以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において「アクリル系重合物」とは、アクリル系モノマーを50重量%より多く含むモノマー成分に由来する重合物をいう。上記アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマーのことをいう。また、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。上記アクリル系重合物は、アクリル系ポリマーであり得る。上記アクリル系重合物は、例えば、水分散型や溶剤型の粘着剤において、ベースポリマー(主構成ポリマー)として含有されるアクリル系ポリマーであり得る。この場合、本明細書における「アクリル系重合物を構成するモノマー成分」は、「アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分」に言い換えることができる。また、本明細書において、「重合物を構成するモノマー成分」や「アクリル系重合物を構成するモノマー成分」との相対量で表わされる添加成分の含有量は、「アクリル系ポリマー」との相対量と言い換えることができるものとする。
<積層体の構成例>
ここに開示される積層体の一構成例を図1に示す。この積層体1は、粘着剤層10と、粘着剤層10の一方の表面10Aに積層された基材層20と、を含む片面接着性の粘着シートとして構成されている。基材層20は、主層22と親水層24との積層構造を有しており、具体的には、主層22と、粘着剤層10側の表面20Bを構成する親水層24とを備える。粘着剤層10は、基材層20の粘着剤層側表面20Bに剥離可能に密着している。粘着剤層10は、基材層20の親水層24と直接接触した状態で積層されている。また、図1に示す例では、粘着剤層10は単層構造である。すなわち、粘着剤層10の一方の表面(基材層側表面)10Aを構成するA層によって粘着剤層10の全体が構成されている。使用前(被着体への貼付け前)の積層体1は、例えば図1に示すように、粘着剤層10の他方の表面(粘着面)10Bが、少なくとも該粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー30で保護された、剥離ライナー付き積層体50の形態であり得る。あるいは、基材層20の背面20A(粘着剤層側表面20Bとは反対側の表面。積層体1の背面でもあり得る。)が剥離面となっており、上記背面20Aに粘着面10Bが当接するように巻回または積層されることで粘着面10Bが保護された形態であってもよい。
ここに開示される積層体の他の一構成例を図2に示す。この積層体2は、粘着剤層110と、粘着剤層110の一方の表面(基材層側表面)110Aに積層された基材層20と、を含む片面接着性の粘着シートとして構成されている。基材層20は、主層22と親水層24との積層構造を有しており、具体的には、主層22と、粘着剤層10側の表面20Bを構成する親水層24とを備える。粘着剤層110は、一方の表面(基材層側表面)110Aを構成するA層112と、A層112の背面側に積層配置されたB層114と、からなる2層構造を有する。粘着剤層110のA層112は、基材層20の粘着剤層側表面20Bに剥離可能に密着している。具体的には、A層112は、基材層20の親水層24と直接接触した状態で積層されている。使用前(被着体への貼付け前)の積層体2は、図1に示す積層体1と同様に、他方の表面(粘着面)110Bが図示しない剥離ライナーで保護された、剥離ライナー付き積層体の形態であり得る。あるいは、基材層20の背面20A(積層体2の背面でもあり得る。)が剥離面となっており、当該背面20Aに粘着面110Bが当接するように巻回または積層されることで粘着面110Bが保護された形態であってもよい。
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面が剥離処理された剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理には、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤が用いられ得る。いくつかの態様において、剥離処理された樹脂フィルムを剥離ライナーとして好ましく採用し得る。
<積層体の特性>
(剥離強度N0)
ここに開示される積層体において、基材層に対する粘着剤層の剥離強度N0は2.0N/10mm以上である。ここで剥離強度N0は、温度23℃、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される剥離強度である。換言すると、粘着剤層は、基材層に対して所定値以上の剥離強度N0で接着しているということもできる。これにより、積層体の粘着剤層は、基材層に安定して接着したものとなり、使用中に、意図せずに粘着剤層が基材層から剥がれるような不具合の発生が防止される。上記剥離強度を有する積層体は被着体に対しても、良好な接着性を示し得る。いくつかの態様において、上記剥離強度N0は、粘着剤層と基材層との密着性および被着体への接着性の観点から、例えば2.5N/10mm以上であってよく、3.0N/10mm以上でもよく、3.5N/10mm以上でもよく、4.0N/10mm以上でもよく、4.5N/10mm以上でもよく、5.0N/10mm以上でもよい。他のいくつかの態様において、上記剥離強度N0は、例えば6.0N/10mm以上であってよく、7.0N/10mm以上でもよく、8.0N/10mm以上でもよく、9.0N/10mm以上でもよく、10.0N/10mm以上でもよく、11.0N/10mm以上でもよい。上記剥離強度N0の上限は特に限定されず、例えば30N/10mm以下であり得る。上記剥離強度N0は、20N/10mm以下でもよく、15N/10mm以下(例えば12N/10mm以下)でもよい。いくつかの態様では、上記剥離強度N0は、10N/10mm未満でもよく、8N/10mm未満でもよい。上記剥離強度N0は、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
(水剥離力N2)
ここに開示される積層体は、その基材層と粘着剤層とのあいだに20μLの蒸留水を供給し、該蒸留水を前記粘着剤層と前記基材層との界面の一端に進入させた後、JIS Z0237:2009の10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力N2[N/10mm]が、所定値以下に制限されたものであり得る。水剥離力N2が制限された積層体によると、水等の水性液体を基材層表面に付与し、基材層表面と粘着剤層表面の界面に進入させることで、粘着剤層を容易に剥離することができる。水剥離力N2は、剥離強度N0の60%以下であることが好ましい(N2≦0.6N0)。すなわち、水剥離力N2[N/10mm]は、後述の式:水剥離力低下率[%]=(1-(N2/N0))×100;において、水剥離力低下率40%以上であること、すなわち(1-(N2/N0))×100≧40[%];を満足することが好ましい。この式は、次式:N2≦0.6N0;を意味する。特に限定するものではないが、水剥離力N2は、例えば10N/10mm以下であってよく、3.5N/10mm以下でもよく、2.5N/10mm以下でもよく、1.6N/10mm以下でもよく、1.2N/10mm以下でもよく、1.0N/10mm以下でもよい。水剥離力N2が低い積層体によると、粘着剤層を剥離する際に基材層に与える負荷を軽減することができる。このことは、例えば、基材層が光学部材である態様において、光学部材から粘着剤層を剥離するときに、光学部材表面に剥離の影響を生じさせない点で特に有意義である。上記積層体は、例えば、水剥離力N2が0.75N/10mm以下、または0.50N/10mm以下、または0.25N/10mm以下、または0.15N/10mm以下である態様でも好適に実施され得る。水剥離力N2の下限は特に制限されず、実質的に0N/10mmでもよく、0N/10mm超でもよい。
なお、リワーク性等の観点から、水剥離力N2の測定において、基材層上に粘着剤を残留させることなく該基材層から粘着剤層を剥離できることが好ましい。すなわち、基材層からの粘着剤層の剥離において、非糊残り性に優れることが好ましい。基材層上への粘着剤の残留の有無は、例えば、粘着剤層剥離後の基材層を目視で観察することにより把握することができる。
上記水剥離力N2は、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
(水剥離力低下率)
ここに開示される積層体は、水剥離力低下率が40%以上である。上記水剥離力低下率を示す積層体は、水等の水性液体を用いることで基材層から粘着剤層を容易に剥離することができる。例えば、積層体の基材層と粘着剤層とのあいだに少量の水性液体を供給し、該水性液体を積層体の一端から基材層と粘着剤層との界面に進入させることで剥離のきっかけをつくることにより、上記基材層からの粘着剤層の剥離強度を大幅に低下させることができる。この性質を利用して、通常使用時における高い密着性と、良好な剥離性とを両立することができる。いくつかの態様において、水剥離力低下率は、例えば50%以上であってよく、65%以上でもよく、75%以上でもよく、85%以上でもよく、90%以上でもよく、95%以上でもよく、97%以上でもよい。水剥離力低下率は、原理上100%以下であり、典型的には100%未満である。
水剥離力低下率は、式:
水剥離力低下率[%]=(1-(N2/N0))×100
;から求めることができる。ここに開示される技術において、上記水剥離力低下率は、親水層の形成、親水層構成材料、粘着剤種や組成等の選定によって実現される。
剥離強度N0[N/10mm]に対する水剥離力N2[N/10mm]の比(N2/N0)は、例えば1/2.5以下であってよく、1/5以下でもよく、1/10以下でもよい。上記比(N2/N0)がより小さいことは、剥離強度N0に対して水剥離力N2がより顕著に低下することを意味する。ここに開示される積層体は、比(N2/N0)が1/15以下、1/25以下または1/35以下である態様で好ましく実施され得る。比(N2/N0)の下限は特に制限されず、例えば1/200以上であってよく、1/150以上でもよく、1/100以上でもよい。
(水浸漬後剥離力低下率)
ここに開示される積層体は、上記のように水等の水性液体を用いて容易に剥離することができ、かつ、積層体を水に30分間浸漬し、次いで水から引き上げて付着水を拭き取った後に剥離強度N0の測定条件と同じ条件で測定される水浸漬後剥離強度N1[N/10mm]が、式:
水浸漬後剥離力低下率[%]=(1-(N1/N0))×100
;において、水浸漬後剥離力低下率30%以下を満足することが好ましい。すなわち、式:
(1-(N1/N0))×100≦30[%]
;を満足することが好ましい。この式は、次式:N1≧0.7N0;を意味する。上記の水浸漬後剥離力低下率(30%以下)を満足する粘着剤を含む積層体は、耐水信頼性に優れる。より高い耐水信頼性を得る観点から、水浸漬後剥離力低下率は、例えば20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、7%以下でもよい。水浸漬後剥離力低下率の下限は、典型的には0%以上である。上記積層体は、水剥離力低下率[%]と水浸漬後剥離力低下率[%]との差が、例えば45%以上、または55%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上である態様で好ましく実施され得る。なお、上記水浸漬後剥離力低下率を算出するための水浸漬後剥離強度N1は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
いくつかの態様において、積層体のヘイズ値は凡そ10%以下であることが適当であり、凡そ5%以下(例えば凡そ3%以下)であり得る。上記ヘイズ値は1.0%以下であることが好ましい。このように透明性の高い積層体は、高い光透過性が求められる光学用途に好適である。積層体のヘイズ値は、1.0%未満であってよく、0.7%未満であってもよく、0.5%以下(例えば0~0.5%)であってもよい。積層体に関する上記ヘイズ値の範囲は、ここに開示される技術における粘着剤層および基材層のヘイズ値にも適用され得る。
ここで「ヘイズ値」とは、測定対象に可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合をいう。くもり価ともいう。ヘイズ値は、以下の式で表わすことができる。
Th[%]=Td/Tt×100
上記式において、Thはヘイズ値[%]であり、Tdは散乱光透過率、Ttは全光透過率である。
ヘイズ値は、ヘイズメーター(たとえば、村上色彩技術研究所製の「MR-100」)を用いて測定することができる。ヘイズ値は、例えば、粘着剤層の組成や厚さ等、基材層材料や厚さ等の選択によって調節することができる。
上記積層体において、粘着剤層の基材層側表面側に配置されるA層を構成する粘着剤は、非水溶性であることが好ましい。非水溶性のA層によると、水浸漬後剥離強度N1が高く、水浸漬後剥離力低下率の低い積層体が得られやすい。A層が非水溶性であることは、水等の水性液体を用いる剥離において基材層上に粘着剤が残留する現象を防止する観点からも好ましい。また、A層が非水溶性であることは、水浸漬や環境中の湿気によって積層体の透明性が低下する現象を防止する観点からも有利となり得る。このことは、基材層が光学部材である光学用積層体において有利な特徴となり得る。
A層を構成する粘着剤は、非水膨潤性であることが好ましい。非水膨潤性のA層によると、水浸漬後剥離強度N1が高く、水浸漬後剥離力低下率の低い積層体が得られやすい。また、水等の水性液体を用いる剥離において、少量の水性液体を有効に利用して良好な剥離性を発揮することができる。A層が非水膨潤性であることは、水性液体を用いる剥離において基材層上に粘着剤が残留する現象を防止する観点からも好ましい。また、A層が非水膨潤性であることは、水浸漬や環境中の湿気によって積層体の透明性が低下する現象を防止する観点からも有利となり得る。このことは、基材層が光学部材である光学用積層体において有利な特徴となり得る。
ここで、本明細書において、粘着剤が非水溶性であるとは、以下の方法で測定されるゲル分率が75%以上であることをいう。また、粘着剤が非水膨潤性であるとは、以下の方法で測定される膨潤度が2以下であることをいう。
すなわち、測定対象の粘着剤を0.5g程度秤量し、その重さをW1とする。この粘着剤を室温(約23℃)において蒸留水500ml中に48時間浸漬した後、ナイロンメッシュで濾過し、水を含んだ粘着剤の重さW2を測定する。その後、粘着剤を130℃で5時間乾燥させて、不揮発分の重さW3を測定する。ゲル分率および膨潤度は、以下の式により算出される。
ゲル分率[%]=(W3/W1)×100
膨潤度=W2/W1
いくつかの態様において、A層のゲル分率は、例えば80%以上であってよく、90%以上でもよく、95%以上でもよく、98%以上でもよい。A層のゲル分率は、原理上100%以下である。また、いくつかの態様において、A層の膨潤度は、例えば1.7以下であってよく、1.5以下でもよく、1.2以下でもよい。A層の膨潤度は、例えば1.0以上であり、典型的には1.0超である。
粘着剤層がA層と該A層の背面側に配置されたB層とを含む構成の積層体において、B層のゲル分率は特に限定されない。いくつかの態様において、B層のゲル分率は、A層のゲル分率と同等以上であることが好ましく、A層のゲル分率より高くてもよい。B層のゲル分率は、例えば90%以上であってよく、95%以上でもよく、98%以上でもよく、99%以上でもよい。B層のゲル分率は、原理上100%以下である。また、粘着剤層全体のゲル分率は、例えば85%以上であってよく、90%以上でもよく、95%以上でもよく、98%以上でもよく、99%以上でもよい。なお、A層のみからなる粘着剤層では、該粘着剤層全体のゲル分率とはA層のゲル分率を意味する。
粘着剤層がA層と該A層の背面側に配置されたB層とを含む構成の積層体において、B層の膨潤度は特に限定されない。いくつかの態様において、B層の膨潤度は、A層の膨潤度と同等以下であることが好ましく、A層の膨潤度より低くてもよい。B層の膨潤度は、例えば1.5以下であってよく、1.3以下でもよく、1.1以下でもよい。B層の膨潤度は、例えば1.0以上であり、典型的には1.0超である。また、粘着剤層全体の膨潤度は、例えば1.6以下であってよく、1.4以下でもよく、1.2以下でもよく、1.1以下でもよい。なお、A層のみからなる粘着剤層では、該粘着剤層全体の膨潤度とはA層の膨潤度を意味する。
なお、粘着剤の水に対するゲル分率や膨潤度は、例えばモノマー成分の組成、重合物の重量平均分子量、架橋剤や多官能モノマーの使用等の、本願出願時の当業者にとって一般的な手法を適宜採用することにより調節することができる。
<基材層>
(親水層)
ここに開示される積層体を構成する基材層は、粘着剤層側表面に親水層が形成されている。換言すると、基材層は、粘着剤層側の表面を構成する層(基材層の最外層)として親水層を有する。ここで親水層は、親水性表面を有する層と定義され、例えば、粘着剤層積層前の親水層表面(基材層の粘着剤層側表面でもある。特に断りのないかぎり以下同じ。)は、蒸留水に対する接触角(以下「水接触角」ともいう。)が、例えば60度以下、好ましくは50度以下となる程度の親水性を示す表面であり得る。基材層の粘着剤層側表面に親水層を設けることにより、基材材料や、そこに積層される粘着剤の種類等にかかわらず、良好な水剥離性が得られる。
いくつかの態様において、上記親水層表面の水接触角は、例えば45度以下であってよく、40度以下でもよく、35度以下でもよく、30度以下でもよい。上記親水層表面の水接触角が小さくなると、該表面に沿って水が濡れ広がりやすくなり、基材層からの粘着剤層の水剥離性が向上する傾向にある。このことは、粘着剤層の基材層からの除去性や、リワーク性向上の観点から好ましい。いくつかの好ましい態様において、上記親水層表面の水接触角は25度未満が適当であり、20度未満であってもよく、15度以下でもよく、10度未満でもよい。水接触角の下限は、原理上0度である。いくつかの態様において、上記水接触角は、0度超でもよく、1度以上でもよく、3度以上でもよく、5度以上でもよい。ここに開示される技術によると、親水層材料や粘着剤種の選定により、より優れた水剥離性を実現し得るので、いくつかの態様では、上記親水層表面の水接触角は8度以上であってもよく、12度以上でもよく、16度以上でもよく、20度以上(例えば24度以上)でもよい。親水層表面の水接触角は、親水層を構成する材料の選択や親水層の厚さ、追加の表面処理等によって設定することができる。親水層表面(基材層の粘着剤層側表面)の水接触角は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
ここに開示される技術は、基材層の粘着剤層側表面に親水層を形成して、当該粘着剤層側表面の水接触角を低下し、改善された水剥離性を得るものであり得る。したがって、親水層表面の水接触角WCA1は、典型的には、後述する基材層の主層(親水層のない基材層単体)の表面の水接触角WCA2よりも小さい。上記WCA1は、上記WCA2の70%未満であることが好ましく、50%未満がより好ましく、30%未満がさらに好ましく、20%未満が特に好ましい。
また、水剥離性の観点から、親水層表面は平滑に形成されていることが好ましい。例えば、上記親水層表面の算術平均粗さRaは10μm未満である。このように凹凸の抑制された親水層表面によると、所望の水剥離性を実現しやすい。上記算術平均粗さRaは、好ましくは5μm未満であり、より好ましくは3μm未満(具体的には1.0μm未満)である。また、水剥離性を長期間維持するという観点からは、上記親水性表面の上記算術平均粗さRaはさらに小さいことが好ましい。例えば、上記算術平均粗さRaは、好ましくは100nm未満であり、より好ましくは10nm未満、さらに好ましくは3nm未満(具体的には1.0nm未満)である。親水層の表面平滑性は、親水層材料の選定や形成条件、厚み等によって調節することができる。なお、本明細書において算術平均粗さは、一般的な表面粗さ測定装置(例えば、Veeco社製の非接触3次元表面形状測定装置、型式「Wyko NT-3300」や日立ハイテクノロジーズ社製の原子間力顕微鏡、型式「AFM5500M」)を用いて測定することができる。
親水層の材質としては、無機材料が用いられる。親水層が無機材料を含むことで、良好な水剥離性が得られやすい。無機材料としては、遷移金属元素や半金属元素の単体、合金を含む各種の金属材料や、無機酸化物等の無機化合物のなかから親水性表面を形成し得る材料が用いられる。上記無機材料は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。無機材料の好適例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化ニオブ等の酸化物(無機酸化物、典型的には金属酸化物)が挙げられる。なかでも、好ましい無機材料として酸化ケイ素等の無機酸化物が用いられる。親水層は、無機材料に加えて、コーティング剤やバインダとして利用され得る有機高分子化合物を含む各種有機材料を含んでもよく、含まなくてもよい。
