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JP7648853B2 - アクリル系樹脂フィルム、偏光板、及び、液晶表示パネル - Google Patents
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アクリル系樹脂フィルム、偏光板、及び、液晶表示パネル Download PDF

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Description

本発明は、アクリル系樹脂フィルム、偏光板、及び、液晶表示パネルに関する。
液晶表示装置には、通常、液晶セルの両側に二枚の偏光板が配置される。偏光板としては偏光子の両側に偏光子を保護する為の偏光子保護フィルムを接着剤で貼合したものが一般的に用いられる。偏光子保護フィルムとしては、高い透明性が要求されており、セルロース系材料からなる光学フィルムが多用されている。
耐久性の向上等を目的として、アクリル系樹脂やノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムを偏光子保護フィルムとして用いることが提案されている。しかしながら、これら光学フィルムは、ロールとして巻き取る際にフィルム同士が接触し、皺や皺痕が発生しやすく、当該課題を解決する方法として、ノルボルネン系樹脂フィルムに、シリカ粒子等の微粒子を添加して、ロール巻き取り性(滑り性)を確保する方法などが提案されている(特許文献1)。
国際公開第2018/074513号
特許文献1のような方法で巻き取り時の皺や皺痕の発生が解決されうるものの、本発明者らの検討によれば、液晶表示パネルの高精細化、大面積化によるフィルム品質水準の向上に伴い、フィルムロールにして保管中のフィルムの巻き締まり等に起因する欠陥が生じることが明らかになってきた。また本発明者らは、特許文献1に記載の方法でアクリル系樹脂フィルムにシリカを添加して上記現象の解決を試みたものの、従来の方法では、ヘイズが高くなる等、アクリル系樹脂フィルムとしての要求を充たすことが困難であることがわかっている。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、アクリル系樹脂フィルムの耐熱性および透明性を維持しつつ、フィルムロール保管時におけるブロッキングを抑制することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一態様は、以下に関する。
[1]アクリル系樹脂を主成分とするアクリル系樹脂フィルムであって、前記アクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度が120℃以上であり、前記アクリル系樹脂フィルムの両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.05μm以上1.0μm以下であり、一方の面および他方の面の静摩擦係数が0.8以下であり、かつ、内部ヘイズが1.0%以下である、アクリル系樹脂フィルム。
[2]前記アクリル系樹脂フィルムの一方の面、および/または、他方の面の10点平均粗さRzjisが0.080μm超0.25μm以下である、[1]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[3]前記アクリル系樹脂は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種類以上の環構造を含有する、[1]または[2]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[4]前記アクリル系樹脂は、三連子表示のシンジオタクティシティが54%以上である、[1]または[2]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[5]前記アクリル系樹脂フィルムはアンチブロッキング剤を含み、前記アンチブロッキング剤は、平均粒子径が0.1μm以上2.5μm以下のアクリル系架橋粒子を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[6]前記アンチブロッキング剤は、平均粒子径が0.1μm以上2.0μm以下のアクリル系架橋粒子を含む、[5]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[7]前記アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系架橋粒子を0.05重量%以上0.9重量%以下含む、[5]または[6]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[8]85℃、85%RHの雰囲気下に120時間静置した際の寸法変化率が-2.0%以上-0.1%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムを備える、偏光板。
[10][9]に記載の偏光板を備える液晶表示パネル。
本発明によれば、透明性および耐熱性に優れ、フィルムロール保管時のブロッキングを防止しうるアクリル系樹脂フィルムを提供することができる。
本発明の一実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」をそれぞれ意味する。
(アクリル系樹脂フィルム)
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムはアクリル系樹脂を主成分とするアクリル系樹脂フィルムであって、前記アクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度が120℃以上であり、前記アクリル系樹脂フィルムの両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.14μm以上1.0μm以下であり、一方の面および他方の面の静摩擦係数が0.8以下であり、かつ、内部ヘイズが1.0%以下であることを特徴とする。このように、アクリル系樹脂を主成分としつつ、フィルムの両面のRzjisの和、および静摩擦係数を所定の値に制御し、更に、内部ヘイズを所定の値に制御しすることにより、耐熱性および透明性に優れ、更に、フィルムロール保管時のアンチブロッキング性に優れたアクリル系樹脂フィルムが得られる。
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度は120℃以上である。好ましくは120℃超、より好ましくは121℃以上、さらに好ましくは122℃以上、特に好ましくは123℃以上である。アクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度が120℃以上であることにより、フィルムの高温環境下での延伸フィルムの寸法変化率が小さくなる。実使用上、本実施形態のアクリル系樹脂フィルムは他のフィルムと積層されて用いることが多く、寸法変化率が小さいと、積層された他のフィルムとの間に生じる寸法変化率の差から生じる歪や反りの発生を抑制することができる。
アクリル系樹脂フィルムを構成するアクリル系樹脂のガラス転移温度が120℃以上であることが好ましく、120℃超がより好ましく、121℃以上がさらに好ましく、122℃以上がさらにより好ましく、123℃以上が特に好ましい。
ここで、ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂としては、主鎖に環構造を有しているアクリル系樹脂を好適に利用することができる。例えば、その環構造としてグルタルイミド環、ラクトン環、無水マレイン酸、マレイミド及び無水グルタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の環構造を挙げることができる。これらによれば、耐熱性付与が可能となる。また、その中でも、特に環構造がグルタルイミドであることが、生産の簡便性やコスト、湿気に対する品質安定性の観点で好ましい。
ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂中の環構造の含有率は、2重量%~80重量%の範囲であることが好ましく、3重量%~60重量%の範囲であることがより好ましい。この範囲内の環構造の含有率の場合、ガラス転移温度と厚み方向位相差Rthのいずれもが良好となるので好ましい。アクリル系樹脂中の環構造の含有率は、H-NMRを用いて、対象となる環構造部分とそれ以外の部分のモル比を測定し、重量換算を行い算出することができる。またガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂フィルムの主成分であり、アクリル系樹脂フィルム100重量%中、50重量%超含まれる。中でもアクリル系樹脂フィルム100重量%中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、85重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
なお、ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂として、主鎖に環構造を有さないアクリル系樹脂を利用してもよい。
