JP7642201B2 - ポリロタキサン被覆炭素繊維、炭素繊維複合材、及びプレプリグ - Google Patents
ポリロタキサン被覆炭素繊維、炭素繊維複合材、及びプレプリグ Download PDFInfo
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Description
前記炭素繊維(A)と、前記化合物(B)のオキサゾリル基の一部との間に化学結合を有し、
前記ポリロタキサン(C)の環状分子と、前記化合物(B)のオキサゾリル基の一部との間に化学結合を有する。
前記ポリロタキサン(C)と、前記樹脂(D)とが、架橋剤(E)を介して結合している。
なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの総称であり、(メタ)アクリル酸などもこれに準ずる。
本明細書において式(1)で表される基を、単に「基(1)」ということがある。他の置換基、化学式等についてもこれに準ずる。
本発明において環状分子とは、直鎖状分子が貫通し得る環構造を有する分子をいう。また、本発明において環構造とは、環状分子のうち基(1)及び基(2)を除いた部分をいう。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は特に断りのない限りその下限値及び上限値を含むものとする。
本明細書において、組成物中の固形分とは、当該組成物を構成する成分から溶媒を除いたものをいう。
本発明に係るポリロタキサン被覆炭素繊維(以下、本被覆炭素繊維ということがある)は、炭素繊維(A)と、1分子中に2個以上のオキサゾリル基を有する化合物(B)と、環状分子を備えるポリロタキサン(C)とを有し、
前記炭素繊維(A)と、前記化合物(B)のオキサゾリル基の一部との間に化学結合を有し、
前記ポリロタキサン(C)の環状分子と、前記化合物(B)のオキサゾリル基の一部との間に化学結合を有する。
以下、このような本被覆炭素繊維の各構成について順に詳細に説明する。
炭素繊維は、前駆体繊維を高温で炭化して製造された繊維をいい、PAN系炭素繊維や、ピッチ系炭素繊維など、本被覆炭素繊維の用途等に応じて適宜選択して用いることができる。上記前駆体繊維としては、アクリル系、ポリアクリロニトリル系、フェノール系、レーヨン系、ピッチ系の繊維や、植物由来原料が挙げられ、1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂を用いて前駆体繊維を製造する紡糸方法としては、湿式、乾式等の公知の紡糸方法を用いることができる。また、炭素繊維は市販品を用いてもよい。
本被覆炭素繊維において、1分子中に2個以上のオキサゾリル基を有する化合物(B)は、オキサゾリル基の一部が炭素繊維(A)と化学結合をして炭素繊維に表面修飾して、炭素繊維(A)の破断強度の向上に寄与する。更に、化合物(B)の他のオキサゾリル基の一部がポリロタキサン(C)の環状分子と化学結合をすることにより、炭素繊維(A)とポリロタキサン(C)の環状分子とを連結する。これにより、樹脂(D)が化合物(B)により被覆された炭素繊維(A)にポリロタキサン(C)を介して相互作用することで界面における破壊応力の分散を実現し、破断強度が高く、伸び性能に優れた、炭素繊維複合材を得ることができる。
オキサゾリル基を有するモノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。中でも、酸性基等との反応性の点から、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、又は4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリンが好ましく、2-ビニル-2-オキサゾリン又は2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが更に好ましい。
オキサゾリル基を有するモノマーは1種類を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリロタキサンは、環状分子に直鎖状分子が貫通し、前記直鎖状分子の環状分子を介した両側に封鎖基を有する複合体である。前記封鎖基により前記直鎖状分子からの脱離が抑制される。前記環状分子は、封鎖基の間を可動域として、直鎖状分子の直鎖方向に移動し得る。環状分子は架橋後であっても直鎖状分子に対して相対的に移動可能な状態が維持される。そのため、ポリロタキサンが柔軟に変形して、樹脂(D)と炭素繊維との間に掛かる力が緩和される。この結果、本被覆炭素繊維や炭素繊維複合材は、伸び性能に優れていると推定される。
