以下、本発明の実施形態及び実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態及び実施例は、図面を含めて例示に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また実施形態及び実施例の中で説明されている諸要素及びその組合せの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。また発明の構成に必須だが周知である構成については、図示及び説明を省略する場合がある。
以下の説明において、後出の実施形態又は実施例において、既出の実施形態又は実施例と重複する構成には同一符号を付与して説明を省略し、差分を中心に説明する。
以下の説明において、プログラムを実行するプロセッサ又はプログラムと同等の機能を実現するハードウェアロジックは、記憶部及び/又はインターフェース等を適宜用いながら定められた処理を行い、各種の機能部を実現する。
「プロセッサ」は、1又は複数である。プロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。またプロセッサは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。また、プロセッサは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサでもよい。
以下の説明において、例えば「y ̄」なる表記は、yの真上に ̄が記載された表記と同等である。
以下の説明において、判定対象と閾値との大小関係の判定における等号は、大小の何れの範囲に含めてもよい。例えば閾値Thに対して「A≧ThならばB、A<ThならばC」とするか「A>ThならばB、A≦ThならばB」とするかは、適宜変更し得る事項である。
[実施形態1]
図1は、実施形態に係る異常検出装置Sの構成を示す図である。本実施形態における異常検出装置Sは、計測器3、AD(Analog-Digital)変換部4、デジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7を含んで構成される。
計測器3は、異常検出対象のシステム1の正常や異常の状態を評価するために計測対象となるシステム1において計測される物理量2を計測する。AD変換部4は、計測器3によって計測された計測信号であるアナログ信号をデジタル信号(量子化データ)へ変換する。デジタル信号読込部5は、AD変換部4によって変換されたデジタル信号を読込んで演算処理可能なデータへ変換する。
分析部6は、デジタル信号読込部5によって読込まれたデジタル信号が変換されたデータのうちの最新データを含む時系列データを統計的手法に基づき分析し、時系列データの平均や時間変化率等の推定値と推定値の誤差や時系列データのバラつき度合(標準偏差等)を計算する。検出部7は、分析部6によって計算された推定値と推定値の誤差や時系列データのバラつき度合に基づいて、システム1の異常を検出する。
なおデジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7は、異常検出装置としてマイクロコンピュータやFPGAといったプロセッサで構成されてもよい。異常検出装置は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、複数のプロセッサで構成されてもよい。異常検出装置が複数のプロセッサで構成される場合には、デジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7が適宜統合及び分散されて各プロセッサに配置される。また異常検出装置と、AD変換部4とを含んで、異常検出システムとして構成されてもよい。異常検出システムは、さらに計測器3を含んでもよい。
図2は、実施形態に係る異常検出装置Sにおける計測器3の出力、AD変換、デジタル信号読込み、分析、及び、異常検出の動作開始及び動作完了のタイミングを示すタイミングチャートである。
異常検出対象のシステム1が電力システムや直流き電システムの場合における短絡電流および過負荷電流検出を例に説明する。この場合、物理量2は、例えば電路に流れる電流である。計測器3は、電流計測用の変流器やロゴスキーコイル、ホールCT(Current Transformer)等である。デジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7は、デジタルデータの演算処理やその他処理が可能なプロセッサである。
図2では、パルスの立上りが実行開始であり、立下りが動作完了である。計測器3の出力8は、継続してAD変換部4へ入力されることから、常時ONである。AD変換部の動作9は、リアルタイム性を確保できる所定周期Tでアナログ信号をデジタル信号へ変換することから、所定周期Tの変換処理の動作開始及び動作完了を繰返す。
デジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7の各動作(それぞれ動作10、動作11、及び動作12)は、AD変換部4の次の動作開始まで(すなわち、次のデジタル信号の入力まで)に完了する。デジタル信号読込部5の動作10は、AD変換部の動作9と略同期する。分析部6の動作11は、動作10が完了すると略同時に開始する。検出部7の動作12は、動作10が完了すると略同時に開始し、次の動作9の開始までに完了する。デジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7が、所定周期Tで開始及び完了を繰返すように、1周期における動作10と動作11と動作12の合計動作時間が所定周期T以内に定められている。このように、常に最新データを考慮して異常をリアルタイムに評価するため、早期の異常検出が可能になる。
以下、異常検出装置Sのうち、デジタル信号の時系列データを統計的手法に基づいて分析して平均や時間変化率等の推定値、推定値の誤差及び時系列データのバラつき度合を計算する分析部6、及び、分析部6による計算結果に基づきシステム1の異常を評価し検出する検出部7の詳細について説明する。
図3は、実施形態に係る分析部6による時系列データの平均y ̄と標準偏差σyの計算方法を説明するための図である。図3では、横軸を時刻x、縦軸を物理量2のデータyとする。例えば、物理量2が電流の場合、単位はアンペア(A)となる。
物理量2の時系列データに対し、N個のデータの平均y ̄とバラつき度合、すなわち標準偏差σyを計算する。図3では、簡単のためデータ数N=3の場合を示しており、1回目の計算では、x=[x1,x2,x3]、y=[y1,y2,y3]の平均と標準偏差を計算する。2回目の計算では、x=[x2,x3,x4]、y=[y2,y3,y4]、3回目の計算では、x=[x3,x4,x5]、y=[y3,y4,y5]の平均と標準偏差を計算する。