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムの内部へイズは、1.0%以下である。中でも、内部ヘイズは、0.7%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下が特に好ましい。内部へイズが1.0%以下であることにより、液晶パネルに実装した時の品質が良好になる。
本明細書では、内部へイズとは、液体測定用ガラスセルに得られたフィルムを入れ、その周辺に純水を充填した状態のガラスセルを対象にヘイズメーター(濁度計)を用い測定したヘイズ値と定義する。
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムのヘイズについては、内部ヘイズが上述の範囲である限りにおいては特に限定されないが、透明性の観点から、3.0%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。
アクリル系樹脂フィルムは、両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.05μm以上1.0μm以下である。両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.05μm以上であれば、フィルム同士の摩擦を低減しやすくなる。またフィルムをロール状に重ねた際に、フィルム間に巻き込まれた空気が抜け易く、巻き締まりに伴うブロッキングを抑制でき、フィルム欠陥を抑制できるものと推測される。ここで、アクリル系樹脂フィルムにおいて両面の各々の10点平均粗さRzjisの和を0.05μm未満とすると、フィルムロールの保管時に、巻き締まりに伴うブロッキングが発生し、その結果、フィルム欠陥が発生する。この傾向は、長尺(例えば、8000m)のフィルムロールの保管時に顕著になる。このため、定尺(例えば、4000m)のアクリル系樹脂フィルムしか巻き取ることができず、収率が低下する。また、定尺のアクリル系樹脂フィルムであっても、フィルムロールの保管時に内側のアクリル系樹脂フィルムが塑性変形するため、塑性変形したアクリル系樹脂フィルムを使用できなくなる。一方、アクリル系樹脂フィルムにおいて両面の各々の10点平均粗さRzjisの和を1.0μm超とすると、アクリル系樹脂フィルムの透明性が低下する。また両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が1.0μm以下であると、表面で光を乱反射することを抑制できパネル表示の鮮明度を損なうことを抑制できる。中でもアクリル系樹脂フィルムは、両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.05μm以上0.6μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。
アクリル系樹脂が主鎖に環構造を有している場合、アクリル系樹脂フィルムの両面の各々の10点平均粗さRzjisの和は、0.15μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.16μm以上1.0μm未満であることがより好ましく、0.17μm以上0.6μm以下であることがさらに好ましく、0.2μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。また、アクリル系樹脂フィルムの一方の面、および/または、他方の面の10点平均粗さRzjisが0.080μm超0.25μm以下であることが好ましい。
一方、アクリル系樹脂が主鎖に環構造を有さない場合、特に、後述する三連子表示のシンジオタクティシティが54%以上である場合、アクリル系樹脂フィルムの両面の各々の10点平均粗さRzjisの和は、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.06μm以上0.60μm未満であることがより好ましく、0.06μm以上0.50μm未満であることがさらに好ましく、0.06μm以上0.40μm以下であることがさらにより好ましく、0.07μm以上0.30μm以下であることがより好ましい。また、アクリル系樹脂フィルムの一方の面、および/または、他方の面の10点平均粗さRzjisが0.020μm超0.20μm以下であることが好ましい。
ここで、「ブロッキング」とは、フィルム同士が固着している状態を意味し、高温で一部溶融している状態や、ピッタリ重なっている状態を含む。巻き締まりが起こるとフィルムに圧力がかかり、フィルム同士のブロッキング(固着)が生じ、その結果、フィルム同士を引きはがす際に強い力で引きはがすことになり、フィルムへのダメージが生じる。そこで、本実施形態のようにフィルムの両面のクルトシスを所定の範囲にすることにより、巻き締まりが起こってもフィルムロールにおけるフィルム同士の固着を抑制でき、フィルム同士を弱い力で剥がすことができるため、フィルムへのダメージ(フィルム欠陥)を抑制することができる。
フィルムのRzjis(表面粗さ)は、レーザー顕微鏡等の光学式表面粗さを用いて測定することができる。本実施形態のアクリル系樹脂フィルムは、レーザー顕微鏡の分解能に比べて表面粗さの値が小さいため、開口数が小さいレンズでは十分な測定精度が得られない。従い、本明細書では開口数0.95以上のレンズを用いて測定した値を用いる。
フィルムの表面粗さは、経済性、環境負荷の観点からアクリル系樹脂に後述のアンチブロッキング剤を添加することが好ましい。中でもアクリル系樹脂との親和性、分散性の観点から有機系微粒子が好ましく、ヘイズの制御を行いやすいという点で、アクリル系の架橋粒子が最も好ましい。
アクリル系樹脂フィルムの静摩擦係数は、フィルムの一方の面と他の面を合わせた状態で測定した値が、0.8以下である。中でも0.7以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。静摩擦係数が0.8以下であれば、フィルムロール中におけるフィルムどうしのブロッキングを効果的に抑制することができる。静摩擦係数の下限については特に制限されないが、製造中の巻きズレ、蛇行の観点から0.2以上が好ましい。
アクリル系樹脂フィルムでは、85℃、85%RHの雰囲気下で120時間静置した時の寸法変化率が、フィルム長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の平均の値が-2.0%以上であることが好ましく、-1.7%以上であることがより好ましく、-1.5%以上であることがさらに好ましい。上記寸法変化率が-2.0%以上であると、フィルムロールの保管時に経時の収縮が抑えられ、巻き外観の経時安定性が向上するほか、偏光子に貼合した際の反りや寸法変化が緩和され、液晶表示装置のコントラスト低下や周辺むらを抑制できる。上記寸法変化率は、例えば、-0.1%以下でよい。上記寸法変化率が-0.1%以下であると、偏光子に貼合した際に、偏光子自体が収縮しても、その収縮にアクリル系樹脂フィルムが追随しやすい。ここでの85℃、85%RHの雰囲気下に120時間静置した際の寸法変化率は、アクリル系樹脂フィルムを85℃、85%RHに設定した環境試験機中で120時間静置した前後の寸法変化を、三次元測定器を用いて測定することができる。
本明細書および特許請求の範囲において、寸法変化率とは、90mm×90mmのフィルムの四隅からの距離が対角線の内側方向に20mmである位置に直径1mmの孔を開けて、85℃、85%RHの雰囲気下で120時間静置する前後の孔間隔の変化率を意味する。ここで、孔間隔の変化率は、静置する前の孔間隔を基準とした場合の静置した後の孔間隔の変化率を意味し、式
[(静置した後の孔間隔)-(静置する前の孔間隔)]×100/(静置する前の孔間隔)・・・(A)
により、算出される。
アクリル系樹脂フィルムの40~60℃における線膨張係数は80ppm以下が好ましく、72ppm以下がより好ましい。80ppm以下であればロールの保管、輸送時における温度変化に伴うフィルムの収縮、膨張が抑えられ巻き締まりが起こりにくい。一方、下限としては40ppm以上であることが好ましい。フィルムの線膨張が40ppm以上であれば偏光子と積層した際に、他部材との線膨張差が小さいため、反りなどが発生しにくい。
線膨張係数は、例えば、ブルカー・エイエックスエス社製の熱機械分析装置TMA-4000SAを使用し、線膨張係数を測定することができる。具体的には、窒素雰囲気下において、4mm×20mmに裁断したフィルムに対して3.1gの引張荷重をかけた状態で、ガラス転移温度を超えない温度範囲において2℃/minの条件にてフィルムを昇温させ、X軸に温度をプロットし、Y軸にフィルムの長さの変化量をプロットしたチャートを作成し、昇温降温過程において40℃から60℃までの温度範囲での傾きを、最小二乗法で算出し線膨張係数として求めることができる。
(アンチブロッキング剤)
アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂にアンチブロッキング剤が添加されたアクリル系樹脂組成物により形成されることが好ましい。アンチブロッキング剤としては、アクリル系樹脂との相溶性、分散性、透明性の観点からアクリル系架橋粒子が好ましい。粒子の形状は任意のものを選ぶことができるが、アンチブロッキング性が発現しやすいことから真球形状のものが好ましい。
