JP7644575B2 - 油脂組成物、及び油脂組成物における層分離を抑制する方法 - Google Patents
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そのため、含水エタノールと、揮発しにくい成分(例えば、油脂等)との混合物を静菌剤として用いることが考えられるものの、水を含む混合物は層分離してしまい、静菌剤としての使用が難しいという問題があった。
油脂、エタノール、水、及び、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含み、
前記水の含量が、前記油脂組成物に対して0.05質量%以上1.10質量%以下であり、
前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量が、前記水の含量の0.4質量倍以上であり、
前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量が、前記油脂組成物に対して5.0質量%以下である、
油脂組成物。
前記油脂組成物に対して5.0質量%以下、かつ、前記油脂組成物中の水の含量の0.4質量倍以上のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを配合する工程を含み、
前記水の含量が、前記油脂組成物に対して0.05質量%以上1.10質量%以下である、
方法。
本発明の油脂組成物は、以下の要件を全て満たす。
(要件1)油脂、エタノール、水、及び、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含む。
(要件2)水の含量が、油脂組成物に対して0.05質量%以上1.10質量%以下である。
(要件3)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量が、水の含量の0.4質量倍以上である。
(要件4)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量が、油脂組成物に対して5.0質量%以下である。
しかし、本発明者らの検討の結果、乳化剤を使用した場合であっても、含水エタノールと油脂とを必ずしも混合させることができず、層分離してしまう可能性があることが見出された。
エタノールは、水及び油脂それぞれとの相溶性が高いものの、油脂と水との相溶性は低い。そのため、水分量が多い(例えば、組成物全体に対して0.05質量%以上)場合、層分離が生じ得る。このような場合、層分離を防ぐためには、可溶化機能や乳化機能を有する乳化剤の配合が考えられる。
他方で、エタノール等のアルコールは、水及び油脂それぞれとの相溶性が高いことから界面を不明確にするため、乳化剤によって得られるエマルションを解乳化し得る。
しかし、本発明者らの検討の結果、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを用いると、このような解乳化を抑制でき、層分離を防ぐことができるという意外な知見が得られた(要件1)。その理由は、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが、親油基中に極性基(親水基)であるエステル基を含むために、水を抱き込みやすいためであると推察される。
本発明者らによるさらなる検討の結果、安定的に層分離を防ぐ観点からは、組成物全体に含まれる水分量に応じたポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量の調整を要すること、すなわち、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量は、組成物全体に含まれる水分量の0.4質量倍以上に調整することを要することが見出された(要件3)。
ただし、本発明による層分離の抑制効果を安定的に奏するには、水分量の上限を組成物全体に対して1.10質量%以下とすることを要した(要件2)。
また、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量を、油脂組成物に対して5.0質量%以下に調整することで、油脂の風味を損なわずに層分離の抑制ができることも見出された(要件4)。
なお、本発明において、水性成分含有層は、乳化及び/又は可溶化によって油性成分を含有してもよい。また、油性成分含有層は、乳化及び/又は可溶化によって水性成分を含有してもよい。
かかる場合、水性成分含有層と油性成分含有層の比重に応じて、いずれの層が上層又は下層となるかが決定される。
例えば、水性成分含有層の主成分が、エタノール(油脂よりも比重が軽い)である場合、油性成分含有層の上層に水性成分含有層が位置する。
他方で、水性成分含有層の主成分が、水(油脂より比重が重い)である場合、油性成分含有層の下層に水性成分含有層が位置する。
「層分離」が生じているかどうかは実施例に示した方法で特定できる。
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)は、縮合リシノール酸とポリグリセリンとをエステル化反応させることで得られるエステルである。
なお、縮合リシノール酸は、リシノール酸(ひまし油の主成分である脂肪酸として知られる。)を重縮合反応させることで得られる。