ポリロタキサン(C)において、環状分子は、後述する直鎖状分子が貫通可能な環構造を有する。更に、複数ある環状分子のうち少なくとも一つがオキサゾリル基との反応性を有する官能基(以下、単に官能基ということがある)を有することが好ましい。当該官能基が前記化合物(B)のオキサゾリル基と化学結合を形成し、炭素繊維(A)と連結する。
オキサゾリル基との反応性を有する官能基は、オキサゾリル基と反応して化合物(B)と化学結合を生じるものであればよい。このような官能基としては、例えば、カルボキシ基、チオール基、フェノール性水酸基、酸無水物構造を有する基などが挙げられる。
上記官能基を有する置換基としては、下記式(1)で表される基が好ましい。
R1及びR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよく炭素鎖中に-O-、-S-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-NH-C(=O)-、又は、-NH-C(=O)-O-を有してもよい炭化水素基であり、
R3は、単結合、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
*は式(1)におけるX11側末端を示す。
R1及びR2における炭化水素基としては、炭素数が1~12の直鎖又は分岐を有する炭化水素基が挙げられ、炭素数1~8の炭化水素基が好ましく、炭素数が1~6の炭化水素基がより好ましい。当該炭化水素基は、炭素数が2以上の場合、炭素鎖中に、-O-、-S-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-NH-C(=O)-、又は、-NH-C(=O)-O-を有していてもよい。例えば、炭素鎖中に上記結合を有する場合、R1~R3における炭化水素基は、*-R’-Q-R”(ただし、R’及びR”は各々独立に炭素数が1以上の炭化水素基であって、R’の炭素数と、R”の炭素数の和が2~12であり、Qは-O-、-S-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、-NH-C(=O)-、又は、-NH-C(=O)-O-である)と表すことができる。
炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、フェニル基などが挙げられる。
また、R3は、合成の容易性の点、及び分子の安定性の点から、炭素鎖中に上記Qを有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基が好ましく、Qを有しない炭素数1~6の炭化水素基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、フェニル基などが挙げられる。
なおR3が単結合の場合、基(11)は*-COOHであり、基(12)は*-SHである。
X11が連結基の場合、下記式(X1)で表される連結基が好ましい。
X12は、*-O-R12-**、*-O-C(=O)-R12-**、*-C(=O)-O-R12-**、*-NH-C(=O)-R12-**、*-C(=O)-NH-R12-**、*-NH-C(=O)-O-R12-**、*-O-C(=O)-NH-R12-**を表し、X12が複数ある場合、複数あるX12は同一であっても異なっていてもよく、
R12は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R12が複数ある場合、複数あるR12は同一であっても異なっていてもよく、
L11は、*-O-**、*-O-C(=O)-**、*-C(=O)-O-**、*-NH-C(=O)-**、*-C(=O)-NH-**、*-NH-C(=O)-O-**、*-O-C(=O)-NH-**であり、
m1は、1~200の整数であり、
n1は、0又は1であり、
*は環構造側末端、**は基(1)におけるR11側末端を示す。