親水層中の無機材料(例えば酸化ケイ素等の無機酸化物)の量は、目的とする親水性表面が得られる適当量とすることができ、特定の範囲に限定されない。例えば、親水層中の無機材料の含有割合は、凡そ30重量%以上とすることができ、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)が適当であり、凡そ70重量%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様では、親水層中の無機材料の含有割合は、凡そ90~100重量%(例えば凡そ95重量%以上)である。
いくつかの好ましい態様において、上記無機材料として、酸化ケイ素(典型的にはSiOXで表わされる酸化ケイ素や、SiO2で表わされる二酸化ケイ素)等の無機酸化物が用いられる。上記無機材料に占める無機酸化物(典型的には酸化ケイ素)の割合は、目的とする親水性表面が得られる適当量とすることができ、特定の範囲に限定されず、例えば、凡そ30重量%以上とすることができ、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)が適当であり、凡そ70重量%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様では、上記無機材料中の無機酸化物(典型的には酸化ケイ素)の割合は、凡そ90~100重量%(例えば凡そ95重量%以上)である。
上記親水層の形成方法は特に限定されず、目的とする厚さ等に応じて適当な方法で形成され得る。例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、あるいは、めっき法等の公知の成膜方法を利用して層状に形成した無機材料を親水層として利用することができる。無機材料として、無機化合物を用いる場合には、各種の蒸着法を用いることができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)や、原子層堆積層等の化学蒸着法(CVD)等を採用することができる。ポリシロキサン等の無機ポリマーを含むコーティング層の形成は、公知のコーティング剤から所望の水接触角を示す表面が得られるものを適宜選択し、常法により使用して行うことができる。
親水層の厚さは特に限定されない。基材層本体(基材層の主層)の機能を損なわない観点から、親水層の厚さは、具体的には凡そ5μm以下(例えば5000nm未満)が適当であり、凡そ2μm以下(例えば2000nm未満)であってもよい。いくつかの好ましい態様では、親水層の厚さは1000nm未満であり、より好ましくは500nm未満、さらに好ましくは100nm未満、特に好ましくは50nm未満であり、凡そ30nm以下であってもよく、凡そ20nm以下でもよく、凡そ15nm以下(例えば10nm未満)でもよい。このような薄厚の親水層とすることで、基材層の機能を損なうことなく、水剥離性を向上することができる。薄厚の親水層とすることは、光学特性の観点からも有利である。また、親水層の厚さは1nm以上(例えば3nm以上)が適当であり、表面の親水性を高めて水剥離性を向上する観点から、凡そ5nm以上であってもよく、凡そ10nm以上(例えば15nm以上)でもよい。薄厚(例えばナノオーダー)の親水層については、後述の実施例に記載の方法で厚さを測定することができる。
(基材主層)
ここに開示される基材層の主層(「基材主層」ともいう。あるいは便宜上、単に「基材層」ということがある。特に断りがないかぎり以下同じ。)としては、特に限定されず、使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。ここに開示される技術は、基材層の粘着剤層側表面に親水層を形成して、当該粘着剤層側表面の水接触角を低下し、改善された水剥離性を得るものであり得る。したがって、親水層のない基材層単体(主層)の表面の水接触角は、典型的には、親水層表面の水接触角よりも大きい。基材主層表面の水接触角は、例えば10度よりも高く、30度超または50度超であり得る。基材主層表面の水接触角は、親水層形成の効果をよりよく発揮する観点から、60度以上であってもよく、70度以上でもよく、80度以上(例えば85度以上)でもよい。基材主層表面の水接触角の上限は特に限定されず、例えば115度未満であり、105度未満であってもよく、95度未満であり得る。ここに開示される基材主層は、その親水層側表面が上記範囲の水接触角を有するものであり得る。また、基材層背面の水接触角は、上記基材主層の水接触角の範囲と同じ範囲をとり得る。基材主層表面の水接触角は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
基材主層の材質の非限定的な例としては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の各種樹脂フィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔、ステンレス鋼(SUS)等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の層状体であってもよい。このような複合構造の基材主層の例として、例えば、金属箔と上記樹脂フィルムとが積層した構造の積層基材(多層構造基材)、ガラスクロス等の無機繊維で強化された樹脂シート等が挙げられる。
基材主層の材料としては、各種のフィルム(以下、基材フィルムともいう。)を好ましく用いることができる。上記基材フィルムは、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質のフィルムであってもよく、非多孔質のフィルムであってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造のフィルムであってもよい。いくつかの態様において、上記基材フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ノルボルネン構造等の脂肪族環構造を有するモノマーに由来するポリシクロオレフィン;ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA);透明ポリイミド(CPI)等のポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルスルホン(PES);ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリカーボネート(PC);ポリウレタン(PU);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリビニルアルコール(PVA);ポリスチレン;ABS樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー等の樹脂を用いることができる。ここに開示される基材主層は、その表面が上記樹脂材料から構成されたものであり得る。基材主層として用いられ得る樹脂フィルムは、上記樹脂の1種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、1種または2種以上の樹脂材料を含む樹脂層と、当該樹脂層と同種または異種の1種または2種以上の樹脂材料を含む樹脂層とが積層された複合樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。
樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例として、ポリエステル系樹脂、PPS樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。ここで、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、PPS樹脂とはPPSを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリオレフィン系樹脂とはポリオレフィンを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリイミド樹脂とはポリイミドを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。
ポリエステル系樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル系樹脂が用いられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、1種のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα-オレフィンのホモポリマー、2種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。低密度(LD)ポリオレフィンおよび高密度(HD)ポリオレフィンのいずれも使用可能である。ポリオレフィン樹脂フィルムの例としては、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、2種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム等が挙げられる。
基材主層として好ましく利用し得る樹脂フィルムの具体例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPIフィルム、CPPフィルム、OPPフィルム、TACフィルムが挙げられる。強度の点から好ましい例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPIフィルムが挙げられる。入手容易性、寸法安定性、光学特性等の観点から好ましい例としてPETフィルム、CPIフィルム、TACフィルムが挙げられる。
樹脂フィルムには、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、用途等に応じて適宜設定することができる。
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の、従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
上記基材主層は、このような樹脂フィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材主層は、上記樹脂フィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。
また、ここに開示される基材主層は、上記樹脂フィルムや金属箔等に、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料が塗布されたものや、亜鉛めっき等のめっきが施されたものであってもよい。
他のいくつかの好ましい態様に係る基材主層は、光学部材として用いられ得る偏光フィルム、波長フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、ハードコート(HC)フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護フィルム、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある。)等のいずれかであり得る。なお、上記の「板」および「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」等を含むものとする。上記材料を基材主層に用いた基材層は、親水層を有する形態で、上述の各種光学部材、機能性フィルムとして用いられ得る。
いくつかの好ましい態様では、基材主層として偏光フィルム(偏光フィルム層)が用いられる。偏光フィルムは、偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の面(好ましくは両面)に配置された透明保護フィルムとを備えるものであり得る。偏光子としては、特に限定されず、例えば、親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが用いられる。親水性高分子フィルムとしては、PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。偏光子として、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等を用いることもできる。なかでも、PVA系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好ましい。
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、TAC等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シクロオレフィン系樹脂(典型的にはノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、PVA樹脂、および、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。いくつかの態様では、偏光フィルムは、例えば、偏光フィルムが2枚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムで挟まれた構成を有する。他のいくつかの好ましい態様では、偏光子の一方の面に、例えばTAC等の熱可塑性樹脂からなる透明保護フィルムを配置し、他方の面に、シクロオレフィン系樹脂(典型的にはノルボルネン系樹脂)や、あるいは(メタ)アクリル樹脂からなる透明保護フィルムを配置する構成が採用され得る。さらに他の好ましい態様では、偏光子の一方の面に、例えばTAC等の熱可塑性樹脂からなる透明保護フィルムを配置し、他方の面に、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。これら透明保護フィルムは、PVA系等の接着剤を介して偏光子に積層され得る。透明保護フィルムには、目的に応じて、任意の適切な添加剤が1種類以上含まれ得る。
また、偏光フィルムの背面には表面処理層を設けてもよい。表面処理層は、偏光フィルムに用いられる上述の透明保護フィルムに設けることができる他、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして、偏光フィルム上に設けることもできる。
表面処理層の好適例としては、ハードコート層が挙げられる。ハードコート層の形成材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱または放射線により硬化する材料を用いることができる。用いられる材料としては、熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化性樹脂が挙げられる。なかでも、紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂は、紫外線照射による硬化処理により、効率よく硬化樹脂層を形成し得るので、加工性に優れる。硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、メラミン系等の1種または2種以上を用いることができ、これらは、モノマー、オリゴマー、ポリマー等を含む形態であり得る。熱(基材損傷の原因となり得る。)を必要とせず、加工速度に優れることから、放射線硬化型樹脂(典型的には紫外線硬化型樹脂)が特に好ましい。
表面処理層の他の例としては、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層が挙げられる。上記ハードコート層上に、防眩処理層や反射防止層を設けてもよい。反射防止層は、複数の層からなる多層構造を有するものであり得る。表面処理層のその他の例としては、スティッキング防止層等が挙げられる。ここに開示される偏光フィルムが表面処理層を備える態様で実施される場合、表面処理層に導電剤を含有させて導電性を付与することができる。
基材主層が、ひいては基材層が偏光フィルムである態様において、偏光フィルムの厚さ(複数の層から構成される場合は、それらの総厚)は、特に限定されず、例えば凡そ1μm以上であり、凡そ10μm以上または凡そ20μm以上が適当である。例えば、透明保護フィルムを設ける場合、保護性等の観点から、偏光フィルムの厚さは、好ましくは凡そ30μm以上、より好ましくは凡そ50μm以上、さらに好ましくは凡そ70μm以上である。偏光フィルムの上限は特に制限されず、例えば凡そ1mm以下であり、凡そ500μm以下または凡そ300μm以下が適当である。光学特性や薄厚化の観点から、上記厚さは、好ましくは凡そ150μm以下、より好ましくは凡そ120μm以下、さらに好ましくは凡そ100μm以下である。
特に限定されるものではないが、ここに開示される基材主層は、典型的には、アルカリガラス板や無アルカリガラス等のガラス層を含まない。そのような基材主層材料を用いる態様において、親水層を設けることによる水剥離性向上効果は好ましく発揮され得る。
基材主層の厚さ(親水層以外に複数の層を有する場合は、親水層以外の層の総厚)は、基材層の総厚の50%以上とすることが適当であり、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上であり、97%以上(例えば99%以上)であってもよい。
基材層の総厚は、特に限定されず、積層体の使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材層の総厚は、例えば凡そ1000μm以下であってよく、凡そ500μm以下でもよく、軽量化や薄厚化の観点から、凡そ300μm以下が適当であり、好ましくは凡そ150μm以下、より好ましくは凡そ120μm以下であり、100μm以下であってもよく、70μm以下でもよい。基材層の総厚が小さくなると、積層体の柔軟性や被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、基材層の総厚は、例えば2μm以上であってよく、5μm超または10μm超でもよい。いくつかの態様において、基材層の総厚は凡そ20μm以上が適当であり、好ましくは凡そ30μm以上、より好ましくは凡そ50μm以上、さらに好ましくは凡そ70μm以上である。
基材層の粘着剤層側表面(したがって親水層の表面)には、親水性をさらに高めるため、例えば、コロナ処理やプラズマ処理等の親水化処理がさらに施されていてもよい。コロナ処理やプラズマ処理に使用する装置や処理条件は、従来公知の技術に基づいて、所望の水接触角を示す表面が得られるように設定することができる。また、基材層のうち粘着剤層側表面には、必要に応じて、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材層と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材層への投錨性を向上させるための処理であり得る。また、基材主層の表面(例えば親水層側表面)には、上記の各種表面処理や、下塗り剤(プライマー)の塗布、帯電防止処理等の表面処理が施されていてもよい。プライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、例えば0.01μm~1μm程度が適当であり、0.1μm~1μm程度が好ましい。
基材層のうち粘着剤層側とは反対側の面(以下、背面ともいう。)には、必要に応じて、剥離処理、接着性または粘着性向上処理、帯電防止処理等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、基材層の背面を剥離処理剤で表面処理することにより、ロール状に巻回された形態の積層体の巻戻し力を軽くすることができる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等を用いることができる。
<粘着剤層>
(1)A層
ここに開示される積層体において、粘着剤層の少なくとも基材層側表面を構成するA層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。ここで、アクリル系粘着剤とは、アクリル系重合物を主成分とする粘着剤をいう。ゴム系粘着剤その他の粘着剤についても同様の意味である。
(アクリル系粘着剤)