このように、新しいデータが入力されるごとに、FIFO(First IN First Out:先入れ先出し法)により、前回の計算に用いたデータのうちの最古のデータを破棄し、新しいデータを含めて新たに計算する。例えば、y4が入力される2回目の計算では、最古のデータx1、y1を破棄し、最新データx4、y4を含め、x=[x2,x3,x4]、y=[y2,y3,y4]の組合せで平均と標準偏差を求める。データが入力されるごとに新しいxとyを含んだ組合せについて平均と標準偏差の計算を繰返す。平均y ̄及び標準偏差σyは、式(1)及び式(2)から計算される。
ここで、y ̄はyの平均、jは計算回数、σyはyの標準偏差である。式(2)では不偏分散を用いて標準偏差を計算したが、1/(N-1)のN-1をNへ置き換えた普通分散でもよい。jは計算回数であるため、例えば、図3を用いて説明すると、N=3であり、2回目の計算では、i=j=2、j+N-1=4となり、i=2から4までのデータ(x=[x2,x3,x4]、y=[y2,y3,y4]の組合せ)の平均と標準偏差を計算する。平均y ̄、標準偏差σyを計算することで、平均に対してどれだけデータがバラついているかを評価できるため、例えば、計測器3に1%の誤差がある場合には計測器3で取得された時系列データの標準偏差が平均の1%よりも大きい場合はノイズが発生した等の推定が可能になる。このように標準偏差を異常検出の指標として用いることで検出精度を高めることができる。また、式(3)を標準偏差と代用して異常検出の指標としてもよい。
上記では、標準偏差σyを異常検出の指標として説明したが、標準偏差σy ̄を誤差の指標としてもよい。標準偏差σy ̄は、式(4)で計算できる。図4以降では、標準偏差σyを用いて異常の評価方法を説明するが、標準偏差σy ̄でも代用できるものとする。
図4は、物理量2の時系列データの平均y ̄と標準偏差σyと誤差y ̄errorの計算結果を示す図である。時刻xは1ずつ増え、物理量のデータyは2~4の間で変化する。図3の例と同様にデータ数N=3とした。例えば図3の表のi=1の行に示すように、x=[x1,x2,x3]、y=[y1,y2,y3]の平均y ̄は3.0、標準偏差σyは0.12、誤差4.1%である。またi=5の行に示すように、x=[x5,x6,x7]、y=[y5,y6,y7]の平均y ̄は3.2、標準偏差σyは0.41、誤差13.1%であり、x=[x1,x2,x3]、y=[y1,y2,y3]の場合に比べて標準偏差σy及び誤差y ̄errorが大きい。これは、y=[y5,y6,y7]のデータ範囲が2.6~3.6であり、y=[y1,y2,y3]のデータ範囲2.9~3.2に比べてデータのバラつきが大きいことが理由である。このように、データのバラつきに応じて標準偏差σy及び誤差y ̄errorは大きくなる。
図5は、物理量2の時系列データの平均y ̄と標準偏差σyに基づく異常評価方法(その1)を説明するための図である。図5では、横軸を平均y ̄、縦軸を標準偏差σyとする。図5では、物理量2が予め決められた基準値よりも大きい場合に異常とするシステムを例としている。横軸に点線で物理量2の基準値Cty ̄を示した。図5では、標準偏差σyが想定よりも大きい場合は推定値の信頼性が低く異常と判断しないものとするため、縦軸に標準偏差σyの基準値Ctσyも示しており、斜線部を異常判定領域とした。
標準偏差σyの基準値Ctσyは、例えば、計測器3の計測誤差から想定される値としてもよく、または、システムとしての物理量2の予想される変動幅から決めてもよい。何れの場合にしても、例えば、異常検出装置Sに想定外のノイズが入ってきた際には、標準偏差σyが大きくなるため平均y ̄の推定精度が基準値Cty ̄を超えても異常と評価せず、標準偏差σyが小さい場合は平均y ̄の推定精度が高くなるため、平均y ̄が基準値Cty ̄を超えた場合は異常と評価する。このように、標準偏差を考慮して異常を評価することで異常検出の精度と信頼性を高めることができる。
図6は、物理量2の時系列データの平均y ̄と標準偏差σyに基づく異常評価方法(その2)を説明するための図である。図6では、物理量2が予め決められた基準値Cty ̄よりも小さい場合に異常とするシステムを例としている。図6では、図5で示した例と同様に、標準偏差σyが想定よりも大きい場合は推定値の信頼性が低く異常と判断しないものとするため、縦軸に標準偏差σyの基準値Ctσyを示し、斜線部を異常判定領域とした。
図7は、物理量2の時系列データの平均と標準偏差y ̄と標準偏差σyに基づく異常評価方法(その3)を説明するための図である。図7では、正常時には標準偏差σyがどこまで変動し得るかあらかじめ基準値が決まっているシステムを例としている。標準偏差σyが基準値Ctσyを超えた場合に異常と評価して検出するため、斜線部を異常判定領域とした。
このように、本実施形態における異常検出装置Sでは、物理量2を計測器3で計測し、その計測したアナログ信号をデジタル信号に変換して処理するため、異常検出の対象とするシステム1に合わせて図5、図6、図7のように異常の検出条件を容易に変更できる。すなわち、標準偏差y ̄と標準偏差σyの特性曲線を求め、その特性曲線の上または下の領域を異常の検出条件としてもよい。また、図5、図6、図7では縦軸を標準偏差σyとしたが、標準偏差σyの代わりに式(3)の誤差y ̄errorや、式(4)の標準偏差σy ̄を用いてもよい。
図8は、物理量2の時系列データの時間変化率aとその標準偏差σaの計算方法を説明するための図である。図3では、横軸を時刻x、縦軸を物理量2のデータyとする。例えば、物理量2が電流の場合、単位はアンペア(A)となる。物理量2の時系列データに対し、N個のデータの時間変化率aとその標準偏差σaを計算する。図8では、簡単のためデータ数N=3の場合を示しており、1回目の計算では、x=[x1,x2,x3]、y=[y1,y2,y3]の時間変化率aとその標準偏差σaを計算する。2回目の計算では、x=[x2,x3,x4]、y=[y2,y3,y4]、3回目の計算では、x=[x3,x4,x5]、y=[y3,y4,y5]の時間変化率aとその標準偏差σaを計算する。
このように、新しいデータが入力されるごとに、FIFO(First IN First Out:先入れ先出し法)により、前回の計算に用いたデータのうちの最古のデータを破棄し、新しいデータを含めて新たに計算する。例えば、y4が入力される2回目の計算では、最古のデータx1、y1を破棄し、最新データx4、y4を含め、x=[x2,x3,x4]、y=[y2,y3,y4]の組合せで時間変化率aとその標準偏差σaを求める。データが入力されるごとに新しいxとyを含んだ組合せについて時間変化率aとその標準偏差σaの計算を繰返す。時間変化率a及び標準偏差σaは、例えば、回帰分析を用いて計算される。傾き(すなわち時間変化率)をa、切片をbとする回帰方程式をy=ax+bとする。yiと回帰方程式の誤差合計Wは、式(5)で表される。Nはデータ数であり、jは計算回数である。
例えば、図7を用いて説明すると、N=3、2回目の計算では、i=j=2、j+N-1=4となり、i=2から4までのデータに対して時間変化率a及び標準偏差σaを計算することになる。式(5)をa又はbで偏微分した値がゼロ、すなわち、δW/δa=0、δW/δb=0になるときのa及びbを求めることで誤差合計Wを最小にする傾きaと切片bの値を計算することができる。a及びbは、それぞれ、式(6)及び式(7)のように表される。
