間にわたりマウスに与えた。
また、高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料(HFMCD)を使用して、悪液質様の代謝障害を確立した。具体的には、悪液質で見られる体重減少と除脂肪体重の減少を確立するため、60kcal%の脂肪を補充したメチオニン・コリン欠乏飼料(HFMCD)(A06071301B、Research Diets)をC57BL/6Nマウスに与えた。
コントロール対象には、通常の固形飼料(NC、Specialty Feeds)と飲料水を与えた。
EchoMRIによる体組成分析
4in1 Body Composition Analyzer for Live Small Animalsを使用したEchoMRI分析により、総体脂肪量および除脂肪体重を2週間ごとに測定した。
空腹時血糖値の測定
空腹時血糖値を測定するため、マウスを6時間絶食させてから、(尾部先端を切断して)採血し、アキュチェック血糖測定器を使用して空腹時血糖値を測定した。
腹腔内糖負荷試験(ipGTT)
腹腔内糖負荷試験を行うため、マウスを6時間絶食させてから腹腔内糖負荷試験に供した。基礎状態での空腹時血糖値は、尾部先端を切断して血液を採取し、アキュチェック血糖測定器を使用して測定した。除脂肪体重1kgあたり2gのブドウ糖を腹腔内注射し、15分ごとに血糖値を測定し、2時間後まで測定を行った。曲線下面積(AUC)を計算し、棒グラフとしてプロットした。
ランゲルハンス島、グルカゴンおよびインスリンの膵臓における組織学的分析
組織学的分析を行うため、膵臓試料を切除し、4%中性緩衝ホルマリン(NBF)で室温にて24時間固定し、30%スクロース中で保存した。標準的なプロトコルに従って、5μmに薄切した凍結切片をグルカゴン抗体またはインスリン抗体とともに一晩インキュベートして染色し、ImmPACT DABペルオキシダーゼ基質(ベクターラボラトリーズ)を含むImmPRESS HRP IgGポリマー検出キット(ベクターラボラトリーズ)で可視化し、光学顕微鏡で観察した。
実施例2:肥満関連障害におけるIL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用
肥満および肥満関連障害(2型糖尿病など)におけるIL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用の効果を調べるため、IL-11受容体α鎖ノックアウト(IL11-RA-/-)マウスを使用して、これらの代謝性疾患の食餌誘発性マウスモデルのインビボ実験を行い、さらに抗マウスIL-11アンタゴニスト抗体または抗マウスIL11RAアンタゴニスト抗体でマウスを処置したインビボ実験も行った。
通常の固形飼料(NCD)またはフルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与えたIL11RAノックアウトマウスは、IL11RAを発現する野生型同腹仔と比較して改善した代謝表現型を示した。
図1Aおよび図1Bは、野生型マウスの方が、IL11RAノックアウトマウスよりも体重が増加したことを示している。図2Aおよび図2Bは、IL11RAノックアウトマウスの総体脂肪量が、野生型マウスよりも有意に少なかったことを示している。図3は、IL11RAノックアウトマウスの空腹時血糖値が、野生型マウスよりも有意に低かったことを示している。図4は、IL11RAノックアウトマウスの血清トリグリセリド値が、野生型マウスよりも有意に低かったことを示している。図5Aおよび図5Bは、IL11RAノックアウトマウスの血清コレステロール値が、野生型マウスよりも有意に低かったことを示している。
これらの結果から、IL-11媒介性シグナル伝達の低減により、代謝に有益な効果がもたらされることが示唆された。
次に、本発明者らは、WDF飼料を与えたマウスに対する抗IL-11RAアンタゴニスト抗体またはコントロールIgG抗体の効果を調べた。
驚くべきことに、WDF飼料を与え抗IL-11RA抗体で処置したマウスは、WDF飼料を与えIgGコントロール抗体で処置したマウスと比べて体重が有意に減少した(図6A)。また、WDF飼料を与え抗IL-11RA抗体で処置したマウスは、IL11RA KOマウスと同様に(図3)、脂肪量が有意に減少した(図6B)。
興味深いことに、IgGコントロール抗体で処置したマウスと比べて、抗IL-11RA抗体で処置したマウスでは除脂肪体重が増加したことから、WDF飼料誘発性の代謝性疾患においてIL-11のシグナル伝達を抑制することにより、筋肉量が回復したことが示唆された。さらに、腹腔内糖負荷試験(ipGTT)を行ったところ、抗IL-11RA抗体で処置したマウスにおいて、空腹時血糖値が改善するとともに耐糖能が有意に改善した(図7Aおよび図7B)。
さらに、前述の分析を使用して膵臓に対する効果も調べた。驚くべきことに、WDF飼料を与え抗IL-11RA抗体で処置したマウスでは、IgGコントロール処置マウスと比較して、WDF飼料により誘発された膵重量の減少に対して顕著な保護効果が示されることが見出された。この保護効果は、(代謝性疾患に関連する効果から保護するために)8~16週目に処置した場合でも、(代謝性疾患に関連する効果から回復させるために)16~24週目に処置した場合でも認められた(図8)。
図9Aは、WDF飼料を与え抗IL-11RA抗体で処置したマウスの血清コレステロール値が、WDF飼料を与えコントロールIgG抗体で処置したマウスよりも有意に低かったことを示している。図9Bは、WDF飼料を与え抗IL-11RA抗体で処置したマウスの血清トリグリセリド値が、WDF飼料を与えコントロールIgG抗体で処置したマウスよりも有意に低かったことを示している。図9Cは、WDF飼料を与え抗IL-11RA抗体で処置したマウスの空腹時血糖値が、WDF飼料を与えコントロールIgG抗体で処置したマウスよりも有意に低かったことを示している。
さらに、膵臓の免疫組織学的分析を行ったところ、WDF飼料を与えIgGで処置したマウスにおいて、膵島におけるグルカゴン染色およびインスリン染色の増加と、膵島の過形成が認められ(図10Aおよび図10B)、これらの特徴は2型糖尿病に一般に見られるものであった(Bonner-Weir and O’Brien Diabetes (2008) 57:2899-2904)。16~24週目に、WDF飼料で飼育したマウスを抗IL-11RA抗体で処置したところ、膵島の過形成およびグルカゴン染色が顕著に減少し、膵島におけるインスリンの発現が改善されたことから(図10Aおよび図10B)、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用が、欧米型の食餌によって引き起こされる代謝性疾患の改善および回復に有用であることが示唆された。
実施例3:IL-11媒介性シグナル伝達および悪液質に対する拮抗作用
悪液質マウスモデルに対する抗IL-11療法の効果を評価した。
メチオニン・コリン欠乏(MCD)飼料をマウスに与えると、重度の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝臓の炎症および線維症が誘発されて、極度かつ継続的な体重の減少が起こる(MCD飼料を3週間与えると、最大で体重の30%が失われる)。MCD飼料を与えたマウスは、通常の固形飼料(NCD)を与えたマウスよりも代謝率が36%高く、強い食欲が刺激される環境(レプチン値が低く、血糖値が低く、TG/コレステロール値が低く、インスリン値が低い)を有するが、摂食量が増えることはない(Rizki et al. J. Lipid Res. (2006) 47:2280-2290)。そのため、MCD飼料モデルは、悪液質モデルとしてよく知られており、がん関連悪液質と共通した特徴が多い。脂肪性肝炎は、実験およびヒトのがん悪液質において頻繁に報告されており、消耗症候群において重要であるが、その役割は十分には理解されていない。
5週齢の雄性マウスに、60kcal%の脂肪を補充したメチオニン・コリン欠乏(MCD)飼料(A06071301B、Research Diets)を与えた。この飼料は、高脂肪メチオニン・コリン欠乏飼料(HFMCD)と呼ばれ、メチオニン・コリン欠乏飼料のみを与えた場合よりも重度のNASHを引き起こす。コントロールマウスには通常の固形飼料(NC;Specialty Feeds)を与えた。処置期間を同じにして、HFMCD飼料を各マウスに与え始めてから1週間後から10mg/kgの抗IL-11抗体もしくは抗IL-11RA抗体、または同じ濃度のIgGアイソタイプコントロールを週2回腹腔内注射した。体重を毎週測定した。
結果を図11Aおよび図11Bに示す。抗IL-11療法は体重に対して極めて有益な効果があることが判明したことから、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制することにより悪液質に伴う体重減少を緩和できることが示された。HFMCD飼料を与えた群のマウスはいずれも(n≧5匹/群)、脂肪性肝炎を誘発させるHFMCD飼料を与えた1週目を過ぎてから体重が約15%減少したが、抗IL-11療法または抗IL-11RA療法を行った群は、すぐに体重が回復し始め、5週間後までには正常な体重またはほぼ正常な体重に戻った(図11A)。NC飼料を与えたマウスでは体重が徐々に増加したが、HFMCD飼料を与えIgGコントロールで処置したマウスは、処置期間中に体重が減少し、その体重減少率は30%を超えた。マウスの体の大きさを比較した例を図11Bに示す。このように、食欲不振症/悪液質マウスモデルにおいて、IL-11媒介性シグナル伝達をインビボで抑制することにより、悪液質が回復することが見出された。
IL-11媒介性シグナル伝達を抑制したときの効果を悪液質に関してさらに詳しく調べるため、MCD飼料モデルにおいて様々な用量の抗IL-11療法を検討した。先の実験と同様にして、5週齢の雄性マウスにHFMCD飼料またはNC飼料を1週間与えて悪液質を誘発させたところ、MCD飼料マウスにおいて体重が約15%減少した。1週目を過ぎてから、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kgの用量の抗IL-11抗体または抗IL-11RA抗体をマウスに週2回腹腔内注射した。この実験では、2種の抗IL-11抗体((1)および(2))と1種の抗IL-11RA抗体の計3種の抗体を試験した。コントロールとして、10mg/kgのIgGアイソタイプ抗体を使用した。
体重と摂食量を毎週測定した。摂食量は、ケージ(1ケージあたりn=3匹)の給餌器からの平均食物摂取量を測定した(g/匹/週)。
体重を測定した結果を図12A~図12Cに示す。3種の抗IL-11療法のいずれでも用量依存的に体重が増加することが見出され、悪液質の回復が示された。最も高い用量では、悪液質に対する回復効果が最も高かった。NC飼料を与えたマウスでは体重が徐々に増加したが、HFMCD飼料を与えIgGコントロールで処置したマウスは、処置期間中に体重の約30%が失われた。
摂食量を測定した結果を図13A~図13Cに示す。3種の抗IL-11療法のいずれでも用量依存的に摂食量が増加することが見出された。最も高い用量では摂食量に対する効果が最も高かったが、IgGコントロールで処置したマウスでは摂食量がわずかに減少した。抗IL-11RA抗体による処置は、体重減少の回復に最も効果的であることが見出され、食物摂取量の増加が最も高かった。
例えば外傷や敗血症などの急性疾患も食欲不振症および悪液質を伴うことがあることを踏まえ、次に、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用が、急性腎障害マウスモデルの食欲不振症および悪液質に与える効果を調べた。
溶媒(0.3M NaHCO3)に溶解した葉酸(180mg/kg)を10週齢の雄性マウスに腹腔内注射して腎障害を誘発させた。コントロールマウスには溶媒のみを投与した。注射から28日後にマウスを屠殺した。葉酸投与の1時間前からマウスの屠殺まで、20mg/kgの抗IL-11抗体、抗IL-11RA抗体または同じ濃度のIgGアイソタイプコントロールを3日ごとにマウスに腹腔内注射した。
結果を図14Aに示す。葉酸により腎障害を誘発すると、重度の急性期腎障害が両側性に発生し、これに伴って急激な食欲不振症/悪液質が発生し、体重が減少した。腎障害の誘発時および腎障害の継続期間中に抗IL-11Rα療法または抗IL-11療法を行ったマウス(n=7/群)は、IgGコントロールよりも体重が急速に回復し、3週間後までには正常な体重またはほぼ正常な体重に戻った。
第2の実験では、先の実験と同様にして葉酸を腹腔内注射することにより腎障害を誘発させた。腎障害の誘発の21日後から抗IL-11抗体またはIgGコントロールのみでマウスを処置した。抗体による処置前および処置後にマウスの体重を測定した。コントロールとして、葉酸を投与しなかった正常マウスを使用した。
結果を図14Bに示す。抗IL-11抗体で処置したマウスは、処置の開始時から体重が回復し始めたことから、るい痩に伴う体重減少を疾患の後期で改善できることが示された。
追加実験において、片側尿管閉塞術(UUO)をマウスに行い、急性腎障害を誘発させた。12週齢のマウスに片側尿管閉塞術を行った。簡潔に述べると、ケタミン(100mg/kg)/キシラジン(10mg/kg)の腹腔内注射によりマウスに麻酔をかけ、趾間反射の消失により十分な麻酔深度を確認した。次に、マウスの左側腹部を剃毛した。メスで皮膚を縦切開し、腹膜に第2の切開を形成して腎臓を露出させた。鉗子を用いて腎臓を体表面に出し、腎臓の下方の尿管を外科用絹糸で2回結紮した。結紮した腎臓を解剖学的に正しい位置に静かに戻し、体液の喪失を補うため滅菌生理食塩水を補充した。その後、切開部を縫合した。抗生物質であるエンロフロキサシン(15mg/kg、皮下投与)および鎮痛薬であるブプレノルフィン(0.1mg/kg、皮下投与)により3日間連続してマウスを術後治療した。結紮の10日後にマウスを屠殺した。外科手術後4日目からマウスの屠殺まで、20mg/kgの抗IL-11抗体(週2回)または同じ濃度のIgGアイソタイプコントロールをマウスに腹腔内注射した。
結果を図15に示す。いずれの群のマウスも、外科手術による外傷に伴う食欲不振症のために、当初は同程度に体重が減少した(約6%)。抗IL-11療法(片側尿管閉塞術後4日目から屠殺するまで20mg/kgを週2回投与)を行ったマウスは、IgGコントロールを投与したマウスよりも早期に体重が回復し、4日以内に正常な体重に戻った。
したがって、IL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用により、急性疾患モデルの体重の治療的回復を促すことができる。