透明性や耐候性等の観点から、いくつかの態様において、A層の構成材料としてアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。
アクリル系粘着剤としては、例えば、エステル末端に炭素原子数1以上20以下の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50重量%より多く含むモノマー成分から構成されたアクリル系重合物を含むものが好ましい。以下、炭素原子数がX以上Y以下のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを「(メタ)アクリル酸CX-Yアルキルエステル」と表記することがある。特性のバランスをとりやすいことから、モノマー成分全体のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば55重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。同様の理由から、モノマー成分のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば99.9重量%以下であってよく、99.5重量%以下でもよく、99重量%以下でもよい。
(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルを用いることが好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを用いることがより好ましい。例えば、上記モノマー成分としてアクリル酸n-ブチル(BA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)の一方または両方を含むアクリル系粘着剤が好ましく、少なくとも2EHAを含むアクリル系粘着剤が特に好ましい。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルの他の例としては、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(ISTA)等が挙げられる。
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを40重量%以上の割合で含み得る。このようにエステル末端に炭素原子数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを比較的多く含むモノマー成分によると、親油性の高いアクリル系重合物が形成される傾向にある。親油性の高いアクリル系重合物によると、水浸漬後剥離力低下率の低い粘着剤層が形成されやすい。モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、例えば60重量%以上であってよく、70重量%以上でもよく、75重量%以上でもよく、80重量%以上でもよい。上述したいずれかの下限値以上の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
また、粘着剤層(A層)の凝集性を高めて凝集破壊を防止する観点から、モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、99.5重量%以下とすることが適当であり、99重量%以下でもよく、98重量%以下でもよく、97重量%以下でもよい。粘着剤層(A層)の凝集性向上の観点から、いくつかの態様では、上記モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は95重量%以下であり、例えば90重量%以下が適当である。他のいくつかの態様では、モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、85重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。上述したいずれかの上限値以下の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等)を有するモノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、アクリル系重合物に架橋点を導入したり、粘着剤の凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等。
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸。
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等。
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等の、N-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等。
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等(例えば、N-ビニル-2-カプロラクタム等のラクタム類)。
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
マレイミド類:例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等。
イタコンイミド類:例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル。
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類。
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル。
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等。
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等。
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、モノマー成分全体の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全体の0.1重量%以上としてもよく、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、モノマー成分全体の50重量%以下とすることが適当であり、40重量%以下とすることが好ましい。
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、窒素原子を有するモノマーを含み得る。窒素原子を有するモノマーの使用により、粘着剤の凝集力を高め、光硬化後の剥離強度を好ましく向上させ得る。窒素原子を有するモノマーの一好適例として、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えば、一般式(1):
で表わされるN-ビニル環状アミドを用いることができる。ここで、一般式(1)中、R
1は2価の有機基であり、具体的には-(CH
2)
n-である。nは2~7(好ましくは2,3または4)の整数である。なかでも、N-ビニル-2-ピロリドンを好ましく採用し得る。窒素原子を有するモノマーの他の好適例としては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
窒素原子を有するモノマー(好ましくは窒素原子含有環を有するモノマー)の使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよく、さらには5重量%以上または7重量%以上とすることができる。いくつかの態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、接着力向上の観点から、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。また、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよい。他のいくつかの態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば20重量%以下としてもよく、15重量%以下としてもよい。
いくつかの態様において、モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例として、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MAA)が挙げられる。AAとMAAとを併用してもよい。AAとMAAとを併用する場合、それらの重量比(AA/MAA)は特に限定されず、例えば凡そ0.1~10の範囲とすることができる。いくつかの態様において、上記重量比(AA/MAA)は、例えば凡そ0.3以上であってよく、凡そ0.5以上でもよい。また、上記重量比(AA/MAA)は、例えば凡そ4以下であってよく、凡そ3以下でもよい。
カルボキシ基含有モノマーの使用により、A層の表面に水等の水性液体を素早く馴染ませることができる。このことは水剥離力N2の低下に役立ち得る。カルボキシ基含有モノマーの使用量は、例えば、モノマー成分全体の0.05重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.3重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、0.8重量%以上でもよい。また、上記カルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば15重量%以下であってよく、10重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、4.5重量%以下でもよく、3.5重量%以下でもよく、3.0重量%以下でもよく、2.5重量%以下でもよい。カルボキシ基含有モノマーの使用量が多過ぎないことは、A層のバルクへの水の拡散を抑制し、水浸漬後剥離強度N1の低下を抑制する観点から好ましい。また、カルボキシ基含有モノマーの使用量が多過ぎないことは、水剥離力N2の測定に使用する水がA層に吸収されて剥離途中で水が不足する事象を防止する観点からも有利となり得る。
いくつかの態様において、モノマー成分は、水酸基含有モノマーを含み得る。水酸基含有モノマーの使用により、粘着剤の凝集力や架橋密度を調整し、剥離強度N0を向上させ得る。水酸基含有モノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の0.01重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、5重量%以上または10重量%以上でもよい。また、A層のバルクへの過度の水拡散を抑制する観点から、いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよく、10重量%以下、5重量%以下または3重量%以下としてもよい。ここに開示される積層体は、粘着剤層(A層)のモノマー成分として水酸基含有モノマーを実質的に使用しない態様でも好適に実施され得る。
いくつかの態様において、モノマー成分は、アルコキシシリル基含有モノマーを含み得る。アルコキシシリル基含有モノマーは、典型的には、一分子内に少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、例えば2つまたは3つ)のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体であり、その具体例は上述のとおりである。上記アルコキシシリル基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アルコキシシリル基含有モノマーの使用により、粘着剤層(A層)にシラノール基の縮合反応(シラノール縮合)による架橋構造を導入することができる。なお、アルコキシシリル基含有モノマーは、後述するシランカップリング剤としても把握され得る。
モノマー成分がアルコキシシリル基含有モノマーを含む態様において、該モノマー成分全体に占めるアルコキシシリル基含有モノマーの割合は、例えば0.005重量%以上とすることができ、0.01重量%以上とすることが適当である。また、上記アルコキシシリル基含有モノマーの割合は、被着体に対する密着性向上の観点から、例えば0.5重量%以下であってよく、0.1重量%以下でもよく、0.05重量%以下でもよい。
また、いくつかの好ましい態様に係るアクリル系重合物のモノマー成分は、ゲル化抑制の観点から、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合が20重量%未満に制限されている。上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合は、より好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満であり、いくつかの態様では、上記モノマー成分はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
同様に、ここに開示されるアクリル系重合物のモノマー成分は、アルコキシ基含有モノマーを20重量%未満の割合で含むか、含まないものであり得る。上記モノマー成分に占めるアルコキシ基含有モノマーの量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であり、特に好ましい態様では、上記モノマー成分はアルコキシ基含有モノマーを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
また、いくつかの好ましい態様において、アクリル系重合物のモノマー成分は、親水性モノマーの割合が適切な範囲に設定されている。これにより、水剥離性が好ましく発揮される。ここで、本明細書における「親水性モノマー」は、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子を有するモノマー(典型的には、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン等の窒素原子含有環を有するモノマー)およびアルコキシ基含有モノマー(典型的には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)をいうものとする。この態様において、アクリル系重合物のモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は40重量%以下(例えば35重量%以下)が適当であり、32重量%以下であることが好ましく、例えば30重量%以下であってもよく、28重量%以下であってもよい。特に限定されるものではないが、アクリル系重合物のモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は1重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、光硬化後の剥離強度を向上させることができる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えばシクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレートを好ましく採用し得る。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上、3重量%以上または5重量%以上とすることができる。いくつかの態様では、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量は、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ40重量%以下とすることが適当であり、例えば30重量%以下であってもよく、25重量%以下(例えば15重量%以下、さらには10重量%以下)であってもよい。
モノマー成分の組成は、該モノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度(以下、「重合物のガラス転移温度」ともいう。)が-75℃以上-10℃以下となるように設定され得る。いくつかの態様において、上記重合物(例えばアクリル系重合物、典型的にはアクリル系ポリマー)のガラス転移温度(Tg)は、-20℃以下であることが適当であり、-30℃以下であることが好ましく、-40℃以下であることがより好ましく、-50℃以下であることがさらに好ましく、例えば-55℃以下であってもよい。上記重合物のTgが低くなると、A層の基材層に対する密着性や被着体に対する接着性は概して向上する傾向にある。基材層への密着性の高いA層によると、粘着剤層の剥離を意図しない局面において基材層とA層との界面への水浸入を抑制しやすい。このことは、水浸漬後剥離強度N1の向上や、水浸漬後剥離力低下率の低減の観点から有利となり得る。また、重合物のTgは、剥離強度N0を高めやすくする観点から、例えば-70℃以上であってよく、-65℃以上でもよい。他のいくつかの態様では、上記Tgは、例えば-60℃以上であってよく、-50℃以上でもよく、-45℃以上または-40℃以上でもよい。
ここで、上記Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
イソステアリルアクリレート -18℃
メチルメタクリレート 105℃
メチルアクリレート 8℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
N-ビニル-2-ピロリドン 54℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
ジシクロペンタニルメタクリレート 175℃
イソボルニルアクリレート 94℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されている場合は、最も高い値を採用する。
上記Polymer Handbookにもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(特開2007-51271号公報参照)。具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
ここに開示される粘着剤層(A層)に含まれる重合物(例えばアクリル系重合物、典型的にはアクリル系ポリマー)は、特に限定されるものではないが、SP値が23.0(MJ/m3)1/2以下であることが好ましい。そのようなSP値を有する重合物を含む粘着剤は、例えば後述の水親和剤を含ませることによって、十分な接着強度を有しつつ、優れた水剥離性を有する粘着剤を好ましく実現するものとなり得る。上記SP値は、より好ましくは21.0(MJ/m3)1/2以下(例えば20.0(MJ/m3)1/2以下)である。上記SP値の下限は特に限定されず、例えば凡そ10.0(MJ/m3)1/2以上であり、また凡そ15.0(MJ/m3)1/2以上であることが適当であり、好ましくは18.0(MJ/m3)1/2以上である。
なお、上記重合物のSP値は、Fedorsの算出法[「ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(POLYMER ENG. & SCI.)」,第14巻,第2号(1974),第148~154ページ参照]すなわち、式:
SP値δ=(Σ△e/Σ△v)1/2
(上式中、Δeは、25℃における各原子または原子団の蒸発エネルギー△eであり、Δvは、同温度における各原子または原子団のモル容積である。);
に従って計算することができる。上記SP値を有する重合物は、当業者の技術常識に基づき、適切にモノマー組成を決定することにより得ることができる。
粘着剤層(A層)は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)、あるいはこれらの混合物の形態で含む粘着剤組成物(以下「粘着剤組成物A」ともいう。)を用いて形成され得る。上記粘着剤組成物Aは、粘着剤(粘着成分)が水に分散した形態の水分散型粘着剤組成物、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の溶剤型粘着剤組成物、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物、等の種々の形態であり得る。