bは、aの導出後、一次回帰式y=ax+bから求めてもよい。実際には、これら推定値a、bは、平均y ̄と同様に推定値であるため、標準偏差σa(aの誤差)と標準偏差σb(bの誤差)を計算できる。データのバラつきが大きい場合、すなわちノイズが発生した場合等は標準偏差σa及び標準偏差σbは値が大きくなる。この場合には、式(8)、式(9)、式(10)に示すように、yの残差平方和Sy
2を求めた後にσaとσbを導出する。
時間変化率aの誤差aerrorを、式(11)のように定義してもよい。
上記では、回帰方程式を一次回帰式y=ax+bとして時間変化率を計算する手法を説明したが、対象とするシステム1における物理量2の時間変化が指数関数(例えば、物理量2=αexp(-βt)、α、βは係数、tは時間)等で表現できる場合は、その関数を回帰方程式として回帰分析を実施し、時間変化率と標準偏差を計算してもよい。
図9は、物理量2の時系列データの時間変化率aと時間変化率aの標準偏差σaの計算結果を示す図である。時刻xは1ずつ増え、物理量のデータyは2~10の間で変化する。図8の例と同様にデータ数N=3とした。例えば図3の表のi=1の行に示すように、x=[x1,x2,x3]、y=[y1,y2,y3]の時間変化率aは1、標準偏差σaは0、誤差aerrorは0%である。これは、xが1増えるごとにyが必ず1ずつ増えており、時間変化率aが誤差なく求まるためである。
一方、i=4の行に示すように、x=[x4,x5,x6]、y=[y4,y5,y6]の時間変化率aは-0.05、標準偏差σaは0.144、誤差aerrorは28.868%である。これは、y4=3.5、y5=3.2の2点から時間変化率aを求めた場合はマイナスになるが、y6=3.5であるためy5、y6から時間変化率aを求めた場合はプラスになるため、y4、y5、y6の3点で求める時間変化率aは正負の両方があるため、標準偏差σaと誤差aerrorが大きくなるためである。時間変化率aを用いて異常を検出する際は、標準偏差σaと誤差aerrorの大きさによって時間変化率aの推定精度を検証し、異常を評価する。
図10は、物理量2の時系列データの時間変化率aと標準偏差σaに基づく異常評価方法を説明するための図である。図10では、横軸を時間変化率a、縦軸を標準偏差σaとする。図10では、物理量2の時間変化率aが予め決められた基準値よりも大きい場合に異常とするシステムを例としている。横軸に点線で物理量2の時間変化率aの基準値Ctaを示した。図10では、標準偏差σaが想定よりも大きい場合は推定値の信頼性が低く異常と判断しないものとするため、縦軸に標準偏差σaの基準値Ctσaも示しており、斜線部を異常判定領域とした。
標準偏差σaの基準値Ctσaの基準値は、例えば、計測器3の計測誤差から想定される値を求めてもよく、または、システム1における物理量2の時間変化率aの予想される変動幅から決めてもよい。いずれの場合にしても、例えば、異常検出装置Sに想定外のノイズが入ってきた際には、標準偏差σaが基準値Ctσaよりも大きく時間変化率aの推定精度が低下するため、時間変化率aが基準値Ctaを超えても異常と評価せず、標準偏差σaが基準値Cta以下では時間変化率aの推定精度が高くなるため、時間変化率aが基準値Ctaを超えた場合は異常と評価する。このようにして、異常評価の精度と信頼性を高めることができる。
図5、図6、図7に示した物理量2の平均y ̄と標準偏差σyによる異常評価方法のように、回帰分析による時間変化率aとその標準偏差σaを用いた場合でも、対象とするシステムに応じて異常検出領域を定めればよい。例えば、物理量2の時間変化率aが予め決められた基準値Ctaよりも小さい場合に異常とする場合は、分析部6において計算された物理量2の時間変化率aが基準値Ctaよりも小、かつ、標準偏差σaが基準値Ctσa以下のときに異常と評価する。あるいは、物理量2の時間変化率aが予め決められた基準値Ctaよりも大きい場合に異常とする場合は、物理量2の時間変化率aが基準値Ctaよりも大、かつ、標準偏差σaが基準値Ctσa以下のときに異常と評価する。あるいは、標準偏差σaがどこまで変動し得るかあらかじめわかっているシステム1においては、標準偏差σaが基準値Ctσaを超えた場合には異常と判定する。
このように、本実施形態における異常検出装置Sでは、物理量2を計測器3で計測し、その計測したアナログ信号をデジタル信号に変換して統計処理するため、異常検出の対象とするシステム1に合わせて異常の検出条件を容易に変更できる。時間変化率aと標準偏差σaの特性曲線を求め、その特性曲線の上又は下の領域を異常の検出条件としてもよい。また縦軸を式(10)誤差aerrorとしてもよい。
図11は、物理量2の時系列データの平均y ̄と標準偏差σy、及び、物理量2の時系列データの時間変化率aと標準偏差σaを用いた異常評価方法を説明するための図である。図11では、横軸を平均y ̄、縦軸を時間変化率aとし、それぞれ基準値を点線で示した。図11に斜線で示すように、異常検出領域を平均y ̄が基準値Cty ̄以上かつ物理量2の時間変化aが基準値Cta以上を異常検出領域とする。このとき、時系列データの標準偏差σy及び時間変化aの標準偏差σaの少なくともどちらか一方がそれぞれの基準値Ctσy、Ctσaよりも大きい場合は異常と評価しない。すなわち、下記が異常検出条件となる。
(y ̄>Cty ̄)∧(σy<Ctσy)∧(a>Cta)∧(σa<Ctσa)
・・・(12)
図11の手法は、異常モードが物理量2の平均y ̄又は時間変化率aのどちらかに依存しているようなシステム1に有効である。平均y ̄、標準偏差σy(もしくは誤差y ̄error)、時間変化率a、時間変化率aの標準偏差σa(もしくは時間変化率aの誤差aerror)を用いて、システム1の異常検出領域を決める。
図11では、異常検出領域を物理量2の平均y ̄が基準値Cty ̄以上かつ物理量2の時間変化aが基準値Cta以上のときを異常検出領域としたが、対象とするシステム1や計測する物理量2によっては異常評価領域が異なるため、システム1の特徴に応じて異常領域検出領域を変更してよい。例えば、異常検出領域を物理量2の平均y ̄が基準値Cty ̄以下かつ物理量2の時間変化aが基準値Cta以下としてもよい。時系列データの標準偏差σyや時間変化率aの標準偏差σaの変動幅がどれだけあるか予め分かっているシステム1においては、標準偏差σyや標準偏差σaがそれぞれの基準値Cty ̄、Ctσaを超えたときに異常を検出してもよい。
実施例1では、実施形態にて説明した異常検出装置S及び異常検出方法を、鉄道の直流き電システムへ適用した例を説明する。なお、実施例1の図中の「cl」は遮断器の投入状態を示す。