次に、組換えマウスIL-11の注射またはIL-11導入遺伝子の発現誘導により、マウスの体重に対するIL-11過剰発現の効果を調べた。
組換えマウスIL-11(rmIL11)を生理食塩水中で再構築し、50μg/mlの濃度とした。10週齢の野生型雄性C57BL/6Jマウスに、生理食塩水に溶解した100μg/kgのrmIL11(n=19)または同量の生理食塩水(n=15)を21日間にわたり毎日皮下注射した。
結果を図16Aに示す。rmIL11を投与することによって、正常な体重の増加の進行が遅延することが分かった。rmIL11を21日間にわたり毎日注射したマウスの処置期間中の体重の増加率は、生理食塩水のみを投与したマウスよりも低かった。
IL-11トランスジェニック(IL-11-Tg)マウスを作製した。ヘテロ接合型Rosa26-IL11マウスをCol1a2-CreERマウスと交配して、線維芽細胞においてIL-11導入遺伝子を発現する二重ヘテロ接合型Col1a2-CreER:Rosa26-IL11子孫マウス(IL-11-Tgマウス)を作製した。Creを介してIL-11導入遺伝子を誘導するため、6週齢のIL-11-Tgマウスに50mg/kgの用量のタモキシフェン(シグマ アルドリッチ)を10日間連続して腹腔内注射し、21日目にマウスを屠殺した(n=14)。コントロールとして、Rosa26:Il11マウス(Col1a2-CreERアレルを持たない)に、同じ用量のタモキシフェンを10日間連続して注射した(n=10)。
結果を図16Bに示す。IL-11-Tgマウスは悪液質の初期徴候を示し、体重の増加が止まり、時間の経過とともに体重が減少した。したがって、IL-11媒介性シグナル伝達は、るい痩に伴う体重減少を助長することが分かった。
実施例4:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)マウスモデルにおけるIL-11媒介性シグナル伝達に対する拮抗作用
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病因におけるIL-11シグナル伝達の役割を調べた。
4.1 方法
肝星細胞(HSC)または肝細胞をIL-11で刺激し、ハイコンテンツ細胞イメージング、免疫ブロット法、ELISAおよび浸潤アッセイを使用してその効果を評価した。遺伝的手法または薬理学的な手法によるIL-11の機能獲得実験または機能喪失実験をインビトロおよびインビボで実施した。IL-11のシグナル伝達はERK阻害剤を使用して調べた。さらに、メチオニン・コリン欠乏飼料またはフルクトース水を補充したウエスタンダイエットを使用した3種の前臨床NASHモデルにおいて、抗IL-11療法または抗IL11RA療法の効果を評価した。さらに、ヒドロキシプロリンアッセイ、qPCR、RNA-seq、ウエスタンブロット、組織学的分析、CyTOF、脂質バイオマーカーおよび代謝バイオマーカーを使用して、表現型解析を行った。
動物実験
すべての動物実験は、SingHealthの動物実験委員会(IACUC)により承認されたものであり、動物実験委員会のガイドラインに従って実施した。すべてのマウスに対して食物および水を自由に与えた。
NASHマウスモデル
高脂肪メチオニン・コリン欠乏(HFMCD)飼料を与えた野生型マウス
5週齢の雄性C57BL/6Nマウスに、60kcal%の脂肪を補充したメチオニン・コリン欠乏飼料(A06071301B16、Research Diets)を与えた。コントロールマウスには通常の固形飼料(NC、Specialty Feeds)を与えた。飼料を与えた期間と抗体療法の期間は本明細書に記載されている。
メチオニン・コリン欠乏(MCD)飼料を与えたdb/dbマウス
C57BL/6Jを遺伝的背景とする雄性BKS.Cg-Dock7m+/+LeprdbJ(db/db)マウスに、メチオニン・コリン欠乏飼料(MCD、A02082002BRi、Research Diets)を8週間与えたところ、12週齢で肝脂肪変性を起こした。同じ遺伝子型のマウスをコントロールとして使用した。飼料を与えた期間と抗体療法の期間は本明細書に記載されている。
フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)を与えた野生型マウス
ヒトにおけるNAFLD/NASH様病態を模倣するように、10週齢の雄性C57Bl/6Jマウスに、飲料水に溶解した15重量/体積%のフルクトースを補充しながらウエスタンダイエット(D12079B、Research Diets)を与えた17,18。コントロールマウスには通常の固形飼料と水道水を与えた。飼料を与えた期間と抗体療法の期間は本明細書に記載されている。
Il11ra欠損マウス
Il11rαの機能性アレルを欠損するマウス(Il11ra-/-)は、C57Bl/6Jを遺伝的背景とするものであった(B6.129S1-Il11ratm1Wehi/J、ジャクソン・ラボラトリー)。Il11ra-/-マウスとその野生型同腹仔(Il11ra+/+)に、(1)5週齢からHFMCD飼料を10週間与えるか、(2)12週齢からWDF飼料を16週間与えてNASHを発症させた。コントロールマウスには、通常の固形飼料(NC)を同じ期間与えた。
Il-11のインビボ投与
10週齢の雄性Col1a1-GFPレポーターマウス19または野生型C57BL/6Jマウスに、100μg/kgの組換えマウスIl-11(rmIl-11)または同量の生理食塩水を21日間にわたり毎日皮下注射した。
抗IL-11モノクローナル抗体または抗IL11RAモノクローナル抗体のインビボ投与
抗IL-11アンタゴニスト抗体、抗IL11RAアンタゴニスト抗体、またはこれらと同量のIgGアイソタイプコントロールを、各図に示した処置期間にマウスに腹腔内注射した。
空腹時血糖値の測定
マウスを6時間絶食させてから、(尾部先端を切断して)採血し、アキュチェック血糖測定器を使用して空腹時血糖値を測定した。
細胞培養
細胞(心房線維芽細胞、肝星細胞および肝細胞)を増殖させ、37℃、5%CO2で維持した。増殖培地を2~3日ごとに交換し、標準的なトリプシン処理技術を用いて80~90%コンフルエントで細胞を継代した。すべての実験は、継代数の少ない細胞(P1~P2)を用いて行った。細胞を16時間血清飢餓状態にしてから刺激を加えた。刺激した細胞を、刺激の非存在下において同じ条件下(無血清培地)で同じ期間増殖させた非刺激細胞と比較した。
初代ヒト心房線維芽細胞
ヒト心房線維芽細胞は、過去の報告11に従って調製し培養した。
初代ヒト肝星細胞(HSC)
初代ヒト肝星細胞(5300、ScienCell)は、ポリ-L-リシンコーティングプレート(2μg/cm2、0403、ScienCell)において肝星細胞用完全培地(5301、ScienCell)中で培養した。
ヒト初代肝細胞
ヒト肝細胞(5200、ScienCell)は、2%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加した肝細胞用培地(5201、ScienCell)中で増殖させ維持した。
THP-1細胞
THP-1細胞(ATCC)は、10%FBSおよび0.05mM β-メルカプトエタノールを添加したRPMI 1640培地(A1049101、サーモフィッシャー)中で培養した。次に、RPMI 1640培地中において10ng/mlのホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA、P1585、シグマ)で48時間刺激することにより、THP-1細胞の分化を誘導した。
Operettaハイスループット表現型アッセイ
Operettaアッセイは、以下に記載の若干の変更を加えたこと以外は過去に報告されている方法11とほぼ同様にして行った。96ウェルの黒色CellCarrierプレート(パーキンエルマー)に肝星細胞または肝細胞を5×103個/ウェルの密度で播種した。各実験条件に従って、細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)(28908、サーモフィッシャー)で固定し、0.1%Triton X-100(シグマ)で透過処理し、0.5%BSAおよび0.1%Tween-20を含むPBS溶液で非特異的部位をブロッキングした。一次抗体(1:500)とともに細胞を一晩(4℃)インキュベートした後、適切なAlexaFluor 488二次抗体(1:1000)とともにインキュベートした。ローダミンファロイジン染色(1:1000、R415、サーモフィッシャー)を一晩インキュベートして(4℃)行った。ブロッキング溶液に加えた1μg/ml DAPI(D1306、サーモフィッシャー)で細胞を対比染色した。Operettaハイコンテンツイメージングシステム1483(パーキンエルマー)を使用して、各条件を二連のウェルにおいて少なくとも1ウェルあたり7視野撮影した。Harmony v3.5.2(パーキンエルマー)を使用してACTA2発現細胞を定量し、全細胞数あたりの活性化された線維芽細胞(ACTA2陽性)の割合を視野ごとに測定した。さらに、Columbus 2.7.1(パーキンエルマー)を使用して、単位面積あたりのI型コラーゲンの蛍光強度(細胞数に対して正規化)を測定した。
免疫蛍光法
染色を行う24時間前に、ヒト肝星細胞およびヒト肝細胞を8ウェルのチャンバースライドに播種した(1.5×104個/ウェル)。細胞を4%PFAで20分間固定し、PBSで洗浄し、非特異的部位を5%BSAのPBS溶液で2時間ブロッキングした。抗IL11RA抗体または抗IL6R抗体とともに細胞を一晩(4℃)インキュベートし、適切なAlexa Fluor 488二次抗体とともに細胞を1時間インキュベートした。チャンバースライドを暗所で乾燥させ、DAPIを含む封入剤5滴をスライドに滴下し、15分間経過後に蛍光顕微鏡(Leica)による画像化を行った。
飛行時間型マスサイトメトリー(CyTOF)
過去に報告されている方法20と同様にして、肝臓から免疫細胞を単離した。具体的には、肝組織を細断し、100μg/mlのIV型コラゲナーゼと20U/mlのDNase Iを使用して37℃で1時間消化した。消化後、細胞をストレーナーに通して単一細胞懸濁液を得てから、パーコール勾配遠心分離を行って免疫細胞を単離した。過去に報告されている方法21と同様にして、CyTOF染色を行った。まず、細胞を解凍し、シスプラチン(フリューダイム社)で染色して生細胞を同定した後、金属標識CD45抗体で染色してバーコード化した。バーコード化した細胞を金属標識細胞表面抗体(Ly6C)で染色した。次に、1.6%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、100%メタノールで透過処理し、細胞内抗体染色(TGFβ1)を行った。DNAインターカレーターで細胞を標識し、Heliosマスサイトメーター(フリューダイム社)でデータを取得した。データ解析では、まず、生きている単一の細胞を同定し、次に、バーコードを除去して個々の試料を同定した。Flowjoソフトウェア(Flowjo)を使用して手動でゲーティングを行った。
統計分析
統計分析は、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン6.07)を使用して行った。Dunnettの方法(1つの条件に対していくつかの実験群を比較する場合)、Tukeyの方法(1つの実験内でいくつかの条件を比較する場合)、またはSidakの方法(2つの異なる遺伝子型においていくつかの条件を比較する場合)を使用した多重検定を行ってP値を補正した。2つの異なる群を比較する際の2つのパラメータ(経時的な抗体の有効性)の分析は、二元配置分散分析により行った。統計学的有意差の基準はP<0.05とした。
データの利用性
本研究で作製したハイスループットシーケンシングデータは、GSE128940からダウンロードすることができる。その他のデータはいずれも論文または補足方法に記載している。
4.2 結果
概要
NASH因子で刺激された肝星細胞はIL-11を分泌し、このIL-11によって、肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換に必要とされるERK依存性のオートクリンなシグナル伝達ループが誘導される。IL-11は、ヒトおよびマウスのNASHでアップレギュレートされ、Il-11をマウスに注射することにより肝損傷、肝炎症および肝線維症が誘発されるが、Il11ra1欠損マウスの2種の前臨床モデルではNASHに対する保護効果が観察される。IL11RAに対する治療抗体またはIL-11に対する治療抗体は、3種のNASHマウスモデルにおいて、線維症および脂肪変性を一貫して抑制し、これらの病態から回復させることができる。予想外にも、IL-11は肝細胞損傷を引き起こし、間質を介した炎症を促進するが、抗IL-11療法によりNASHに関連する肝毒性および肝炎が回復する。NASHにおけるIL-11シグナル伝達の遺伝的抑制または薬理学的抑制は、血清中のトリグリセリド値、コレステロール値および血糖値の低下と関連している。
IL-11による肝星細胞の活性化と肝線維症の誘発
ゲノムワイドなRNA-seq解析を行ったところ、肝星細胞においてTGFβ1によりIL-11が強くアップレギュレートされることが明らかになった(14.9倍、P=3.40×10-145)。この結果をqPCRで検証したところ、タンパク質レベルで同じ結果が確認され、さらにヒト肝臓の精密薄切片を使用した実験でも同じ結果が再現された(図17A~図17C、図24A)。独立して作製したRNA-seqデータ22からは、肝星細胞を硬い培養器表面上で増殖させて硬変肝のモデル化を行った場合、この肝星細胞においてIL-11が最もアップレギュレートされた遺伝子であったことが示された(図24B)。IL-11受容体αサブユニット(IL11RA)の発現量は、心臓線維芽細胞や肺線維芽細胞よりも肝星細胞において高く、肝星細胞はIL-11に対して応答性を示す(図24B)。また、免疫組織化学的分析により、肝星細胞においてIL11RAが高発現されており、IL6Rの発現は検出されないことが確認された(図17D)。さらに、ヒト肝臓試料をウエスタンブロット分析したところ、NASHを含む線維性肝疾患の患者においてIL-11が増加していることが示された(図24D~図24E)。これらのデータから、肝星細胞は、ヒト肝臓においてIL-11の供給源であるとともにIL-11の標的であり、IL-11がヒト肝疾患において上昇していることが示された。
肝星細胞に対するIL-11の効果を調べるため、IL-11、TGFβ1またはPDGFで肝星細胞を刺激した。IL-11は、TGFβ1やPDGFと同程度に肝星細胞を活性化して、静止状態の肝星細胞から、コラーゲン・マトリックス修飾酵素を分泌するACTA2陽性筋線維芽細胞へと形質転換させる(図17E~図17H、図24F~図24H)。また、IL-11は、用量依存的に肝星細胞のマトリックスへの浸潤を促進したが、これはNASHにおける肝星細胞の病理生物学の一態様として重要である23(図17I)。さらに、hyper IL-1111で刺激した肝星細胞もIL-11を分泌したことから、IL-11シグナル伝達のオートクリンなフィードフォワードループの存在が確認された(図17J)。
