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JP7640413B2 - 肥料用組成物およびその製造方法 - Google Patents
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JP7640413B2 - 肥料用組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、肥料用組成物およびその製造方法に関し、詳しくは酵母を利用した肥料組成物およびその製造方法に関する。
酵母は、豊富な栄養分を含み、抽出した核酸やアミノ酸、ペプチドなどを植物やキノコの成長剤として利用することが提案されている(例えば、特許文献1~3)。また、酵母の細胞壁にはグルカンやマンナン成分が含まれているため、これらを植物成長剤として使用することが提案されている(例えば、特許文献4)。
リグニンは、植物細胞壁などに含まれている芳香族ポリマーであり、天然に豊富に存在するバイオマス資源である。従来、リグニンは、紙パルプ製造プロセスで排出される黒液から回収され、主にボイラーなどの燃料として利用されてきたが、現在、より広い用途開発が進められている。リグニンの主な供給元は木材であり、サスティナブル(Sustainable)な、言い換えると持続可能な開発に適した資源として期待が高まっている。リグニンは、芳香族ポリマーであることから、例えば、化学薬品や樹脂、ゴム等の原料など様々な分野での利用が期待されている。
植物の栽培に関する分野におけるリグニンの利用としては、例えば、植物保水材や土壌改良剤として使用(例えば、特許文献5)、植物生育促進剤としての使用(例えば、特許文献6)などが提案されている。
国際公開第2016/148193号 特開2002-262663号公報 特開2013-021989公報 国際公開第2006/059683号 特開平9-227301号公報 特許第6498853号公報
上記のように、酵母由来成分およびリグニン由来成分は、様々な用途に利用が試みられてきた。しかしながら、これまでは、それぞれ別々に利用されるに留まっており、両者を合わせて用いることについては、研究開発が進んでいない未知の領域であった。
本発明者らは、植物育成のための新たな肥料組成物について幅広く鋭意研究を進めていたところ、リグニン由来成分は、所望の効果が土壌中では持続性が短いことがあるということを見出した。
以上のような状況に鑑み、解決しようとする課題の1つは、優れた特性を備えた新たな肥料組成物を提供することにある。
また、解決しようとする更なる課題の1つは、リグニン由来成分を植物の育成に用いる場合において、リグニン由来成分の効果の持続性を高めることにある。
本開示中に提示される発明は、多面的にいくつかの態様として把握しうるところ、課題を解決するための手段として、例えば、下記のように具現化しうる態様を含む。以下、本開示中に提示される発明のことを「本発明」ともいう。
〔1〕 重量平均分子量5,000~100,000の核酸と、
酵母細胞壁成分と、
リグニンスルホン酸又はその塩と、
を含む肥料用組成物。
〔2〕 リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が、1~30重量%である、上記〔1〕に記載の肥料用組成物。
〔3〕 前記核酸が、リボ核酸である、上記〔1〕または〔2〕に記載の肥料用組成物。
〔4〕 さらに、アミノ酸を含む、上記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の肥料用組成物。
〔5〕 さらに、亜硫酸塩を含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の肥料用組成物。
〔6〕 重量平均分子量5,000~100,000の核酸と、酵母細胞壁成分と、リグニンスルホン酸又はその塩とを混合することを含む、肥料用組成物の製造方法。
〔7〕 酵母を脱核処理して核酸と脱核酵母とに分離して回収し、前記重量平均分子量5,000~100,000の核酸と前記酵母細胞壁成分とをそれぞれ用意することを含む、上記〔6〕に記載の肥料用組成物の製造方法。
〔8〕 重量平均分子量5,000~100,000の核酸と、酵母細胞壁成分と、リグニンスルホン酸又はその塩とを含む肥料用組成物の製造方法であって、
リグニンスルホン酸又はその塩を含む培地で酵母を培養することと、
前記酵母をアルカリ処理することと、
前記リグニンスルホン酸又はその塩を含む培地と、前記酵母由来の核酸と、前記酵母由来の酵母細胞壁成分とを含む混合物を回収することと、
を含む、前記製造方法。
〔9〕 上記〔8〕に記載の製造方法において回収された混合物を含有する肥料用組成物。
本開示中に提示される発明の一態様によれば、酵母由来成分およびリグニン由来成分を用い、サスティナブル性が高く、且つ優れた効果を発揮する新たな肥料組成物を提供することができる。