アンチブロッキング剤の屈折率は、アクリル系樹脂の屈折率を100%としたとき、98%以上102%以下が好ましく、99%以上101%以下がより好ましい。アンチブロッキング剤の屈折率としては、1.47以上1.55以下が好ましく、1.47以上1.53以下がより好ましく、1.48以上1.52以下がより好ましい。当該範囲の屈折率のアンチブロッキング剤を用いることで、透明性の高いアクリル系樹脂フィルムを得ることができる。中でも、アクリル系架橋粒子は、上記屈折率を満たすため好ましい。
上記アクリル系架橋粒子を形成する重合性モノマーは、任意の(メタ)アクリル酸エステル、及び共重合可能な他のモノマーから選ぶことができるが、アクリル系樹脂との相溶性、屈折率の観点からメタクリル酸メチルを含むことが好ましい。アクリル系架橋粒子中のメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有率は、80重量%以上99重量%以下であることが好ましく、83重量%以上96重量%以下であることがより好ましい。なお、アクリル系樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有率が高い場合は、アクリル系架橋粒子中のメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有率が高いことが好ましい。
上記アクリル系架橋粒子は、重合性モノマーとしての、分子内に2個以上の重合性基を含む多官能性モノマーに由来する構造単位をさらに含む。重合性モノマー中の多官能性モノマーの含有率は、任意に設定することができるが、0.5重量%以上30%重量%以下が好ましい。0.5重量%以下では、アクリル系架橋粒子の耐熱性および分散性が劣る。30重量%より大きくなると、アクリル系架橋粒子を製造する際に粒子の合一、異形粒子の形成が発生する可能性がある。
上記アクリル系架橋粒子の平均粒子径としては0.1μm以上2.5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。0.1μm未満の場合、アンチブロッキング性を発現するための添加量が多くする必要があるため、機械物性、経済性に劣る場合がある。上限として2.5μmより大きくなるとポリマーフィルターの目詰まりを誘発する可能性がある。また、ポリマーフィルターのロングラン性の観点から、粒子径の分布が狭く、粗大粒子の含有量が小さいものを使用することが好ましい。
本実施形態のアクリル系架橋粒子の添加量については、0.05重量%以上0.9重量%以下が好ましく、0.07重量%以上0.5重量%以下がより好ましく、0.1重量%以上0.2重量%以下がさらに好ましい。0.05重量%未満の添加量では十分なブロッキング防止効果が得られず、0.9重量%以下の添加量とすることで経済性の悪化を防止でき、またヘイズの増大を防止することができる。また、滑り性、表面性の制御を目的として異なる粒子径分布をもつ粒子を複数種類混合してもよい。この場合、アクリル系架橋粒子の添加量は、複数種類の粒子の添加量の合計となる。
(易接着層)
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムは、その片面若しくは両面に易接着層を設けてもよい。易接着層を設けることにより、例えば、偏光子保護フィルムとして用いる場合、接着剤を介して偏光子に貼り合わせる際に、接着剤による偏光子保護フィルムと偏光子との密着性を補強することができる。また未延伸フィルムに易接着層を設けて、その後延伸することにより、易接着層を有する延伸フィルムを得ることも可能である。
本実施形態に用いる易接着層としては、特開2009-193061号公報、特開2010-55062号公報などに記載の公知の技術を用いて形成させることができる。即ち、例えば、カルボキシル基を有するウレタン樹脂と架橋剤とを含む易接着剤組成物で形成させることができる。ウレタン樹脂を用いることにより、偏光子保護フィルムと偏光子の密着性に優れた易接着層が得られうる。易接着剤組成物は、その作業性の観点及び、環境保護の観点から好ましくは、水系である。
(アクリル系樹脂)
上述のように、アクリル系樹脂フィルムは、ガラス転移温度が120℃以上であり、アクリル系樹脂フィルムとして使用されるアクリル系樹脂として、ガラス転移温度が120℃以上のものを好適に利用することができる。ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂として、上述のように、主鎖に環構造を有するアクリル系樹脂および主鎖に環構造を有さないアクリル系樹脂を用いることができる。以下、各環構造について説明する。
(主鎖にグルタルイミド環を有するアクリル系樹脂)
主鎖に環構造としてグルタルイミド環を有するアクリル系樹脂は、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有する樹脂であり、アクリル酸エステル単位の含有率が1重量%未満であるアクリル系樹脂を加熱溶融し、イミド化剤で処理することによって得られる。
Figure 0007648853000001
(ここで、R及びRはそれぞれ独立に、水素または炭素数1~8のアルキル基を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。)
本実施形態に係るグルタルイミド環の含有率は、例えば以下の方法で測定できる値である。H-NMRを用いて行う。3.5ppmから3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO-CHプロトン由来のピークの面積と、3.0ppmから3.3ppm付近のグルタルイミド基のN-Rプロトン由来のピーク面積より、求められたモル比を用いて重量換算を行う。
イミド化剤で処理する工程において、メタクリル酸メチル以外にも、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなども併用してよいが、これらを併用する場合はアクリル酸エステル単位が1重量%未満であることが好ましい。さらにアクリル酸エステル単位が0.5重量%未満であることがより好ましく、0.3重量%未満であることがさらに好ましい。
また、上記モノマー(単量体)以外にも、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、スチレンなどの芳香族ビニル系モノマーを共重合することも可能である。
上記メタクリル酸メチル樹脂の構造は、特に限定されるものではなく、リニアー(鎖状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、及び架橋ポリマー等のいずれであってもよい。
ブロックポリマーの場合、A-B型、A-B-C型、A-B-A型、及びこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコア及びただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
ポリメタクリル酸メチルの製造方法としては、特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化-懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが適用可能であるが、光学分野に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。例えば、特開昭56-8404、特公平6-86492、特公平7-37482、あるいは特公昭52-32665などに記載の方法に準じて製造できる。
本実施形態のアクリル系樹脂の製造方法は、メタクリル酸メチル樹脂または、上記メタクリル酸メチルモノマー以外のモノマーを共重合したアクリル系樹脂を加熱溶融して、イミド化剤で処理する工程(イミド化工程)を含む。これによりグルタルイミドを有するアクリル系樹脂を製造できる。
イミド化剤は一般式(1)で表されるグルタルイミド環を生成できるものであれば特に制限されず、WO2005/054311記載のもの等が挙げられる。具体的には、例えば、アンモニア、メチルアミン、n-プロピルアミン、i-プロピルアミン、n-ブチルアミン、i-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素含有アミンを挙げることができる。また、尿素、1,3-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ジプロピル尿素のように、加熱により、例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。これらのイミド化剤のうち、コスト、物性の両面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。常温にてガス状のメチルアミンなどは、メタノールなどのアルコール類に溶解させた状態で使用してもよい。
このイミド化工程において、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるアクリル系樹脂におけるグルタルイミド単位および(メタ)アクリル酸エステル単位の割合を調整することができる。