組換えマウスIl-11(rmIl-11)で処置したCol1a1-GFPレポーターマウス19において、GFPを発現するCol1a1陽性筋線維芽細胞が肝臓に蓄積したことから、インビボでの肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換に対するIl-11の効果がさらに確認された。また、rmIl-11をマウスに21日間皮下投与すると、肝臓中のコラーゲン含有量が増加し、重要な線維化促進性遺伝子および炎症促進性遺伝子の発現が増加し、血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)も増加した(図17K~図17N、図24I~図24K)。このことから、rmIl-11が、線維症だけでなく、肝細胞損傷および炎症も引き起こすことが示唆された。
Il11ra1の欠損による、NASHに関連する炎症、肝毒性および線維症からのマウスの保護と、血清脂質値および血清血糖値の低下
高脂肪メチオニン・コリン欠乏(HFMCD)飼料を使用した重度のNASH前臨床モデルにおいて試験を行った16。このモデルでは、Il-11 mRNAは中程度に上昇していたが、Il-11 タンパク質の発現量は高度にアップレギュレートされていたことから、肝臓においてIl-11の発現が転写後調節を受けていることが示唆された(図25A~図25B)。NASHにおいてIl-11タンパク質が漸増的に誘導されることは、Erkの活性化に反映されていたが、このことは、NASHの病因24、コラーゲンの増加および血清ALT値の上昇において重要である可能性がある(図18A、図25C~図25D)。
NASHにおけるIl-11レベルの上昇の病態生理学的な関連性を評価するため、遺伝子機能喪失モデルとしてIl-11受容体αサブユニット欠損マウス(Il11ra1-/-)を使用した25。HFMCD飼料でIl11ra1-/-マウスを飼育したところ、このマウスはコントロールと比較して線維症から強力に保護され、脂肪変性および肝損傷も少なかった(図18B~図18D、図25E~図25H)。さらに、Il11ra1-/-マウスでは肝臓の炎症も顕著に少ないことが観察され(図18E)、この結果から、Il-11が複数のNASH病態において重要な役割を果たしていることが示唆された。
HFMCD飼料モデルは、脂肪性肝炎を早期に発症し、それに続いて線維症を発症する。一方で、このモデルは肥満を呈さず、インスリン抵抗性でもない。フルクトース水を補充したウエスタンダイエット(WDF)26を使用して別のNASHモデルを構築したが、このNASHモデルは、肥満、インスリン抵抗性および高血糖を呈し、ヒトNASHとよく似ていた18。WDF飼料を16週間与えると、NASHが確立されて、肝臓においてIl-11タンパク質がアップレギュレートされた(図18F)。WDF飼料を与えたIl11ra1-/-マウスは、コントロールマウスと同様の体重増加を示したが、肝脂肪変性、炎症、肝細胞損傷および線維症からの保護が認められた(図18G~図18J、図26)。Il11ra1-/-マウスにおけるErkの活性化が、HFMCD飼料モデルとWDF飼料モデルの両方で低下したが、これは、Il-11により誘導されるErkの活性化がNASHにおいて重要であることを示唆している(図18K、図25I)。
NASHによる死亡の主な原因は心血管疾患であり、特に、心筋梗塞、腎不全および脳卒中である27,28。WDF飼料を16週間与えた後のIl11ra1-/-マウスにおいて、心血管疾患リスクのバイオマーカーを測定した。同腹仔コントロールと比較して、WDF飼料を与えたIl11ra1-/-マウスは、空腹時血糖値、血清コレステロール値および血清トリグリセリド値が低かった(図18L~図18N)。
抗IL-11中和抗体または抗IL11RA中和抗体による肝星細胞の活性化の阻害
遺伝子操作によりマウスをIL11RAで免疫処置して、抗IL11RA中和抗体を作製した。線維芽細胞の形質転換を阻害するクローン11を同定し、クローンX209(IgG1κ、KD=6nM)を選択した。クローンX209は、5.8pMのIC50で肝星細胞からのMMP2の分泌を阻害し、インビボでの半減期は約18日間であり、肝臓への取り込みも良好であった(図19A、図27A~図27D)。IL-11のシグナル伝達の治療的特異性を確認するため、抗IL-11中和抗体としてX20312(IgG1κ、肝星細胞の活性化に対するIC50=40.1pM)を開発し、実験に使用した。
TGFβ1(図17A~図17C)に加えて、PDGF、CCL2、アンジオテンシンII、bFGF、酸化ストレスなどのその他の重要なNASH刺激因子も、肝星細胞からのIL-11の分泌を誘導することが見出された(図19B)。この結果から、IL-11が、複数の因子の下流にある肝星細胞の活性化において一定の役割を果たしていることが示唆された。これを試験するため、様々なNASH因子で肝星細胞を刺激したところ、いずれの刺激因子も、完全なIL-11のシグナル伝達に依存してACTA2またはコラーゲンの発現を誘導することが見出された(図19C、図27E)。別のアッセイでは、肝星細胞に対するPDGFまたはCCL2の浸潤促進効果もIL-11に依存することが示された(図19D)。
Il11ra1-/-マウスにHFMCD飼料またはWDF飼料を与えた際の肝臓に対する保護効果は、Erkの活性化の低下と関連していた。本発明者らは、IL-11が肝星細胞においてERKを直接活性化すること、および肝星細胞からのIL-11の分泌を誘導する刺激因子はいずれもERKの活性化を誘導することを見出した。IL-11を含むすべての刺激因子の下流において、ERKのリン酸化と肝星細胞の形質転換がX209により阻害された。さらに、ERK阻害剤により、すべてのNASH誘導因子の下流のIL-11の効果と肝星細胞の活性化が阻害されたことから、IL-11によるERKのリン酸化の誘導は、肝星細胞の形質転換において中心的な重要な役割を果たしていることが示唆された(図19E~図19F、図27F)。
肝臓におけるIL-11に関して公表された学術文献は限られているが、高用量の組換えヒトIL-11をげっ歯類に注射すると保護効果が見られることも報告されており13,14、血小板生物学でのIL-11の役割に関しては曖昧なままである25。安全性の問題を排除するため、本発明者らは、X209およびX203の長期(5ヶ月間)にわたる高用量(10mg/kg、週2回)の前臨床毒性試験を実施したところ、血清ALT値や血小板数に対する影響は観察されなかった(図19G~図19H)。Il11ra-/-マウスでのデータと一致して、抗IL-11療法により処置期間中に血清脂質値が低下するか、または血清脂質値が低下する傾向が示された(図19I~図19J)。
3種の前臨床NASHモデルにおいて有効なIL-11またはIL11RAの治療標的化
次に、インビボでのX209療法およびX203療法を試験した。HFMCD飼料を6週間与えると、IL-11が強くアップレギュレートされ、コラーゲンが蓄積し、脂肪性肝炎が確立されるが、この時点から各抗体の投与を開始した(図18A、図20Aおよび図25C~図25D)。4週間の治療後、いずれの抗体も、肝線維症、肝炎症および肝損傷を抑制または回復させたが、脂肪変性に変化は認められなかった(図20B~図20E、図28A~図28C)。さらに、いずれの抗体もErkの活性化を阻害したことから、標的との会合と標的が適切であることが示された(図20F、図28D)。
また、NASH誘発性のメチオニン・コリン欠乏(MCD)飼料をdb/dbマウスに8週間与えると、肥満、糖尿病および脂肪肝が認められるが、この20週齢の時点において抗IL-11療法を試験した(図20G)29-31。他のモデルでの結果と一致して、MCD飼料を与えたdb/dbマウスの肝臓においてIL-11の発現とErkの活性化が増加したが、抗IL-11療法によってErkの活性化が抑制された(図20H~図20I)。このモデルでは、抗IL-11療法により、肝脂肪変性、肝線維症および肝炎症が軽減され、ALT値も低くなった(図20J~図20N、図28E~図28F)。
さらに、WDF飼料によりNASHを誘発させた第3のモデルを使用して、肥満、インスリン抵抗性および糖尿病を併発している場合における抗IL-11療法の効果を試験した18。WDF飼料をマウスに16週間与えたところ、肥満およびインスリン抵抗性を示し、肝脂肪変性、肝炎症および肝線維症を発症していた。次に、抗IL11RA(X209)療法による処置を開始した(図21A)。IL-11のシグナル伝達を標的とした場合、NASHを発症した肝臓においてErkの活性化が抑制された(図29A)。抗IL11RA療法を行ったマウスでは、体重の増加は同程度であったにもかかわらず、肝線維症、肝脂肪変性および肝炎症の回復と血清ALT値の低下が観察された。この回復は、血清中の血糖値、トリグリセリド値およびコレステロール値の低下を伴った(図21B~図21Gおよび図29B~図29E)。
肝線維症に対する代謝介入と抗IL-11介入の併用の効果
前述のデータから、抗IL-11療法により線維症が回復することが示されたが、この効果が持続的であるか、あるいは漸進的であるかということは評価していなかった。また、NASHの線維症の回復に併用療法が有効である可能性がある1。これらの点を解明するため、HFMCD飼料を10週間与えて重度の肝線維症を確立した後、通常の固形飼料に切り替えることにより、強固な代謝介入を模倣しつつ、これと並行して抗IL-11による処置を開始した(図21H)。
代謝刺激因子を取り除くと、Erkの活性化がゆっくりと低下し、このErkの活性化の低下はX203またはX209による処置により加速した(図30A)。IgGで処置したマウスでは、実験期間中に線維症に変化が認められなかったことから、代謝全体を補正するだけでは線維症を回復できないか、線維症の回復は非常に緩慢であることが示唆された。これに対して、各抗体で3週間処置したところ、肝臓中のコラーゲン含有量が有意に回復し(回復率:X203で18%;X209で24%)、6週間後にさらに回復したことから(回復率:X203で37%;X209で46%)、各抗体による処置の効果が漸進的かつ持続的であることが示された(図21I、図30B~図30C)。
線維症の軽減は、TIMP量の低下およびMMP量の上昇と関連しており、これにより好適なマトリックスのリモデリングが促進される3,32。これと一致して、重度の線維症を有するマウスをX203またはX209で処置すると、Mmp2が急速にアップレギュレートされ、Timp1が急速にダウンレギュレートされた(図21J)。形質転換を起こした肝星細胞がアポトーシスを起こし33、老化の進行が見られ34,35、かつ/または不活性なACTA2陰性の状態に戻ると、肝線維症の軽減が促進される36。形質転換を起こした肝星細胞の維持にIL-11が必要とされるのかどうかを確認するため、TGFβ1またはPDGFで肝星細胞を刺激した後、IL-11のシグナル伝達を抑制した。IL-11を抑制してから24時間以内に、ACTA2陽性細胞の割合と分泌されたコラーゲンの量がほぼベースラインレベルにまで戻り、TGFβ1またはPDGFによる刺激を継続しているにもかかわらず、ERKの活性が大幅に低下した(図21K~図21L、図30D~図30G)。
初期のNASHにおいて急性壊死性炎症を起こした肝臓の健康状態に対する抗IL-11療法の効果
NAFLDからNASHへの移行は、脂肪性肝炎、炎症および細胞死(壊死性炎症)の発症を特徴とする。肝星細胞は、炎症促進性因子を分泌することにより、NAFLDからNASHへの移行において中心的な役割を果たしている3,8,37,38。肝星細胞により誘導される炎症経路に対してIL-11が影響を与えるかどうかを調査したところ、IL-11が肝星細胞によるCCL2の産生を刺激するが、IL-11を抑制するとCCL2の分泌が阻止されることが見出された(図31A)。この結果から、IL-11が間質免疫において炎症を促進するという、今まで知られてなかった新たな役割が示され、NASH飼料を与えたIl11ra1-/-マウス、X203処置マウスまたはX209処置マウスにおいて肝炎が軽度であったこととも一致していた。
NASHが誘発されたHFMCD飼料モデルでは、初期の炎症の後に線維化段階が見られる(図22A)。初期の脂肪性肝炎の段階でIL-11を標的として治療を行うと、肝脂肪変性が顕著に減少し、これに伴ってErkの活性化が低下した(図22B~図22E、図31B~図31C)。X203またはX209を投与したマウスの肝臓には脂肪滴は見られず、これらのマウスは線維症を発症しなかった(図22D、図22Fおよび図31D~図31G)。HFMCD飼料を与えると、急性の重度壊死性炎症が誘発されるが(1週間でALT値の増加が20倍を超える)、抗IL-11療法を3週間行ったところ、予想外にも肝損傷が大幅に回復することが観察された(図22G、図31H)。この急速な治療効果は、疾患の線維化段階よりも先に認められ、先の実験の前臨床モデルでのIl11ra1-/-マウス、X203処置マウスまたはX209処置マウスのALT値が低かったこととも一致しており、IL-11が肝細胞に対して直接的な損傷作用を有することが示唆された。
初代ヒト肝細胞はIL11RAを発現するが、IL6Rは発現しないことが判明した(図22H)。生理学的濃度のIL-11で肝細胞を刺激すると、用量依存的にALTが放出される。これと同時に、肝細胞においてストレスファイバーの発現が漸進的に増加した(図22I~図22J)。興味深いことに、肝細胞をTGFβ1で刺激するとIL-11を強力に分泌することから、肝細胞においてIL-11の不適切なオートクリン活性の存在が示唆された(図22K)。したがって、IL-11のシグナル伝達により、肝細胞の機能が直接的に損なわれる。
HFMCD飼料で誘発したNASHの急性炎症期におけるIL-11療法の効果を評価するため、RNA-seq解析を行った。教師なし解析では、HFMCD飼料により誘発された病的なRNA発現シグネチャーが抗体処置によりほぼ完全に回復することが示された(図23A、図32A~図32B)。線維化促進遺伝子および炎症促進性遺伝子のアップレギュレーションが阻害され、脂質代謝遺伝子の発現が再び確認された(図23B~図23C、図32C)。偏りのない遺伝子セットエンリッチメント解析により、脂肪酸、胆汁酸、酸化ストレス、線維症および炎症の転写シグネチャーが、ほぼ正常値に復帰したことが確認された(図32D)。