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の熱重合開始剤や光重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。より具体的には、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系開始剤;例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えばフェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤;等が例示されるが、これらに限定されない。なお、熱重合は、例えば20~100℃(典型的には40~80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100重量部に対して重合開始剤凡そ0.001~5重量部(典型的には凡そ0.01~2重量部、例えば凡そ0.01~1重量部)を用いることができる。
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類を用いることができる。あるいは、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。非硫黄系連鎖移動剤の具体例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアニリン類;α-ピネン、ターピノーレン等のテルペノイド類;α-メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマー等のスチレン類;ジベンジリデンアセトン、シンナミルアルコール、シンナミルアルデヒド等のベンジリデニル基を有する化合物;ヒドロキノン、ナフトヒドロキノン等のヒドロキノン類;ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類;2,3-ジメチル-2-ブテン、1,5-シクロオクタジエン等のオレフィン類;フェノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等のベンジル水素類;等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~1重量部程度とすることができる。ここに開示される技術は、連鎖移動剤を使用しない態様でも好ましく実施され得る。
上記の各種重合法を適宜採用して得られる重合物(例えばアクリル系重合物、典型的にはアクリル系ポリマー)の分子量は特に制限されず、要求性能等に合わせて適当な範囲に設定し得る。上記重合物の重量平均分子量(Mw)は、凡そ10×104以上であることが適当であり、例えば凡そ15×104以上であってよく、凝集力と接着力とをバランスよく両立する観点から、30×104超であることが好ましい。いくつかの態様に係る上記重合物は、高温環境下においても良好な接着信頼性を得る観点から、好ましくは40×104以上(典型的には凡そ50×104以上、例えば凡そ55×104以上)のMwを有する。上記重合物のMwの上限は、凡そ500×104以下(例えば凡そ150×104以下)であり得る。上記Mwは凡そ75×104以下であってもよい。ここでMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。後述の実施例においても同様である。
いくつかの態様に係る積層体は、水分散型粘着剤組成物から形成されたA層を有する。水分散型粘着剤組成物の代表例として、エマルション型粘着剤組成物が挙げられる。エマルション型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の重合物と、必要に応じて用いられる添加剤とを含有する。
モノマー成分のエマルション重合は、通常、乳化剤の存在下で行われる。エマルション重合用の乳化剤としては、特に制限されず、公知のアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等を用いることができる。乳化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性乳化剤の非限定的な例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン性乳化剤の非限定的な例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。反応性官能基を有する乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。反応性乳化剤の例としては、上述したアニオン性乳化剤またはノニオン性乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基が導入された構造のラジカル重合性乳化剤が挙げられる。
エマルション重合における乳化剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば0.2重量部以上であってよく、0.5重量部以上でもよく、1.0重量部以上でもよく、1.5重量部以上でもよい。また、水浸漬後剥離強度N1の向上や水浸漬後剥離力低下率の低減、あるいは粘着剤層(A層)の透明性向上の観点から、いくつかの態様において、乳化剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下とすることが好ましく、3重量部以下としてもよい。なお、ここでエマルション重合に使用する乳化剤は、A層の水親和剤としても機能し得る。
エマルション重合によると、モノマー成分の重合物が水に分散したエマルション形態の重合反応液が得られる。A層の形成に用いる水分散型粘着剤組成物は、上記重合反応液を用いて好ましく製造され得る。
いくつかの好ましい態様において、積層体は、溶剤型粘着剤組成物から形成されたA層を有し得る。溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の溶液重合物と、必要に応じて用いられる添加剤とを含有する。ここに開示される技術による効果(基材層に親水層を形成することによる水剥離性向上効果)は、溶剤型粘着剤層(A層)に対して効果的に発揮され得る。また、溶剤型粘着剤の使用は光学特性の点でも有利である。溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。溶液重合によると、モノマー成分の重合物が重合溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。A層の形成に用いる溶剤型粘着剤組成物は、上記重合反応液を用いて好ましく製造され得る。
いくつかの好ましい態様において、積層体は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成されたA層を有し得る。ここで、本明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の一好適例として、光硬化型粘着剤組成物が挙げられる。光硬化型の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。なかでも紫外線硬化型粘着剤組成物が好ましい。また、ここに開示される技術による効果(基材層に親水層を形成することによる水剥離性向上効果)は、光硬化型粘着剤層(A層)に対して効果的に発揮され得る。また、光硬化型粘着剤の使用は光学特性の点でも有利である。
光硬化型粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。
いくつかの好ましい態様に係る光硬化型粘着剤組成物は、モノマー成分の部分重合物を含む。このような部分重合物は、典型的にはモノマー成分に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、好ましくはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。モノマー成分を部分重合させる際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、モノマー成分の重合転化率(モノマーコンバーション)を容易に制御することができる。
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば凡そ70重量%以下とすることができ、凡そ60重量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、上記重合転化率は、凡そ50重量%以下が適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1重量%以上であり、凡そ5重量%以上とすることが適当である。
モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分の全量を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより得ることができる。また、モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分のうちの一部を含むモノマー混合物の部分重合物または完全重合物と、残りのモノマー成分またはその部分重合物との混合物であってもよい。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
上記部分重合物を含む粘着剤組成物には、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤、多官能モノマー、架橋剤、水親和剤等)が配合され得る。そのような他の成分を配合する方法は特に限定されず、例えば上記モノマー混合物にあらかじめ含有させてもよく、上記部分重合物に添加してもよい。
(架橋剤)
粘着剤層(A層)には、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。換言すれば、粘着剤層(A層)を形成するための粘着剤組成物Aは、必要に応じて架橋剤を含有し得る。架橋剤は、典型的には架橋反応後の形態で粘着剤層(A層)に含まれている。架橋剤を含む粘着剤組成物Aから形成された粘着剤層(A層)は、典型的には、架橋剤によって架橋された重合物(例えばアクリル系重合物)を含む。例えば、粘着剤層(A層)は、架橋剤によって架橋されたアクリル系ポリマーを含む粘着剤層(A層)であり得る。架橋剤の使用により、粘着剤層(A層)の凝集力を適切に調節することができ、例えば光硬化前の粘着剤層(A層)の凝集力等を適切に調節することができる。また、後述の光反応性化合物と架橋剤とを組み合わせて用いる態様においては、光硬化後の粘着剤層の密着耐久性や剥離強度等の特性を適切に調節することができる。
架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤のなかから、例えば粘着剤組成物の組成に応じて、該架橋剤が粘着剤層内で適切な架橋機能を発揮するように選択することができる。用いられ得る架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤等を例示することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。水分散型粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能な架橋剤の使用が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、2官能以上の多官能イソシアネート化合物を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。市販品としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、商品名「タケネートD-110N」)等のイソシアネート付加物等を例示することができる。水分散型の粘着剤組成物においては、水に溶解または分散可能なイソシアネート系架橋剤の使用が好ましい。例えば、水溶性、水分散性または自己乳化型のイソシアネート系架橋剤を好ましく採用し得る。イソシアネート基がブロックされた、いわゆるブロックドイソシアネート型のイソシアネート系架橋剤を好ましく使用し得る。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-X」、「TETRAD-C」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤としては、1分子内に1個以上のオキサゾリン基を有するものを特に制限なく使用することができる。
アジリジン系架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニルプロピオネート)]等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を2個以上有する低分子化合物または高分子化合物を用いることができる。
いくつかの態様において、架橋剤として過酸化物を用いてもよい。過酸化物としては、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-へキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる過酸化物として、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。なお、上記重合開始剤として過酸化物を使用した場合には、重合反応に使用されずに残存した過酸化物を架橋反応に使用することも可能である。その場合は過酸化物の残存量を定量して、過酸化物の割合が所定量に満たない場合には、必要に応じて、所定量になるように過酸化物を添加するとよい。過酸化物の定量は、特許4971517号公報に記載の方法により行うことができる。
架橋剤を使用する場合における使用量(2種以上の架橋剤を使用する場合にはそれらの合計量)は、特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の使用量は、粘着剤組成物Aに含まれるモノマー成分(例えばアクリル系重合物のモノマー成分)100重量部に対して、凡そ5重量部以下とすることが適当であり、3重量部以下としてもよく、2重量部以下としてもよく、1重量部以下としてもよく、1重量部未満としてもよい。光反応性化合物との組合せ使用による効果を好適に発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、上記モノマー成分100重量部に対する架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤)の使用量は、例えば0.50重量部以下であってよく、0.40重量部以下でもよく、0.30重量部以下でもよく、0.20重量部以下でもよい。架橋剤の使用量の下限は特に限定されず、上記モノマー成分100重量部に対して0重量部より多い量であればよい。いくつかの態様において、架橋剤の使用量は、上記モノマー成分100重量部に対して、例えば0.001重量部以上とすることができ、0.01重量部以上としてもよく、0.05重量部以上としてもよく、0.10重量部以上としてもよい。
架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が例示される。なかでも、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系架橋触媒が好ましい。架橋触媒の使用量は特に制限されない。架橋触媒の使用量は、粘着剤組成物Aに含まれるモノマー成分(例えばアクリル系重合物のモノマー成分)100重量部に対して、例えば凡そ0.0001重量部以上、凡そ0.001重量部以上、凡そ0.005重量以上等とすることができ、また、凡そ1重量部以下、凡そ0.1重量部以下、凡そ0.05重量部以下等とすることができる。
粘着剤層(A層)の形成に用いられる粘着剤組成物Aには、所望により、架橋遅延剤として、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。例えば、イソシアネート系架橋剤を含む粘着剤組成物Aまたはイソシアネート系架橋剤を配合して使用され得る粘着剤組成物Aにおいて、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を好ましく使用し得る。これにより、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が発揮され得る。
ケト-エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ-ジカルボニル化合物を用いることができる。具体例としては、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン等のβ-ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。なかでも好適な化合物として、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステル類が挙げられる。ケト-エノール互変異性を生じる化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ケト-エノール互変異性を生じる化合物の使用量は、粘着剤組成物Aに含まれるモノマー成分(例えばアクリル系重合物のモノマー成分)100重量部に対して、例えば0.1重量部以上20重量部以下であってよく、0.5重量部以上15重量部以下とすることが適当であり、例えば1重量部以上10重量部以下とすることができ、1重量部以上5重量部以下としてもよい。
(光反応性化合物)
ここに開示される技術は、粘着剤層が光硬化性粘着剤層(光硬化可能な状態の粘着剤層)である形態、光硬化型粘着剤層(光硬化後の粘着剤層)である形態のいずれの形態でも、所定の剥離強度特性や水剥離力低下率特性を満足する態様で実施され得る。このような態様において、粘着剤層(A層)を形成するための粘着剤組成物Aは、光反応性化合物を含有し得る。いくつかの態様では、粘着剤層(A層)は光反応性化合物を含有し得る。光反応性化合物としては、2個以上のエチレン性不飽和基を分子内に有する化合物が用いられる。また、いくつかの好ましい態様に係る光反応性化合物は、2個以上のエチレン性不飽和基と、オキシアルキレン構造単位と、を分子内に有する。粘着剤層(A層)に含まれる光反応性化合物は、粘着剤層(A層)を基材層に積層した後に光(例えば紫外線)照射等により上記エチレン性不飽和基を反応させることで、適度な柔軟性を有する架橋構造を形成し得る。したがって、いくつかの態様において、光反応性化合物は、粘着剤層(A層)内において反応した状態で存在し得る。他のいくつかの態様では、光反応性化合物は、粘着剤層(A層)内において、後述するように遊離の状態(未反応であり得る。)で存在し得る。これにより、粘着剤層(A層)の基材層に対する剥離強度(投錨性)の低下を抑制しつつ、耐久性を効果的に向上させることができる。光反応性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記エチレン性不飽和基の例には、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基およびアリル基が含まれるが、これらに限定されない。光反応性化合物が分子内に有する2個以上のエチレン不飽和基は、互いに同一の基であってもよく、2種以上の異なる基であってもよい。光反応性の観点から好ましいエチレン性不飽和基として、アクリロイル基およびメタクリロイル基が挙げられる。なかでもアクリロイル基が好ましい。
上記オキシアルキレン構造単位(AO単位)とは、一般式(U1):-AO-;で表される構造単位をいい、典型的には一般式(U2):-CmH2mO-;で表される構造単位をいう。ここで、上記一般式(U1)中のAは、典型的には炭素原子数2以上のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2~4のアルキレン基である。上記式(U2)中のmは、2以上の整数であり、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2~3の整数である。AO単位の好適例として、オキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位が挙げられる。このようなAO単位は、例えば、アルキレンオキサイドまたはアルキレングリコールによる変性(付加反応)により形成され得る。