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるアクリル系樹脂の物性や、本実施形態にかかるアクリル系樹脂を成形してなる延伸フィルムの透明性等を調整することができる。
イミド化剤はメタクリル酸メチル単位を含むアクリル系樹脂100重量部に対して0.5重量部~20重量部であることが好ましい。イミド化剤の添加量がこの範囲内の場合、樹脂中にイミド化剤が残存しにくく、成形後の外観欠陥や発泡を誘発する可能性が極めて低い。また、最終的に得られる樹脂組成物のグルタルイミド環の含有率も適切になるため、その耐熱性が低下しにくく、成形後の外観欠陥を誘発しにくくなり、好ましい。
このイミド化の工程においては、イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤(触媒)を添加してもよい。
加熱溶融し、イミド化剤と処理する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いる方法により、上記メタクリル酸メチル単位を含むアクリル系樹脂をイミド化することができる。
押出機は特に限定されるものではない。例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。二軸押出機を用いる場合、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができ、好ましい。
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、メタクリル酸メチル樹脂を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
この場合、押出機中で処理する温度(樹脂温度)や時間(反応時間)、樹脂圧もグルタルイミド化が可能であれば特に制限されない。
押出機を使用する場合は、未反応のイミド化剤や副生成物を除去するために、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することも好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生成物やモノマー類を除去することができる。
主鎖にグルタルイミド環を含有するアクリル系樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。メタクリル酸メチル単位を含むアクリル系樹脂を加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008-273140、特開2008-274187記載の方法など公知の方法をあげることができる。
本実施形態のアクリル系樹脂の製造方法では、上記イミド化工程に加え、エステル化剤で処理する工程を含むことができる。このエステル化工程によって、イミド化工程で得られたイミド化樹脂の酸価を所望の範囲内に調整することができる。
エステル化剤としては、分子鎖中に残存するカルボキシル基をエステル化できれば特に制限されない。例えば、ジメチルカーボネート、2,2-ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミドなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネート、トリメチルオルトアセテートが好ましく、コストの観点からジメチルカーボネートが好ましい。
このイミド化工程において、エステル化剤はメタクリル酸メチル単位を含むアクリル系樹脂100重量部に対して0重量部~30重量部であることが好ましく、0重量部~15重量部であることがより好ましい。エステル化剤がこれらの範囲内であれば酸価を適切な範囲に調整できる。一方、この範囲より多い場合は未反応のエステル化剤が樹脂中に残存する可能性があり、得られた樹脂を使って成形を行った際、発泡や臭気発生の原因となることがある。
エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒はエステル化を促進することができれば特に限定されるものではない。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンが挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
このエステル化工程では、エステル化剤によって処理することなく、加熱処理等のみを行うこともできる。加熱処理(押出機内での溶融樹脂の混練や分散など)のみを行った場合、イミド化工程にて副生したグルタルイミド環を有するアクリル系樹脂中のカルボキシル基同士の脱水反応やカルボキシル基とアルキルオキシカルボニル基の脱アルコール反応、等によりカルボキシル基の一部または全部を酸無水物基とすることができる。このとき、閉環促進剤(触媒)を使用することも可能である。エステル化剤によって処理する場合であっても、加熱処理による酸無水物基化を進行させることも可能である。
イミド化工程およびエステル化工程を経たイミド樹脂中には、未反応のイミド化剤や、未反応のエステル化剤、反応により副生した揮発成分および樹脂分解物等を含んでいるため、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが可能である。
(主鎖にラクトン環を有するアクリル系樹脂)
主鎖に環構造としてラクトン環を有するアクリル系樹脂は、分子内にラクトン環構造を持つ熱可塑性の重合体(分子鎖中にラクトン環構造が導入された熱可塑性の重合体)であれば、限定はされず、その製造方法についても限定されないが、好ましくは、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を重合によって得た(重合工程)後に、得られた重合体(a)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入する(ラクトン環化縮合工程)ことによって得られる。
重合工程においては、下記一般式(2)で表される不飽和単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得る。
Figure 0007648853000002
(ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。)。
一般式(2)で表される不飽和単量体としては、例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。なかでも、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性を向上させる効果が高い点で、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。これらの不飽和単量体は1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
単量体成分中の一般式(2)で表される不飽和単量体の含有割合は、5重量%~50重量%が好ましく、より好ましくは10重量%~40重量%、さらに好ましくは10重量%~30重量%である。上記含有割合が5重量%よりも少ないと、得られるラクトン環含有重合体の耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が低下するおそれがあり、50重量%よりも多いと、ラクトン環構造を形成する際に架橋反応が起こってゲル化し易くなり、流動性が低下して溶融成形しにくくなる場合があったり、未反応の水酸基が残りやすくなるために成形の際にさらに縮合反応が進行して揮発性物質が発生してシルバーストリークが入りやすくなったり、厚み方向位相差Rthが増大するなどのおそれがある。
単量体成分は一般式(2)で表される不飽和単量体以外の、その他の単量体を含むことが好ましい。該その他の単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲で選択すれば、限定はされないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(3)で表される不飽和単量体が好ましく挙げられる。上記その他の単量体は、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
Figure 0007648853000003
(ただし、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、-OAc基、-CN基または-CO-R基を表し、Ac基はアセチル基を表し、Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。)
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、一般式(2)で表される不飽和単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば、限定はされないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステルが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なかでも特に、耐熱性、透明性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、10重量%~95重量%が好ましく、より好ましくは10重量%~90重量%、さらに好ましくは40重量%~90重量%、特に好ましくは50重量%~90重量%である。