図12は、実施例1に係る直流き電回路1Sの全体構成を示す図である。直流き電回路1Sは、第1の変電設備である変電所13(変電所A)と変電所13に隣接する第2の変電設備である変電所14(変電所B)を含んで構成される。変電所を変電システムともいう。変電所13は、電力網から交流電力を受電し、直流電力をき電線へ給電する変電システムを構成する。変電所13には、交流遮断器15、変圧器16、整流器17、直流遮断器18、直流遮断器19、直流遮断器20、及び、直流遮断器21が配置される。変電所13は、電力網から受電した交流電力を、変圧器16と整流器17を介して直流電力に変換し、き電線へ給電する。
変電所14には、交流遮断器22、変圧器23、整流器24、直流遮断器25、直流遮断器26、直流遮断器27、及び、直流遮断器28が配置される。変電所14は、変電所13と同様に、電力網から受電した交流電力を、変圧器23と整流器24を介して直流電力に変換し、き電線へ給電する。
正常時は、直流遮断器18、直流遮断器19、直流遮断器20、直流遮断器21、直流遮断器25、直流遮断器26、直流遮断器27、直流遮断器28、交流遮断器15、及び、交流遮断器22は投入状態にある。直流遮断器18は、上り架線29の区間Aに接続する。直流遮断器21と直流遮断器25は、上り架線29の区間Bに接続する。直流遮断器28は、上り架線29の区間Cに接続する。直流遮断器19は、下り架線30の区間Fに接続する。直流遮断器20と直流遮断器26は、下り架線30の区間Eに接続する。直流遮断器27は、下り架線30の区間Dに接続する。
そして、列車31は、区間Bを走行中の際、上り架線29を介して変電所13及び変電所14から直流電力が給電される。列車31へ給電された直流電力は、レール32を介して変電所13及び変電所14へ戻る。変電所13及び変電所14より列車に給電される電流の経路は、電流経路33及び電流経路34のようになる。
図12では、例えば、変電所13では、電流計測器35は、直流遮断器21の下流の電流を計測してそのアナログ信号を故障電流検出回路36に入力する。故障電流検出回路36は、直流選択遮断装置である。故障電流検出回路36は、入力されたアナログ信号に基づいて過負荷電流や短絡電流等の異常を評価する。故障電流検出回路36は、故障電流が発生した際には異常を検出して直流遮断器21を開放して電流を遮断する。図示しないが、直流遮断器18、直流遮断器19、及び、直流遮断器20にもそれぞれ電流計測器と故障電流検出回路が配置されている。各故障電流検出回路は、故障電流が発生した際は異常を検出して対応する直流遮断器18、直流遮断器19、及び、直流遮断器20をそれぞれ制御する。
変電所14でも同様に、電流計測器37は、直流遮断器25の下流の電流を計測してそのアナログ信号を故障電流検出回路38に入力する。故障電流検出回路38は、直流選択遮断装置である。故障電流検出回路38は、入力されたアナログ信号に基づいて短絡電流や負荷電流等の異常を評価する。故障電流検出回路38は、故障電流が発生した際は異常を検出して直流遮断器25を開放して電流を遮断する。図示しないが、直流遮断器26、直流遮断器27、及び、直流遮断器28にもそれぞれ電流計測器と故障電流検出回路が配置されている。各故障電流検出回路は、故障電流が発生した際は異常を検出して対応する直流遮断器26、直流遮断器27、及び、直流遮断器28をそれぞれ制御する。
図13は、実施例1に係る故障電流検出回路36の構成を示す図である。故障電流検出回路38も、故障電流検出回路36と同様の構成である。故障電流検出回路36には、電流計測器35で計測されたアナログ信号が入力される。故障電流検出回路36は、実施形態の図1で示した異常検出装置Sの構成と同様であり、AD変換部4、デジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7を含んで構成される。さらに故障電流検出回路36は、遮断器制御部7aを含んで構成される。
本実施例における分析部6では、電流Iの時系列データの平均I ̄、電流Iの時系列データの標準偏差σI、電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtとその標準偏差σdt/dIを計算する。これらの計算は、実施形態の図3及び図8で説明した手法による。検出部7において異常を検出した際は、遮断器制御部7aは、直流遮断器21に開放指令を送信し、直流遮断器21を制御する。
なお故障電流検出回路36は、マイクロコンピュータやFPGAといったプロセッサで構成されてもよい。故障電流検出回路36は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、複数のプロセッサで構成されてもよい。故障電流検出回路36が複数のプロセッサで構成される場合には、AD変換部4、デジタル信号読込部5、分析部6、検出部7、及び、遮断器制御部7aが適宜統合及び分散されて各プロセッサに配置される。例えばAD変換部4が1つのプロセッサに、デジタル信号読込部5、分析部6、検出部7、及び遮断器制御部7aが1つのプロセッサにそれぞれ配置されてもよい。あるいは、AD変換部4が1つのプロセッサに、デジタル信号読込部5、分析部6、及び検出部7が1つのプロセッサに、遮断器制御部7aが1つのプロセッサにそれぞれ配置されてもよい。
図14は、実施例1に係る直流き電回路1Sにおける過負荷電流と短絡電流の様相を示す図である。図14では、横軸を時刻t、縦軸を電流Iとする。直流き電システムでは、負荷電流が許容電流より大きくなった場合や短絡が発生した際には、故障電流の発生、すなわち、き電システムの異常として検出して直流遮断器を制御する。図14に示すように、過負荷電流39は、緩やかに増加して負荷の許容電流CtIより大きくなることを特徴とし、短絡電流40は、図14の例では故障点が変電所近傍であるため、時間変化率40aに示すように、当該変電所に配置された遮断器に流れる電流が短時間で増加する(時間変化率dI/dtが所定以上大きい)ことを特徴とする。故障電流検出回路36は、過負荷電流39と短絡電流40を選別して検出すると共に、ノイズ発生時には不要動作せず、かつ、早期に過負荷および短絡の異常を検出することが要請される。以上から、実施形態で示した異常検出装置及び異常検出方法を直流き電システムへ適用することができる。
図15A及び図15Bは、実施例1に係る過負荷電流と短絡電流の検出方法を説明するための図である。図15Aでは、横軸を電流Iの時系列データの平均I ̄、縦軸を電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtとしている。また図15Aでは、電流Iの基準値をI1、I2、電流Iの時間変化率dI/dtの基準値をA1としている。図15Bでは、横軸を電流Iの時系列データの標準偏差σI、縦軸を電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtの標準偏差σdI/dtとしている。また図15Bでは、電流Iの基準値をI1、I2、電流Iの時間変化率dI/dtの基準値をA1としている。
図15Aの斜線で示すように、故障電流の判定領域を領域Re1と領域Re2に分けて考える。領域Re1は、短絡電流の検出に用いる領域であり、電流が基準値I1より大かつ電流Iの時間変化率が基準値A1より大のときに故障と判定する領域である。領域Re2は、過負荷電流の検出に用いる領域であり、電流が基準値I2より大かつ電流Iの時間変化率が基準値A1未満のときに故障と判定する領域である。