光反応性化合物は、上記一般式(U1)で表されるAO単位が2以上連続する繰返し構造、すなわち一般式:-(AO)n-;で表される構造を含む化合物であってもよい。ここで、上記式中のnは2以上の整数であり、例えば2~10の整数、好ましくは2~5の整数、より好ましくは2~3の整数である。あるいは、光反応性化合物は、AO単位が2以上連続する繰返し構造を含まない化合物(2以上のAO単位を不連続に含む化合物であり得る。)であってもよい。このような光反応性化合物によると、凝集性と架橋の柔軟性とのバランスのよい粘着剤層(A層)が効率よく形成され得る。
光反応性化合物は、一のエチレン性不飽和基と他のいずれか一のエチレン性不飽和基との間に、少なくとも1個、好ましくは2個以上(例えば2個~4個程度)のAO単位が配置された分子構造を有していることがより好ましい。上記2個以上のAO単位は、隣接して-(AO)n-構造を形成していてもよく、隣接していなくてもよい。
いくつかの態様において、光反応性化合物としては、該光反応性化合物に含まれるエチレン性不飽和基の少なくとも一部に隣接してAO単位が配置された分子構造を有していることが好ましい。エチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基)に隣接して配置されたAO単位は、該エチレン性不飽和基の反応により形成される架橋構造の柔軟化に効果的に貢献し得ると考えられる。いくつかの態様において、分子内に含まれるエチレン性不飽和基のうち、50個数%以上、より好ましくは75個数%以上、例えば実質的に100個数%のエチレン性不飽和基に、AO単位が隣接して配置されている光反応性化合物を好ましく採用し得る。
光反応性化合物としては、分子内に2~10個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、分子内に2~8個のエチレン性不飽和基を有する化合物がより好ましく、分子内に2~6個のエチレン性不飽和基を有する化合物がさらに好ましい。いくつかの態様において、光反応性化合物として、分子内に3個以上(典型的には3~8個、例えば3~6個)のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いることができる。分子内に3個以上のエチレン性不飽和基を有する光反応性化合物を粘着剤層(A層)に含有させることにより、該粘着剤層(A層)の硬化後における基材層への密着の耐久性を効率よく(例えば、比較的少量の光反応性化合物によっても十分に)向上させ得る。このことは、ここに開示される積層体の加工性や取扱い性等の観点から有利となり得る。他のいくつかの態様において、光反応性化合物として、分子内に2個のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いることができる。これにより、より高い剥離強度を示す粘着剤が実現され得る。いくつかの好ましい態様では、光反応性化合物として、分子内に3個以上(典型的には3~8個、例えば3~6個)のエチレン性不飽和基を有する化合物と、分子内に2個のエチレン性不飽和基を有する化合物とが併用される。
分子内に3個以上のエチレン性不飽和基を有する光反応性化合物としては、例えばエトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパンポリオキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシプロピル(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパンポリオキシプロピル(メタ)アクリレート等のプロピレンオキサイド(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、等が挙げられるが、これらに限定されない。分子内に2個のエチレン性不飽和基を有する光反応性化合物としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、等が挙げられるが、これらに限定されない。
光反応性化合物の分子量は、特に限定されず、所望の効果が好適に発揮されるように選択し得る。例えば、光反応性化合物としては、分子量が凡そ2500以下であるものを用いることができる。粘着剤組成物Aの調製容易性等の観点から、いくつかの態様において、光反応性化合物の分子量は、例えば2000以下であってよく、1500以下でもよく、1000以下でもよい。光反応性化合物の分子量は、典型的には200以上である。加工性や取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、光反応性化合物の分子量は、例えば230以上であってよく、300以上でもよく、350以上でもよく、450以上でもよく、500以上でもよく、550以上でもよい。
なお、上記光反応性化合物の分子量は、例えばGPC法により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として得ることができる。あるいは、光反応性化合物の分子量として、メーカー公称値または分子構造から算出される分子量を採用してもよい。
粘着剤層(A層)に含まれる光反応性化合物の量は特に限定されず、目的とする性能に応じて適切に設定することができる。いくつかの態様において、粘着剤組成物Aや粘着剤層(A層)における光反応性化合物の含有量は、該粘着剤層(A層)に含まれる重合物(典型的にはアクリル系重合物、例えばアクリル系ポリマー)のモノマー成分100重量部に対して、例えば0.5重量部以上であってよく、1重量部以上が適当であり、2重量部以上でもよく、3重量部以上でもよく、4重量部以上でもよい。光反応性化合物の含有量の増大により、光硬化後における粘着剤層(A層)の基材層への密着耐久性は向上する傾向にある。また、上記モノマー成分100重量部に対する光反応性化合物の含有量は、例えば30重量部以下とすることができ、加工性等の観点から、20重量部未満とすることが適当であり、15重量部未満とすることが好ましい。過度の架橋による剥離強度の低下を避ける観点から、いくつかの態様において、上記モノマー成分100重量部に対する光反応性化合物の含有量は、例えば10重量部未満であってよく、8.0重量部未満でもよく、6.0重量部未満でもよい。
光反応性化合物は、粘着剤層(A層)形成前の粘着剤組成物Aおよび光硬化性粘着剤層(A層)内においては遊離の形態で存在しており、光硬化後の粘着剤層(A層)においては、粘着剤層中の他の成分(例えばアクリル系ポリマー)と化学結合していることが好ましい。上記化学結合は、例えば、光反応性化合物が分子内に有するエチレン性不飽和基以外の官能基F1と、上記他の成分が分子内に有する官能基であって上記官能基F1と反応可能な官能基F2との反応により形成され得る。上記反応は、例えば後述の光反応触媒を粘着剤層(A層)内に存在させて、光硬化処理を行うことにより好適に進行させ得る。このような粘着剤層(A層)は、光反応性化合物を遊離の形態で含む粘着剤組成物Aを用いて好適に形成することができる。ここで「遊離の形態」とは、光反応性化合物が、粘着剤層(A層)または粘着剤組成物Aに含まれる他の成分(例えば、アクリル系ポリマー)と化学結合していないことをいう。光反応性化合物を遊離の形態で含む粘着剤組成物Aは、調製容易性やゲル化抑制の観点から有利となり得る。
粘着剤組成物Aおよび光硬化性粘着剤層(A層)は、分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ光反応性化合物に該当しない1種または2種以上のその他の光反応性化合物を含んでいてもよい。その他の光反応性化合物の例には、分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、かつAO造単位を有しない化合物;分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、該エチレン性不飽和基1個当たりの分子量が250より大きく、かつAO単位を有する化合物;分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、該エチレン性不飽和基1個当たりの分子量が250より大きく、かつAO単位を有しない化合物;等が含まれる。その他の光反応性化合物に該当する化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、等が含まれるが、これらに限定されない。粘着剤組成物Aや粘着剤層(A層)におけるその他の光反応性化合物の含有量は、特に限定されない。いくつかの態様において、粘着剤組成物Aや粘着剤層(A層)におけるその他の光反応性化合物の含有量は、該粘着剤層(A層)に含まれる重合物(典型的にはアクリル系重合物、例えばアクリル系ポリマー)のモノマー成分100重量部に対して、例えば0.01重量部以上であってよく、0.1重量部以上が適当であり、1重量部以上でもよい。また、上記モノマー成分100重量部に対するその他の光反応性化合物の含有量は、例えば10重量部以下とすることができ、5重量部未満とすることが適当であり、3重量部未満とすることが好ましい。上記光反応性化合物とその他の光反応性化合物とを併用する態様では、粘着剤組成物Aや粘着剤層(A層)におけるその他の光反応性化合物の含有量は、重量基準で、例えば、光反応性化合物の含有量の0.9倍以下であってよく、0.5倍以下とすることが適当であり、0.2倍以下でもよく、0.1倍以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤組成物Aや粘着剤層(A層)がその他の光反応性化合物を実質的に含有しない形態で実施され得る。ここで、その他の光反応性化合物を実質的に含有しないとは、少なくとも意図的にはその他の光反応性化合物を使用しないことを意味し、例えば粘着剤組成物Aの調製に用いられる材料中の不純物または副成分としてその他の光反応性化合物に該当する化合物が非意図的に少量混入することは許容され得る。その他の光反応性化合物は、粘着剤層(A層)形成前の粘着剤組成物Aおよび光硬化性粘着剤層(A層)内においては遊離の形態で存在しており、光硬化後の粘着剤層(A層)においては、粘着剤層中の他の成分(例えばアクリル系ポリマー)と化学結合していることが好ましい。
(光反応触媒)
ここに開示される粘着剤組成物Aおよび光硬化性粘着剤層(A層)には、光硬化性の向上または付与等を目的として、必要に応じて光反応触媒(光反応開始剤)を含有させることができる。光反応触媒としては、例えば、ケタール系光反応開始剤、アセトフェノン系光反応開始剤、ベンゾインエーテル系光反応開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光反応開始剤、α-ケトール系光反応開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光反応開始剤、光活性オキシム系光反応開始剤、ベンゾイン系光反応開始剤、ベンジル系光反応開始剤、ベンゾフェノン系光反応開始剤、チオキサントン系光反応開始剤等を用いることができる。光反応触媒は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
ケタール系光反応開始剤の具体例には、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が含まれる。
アセトフェノン系光反応開始剤の具体例には、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、メトキシアセトフェノン等が含まれる。
ベンゾインエーテル系光反応開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテルおよびアニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテルが含まれる。
アシルホスフィンオキサイド系光反応開始剤の具体例には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が含まれる。
α-ケトール系光反応開始剤の具体例には、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン等が含まれる。芳香族スルホニルクロリド系光反応開始剤の具体例には、2-ナフタレンスルホニルクロライド等が含まれる。光活性オキシム系光反応開始剤の具体例には、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシム等が含まれる。ベンゾイン系光反応開始剤の具体例にはベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光反応開始剤の具体例にはベンジル等が含まれる。
ベンゾフェノン系光反応開始剤の具体例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。
チオキサントン系光反応開始剤の具体例には、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
粘着剤層(A層)における光反応触媒の含有量は、特に限定されず、所望の効果が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、光反応触媒の含有量は、粘着剤層に含まれる重合物(典型的にはアクリル系重合物)のモノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.005重量部以上とすることができ、0.01重量部以上とすることが適当であり、0.05重量部以上とすることが好ましく、0.10重量部以上としてもよく、0.15重量部以上としてもよく、0.20重量部以上としてもよい。光反応触媒の含有量の増大により、粘着剤層(A層)の光硬化性が向上する。また、上記モノマー成分100重量部に対する光反応触媒の含有量は、5重量部以下とすることが適当であり、2重量部以下とすることが好ましく、1重量部以下としてもよく、0.7重量部以下としてもよく、0.5重量部以下としてもよい。光反応触媒の含有量が多すぎないことは、積層体の保存安定性(例えば、光劣化に対する安定性)向上の観点から有利となり得る。
光反応触媒を含む粘着剤層(A層)は、典型的には、該光反応触媒を含む粘着剤組成物A(例えば、溶剤型粘着剤組成物)を用いて形成することができる。光反応触媒を含む粘着剤組成物は、例えば、該組成物に使用される他の成分と光反応触媒とを混合して調製することができる。また、光重合開始剤の存在下で合成(光重合)された重合物(典型的にはアクリル系重合物)を使用して粘着剤組成物を調製する場合は、上記重合物を合成する際に用いられた光重合開始剤の残留物(未反応物)を、粘着剤層(A層)に含まれる光反応触媒の一部または全部として利用してもよい。必要に応じて用いられるアクリル系オリゴマーとして光重合開始剤の存在下で合成されたものを使用する場合も同様である。製造管理の容易性の観点から、ここに開示される粘着剤層(A層)は、他の構成成分に、上述した量の光反応触媒を新たに加えて調製された粘着剤組成物を用いて好ましく形成され得る。
(水親和剤)
ここに開示される技術における粘着剤層(A層)に用いられ得る粘着剤組成物Aには、所望により、水親和剤を含有させることができる。粘着剤層(A層)に水親和剤を含有させることにより、水等の水性液体を利用して剥離力を効果的に低下させることができる。その理由は、特に限定解釈されるものではないが、一般に水親和剤は親水性領域を有することにより粘着剤層(A層)(例えば、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層)の表面に偏在しやすく、それによって該粘着剤層(A層)表面の水親和性を効率よく高める作用が発揮され、該粘着剤層(A層)が水と接触したときに剥離力を効果的に低下させるものと考えられる。
水親和剤としては、粘着剤組成物の調製容易性等の点から、常温(約25℃)において液状であるものが好ましく用いられ得る。水親和剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、水親和剤としては、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを用いることができる。界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、公知の界面活性剤、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物の1種または2種以上を特に制限なく用いることができる。なお、上記界面活性剤のなかには、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物が存在し、逆もまた然りであることは言うまでもない。
化合物Aとして用いられ得る界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル;ポリオキシエレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の例としては、ノニルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)等の、アルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム)、オクタデシル硫酸塩等のアルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩等の、ポリエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等の、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル;上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム)等の、スルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;等が挙げられる。アニオン性界面活性剤が塩を形成している場合、該塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属塩(好ましくは一価金属の塩)、アンモニウム塩、アミン塩等であり得る。アニオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、例えば、-POH基、-COH基および-SOH基の少なくとも一つを有するアニオン性界面活性剤を好ましく使用し得る。なかでも-POH基を有する界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤は、典型的にはリン酸エステル構造を含んでおり、例えばリン酸のモノエステル(ROP(=O)(OH)2;ここでRは1価の有機基)、ジエステル((RO)2P(=O)OH;ここでRは、同一のまたは異なる1価の有機基)、モノエステルおよびジエステルの両方を含む混合物等であり得る。-POH基を有する界面活性剤の好適例として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルにおけるアルキル基の炭素原子数は、例えば6~20であってよく、8~20でもよく、10~20でもよく、12~20でもよく、14~20でもよい。
カチオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリエーテルアミンが挙げられる。カチオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
化合物Aとして用いられ得るポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等のポリアルキレングリコール;ポリオキシエチレン単位を含むポリエーテル、ポリオキシプロピレン単位を含むポリエーテル、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを含む化合物(これら単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロック状であってもよい。);これらの誘導体;等を用いることができる。また、上述の界面活性剤のうちポリオキシアルキレン骨格を有する化合物を用いることもできる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ポリオキシエチレン骨格(ポリオキシエチレンセグメントともいう。)を含む化合物を用いることが好ましく、PEGがより好ましい。
ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量(化学式量)は特に限定されず、例えば1000未満であることが適当であり、粘着剤組成物調製性の点から、凡そ600以下(例えば500以下)であることが好ましい。ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量の下限は特に限定されず、分子量が凡そ100以上(例えば凡そ200以上、さらには凡そ300以上)のものが好ましく用いられる。