本開示中に提示される発明の一態様において、葉菜類の味質を向上することができる。また、本開示中に提示される発明の一態様において、果菜類、根菜類などの作物の増収効果が得られる。また、本開示中に提示される発明の一態様において、微量元素の欠乏を改善することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本開示において、特に断らない限り、数値範囲に関し、「MM~NN」という記載は、「MM以上NN以下」を示すこととする(ここで、「MM」および「NN」は任意の数値を示す)。また、下限および上限の単位は、特に断りない限り、後者(すなわち、ここでは「NN」)の直後に付された単位と同じである。また、本開示において、「Xおよび/またはY」との表現は、XおよびYの双方、またはこれらのうちのいずれか一方のことを意味する。
1.肥料用組成物
本発明の一実施形態は、肥料用組成物でありうる。本開示において、「肥料用組成物」は、そのまま「肥料」として用いる実施形態と、他の肥料に混合して用いる「肥料添加物」として用いる実施形態を含む。発明の一実施形態において、肥料用組成物は、重量平均分子量5,000~100,000の核酸と、酵母細胞壁成分と、リグニンスルホン酸又はその塩とを含有する。
肥料用組成物の用途は、肥料に関して用いられる様々な態様を含み、例えば、対象とする植物に特に制限はない。対象とする植物としては、例えば、果樹類、野菜類、穀物類、花卉類などが含まれる。本発明の一実施形態において、窒素(N)成分の吸収を補助することが期待され、例えば、葉菜類などの肥料として好適でありうる。また本発明の一実施形態において、リグニンスルホン酸又はその塩にはキレート作用があり、無機成分または微量元素類の欠乏を改善することが期待される。
本発明者らは、リグニン由来成分を単独で用いると、その効果が土壌中では持続性が短い場合があるということを見出した。本発明者らは、その原因の1つとして、リグニン由来成分には、リグニンスルホン酸などのキレート作用を有する成分が含まれており、そのため灌水などの水の供給によって流出しやすいことにあると見出した。作用機序は必ずしも明確ではないが、酵母をリグニン由来成分を含む培地で培養することにより、リグニン由来成分が酵母内に取り込まれ、または、酵母の細胞壁に付着して、集菌して加工した後も酵母細胞壁成分などに残留するため、リグニンスルホン酸又はその塩などのリグニン由来成分が流出しにくくなると推定される。
本発明の一実施形態において、肥料用組成物は核酸を含有する。核酸を肥料用組成物中に配合することにより、土壌微生物の作用を介して分解等が進み、優れた肥効を発揮することができる。
核酸は、高分子としての核酸だけではなく、核酸の構成単位であるヌクレオチドであってもよいが、ある程度大きい分子が好適である。好適な一実施形態としては、例えば、重量平均分子量(Mw)5,0000~100,000の範囲内である核酸分子が肥料組成物中に含まれていることが挙げられる。
核酸の重量平均分子量(Mw)の下限は、好ましくは5,000以上、より好ましくは6,000、7,000、8,000、または9,000以上、更に好ましくは10,000、15,000または20,000以上でありうる。
核酸の重量平均分子量(Mw)の上限は、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは、70,000、60,0000、または50,000以下でありうる。
核酸の重量平均分子量(Mw)は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めることができる。
核酸を構成する糖の種類は、デオキシリボースおよびリボースのいずれでもよい。すなわち、核酸はデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)のいずれでもよい。核酸を構成する塩基の種類としては、主要なものとしてアデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシルが挙げられる。ヌクレオチドを構成するリン酸は、一リン酸であっても、複数のリン酸で構成されていてもよい。核酸として、市販品を用いてもよい。核酸は、1種を単独で配合してもよいし、複数種を混合して配合してもよい。核酸として好ましくは、リボ核酸を用いうる。
核酸の由来は特に制限はなく、人工合成したものでもよいし、天然物由来のものであってもよい。例えば、酵母などの微生物から抽出または精製したものを用いてもよい。廃材とされた生物資源、例えば廃材とされた木材に含まれる木質糖分を用いて酵母などの微生物を増殖し、核酸を得て、肥料用組成物に配合して用いることにより、廃材とされていたものを有用物質に転換することができ、持続可能な循環型社会の形成に寄与することができる。
肥料用組成物中における核酸の含有量は、肥料用組成物の用途に応じて適宜調整してよい。例えば、肥料と肥料用添加物とでは、含有量が異なるのが一般的であろう。例として、肥料用組成物を肥料として用いる場合の核酸の含有量の目安を示すと、次のとおりである。