故障電流検出回路36では、分析部6は、電流Iの時系列データの平均I ̄、電流Iの時系列データの標準偏差σI、電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtとその標準偏差σdI/dtを統計的手法により計算し、これらの計算結果に基づいて過負荷電流や短絡電流を検出する。例えば、電流Iの時系列データの平均I ̄は式(1)より、電流Iの時系列データの標準偏差σIは式(2)より、電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtは式(6)より、電流Iの時系列データの時間変化率の標準偏差σdI/dtは式(9)より求める。図15Aでは、電流Iの時系列データにおける標準偏差σIの基準値CtσI、時間変化率の標準偏差σdI/dtの基準値CtσdI/dtを決め、標準偏差σIと標準偏差σdI/dtの少なくともどちらか一方が図15Bに示す基準値を超える場合には、図15Aに示す条件に領域Re1、Re2に該当したとしても故障電流(すなわち過負荷電流と短絡電流)と評価せず、検出しないものとする。
すなわち、短絡電流の検出条件は、領域Re1に該当し、式(13)のようになる。
(I ̄>I1)∧(σI<CtσI)∧(dI/dt>A1)∧(σdI/dt<CtσdI/dt)
・・・(13)
また、過負荷電流の検出条件は、領域Re2に該当し、式(14)のようになる。
(I ̄>I2)∧(σI<CtI)∧(dI/dt<A1)∧(σdI/dt<CtσdI/dt)
・・・(14)
上記では、標準偏差σIと標準偏差σdI/dtを計算結果の誤差の指標としたが、式(3)に基づく平均I ̄の誤差I ̄error及び式(11)に基づく時間変化率dI/dtの誤差dI/dterrorを誤差の指標として採用してもよい。
図16Aは、減衰振動によるノイズの模擬の一次元回帰分析結果を示す図である。図16Bは、短絡電流の模擬の一次元回帰分析結果を示す図である。図16Cは、減衰振動によるノイズと短絡電流の模擬の比較結果を示す図である。図16A及び図16Bにてノイズと短絡電流を模擬して回帰分析した結果を用い、本実施例における異常検出方法の有効性を説明する。図16Aは、減衰振動でノイズを模擬した時系列データの波形16aを示す。図16Bは、3×106A/sで上昇する短絡電流を模擬した時系列データの波形16bを示す。
図16Bの短絡電流の波形では、計測器に±2%の誤差があるとし、疑似乱数を用いてその誤差を計算し、y=3×106×±2%として求めた。比較のためには同じデータ数と時間幅で回帰分析を実施する必要があるため、図16A、図16Bに示すように、同じ時間幅ΔT((0-T)秒)のデータ点に対して回帰分析を実施した。図16A、図16BにおけるΔT内にあるデータ数も同じにした。その結果を図16Cに示す。
図16Cに示すように、電流Iの時間変化率dI/dtは、減衰振動ノイズが3.12×106A/s、短絡電流が2.96×106A/sとなった。また電流Iの時間変化率dI/dtの標準偏差σdI/dtは、減衰振動ノイズが0.53×106A/s、短絡電流が0.0059×106A/sとなった。また電流Iの時間変化率dI/dtの誤差σdI/dterrorは、減衰振動ノイズが17%、短絡電流が0.2%となった。減衰振動ノイズと短絡電流とで、時間変化率dI/dtは、はほぼ一致しているが、標準偏差σdI/dtに大きな差がある。このことは、本実施例によれば、標準偏差σdI/dtを用いてノイズ発生時に不要に異常を検出することを防ぐことを示している。
さらに、時間変化率dI/dtをアナログの微分回路で検出する際は、たとえば、図16Bのように計測した電流信号に±2%の計測誤差がある場合は、その微分信号の計測結果には電流の計測誤差に対して2倍の±4%程度の誤差が発生すると考えられる。しかし、本実施例のように、統計的手法である回帰分析を用いることで、図16Cのように時間変化率の時間変化率dI/dtの誤差σdI/dterrorを0.2%に抑制できている。よって、本実施例によれば、異常の検出精度を高めることが分かる。なお、誤差σdI/dterrorは、式(11)を用いて計算した。
実施例2では、実施例1にて説明した故障電流検出回路36,38を用い、隣接する二変電所間で短絡電流が発生した際の故障点の推定方法を説明する。
図17は、実施例2に係る故障電流検出回路41の構成を示す図である。実施例2における故障電流検出回路41では、図13で説明した故障電流検出回路36と同様に、電流計測器35で計測されたアナログ信号を入力する。故障電流検出回路41は、AD変換部4、デジタル信号読込部5、分析部6、検出部7、及び、故障点分析部42を含んで構成される。故障点分析部42は、分析部6によって計算された電流Iの時系列データの平均I ̄、電流Iの時系列データの標準偏差σI、電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtとその標準偏差σdI/dtを用い、変電所から故障点44(図18)を介して形成される電路の抵抗R及びインダクタンスLを計算して、遠征子局47(図18)へ送信する。遠征子局47は、コンピュータ等である。
なお故障電流検出回路41は、マイクロコンピュータやFPGAといったプロセッサで構成されてもよい。故障電流検出回路41は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、複数のプロセッサで構成されてもよい。故障電流検出回路41が複数のプロセッサで構成される場合には、AD変換部4、デジタル信号読込部5、分析部6、検出部7、及び、故障点分析部42が適宜統合及び分散されて各プロセッサに配置される。
図18は、実施例2に係る直流き電回路2Sと短絡事故が発生した際の様相を示す図である。実施例2に係る直流き電回路2Sは、実施例1における図12と同様に、第1の変電設備である変電所13(変電所A)と変電所13に隣接する第2の変電設備である変電所14(変電所B)を含んで構成される。図18では、上り架線29の区間Bとレール32の間で短絡事故が発生した場合を考察することとし、簡単のため、図12に記載した直流遮断器18、直流遮断器19、直流遮断器20、直流遮断器26、直流遮断器27、直流遮断器28は記載しない。
図18では、変電所13では、電流計測器35は、直流遮断器21の下流の電流を計測し、そのアナログ信号を、図17で説明した故障電流検出回路41に入力する。変電所14においても同様に、電流計測器37は、直流遮断器25の下流の電流を計測してそのアナログ信号を故障電流検出回路43に入力する。なお、故障電流検出回路43の構成は、故障電流検出回路41と同じである。
上り架線29の区間Bとレール32の間で短絡事故が発生した場合は、故障点44における抵抗が0になるため、変電所13の交流入力から直流遮断器21を介して故障点44に流れる電流経路45、及び、変電所14の交流入力から直流遮断器25を介して故障点44に流れる電流経路46となる。
