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JP7652553B2 - 細胞培養用足場材料、樹脂膜、細胞培養用容器及び細胞の培養方法 - Google Patents
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JP7652553B2 - 細胞培養用足場材料、樹脂膜、細胞培養用容器及び細胞の培養方法 - Google Patents

細胞培養用足場材料、樹脂膜、細胞培養用容器及び細胞の培養方法 Download PDF

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Description

本発明は、細胞培養用足場材料に関する。また、本発明は、上記細胞培養用足場材料を用いた樹脂膜に関する。さらに、本発明は、上記樹脂膜を用いた細胞培養用容器及び細胞の培養方法に関する。
学術分野、創薬分野及び再生医療分野等の研究開発において、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ及びサル等の動物細胞が用いられている。動物細胞を培養するために用いられる足場材料として、ラミニン及びビトロネクチン等の接着タンパク質、並びにマウス肉腫由来のマトリゲル等の天然高分子材料が用いられている。
また、合成樹脂を用いた足場材料、及びペプチドが結合した合成樹脂を用いた足場材料も知られている。
例えば、下記の特許文献1には、アクリルポリマーとポリペプチドとが結合したポリマーを含む組成物が被覆された細胞培養用物品が開示されている。特許文献1では、上記アクリルポリマーとして、親水性アクリルモノマーが重合した親水性アクリルポリマーが用いられている。
WO2012/158235A2
特許文献1に記載のように、ペプチドが結合したアクリル樹脂を用いた細胞培養用足場材料が知られている。しかしながら、特許文献1に記載の足場材料では、細胞の接着性を十分に高めることは困難である。
本発明の目的は、細胞の接着性を高めることができる細胞培養用足場材料を提供することである。また、本発明は、上記細胞培養用足場材料を用いた樹脂膜を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記樹脂膜を用いた細胞培養用容器及び細胞の培養方法を提供することを目的とする。
本発明の広い局面によれば、ペプチド含有アクリル樹脂を含み、前記ペプチド含有アクリル樹脂が、ペプチド部を側鎖に有さない第1の構造部分と、ペプチド部を側鎖に有する第2の構造部分とを有し、前記第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータが9.7(cal/cm1/2以上、10.7(cal/cm1/2以下である、細胞培養用足場材料が提供される。
本発明に係る細胞培養用足場材料のある特定の局面では、前記第1の構造部分が、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する。
本発明に係る細胞培養用足場材料のある特定の局面では、前記第2の構造部分における前記ペプチド部のアミノ酸残基の数が10個以下である。
本発明の広い局面によれば、上述した細胞培養用足場材料により形成された、樹脂膜が
提供される。
本発明に係る樹脂膜のある特定の局面では、37℃のイオン交換水中に24時間浸水した後、前記イオン交換水中でナノインデンター装置を用いてISO14577-1に準拠して測定した周波数1Hzでの圧縮弾性率が1GPa以上である。
本発明に係る樹脂膜のある特定の局面では、水膨潤倍率が70%以下である。
本発明に係る樹脂膜のある特定の局面では、前記樹脂膜は、海島構造を有し、前記海島構造における島部が前記ペプチド部を含む。
本発明の広い局面によれば、細胞の培養領域の少なくとも一部に、上述した樹脂膜を備える、細胞培養用容器が提供される。
本発明の広い局面によれば、上述した樹脂膜上に細胞を播種する工程を備える、細胞の培養方法が提供される。
本発明に係る細胞培養用足場材料は、ペプチド含有アクリル樹脂を含み、上記ペプチド含有アクリル樹脂が、ペプチド部を側鎖に有さない第1の構造部分と、ペプチド部を側鎖に有する第2の構造部分とを有する。本発明に係る細胞培養用足場材料では、上記第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータが9.7(cal/cm1/2以上、10.7(cal/cm1/2以下である。本発明に係る細胞培養用足場材料では、上記の構成が備えられているので、細胞の接着性を高めることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る細胞培養用容器を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る細胞培養用足場材料(以下、「足場材料」と略記することがある)は、ペプチド含有アクリル樹脂を含み、上記ペプチド含有アクリル樹脂が、ペプチド部を側鎖に有さない第1の構造部分と、ペプチド部を側鎖に有する第2の構造部分とを有する。本発明に係る細胞培養用足場材料では、上記第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータが9.7(cal/cm1/2以上、10.7(cal/cm1/2以下である。
本発明に係る足場材料では、上記の構成が備えられているので、細胞の接着性を高めることができる。本発明に係る足場材料では、長期に亘って細胞の接着性を高く維持することができる。
ペプチドが結合したアクリル樹脂(ペプチド含有アクリル樹脂)を用いた従来の足場材料では、細胞の接着性を十分に高めることは困難である。本発明者らは、ペプチド含有アクリル樹脂を用いた従来の足場材料において、細胞の接着性を十分に高めることができないことの原因が、親水性の大きいアクリル樹脂が用いられているためであることを見出した。本発明者らは、ペプチドが結合したアクリル樹脂において、特定の構造部分の溶解パラメータ(SP値)を特定の範囲とし、該構造部分の親水性と疎水性とのバランスを良好にすることによって、細胞の接着性を高めることができることを見出した。
また、従来の足場材料では、親水性の大きいアクリル樹脂が用いられているので、細胞の培養中に足場材料が過度に膨潤して足場材料が容器等から剥離したり、ロット毎に細胞の接着性がばらついたりして、細胞の大量培養に用いることは困難である。これに対して、本発明に係る足場材料では、細胞の培養中に足場材料が容器等から剥離しにくく、またロット毎の性能のばらつきを抑えることができるので、細胞の大量培養に用いることもできる。
(ペプチド含有アクリル樹脂)