肥料用組成物中における核酸の含有量の下限は、好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは5、6、または7重量%以上であり、さらに好ましくは8、9、または10重量%以上でありうる。
肥料用組成物中における核酸の含有量の上限は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下でありうる。
好ましい実施形態としては、上記にて示した好ましい重量平均分子量(例えば、5,000~100,000)を有する核酸を、ここに示す好ましい含有量含んでいる肥料組成物を例示しうる。
本発明の一実施形態において、肥料用組成物は酵母細胞壁成分を含有する。酵母細胞壁成分は、果菜類、根菜類などの増収に寄与することができる。
「酵母細胞壁成分」との用語は、酵母に由来する細胞壁の一部若しくは全体、または繊維質成分を意味する。酵母細胞壁成分は、酵母菌体から核酸を脱核処理して得られる脱核酵母であってもよいし、酵母の外殻形状を留めた細胞壁であってもよし、または外殻形状を留めない程度にまで細胞壁を粉砕したものであってもよい。
肥料用組成物中における酵母細胞壁成分の含有量は、肥料用組成物の用途に応じて適宜調整してよい。例えば、肥料と肥料用添加物とでは、含有量が異なるのが一般的であろう。例として、肥料用組成物を肥料として用いる場合の酵母細胞壁成分の含有量の目安を示すと、次のとおりである。
肥料用組成物中における酵母細胞壁成分の含有量の下限は、好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、さらに好ましくは10重量%以上でありうる。
肥料用組成物中における酵母細胞壁成分の含有量の上限は、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下でありうる。
肥料用組成物における、核酸および酵母細胞壁成分の原料として、酵母を用いうる。用いうる酵母の種類は、有胞子酵母類であっても無胞子酵母類であってもよい。酵母として、具体的には下記のような種類が例示される。
有胞子酵母類としては、例えば、シゾサッカロミセス(Shizosaccharomyces)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クリヴェロミセス(Kluyveromyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、ピヒア(Pichia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびリポミセス(Lipomyces)属の酵母が挙げられ、より具体的には、シゾサッカロミセス・ポンビ(Shizosaccharomyces pombe)、シゾサッカロミセス・オクトスポルス(Shizosaccharomyces octosporus);サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・ルーキシイ(Saccharomyces rouxii);クリヴェロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クリヴェロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis);ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala);ピヒア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens);デバリオミセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii);およびリポミセス・スタルケイ(Lipomyces starkeyi)などが挙げられる。
無胞子酵母類としては、例えば、トルロプシス(Torulopsis)属、カンジダ(Candida)属、およびロードトルラ(Rhodotorula)属の酵母が挙げられ、より具体的には、トルロプシス・ヴェルサテリス(Torulopsis versatilis);カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ユチリス(Candida utilis);ロードトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)などが挙げられる。
なお、カンジダ(Candida)属の酵母は、分類学上、トルラ酵母(torula yeast)とも言われ、サイバリンドネラ(Cyberlindnera)属の酵母として分類されることがある。