(主鎖に無水マレイン酸、マレイミドおよび無水グルタル酸構造を有するアクリル系樹脂)
本実施形態においては、主鎖に環構造としてマレイミドや無水グルタル酸構造を有するアクリル系樹脂を用いることも好ましい。無水マレイン酸構造としては、例えば、スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。マレイミド構造としては、例えば、特開2004-45893に記載されているようなオレフィン・マレイミド共重合体などが挙げられる。無水グルタル酸構造としては、例えば特開2003-137937に記載されているような無水グルタル酸単位を有する共重合体が挙げられる。
(主鎖に環構造を有さないアクリル系樹脂)
ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸などのカルボキシル基を導入する手法が挙げられる。カルボキシル基が一定量以上になると、架橋体を形成するリスクが生じたり、製膜するときに発泡するリスクが増大したりするため、ある一定量以下に抑えることが好ましい。具体的にはアクリル系樹脂中のカルボキシル基の量は0.6mmol/g以下、好ましくは0.4mmol/g以下であることが好ましい。
ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂としては、三連子表示のシンジオタクティシティが54%以上であるアクリル系樹脂を好適に利用することができる。アクリル系樹脂の三連子表示のシンジオタクティシティが54%以上であると、アクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなり、アクリル系樹脂の耐熱性が向上する傾向にある。アクリル系樹脂の三連子表示のシンジオタクティシティは、55%以上であることが好ましく、56%以上であることがより好ましく、57%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系樹脂の三連子表示のシンジオタクティシティは、アクリル系樹脂の成形加工温度、成形体の靭性および二次加工性の観点から、67%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、63%以下であることがさらに好ましい。
アクリル系樹脂の三連子表示のシンジオタクティシティは、3つの構造単位の連鎖(三連子)がrrである割合である。なお、2つの構造単位の連鎖(二連子)において、立体配置が同じものをメソ(m)、逆のものをラセモ(r)と称する。
三連子表示のシンジオタクティシティが55%以上であるアクリル系樹脂の合成方法としては、特に限定されないが、例えば、アニオン重合法、ラジカル重合法が挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合法が好ましい(例えば、国際公開第2023/238885号、国際公開第2023/238886号参照)。ラジカル重合法では、アニオン重合法で使用される、重合開始剤としての有機金属化合物や、媒体としての有機溶剤を使用しないため、不純物が残存し難く、環境面の観点で好ましい。ここで、アクリル系樹脂のガラス転移温度および三連子表示のシンジオタクティシティは、アクリル系樹脂の重合温度によって制御することができる。例えば、アクリル系樹脂の重合温度を低くすることで、アクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなるとともに、アクリル系樹脂のシンジオタクティシティが大きくなる。また、アクリル系樹脂のガラス転移温度は、アクリル系樹脂の分子量によっても制御することができる。
三連子表示のシンジオタクティシティが54%以上であるアクリル系樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有率は、98重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることがさらに好ましい。
三連子表示のシンジオタクティシティが54%以上であるアクリル系樹脂を構成するメタクリル酸メチル以外の単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル等のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニル等のアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ノルボルネニル等のアクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルネニル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリルが挙げられる。
(アクリル系樹脂の他の特性)
以下、主鎖に環構造を有するアクリル系樹脂および主鎖に環構造を有さないアクリル系樹脂の他の特性について説明する。以下、「アクリル系樹脂」との記載は、主鎖に環構造を有するアクリル系樹脂および主鎖に環構造を有さないアクリル系樹脂の少なくともいずれかを意味するものとする。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、5万以上20万以下であることが好ましく、9万以上15万以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が5万以上であると、アクリル系樹脂の成形体の機械的特性が向上する傾向にあり、20万以下であると、アクリル系樹脂の成形性が向上する傾向にある。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、40万以上であってもよい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が40万以上であると、アクリル系樹脂の成形体の機械的特性がさらに向上する傾向にあり、例えば、屈曲耐性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。この場合、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、60万以上であることが好ましく、70万以上であることがより好ましく、80万以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、アクリル系樹脂の成形性の観点から、250万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましく、150万以下であることがさらに好ましく、120万以下であることが特に好ましい。
アクリル系樹脂の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(分散度)は、1.6以上2.5以下であることが好ましく、1.7以上2.2以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂の分散度が1.6以上であると、アクリル系樹脂の流動性が向上して成形しやすくなる傾向にあり、2.5以下であると、アクリル系樹脂の成形体の耐衝撃性、靭性、屈曲耐性等の機械的特性が向上する傾向にある。
なお、アクリル系樹脂の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。また、アクリル系樹脂の数平均分子量および重量平均分子量は、アクリル系樹脂を合成する際に使用される重合開始剤および連鎖移動剤の種類、使用量によって制御することができる。
(アクリル系樹脂組成物)
アクリル系樹脂フィルムとしては、アクリル系樹脂に添加剤を添加したアクリル系樹脂組成物を用いても良く、アンチブロッキング剤と添加剤を併用することもできる。添加剤としては、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブルーライトカットを目的とした特定波長吸収剤もしくは特定波長吸収色素、ラジカル捕捉剤などの耐光性安定剤や、位相差調整剤、触媒、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤、蛍光増白剤、相溶化剤等を単独または2種以上組み合わせて、本発明の目的を損なわない範囲であれば添加してもよい。
紫外線吸収剤については、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジン系化合物およびオキサジアゾール系化合物等が挙げられる。これらの中でも添加量に対する紫外線吸収性能や溶融押出をする場合、揮発性の観点でトリアジン系化合物が好ましい。
位相差調整剤については、負の位相差を付与する場合は、例えばスチレン骨格を持つ化合物であればよく、アクリロニトリル-スチレン共重合体が例示される。