図18に示すように、変電所13から故障点44までの上り架線29における抵抗はR11、インダクタンスはL11、故障点44から変電所A13までのレール32における抵抗はR12、インダクタンスはL12とする。電流経路45における抵抗の抵抗R1は、R1=R11+R12となり、電流経路45におけるインダクタンスL1は、L1=L11+L12となる。同様に、変電所14から故障点44までの上り架線29における抵抗はR21、インダクタンスはL21、故障点44から変電所14までのレール32における抵抗はR22、インダクタンスはL22とする。電流経路46における抵抗R2は、R2=R21+R22となり、電流経路46におけるインダクタンスL2は、L2=L21+L22となる。
短絡電流を検出した際には、故障電流検出回路41は抵抗R1及びインダクタンスL1を計算し、故障電流検出回路43は抵抗R2及びインダクタンスL2を計算し、それぞれ、遠方監視制御設備等の遠征子局47に送信する。遠征子局47は、受信した抵抗R1及びインダクタンスL1と、抵抗R2及びインダクタンスL2をもとに故障点の位置を計算する。以下で、その計算方法の詳細を説明する。
図18に示すように、電流経路45は、直列のLR回路になっている。変電所13の送出電圧をV0(V)、電流経路45に流れる電流をIとすると、下記式(15)が成り立つ。例えばV0=1500(V)などの定数としてもよく、電圧計測器(不図示)で送り出し電圧を計測してもよい。
図17を参照して説明したように、故障電流検出回路41では、故障点分析部42は、分析部6によって計算された電流Iの時系列データの平均I ̄、電流Iの時系列データの標準偏差σI、電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtとその標準偏差σdI/dtを記録している。また、電圧計測器(不図示)で計測した送り出し電圧V0も記録している。故障点分析部42は、電流Iの時系列データの平均I ̄と電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtのうち、短絡電流を検出した時刻をt0、そのΔT秒後の時刻をt1=t0+ΔTとすると、式(15)から、式(16)及び式(17)が成り立つ。
式(13)及び式(14)の連立方程式から抵抗R1及びインダクタンスL1が求まる。
このとき、電流Iの時系列データの平均I ̄と電流Iの時系列データの時間変化率dI/dtは、電流Iの時系列データの標準偏差σI、電流Iの時系列データの時間変化率の標準偏差σdI/dtの計算結果が、それぞれ基準値より小さいものを用いる。そうすることで、R1及びL1を精度よく求めることができる。
このように、故障電流検出回路41の分析部6で計算した結果を故障点分析部42で記録し、その計算結果の時系列データと式(18)及び式(19)を用いることで、変電所と故障点における電路の抵抗及びインダクタンスを導出できる。式(18)及び式(19)を用い、電流経路46の抵抗R
2及びインダクタンスL
2も計算できる。抵抗及びインダクタンスは、電路の長さに比例するため、遠征子局47は、変電所13及び変電所14の距離D
ABがわかっていれば、R
1、R
2を用い、変電所13から故障点44までの距離D
A、変電所14から故障点44までの距離D
Bを式(20)及び式(21)のように導出できる。例えば、R
1:R
2=D
A:D
B=D
A:(D
AB-D
A)=(D
AB-D
B):D
Bである。
また、L
1、L
2を用いて、距離D
A、距離D
Bを式(22)及び式(23)のように導出できる。
また、インダクタンスLと抵抗Rの直列回路から成る直流き電システムにおいて、変電所からの送出電圧Eのときの短絡発生時刻tの電流Iを表す式(24)から抵抗及びインダクタンスを求めてもよい。
式(24)からわかるように、直流のLR回路では時間が経過すると共に電流IはE/Rに近付く。式(25)を回帰曲線として回帰分析を実施して回帰係数のc、dを計算する。その値と電圧Eから、抵抗及びインダクタンスを計算し、式(20)及び式(21)、又は、式(21)及び式(22)から、変電所から故障点までの距離を計算してもよい。
なお必ずしも遠征子局47が故障点44を算出する必要はない。例えば、短絡電流が発生した場合に、短絡電流を検出した故障電流検出回路41又は43の故障点分析部42が、隣接する変電所の故障電流検出回路41又は43の故障点分析部42と通信を行って抵抗及びインダクタンスの値を受信する。短絡電流を検出した故障電流検出回路41又は43の故障点分析部42は、隣接する変電所の故障電流検出回路41又は43の故障点分析部42から受信した抵抗及びインダクタンスと、自装置が計算した抵抗及びインダクタンスを用いて、故障点を算出するようにしてもよい。
実施例3では、実施形態で説明した異常検出装置S及び異常検出方法を適用したコンデンサ容量点検システム及びコンデンサ容量点検方法について説明する。実施例3は、対象システムにおいて計測される物理量が複数である場合の一例である。
図19は、実施例3に係るコンデンサ容量点検システムを用いたコンデンサ充放電回路3Sの構成を示す図である。図19に示すコンデンサ充放電回路3Sは、直流電源48、充電スイッチ49、充電抵抗50、コンデンサ51、放電抵抗52、放電スイッチ53、充放電制御装置54、ダイオード55、電流計測器56、電圧計測器57、及び、コンデンサ容量点検部58を含んで構成される。
充電スイッチ49及び放電スイッチ53は、有接点リレーまたは無接点の半導体スイッチ等を用いる。充放電制御装置54は、充電時には放電スイッチ53をオフしてそのあと充電スイッチ49をオンして充電を開始し、放電時には、充電スイッチ49をオフして充電を停止した後に放電スイッチ53をオンして放電を開始する。
ダイオード55は、放電時にコンデンサ51から放電抵抗52に電流が流れるよう制御するために配置されている。電流計測器56は、コンデンサ51に流れる電流を計測する。電圧計測器57は、コンデンサ51の電圧を計測する。電流計測器56は、計測電流のアナログ信号をコンデンサ容量点検部58に入力する。電圧計測器57は、計測電圧のアナログ信号をコンデンサ容量点検部58に入力する。
コンデンサ容量点検部58は、AD変換部4a、デジタル信号読込部5a、及び、分析部6aを含んで構成される。AD変換部4aは、計測電流のアナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号読込部5aは、AD変換部4aによって変換されたデジタル信号を読込んで演算処理できるようデータ化する。分析部6aは、デジタル信号読込部5aによって読込まれたデジタル信号が変換されたデータのうちの最新データを含む時系列データを統計的手法に基づき分析し、時系列データの平均や時間変化率等の推定値と推定値の誤差や時系列データのバラつき度合(標準偏差等)を計算する。