上記足場材料は、ペプチド含有アクリル樹脂を含む。上記ペプチド含有アクリル樹脂は、ペプチドが結合したアクリル樹脂である。上記ペプチド含有アクリル樹脂は、主鎖と側鎖とを有する。上記ペプチド含有アクリル樹脂は、ペプチド部を側鎖に有さない部分(第1の構造部分)と、ペプチド部を側鎖に有する部分(第2の構造部分)とを有する。上記ペプチド含有アクリル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第1の構造部分は、上記ペプチド含有アクリル樹脂において、上記第2の構造部分を除く構造部分である。例えば、上記ペプチド含有アクリル樹脂が、ペプチド部を有さないM個の構造単位(A)とペプチド部を有するN個の構造単位(B)とにより構成される場合、上記第1の構造部分は、M個の構造単位(A)により構成される部分であり、上記第2の構造部分は、N個の構造単位(B)により構成される部分である。構造単位(A)は、1種のみの構造単位であってもよく、2種以上の構造単位であってもよい。構造単位(B)は、1種のみの構造単位であってもよく、2種以上の構造単位であってもよい。また、構造単位(A)と構造単位(B)とは、該ペプチド含有アクリル樹脂において、交互に存在していてもよく、ランダムに存在していてもよく、ブロックで存在してもよく、一部の構造単位がグラフトされて存在していてもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
<第1の構造部分>
第1の構造部分は、上記ペプチド含有アクリル樹脂において、ペプチド部を側鎖に有さない構造部分である。上記第1の構造部分は、上記ペプチド含有アクリル樹脂において、ペプチド部を有さない構造単位により構成される部分であることが好ましい。上記第1の構造部分は、ペプチド部を有さない構造単位を繰り返し構造単位として有することが好ましい。
上記第1の構造部分は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有することが好ましい。上記第1の構造部分は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位のみを有していてもよい。上記第1の構造部分は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有することが好ましい。
上記第1の構造部分は、(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーに由来する構造単位を有していてもよく、有していなくてもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステル及び上記(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーの種類は特に限定されない。本発明では、上記第1の構造部分の上記溶解パラメータ(SP値)が特定の範囲を満足するように、上記(メタ)アクリル酸エステル及び上記(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーの種類等が適宜選択される。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類、(メタ)アクリル酸ホスホリルコリン等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1~3のアルコキシ基及びテトラヒドロフルフリル基等の置換基で置換されていてもよい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、フェニル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類としては、例えば、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びヒドロキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸ホスホリルコリンとしては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド類及びビニル化合物等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(3-(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、3-(メタ)アクリロイル-2-オキサゾリジノン、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルア
ミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、及び6-(メタ)アクリルアミドヘキサン酸等が挙げられる。
上記ビニル化合物としては、エチレン、アリルアミン、ビニルピロリドン、無水マレイン酸、マレイミド、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、及びビニルアミン等が挙げられる。
上記溶解パラメータ(SP値)を容易に調整する観点からは、第1の構造部分は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有することが好ましい。
上記第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータ(SP値)は、9.7(cal/cm1/2以上、10.7(cal/cm1/2以下である。上記溶解パラメータ(SP値)が9.7(cal/cm1/2未満又は10.7(cal/cm1/2を超えると、細胞の接着性を高めることは困難であり、細胞の接着性を長期に亘って高めることは特に困難である。また、上記溶解パラメータ(SP値)が10.7(cal/cm1/2を超えると、細胞培養中に足場材料が容器等から剥離することがある。
上記第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータ(SP値)は、好ましくは9.8(cal/cm1/2以上、より好ましくは10.0(cal/cm1/2以上、更に好ましくは10.2(cal/cm1/2以上である。上記第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータ(SP値)は、好ましくは10.5(cal/cm1/2以下、より好ましくは10.3(cal/cm1/2以下、更に好ましくは10.2(cal/cm1/2以下である。上記溶解パラメータ(SP値)が上記下限以上及び上記上限以下であると、細胞の接着性をより一層高めることができる。また、上記溶解パラメータ(SP値)が上記上限以下であると、細胞培養中に足場材料が容器等から剥離することを効果的に抑えることができる。
上記溶解パラメータ(SP値)は、より具体的には、OkitsuのΔFの定数(沖津俊直著、「接着」、第40巻8号、342頁(1996年))により算出される。