アクリル系樹脂とアンチブロッキング剤の混合方法に関しては、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、重量式フィーダーを用いて押出機に供給し溶融混練りする方法や、アクリル系樹脂およびアンチブロッキング剤ともに相溶性に優れた溶媒により溶液の状態で混合する等が挙げられる。
押出機を用いて混合する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。中でも二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、アクリル系樹脂とアンチブロッキング剤を均一混合する条件の自由度が広い。また、押出機の上流側から原料投入ホッパー等を用いてアクリル系樹脂及びアンチブロッキング剤を投入し混合しても良いし、アンチブロッキング剤のみを、押出機の途中からサイドフィーダーや、重量式フィーダー等を用いて投入し混合してもよい。もしくは事前に別の押出機でアンチブロッキング剤をマスターバッチにしたものを使用しても良い。
樹脂中の異物低減を目的として、押出機の最後にフィルターを設置することも可能である。フィルターの前には(A)アクリル系樹脂/アクリル系樹脂組成物を昇圧するためにギアポンプを設置した方が好ましい。フィルターの種類としては、溶融ポリマーからの異物除去が可能なステンレス鋼製のリーフディスクフィルターを使用するのが好ましく、フィルターエレメントとしてはファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプを使用するのが好ましい。
(アクリル系樹脂フィルムの製造方法)
本発明の延伸フィルムの製造方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本実施形態のアクリル系樹脂組成物を成形してフィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、等を挙げることが出来る。また、本実施形態に係るアクリル系樹脂組成物を溶解可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法によって、本実施形態に係るフィルムを製造することが出来る。
中でも溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
本実施形態のアクリル系樹脂組成物を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本実施形態のアクリル系樹脂組成物を、予備乾燥し、その後押出機に供給し、該アクリル系樹脂組成物を加熱溶融させる。さらに、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイなどのダイスに供給する。次に、Tダイに供給されたアクリル系樹脂組成物を、シート状の溶融樹脂として押し出し、冷却ロールなどを用いて冷却固化して、未延伸フィルム(原反フィルムともいう)を得る。この際、フィルムの表面性(平滑性)を良好にするために、金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールに挟み込むことも可能である。
本実施形態のアクリル系樹脂組成物を溶液流延法により未延伸フィルムに成形する場合、本実施形態のアクリル系樹脂組成物を有機溶媒とともに溶液とした後、当該溶液を支持体に流延し、加熱乾燥して未延伸フィルムを製造する方法である。溶液流延法に用いることができる溶剤は、公知の溶剤から選択され得る。塩化メチレンおよびトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤は本実施形態のアクリル系樹脂を溶解しやすく、また沸点も低いため好ましい溶剤である。また、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどの、極性の高い非ハロゲン系の溶剤も用いることができる。さらに、トルエン、キシレンおよびアニソール等の芳香族系溶剤、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフランおよびピラン等の環状エーテル系溶剤、ならびにメチルエチルケトン等のケトン系の溶剤も使用可能である。これらの溶剤は単独で使用してもよい。また、複数種を混合して用いてもよい。溶剤の使用量は、キャスティングを充分に行える程度に熱可塑性樹脂を溶解し得る限り、任意の量とすることができる。なお、本明細書中で「溶解」とは、キャスティングを充分に行える程度の均一な状態で樹脂が溶媒中に存在していることをいう。必ずしも、完全に溶質が溶媒に溶解していることを必要としない。溶液中の樹脂濃度は、好ましくは、1重量%~90重量%であり、より好ましくは、5重量%~70重量%であり、さらに好ましくは、10重量%~50重量%である。好ましい支持体としては、ステンレス鋼製のエンドレスベルトを用いてもよい。あるいはポリイミドフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルム等のような、フィルムを用いることもできる。
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムは未延伸フィルム(原反フィルムともいう)を延伸して得られる。未延伸フィルムを延伸することにより所望の厚みの延伸フィルムを製造することが可能であり、更には、延伸フィルムの機械的特性を向上させることができる。
延伸方法としては従来公知の方法を用いることができる。例えば溶融押出により成形した未延伸の原反フィルムを、一軸延伸または二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造することができる。延伸フィルムの長手方向(MD方向)、幅方向(TD方向)共に優れた機械的特性を持たせる為には二軸延伸することが好ましい。二軸延伸方法としては、同時二軸延伸であっても、逐次二軸延伸であってもよい。
延伸倍率については(二軸延伸である場合はフィルムのMD方向、TD方向共に)、1.5倍~3.0倍であることが好ましく、1.8倍~2.8倍であることがより好ましい。延伸倍率がこの範囲内であれば、延伸に伴うフィルムの機械的特性を充分に向上させることができる。また配向度が上がりすぎることもなく、85℃、85%RH雰囲気下に120時間静置した際における寸法変化を小さくでき、さらには偏光子に貼合した際の剥離強度が低下する可能性も小さい。延伸速度については、1.1倍/分以上で行うことが好ましく、5倍/分以上で行うことがより好ましい。また、100倍/分以下であることが好ましく、50倍/分以下であることがより好ましい。逐次二軸延伸の場合は、一段目の延伸速度と二段目の延伸速度が同じでも、異なっていてもよい。逐次二軸延伸において、通常、一段目の延伸は長手方向(MD方向)の延伸であり、二段目の延伸は幅方向(TD方向)の延伸である。
延伸温度は、特に限定されないが、Tg+7℃~Tg+50℃で行うことが好ましく、Tg+10℃~Tg+40℃で行うことがより好ましい。延伸温度がTg+7℃以上の場合、延伸工程において破断リスクを抑制できる。一方、延伸温度がTg+50℃以下の場合、十分な分子配向が得られ、フィルムの機械強度が低下することを抑制できる。上述の範囲内で延伸温度が高い場合は分子配向が緩和されるため機械強度が低下する一方で、85℃85%RH雰囲気下における寸法変化が小さくなる。また、アンチブロッキング剤を含有するフィルムの場合、低温で延伸すると粒子が表面に浮き出やすく、表面粗さ、滑り性、外部ヘイズが発現しやすい。当業者は上記のバランスを考慮して任意に延伸条件を設定することができる。
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムは、公知の方法でロール状に巻き取られる。本実施形態にかかるフィルムによれば、フィルム幅が広くなった場合や巻き取り長が長くなった場合でもフィルム間のブロッキングに起因する欠陥が発生しにくい。また従来、ブロッキング対策に用いられている端部のナール加工等も組み合わせるとより効果的である。
(用途)
本実施形態のアクリル系樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして使用する場合は、偏光子と貼合されて偏光板となる。偏光子は特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
この偏光板はさらに種々のフィルムと貼り合わされて、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイ分野等に好適に用いることができる。ただし、その用途については、これらに限定されるものではない。
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
(表面粗さ)
JIS B 0601:2013に準拠してエビデント製のレーザー顕微鏡 LEXT OLS5100を用いて、アクリル系樹脂フィルムの表面粗さを測定した。具体的には、まず、倍率50倍、開口数0.95の対物レンズを使用し、フィルムの257μm×257μmの範囲の共焦点画像を取り込んだ。次いで、MD方向、TD方向それぞれに対して評価線を均等間隔に3本ずつ引き粗さ曲線を抽出した。得られた粗さ曲線から解析ソフトにより、10点平均粗さRzjisを算出しその測定位置における平均値を算出した。測定は測定位置を変えて5回行い、それらの平均値を表面粗さとして採用した。ただし、画像から明らかに傷などの部分的な異常が認められた場合、測定値には入れず、異常部を避けて再度測定し直した。