水親和剤の他の例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術において、水親和剤としては、化合物Aの1種または2種以上を用いてもよく、水溶性ポリマーの1種または2種以上を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
水親和剤のHLBは特に限定されず、例えば3以上であり、凡そ6以上が適当であり、8以上(例えば9以上)であり得る。いくつかの好ましい態様では、水親和剤のHLBは10以上である。これによって、水剥離性が好ましく発現する傾向がある。上記HLBは、より好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは13以上(例えば14以上)である。上記範囲のHLBを有する水親和剤(典型的には界面活性剤)をA層に含ませることで、水剥離性をより効果的に発現させ得る。上記HLBの上限は20以下であり、例えば18以下であってもよく、16以下でもよく、15以下でもよい。
なお、本明細書におけるHLBは、GriffinによるHydrophile-Lipophile Balanceであり、界面活性剤の水や油への親和性の程度を表す値であり、親水性と親油性の比を0~20の間の数値で表したものである。HLBの定義は、W.C.Griffin:J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)や、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄共著、「界面活性剤ハンドブック」、第3版、工学図書社出版、昭和47年11月25日、p179~182等に記載されるとおりである。上記HLBを有する水親和剤は、上記参考文献を必要に応じて参酌するなどして、当業者の技術常識に基づき、選定することができる。
このような水親和剤は、遊離の形態でA層に含まれていることが好ましい。水親和剤としては、粘着剤組成物調製性の点から、常温(約25℃)において液状であるものが好ましく用いられる。
水親和剤を含むA層は、典型的には、水親和剤を含む粘着剤組成物Aから形成される。上記粘着剤組成物Aは、上述した水分散型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物等のいずれでもよい。いくつかの好ましい態様において、水親和剤を含むA層は、光硬化型または溶剤型の粘着剤組成物Aから形成された粘着剤層であり得る。このようなA層において、水親和剤の添加効果が好ましく発揮され得る。A層は、光硬化性を有していてもよい。
A層における水親和剤の含有量は、特に限定されず、該水親和剤の使用効果が適切に発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、水親和剤の含有量は、A層に含まれる重合物(例えば、アクリル系重合物)を構成するモノマー成分100重量部あたり、例えば0.001重量部以上とすることができ、0.01重量部以上とすることが適当であり、0.03重量部以上でもよく、0.07重量部以上でもよく、0.1重量部以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、水親和剤の含有量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば0.2重量部以上であってよく、より高い効果を得る観点から0.5重量部以上でもよく、1.0重量部以上でもよく、1.5重量部以上でもよい。また、A層のバルクへの過度の水拡散を抑制する観点から、いくつかの態様において、水親和剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば20重量部以下であってよく、10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下とすることが好ましく、3重量部以下としてもよい。水親和剤の含有量が多過ぎないことは、水浸漬後剥離強度N1の向上や水浸漬後剥離力低下率の低減、あるいは粘着剤層(A層)の透明性向上の観点からも好ましい。例えば、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する水親和剤の含有量は、2重量部未満でもよく、1重量部未満でもよく、0.7重量部未満でもよく、0.3重量部未満でもよく、0.2重量部未満でもよい。HLBが10以上である水親和剤は、少量の使用によっても良好な水剥離性を発揮する傾向がある。
(アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤層(A層)には、凝集力の向上や、基材層との密着性向上や被着体との接着性向上等の観点から、アクリル系オリゴマーを含有させることができる。アクリル系オリゴマーを含む粘着剤層(A層)は、該アクリル系オリゴマーを含む粘着剤組成物Aを用いて形成することができる。アクリル系オリゴマーとしては、上述したアクリル系重合物(例えばアクリル系ポリマー)のTgに対して、より高いTgを有するものを好ましく採用し得る。
上記アクリル系オリゴマーのTgは特に限定されず、例えば約20℃以上300℃以下であり得る。上記Tgは、例えば約30℃以上であってよく、約40℃以上でもよく、約60℃以上でもよく、約80℃以上または約100℃以上でもよい。アクリル系オリゴマーのTgが高くなると、凝集力を向上させる効果は概して高くなる傾向にある。また、基材層への投錨性や衝撃吸収性等の観点から、アクリル系オリゴマーのTgは、例えば約250℃以下であってよく、約200℃以下でもよく、約180℃以下または約150℃以下でもよい。なお、アクリル系オリゴマーのTgは、上述のアクリル系重合物のTgと同じく、Foxの式に基づいて計算される値である。
アクリル系オリゴマーのMwは、特に限定されず、例えば凡そ1000以上であってよく、凡そ1500以上であることが適当であり、凡そ2000以上でもよく、凡そ3000以上でもよい。また、アクリル系オリゴマーのMwは、例えば凡そ30000未満であってよく、凡そ10000未満であることが適当であり、凡そ7000未満でもよく、凡そ5000未満でもよい。Mwが上記範囲内にあると、粘着剤層(A層)の凝集性や、接着性向上効果が好適に発揮されやすい。アクリル系オリゴマーのMwは、GPCにより測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、例えば、東ソー社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5mL/分の条件にて測定することができる。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上述した各種の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;上述した各種の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;上述した各種の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
アクリル系オリゴマーは、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートや芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;等に代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、接着性向上の観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層(A層)の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、エステル末端に飽和炭化水素基を有するモノマーが好ましく、例えばアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレートや飽和脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める(メタ)アクリレートモノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。いくつかの好ましい態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的に1種または2種以上の(メタ)アクリレートモノマーのみからなるモノマー組成を有する。モノマー成分が脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルとを含む場合、それらの重量比は特に限定されない。いくつかの態様において、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの重量比は、例えば10/90以上、20/80以上または30/70以上とすることができ、また、90/10以下、80/20以下または70/30以下とすることができる。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記の(メタ)アクリレートモノマーに加えて、必要に応じて官能基含有モノマーを用いることができる。官能基含有モノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有複素環を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める官能基含有モノマーの割合は、例えば1重量%以上、2重量%以上または3重量%以上とすることができ、また、例えば15重量%以下、10重量%以下または7重量%以下とすることができる。アクリル系オリゴマーは、官能基含有モノマーが用いられていないものであってもよい。
好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、DCPMAとMMAの共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、CHMAとAAとの共重合体等を挙げることができる。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤)の種類は、概ねアクリル系重合物の合成に関して例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用される連鎖移動剤(例えばメルカプタン類)の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、詳細な説明は省略する。
粘着剤層(A層)または粘着剤組成物Aにアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、粘着剤層(A)に含まれる重合物(典型的にはアクリル系重合物)のモノマー成分100重量部に対して、例えば0.01重量部以上とすることができ、より高い効果を得る観点から0.05重量部以上としてもよく、0.1重量部以上または0.2重量部以上としてもよい。また、上記重合物(典型的にはアクリル系重合物)との相溶性等の観点から、上記モノマー成分100重量部に対するアクリル系オリゴマーの含有量は、50重量部未満とすることが適当であり、好ましくは30重量部未満、より好ましくは25重量部以下であり、例えば10重量部以下であってもよく、5重量部以下または1重量部以下でもよい。
(粘着付与樹脂)
粘着剤層(A層)には粘着付与樹脂を含有させてもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、ロジン誘導体粘着付与樹脂を包含する、石油系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジンの他、安定化ロジン(例えば、上記ロジンを不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジン)、重合ロジン(例えば、上記ロジンの多量体、典型的には二量体)、変性ロジン(例えば、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸により変性された不飽和酸変性ロジン等)等が挙げられる。
上記ロジン誘導体粘着付与樹脂としては、例えば、上記ロジン系粘着付与樹脂のエステル化物(例えば、安定化ロジンエステルや重合ロジンエステル等のロジンエステル類)、上記ロジン系樹脂のフェノール変性物(フェノール変性ロジン)およびそのエステル化物(フェノール変性ロジンエステル)等が挙げられる。
上記石油系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、これらの水素化物等が挙げられる。
上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。
上記ケトン系粘着付与樹脂としては、例えば、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等の脂肪族ケトン;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の脂環式ケトン等)とホルムアルデヒドとの縮合によるケトン系樹脂;等が挙げられる。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂、ロジン誘導体粘着付与樹脂およびテルペンフェノール樹脂から選択される1種または2種以上を好ましく使用し得る。なかでもロジン誘導体粘着付与樹脂が好ましく、好適例として安定化ロジンエステルおよび重合ロジンエステル等のロジンエステル類が挙げられる。
水分散型の粘着剤組成物においては、上述のような粘着付与樹脂が水性溶媒に分散した形態の水分散型粘着付与樹脂の使用が好ましい。例えば、アクリル系ポリマーの水分散液と水分散型粘着付与樹脂とを混合することにより、これらの成分を所望の割合で含有する粘着剤組成物を容易に調製することができる。いくつかの態様において、水分散型粘着付与樹脂としては、環境衛生への配慮等の観点から、少なくとも芳香族炭化水素系溶剤を実質的に含有しないものを好ましく用いることができる。芳香族炭化水素系溶剤その他の有機溶剤を実質的に含有しない水分散型粘着付与樹脂の使用がより好ましい。
ロジンエステル類を含む水分散型粘着付与樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学工業社製の商品名「スーパーエステルE-720」、「スーパーエステルE-730-55」、「スーパーエステルE-865NT」等や、ハリマ化成社製の商品名「ハリエスターSK-90D」、「ハリエスターSK-70D」、「ハリエスターSK-70E」、「ネオトール115E」等が挙げられる。また、テルペンフェノール樹脂(水分散型テルペンフェノール樹脂の形態であり得る。)の市販品としては、荒川化学工業社製の商品名「タマノルE-100」、「タマノルE-200」、「タマノルE-200NT」等が挙げられる。
粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。粘着剤層(A層)の凝集力の低下を抑制する観点から、軟化点が80℃以上の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。粘着付与樹脂の軟化点は、90℃以上でもよく、100℃以上でもよく、110℃以上でもよく、120℃以上でもよい。軟化点130℃以上または140℃以上の粘着付与樹脂を使用してもよい。また、透明性や基材層に対する密着性、被着体に対する接着性等の観点から、軟化点が200℃以下または180℃以下の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点としては、文献やカタログ等に記載された公称値を採用することができる。公称値がない場合には、JIS K5902またはJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて粘着付与樹脂の軟化点を測定することができる。
粘着付与樹脂の使用量は、その使用効果を好適に発揮させる観点から、A層に含まれる重合物を構成するモノマー成分100重量部に対して1重量部以上とすることが適当であり、5重量部以上でもよく、10重量部以上でもよく、15重量部以上でもよく、20重量部以上でもよく、25重量部以上でもよい。また、基材層や被着体に対する密着性と凝集性とをバランスよく両立する観点から、モノマー成分100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、例えば70重量部以下であってよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよい。あるいは、粘着付与樹脂を実質的に含有しないA層であってもよい。
(シランカップリング剤)
いくつかの態様において、粘着剤層(A層)にシランカップリング剤を含有させることができる。シランカップリング剤を含むA層によると、水浸漬後剥離力低下率が低く、かつ水剥離力低下率の高い積層体が好適に実現され得る。シランカップリング剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン;アセトアセチル基含有トリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも好ましい例として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびアセトアセチル基含有トリメトキシシランが挙げられる。
シランカップリング剤の使用量は、所望の使用効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。いくつかの態様において、シランカップリング剤の使用量は、A層に含まれる重合物を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば0.001重量部以上であってよく、より高い効果を得る観点から0.005重量部以上でもよく、0.01重量部以上でもよく、0.015重量部以上でもよい。また、基材層への密着性向上の観点から、いくつかの態様において、シランカップリング剤の使用量は、A層を構成するモノマー成分100重量部に対して、例えば3重量部以下であってよく、1重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよい。
なお、モノマー成分がアルコキシシリル基含有モノマーを含む態様では、A層に含まれるシランカップリング剤の一部または全部として上記アルコキシシリル基含有モノマーを利用してもよい。
A層の形成に用いられる粘着剤組成物Aは、必要に応じて、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。該組成物に含有され得る他の任意成分としては、粘度調整剤(例えば増粘剤)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
(2)B層
ここに開示される積層体の粘着剤層は、粘着剤層の少なくとも基材層側の表面を構成するA層に加えて、該A層の背面側に配置されたB層をさらに含み得る。このようにA層とB層とを含む構成によると、例えば、A層により良好な水剥離性を付与しつつ、B層により粘着剤層のバルク特性(例えば、耐水性、凝集性、耐熱性等)を調節することができる。したがって、A層とB層とを含む構成の粘着剤層によると、水剥離性が良く、かつ耐水信頼性に優れた積層体が得られやすい。例えば、水浸漬後剥離力低下率が低く、かつ水剥離力低下率の高い積層体が好適に実現され得る。また、例えば、強粘着性と良好な水剥離性とを高レベルで両立する粘着剤層が好適に実現され得る。
B層は、A層の背面に直接接して配置されていてもよく、A層の背面との間に他の層を介して配置されていてもよい。上記他の層(以下、中間層ともいう。)は、典型的には非粘着性の層であって、例えば、上述の基材層に用いられ得る樹脂フィルムや発泡体シート、織布や織布、紙類、金属箔等を利用し得る。積層体の柔軟性や被着体の表面形状への追従性の観点から、いくつかの態様において、A層とB層とが直接接して(すなわち、中間層を介さずに)積層した構成の粘着剤層を好ましく採用し得る。
B層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。透明性や耐候性等の観点から、いくつかの態様において、B層の構成材料としてアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。B層を構成するアクリル系粘着剤は、例えば、A層に使用し得るアクリル系粘着剤として例示したものから、A層との組合せにおいて所望の特性が発揮されるように選択することができる。B層は、一層からなる単層構造であってもよく、組成の異なる二以上の層を含む多層構造であってもよい。