用いうる酵母として好ましくは、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、パン酵母、トルラ酵母等が挙げられ、より具体的にはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・ルーキシイ(Saccharomyces rouxii);クリヴェロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、トルロプシス・ヴェルサテリス(Torulopsis versatilis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)、ロードトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)などが挙げられる。
なお、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)は、分類学上、トルラ酵母の1種として、(Cyberlindnera jadinii)に分類されることがある。
本発明の一実施形態において、肥料用組成物は、リグニンスルホン酸またはその塩を含有する。リグニンスルホン酸又はその塩を配合することにより、酵母を原料とする肥料用組成物の腐敗を抑制することができる。
リグニンスルホン酸は、リグニンのヒドロキシフェニルプロパン構造の側鎖α位の炭素が開裂してスルホ基が導入された骨格を有する化合物である。リグニンスルホン酸は、塩の形態でありうる。すなわち、リグニンスルホン酸は、塩の形態で肥料組成物に添加してもよい。リグニンスルホン酸塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム・ナトリウム混合塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などが挙げられる。リグニンスルホン酸又はその塩は、例えば、製紙産業で生じる亜硫酸パルプ排液などから得ることができる。また、本発明において用いられるリグニンスルホン酸又はその塩は、スルホン基、カルボキシル基、およびフェノール性水酸基等の官能基を有する高分子電解質で変性されたリグニンスルホン酸又はその塩であってもよい。
肥料用組成物中におけるリグニンスルホン酸又はその塩の含有量は、肥料用組成物の用途に応じて適宜調整してよい。例えば、肥料と肥料用添加物とでは、含有量が異なるのが一般的であろう。一律に定めるのは難しいが、例として、肥料用組成物を肥料として用いる場合のリグニンスルホン酸又はその塩の含有量の目安を示すと、次のとおりである。
肥料用組成物中におけるリグニンスルホン酸又はその塩の含有量の下限は、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5重量%以上でありうる。
肥料用組成物中におけるリグニンスルホン酸又はその塩の含有量の上限は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下でありうる。
肥料用組成物の他の好ましい一実施形態として、アミノ酸を含む組成物としてもよい。アミノ酸を配合することにより、味質の良い農作物の栽培に寄与することでき、農作物の中でも、葉物野菜の味質向上に好適である。肥料用組成物に含まれるアミノ酸は、好ましくは、酵母由来のアミノ酸を用いることができる。
肥料用組成物の他の好ましい一実施形態として、亜硫酸塩を配合してもよい。亜硫酸塩を配合することは、肥料組成物に対する酸化抑制および雑菌の繁殖抑制などに寄与しうる。
その他、肥料用組成物には、必要に応じ任意成分として、水分、油分、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、色材、香料、賦形剤、ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類、抗生物質、抗菌剤、殺菌剤、殺虫剤などを配合してもよい。
肥料用組成物は、一般に、肥料または肥料用添加物として採用される形状でありうる。肥料用組成物の形状としては、例えば、粉体、顆粒、マッシュ、ペレット、クランブル、およびフレークなどが挙げられる。肥料用組成物の形態は、単一形態であってもよいし、上記のような形態のうちの2つ以上の形態のものの混合形態、例えば、ペレットとフレークの混合物、マッシュとペレットの混合物などとしてもよい。
肥料用組成物は、例えば、肥料または肥料添加物として用いうる。
肥料として用いる場合、上述の核酸、酵母細胞壁成分、およびリグニンスルホン酸又はその塩を含む混合物をそのまま肥料として用いてもよい。
また、肥料用組成物を肥料として用いる場合、肥料用組成物には主たる肥料成分(以下、主要肥料成分ともいう。)を配合してもよい。主要肥料成分としては、例えば、窒素(N)、リン(P)、カリ(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、硫黄(S)などが挙げられる。また、肥料として用いられる微量要素などを配合してもよい。肥料用の微量要素としては、例えば、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ほう素(B)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、および銅(Cu)などが挙げられる。これらのうちの一部は、リグニンスルホン酸塩に含まれる無機成分という実施形態によって供給することができる。