(静摩擦係数)
JIS K7125:1999に準拠して、イマダ製のデジタルフォースゲージZTS-5Nおよび摩擦係数測定治具COF-2N-Vを用いて、アクリル系樹脂フィルムの静摩擦係数を測定した。具体的には、フィルムのA面を平滑なステンレス鋼板上に固定し、60×60mm 重さ200gのスレッドにフィルムのB面を両面テープで接着し、滑車を介して100mm/minの速度でスレッドを移動させた際の荷重をロードセルで読み取り静摩擦係数を算出した。測定はフィルム片を取り換えて5回実施し、平均値を算出した。
(ヘイズ、内部ヘイズ)
JIS 7136:2000に準拠し、日本電色工業製のヘイズメーターNDH2000を用いて、アクリル系樹脂フィルムのヘイズを測定した。また、液体測定用ガラスセルにアクリル系樹脂フィルムをいれ、アクリル系樹脂フィルムの両面に蒸留水が接触するようにして、アクリル系樹脂フィルムの内部ヘイズを測定した。
(ガラス転移温度)
アクリル系樹脂またはアクリル系樹脂組成物10mgを用いて、アクリル系樹脂またはアクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度を測定した。具体的には、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス製、DSC7000X)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで昇温し、中点法により、ガラス転移温度を決定した。
(寸法変化率)
アクリル系樹脂フィルムから90mm×90mmの大きさにカッターを用いて切り出したフィルムの四隅から対角線の内側方向へ20mmの場所に直径1mmのポンチで孔を開け、ミツトヨ製のMF201型三次元測定器を用いて孔間隔を測定した。続いて孔間隔を測定した延伸フィルムを、85℃、85%RHに設定したナガノサイエンス製のLH-20型環境試験機中で120時間静置した後の孔間隔を再度測定した。85℃、85%RHの雰囲気下での静置前後の孔間隔から、式(A)により、寸法変化率を算出した。
(アクリル系樹脂組成物およびアクリル系架橋粒子の屈折率)
まず、JIS K7142:2014に準拠して、以下のようにアクリル系樹脂組成物の屈折率を求めた。具体的には、アクリル系樹脂組成物を、240℃で溶融プレスして100μm厚みのフィルムとし、得られたフィルムの屈折率(波長589nm)を、屈折率計(アタゴ社製、デジタルアッベ屈折率計DR-M2)を用いて23℃の条件下で測定した。得られた屈折率を、アクリル系樹脂組成物の屈折率とした。
次に、ハロゲン系の高屈折率液体と、メタノールなどの低屈折率液体とを用い、比率を変えた混合液を用いて、以下の方法によりアクリル系架橋粒子の屈折率を求めた。ここで、混合液にアクリル系架橋粒子を分散させ、混合液とアクリル系架橋粒子の屈折率が一致しないときは白濁した分散液となり、混合液とアクリル系架橋粒子の屈折率が一致したときは透明な液体となる。このため、透明な液体となった時の混合液の屈折率をアクリル系架橋粒子の屈折率とした。
<アクリル系樹脂の製造>
(アクリル系樹脂1の製造例)
使用した押出機は口径40mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=90)である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を250~280℃、スクリュー回転数は85rpmとした。メタクリル酸メチル樹脂をニーディングブロックによって溶融、充満させた後、ノズルから上記メタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して1.8重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学(株)製)を注入した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、樹脂(I)を得た。次いで、口径40mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機の各温調ゾーンの設定温度を240~260℃とした。ノズルから上記メタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して0.56重量部の炭酸ジメチルを注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルを除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、グルタルイミド環を有するアクリル系樹脂1を得た。当該アクリル系樹脂1のガラス転移温度は123℃であり、Mwは8.1万であり、Mw/Mnは1.59であった。
(環構造の含有率の算出)
得られたアクリル系樹脂をH-NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて測定を行った。対象となる環構造部分とそれ以外の部分のモル比から重量換算を行い算出した。具体的にグルタルイミドのケースでは、3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO-CHプロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN-CHプロトン由来のピークの面積Bより、求められたモル比を用いて重量換算を行い算出したところ環構造含有率は6重量%だった。
(実施例1)
上記、アクリル系樹脂製造例で製造したアクリル系樹脂1と、アンチブロッキング剤(AB剤)としての、平均粒子径1.2μmのアクリル系架橋粒子(根上工業製 J-3PY、屈折率1.49)0.08重量%とを含む混合物を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=45)にて混練した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、アクリル系樹脂組成物(屈折率1.49)を得た。
得られたアクリル系樹脂組成物を、100℃で5時間乾燥後、押出機出口にTダイを備えた口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=45)を用いて製膜した。押出機出口に設けられたTダイから押し出されたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅160mm、厚み160μmの原反フィルムを得た。この際、キャストロールに接触する面をB面とし、もう一方の面をA面と定義した。
原反フィルムについて、上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、123℃であった。
得られた原反フィルムを、井元製作所製の二軸延伸装置(IMC-1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、145℃で同時二軸延伸を行い、延伸フィルム(アクリル系樹脂フィルム)を作製した。
(ブロッキング試験)
100mm×100mmの10枚の試験片(アクリル系樹脂フィルム)を重ねた後、上から1kgの圧力をかけて60℃で2時間放置した。その後、23℃で1時間放冷し、アクリル系樹脂フィルムの状態を目視で確認するとともに、アクリル系樹脂フィルムを手で剥離し、下記の基準で判定した。
1:フィルム同士が強く固着しており、剥離した際にフィルムに剥離痕が生じる。
2:フィルム同士が固着しており、剥離した際にフィルムに剥離痕が生じない。
3:フィルム同士の固着が見られない。
表1に、Rzjis、静摩擦係数、ヘイズ、内部ヘイズ、ガラス転移温度、寸法変化率およびブロッキング試験の評価結果を示す。
(実施例2)
AB剤の添加量を0.12重量%にしたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂組成物(屈折率1.49)を得、当該アクリル系樹脂組成物を用いてアクリル系樹脂フィルムを取得した。
(比較例1)
AB剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系樹脂フィルムを取得した。
(比較例2)
平均粒子径1.2μmのアクリル系架橋粒子の代わりに、平均粒子径0.8μmのアクリル系架橋粒子(綜研化学製 MX80H3wT、屈折率1.49)を用い、添加量を0.03重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系樹脂フィルムを取得した。
(比較例3)
AB剤の添加量を1.0重量%としたこと以外は、比較例2と同様にしてアクリル系樹脂フィルムを取得した。
(比較例4)
アクリル系樹脂1に替えて環構造を含まないPMMA樹脂であるパラペットHM(クラレ製、屈折率1.49、Tg118℃、Mw=7.8万、Mw/Mn=1.72)をアクリル系樹脂2として使用し、平均粒子径0.8μmのアクリル系架橋粒子の添加量を0.1重量%にしたこと以外は、比較例2と同様にアクリル系樹脂フィルムを取得した。