直鎖アルキレン基は、炭素数が1~12が好ましく、炭素数1~8がより好ましく、炭素数1~6がより好ましい。直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、へキシレン基等が挙げられる。
分岐を有するアルキレン基としては、前記直鎖アルキレン基の置換基としてアルキル基を有する構造が好ましい。当該アルキル基としては炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
シクロアルキレン基としては、炭素数5~12の単環又は縮合環が挙げられ、シクロペンチレン基又はシクロへキシレン基が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
これらの組み合わせからなる基とは、例えば、フェニレン基にメチレン基が接続した基等が挙げられる。R12が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基等が挙げられる。
また、合成のしやすさなどの点から、L11は*-O-C(=O)-**であることが好ましい。
mは、破断強度及び伸び性能の点から1~200が好ましく、中でも1~100がより好ましく、1~40が更に好ましい。
ポリエステル構造は、例えば、ラクトンの開環重合により好適に合成できる。当該ラクトンとしては、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。またポリアミド構造は、例えば、ラクタムの開環重合により好適に合成できる。当該ラクタムとしては、ε-ラクタム、δ-ラクタム、γ-ラクタムなどが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、前記環構造がα-シクロデキストリンの場合、得られる硬化物の靭性などの点から、環状分子1分子当たりの基(1)の個数は1~12個が好ましく、1~10個がより好ましく、1~8個がさらに好ましい。
前記環構造がβ-シクロデキストリンの場合、得られる硬化物の靭性などの点から、環状分子1分子当たりの基(1)の個数は1~15個が好ましく、1~12個がより好ましく、1~10個がさらに好ましい。
また、前記環構造がγ-シクロデキストリンの場合、得られる硬化物の靭性などの点から、環状分子1分子当たりの基(1)の個数は1~18個が好ましく、1~15個がより好ましく、1~12個がさらに好ましい。
複数の環状分子を有するポリロタキサンの場合、基(1)を有しない環状分子があってもよい。
式(2) *-X11-R21
ただし、
X11は、環構造に連結する連結基又は単結合であり、
R21は、水酸基、アミノ基、エポキシ基又はイソシアネート基を有する基であり、
*は環構造側末端を示す。
環状分子1分子当たりの基(2)の個数は特に限定されないが、例えば、0~23個とすることができる。具体的には、前記環構造がα-シクロデキストリンの場合、環状分子1分子当たりの基(2)の個数は0~17個が好ましい。前記環構造がβ-シクロデキストリンの場合、環状分子1分子当たりの基(2)の個数は0~20個が好ましい。また、前記環構造がγ-シクロデキストリンの場合、環状分子1分子当たりの基(2)の個数は0~23個が好ましい。
複数の環状分子を有するポリロタキサンの場合、官能基を有しない環状分子があってもよい。
直鎖状分子は、前記環状分子の環構造を貫通する直鎖構造と、環状分子の脱離を抑制する封鎖基を有する。
直鎖構造としては、直鎖状のポリマーなどが挙げられる。なお、直鎖構造は、環状分子の移動を妨げない範囲で分岐構造を有していてもよい。
上記直鎖状のポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などのビニル系ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)クリルアミド、ポリメチル(メタ)クリレート、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体等のアクリル系ポリマー;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアセタール等のポリエーテル;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ナイロンなどのポリアミド