また、肥料用組成物を肥料用添加物として用いる場合、窒素-リン酸-加里を主成分とする一般的な肥料に、添加剤として加えてもよい。
本発明の好ましい一実施形態として、肥料用組成物は有機肥料とすることができる。核酸、酵母細胞壁成分、およびリグニンスルホン酸又はその塩は、それぞれ有機成分であるので、これら3つの成分を含む肥料用組成物は、そのまま有機肥料として用いることができる。これらの成分は、以下に説明するように、製造方法の一実施形態として、酵母の培養を利用して製造することもでき、持続可能性の高い(サスティナブルな)生産が可能な肥料である。また、本発明の一実施形態として、肥料用組成物には、他の有機肥料成分を配合してもよい。他の有機肥料成分としては、例えば、油粕、鶏糞、魚粉、米ぬか、および草木灰などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を適宜組み合わせて、本開示の肥料用組成物に配合してもよい。
本発明の他の一実施形態として、肥料用組成物に、いわゆる化学肥料を配合してもよい。本開示において、化学肥料とは、無機原料を用いて工業的な工程を経て製造される肥料のことをいう。化学肥料としては、例えば、硫安、尿素、硝安、石灰窒素などの窒素系肥料、過リン酸石灰、熔成リン肥などのリン酸系肥料、硫酸カリウム、塩化カリウムなどのカリ系肥料、消石灰、炭酸カルシウム、苦土石灰などの石灰質肥料、および、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの苦土肥料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を適宜組み合わせて、本開示の肥料用組成物に配合してもよい。
2.肥料用組成物の製造方法
本発明のいくつかの実施形態のうちには、上記肥料用組成物を製造する方法が含まれる。
<製造方法に関する第1の実施形態>
本発明における製造方法の第1の実施形態は、重量平均分子量5,000~100,000の核酸と、酵母細胞壁成分と、リグニンスルホン酸とを混合することを含む。
最終的に、核酸と酵母細胞壁成分とリグニンスルホン酸の三成分が混合されればよく、各成分を1つ1つ混ぜ合わせてもよいし、各成分を同時に加えて混ぜてもよい。核酸、酵母細胞壁成分、およびリグニンスルホン酸については、上述したとおりである。各成分は個別に用意しいてもよいし、酵母を培養し、当該酵母を原料として核酸および酵母細胞壁を用意してもよい。
例えば、第1の実施形態の変形例として、酵母を脱核処理して核酸と脱核酵母とに分離して回収し、重量平均分子量5,000~100,000の核酸と酵母細胞壁成分とをそれぞれ用意してもよい。このようにして用意した核酸と酵母細胞壁成分に加えて、リグニンスルホン酸又はその塩を添加して、肥料用組成物を得ることができる。
脱核処理は、例えば、アルカリ薬品や食塩水、細胞壁溶解酵素などを酵母に接触させることにより、酵母の細胞壁を溶解し、酵母の内容物を培地中に溶出させ、細胞壁成分とその他の成分に分離するなどの方法によって、行うことができる。分離した成分は、必要に応じて、精製し、粉末化してもよい。
本発明の一実施形態としては、核酸と酵母細胞壁成分とを配合する場合、酵母の菌体をそのまま配合してもよいし、核酸と酵母細胞壁成分とを一旦分離してから配合し直してもよい。
アルカリ処理の方法は、酵母抽出物を得るために用いられる通常の方法を用いてよい。すなわち、アルカリ薬品を用いて酵母の細胞壁の一部又は全部を溶解又は破損させて、酵母菌体内の成分が溶出するようにすればよい。好ましいアルカリ薬品としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
製造法の第1の実施形態によれば、腐敗しにくい肥料用組成物を廉価に製造することができる。また、製造方法の第1の実施形態では、リグニンスルホン酸又はその塩の添加量を容易に調整できる。したがって、リグニンスルホン酸又はその塩の添加量を少なくしたい場合、例えば、10重量%、8重量%、または5重量%以下程度に抑えたい場合には、第1の実施形態は実施が容易である。
<製造方法に関する第2の実施形態>
本発明における製造方法の第2の実施形態は、以下の工程:
酵母をリグニンスルホン酸又はその塩を含む培地で培養することと、
前記酵母をアルカリ処理することと、
前記リグニンスルホン酸又はその塩を含む培地と、前記酵母由来の核酸と、前記酵母由来の酵母細胞壁成分とを含む混合物を回収することと、
を含む。
製造方法の第2の実施形態では、酵母を培養する培地中にリグニンスルホン酸又はその塩を配合する。リグニンスルホン酸又はその塩を培地中に配合することにより、酵母培養中に酵母が腐敗することを抑制することができる。また、リグニンスルホン酸又はその塩を含む培地ごと回収して肥料用組成物とするため、肥料用組成物もまた腐敗しにくいものとすることができる。