常在性マクロファージおよび浸潤性単球は、NASHの病因に重要であるとともに、TGFβ1の主な供給源である39。脂肪性肝炎を起こした肝臓において炎症性細胞集団を調べたところ、X209で処置した肝臓では免疫細胞が全体に少なく、Ly6C+TGFβ1+細胞が特異的に減少していた(図23D~図23F)。血中TGFβ1値はHFMCD飼料により上昇したが、X209療法により低下し、このことから、抗IL11RA療法が疾患修飾療法であることが示された(図23G)。
4.3 考察
肝星細胞は、肝臓における炎症促進性筋線維芽細胞の主な供給源であり2、肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換を抑制して元に戻すことを標的としてNASHの治療を行う。非冗長性のERK依存性IL-11シグナル伝達は、心臓、腎臓および肺における線維芽細胞の活性化に一定の役割を果たしているが、これと同様に、肝星細胞の形質転換でも必要とされることが示されている11,12。これを踏まえると、IL-11を標的として肝線維症を回復させることには、ある程度の冗長性を伴うことが多いその他の免疫因子、代謝因子または線維化因子に対する治療法と比較して有益である可能性がある。興味深いことに、本発明者らの実験において、強力な代謝介入のみでは線維症に対する効果は認められなかったことから、代謝療法では、NASHの線維症に対する回復効果は限定的である可能性がある。
本発明者らは、予想外にも、IL-11が肝臓において炎症促進性を有することを見出し、肝星細胞がIL11RAを高発現するのに対して、免疫細胞がIL6Rを発現することを示した。実験データからは、IL-11が間質を介して免疫細胞に対して間接的な作用を発揮することが示唆された。遺伝的手法による機能喪失試験を行うのか、それとも薬理学的手法による機能喪失試験を行うのかにかかわらず、IL-11媒介性シグナル伝達を抑制すると、複数のNASHモデルにおいて炎症が阻止されるか、回復することが一貫して強固に示された。過去の文献では、Il-11が肝臓において保護効果を発揮する可能性が示唆されているが、これらの研究では、マウスIl11ra1を刺激することのない11非常に高用量の外因性組換えヒトIL-11をげっ歯類に使用している13,14。生理学的濃度でのIL-11の真の生物学的作用は、炎症促進性であり、かつ間質誘導性であることが示されている。
また、肝細胞はIL11RAを発現し、TGFβ1で刺激するとIL-11を強力に分泌し、肝細胞におけるIL-11のシグナル伝達により、ストレスファイバーの形成と細胞毒性が誘導された。NASHにおける急性壊死性炎症期の肝細胞に対するIL-11の効果は甚大であり、IL-11のシグナル伝達を治療標的とすることにより、3週間以内にALT値が約700U/Lから正常値に回復した。NASHの後期段階では、IL-11を遺伝的に抑制するか、治療薬により抑制することにより肝細胞の損傷が阻止されるか、回復したが、これはさらに研究を進める必要がある。
ヒトIL11RAのノックアウト40またはマウスL11RAのノックアウト25により、軽度の頭蓋骨変形が起こったり、関節弛緩症が発症したりする可能性があるが、それ以外の点では健康な状態であり、成体の哺乳動物ではIL-11は冗長性を有すると考えられる。このことから、IL-11を創薬標的とすることができるという、説得力のある遺伝的安全性データを提供することができる。本研究では、この創薬標的の安全性データに加えて、高用量の治療抗体を使用してIL-11のシグナル伝達を長期間にわたり中和しても有害作用は認められないことを示している。さらに、IL-11を遺伝的に抑制するか、薬理学的に抑制することにより、血清トリグリセリド値、血清コレステロール値および血清空腹時血糖値が低下する。NASH患者は心血管疾患に罹患していることが多いため、IL-11の抑制によるこのような態様は、NASHの治療法の候補の特徴として望ましいものである。
本発明者らは、肝臓病理生物学においてIL-11が、今まで知られてなかった中心的な役割を果たしていることを特定した。中和抗体でIL-11のシグナル伝達を標的とすると、NASHスペクトラムにおいて、線維症、脂肪変性、肝細胞死および炎症が回復する。この新たな治療アプローチは、好適な心血管代謝プロファイルに関連するものである。
4.4 実施例4に関する参考文献
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4.5 補足資料
抗体
ACTA2抗体(ab7817、Abcam;IF)、ACTA2抗体(19245、CST;WB)、CD45抗体(103102、Biolegend)、I型コラーゲン抗体(ab34710、Abcam)、p-ERK1/2抗体(4370、CST)、ERK1/2抗体(4695、CST)、GAPDH抗体(2118、CST)、IgG抗体(Aldevron)、抗IL-11中和抗体(X203、Aldevron)、抗IL11RA中和抗体(X209、Aldevron;インビボ研究用)、IL11RA抗体(ab1250515、Abcam;IF)、Ly6C抗体(128039、Biolegend)、TGFβ1抗体(141402、Biolegend)、抗ウサギHRP抗体(7074、CST)、抗マウスHRP抗体(7076、CST)、抗ウサギAlexa Fluor 488抗体(ab150077、Abcam)、抗マウスAlexa Fluor 488抗体(ab150113、Abcam)。
組換えタンパク質
市販の組換えタンパク質:ヒトアンギオテンシンII(A9525、シグマ アルドリッチ)、ヒトCCL2(279-MC-050/CF、R&Dシステムズ)、ヒトbFGF(233-FB-025、R&Dシステムズ)、ヒトIL-11(PHC0115、ライフテクノロジーズ)、ヒトPDGF(220-BB-010、R&Dシステムズ)、ヒトTGFβ1(PHP143B、バイオ・ラッド)およびマウスTGFβ1(7666-MB-005、R&Dシステムズ)。
カスタム組換えタンパク質:マウスIl-11(UniProtKB:P47873)は、シグナルペプチドを付加せずに合成した。トランスシグナル伝達複合体を模倣するhyper IL-11(IL11RA:IL-11融合タンパク質)は、IL11RAの断片(1~317番目のアミノ酸残基;UniProtKB:Q14626)とIL-11の断片(22~199番目のアミノ酸残基;UniProtKB:P20809)を、20アミノ酸長のリンカー(GPAGQSGGGGGSGGGSGGGSV)1で連結して構築した。カスタム組換えタンパク質の合成は、いずれもGenScript社に委託し、哺乳動物発現系を使用して合成した。
化学物質
過酸化水素(H2O2、31642、シグマ)、PD98059(9900、CST)、U0126(9930、CST)。
IL11RAに対するマウスモノクローナル抗体の作製
遺伝的免疫処置および特異的結合のスクリーニング
ヒトIL11RAの23~422番目のアミノ酸をコードするcDNAを発現プラスミド(Aldevron)にクローニングした。マウスの免疫処置は、ハンドヘルド型の装置を使用したパーティクルガン法によって、DNAをコーティングした金粒子を皮内投与することにより行った。一過性にトランスフェクトしたHEK細胞におけるヒトIL11RAの細胞表面発現は、該IL11RAタンパク質のN末端に付加したタグを認識する抗タグ抗体で確認した。複数回の免疫処置を行い、24日後に血清を採取し、前記発現プラスミドを一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞に対する結合をフローサイトメトリーで試験した。二次抗体として、R-フィコエリトリン標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Southern Biotech、#1030-09)を10μg/mlの最終濃度で使用した。血清は、3%FBSを含むPBSで希釈した。前記HEK293細胞と血清の相互作用を、無関係なcDNAをトランスフェクトしたHEK293細胞と比較した。2匹のマウスにおいて特異的な反応が確認され、これらのマウスから抗体産生細胞を単離し、標準的な手順に従って、単離した抗体産生細胞をマウスミエローマ細胞(Ag8)と融合させた。IL11RA-flag構築物を発現するHEK細胞とハイブリドーマ培養の上清をインキュベートし、IL11RAに特異的な抗体を産生するハイブリドーマをフローサイトメトリーで同定した。
抗IL11RA中和抗体の同定
IL11RA-flag細胞には結合したが、ネガティブコントロールには結合しなかった抗体を、特異的抗体であると見なし、Schaferらにより報告された方法2に従って、ヒト心房線維芽細胞またはマウス心房線維芽細胞に対する抗線維化活性を試験した。簡潔に述べると、各抗体候補(6μg/ml)の存在下において、ヒト初代線維芽細胞またはマウス初代線維芽細胞をヒトTGFβ1またはマウスTGFβ1(各5ng/ml;24時間)でそれぞれ刺激した。TGFβ1で刺激すると内因性IL-11がアップレギュレートされるが、この内因性IL-11が中和されると、TGFβ1の線維化促進作用が阻害される。前述のOperettaプラットフォームを使用して、活性化された筋線維芽細胞(ACTA2+細胞)の画分を測定し、各抗体候補の中和能を推定した。また、トランスシグナル伝達を誘導する作用を阻害するため、ヒト線維芽細胞をhyper IL-11(200pg/ml)で刺激して抗体をスクリーニングした。3種の特異的な抗IL11RA中和抗体が検出され、そのうち、X209をインビボ試験に使用することにした。さらに、同様の操作により、リガンドとしてのIL-11に結合する中和抗体3を得た。
IL11RAへのX209の結合動態
ヒトIL11RAへのX209の結合は、Biacore T200(GEヘルスケア)を使用して測定した。抗マウス捕捉チップ上にX209を固定化した。0.005%P20および0.5%BSAを含むHEPES緩衝食塩水(pH7.4)を使用して相互作用アッセイを行った。X209固定化表面または基準物質固定化表面に対して、分析物(ヒトIL11RA)の濃度系列(1.56nM~100nM)を40μl/分の流速で注入した。また、マウスIl11ra1への結合は、Octetシステム(ForteBio)を用いて同様の方法で確認した。すべてのセンサーグラムをアライメントし、ダブルリファレンスを取った4。親和定数および速度定数は、補正したセンサーグラムをラングミュア型の1:1結合モデルにフィットさせることによって決定した。平衡結合定数(KD)は、結合速度定数の比率(kd/ka)から決定した。
X209のIC 50 の測定
IgG(4μg/ml)または様々な濃度のX209(4μg/ml~61pg/ml;4倍希釈)の存在下において、肝星細胞をTGFβ1(5ng/ml、24時間)で刺激した。上清を回収し、分泌されたMMP2の量を分析した。最小二乗法によるフィッティングを使用して、X209の試験濃度(pM)の対数値に対して抑制率をプロットすることにより、用量反応曲線を作製した。IC50値は、(阻害剤の)対数値に対する正規化された反応変数勾配方程式を使用して算出した。
血中薬物動態と生体内分布
新たに放射標識した125I-X209(5μCi、2.5μg)のPBS溶液100μlをC57BL/6Jマウス(10~12週齢)に眼窩後注射(左眼)した。2%イソフルランでマウスに麻酔をかけ、注射後のいくつかの時点(2分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、1日後、2日後、3日後、7日後、14日後および21日後)において顎下静脈から採血した。生体内分布の評価では、注射の1時間後、4時間後、1日後、3日後、7日後、14日後および21日後の時点で心臓穿刺により血液を採取するとともに、組織を採取した。放射能量は、ガンマカウンター(2480 Wizard2、パーキンエルマー)を使用して測定し、減衰補正を行った(投与量100μlの100倍希釈)。測定した放射能を、組織1gあたりの注射した投与量(%)に正規化した。
RNA-seq
RNA-seqライブラリーの作製
Qubit RNA high sensitivity assay kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用して全RNAを定量し、LabChip GX RNA Assay Reagent Kit(パーキンエルマー)を使用してRNA integrity number(RIN値)を評価した。製造業者のプロトコルに従ってTruSeq Stranded mRNAライブラリー調製キット(イルミナ)を使用して、転写物ライブラリーを作製した。最終的に得られたライブラリーはいずれもKAPA library quantification kits(KAPA Biosystems)を使用して定量した。LabChip GX DNA High Sensitivity Reagent Kit(パーキンエルマー)を使用して、最終的なライブラリーの品質および平均断片サイズを測定した。ライブラリーをプールし、NextSeq 500 High Output v2 kitを使用したペアエンドシーケンス法(75bp)により、NextSeq 500ベンチトップシーケンサー(イルミナ)でシーケンシングを行った。
RNA-seq解析
肝星細胞において硬さにより誘導されるRNAの調節:
正規化された遺伝子発現量は、Douらの論文5からダウンロードした。発現量の低い遺伝子(ベースラインにおけるFPKM≧2)を解析から除外し、硬い表面上で培養した肝星細胞のFPKMの平均値を、柔らかい表面上で培養した肝星細胞のFPKMの平均値で割ることによりfold changeを算出した。アップレギュレートされていた遺伝子(f.c.>1)のRNA発現量のfold changeをプロットし、FPKMの平均値に従って各遺伝子の順位付けを行った。
ヒト肝星細胞のTGFβ1による刺激とHFMCD飼料モデルにおける抗体処置:
bcl2fastq(v2.19.0.316)を使用し、--no-lane-splittingオプションを選択して、シーケンシングを行ったライブラリーのデマルチプレックスを行った。次に、trimmomatic6(v0.36)をペアエンドモードで使用し、MAXINFO:35:0.5 MINLEN:35オプションを選択して、アダプター配列をトリミングした。STAR7(v. 2.2.1)をペアエンド・シングルパスモードで使用し、オプションとして、--outFilterType BySJout、--outFilterMultimapNmax 20、--alignSJoverhangMin 8、--alignSJDBoverhangMin 1、--outFilterMismatchNmax 999、--alignIntronMin 20、--alignIntronMax 1000000、および--alignMatesGapMax 1000000を選択して、トリミングしたリードをヒトGRCh38に対してアライメントした。ユニークなアライメントのみを保持してカウントした。subread8(v. 1.5.1)のFeatureCountsモジュールを使用し、-O -s 2 -J -T 8 -p -R -Gオプションを選択して、カウント数を遺伝子レベルで算出した。Ensembl(リリース86)から入手したhg38染色体のGTFファイルをアノテーションとして使用して、STARインデックスを作製し、FeatureCountsを使用してリードをカウントした。