;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等のポリスチレン;ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン;ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン;ポリエステル、ポリアミン、ポリイミド、ポリアニリン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん;ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、及びこれらの誘導体が挙げられる。
直鎖状分子の安定性や、硬化物の靱性などの点から、直鎖構造は、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、又はポリビニルメチルエーテルが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、又はポリプロピレンがより好ましく、中でもポリエチレングリコールがさらに好ましい。
ポリロタキサン(C)においては、分子の安定性などの点から、封鎖基として、ジニトロフェニル基、アダマンチル基、トリチル基、ピレニル基、フルオレセイン類、又はシクロデキストリン類が好ましく、アダマンチル基又はトリチル基がより好ましい。
なお、直鎖状分子中に複数ある封鎖基は同一の基であっても異なる基であってもよい。合成の容易性の点から、封鎖基は同一の置換基が好ましい。
本被覆炭素繊維の製造方法について一例を挙げて説明する。まず、炭素繊維(A)を準備する。炭素繊維(A)は市販品をそのまま使用してもよく、必要に応じて、洗浄や分散処理を行ってもよい。炭素繊維(A)は溶媒中で分散させておくことが好ましい。溶媒としては、溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロホルム、N-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサン、シリコーンオイルなどが挙げられ、陽イオン性、陰イオン性、両イオン性又は非イオン性の界面活性剤類などを組み合わせてもよい。溶媒は1種単独で、又は2種以上の混合溶媒で用いることができる。
本発明に係る炭素繊維複合材(以下、本炭素繊維複合材ということがある)は、上記ポリロタキサン被覆炭素繊維と樹脂(D)とを含むことを特徴とする。本炭素繊維複合材は、破断強度が高く、伸び性能に優れている。
樹脂(D)は、通常、前記ポリロタキサン被覆炭素繊維中に含浸させて用いられるマトリックス樹脂である。樹脂(D)は、炭素繊維複合材の用途等に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂などが挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂およびビスマレイミド樹脂等が挙げられる。
樹脂(D)は1種類を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、樹脂(D)は、ポリロタキサン(C)の環状分子が有する置換基と同種の置換基を有することが好ましい。
本発明に係るプレプリグは上記炭素繊維複合材を含むことを特徴とする。本プレプリグは、破断強度が高く、伸び性能に優れている。本プレプリグは上記本炭素繊維複合材をそのまま用いてもよいが、用途等に応じて、各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ゴム粒子、無機粒子等のフィラーなどが挙げられる。
製造例1:ポリロタキサンにカルボキシ基を導入する工程(3%)
ポリロタキサン(株式会社ASM社:SH2400P、水酸基価76mgKOH/g)10.0gと無水コハク酸(東京化成工業株式会社)40.7mgを酢酸エチル(関東化学株式会社)60mLに溶解し、これを0.5時間の窒素バブリングの後、これに塩基としてトリエチルアミン(東京化成工業株式会社)71.6mgを酢酸エチル(関東化学株式会社)2.0mLに溶解させたものを加え、窒素雰囲気下70℃にて24時間撹拌した。反応液から溶媒を減圧下留去し、カルボキシ変性ポリロタキサンの粗化合物を得た。