本発明における油脂としては、食用油脂として知られる任意の油脂を使用できる。油脂は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。油脂として複数の種類のものを組み合わせる場合、その配合比は得ようとする風味等に応じて適宜設定される。
本発明におけるエタノールは、静菌作用を奏する成分である。通常、エタノールは、含水エタノール(すなわち、エタノール及び水の混合物)として油脂組成物に配合される。
例えば、15℃におけるエタノールの割合は、エタノール及び水の総量に対して、好ましくは35質量%以上98質量%以下、より好ましくは37質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上91質量%以下であってもよい。
「主剤であるアルコール(エタノール)は、一般社団法人アルコール協会が制定したアルコール協会規格 JAAS001:2012『エタノール』記載の発酵アルコールの品質規格に適合し、且つ、15℃における製剤中のアルコール濃度は、45度(37.88重量%)以上で90度(85.70重量%)未満であること。」
ただし、本発明の油脂組成物に含まれる水の由来は含水エタノールに限定されない。例えば、油脂等の成分にも水が少量含まれ得るし、本発明の油脂組成物には水そのものを添加してもよい。したがって、本発明において「油脂組成物における水の含量」、「油脂組成物に含まれる水の質量」、「油脂組成物中の水の含量」等の記載は、特段の規定がない限り、油脂組成物に含まれる水(由来を問わない)の総量を意味する。
本発明の油脂組成物におけるエタノールの含量の上限は、油脂組成物に対して、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下のいずれかである。
なお、上記の値はいずれも油脂組成物におけるエタノールそのものの含量を意味する。したがって、油脂組成物に配合されるエタノールが含水エタノール等の形態である場合、エタノール以外の成分(水等)の含量は上記の値に含まれない。
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル以外の乳化剤、トコフェロール類等の抗酸化剤、シリコーンオイル等の消泡剤等が挙げられる。また、静菌作用を補助する作用を有する成分を含んでもよく、例えば、炭素数6~12の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6~12の直鎖飽和脂肪酸のモノグリセリド等、有機酸等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの成分の配合量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定される。
本発明の油脂組成物においては、各成分の配合比を調整することで、より容易に本発明の効果を実現できる。
なお、「油脂以外に由来する水の含量」とは、油脂組成物に配合される原料である油脂に含まれる水分以外の水分の総量を意味する。「油脂以外に由来する水」としては、含水エタノール中の水、水性成分に含まれる水分、及び、水そのもの(滅菌水、蒸留水等)が挙げられる。
本発明の油脂組成物の形態は特に限定されないが、例えば、その使用(食品へのコーティング等)の直前において、油相及び水相を含む乳化物であってもよい。
本発明の油脂組成物は、特に限定されず、油脂を含む組成物の製造方法として知られる任意の方法を採用できる。例えば、油脂組成物を構成する成分を混合及び撹拌等することで製造することができる。
本発明の油脂組成物はエタノールを含むため、エタノールの揮発を防ぐ観点から、油脂組成物の製造後、その使用(食品へのコーティング等)の直前までは密封容器で保存することが好ましい。
撹拌の方法は特に限定されず、例えば、任意の手段(手、機械等)で油脂組成物の充填された容器を振ること等が挙げられる。
本発明の油脂組成物は、油脂及びエタノールを含むにもかかわらず、層分離が抑制されている。かつ、本発明の油脂組成物においては、油脂の作用によりエタノールが揮発しにくい。
したがって、本発明の油脂組成物は、従来のアルコール製剤の代替品として使用できる。具体的には、本発明の油脂組成物は、好ましくは食品の腐敗を防ぐための静菌剤として利用でき、より好ましくは食品へのコーティング用に利用できる。
このような食品としては、麺類(パスタ、うどん、そば等)、パン類(食パン、菓子パン等)、飯類(おにぎり等)等が挙げられる。
このような方法としては、噴霧、塗布、浸漬等が挙げられる。
例えば、食品へ本発明の油脂組成物のコーティングを行った後は、加熱(例えば、50℃以上の温度条件下での加熱)を全く行わないことや、喫食の直前まで加熱(例えば、50℃以上の温度条件下での加熱)を行わないことが好ましい。
上記のとおり、油脂、エタノール、水、及び、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含む油脂組成物において、水、及び、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含有量を調整することで、油脂及びエタノールを含むにもかかわらず、層分離を抑制することができる。
したがって、本発明は、油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下、かつ、水の含量の0.5質量倍以上のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを配合する工程を含み、水の含量が、油脂組成物に対して0.02質量%以上1.10質量%以下である、油脂、エタノール、及び水を含む油脂組成物における層分離を抑制する方法も提供する。