マウスへの抗体処置実験では、Ensembl(リリース86)から入手したmm10ゲノムおよびアノテーションのみを使用したこと以外はヒト試料の場合と同様にライブラリーを処理した。差次的発現解析は、BioconductorのDESeq29パッケージ(1.18.1)を使用してR(3.4.1)で実施し、Wald検定を使用して比較を行い、有意水準を0.05に設定した変数縮小工程を含めた。
遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)は、fgseaパッケージとMsigDBで公開されているホールマーク遺伝子セット10,11を使用して、R(3.4.1)で実施し、100000回の反復を行った。DESeq2の解析結果の「stat」列を、順位付けされた入力として使用して各遺伝子のエンリッチメント解析を行い、ヒト遺伝子と1対1のオーソログ関係にあるマウス遺伝子のみを取得した。
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および比色アッセイ
等量の細胞培養培地中のIL-11の濃度は、ヒトIL-11 Quantikine ELISAキット(D1100、R&Dシステムズ)を使用して定量し、等量の細胞培養培地中のMMP-2の濃度は、トータルMMP-2 Quantikine ELISAキット(MMP200、R&Dシステムズ)を使用して定量した。細胞培養上清中に分泌された総コラーゲン量は、シリウスレッドコラーゲン検出キット(9062、Chondrex)を使用して定量した。肝臓中のヒドロキシプロリンの総含有量は、Quickzymeトータルコラーゲン定量アッセイキット(Quickzyme Biosciences)を使用して測定した。マウス血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度は、アラニントランスアミナーゼ活性アッセイキット(ab105134、abcam)を使用して測定し、マウス血清中のコレステロール濃度は、コレステロールアッセイキット(ab65390、abcam)を使用して測定し、マウス血清中のトリグリセリド濃度は、トリグリセリドアッセイキット(ab65336、abcam)を使用して測定した。肝臓中のトリグリセリド(TG)濃度は、トリグリセリド比色アッセイキット(10010303、Cayman)を使用して測定した。すべてのELISAアッセイおよび比色アッセイは、製造業者のプロトコルに従って行った。
マトリゲル浸潤アッセイ
ヒト肝星細胞の浸潤挙動は、24ウェルのBoydenチャンバー浸潤アッセイ(Cell Biolabs Inc.)を使用して評価した。ECMでコーティングされたマトリゲル上に、肝星細胞用無血清培地中の同じ細胞数の肝星細胞を3連で播種し、0.2%FBSを含む肝星細胞用培地を入れた下部チャンバー側へと浸潤させた。刺激因子を加えて48時間インキュベーションした後、培地を吸引除去し、浸潤しなかった細胞を綿棒で除去した。下部チャンバーに向かって浸潤した細胞を細胞染色液(Cell Biolabs Inc.)で染色し、膜1枚あたり重複しない5視野の浸潤細胞を40倍で撮影し、細胞数をカウントした。抗体を用いた阻害実験では、X203抗体、X209抗体またはIgGコントロール抗体で肝星細胞を15分間前処理してから、刺激因子を加えた。
NASH患者の肝臓の精密薄切片(PCLS)およびウエスタンブロット
簡単に述べると、ヒト肝臓の精密薄切片を作製し、TGFβ1とともに24時間インキュベートした。ヒトIL-11 DuoSet(DY218、R&Dシステムズ)を使用して上清をELISAで分析した。この医薬品開発業務受託機関(CRO)では、がんの肝切除を受けた患者からも肝生検試料を採取し、がんに隣接する非がん性組織を採取して分子生物学的試験を行った。試料を採取した患者は、内因性の肝疾患が確認されていない患者(コントロール)であるか、あるいはアルコール性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎またはNASHが確認されている患者であった。機密保持のため、各試料についてこれ以上の情報は提供されていない。
定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
急速凍結した肝臓組織または肝星細胞溶解物をTrizol(インビトロジェン)で処理し、RNeasyカラム(キアゲン)で精製して全RNAを抽出した。製造者の説明書に従ってiScriptTM cDNA合成キット(バイオ・ラッド)を用いてcDNAを合成した。StepOnePlusTM(アプライドバイオシステムズ)を使用したTaqMan法(アプライドバイオシステムズ)またはfast SYBR Green法(キアゲン)によって、二連の試料に対して遺伝子発現解析を40サイクルで実施した。発現データはGAPDH mRNAの発現量に対して正規化し、2-ΔΔCt法を用いてfold changeを算出した。特異的なTaqManプローブおよびSYBR Greenプライマーの配列は、所望により入手可能である。
免疫ブロット法
肝星細胞または肝組織から得た総タンパク質抽出物に対してウエスタンブロットを行った。プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤(サーモサイエンティフィック)を含む放射免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液中で肝星細胞または凍結肝組織をホモジナイズし、遠心分離して溶解物を清澄化した。ブラッドフォードアッセイ(バイオ・ラッド)によりタンパク質濃度を測定した。等量の各タンパク質溶解物をSDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写し、図に示した一次抗体を加えてイムノブロット分析を行った。ECL検出システム(Pierce)を使用して、適切な二次抗体でタンパク質を可視化した。
組織学的分析
肝組織を10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中で室温にて48時間固定し、脱水し、パラフィンブロックに包埋し、7μmに薄切した。マッソントリクローム染色で切片を染色し、光学顕微鏡で観察した。1群あたりn=3として、各組織学的実験を独立して繰り返し行ったしたところ、類似した結果が得られた。切片を撮影し、ImageJソフトウェアを使用して(マッソントリクローム染色の色を抽出し)、肝臓1つあたり4枚の切片から、青色で染色された線維化領域を半定量的に測定した。組織学的分析と半定量測定を行った実験担当者には、処置方法および遺伝子型を知らせなかった。
補足資料に関する参考文献
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実施例5:肝細胞におけるオートクリンなIL11のシスシグナル伝達を介した脂肪毒性からの非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症
5.1 概要
IL11のシグナル伝達は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)において重要である。本実施例では、脂質が蓄積した肝細胞からIL11が分泌され、分泌されたIL11がオートクリンなシスシグナル伝達ループを介して作用し、リポアポトーシスを引き起こすことを示す。IL6は肝細胞を保護するが、IL11は、非古典的シグナル伝達経路を活性化させ、NOX4および活性酸素種をアップレギュレートすることにより肝細胞死を引き起こす。2種の前臨床モデルでは、肝細胞特異的にIl11ra1を欠損させると、NASHのあらゆる態様からマウスを保護できることが示された。さらに、Il11ra1を全身性にノックアウトさせたマウスにおいて、肝細胞のみにおいてIL11のシスシグナル伝達を復帰させると、脂肪変性と炎症が再構築された。IL6またはIL11のトランスシグナル伝達の存在を裏付ける証拠は見出されなかった。本発明者らは、肝細胞における脂肪毒性がIL11の分泌を刺激して肝細胞死を起こし、その結果、線維症および炎症が起こると結論付けている。これらのデータから、非アルコール性脂肪性肝疾患からNASHへの移行の新たな肝細胞特異的な機構の概要が明らかとなった。
5.2 序論
インターロイキン11(IL11)は重要な線維化因子であり(Ngら、2019;Schaferら、2017)、様々な生物種の肝線維症の精密薄切片においてIL11の増加が認められる(Bigaevaら、2019)。IL11は、毒性肝障害後の肝細胞の機能に悪影響を及ぼし(Widjajaら)、直接的または間接的に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態に寄与することが示されている(Widjajaら、2019)。これに対して、多数の過去の文献において、虚血誘発性肝損傷マウスモデル、感染症誘発性肝損傷マウスモデルまたは毒素誘発性肝損傷マウスモデルにおいてIL11が保護効果を有することが示唆されている(Bozzaら、1999;Maeshimaら、2004;Nishinaら、2012;Trepicchioら、2001;Yuら、2016;Zhuら、2015)。しかしながら、過去の研究で使用された組換えヒトIL11(rhIL11)試薬は、マウスに対しては効果を示さないことが現在明らかとなっている(Widjajaら)。
IL11は、インターロイキン6(IL6)サイトカインファミリーのメンバーであり、IL6と同様に、細胞膜に結合したα受容体(IL11RA)と糖タンパク質130(gp130)に結合してシスシグナル伝達を行う。IL6は、肝機能に関連することが報告されており、複数の文献において概して有益な効果が示唆されている(Kleinら、2005;Kroyら、2010;Matthewsら、2010;Schmidt-ArrasおよびRose-John、2016;Wuestefeldら、2003)。しかし、IL6は、可溶性のIL6受容体(sIL6R)とも結合して、トランスシグナル伝達を行うことがあると考えられており、このようなシグナル伝達様式は、生体に不都合であると考えられている(Schmidt-ArrasおよびRose-John、2016)。IL6と同様に、IL11でも、病原性のトランスシグナル伝達が起こる可能性があるが、これまでの実験結果では、腫瘍または生殖組織においてこのようなトランスシグナル伝達が見られたという証拠は報告されていない(Agtheら、2017;Balicら、2017)。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)への移行の原因となる因子は多数あるが、肝細胞における脂質の蓄積が中心的な重要な役割を果たしている(Friedmanら、2018)。特定の脂質は肝細胞に対して毒性があり、この脂肪毒性によりサイトカインの放出が促され、その結果、肝細胞死が起こり、肝星細胞(HSC)と免疫細胞がパラクリン的に活性化される(Farrellら、2018;Friedmanら、2018)。パルミチン酸塩などによる脂肪毒性(Kakisakaら、2012)は、NASHで見られる初期事象であり、NAFLDまたはNASHと食餌の関連性を象徴している。IL6のシスシグナル伝達を遺伝的に抑制したり、薬理学的に抑制することにより、脂肪変性の表現型が悪化するが(Kroyら、2010;Matthewsら、2010;Yamaguchiら、2010)、肝脂肪毒性におけるIL11の役割はいまだ報告されていない。
本実施例では、様々なインビトロ方法およびインビボ方法を使用して、肝細胞生物学分野ならびにNAFLDおよびNASHでのIL11に関する重要な疑問の解明を試みた。具体的には、(1)ヒト肝細胞におけるIL11のシスシグナル伝達およびトランスシグナル伝達の真の役割を定義すること、(2)脂肪毒性が肝細胞においてIL11の活性に関連しているかどうかを調べること、(3)IL11またはIL6のトランスシグナル伝達がNASHに寄与しているのかどうかを立証すること、ならびに(4)肝細胞におけるIL11のシスシグナル伝達と、脂肪変性、肝細胞死、炎症および線維症の発症との間の相互関係を詳細に分析することを目的とした。これらの研究から、IL6とIL11に関する生物学の予想外な態様が明らかとなり、肝細胞において脂肪毒性により活性化されるオートクリンなIL11シスシグナル伝達の病原性作用によりNAFLDからNASHへの移行が始まることが分かった。
5.3 結果
5.3.1 トランスシグナル伝達を行うIL11合成構築物による肝細胞死の発生
まず、ヒト初代肝細胞におけるIL6R、IL11RAおよびgp130の発現量をフローサイトメトリーで評価した。ヒト初代肝細胞の大部分において、IL11RAの堅牢な発現(92.6%)とgp130の堅牢な発現(91.9%)が観察されたが、IL6Rを発現していた肝細胞はごくわずかしか認められず(3.0%)、その発現量も低かった(図33Aおよび図40A)。この結果と一致して、RNA-seq解析およびRibo-seq解析から、肝細胞においてIL11RA転写産物およびgp130転写産物が高発現されており、活発に翻訳されていることが見出された。これとは対照的に、IL6R転写産物はほとんど観察されず、IL6Rの翻訳もほとんど検出されなかった(図33B~図33D、図40Bおよび図40C)。肝細胞を免疫蛍光染色したところ、Ribo-seqデータを裏付けるように、IL11RAの高発現が認められたが、IL6Rの発現は検出されなかった(図40D)。培養培地中でも有意な量のIL6Rは検出されなかった(検出限界をわずかに上回る量のIL6Rしか検出されなかった)。この結果から、IL6Rのシェディングの可能性は除外された(図40E)。以上のデータから、ヒト初代肝細胞ではIL6Rの発現量が非常に低いことが示され、このことから、ヒト初代肝細胞におけるIL6のシスシグナル伝達の役割は限定的であることが示唆された。一方で、ヒト初代肝細胞は、IL11RAおよびgp130の強い共発現を示す。