ポリロタキサン(株式会社ASM社:SH2400P、水酸基価76mgKOH/g)10.0gと無水コハク酸67.8mgを酢酸エチル58mLに溶解し、これを0.5時間の窒素バブリングの後、これに塩基としてトリエチルアミンOOmgを酢酸エチル2.0mLに溶解させたものを加え、窒素雰囲気下70℃にて24時間撹拌した。反応液から溶媒を減圧下留去し、カルボキシ変性ポリロタキサン粗化合物を得た。
ポリロタキサン(株式会社ASM社:SC1300P、水酸基価43mgKOH/g)10.0gと無水コハク酸38.3mgを酢酸エチル58mLに溶解し、これを0.5時間の窒素バブリングの後、これに塩基としてトリエチルアミン77.5mgを酢酸エチル2.0mLに溶解させたものを加え、窒素雰囲気下70℃にて24時間撹拌した。反応液から溶媒を減圧下留去し、カルボキシ変性ポリロタキサン粗化合物を得た。
ポリロタキサン(株式会社ASM社:SH1300P、水酸基価84mgKOH/g)10.0gと無水コハク酸74.9mgを酢酸エチル58mLに溶解し、これを0.5時間の窒素バブリングの後、これに塩基としてトリエチルアミン151.5mgを酢酸エチル2.0mLに溶解させたものを加え、窒素雰囲気下70℃にて24時間撹拌した。反応液から溶媒を減圧下留去しカルボキシ変性ポリロタキサンの粗化合物を得た。
製造例1にて作成した粗カルボキシ変性ポリロタキサン1.0gを1,4-ジオキサン(関東化学株式会社)2.0mLに溶解し、これに1N塩化水素ジエチルエーテル溶液(東京化成工業株式会社)0.05mLを滴下し反応に用いた塩基中和すると共に、これに冷却下メタノール(関東化学株式会社製)6~15mlを白色沈殿が生成するまで加えて、目的化合物の白色沈殿を得た。遠心分離にて単離した目的化合物を再度1,4-ジオキサン2mLに溶解し、イオン交換水10mL、メタノール6~15mLで順次洗浄した後、遠心分離により固液を分離、得られた白色個体を減圧下乾燥して目的のカルボキシ基変性ポリロタキサン0.4gを得た。導入されたカルボキシ基についてNMRにより導入率を求め、原料の水酸基価に対して2.4%で導入されていることを確認した。
製造例5-1において、製造例1の粗カルボキシ変性ポリロタキサンの代わりに、各々、製造例2~4の粗カルボキシ変性ポリロタキサンに変更した以外は、製造例5-1と同様にして、粗カルボキシ変性ポリロタキサンの精製を行った。
製造例6:ポリ2‐ビニル‐2‐オキサゾリン(Pvozo)を合成する工程
ビニルオキサゾリン(KJケミカルズ株式会社)10.0gおよびアゾイソブチロニトリル(関東化学株式会社)0.169gを、還流管を取り付けた100mL三口フラスコ中でN,N-ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社)56.7gに溶解し、これを1時間の窒素バブリングの後、70℃にて6時間撹拌を行った。反応の進行および重合率はNMRを用いて算出した(86.5%)。反応液にジエチルエーテル(関東化学株式会社)1200mLを加えて目的化合物を白色沈殿として5.3gを得た。
製造例7:炭素繊維にポリビニルオキサゾリンを被覆する工程
製造例6にて合成したポリ2‐ビニル‐2‐オキサゾリンをプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学株式会社)にて1.0wt%になるように溶解し、これを炭素繊維(東レ株式会社:T700,デサイズ処理済み)約0.1gを9cmにカットしたものに全体が浸る様に加えた。これをオイルバス中100℃にて3時間加熱した後、余剰なポリ2‐ビニル‐2‐オキサゾリンについてメタノール10mLで2分間洗浄を5回行った。得られたポリ2‐ビニル‐2‐オキサゾリン被覆炭素繊維は100℃にて10分間乾燥し、目的のポリ2‐ビニル‐2‐オキサゾリン被覆炭素繊維を得た。
実施例1:ポリビニルオキサゾリン被覆炭素繊維をカルボキシ基変性ポリロタキサンで被覆する工程
製造例7にて作成した2‐ビニル‐2‐オキサゾリン被覆炭素繊維に製造例1及び製造例5-1を経て得らえたカルボキシ基変性ポリロタキサン50mgをプロピレングリコールモノメチルエーテル10gに溶解したポリロタキサン溶液を浸潤させた。これをオイルバス中100℃にて3時間加熱した後、余剰なカルボキシ基変性ポリロタキサンについてアセトン(関東化学株式会社)10mLで2分間洗浄を5回行った。得られた被覆炭素繊維について、100℃にて10分間乾燥し目的のカルボキシ基変性ポリロタキサンで被覆されたポリ2‐ビニル‐2‐オキサゾリン被覆炭素繊維(実施例1のポリロタキサン被覆炭素繊維ともいう)を得た。