いくつかの態様において、B層に含まれる重合物(例えば、アクリル系重合物)を構成するモノマー成分は、該モノマー成分全体の40重量%以上の割合でC1-20(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み得る。B層のモノマー成分全体に占めるC1-20(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば98重量%以下であってよく、B層の凝集性向上の観点から95重量%以下であってもよく、85重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよい。
B層を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、共重合性モノマーを含み得る。共重合性モノマーは、A層に用いられ得る共重合性モノマーとして例示したものから適宜選択することができる。共重合性モノマーの使用量は、B層を構成するモノマー成分全体の例えば5重量%以上であってよく、15重量%以上でもよく、30重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。
いくつかの態様において、B層を構成するモノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば2重量%以下であってよく、1重量%以下でもよく、0.5重量%以下でもよい。B層を構成するモノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しなくてもよい。ここで、カルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しないとは、少なくとも意図的にはカルボキシ基含有モノマーを使用しないことをいう。このような組成のB層を有する粘着剤層は、耐水信頼性の高いものとなりやすいので好ましい。
A層とB層とを備える粘着剤層の一好適例として、B層のゲル分率がA層のゲル分率より高い、および、B層の膨潤度がA層の膨潤度より低い、の一方または両方を満たす粘着剤層が挙げられる。このような構成によると、水浸漬後剥離力低下率が低く、かつ水剥離力低下率の高い粘着剤層が得られやすい。
いくつかの態様において、B層は、光硬化型粘着剤組成物または溶剤型粘着剤組成物から形成された層であり得る。このような組成物から形成されたB層によると、耐水信頼性のよい粘着剤層が得られやすい。例えば、水分散型粘着剤組成物から形成されたA層と光硬化型粘着剤組成物から形成されたB層との組合せ、または、水分散型粘着剤組成物から形成されたA層と溶剤型粘着剤組成物から形成されたB層との組合せにおいて、水浸漬後剥離力低下率が低く、かつ水剥離力低下率の高い粘着剤層が好適に実現され得る。いくつかの態様において、耐水性向上の観点から、水親和剤を実質的に含有しないB層を好ましく採用し得る。
(3)粘着剤層に関する共通事項
粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化層であり得る。すなわち、該粘着剤層は、粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。2種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階にわたって行うことができる。モノマー成分の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる。すなわち、部分重合物をさらなる共重合反応に供して完全重合物を形成する。例えば、光硬化性の粘着剤組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。例えば、光硬化性粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合は、乾燥後に光硬化を行うとよい。完全重合物を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。二層以上の多層構造の粘着剤層は、あらかじめ形成した粘着剤層を貼り合わせることによって作製することができる。あるいは、あらかじめ形成した第一の粘着剤層の上に粘着剤組成物を塗布し、該粘着剤組成物を硬化させて第二の粘着剤層を形成してもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。例えば、基材層上に粘着剤層を設ける方法として、該基材層に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成する直接法を用いてもよく、剥離面上に形成した粘着剤層を基材層に転写する転写法を用いてもよい。
粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば3μm~1000μm程度であり得る。粘着剤層を基材層や被着体に密着させて耐水信頼性を高める観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよく、30μm以上でもよく、50μm以上でもよく、50μm超でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよく、120μm以上でもよい。また、粘着剤層の凝集破壊による糊残りの発生を防止する観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば500μm以下であってよく、300μm以下でもよく、200μm以下でもよく、170μm以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤層の厚さが130μm以下、90μm以下、60μm以下または40μm以下である積層体にも好ましく適用され得る。
いくつかの好ましい態様では、粘着剤層はA層からなる。換言すると、粘着剤層はB層を含まないA層のみの単層構造であり得る。ここに開示される技術によると、基材層表面への親水層形成により優れた水剥離性が実現されるので、水剥離性と他の特性(例えばば耐水信頼性)との両立を目的として、粘着剤層を多層構造にする必要はない。つまり、B層に頼ることなく、所望の特性を実現することができる。このことは、粘着剤層の生産効率の観点から遊離である。また、粘着剤層がA層からなる積層体によると、被着体がガラス材料(例えばアルカリガラス板)などの親水性表面を有するものである場合、基材層からの水剥離性だけでなく、被着体からの水剥離性にも優れたものとなり得る。なお、A層からなる粘着剤層では、粘着剤層の厚さとはA層の厚さを意味する。
粘着剤層が厚くなると、概して、水剥離性と耐水信頼性との両立は難しくなる傾向にある。かかる観点から、該粘着剤層の厚さが例えば50μm超である態様において、粘着剤層がA層とB層とを含む構成を好ましく採用し得る。このような構成の粘着剤層によると、該粘着剤層が厚くなっても、水剥離性と耐水信頼性とを高レベルで両立する粘着剤層が得られやすい。
粘着剤層がA層とB層とを含む態様において、A層の厚さは、例えば1μm以上であってよく、2μm以上でもよく、4μm以上でもよく、5μm以上でもよく、10μm以上でもよく、15μm以上でもよい。また、A層の厚さは、例えば50μm以下であってよく、45μm以下でもよく、35μm以下でもよく、25μm以下でもよい。特に、水分散型粘着剤組成部から形成されたA層を備える態様や、A層が水親和剤を含む態様では、A層の厚さが大きすぎないことは、粘着剤層の耐水信頼性の向上、粘着剤層の透明性の向上等の観点から好ましい。
粘着剤層がA層とB層とを含む態様において、B層の厚さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上でもよい。A層の背面側にB層を設けることによる効果をよりよく発揮する観点から、いくつかの態様において、B層の厚さは、例えば20μm以上であってよく、30μm以上でもよく、50μm以上でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよい。
粘着剤層がA層とB層とを含む態様において、粘着剤層全体の厚さに占めるA層の厚さは、例えば90%以下であってよく、70%以下であることが好ましく、50%以下でもよく、30%以下でもよく、20%以下でもよく、15%以下でもよい。また、A層の形成容易性や水剥離性の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層全体の厚さに占めるA層の厚さは、例えば3%以上であってよく、5%以上でもよく、7%以上でもよく、10%以上でもよい。
<剥離方法>
この明細書によると、基材層と粘着剤層とを有する積層体の該基材層から該粘着剤層を剥離する方法が提供される。この方法は、上記基材層からの上記粘着剤層の剥離前線において上記基材層と上記粘着剤層との界面に水性液体が存在する状態で、上記剥離前線の移動に追随して上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記基材層から上記粘着剤層を剥離する水剥離工程を含む。また、上記粘着剤層は、基材層側表面を構成するA層を備える。さらに、上記基材層の粘着剤層側表面には親水化処理が施されている。上記水剥離工程によると、上記水性液体を有効に利用して基材層から粘着剤層を剥離することができる。
基材層表面に施される親水化処理としては、特に限定されず、水接触角を低下し得る各種の表面処理を採用することができる。好適例としては、上述の親水層の形成が挙げられる。親水層形成の詳細については上記のとおりであるので、繰返しの説明は省略する。なお、上記親水化処理は、典型的には、コロナ処理やプラズマ処理は含まない。
水性液体としては、水または水を主成分とする混合溶媒に、必要に応じて少量の添加剤を含有させたものを用いることができる。上記混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る低級アルコール(例えばエチルアルコール)や低級ケトン(例えばアセトン)等を使用し得る。上記添加剤としては、公知の界面活性剤等を用いることができる。被着体の汚染を避ける観点から、いくつかの態様において、添加剤を実質的に含有しない水性液体を好ましく使用し得る。環境衛生の観点から、水性液体として水を用いることが特に好ましい。水としては、特に制限されず、用途に応じて求められる純度や入手容易性等を考慮して、例えば蒸留水、イオン交換水、水道水等を用いることができる。
いくつかの態様において、上記剥離方法は、例えば水剥離力N2の測定時と同様に、基材層に貼り付けられた粘着剤層の外縁付近の基材層上に水性液体を供給し、その水性液体を上記粘着剤層の外縁から該粘着剤層と上記基材層との界面に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく(すなわち、剥離開始前に基材層上に供給した水性液体のみを利用して)粘着剤層の剥離を進行させる態様で好ましく行うことができる。なお、水剥離工程の途中で、剥離前線の移動に追随して粘着剤層と基材層との界面に進入させる水が途中で枯渇するようであれば、該水剥離工程の開始後に断続的または連続的に水を追加供給してもよい。例えば、基材層が吸水性を有する場合や、剥離後の基材層表面または粘着面に水性液体が残留しやすい場合等において、水剥離工程の開始後に水を追加供給する態様を好ましく採用し得る。
剥離開始前に供給する水性液体の量は、粘着剤層の貼付け範囲外から該粘着剤層と基材層との界面に上記水性液体を導入し得る量であればよく、特に限定されない。上記水性液体の量は、例えば5μL以上であってよく、10μL以上が適当であり、20μL以上でもよい。また、上記水性液体の量の上限について特に制限はない。いくつかの態様において、作業性向上等の観点から、上記水性液体の量は、例えば10mL以下であってよく、5mL以下でもよく、1mL以下でもよく、0.5mL以下でもよく、0.1mL以下でもよく、0.05mL以下でもよい。上記水性液体の量を少なくすることにより、粘着剤層の剥離後に上記水性液体を乾燥や拭き取り等により除去する操作を省略または簡略化し得る。
剥離開始時に上記粘着剤層の外縁から該粘着剤層と上記基材層との界面に水性液体を進入させる操作は、例えば、粘着剤層の外縁において上記界面にカッターナイフや針等の治具の先端を差し込む、粘着剤層の外縁を鉤や爪等で引掻いて持ち上げる、強粘着性の粘着テープや吸盤等を積層体の外縁付近の背面に付着させて該粘着剤層の端を持ち上げる、等の態様で行うことができる。このように粘着剤層の外縁から上記界面に水性液体を強制的に進入させることにより、基材層と上記粘着剤層との界面に水性液体が存在する状態を効率よく形成することができる。また、水性液体を界面に強制的に進入させる操作を行って剥離のきっかけをつくった後における良好な水剥離性と、かかる操作を行わない場合における高い耐水信頼性とを、好適に両立することができる。
上記剥離方法により剥離される粘着剤層は、例えば、ここに開示されるいずれかの粘着剤層であることが好ましい。上記剥離方法は、ここに開示されるいずれかの積層体における基材層からの粘着剤層の剥離方法として好適である。
いくつかの態様に係る水剥離工程は、上記剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させる態様で好ましく実施され得る。剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させることは、例えば剥離角度180度の条件においては、粘着剤層を20mm/分以上の引張速度で剥離することに相当する。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば50mm/分以上でもよく、150mm/分以上でもよく、300mm/分以上でもよく、500mm/分以上でもよい。ここに開示される剥離方法によると、上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記基材層から上記粘着剤層を剥離することにより、このように比較的早い剥離速度であっても良好な水剥離性を発揮することができる。剥離前線を移動させる速度の上限は特に制限されない。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば1000mm/分以下であり得る。
ここに開示される剥離方法は、例えば、該方法に使用する水性液体(例えば水)の体積10μL当たりの粘着剤層の剥離面積が、例えば50cm2以上、好ましくは100cm2以上となる態様で実施することができる。
<用途>
ここに開示される積層体は、水等の水性液体を用いて基材層から容易に剥離し得ることからリワーク性がよく、かつ耐水信頼性が良いという特長を活かして、例えば各種の携帯機器(ポータブル機器)、自動車、家電製品等を構成する部材に貼り付けられる態様で、該部材の固定、接合、成形、装飾、保護、支持等の用途に用いられ得る。上記部材の少なくとも表面を構成する材質は、例えば、アルカリガラス板や無アルカリガラス等のガラス;樹脂フィルム、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、透明ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。ここに開示される積層体は、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料による塗装面や、亜鉛メッキ鋼板等のメッキ面に貼り付けられてもよい。
積層体が貼付けられる被着体の表面の水接触角は特に限定されない。いくつかの態様において、被着体表面は、水接触角が、例えば60度以下、好ましくは50度以下となる程度の親水性を示す表面であり得る。いくつかの好ましい態様において、上記表面の水接触角は、例えば45度以下であってよく、40度以下でもよく、35度以下でもよく、30度以下でもよい。上記水接触角が小さくなると、被着体表面に沿って水が濡れ広がりやすくなり、積層体の水剥離性が向上する傾向にある。ここに開示される積層体は、例えば、水接触角が30度以下(例えば15度以下、さらには10度以下)程度の材料(例えばアルカリガラス板や無アルカリガラス等のガラス)からなる表面を有する部材の固定に好ましく利用され得る。上記被着体表面の水接触角の下限は、原理上0度である。いくつかの態様において、上記被着体表面の水接触角は、0度超でもよく、1度以上でもよく、3度以上でもよく、5度以上でもよい。他のいくつかの態様では、被着体表面の水接触角は、30度超であってもよく、50度超であってもよく、60度超(例えば70度以上)であってもよい。ここに開示される積層体は、水接触角の異なる種々の材料に用いることが可能である。被着体表面の水接触角は、後述の実施例に記載の方法と同様の方法により測定される。
ここに開示される積層体は、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等の表示装置(画像表示装置)や、タッチパネル等の入力装置等の機器(光学機器)、特に、フォルダブル表示装置や車載用の表示装置のように高価な部材を含む場合に好ましく用いられる。
ここに開示される積層体を用いて光学部材を貼り合わせる態様としては、特に限定されず、例えば、(1)ここに開示される積層体の基材層が光学部材であり、粘着剤層を介して光学部材同士(したがって被着体は光学部材)を貼り合わせる態様や、(2)ここに開示される積層体の基材層が光学部材であり、粘着剤層を介して光学部材以外の部材(被着体)に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)ここに開示される積層体の基材層が光学部材以外の材料であり、積層体(具体的には、その粘着剤層)を光学部材(被着体)に貼り合わせる態様であってもよい。なお、基材層が光学部材を含む形態の積層体は、粘着型光学部材(例えば、粘着型光学フィルム)としても把握され得る。また、ここに開示される積層体の基材層が上述の機能性フィルムを含む場合には、ここに開示される積層体は、機能性フィルムの少なくとも片面側にここに開示される粘着剤層を有する「粘着型機能性フィルム」としても把握され得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<評価方法>
[剥離強度N0]
幅20mm、長さ100mmのサイズを有する積層体を試験片として用意する。この積層体の粘着面はPETフィルムにより裏打ちされている。
上記試験片をオートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)した後、23℃、50%RHの環境下において、同環境下において、基材層と粘着剤層との界面にカッターナイフを差し込んで該粘着剤層の長手方向の一端を基材層から剥がし、引張試験機(ミネベア社製、万能引張圧縮試験機、装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」)を用いて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で基材層からの粘着剤層の剥離強度(ただし、下記の水剥離力測定に移行するまで、すなわち剥離界面に蒸留水を供給するまでの間についての剥離強度)を測定する。測定は3回行い、それらの平均値を幅10mm当たりの値(単位:N/10mm)に換算した値を剥離強度N0[N/10mm]とする。なお、剥離強度の測定は、被着体に貼り付けられた試験片の剥離が下から上に進行するように行う。引張試験機としては、上記万能引張圧縮試験機の相当品を用いてもよい。
光硬化性粘着剤層を含む積層体では、上記オートクレーブから取り出した試験片に対し、23℃、50%RHの環境下で基材層を介して光照射を行い、その後に剥離強度を測定する。光照射の条件(波長、照射強度、照射時間等)は、粘着剤層の組成や厚み等に応じて適宜設定される。具体的には、後述の例1-1~1-30の積層体については、上記オートクレーブ処理後、高圧水銀ランプ(300mW/cm2)を用いて上記基材層側から積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化性粘着剤層を硬化させる。例2-1~2-24では、オートクレーブ処理後の光照射は行わない。
なお、粘着剤層の背面に非粘着性の層が配置されている場合には、PETフィルムによる裏打ちは不要である。
[水剥離力N2]