ヒト肝細胞ではIL6Rの発現が見られないことを踏まえ、トランスシグナル伝達を行うIL6の合成構築物(hyper IL6)を使用することにより、ヒト肝細胞におけるIL6のシグナル伝達を活性化させ、トランスシグナル伝達を行うIL11合成複合体(hyper IL11)によるシグナル伝達と比較した。hyper IL11は、IL11と同様に(Widjajaら)、ERKおよびJNKを用量依存的に活性化した(2.5ng/ml~20ng/ml)。これに対して、IL6のトランスシグナル伝達は、非古典的シグナル伝達経路を活性化しなかったが、用量依存的にSTAT3の活性化を誘導した(図33E)。したがって、IL11またはIL6を認識する受容体とあらかじめ複合体化させたIL11またはIL6は、肝細胞上のgp130と結合することにより、それぞれ異なる細胞内経路を活性化することが分かった。これは新規かつ興味深い知見であった。
hyper IL11は、ヒト初代肝細胞の培養培地中においてアラニントランスアミナーゼ(ALT)を用量依存的に増加させたが、hyper IL6(20ng/ml)は、限定的ではあるものの、有意な細胞保護効果を有することが見出された(fold change(FC)=0.9;P=0.0468)(図33F)。可溶性gp130(sgp130)は、gp130を介して作用するトランスシグナル伝達複合体の阻害剤である(Schmidt-ArrasおよびRose-John、2016)。過去に報告されているこのようなデコイ効果と一致して、sgp130は、hyper IL11の下流のシグナル伝達経路(p-ERK/p-JNK)およびhyper IL6の下流のシグナル伝達経路(p-STAT3)の活性化を阻害するとともに、hyper IL11の肝毒性効果を抑制した(図33G~図33I)。
次に、人工タンパク質複合体であるhyper IL6またはhyper IL11の非存在下において、IL11のトランスシグナル伝達を検出するために実験を行った。可溶性gp130(sgp130;トランスシグナル伝達と推定されるシグナル伝達を抑制する目的で使用)または可溶性IL11RA(sIL11RA;トランスシグナル伝達と推定されるシグナル伝達を増強する目的で使用)の存在下において、細胞をIL11で刺激した。IL11で誘導された肝細胞死およびシグナル伝達は、sgp130やsIL11RAによる影響を受けなかった(図33J~図33Kおよび図40F)。さらに、IL11は、用量依存的に(0.625ng/ml~20ng/ml)肝細胞死を引き起こしたが、これは、sgp130(1μg/ml)またはsIL11RA(1μg/ml)の添加による影響を受けなかった(図40G)。逆に、sgp130またはsIL11RAの用量を増加させても、IL11で刺激した肝細胞からのALTの放出には影響は見られなかった(図40H)。これらのデータから、合成構築物が存在しない場合、IL11のトランスシグナル伝達は存在しないことが示唆された。
5.3.2 肝細胞において脂肪毒性の原因となるIL11のシスシグナル伝達
脂肪性肝疾患におけるIL11の役割について調べるため、NASHを発症させる病態と見られ、かつ損傷を受けた肝細胞からのサイトカインの放出に関連すると考えられる肝細胞脂肪毒性をモデル化した(Friedmanら、2018)。NAFLD患者の血清中に認められる飽和脂肪酸(sFS)の濃度として、6:1の比率で複合体化したパルミチン酸塩とBSAの混合物により肝細胞に負荷を与えた(Kleinfeldら、1996)。飽和脂肪酸を負荷した肝細胞は、コントロールよりもIL11の分泌量が多く(FC=28、P<0.0001)、IL6、CCL2およびCCL5の分泌量も多かった(図34A~図34D)。脂質による負荷を与えた肝細胞のFACS分析ではアポトーシス細胞死が認められ、肝細胞の壊死によるALTの放出が認められた(図34E~図34G)。
脂質による負荷を与えた肝細胞からのIL11の分泌が、シスシグナル伝達またはトランスシグナル伝達を介して脂肪毒性と機能的に関連しているかどうかを試験するため、脂質による負荷を与えた肝細胞を抗IL11RA抗体(X209)またはsgp130とともにインキュベートした。X209により、IL11を含むすべてのサイトカインの分泌が低下したが、sgp130では、サイトカイン分泌に対する効果は認められなかった(図34A~図34G)。このことから、肝細胞の脂肪毒性には、IL11媒介性シスシグナル伝達のオートクリンループが関与していることが示唆された。損傷を受けたミトコンドリアからの活性酸素種(ROS)の生成は脂肪毒性に対して重要な役割を果たしており(Farrellら、2018)、NOX4から生成されるROSもNASHに関連している(Bettaiebら、2015)。X209は、飽和脂肪酸による負荷を与えた肝細胞においてROSの産生を阻止し、これには、グルタチオン(GSH)濃度の部分的な復帰が伴うことが判明した(図34Hおよび図34I)。
次に、シグナル伝達事象を調べた。脂肪毒性はJNKの活性化と強い関連性があり、JNKが活性化されることによって、カスパーゼ3の活性化とリポアポトーシスが促進される。したがって、パルミチン酸塩による負荷を与えた肝細胞は、JNKの活性化とカスパーゼ3の切断を示し、さらにERKのリン酸化も示した(図34J)。このパターンは、IL11による刺激で見られた効果と顕著に類似していた(図33E)。脂質による負荷を与えた肝細胞をX209で処理したところ、肝細胞による飽和脂肪酸の取り込みは同程度であったにもかかわらず、パルミチン酸塩により誘導されるシグナル伝達事象が大幅に抑制され、脂肪酸合成酵素(FASN)のアップレギュレーション、カスパーゼ3の活性化およびトリグリセリドの蓄積も大幅に抑制された(図34J、図34Kおよび図40I)。NOX4は、パルミチン酸塩によってアップレギュレートされたが、X209によって抑制された(図34J)。STAT3は飽和脂肪酸による負荷により活性化されたが、この効果はIL11RAを介したシグナル伝達とは無関係であり、リポアポトーシスとも関連していないことが見出された(図34J)。これらの実験から、sgp130は効果がないことが分かった。以上のデータから、パルミチン酸塩によって誘導されるIL11の分泌とフィードフォワードなオートクリンIL11シスシグナル伝達が肝細胞における脂肪毒性に重要であることが示された。
5.3.3 2種のNASHモデルにおけるIL11のトランスシグナル伝達またはIL6のトランスシグナル伝達の関連性に関する証拠の欠如
次に、フルクトースを補充したウエスタンダイエット(WDF)モデルとメチオニン・コリン欠乏高脂肪飼料(HFMCD)モデルの2種の前臨床NASHマウスモデルを使用して、インビボにおけるトランスシグナル伝達がNASHを引き起こすのかどうかを調べた。WDF飼料モデルは、肥満、高脂血症およびインスリン抵抗性に関連しており、糖尿病患者に見られるような一般的なヒトNASHと同じであると見なすことができる。HFMCD飼料モデルは、特に肝細胞の脂肪毒性によって引き起こされるNASHの急速な発症が促され、体重の減少を伴うが、インスリン抵抗性は認められない。すなわち、脂肪毒性は両方のモデルに共通しているが、肥満とインスリン抵抗性は共通していない。
WDF飼料またはHFMCD飼料を与える3週間前に、アルブミンプロモーターにより誘導され、マウスgp130タンパク質の細胞外ドメインの全体(1~617番目のアミノ酸)を含むsgp130をコードするAAV8ウイルス(AAV8-Alb-sgp130)、またはアルブミンプロモーターのみをコードするAAV8ウイルス(AAV8-Alb-Null)をマウスに注射した(図35A、図41Aおよび図42A)。AAV8-Alb-sgp130の投与により、肝臓において高濃度のsgp130が誘導され、末梢循環系でも高濃度のsgp130が検出され、IL6またはIL11のトランスシグナル伝達だと推定されるシグナル伝達の局所的な抑制と全身的な抑制に適していることが示された(図35B、図41B、図42B~図42C)。
WDF飼料を16週間与えると、肝臓および末梢でIL11の発現が強くアップレギュレートされたが、IL6の発現には影響が見られなかった(図35Bおよび図35C)。WDF飼料を与えたマウスは肥満を呈し(図41C)、肝重量が約2倍に増加し、肉眼的所見、組織学的分析および肝臓中トリグリセリドの定量分析から重度の脂肪変性を発症していることが分かった(図35E~図35G)。これらの表現型は、sgp130の高発現による影響を受けなかった(図35B~図35G)。同様に、WDF飼料を与えたマウスでは、ALT値、AST値、コラーゲン量および末梢の心血管危険因子(空腹時血糖値、血清トリグリセリド値および血清コレステロール値)が上昇し、GSH値が低下したが、これらのパラメータはいずれもsgp130による影響を受けなかった(図35H~図35N)。WDF飼料を16週間与えたマウスの肝臓では、炎症促進性遺伝子および線維化遺伝子の発現が増加したが、このシグネチャーは、トランスシグナル伝達だと推定されるシグナル伝達をsgp130で抑制しても影響は認められなかった(図35Oおよび図41D~図41E)。
第2の一連の実験では、HFMCD飼料を使用してNASHを誘発させた(図42A)。HFMCD飼料により肝臓および血清中のIL11値が上昇したが、肝臓中のIL6値はわずかに低く、末梢のIL6値は軽度に上昇していた(図42Bおよび図42D~図42E)。HFMCD飼料を与えたマウスは、肉眼的所見、組織学的分析および分子アッセイから、急速かつ重度の脂肪変性を発症していることが判明したが、sgp130の発現による変化は認められなかった(図42Fおよび図42G)。HFMCD飼料によって、肝細胞損傷マーカー(ALTおよびAST)が上昇し、GSHは低下したが、これらはsgp130の発現とは無関係だった(図42H~図42J)。同様に、HFMCD飼料により誘発された肝線維症は、sgp130の発現による変化は認められなかった(図42K)。RNAレベルでは、HFMCD飼料は、炎症促進性遺伝子および線維化遺伝子の発現の調節異常との関連性が見られ、これらの分子表現型はsgp130の発現による影響を受けなかった(図42Lおよび図42M)。
シグナル伝達レベルでは、WDF飼料およびHFMCD飼料のいずれでも、ERKとJNKの活性化が刺激され、これは、IL11のシスシグナル伝達の上昇と一致していた(図35Pおよび図42N)。これに対して、肝臓中のpSTAT3の発現量は、WDF飼料により上昇せず(図35P)、HFMCD飼料を与えたマウスでは軽度の上昇が見られた(図42N)。いずれの場合も、食餌誘発性シグナル伝達事象に対してsgp130による影響は認められなかった。全体として、これらのデータから、IL6のトランスシグナル伝達もIL11のトランスシグナル伝達もNASHにおいて何らかの役割を果たしているわけではないことが示唆され、この結果は、IL6ファミリーのトランスシグナル伝達が検出されなかった他の研究の結果とも一致している(Agtheら、2017;Balicら、2017;Kammounら、2017;Kraakmanら、2015)。
5.3.4 NASHの発症に必要とされる肝細胞特異的なIL11のシスシグナル伝達
NASHモデルにおいてIL11のトランスシグナル伝達の関連性を裏付ける証拠は得られなかったものの、これまでのデータから、肝細胞においてIL11の作用が増強していることが示唆され、これはシスシグナル伝達を介していると推定された。この前提を試験するため、AAV8-Alb-CreをIl11ra1loxP/loxPマウスに投与して、肝細胞のみにおいてIl11ra1を欠損させた(CKOマウス)。次に、このCKOマウスに、通常の固形飼料(NC)、HFMCD飼料またはWDF飼料を与えた(図36Aおよび図37A)。AAV8-Alb-Creを投与したCKOマウスにおいて肝臓中のIL11RAタンパク質が大幅に減少したことから、このモデルは有効であることが示され、肝臓において肝細胞がIl11ra1の最大の貯蔵場所であることが示唆された(図36Bおよび図37B)。
HFMCD飼料は、脂肪毒性により誘発されるNASHを急激に促進することに加えて(Stephensonら、2018)、体重の減少も引き起こす(Stephensonら、2018)。驚くべきことに、HFMCD飼料を与えたCKOマウスでは、初期の体重減少が制限され、後の段階で体重が元に戻った(図36C)。また、予想したとおり、WDF飼料を与えたマウスでは、実験期間を通して体重と脂肪量が増加した。しかし、驚くべきことに、これらの肥満の表現型は、CKOマウスでは軽減されていた(図37Cおよび図37D)。これらのデータから、IL11のシグナル伝達の抑制により、体重の恒常性を保つことが可能となり、条件特異的に抗悪液質効果または抗肥満効果が得られることが示唆された。
肉眼的所見、組織学的分析およびトリグリセリドの定量分析により、HFMCD飼料またはWDF飼料を与えたCKOマウスは、脂肪変性から強固に保護され(図36Dおよび図36E、ならびに図37Eおよび図37F)、WDF飼料を与えたCKOマウスは肝腫大が少なかったことが分かった(図37G)。肝損傷マーカーは、HFMCD飼料を与えたCKOマウスにおいて顕著に低下し(肝損傷マーカーの低下:ALT、99%;AST、97%;いずれもP<0.0001)、WDF飼料を与えたCKOマウスでも顕著に低下し(肝損傷マーカーの低下:ALT、98%;AST、98%;いずれもP<0.0001)、NC飼料を与えたコントロールでの値に匹敵することが判明した(図36Fおよび図36G、ならびに図37Hおよび図37I)。いずれのモデルでも、GSH値は、NASH誘発性飼料を与えたコントロールマウスでは低下したが、CKOマウスでは正常化した(図36Hおよび図37J)。
肝線維症は、コントロールと比較して、いずれのNASH誘発性飼料を与えたCKOマウスでも大幅に抑制された(肝線維症の抑制:HFMCD、87%;WDF、64%;いずれもP<0.001)(図36Iおよび図36K)。HFMCD飼料またはWDF飼料を与えたマウスで見られる炎症促進性遺伝子または線維化遺伝子のアップレギュレーションも、CKOマウスでは低下した(図36J、図37L、図43A、図43B、図44Aおよび図44B)。この結果から、肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換と免疫細胞の活性化は、少なくともその一部は、肝細胞における上流のIL11誘導性事象に続いて二次的に起こるものであることが示唆された。WDF飼料を与えたマウスは、高血糖、高トリグリセリド血症および高コレステロール血症も発症するが、これらの病態はいずれもCKOマウスでは改善されたことから、より全般的なNASH表現型に対して肝細胞特異的なIL11のシグナル伝達が重要な役割を果たしていることが示唆された(図44C~図44E)。シグナル伝達レベルでは、HFMCD飼料を与えたマウスとWDF飼料を与えたマウスのいずれでもERKとJNKのリン酸化が増加した。CKOマウスではERKとJNKのリン酸化は大幅に阻止され、この結果は、肝細胞におけるIL11のシグナル伝達の抑制と一致していた(図36Kおよび図37M)。