Figure 0007648853000004
表1から、実施例1、2のアクリル系樹脂フィルムは、透明性および耐熱性に優れ、フィルムロール保管時のブロッキングを防止しうることがわかる。これに対して、比較例1のアクリル系樹脂フィルムは、両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.104であり、静摩擦係数が2.50であるため、フィルムロール保管時のブロッキングを防止することができない。比較例2のアクリル系樹脂フィルムは、両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.113であり、静摩擦係数が1.80であるため、フィルムロール保管時のブロッキングを防止することができない。比較例3のアクリル系樹脂フィルムは、両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が1.130であるため、透明性が低下する。比較例4のアクリル系樹脂フィルムは、ガラス転移温度が118℃であるため、耐熱性が低下する。
<アクリル系樹脂の製造>
(アクリル系樹脂3の製造例)
H型撹拌翼を有する撹拌機を備えた4Lのガラス製反応器に、脱イオン水150重量部、分散剤としての、第三リン酸カルシウム0.20重量部、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム0.0075重量部および塩化ナトリウム0.30重量部を仕込んだ。次に、窒素雰囲気下、250rpmで撹拌しながら、メタクリル酸メチル(MMA)100重量部、連鎖移動剤としての、n-オクチルメルカプタン0.289重量部および重合開始剤としての、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(富士フイルム和光純薬製、V-601)0.065重量部を反応器に加えた。次に、反応器内の液温を70℃に昇温して重合を開始し、重合を開始して2時間後に第三リン酸カルシウム0.10重量部を反応器に加えた。このとき、重合を開始して4時間20分後に、ゲル効果に伴う発熱ピークが観察された。次に、重合を開始して7時間後から加熱を開始し、反応器内の液温を95℃まで昇温した。なお、重合を開始して7時間後の転化率は93%であった。次に、反応器内の液温が95℃に到達して2時間後に、反応器内の液温を室温まで冷却して重合を終了し、アクリル系樹脂分散液を得た。なお、重合を終了した時の転化率は99%であった。
仕込んだ単量体の重量に対して、重量比で0.1倍量の1規定塩酸を用いて、アクリル系樹脂分散液を酸洗浄した後、水洗することで、分散剤を除去した。次に、洗浄されたアクリル系樹脂分散液を脱水した後、乾燥させることにより、ビーズ状のアクリル系樹脂3を得た。アクリル系樹脂3は、ガラス転移温度は120℃であり、三連子表示のシンジオタクティシティが57%であり、Mwが8.3万であり、Mw/Mnが1.63であり、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有率が100重量%であった。
(転化率)
重量法により、仕込んだ単量体の重量に対する、150℃に加熱したオーブンで30min乾燥させた後のアクリル系樹脂の固形分重量の割合、すなわち、式
(アクリル系樹脂の固形分重量)×100/(仕込んだ単量体の重量)
から転化率を求めた。
(三連子表示のシンジオタクティシティ)
核磁気共鳴装置(Bruker製、AVANCEIII 400MHz)を用いて、重水素化クロロホルム溶液中、22℃、積算回数16回の条件で、アクリル系樹脂のH-NMRスペクトルを測定した。次に、テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとした際の0.60~0.95ppmの領域の面積(X)および0.60~1.25ppmの領域の面積(Y)を計測した後、式
(X/Y)×100
により、三連子表示のシンジオタクティシティを算出した。
(重量平均分子量、数平均分子量および分散度)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分散度(Mw/Mn)を算出した。このとき、アクリル系樹脂20mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解して調製した試料溶液を用いて、以下の条件で分析を実施した。
測定機器:HLC-8420GPC(東ソー製)
検出器:RI検出器
溶離剤:テトラヒドロフラン
ガードカラム:TSKgel guardcolumn SuperH-L(東ソー製)
分析カラム:TSKgel SuperH5000、SuperH4000、SuperH3000、SuperH2000(東ソー製)(直列)
溶離剤流量:0.6mL/min
測定温度:40℃
標準物質:標準ポリスチレン(東ソー製)
(実施例3)
アクリル系樹脂1に替えてアクリル系樹脂3を使用し、平均粒子径0.8μmのアクリル系架橋粒子0.1重量%に替えて平均粒子径2.2μmのアクリル系架橋粒子(根上工業製 J-4PY、屈折率1.50)0.12重量%を使用したこと以外は、実施例1と同様にアクリル系樹脂フィルムを取得した。
(比較例5)
AB剤を加えなかったこと以外は、実施例3と同様にアクリル系樹脂フィルムを取得した。
Figure 0007648853000005
表2から、実施例3のアクリル系樹脂フィルムは、透明性および耐熱性に優れ、フィルムロール保管時のブロッキングを防止しうることがわかる。これに対して、比較例5のアクリル系樹脂フィルムは、両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.030であり、静摩擦係数が1.94であるため、フィルムロール保管時のブロッキングを防止することができない。

Claims (12)

  1. アクリル系樹脂を主成分とし、アクリル系架橋粒子を含むアクリル系樹脂フィルムであって、
    前記アクリル系架橋粒子は、平均粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であり、
    前記アクリル系樹脂フィルムは、前記アクリル系架橋粒子を0.05重量%以上0.2重量%以下含み、
    前記アクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度が120℃以上であり、
    前記アクリル系樹脂フィルムの両面の各々の10点平均粗さRzjisの和が0.05μm以上1.0μm以下であり、一方の面および他方の面の静摩擦係数が0.8以下であり、前記アクリル系樹脂フィルムのヘイズが2.0%以下であり、かつ、前記アクリル系樹脂フィルムの内部ヘイズが0.5%以下である、アクリル系樹脂フィルム。
  2. 前記アクリル系樹脂フィルムの一方の面、および/または、他方の面の10点平均粗さRzjisが0.080μm超0.25μm以下である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  3. 前記アクリル系樹脂は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種類以上の環構造を含有する、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  4. 前記アクリル系樹脂は、三連子表示のシンジオタクティシティが54%以上である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  5. 前記アクリル系樹脂フィルムの内部ヘイズが0.2%以下である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  6. 前記アクリル系樹脂フィルムの内部ヘイズが0.1%以下である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  7. 前記アクリル系樹脂フィルムのヘイズが1.0%以下である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  8. 二軸延伸フィルムである、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  9. 前記アクリル系樹脂は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1.6以上2.5以下である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  10. 85℃、85%RHの雰囲気下に120時間静置した際の寸法変化率が-2.0%以上-0.1%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  11. 請求項1~のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムを備える、偏光板。
  12. 請求項11に記載の偏光板を備える、液晶表示パネル。
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