上記剥離強度N0の測定において、基材層からの粘着剤層の剥離強度の測定中に、上記基材層から上記粘着剤層が離れ始める箇所(剥離界面)に20μLの蒸留水を供給し、該蒸留水供給後の剥離強度を測定する。測定は、各剥離強度の測定毎に(すなわち3回)行い、それらの平均値を幅10mm当たりの値(単位:N/10mm)に換算した値を水剥離力N2[N/10mm]とする。
蒸留水供給後の剥離強度の測定条件は、JIS Z0237:2009の10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力に従うものとする。具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件とする。
なお、ここでは1つの試験片毎に剥離強度の測定と水剥離力の測定とを連続して行うことにしているが、剥離強度の測定と水剥離力の測定とを異なる試験片により行ってもよい。例えば、連続測定を実施するために十分な長さの試験片を用意することが難しい場合等において、異なる試験片を用いて測定を行う態様を採用することができる。その場合、基材層と粘着剤層との界面にカッターナイフを差し込んで該粘着剤層の長手方向の一端を基材層から剥離させ、そこに蒸留水を供給して剥離強度の測定を実施する。
[水浸漬後剥離強度N1]
積層体を幅10mm、長さ120mmの長方形状にカットして試験片を作製する。この試験片を、オートクレーブに投入し、圧力5atm、温度50℃の条件で15分間処理する。
オートクレーブから取り出した評価用サンプルを23℃、50%RHの環境に1日保持した後、室温(23℃~25℃)の水に30分間浸漬する。水としてはイオン交換水または蒸留水を使用する。水中において試験片は、粘着剤層側が上になる向きで水平に保持する。試験片の上面から水面までの距離(浸漬深さ)は10mm以上(例えば10mm~100mm程度)とする。次いで、試験片を水から引き上げ、該試験片に付着している水を静かに拭き取った後、粘着剤層と基材層との界面にカッターナイフを差し込んで該粘着剤層の長手方向の一端を剥がし、23℃、50%RHの環境下において、JIS Z0237:2009の「10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力」に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、基材層からの粘着剤層の剥離強度を測定する。測定値を水浸漬後剥離強度N1[N/10mm]とする。試験片を水から引き上げてから剥離強度を測定するまでの時間は10分以内とする。
上記水浸漬後剥離強度の測定条件は、水浸漬を行う他は上記剥離強度N0の測定条件と同じである。具体的には、上述した水浸漬後剥離強度N1の測定において、光硬化性の粘着剤層を含む積層体では、上記オートクレーブから取り出したサンプルに対し、23℃、50%RHの環境下で基材層を介して光照射を行い、その後に水浸漬を実施し、剥離強度を測定する。光照射の条件(波長、照射強度、照射時間等)は、粘着剤層の組成や厚み等に応じて適宜設定すればよい。また、引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」ミネベア社製)またはその相当品を用いることができる。剥離強度の測定は、被着体に貼り付けられた試験片の剥離が下から上に進行するように行う。測定にあたっては、必要に応じて積層体の背面(A層の表面とは反対側の表面)に適当な裏打ち材を貼り付けて試験片を補強することができる。裏打ち材としては、例えば、厚さ25μm程度のPETフィルムを用いることができる。
[膜厚の測定]
酸化ケイ素の膜厚は、X線反射率法を測定原理とし、以下の測定条件にて粉末X線回折装置(リガク社製、装置名「RINT-2000」)にてX線反射率を測定し、取得した測定データを解析ソフト(リガク社製、「GXRR3」)で解析することで算出する。解析条件は以下の条件とし、高分子フィルム基材と密度2.3g/cm3の酸化ケイ素膜の2層モデルを採用し、酸化ケイ素膜の膜厚と表面粗さ、基材フィルムの表面粗さを変数として、最小自乗フィッティングを行い、酸化ケイ素層の厚さを解析する。
(測定条件)
光源: Cu-Kα線(波長:1.5418Å)、40kV、40mA
光学系: 平行ビーム光学系
発散スリット: 0.05mm
受光スリット: 0.05mm
単色化・平行化: 多層ゲーベルミラー使用
測定モード:θ/2θスキャンモード
測定範囲(2θ):0.3~1.5°
(解析条件)
解析手法: 最小自乗フィッティング
解析範囲(2θ): 2θ=0.3~1.5°
[水接触角の測定]
基材層材料の親水層表面の水接触角は、次のとおり測定する。すなわち、測定雰囲気23℃、50%RHの環境下において、接触角計(協和界面科学社製、商品名「DMo-501型」、コントロールボックス「DMC-2」、制御・解析ソフト「FAMAS(バージョン5.0.30)」)を用いて液滴法により測定を行う。蒸留水の滴下量は2μLとし、滴下5秒後の画像からΘ/2法により接触角を算出する(N5で実施)。
[水剥離性]
剥離強度N0[N/10mm]および水剥離力N2[N/10mm]を式:
水剥離力低下率[%]=(1-(N2/N0))×100;
に代入し、水剥離力低下率が40%以上のものを「○」と評価し、40%未満のものを「×」と評価する。
<基材層材料の作製>
(調製例A1~A5)
PETフィルム基材A(PET-A;三菱ケミカル社製、商品名「LC-N50JBN」、厚み50μm)上に、RF(Radio-Frequency)マグネトロンスパッタにて、三井金属社製のSiメタルターゲットから酸化ケイ素膜を成膜した。スパッタガスにはアルゴンと酸素を用い、酸素/アルゴン比率は5.3vol%とした。上記の条件で成膜時間を調整することで、膜厚の異なる酸化ケイ素膜を形成し、調製例A1~A5にそれぞれ対応する基材層材料A1~A5を得た。
(調製例A6~A8)
基材として、PETフィルム基材B(PET-B;三菱ケミカル社製、商品名「ダイアホイル O300E」、厚み125μm)を用いた他は調製例A3~A5と同様にして、PETフィルム上に酸化ケイ素膜を成膜した。上記の条件で成膜時間を調整することで、膜厚の異なる酸化ケイ素膜を形成し、調製例A6~A8にそれぞれ対応する基材層材料A6~A8を得た。
(調製例A9~A11)
ALD(原子層堆積)装置(Picosun社製、装置名「R200」)を用いて、PETフィルム基材B(PET-B;三菱ケミカル社製、商品名「ダイアホイル O300E」、厚み125μm)の表面に酸化ケイ素膜を形成した。酸化ケイ素の前駆体としてはビス(ジエチルアミノ)シラン(日本エア・リキード社製、製品名「SAM24」)を用いた。具体的な反応ステップとしては、まず気化した前駆体をチャンバー内に導入した後、真空排気と窒素ガスパージを行った。続いて、酸素プラズマを導入した後、真空排気と窒素ガスパージを行った。上記の反応ステップを繰り返し、ステップ数を調整することで上記基材の表面に膜厚の異なる酸化ケイ素膜を形成し、調製例A9~A11にそれぞれ対応する基材層材料A9~A11を得た。
(調製例A12~A14)
基材としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製、商品名「TD80UL」、厚み80μm、屈折率1.49)を用いた他は調製例A9~A11と同様にして、TACフィルム上に酸化ケイ素膜を形成した。反応ステップ数を調整することで基材の表面に膜厚の異なる酸化ケイ素膜を形成し、調製例A12~A14にそれぞれ対応する基材層材料A12~A14を得た。
(調製例A15)
基材としてのTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「TD80UL」、厚み80μm、屈折率1.49)の表面に、ワイヤーバー#5(rds社製)を用いて親水コーティング剤を塗布した後、120℃で2分間乾燥させることにより、厚さ0.2μm~0.5μmの親水コーティング層を形成した。上記親水コーティング剤としては、コルコート社製の商品名「コルコート N-103X」を使用した。このようにして、親水コーティング層(ポリシロキサン系コーティング層)を有するTACフィルムA15を得た。
(調製例A16~A18)
基材として透明ポリイミド(CPI)フィルム(KOLON INDUSTIES INC. 製、商品名「C_80」、厚み80μm)を用いた他は調製例A9~A10と基本的に同様にして、CPIフィルム上に酸化ケイ素膜を形成した。反応ステップ数を調整することで基材の表面に膜厚の異なる酸化ケイ素膜を形成し、調製例A16~A18にそれぞれ対応する基材層材料A16~A18を得た。
(調製例A19~A21)
基材として偏光板(日東電工社製、商品名「REGQ-HC3」、厚み92μm)を用いた他は調製例A16~A18と同様にして、偏光板上に酸化ケイ素膜を形成した。反応ステップ数を調整することで基材の表面に膜厚の異なる酸化ケイ素膜を形成し、調製例A19~A21にそれぞれ対応する基材層材料A19~A21を得た。
<粘着剤の作製>
(調製例B1)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)64.5部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)6部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)15部、イソステアリルアクリレート(iSTA)5部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)14.9部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール0.07部、重合溶媒として酢酸エチル122部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが60万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。
上記で得られた溶液に、該溶液の調製に使用したモノマー成分100部あたり、光反応性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「A-DPH」)1.0部およびポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「APG-400」)3.0部、光反応触媒(光反応開始剤)として1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Regins社製、商品名:オムニラッド184)0.22部、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、商品名:タケネートD-110N、固形分濃度75%)を固形分基準で0.16部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、商品名:エンビライザーOL-1)0.011部、架橋遅延剤としてアセチルアセトン3.33部、アクリル系オリゴマー0.4部、および水親和剤として非イオン性界面活性剤A(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB13.3、商品名:レオドールTW-L106、花王社製)0.3部を加え、均一に混合して、本調製例に係る溶剤型粘着剤組成物B1を調製した。
上記アクリル系オリゴマーとしては、以下の方法で合成したものを使用した。
[アクリル系オリゴマーの合成]
トルエン100部、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)(商品名:FA-513M、日立化成工業社製)60部、メチルメタクリレート(MMA)40部、および連鎖移動剤としてα-チオグリセロール3.5部を4つ口フラスコに投入した。そして、70℃にて窒素雰囲気下で1時間攪拌した後、熱重合開始剤としてAIBN0.2部を投入し、70℃で2時間反応させ、続いて80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃の温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去することにより、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。このアクリル系オリゴマーのTgは144℃であり、Mwは4300であった。
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルム(三菱樹脂社製、MRF#38)と、ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルム(三菱樹脂社製、MRE#38)とを用意した。一方の剥離フィルム(MRF#38)の剥離面に、上記で調製した溶剤型粘着剤組成物B1を塗布し、60℃で3分間、次いで120℃で3分間乾燥させて、厚さ150μmの光硬化性粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、他方の剥離フィルム(MRE#38)の剥離面を貼り合わせて保護した。このようにして、2枚の剥離フィルムに表面が保護された粘着剤層B1を得た。
(調製例B2)
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)85部、メチルアクリレート(MA)13部、アクリル酸(AA)1.2部、メタクリル酸(MAA)0.8部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-503)0.02部、連鎖移動剤としてのt-ドデシルメルカプタン0.048部および乳化剤(花王社製、ラテムルE-118B)2.0部を、イオン交換水100部中で混合して乳化することにより、モノマー混合物の水性エマルション(モノマーエマルション)を調製した。
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に上記モノマーエマルションを入れ、窒素ガスを導入しながら室温にて1時間以上攪拌した。次いで、系を60℃に昇温し、重合開始剤として2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業社製、VA-057)0.1部を投入し、60℃で6時間反応させて、アクリル系ポリマーの水分散液を得た。系を常温まで冷却した後、上記アクリル系ポリマーの水分散液の固形分100部あたり、粘着付与樹脂エマルション(荒川化学工業社製、スーパーエステルE-865NT、軟化点160℃の重合ロジンエステルの水分散液)を固形分で30部添加した。さらに、pH調整剤としての10%アンモニア水および増粘剤としてのポリアクリル酸(不揮発分36%の水溶液)を使用して、pHを約7.5、粘度を約9Pa・sに調整することにより、本調製例に係るエマルション型粘着剤組成物B2を調製した。
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルム(三菱樹脂社製、MRF#38)と、ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルム(三菱樹脂社製、MRE#38)とを用意した。一方の剥離フィルム(MRF#38)の剥離面に粘着剤組成物B2を塗布し、120℃で3分間乾燥させて、厚さ20μmの粘着剤層B2を形成した。この粘着剤層に、他方の剥離フィルム(MRE#38)の剥離面を貼り合わせて保護した。このようにして、2枚の剥離フィルムに表面が保護された粘着剤層B2を得た。
<例1-1~例1-21>
上記で得た光硬化性粘着剤層B1の一方の表面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせて裏打ちした。これを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットし、次いで、23℃、50%RHの環境下において、上記光硬化性粘着剤層B1の他方の表面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面を、基材層材料A1~A21の各々の親水層形成面に2kgのゴムローラーを一往復させて圧着することにより、光硬化性粘着剤層と基材層とを積層し、例1-1~1-21に係る積層体を得た。各例の積層体の粘着面(基材層側表面の反対面)にはPETフィルム(裏打ちフィルム)が積層されている。
<例1-22~例1-26>
PETフィルム基材A(PET-A;三菱ケミカル社製、商品名「LC-N50JBN」、厚み50μm)、PETフィルム基材B(PET-B;三菱ケミカル社製、商品名「ダイアホイル O300E」、厚み125μm)、TACフィルム(富士フィルム社製、商品名「TD80UL」、厚み80μm、屈折率1.49)、CPIフィルム(KOLON INDUSTIES INC.製、商品名「C_80」、厚み80μm)および偏光板(日東電工社製、商品名「REGQ-HC3」、厚み92μm)の各々の一方の面にコロナ処理を施した。具体的には、コロナ処理は、上記基材層材料をテーブル式表面コロナ処理装置(KASUGA社製、装置名「AGF-012」)に、出力設定3(表示0.17kW)、テーブルスピード目盛り20(速度3m/min相当)の条件で1回通すことにより行った。また、上記で得た光硬化性粘着剤層B1の一方の表面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせて裏打ちした。これを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした。次いで、上記コロナ処理直後(コロナ処理後30分以内に)、23℃、50%RHの環境下において、上記光硬化性粘着剤層B1の他方の表面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面を、上記基材層材料のコロナ処理面に2kgのゴムローラーを一往復させて圧着することにより、光硬化性粘着剤層と基材層とを積層し、例1-22~1-26に係る積層体を得た。各例の積層体の粘着面(基材層側表面の反対面)にはPETフィルム(裏打ちフィルム)が積層されている。
<例1-27~例1-30>
上記で得た光硬化性粘着剤層B1の一方の表面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り合わせて裏打ちした。これを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットし、次いで、23℃、50%RHの環境下において、上記光硬化性粘着剤層B1の他方の表面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面を、PETフィルム基材A(PET-A;三菱ケミカル社製、商品名「LC-N50JBN」、厚み50μm)、PETフィルム基材B(PET-B;三菱ケミカル社製、商品名「ダイアホイル O300E」、厚み125μm)、CPIフィルム(KOLON INDUSTIES INC. 製、商品名「C_80」、厚み80μm)および偏光板(日東電工社製、商品名「REGQ-HC3」、厚み92μm)の各々の一方の面に2kgのゴムローラーを一往復させて圧着することにより、光硬化性粘着剤層と基材層とを積層し、例1-27~1-30に係る積層体を得た。各例の積層体の粘着面(基材層側表面の反対面)にはPETフィルム(裏打ちフィルム)が積層されている。
<例2-1~例2-24>
粘着剤層として、光硬化性粘着剤層B1に代えて粘着剤層B2を用いた他は例1-1~1-21、1-27~1~28,1-30と同様にして、各例に係る積層体を得た。
<性能評価>
各例に係る積層体について、剥離強度N0[N/10mm]および水剥離力N2[N/10mm]を測定し、また、水剥離性の評価を行った。結果を表1および2に示す。各表には、各例の概要と、基材層における親水層の膜厚[nm]および粘着剤層積層前における基材層の粘着剤層側表面の水接触角[°]もあわせて示す。また、各例の積層体につき、水浸漬後剥離強度N1[N/10mm]を測定した。
表1,2に示されるように、基材層表面に親水層を設けた例1-1~1-21に係る積層体では、検討したすべての基材材料において、粘着剤層と基材層とが十分な剥離強度で接着しており、かつ水剥離性にも優れていた。これに対して、基材層表面にコロナ処理を施した例1-22~1-26に係る積層体は良好な水剥離性を得ることができなかった。コロナ処理を施さなかった例1-27~1-30についても同様であった。また、エマルション型粘着剤を使用した例2-1~2-24についても、基材層表面に親水層を設けた例2-1~2-21の積層体は、親水層を有しない例2-22~2-24と比べて、優れた水剥離性を有していた。また、上記例2-1~2-21では、粘着剤層と基材層とが十分な剥離強度で接着していた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。