酵母の培養に用いる培地は、一般に酵母の培養に用いられているものにリグニンスルホン酸又はその塩を加えればよい。培地に配合するリグニンスルホン酸又はその塩の含有量の下限は、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5重量%以上でありうる。培地に配合するリグニンスルホン酸又はその塩の含有量の上限は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下でありうる。
十分な量の酵母を培養したら、第1の実施形態と同様に、酵母をアルカリ処理することにより、核酸を培地中に溶出させる。
アルカリ処理の後、リグニンスルホン酸又はその塩を含む培地と、前記酵母由来の核酸と、前記酵母由来の酵母細胞壁成分とをまとめて回収し、核酸と酵母細胞壁成分とリグニンスルホン酸又はその塩の三成分を含む混合物を得ることができる。アルカリ処理の後、回収の前または後において、肥料用に適したpHに調整することが好ましい。
第2の実施形態は、上記の三成分を含む混合物を得るための工程数を少なくするができるため、低コストで肥料用組成物を簡便に製造できる。
また、第2の実施形態によって製造された肥料用組成物は、酵母をリグニンスルホン酸又はその塩を含む培地で培養するため、酵母細胞壁の内外にリグニンスルホン酸又はその塩が付着し、ごく緩やかな結合関係にある複合体を形成しうる。そのため、このようにして得られた肥料用組成物は、土壌又は培地へ施肥された後において、酵母細胞壁に付着したリグニンスルホン酸またはその塩が、遊離のリグニンスルホン酸又はその塩よりも、灌水または降雨などによって土壌等から流出しにくいものと推定される。
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、本開示における本発明の技術的範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
1.肥料の調製
<実施例1(肥料1)>
RNA製剤(製品名:RNA-M、日本製紙社製)と、脱核酵母製品(製品名:カビトルラ、日本製紙社製)を重量比で1:9になるように計量し、ブレンダーで混合したものを調製し、実施例1(肥料1)とした。なお、「カビトルラ」の脱核酵母にはリグニンスルホン酸塩が含まれている。
<実施例2(肥料2)>
原料酵母(Cyberlindnera jadinii)を糖濃度3%、リグニンスルホン酸濃度10%の亜硫酸パルプ排液培地を用いて培養し、酵母を集菌した。酵母の集菌物中に、リグニンスルホン酸又はその塩は、リグニンスルホン酸換算で、重量あたり20%含有されていた。その後、得られた酵母3000gを95℃の沸騰浴内で10分間攪拌して、菌体内酵素を失活させた。その後、55℃に温度調整したウォーターバス内で48%NaOH水溶液にてpH=8.5に調整後、2時間攪拌にてアルカリ抽出反応を実施した。反応後、35%HClでpHを7.0に調整した。その後、ダブルドラムドライヤー(表面温度120℃、3rpm)にて乾燥し、フィルム化した乾燥物を乳鉢ですりつぶして乾燥品(粉末)を得た。当該粉末は、当該酵母に由来する核酸と、脱核した酵母細胞壁と、培養に用いたリグニンスルホン酸又はその塩を含む。当該粉末を実施例2(肥料2)とした。
肥料の成分分析を以下のようにして行った。
<可溶性核酸・不溶性核酸の分析>
各肥料を水懸濁して得られた可溶成分及び不溶成分の核酸は、Schmidt-Thannhauser-Schneider法による高分子核酸の定量法(「東京大学出版会 生物化学実験法」1969年初版P16~P28参照)に従って測定した。なお、「可溶性核酸」は総じて相対的に高分子の核酸(例えば、重量平均分子量、約10,000~50,000程度)と、総じて相対的に低分子の核酸(例えば、重量平均分子量、約10,000未満程度)の分子量ごとに区分して測定可能である。
<リグニンスルホン酸マグネシウム塩の分析>
一般にリグニンの構造中には芳香核に結合したメトキシル基が存在する。そのため、メトキシル基含量は、リグニン含量の指標となる。例えばメトキシル基含量は、ViebockおよびSchwappach法によるメトキシル基の定量法(「リグニン化学研究法」、P.336~340、平成6年、ユニ出版(株)発行、参照)によって測定し、測定されたメトキシル基の含有量からリグニンスルホン酸Mg量を定量した。
<βグルカンの分析>
日本バイオコン(株)社製のβグルカン(β-1,3:-1,6酵母型)アッセイキットに記載の方法を用いて測定した。
<N(窒素)の分析>
肥料等試験法(農林水産省農業環境技術研究所法 2018)指定の4.1.1.a法(ケルダール法)にて窒素全量を求めた。
<P(リン)の分析>