5.3.5 IL11ra1 nullマウスにおける肝細胞特異的IL11媒介性シスシグナル伝達の再構築による脂肪性肝炎の復帰と肝線維症の非復帰
CKOマウスを使用した機能喪失実験を補完するために、インビボでの機能獲得実験を行った。Il11ra1を全身性に欠損させたマウス(Il11ra1-/-ノックアウト(KO))において、肝細胞特異的にIL11のシスシグナル伝達またはトランスシグナル伝達を復帰させることによって、疾患が誘発されるのかどうかを調べた。膜結合型Il11ra1の全長(mbIl11ra1;シスシグナル伝達の再構築のため)、分泌型/可溶性形態のIl11ra1(Il11ra1の細胞外部分を構成するsIl11ra1;トランスシグナル伝達を可能にするため)、またはコントロール構築物をコードするAAV8をKOマウスに注射し、NC飼料、HFMCD飼料またはWDF飼料を与えた(図38A、図45Aおよび図46A)。
AAV8-Alb-mbIl11ra1を注射したKOマウスは、肝細胞においてIL11RA1を再発現し、AAV8-Alb-sIl11ra1を注射したKOマウスは、肝臓と血液循環の両方でsIL11RA1の発現が増加した(図38B、図45B、図46Bおよび図46C)。予想したとおり、コントロールAAV8構築物(AAV8-Alb-Null)を投与し、NC飼料を与えた野生型マウスの肝臓は正常であり、HFMCD飼料またはWDF飼料を与えると、脂肪変性、炎症および肝損傷を発症した(図38C~図38J、図45C、図45D、図46D~図46K)。コントロールウイルスを注射し、HFMCD飼料またはWDF飼料を与えたKOマウスは、NASHの表現型から保護されたが、生殖細胞系においてIl11ra1を欠損させた際の保護効果は、CKOマウスで見られた保護効果ほどには強力ではなかった。
mbIl11ra1を使用したKOマウスにおけるIL11のシスシグナル伝達の復帰により、肝脂肪変性および炎症が再現され、この肝脂肪変性および炎症の再現は、肉眼的所見から遺伝子発現およびシグナル伝達の分子パターンに至るまで明確に示された(図38C~図38J、図45C~図45D、および図46D~図46L)。注目すべきことに、肝星細胞におけるIL11のシグナル伝達は、肝星細胞から筋線維芽細胞への形質転換に重要であるが(Widjajaら、2019)、肝星細胞におけるIL11のシグナル伝達は、アルブミンにより誘導されるIl11ra1の発現の影響を受けないため(すなわち、これらのモデルにおいて肝星細胞のIl11ra1は欠損したままである)、肝臓中のコラーゲン含有量と線維化遺伝子の発現は復帰しなかった(図38Iおよび図38J、図45D、図46Iおよび図46K)。これとはまったく対照的に、KOマウスの肝細胞におけるsIL11RAの発現は、理論的にはトランスシグナル伝達を活性化するものの、IL11の発現量が高いにもかかわらず効果が見られず(図35B)、あらゆるNASH肝病態からマウスが保護されていた(図38C~図38J、図45C~図45Dおよび図46D~図46K)。シグナル伝達の変化では、どちらの飼料を与えた場合でもmIL11RAの発現によりKOマウスのERKおよびJNKの活性化が復帰したが、sIL11RA1の発現ではKOマウスのERKおよびJNKの活性化は復帰しなかったという点で一貫していた(図38Kおよび図46L)。WDF飼料を与えたKOマウスモデルでは、肝細胞特異的にIL11のシスシグナル伝達が復帰されたことによって、高血糖、高トリグリセリド血症および高コレステロール血症が誘発されたが、sIl11ra1の発現ではこれらの病態は誘発されなかった(図38L~図38N)。
5.4 考察
代謝性肝疾患は、一般に肥満および2型糖尿病を基礎疾患として発症し、発症初期にはNAFLDとして現れ、ここからNASHに進行することがある(Friedmanら、2018;Sanyal、2019)。NASHへの進行の根底にある重要な病態は「基質の過負荷」であり、これによって、代謝物が過剰に存在することから肝細胞の脂肪処理能力を超えてしまい、脂肪毒性が起こる。サイトカインは、脂肪毒性を起こした肝細胞から分泌される重要なNASH因子であり(Friedmanら、2018)、本発明者らは、IL11が、脂肪毒性環境を構成する因子として重要であり、NAFLDからNASHへの移行を促す因子であることを本明細書において立証した。
肝臓におけるIL6のシグナル伝達は有益であるという概念は、一連の証拠により裏付けられている(Kroyら、2010;Schmidt-ArrasおよびRose-John、2016;Yamaguchiら、2010)。一方で、IL6のトランスシグナル伝達が肝脂肪変性の病因となることが提唱されている(Kammounら、2017;Wieckowskaら、2008)。本発明者らは、合成構築物を利用することにより、IL11のトランスシグナル伝達を開始させるhyper IL11が細胞毒性を有するのに対し、hyper IL6は肝細胞において保護効果を発揮することを見出した。しかし、機能獲得実験および機能喪失実験を行ったところ、インビトロまたはインビボでのトランスシグナル伝達の生物学的意義に関する証拠は得られなかった。このことは、IL6ファミリーのメンバーによるトランスシグナル伝達が、NASHにおいて何の役割も果たしていないことを示唆しており、肝臓以外で実施された過去の研究結果と一致している(Agtheら、2017;Balicら、2017)。これらの知見とその他の疾患との関連性は不明であり、潰瘍性大腸炎でのトランスシグナル伝達を標的とした臨床試験が現在進行中である(Kangら、2019)。過去の研究では、IL6Rが肝細胞で発現されていることが示唆されているが(Schmidt-ArrasおよびRose-John、2016)、これを踏まえると、初代ヒト肝細胞においてIL6Rがほぼ発現されていないか、あるいはまったく発現されていないことが見出されたことは驚くべき事実であった。この結果は、初期の研究において使用された、形質転換された肝細胞様細胞(HepG2細胞など)の信頼性が高いことを反映していると考えられる。
本明細書において、本発明者らは、肝細胞におけるIL11のシスシグナル伝達がNASHの発症に極めて重要であることを示している。肝細胞におけるIL11のシスシグナル伝達によるこの効果は、野生型を遺伝的背景とするマウスにおける肝細胞特異的な機能喪失実験と、Il11ra1 nullを遺伝的背景とするマウスにおける肝細胞特異的な機能獲得実験を使用して立証された。これらの実験の結果、マウスに対して有効ではないrhIL11を肝疾患マウスモデルに使用した実験からIL11が肝細胞に対して保護効果を有するとした過去の文献での示唆が覆された(Maeshimaら、2004;Nishinaら、2012;Trepicchioら、2001;Zhuら、2015)。重要なことには、肝細胞特異的にIL11のシスシグナル伝達を復帰させると、KOマウスでは脂肪性肝炎が誘発されるが、線維症は復帰されず、CKOマウスでは線維症が阻止された。この結果から、肝星細胞におけるIL11のシスシグナル伝達が肝線維症の発症に必要であり、IL11のシスシグナル伝達により、肝星細胞の活性化よりも前に肝細胞の機能不全が起こることが示された。
本発明者らは、脂質を負荷した肝細胞がIL11を分泌し、この結果、オートクリンな細胞死、パラクリンな肝星細胞の活性化、および二次的な炎症性細胞の活性化と浸潤が引き起こされるというNASH機構モデルを提唱している(図39)。IL11のシグナル伝達の抑制は、食餌誘発性脂肪性肝炎を開始させる関連因子を標的として、その下流の肝線維症および炎症に影響を与える。この機構は、NASHの新しい治療的アプローチが可能であることを示唆している。
5.5 実施例5の材料および方法
5.5.1 AAV8ベクター
すべてのアデノ随伴ウイルス血清型8(AAV8)ベクターは、Vector Biolabs社に委託して合成した。アルブミン(Alb)プロモーターにより誘導されるマウス膜結合型Il11ra1 cDNA(NCBIアクセッション番号:BC069984)を含むAAV8ベクターをAAV8-Alb-mbIl11ra1と呼び、アルブミン(Alb)プロモーターにより誘導されるマウス可溶性Il11ra1 cDNAを含むAAV8ベクターをAAV8-Alb-sIl11ra1と呼び、アルブミン(Alb)プロモーターにより誘導されるマウス可溶性gp130 cDNAを含むAAV8ベクターをAAV8-Alb-sgp130と呼ぶ。AAV8-Alb-sgp130は、マウスgp130配列(NCBIアクセッション番号:BC058679)の膜貫通領域および細胞質領域を除去することにより構築し、AAV8-Alb-sIl11ra1も同様に、マウスIl11ra1配列の膜貫通領域および細胞質領域を除去することにより構築した。AAV8-Nullベクターをベクターコントロールとして使用した。アルブミン発現細胞においてIl11ra1を特異的に欠損させるため、LoxP配列で挟まれたIl11ra1アレルのホモ接合型マウス(Il11ra1loxP/loxPマウス)にAAV8-Alb-iCreベクターを注射した。
5.5.2 抗体
アルブミン抗体(ab207327、Abcam)、Alexa Fluor 488二次抗体(ab150077、Abcam)、切断型カスパーゼ3抗体(9664、CST)、カスパーゼ3抗体(9662、CST)、p-ERK1/2抗体(4370、CST)、ERK1/2抗体(4695、CST)、GAPDH抗体(2118、CST)、gp130抗体(PA5-28932、サーモフィッシャー)、IL6抗体(AF506、R&Dシステムズ)、IL6R抗体(フローサイトメトリー用、ab222101、Abcam)、IL6R抗体(免疫蛍光染色用、MA1-80456、サーモフィッシャー)、IL11抗体(Aldevron)、IL11RA抗体(フローサイトメトリーおよび免疫蛍光染色用、ab125015、Abcam)、IL11RA抗体(ウエスタンブロット用、130920、Santa Cruz)、p-JNK抗体(4668、CST)、JNK抗体(9258、CST)、p-STAT3抗体(4113、CST)、STAT3抗体(4904、CST)、マウスHRP抗体(7076、CST)、ウサギHRP抗体(7074、CST)、ラットHRP抗体(31470、Santa Cruz)。
5.5.3 組換えタンパク質
市販の組換えタンパク質:ヒトhyper IL6(IL6R:IL6融合タンパク質、8954-SR、R&Dシステムズ)、ヒト可溶性gp130 Fc(671-GP-100、R&Dシステムズ)、ヒトIL11RA(8895-MR-050、R&Dシステムズ)。
カスタム組換えタンパク質:ヒトIL11(UniProtKB:P20809、Genscript)。トランスシグナル伝達複合体を模倣するヒトhyper IL11(IL11RA:IL11融合タンパク質)は、IL11RAの断片(1~317番目のアミノ酸残基;UniProtKB:Q14626)とIL11の断片(22~199番目のアミノ酸残基;UniProtKB:P20809)を、20アミノ酸長のリンカー(配列番号20)(Schaferら、2017)で連結して構築した。
5.5.4 化学物質
パルミチン酸塩(P5585、シグマ)、パラホルムアルデヒド(PFA、28908;サーモフィッシャー)、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA、P1585、シグマ)、Triton X-100(T8787、シグマ)、および4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(D1306;サーモフィッシャー)。
5.5.5 ヒト初代肝細胞培養
ヒト初代肝細胞(5200、ScienCell)は、2%ウシ胎児血清および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加した肝細胞用培地(520、ScienCell)中において37℃、5%CO2で維持した。本発明の方法において特に明記しない限り、肝細胞(P2~P3)を血清飢餓状態で一晩培養した後、本明細書に記載するように、様々な用量の様々な組換えタンパク質で24時間刺激した。
5.5.6 THP-1細胞の培養
THP-1細胞(ATCC)は、10%FBSおよび0.05mM β-メルカプトエタノールを添加したRPMI 1640培地(A1049101、サーモフィッシャー)中で培養した。次に、RPMI 1640培地中において10ng/ml PMAで48時間刺激することにより、THP-1細胞の分化を誘導した。
5.5.7 インビトロにおけるパルミチン酸塩(飽和脂肪酸)による処置
過去の報告に従って(Alsabeehら、2018)、パルミチン酸塩とウシ血清アルブミン(BSA)を6:1の比率で複合体化した溶液を調製した。脂肪酸不含BSAと複合体化させたパルミチン酸塩(0.5mM)を、図の凡例に示すように使用して、細胞を処理した。0.5%のBSA溶液をコントロールとして使用した。
5.5.8 フローサイトメトリー
細胞表面のIL11RA、IL6Rおよびgp130を分析するため、IL11RA抗体、IL6R抗体またはgp130抗体と、これらに対応するAlexa Fluor 488二次抗体で、ヒト初代肝細胞およびTHP-1細胞を染色した。また、アネキシンV-FITCとPIを使用したDead Cell Apoptosis Kit(V13242、サーモフィッシャー)でヒト初代肝細胞を染色して、細胞の死滅を分析した。次に、PI陽性細胞をフローサイトメーター(Fortessa、BDバイオサイエンス)で定量し、FlowJoバージョンXソフトウェア(TreeStar)で分析した。
5.5.9 免疫蛍光法
染色を行う24時間前に、ヒト初代肝細胞を8ウェルのチャンバースライドに播種した(1.5×104個/ウェル)。細胞を4%PFAで20分間固定し、PBSで洗浄し、非特異的部位を5%BSAのPBS溶液で2時間ブロッキングした。IL11RA抗体、IL6R抗体、gp130抗体またはアルブミン抗体とともに細胞を一晩(4℃)インキュベートし、適切なAlexa Fluor 488二次抗体とともに細胞を1時間インキュベートした。チャンバースライドを暗所で乾燥させ、DAPIを含む封入剤5滴をスライドに滴下し、15分間経過後に蛍光顕微鏡(Leica)による画像化を行った。
5.5.10 オイルレッドO染色
初代ヒト肝細胞を8ウェルチャンバースライドに播種した(1×104個/ウェル)。パルミチン酸塩で細胞を24時間処理した後、10%PFAで30分間固定し、蒸留水で洗浄し、60%(v/v)イソプロピルアルコールを加えて5分間インキュベートした。次に、細胞をオイルレッドO溶液で30分間染色し、蒸留水で洗浄した後、明視野顕微鏡(BX53、Olympus)で画像化した。脂肪滴は赤色の染色により同定した。