上記実施例1において、カルボキシ基変性ポリロタキサンを、各々、製造例2~4及び製造例5-2~製造例5-4を経て得られたカルボキシ基変性ポリロタキサンに各々変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4のポリロタキサン被覆炭素繊維を得た。
実施例5:ポリロタキサン被覆炭素繊維による炭素繊維強化ポリプロピレン複合材料を作成する工程
実施例1のポリロタキサン被覆炭素繊維0.2gをポリプロピレン 1.746g(日本ポリプロ株式会社)、Ma-g-PP 0.054g(製品名:ユーメックス1001, 三洋化成工業株式会社)と、製造例6で合成したPvozo 0.010gを二軸混錬機(東洋精機製作所製バッチ式二軸混錬機ラボプラストミルμ)にて200℃、60rpm、10分間溶融混錬し、これをペレットとした。
作成した複合体ペレットを2mmメッシュに粉砕し、これをJIS K6251-7を参考に両辺持ち手部分を5mm延長したダンベル型試験片作成用の金型に充填した後200℃、5分間にて予備加熱、次いで5MPa,200℃、5分間プレス成型の後、これを5MPa,2分間で急冷し炭素繊維複合材(実施例5の炭素繊維複合材ともいう)を作成した。
上記実施例5において、実施例1のポリロタキサン被覆炭素繊維の代わりに、実施例2~4のポリロタキサン被覆炭素繊維に各々変更した以外は、実施例5と同様にして、実施例6~8の炭素繊維複合材を得た。
炭素繊維(東レ株式会社:T700,デサイズ処理済み)0.378gをポリプロピレン3.3g、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(Ma-g-PP)0.1g(製品名:ユーメックス1001, 三洋化成工業株式会社)からなる樹脂に対して10wt%の比率になるよう二軸混錬機にて200℃、60rpm、10分間溶融混錬し、これをペレットとした。作成した複合体ペレットを2mmメッシュに粉砕し、これを実施例5と同様のダンベル型試験片作成用の金型に充填した後200℃、5分間にて予備加熱、次いで5MPa,200℃、5分間プレス成型の後、これを5MPa、2分間で急冷し比較例1の炭素繊維複合材を作成した。
製造例7で作成した2‐ビニル‐2‐オキサゾリン被覆炭素繊維0.378gをポリプロピレン3.3g、Ma-g-PP 0.1gからなる樹脂に対して10wt%の比率になるよう二軸混錬機にて200℃、60rpm、10分間溶融混錬し、これをペレットとした。作成した複合体ペレットを2mmメッシュに粉砕し、これを実施例5と同様のダンベル型試験片作成用の金型に充填した後200℃、5分間にて予備加熱、次いで5MPa, 200℃、5分間プレス成型の後、これを5MPa、2分間で急冷し比較例2の炭素繊維複合材試験片を作成した。
実施例1で作成した炭素繊維(SH1300P-05被覆)0.24gをエチレン・メタクリル酸共重合樹脂(EMAA)2.16g(製品名:ニュクレルAN4233C,三井・ダウポリケミカル株式会社)と製造例6で合成したPvozo 0.6059gを二軸混錬機にて200℃、60rpm、10分間溶融混錬し、これをペレットとした。作成した複合体ペレットを2mmメッシュに粉砕し、これを実施例5と同様のダンベル型試験片作成用の金型に充填した後200℃、5分間にて予備加熱、次いで5MPa、200℃、5分間プレス成型の後、これを5MPa,2分間で急冷し実施例9の炭素繊維複合材を作成した。
炭素繊維(東レ株式会社:T700,デサイズ処理済み)0.24gをエチレン・メタクリル酸共重合樹脂(EMAA)2.16g(製品名:ニュクレルAN4233C,三井・ダウポリケミカル株式会社)と製造例6で合成したPvozo 0.6059gを二軸混錬機にて200℃、60rpm、10分間溶融混錬し、これをペレットとした。作成した複合体ペレットを2mmメッシュに粉砕し、これを実施例5と同様のダンベル型試験片作成用の金型に充填した後200℃、5分間にて予備加熱、次いで5MPa,200℃、5分間プレス成型の後、これを5MPa,2分間で急冷し比較例3の炭素繊維複合材を作成した。