また、コンデンサ容量点検部58は、AD変換部4b、デジタル信号読込部5b、及び、分析部6bを含んで構成される。AD変換部4bは、計測電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号読込部5bは、AD変換部4bによって変換されたデジタル信号を読込んで演算処理できるようデータ化する。分析部6bは、デジタル信号読込部5aによって読込まれたデジタル信号が変換されたデータのうちの最新データを含む時系列データを統計的手法に基づき分析し、時系列データの平均や時間変化率等の推定値と推定値の誤差や時系列データのバラつき度合(標準偏差等)を計算する。
また、コンデンサ容量点検部58は、分析部6a及び分析部6bの計算結果に基づいて、コンデンサ51の容量を推定するコンデンサ容量計算部(検出部)59を含んで構成される。コンデンサ容量計算部59は、計算したコンデンサ容量の推定値を管理部60に送信する。
管理部60は、コンデンサ容量の管理値とコンデンサ容量計算部59で計算されたコンデンサ容量の推定値を比較し、管理値から外れた場合に異常として警報を出す。また、管理部60は、コンデンサ容量計算部59から受信したコンデンサ容量の推定値を記録する。
図19では、管理部60をコンデンサ容量点検部58の外に図示したが、コンデンサ容量点検部58の中に配置してもよい。このコンデンサ51の容量の評価及び点検は、コンデンサ51の充電又は放電時に実施するものとし、充放電制御装置54からの指令で実行される。
分析部6aは、電流Iの時系列データの平均I ̄、電流Iの時系列データの標準偏差σIを計算する。分析部6bは、電圧Vの時系列データの時間変化率dV/dtとその標準偏差σdV/dtを計算する。平均I ̄及び標準偏差σIは図3に示した手法で計算し、時間変化率dV/dt及び標準偏差σdV/dtは図8に示した手法で計算する。
または、充電回路で想定されるモデル関数を作成し、そのモデル関数を回帰方程式として回帰分析を実施して求めてもよい。いずれの場合においても、統計的手法で計算する。
以下では、コンデンサ容量計算部59におけるコンデンサ容量の計算方法について説明する。コンデンサ51の容量をC、コンデンサに蓄えられた電荷をQは、コンデンサ電圧をVとすると、式(26)が成り立つ。
式(26)を時間微分すると、式(27)のようになる。
電荷の時間変化は電流Iであることから、式(27)を変形すると式(28)のようになる。
式(28)に、分析部6aによって計算された電流Iの時系列データの平均I ̄、分析部6bによって計算された電圧Vの時系列データの時間変化率dV/dtを代入してコンデンサ容量を計算できる。このとき、電流Iの時系列データの標準偏差σI、電圧Vの時系列データの時間変化率の標準偏差σdV/dtが予め決められた基準値より小さいときのデータを用いることで、コンデンサ容量の計算精度を高めることができる。
なおコンデンサ容量点検部58及び管理部60は、マイクロコンピュータやFPGAといったプロセッサで構成されてもよい。コンデンサ容量点検部58は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、複数のプロセッサで構成されてもよい。コンデンサ容量点検部58が複数のプロセッサで構成される場合には、AD変換部4a,4b、デジタル信号読込部5a,5b、分析部6a,6b、コンデンサ容量計算部59、及び、管理部60が適宜統合及び分散されて各プロセッサに配置される。
(その他の実施形態)
上述の実施形態及び実施例に関連し、さらに以下の実施形態を開示する。
(1)対象システムにおいて計測される物理量に基づいて前記対象システムの異常を検出する異常検出装置であって、前記対象システムにおいて計測された物理量の時系列の量子化データを読込み、読込んだ該量子化データを演算処理可能な時系列データへ変換する読込部と、前記時系列データのうちの最新の所定数の時系列データを分析し、該最新の所定数の時系列データに基づく統計量及び該統計量の誤差を計算する分析部と、前記分析部によって計算された前記統計量のバラつき度合が所定条件を充足する場合に、前記統計量に基づいて前記対象システムの異常を検出する検出部とを有することを特徴とする異常検出装置。
上記(1)では、対象システムの正常性を評価するための計測対象となる物理量を計測器で計測し、その計測したアナログ信号をデジタル信号に変換して演算処理できるようデータ化し、データ化した過去の複数点分と最新のデータを含む時系列データを統計的手法に基づいて平均や時間変化率などの推定値(統計量)およびそれらの誤差、時系列データのバラつき度合を計算し、その計算結果に基づいてシステムの異常を検出する。よって、計算した平均や時間変化率などの誤差や時系列データのばらつき度合が小さい場合は推定値の信頼性が高くなるため、推定値が異常と判定する基準値に達した場合に異常と評価する。計算した平均や時間変化率などの誤差や時系列データのバラつき度合が大きい場合は推定値の信頼性が低くなるため、推定値が異常値の基準に達しても異常と評価しない。よって、異常検出の精度及び信頼性を向上できる。
(2)上記(1)に記載の異常検出装置であって、前記読込部は、所定周期で、前記量子化データを読込み、読込んだ該量子化データを前記時系列データへ変換し、前記読込部によって、前記所定周期の今回周期の量子化データが読込まれてから、前記所定周期の次回周期の量子化データが読込まれるまでに、前記分析部は、前記今回周期の量子化データが演算処理可能に変換された時系列データを含む最新の所定数の時系列データを分析し、該最新の所定数の時系列データに基づく今回周期の統計量及び該今回周期の統計量の誤差を計算する処理を完了し、前記検出部は、前記分析部によって計算された前記今回周期の統計量及び該今回周期の統計量の誤差が所定条件を充足する場合に、前記今回周期の統計量に基づいて前記対象システムの異常を検出する処理を完了することを特徴とする異常検出装置。
上記(2)では、時系列データの平均値や時間変化率などの推定値と誤差の計算および異常検出は、最新のデジタル信号の受信からその次のデジタル信号が入力されるまでの間に完了することとし、常に最新データを考慮してリアルタイムに異常を評価して検出する。よって、常に最新データを考慮して推定値と誤差、時系列データのバラつき度合を計算して異常を評価するため、遅延なく早期の異常検出が可能になる。
(3)上記(1)に記載の異常検出装置であって、前記統計量は、前記最新の所定数の時系列データの平均であり、前記統計量の誤差は、前記平均もしくは前記最新の所定数の時系列データの標準偏差であり、前記検出部は、前記分析部によって計算された前記標準偏差が所定条件を充足する場合に、前記平均に基づいて前記対象システムの異常を検出することを特徴とする異常検出装置。
上記(3)では、最新の所定数の時系列データの平均もしくは最新の所定数の時系列データの標準偏差が所定条件を充足する場合に、平均の信頼性が高くなるため、平均に基づいて対象システムの異常を検出することで、異常検出の精度及び信頼性を向上できる。
(4)上記(1)に記載の異常検出装置であって、前記統計量は、前記最新の所定数の時系列データの時間変化率であり、前記統計量の誤差は、前記時間変化率の標準偏差であり、前記検出部は、前記分析部によって計算された前記標準偏差が所定条件を充足する場合に、前記時間変化率に基づいて前記対象システムの異常を検出することを特徴とする異常検出装置。