5.5.11 活性酸素種(ROS)の検出
初代ヒト肝細胞を8ウェルのチャンバースライドに播種した(1×104個/ウェル)。この実験では、細胞を血清飢餓状態にせずに、パルミチン酸塩による処理を行った。パルミチン酸塩で細胞を24時間刺激した後、細胞を洗浄し、製造業者のプロトコルに従って、25μMのDCFDA溶液(ab113851、Abcam)を加えて37℃の暗所で45分間インキュベートし、希釈緩衝液ですすいだ。フルオレセイン(FITC)の検出に適したフィルターセットを備えた蛍光顕微鏡(Leica)を使用して、DCF染色が陽性の生細胞を画像化した。
5.5.12 動物モデル
すべての動物実験は、SingHealthの動物実験委員会(IACUC)のガイドラインに従って実施した。マウスはSPF環境で飼育し、食餌および水を自由に摂取させた。
代謝性肝疾患マウスモデル
HFMCD
6~8週齢のC57BL/6Nマウス、Il11ra1-/-マウスおよびIl11ra1loxP/loxPならびにそれぞれのコントロールマウスに、60kcal%の脂肪を補充したメチオニン・コリン欠乏飼料(HFMCD、A06071301B16、Research Diets)を4週間与えた。コントロールマウスには通常の固形飼料(NC、Specialty Feeds)を与えた。
WDF
6~8週齢のC57BL/6Nマウス、Il11ra1-/-マウスおよびIl11ra1loxP/loxPならびにそれぞれのコントロールマウスに、飲料水に溶解した15重量/体積%のフルクトースを補充しながらウエスタンダイエット(WDF)(D12079B、Research Diets)を16週間与えた。コントロールマウスにはNC飼料と水道水を与えた。
Il11ra1欠損マウス(KO)
6~8週齢の雄性Il11ra1-/-マウス(B6.129S1-Il11ratm1Wehi/J、ジャクソン・ラボラトリー)に、4×1011ゲノムコピー(gc)のAAV8-Alb-mbIl11ra1ウイルスまたはAAV8-Alb-sIl11ra1ウイルスを静脈内注射して、マウスIl11ra1または可溶性Il11ra1の肝細胞特異的な発現をそれぞれ誘導した。コントロールとして、Il11ra1-/-マウスとその野生型同腹仔(Il11ra1+/+)に、4×1011ゲノムコピーのAAV8-Alb-Nullウイルスを静脈内注射した。ウイルス注射の3週間後に、HFMCD飼料、WDF飼料またはNC飼料をマウスに与えた。各飼料を与えた期間は本明細書に記載されている。
可溶性gp130のインビボ投与
6~8週齢の雄性C57BL/6Nマウス(InVivos)に4×1011ゲノムコピーのAAV8-Alb-sgp130ウイルスを注射して、可溶性gp130の肝細胞特異的な発現を誘導した。コントロールマウスには、4×1011ゲノムコピーのAAV8-Alb-Nullウイルスを注射した。ウイルス投与の3週間後に、本明細書中に記載の期間にわたって、HFMCD飼料、WDF飼料またはNC飼料をマウスに与えた。
Il11ra-floxedマウス(CKO)
過去に報告されている方法と同様にして(Ngら)、CRISPR/Cas9システムを使用して、Il11ra1遺伝子のエキソン4~7がloxP部位で挟まれたIl11ra-floxedマウスを作製した。肝細胞特異的にIl11ra1を欠損させるため、6~8週齢の雄性ホモ接合型Il11ra1-floxedマウスに、AAV8-Alb-Creウイルス(4×1011ゲノムコピー)を静脈内注射した。コントロールとして、同等の量のAAV8-ALB-Nullウイルスをホモ接合型Il11ra1-floxedマウスに注射した。AAV8を注射したマウスを3週間かけて回復させてから、HFMCD飼料、WDF飼料またはNC飼料を与えた。ノックダウン効率は、肝臓中のIL11RAのウエスタンブロットにより測定した。
5.5.13 RNAシーケンシング(RNA-seq)およびリボソームプロファイリング(Ribo-seq)
RNA-seqライブラリーおよびRibo-Seqライブラリーの調製は、過去の報告(Chothaniら、2019)に従って行った。
RNA-seqライブラリーの作製
RNeasyカラム(キアゲン)を使用して、ヒト肝細胞から全RNAを抽出した。Qubit RNA High-Sensitivity Assayキット(Life Technologies)を使用してRNAを定量した。次に、LabChip GX RNA Assay Reagent Kit(パーキンエルマー)を使用して求めたRIN値(RNA integrity number)に基づき、RNAの品質を評価した。製造業者の標準的な説明書に従ってTruSeq Stranded mRNAライブラリー調製キット(イルミナ)を使用して、転写産物量を測定した。
Ribo-seqライブラリーの作製
10cmの培養ディッシュで肝細胞を90%コンフルエントまで増殖させ、0.1mg/mLのシクロヘキシミドを添加した1mLの氷冷溶解緩衝液(TruSeq(登録商標)Ribo Profile Mammalian Kit(RPHMR12126、イルミナ社)の処方など)に溶解した。次に、溶解物をホモジナイズおよび清澄化し、製造業者の説明書に従ってTruseq Nuclease(イルミナ)を用いてフットプリント法を行った。イルミナ社のSephacryl S400カラム(GEヘルスケア)を使用してリボソームを精製し、標準的なフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール法を使用して、保護されたRNA断片を抽出した。リボソームRNAを除去した後(Mammalian RiboZero Magnetic Gold、イルミナ)、製造業者のプロトコルに従ってTruSeq(登録商標)Ribo Profile Mammalian Kitを使用して、フットプリント法により抽出されたRNAからシーケンシングライブラリーを調製した。
最終的に得られたRNA-seqライブラリーおよびリボソームプロファイリングライブラリーは、製造業者のプロトコルに従って、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズ)においてKAPAライブラリー定量キット(KAPA Biosystems)を使用することにより定量した。次に、LabChip GX DNA High Sensitivity Reagent Kit(パーキンエルマー)を使用して、最終ライブラリーの品質および平均断片サイズを測定した。固有のインデックスを有するライブラリーをプールし、NextSeq 500 High Output v2 kitを使用したペアエンドシーケンス法(75bp)により、NextSeq 500ベンチトップシーケンサー(イルミナ)でシーケンシングを行った。
RNAシーケンシングおよびリボソームプロファイリングのデータ処理および分析
生のシーケンシングデータをbcl2fastq V2.19.0.316でデマルチプレックスし、Trimmomatic(Bolgerら、2014)V0.36を用いてアダプターをトリミングして、トリミング後に20ntを超えたリードを保持した。Bowtie(Langmeadら、2009)を用いて、既知のmtRNA配列、rRNA配列およびtRNA配列(RNACentral(The RNAcentral Consortium、2017)、リリース5.0)に対してRibo-seqリードをアラインメントし、アラインメントされなかったリードのみを、リボソームで保護された断片(RPF)として保持した。さらに、STAR(Dobinら、2012)を用いて、ヒトゲノム(hg38)に対するアラインメントを行った。featureCounts(Liaoら、2014)を用いて、Ribo-seqのCDS(コード配列)領域およびRNA-seqのエキソン領域にユニークにマッピングされたリード(Ensemblデータベース、リリースGRCh38 v86)の遺伝子発現を定量した。TPMを算出し、箱ひげ図に可視化することで、IL11RA(ENSG00000137070)、IL6R(ENSG00000160712)およびgp130(ENSG00000134352)のベースラインにおける発現量を比較した。IL11RA、IL6Rおよびgp130のRibo-seqリードおよびRNA-seqリードによるリードカバレッジを、鎖特異的アラインメントファイルを用いたGviz Rパッケージ(HahneおよびIvanek、2016)により可視化した。
5.5.14 比色測定法
細胞培養上清中またはマウス血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性は、ALT活性アッセイキット(ab105134、Abcam)を使用して測定した。肝臓中のグルタチオン(GSH)の濃度は、グルタチオン比色定量検出キット(EIAGSHC、サーモフィッシャー)を使用して測定した。マウス肝臓中のヒドロキシプロリンの総含有量は、Quickzymeトータルコラーゲン定量アッセイキット(QZBtotco15、Quickzyme Biosciences)を使用して測定した。血清中または肝臓中のトリグリセリドの濃度は、トリグリセリドアッセイキット(ab65336、Abcam)を使用して測定した。マウス血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の濃度は、ASTアッセイキット(ab105135、Abcam)を使用して測定し、マウス血清中のコレステロールの濃度は、コレステロールアッセイキット(ab65390;Abcam)を使用して測定した。比色アッセイはいずれも製造業者のプロトコルに従って行った。
5.5.15 酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
マウス血清中のgp130の濃度は、製造業者のプロトコルに従って、マウスgp130 DuoSet ELISA(DY468、R&Dシステムズ)を使用して定量した。
5.5.16 RT-qPCR
Trizol(インビトロジェン)およびRNeasy Miniキット(キアゲン)を用いて、急速凍結した肝組織から全RNAを抽出した。iScript cDNA合成キット(バイオ・ラッド)を使用してPCR増幅を行った。StepOnePlus(アプライドバイオシステムズ)を使用したTaqMan法(アプライドバイオシステムズ)またはSYBR Green法(キアゲン)によって、40サイクルの遺伝子発現解析を二連で行った。発現データはGAPDH mRNAの発現量に対して正規化し、2-ΔΔCt法を用いてfold changeを算出した。特異的なTaqManプローブおよびSYBR Greenプライマーの配列は、所望により入手可能である。
5.5.17 免疫ブロット法
肝細胞または肝組織から得た総タンパク質抽出物に対してウエスタンブロットを行った。プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤(Roche)を含むRIPA Lysis and Extraction Buffer(89901、サーモサイエンティフィック)中で肝細胞または肝組織の溶解物をホモジナイズした。タンパク質溶解物をSDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写した。ECL検出システム(Pierce)を使用して、適切な二次抗体(抗ウサギHRP抗体または抗マウスHRP抗体)でタンパク質のバンドを可視化した。
5.5.18 肝組織の処理および組織学的分析
標準的なプロトコルに従って、肝臓試料を10%中性ホルマリンで固定し、パラフィン包埋し、5μmに薄切し、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色し、光学顕微鏡で観察した。
5.5.19 統計分析
すべての統計分析は、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン6.07)を使用して行った。Dunnettの方法(1つの条件に対していくつかの実験群を比較する場合)、Tukeyの方法(1つの実験内でいくつかの条件を比較する場合)、またはSidakの方法(2つの異なる遺伝子型においていくつかの条件を比較する場合)を使用した多重検定を行ってP値を補正した。2つの異なる群を比較する際の2つのパラメータの分析は、二元配置分散分析により行った。統計学的有意差の基準はP<0.05とした。
5.6 実施例5に関する参考文献
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実施例6:膵炎における線維性炎症の機構の詳細な分析
慢性膵炎は、様々な原因により発症する線維性炎症性症候群であり、外分泌性膵機能不全および内分泌性膵機能不全を引き起こす。
膵星細胞(PSC)は、2種類の状態で存在し、膵障害に関与する主な線維化細胞である。膵星細胞は、生体内の広大なレチノイド貯蔵細胞ネットワークの一部を構成し、この細胞ネットワークには肝実質の細胞(肝星細胞)が含まれる。近年、IL-11は、肝星細胞の形質転換において重要な役割を果たしていることが示されており、この肝星細胞の形質転換は、NASH発症の病因である(Widjaja et al., Gastroenterology (2019) 157(3): 777-792)。
ハツカネズミの膵組織のシングルセルRNAシーケンシング(scRNA-seq)解析(Tabula murisコンソーシアムからデータを入手(Schaum et al., Nature (2018) 562: 367-372))では、膵星細胞(および膵管細胞)が、ll11ra1を高発現しており、Il6raは発現しないことが明らかになっている。図47Aを参照されたい。この結果は、ヒト膵星細胞の免疫蛍光分析によりタンパク質レベルで裏付けられた(図47B)。
膵星細胞の活性化は、インビトロにおいてIL-11で処理することによって誘導されることが示された。また、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11RAアンタゴニスト抗体で膵星細胞を処理することによって、膵星細胞を活性化させる刺激因子の種類(すなわち、TGFβ1、IL-11、bFGF、CTGF、PDGFまたはET-1)とは無関係に、膵星細胞の活性化を抑制することができた。図48Aおよび図48Bを参照されたい。
線維芽細胞特異的にIL-11の発現が誘導可能なトランスジェニックマウスは、膵線維症を発症する。図49A~図49Cを参照されたい。
膵管結紮(PDL)膵障害モデルでは、IL-11媒介性シグナル伝達に対する抗IL-11RAアンタゴニスト抗体で処置することにより膵線維症が減少し、膵管結紮術に伴う膵組織の減少が抑制された。図50A~図50Cを参照されたい。