下記表中の「組成」の項に示す各成分を混合し、油脂組成物を作製した。
含水エタノール(エタノール濃度:80質量%又は65質量%):エタノール(商品名「Ethanol(99.5)」、富士フィルム和光純薬株式会社製)を脱イオン水で希釈して調製した。
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR):商品名「ポエムPR-400」、理研ビタミン株式会社製
トリオレイン酸ペンタグリセリン:商品名「サンソフトA173-E」、太陽化学株式会社製
ペンタオレイン酸デカグリセリン:商品名「サンソフトQ-175S」、太陽化学株式会社製
精製菜種油(水分含有量:0.03質量%):商品名「日清キャノーラ油」、日清オイリオグループ株式会社製
表中、「水分量」の項の下段に、油脂組成物に含まれる、含水エタノールに由来する水分の質量(Et水分量)を示した。
「PGPR/全H2O」の項に、油脂組成物に含まれる水分の質量の総量に対する、油脂組成物に含まれるポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)の質量の割合を示した。
「PGPR/添加H2O」の項に、油脂組成物に含まれる、含水エタノールに由来する水分の質量(Et水分量)に対する、油脂組成物に含まれるポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)の質量の割合を示した。
油脂組成物を構成する各成分を混合して油脂組成物を調製した直後(すなわち、油脂組成物を構成する成分の混合直後)から3日間にわたり、油脂組成物の分離状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。その結果を表中の「評価」の項に示す。
なお、本評価における「油脂組成物の分離状態」とは、油脂組成物が上下の2層に分かれているかどうかの状態を意味する。
したがって、油脂組成物が「2層に分離していない」とは、油脂組成物が上下の2層に分離しておらず、乳化状態(W/O等)、又は可溶化状態にあることを意味する。
油脂組成物が「2層に分離している」とは、油脂組成物が上下の2層に分離していることを意味する。
〇:2層に分離していない。
×:2層に分離している。
なおデータは示していないが、これらの油脂組成物は食品に塗布することで、静菌作用も認められた。
Claims (5)
- 油脂組成物であって、
油脂、エタノール、水、及び、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含み、
前記エタノールの含量が、前記油脂組成物に対して0.08質量%以上4.0質量%以下であり、
前記水の含量が、前記油脂組成物に対して0.05質量%以上1.10質量%以下であり、
前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量が、前記水の含量の0.4質量倍以上であり、
前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量が、前記油脂組成物に対して5.0質量%以下である、
油脂組成物(ただし、没食子酸10g、蒸留水10g、エタノール10g、テトラグリセリンモノラウレート20g、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル20g、酵素分解レシチン10g、及び中鎖脂肪酸トリグリセライド15gからなる没食子酸油溶化製剤95gを、0.001重量%から10重量%の濃度でコーン油に溶解させた油脂組成物を除く。)。 - 前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含量が、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の油脂組成物。
- 前記油脂組成物が、食品へのコーティング用である、請求項1又は2に記載の油脂組成物。
- 油脂、エタノール、及び水を含む油脂組成物(ただし、没食子酸10g、蒸留水10g、エタノール10g、テトラグリセリンモノラウレート20g、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル20g、酵素分解レシチン10g、及び中鎖脂肪酸トリグリセライド15gからなる没食子酸油溶化製剤95gを、0.001重量%から10重量%の濃度でコーン油に溶解させた油脂組成物を除く。)における層分離を抑制する方法であって、
前記油脂組成物に対して5.0質量%以下、かつ、前記油脂組成物中の水の含量の0.4質量倍以上のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを配合する工程を含み、
前記エタノールの含量が、前記油脂組成物に対して0.08質量%以上4.0質量%以下であり、
前記水の含量が、前記油脂組成物に対して0.05質量%以上1.10質量%以下である、
方法。 - 前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの配合量が、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項4に記載の方法。
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