上記実施例5~9及び比較例1~3の炭素繊維複合材の各々について、JIS K 7139:2009を参考にダンベル形引張試験片を製造し、変位速度10mm/minにて引張試験を行い、引張弾性率、破断強度、破断伸び、及び応力-ひずみ曲線を測定した。
なお、歪曲線下面積とは、応力-ひずみ曲線の面積を破断までの区間にわたって積分した値をいい破断に要するエネルギーを示す。また歪曲線下面積比とは、樹脂(D)がポリプロピレンを含む実施例5~8、及び比較例1~2については比較例2を基準(歪曲線下面積を100%)として、各例の歪曲線下面積を比で表したものであり、同様に、樹脂(D)がポリアクリル酸を含む実施例9及び比較例3については比較例3を基準として、各例の歪曲線下面積を比で表したものである。歪曲線下面積が大きいほど靱性に優れていると評価できる。実施例7及び9を代表して結果を表1に示す。
これに対し、炭素繊維にPvozoとポリロタキサンとを順次被覆した、本発明のポリロタキサン被覆炭素繊維を用いた実施例7の炭素繊維複合材は、比較例1に対し、引張弾性率及び破断強度が向上し、更に、歪曲線下面積が大きくなり靭性も向上していることが示された。
本発明による炭素繊維界面の設計の特徴として、従来、ポリロタキサンが化学結合を構築することが難しい炭素繊維表面官能基にPvozoを介して環状分子の軸上の動きを制限しない範囲で化学結合を構築することで、炭素繊維強化複合材料に外力が加わった際に発生すると予期される繊維-樹脂界面での剥離を抑制すると共に、この力を吸収することで諸物性が向上するものと推定される。
この効果は、比較例1と比較例2の比較により炭素繊維をPvozoで被覆するだけでは破断強度・伸び共に有意な効果を得られないばかりか、破断に要するエネルギーにおいてはむしろ低下する傾向からも、ポリロタキサンを界面に適切に配置することが物性向上に繋がると考えられる。
同様に、樹脂(D)がポリアクリル酸を含む炭素繊維複合材(実施例9)でも、比較例3に対して歪曲線下面積が1.3倍となった。
低弾性率材料を炭素繊維で強化した場合には通常顕著な高弾性率化が認められるが、本発明のポリロタキサン被覆炭素繊維によれば、低弾性を維持したまま破断エネルギーを向上でき、現行の要求物性を損なうことなく強度を向上できると考えられる。
Claims (10)
- 炭素繊維(A)と、1分子中に2個以上のオキサゾリル基を有する化合物(B)と、環状分子を備えるポリロタキサン(C)とを有し、
前記炭素繊維(A)と、前記化合物(B)のオキサゾリル基の一部との間に化学結合を有し、
前記ポリロタキサン(C)の環状分子と、前記化合物(B)のオキサゾリル基の一部との間に化学結合を有する、ポリロタキサン被覆炭素繊維。 - 前記化合物(B)が、2-ビニル-2-オキサゾリン由来の構成単位を含むポリマー又はコポリマーである、請求項1に記載のポリロタキサン被覆炭素繊維。
- 前記ポリロタキサン(C)が有する環状分子の少なくとも一つがオキサゾリル基との反応性を有する官能基を有する、請求項1又は2に記載のポリロタキサン被覆炭素繊維。
- 前記オキサゾリル基との反応性を有する官能基が酸性基である、請求項3に記載のポリロタキサン被覆炭素繊維。
- 前記オキサゾリル基との反応性を有する官能基が、カルボキシ基、チオール基、フェノール性水酸基、及び酸無水物構造を有する基、より選択される1種以上を含む、請求項3又は4に記載のポリロタキサン被覆炭素繊維。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載のポリロタキサン被覆炭素繊維と、樹脂(D)とを含む、炭素繊維複合材。
- 前記ポリロタキサン(C)と、樹脂(D)との間に化学結合を有する、請求項6に記載の炭素繊維複合材。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載のポリロタキサン被覆炭素繊維と、樹脂(D)と、架橋剤(E)とを含み、
前記ポリロタキサン(C)と、前記樹脂(D)とが、架橋剤(E)を介して結合している、炭素繊維複合材。 - 前記樹脂(D)が酸性基を有し、前記架橋剤(E)が1分子中に2個以上のオキサゾリル基を有する化合物を含む、請求項8に記載の炭素繊維複合材。
- 請求項6~9のいずれか一項に記載の炭素繊維複合材を含む、プレプリグ。
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