肥料等試験法(農林水産省農業環境技術研究所法 2018)指定の4.2.1.a法(バナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法)にてリン酸全量(P25)を求めた。
<K(カリ)の分析>
肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法 1992)指定の7.5法(誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法による各種元素の定量法)にて加里全量(K2O)を求めた。
実施例1および2の分析値を表1に示す。なお、「P」は「P25」としての分析値であり、「K」は「K2O」としての分析値である。
Figure 0007640413000001
<遊離アミノ酸の分析>
実施例1または2の肥料中に含まれる遊離アミノ酸の含有量は、アミノ酸測定用HPLCにより測定し、下記式1で求めた。
<式1>
遊離アミノ酸含有量(重量%)=遊離アミノ酸重量(g)/乾燥重量(g)×100
遊離アミノ酸重量は、高速液体クロマトグラフィーシステム(東ソー(株)製)を用い、以下の条件で定量した。
カラム:TSK-GEL Amino Pak(東ソー社製)
検出:蛍光検出
溶離液:クエン酸バッファーによるグラジエント溶出(pH3→pH9)
遊離アミノ酸の分析結果を表2に示す。
Figure 0007640413000002
2.生育試験(コマツナ)
コマツナを用いて生育試験を行った。以下の2つの試験区を設定した。
<試験区1>
市販の園芸用培養土(製品名:プランタ培土地PD20、ヰセキ関東甲信越社製)を培養土として用いた。肥料として実施例2の肥料を用いた。
<試験区2>
市販の園芸用培養土(製品名:プランタ培土地PD20、ヰセキ関東甲信越社製)を培養土として用いた。肥料として、窒素・リン酸・カリがそれぞれ14重量%配合された市販の高度化成肥料(製品名:高度化成444、清和肥料社製)を用いた。
<育成方法>
試験区1では4Lの培養土に実施例2の肥料50gを添加した。一方試験区2では4Lの培養土に試験区1と同程度の窒素含量となるように、上記高度化成肥料を添加した。その後、3カ月間の生育試験を実施した。温度コントロールは特に行わなかった。
コマツナの生育試験の結果を表3に示す。
Figure 0007640413000003
表3に示されるように、実施例2の肥料を用いた方が、収量が多く、育成具合も良く、また味質も良いことが明らかとなった。
3.生育試験(つるむらさき)
つるむらさきを用いて生育試験を行った。以下の4つの試験区を設定した。
<試験区1>
島根県江津市にある日本製紙江津工場敷地内の土壌を試験として用いた。肥料は添加しなかった。
<試験区2>
島根県江津市にある日本製紙江津工場敷地内の土壌を試験として用いた。肥料として、日本製紙社製リグニンスルホン酸Mg(製品名:P321)を用いた。
<試験区3>
島根県江津市にある日本製紙江津工場敷地内の土壌を試験として用いた。肥料として、実施例1の肥料を用いた。
<試験区4>
島根県江津市にある日本製紙江津工場敷地内の土壌を試験として用いた。肥料として、窒素・リン酸・カリがそれぞれ8重量%配合された市販の高度化成肥料(製品名:三福化成特8号、エルオー社製)を用いた。
<育成方法および味質試験>
プランター(14cm×18cm×11.5cm)に約4.5Lの土壌を入れて各種肥料を30g添加した。その後、つゆむらさきを2株定植した。生育試験は2カ月間実施した。温度コントロールは特には行わなかった。2か月後に丈および葉の大きさを測定し、収穫後、ボイルした葉部の味質試験を実施した。
丈などについての測定結果と実質試験の結果を、表4に示す。
Figure 0007640413000004

Claims (4)

  1. 重量平均分子量5,000~100,000の核酸と、酵母細胞壁成分と、リグニンスルホン酸又はその塩とを含む肥料用組成物の製造方法であって、
    リグニンスルホン酸又はその塩を含む培地で酵母を培養することと、
    前記酵母をアルカリ処理することと、
    前記リグニンスルホン酸又はその塩を含む培地と、前記酵母由来の核酸と、前記酵母由来の酵母細胞壁成分とを含む混合物を回収して前記肥料用組成物を得ることと、
    を含む、前記製造方法。
  2. 酵母を培養する培地中の、リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が1~50重量%である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 酵母を培養する培地が、亜硫酸パルプ排液培地である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記酵母が、カンジダ(Candida)属の酵母である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
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