上記(4)では、最新の所定数の時系列データの時間変化率の標準偏差が所定条件を充足する場合に、時間変化率の信頼性が高くなるため、時間変化率に基づいて対象システムの異常を検出することで、異常検出の精度及び信頼性を向上できる。
(5)上記(1)に記載の異常検出装置であって、前記統計量は、前記最新の所定数の時系列データの平均及び時間変化率であり、前記統計量の誤差は、前記平均もしくは前記最新の所定数の時系列データの標準偏差及び前記時間変化率の標準偏差であり、前記検出部は、前記分析部によって計算された前記標準偏差が所定条件を充足する場合に、前記平均及び前記時間変化率に基づいて前記対象システムの異常を検出することを特徴とする異常検出装置。
上記(5)では、最新の所定数の時系列データの平均もしくは最新の所定数の時系列データの標準偏差及び最新の所定数の時系列データの時間変化率の標準偏差が所定条件を充足する場合に、平均及び時間変化率の信頼性が高くなるため、平均及び時間変化率に基づいて前記対象システムの異常を検出することで、異常検出の精度及び信頼性を向上できる。
(6)上記(4)又は(5)に記載の異常検出装置であって、前記分析部は、前記最新の所定数の時系列データの回帰分析によって前記時間変化率及び前記時間変化率の標準偏差を計算することを特徴とする異常検出装置。
上記(6)では、回帰分析によって時間変化率及び時間変化率の標準偏差を計算することで、異常検出の精度を高めることができる。
(7)上記(5)に記載の異常検出装置であって、前記対象システムは、電力網から受電した電力の電圧を変換し遮断器を介してき電線へ供給する変電システムであり、前記物理量は、前記変電システムを流れる電流であり、前記検出部によって前記変電システムの異常が検出された場合に、前記遮断器を開放して前記き電線への電力の供給の遮断する制御を行う遮断器制御部を有することを特徴とする異常検出装置。
上記(7)によれば、き電システムにおいて精度よく過負荷電流や短絡電流等の異常電流をノイズと弁別して検出し、迅速かつ適切に遮断器開放を行うことができる。
(8)上記(7)に記載の異常検出装置であって、前記変電システムは、前記き電線に沿って複数存在し、前記検出部によって前記変電システムの異常が検出された場合に、前記電流の時系列データの平均、前記電流の時系列データもしくは該平均の標準偏差、前記電流の時系列データの時間変化率、及び、該時間変化率の標準偏差を用いて、前記変電システムから前記き電線の故障点を介して形成される電路の抵抗及びインダクタンスを計算する故障点分析部を有し、前記故障点分析部によって計算された異常が検出された前記変電システムの前記抵抗及び前記インダクタンスと、前記故障点分析部によって計算された該変電システムに隣接する変電システムの前記抵抗及び前記インダクタンスと、に基づいて、前記故障点が算出されることを特徴とする異常検出装置。
上記(8)では、迅速かつ精度よく計算された変電システムの抵抗及びインダクタンスに基づき変電システムを始点及び終点とする電路における故障点を推定し、迅速かつ高精度に故障点を推定できる。
(9)上記(1)又は(2)に記載の異常検出装置であって、前記物理量は、複数であり、前記読込部は、複数の前記物理量毎に、前記時系列の量子化データを読込み、読込んだ該量子化データを演算処理可能な時系列データへ変換し、前記分析部は、複数の前記物理量毎に、前記統計量及び該統計量の誤差を計算し、前記検出部は、前記分析部によって計算された複数の前記物理量毎の前記統計量のバラつき度合が所定条件を充足する場合に、複数の前記物理量毎の前記統計量に基づいて前記対象システムの異常を検出することを特徴とする異常検出装置。
上記(9)では、複数の物理量毎の統計量のバラつき度合が所定条件を充足する場合に、複数の物理量毎の統計量に基づいて対象システムの異常を検出するので、対象システムにおいて計測される複数の物理量を用いて、異常検出の精度を高めたり、多様な指標の高精度な推定値を算出したりすることができる。
(10)上記(9)に記載の異常検出装置であって、前記対象システムは、直流電源部から直流電圧を受電するコンデンサを有するコンデンサの充放電システムであり、前記物理量は、前記コンデンサを流れる電流及び前記コンデンサの電圧であり、前記読込部は、前記コンデンサを流れる電流及び前記コンデンサの電圧毎に、前記時系列の量子化データを読込み、読込んだ該量子化データを演算処理可能な時系列データへ変換し、前記分析部は、前記コンデンサを流れる電流の平均と該平均の誤差、及び、前記コンデンサの電圧の時間変化率と該時間変化率の誤差を計算し、前記検出部は、前記分析部によって計算された前記平均の誤差及び前記時間変化率の誤差が所定条件を充足する場合に、前記平均及び前記時間変化率を基に前記コンデンサの容量を計算することを特徴とする異常検出装置。
上記(10)では、コンデンサを流れる電流の平均の誤差及びコンデンサの電圧の時間変化率の誤差が所定条件を充足する場合に、コンデンサの電流の平均及びコンデンサの電圧の時間変化率を基にコンデンサの容量を計算することで、精度よくコンデンサの容量の点検を行うことができる。
(11)上記(1)~(10)の何れか1項に記載の異常検出装置と、前記対象システムにおいて計測された物理量を前記時系列の量子化データへ変換する変換部とを有することを特徴とする異常検出システム。
上記(11)によれば、対象システムにおいて計測された物理量を変換した時系列の量子化データを出発点として、対象システム等の異常検出を行うことで、アナログ信号特有のノイズをデジタル信号上で識別できるので、対象システムの異常検出を精度よく行うことができる。
(12)対象システムにおいて計測される物理量に基づいて前記対象システムの異常を検出する異常検出装置が実行する異常検出方法であって、前記対象システムにおいて計測された物理量の時系列の量子化データを読込み、読込んだ該量子化データを演算処理可能な時系列データへ変換する読込ステップと、前記時系列データのうちの最新の所定数の時系列データを分析し、該最新の所定数の時系列データに基づく統計量及び該統計量の誤差を計算する分析ステップと、前記分析ステップによって計算された前記統計量のバラつき度合が所定条件を充足する場合に、前記統計量に基づいて前記対象システムの異常を検出する検出ステップとを有することを特徴とする異常検出方法。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、矛盾しない限りにおいて、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成で置き換え、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、構成の追加、削除、置換、統合、又は分散をすることが可能である。また、実施形態で示した構成及び処理は、処理効率又は実装効率に基づいて適宜分散、統合、または入れ替えることが可能である。