上記第1の構造部分が有する全構造単位100モル%中、上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の平均割合は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更により一層好ましくは60モル%以上、特に好ましくは70モル%以上である。上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の平均割合が上記下限以上であると、上記溶解パラメータ(SP値)を調整しやすくなり、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記第1の構造部分が有する全構造単位100モル%中、上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の平均割合は、80モル%以上であってもよく、90モル%以上であってもよく、95モル%以上であってもよく、100モル%であってもよい。上記第1の構造部分が有する全構造単位100モル%中、上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の平均割合は、100モル%以下であってもよく、90モル%以下であってもよい。
上記ペプチド含有アクリル樹脂100重量%中、上記第1の構造部分の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは85重量%以下である。上記第1の構造部分の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
上記ペプチド含有アクリル樹脂100重量%中、上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは85重量%以下である。上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
<第2の構造部分>
上記第2の構造部分は、上記ペプチド含有アクリル樹脂において、ペプチド部を側鎖に有する構造部分である。上記第2の構造部分は、上記ペプチド含有アクリル樹脂において、ペプチド部を有する構造単位により構成される部分である。上記第2の構造部分は、ペプチド部を有する構造単位を繰り返し構造単位として有することが好ましい。
上記第2の構造部分は、ペプチドに由来する骨格と、該ペプチドと結合可能な官能基を有する化合物に由来する骨格とを有する構造単位を有することが好ましい。上記ペプチド部を有する構造単位は、ペプチドに由来する骨格と、該ペプチドと結合可能な官能基を有する化合物に由来する骨格とを有することが好ましい。
本明細書において、上記「ペプチドと結合可能な官能基を有する化合物」を「化合物X」と記載することがある。
したがって、上記第2の構造部分は、ペプチドに由来する骨格と化合物Xに由来する骨格とを有する構造単位を有することが好ましい。上記ペプチド部を有する構造単位は、ペプチドに由来する骨格と化合物Xに由来する骨格とを有することが好ましい。ペプチドに由来する骨格と化合物Xに由来する骨格とを有する構造単位において、ペプチドと化合物Xとは結合している。上記ペプチド及び上記化合物Xはそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ペプチドと結合可能な官能基は、上記ペプチドのカルボキシル基又はアミノ基と縮合可能な官能基であることが好ましい。
上記ペプチドと結合可能な官能基としては、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、水酸基及びシアノ基等が挙げられる。
上記化合物Xは、(メタ)アクリル酸エステルと結合可能な官能基を有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルと結合可能な官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基及びアリル基等が挙げられる。
上記化合物Xは、上記ペプチドと結合可能な官能基として、カルボキシル基又はアミノ基を有することが好ましい。上記化合物Xは、上記(メタ)アクリル酸エステルと結合可能な官能基として、(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。
上記化合物Xは、カルボキシル基又はアミノ基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
上記化合物Xとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、及びアクリルアミド等が挙げられる。上記化合物Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記化合物Xは、(メタ)アクリル酸又はイタコン酸であることが好ましく、(メタ)アクリル酸であることがより好ましい。
上記第2の構造部分における上記ペプチド部のアミノ酸残基の数は、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、更に好ましくは5個以上、好ましくは10個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは6個以下である。上記アミノ酸残基の数が上記下限以上及び上記上限以下であると、播種後の細胞との接着性をより一層高めることができ、細胞の増殖率をより一層高めることができる。ただし、上記ペプチド部のアミノ酸残基の数は10個を超えていてもよく、15個を超えていてもよい。
上記ペプチド部は、細胞接着性のアミノ酸配列を有することが好ましい。なお、細胞接着性のアミノ酸配列とは、ファージディスプレイ法、セファローズビーズ法、又はプレートコート法によって細胞接着活性が確認されているアミノ酸配列をいう。上記ファージディスプレイ法としては、例えば、「The Journal of Cell Biology, Volume 130, Number 5, September 1995 1189-1196」に記載の方法を用いることができる。上記セファローズビーズ法としては、例えば「蛋白質 核酸 酵素 Vol.45 No.15 (2000) 2477」に記載の方法を用いることができる。上記プレートコート法としては、例えば「蛋白質 核酸 酵素 Vol.45 No.15 (2000) 2477」に記載の方法を用いることができる。
上記細胞接着性のアミノ酸配列としては、例えば、RGD配列(Arg-Gly-Asp)、YIGSR配列(Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg)、PDSGR配列(Pro-Asp-Ser-Gly-Arg)、HAV配列(His-Ala-Val)、ADT配列(Ala-Asp-Thr)、QAV配列(Gln-Ala-Val)、LDV配列(Leu-Asp-Val)、IDS配列(Ile-Asp-Ser)、REDV配列(Arg-Glu-Asp-Val)、IDAPS配列(Ile-Asp-Ala-Pro-Ser)、KQAGDV配列(Lys-Gln-Ala-Gly-Asp-Val)、及びTDE配列(Thr-Asp-Glu)等が挙げられる。また、上記細胞接着性のアミノ酸配列としては、「病態生理、第9巻 第7号、527~535頁、1990年」、及び「大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58~66頁、1992年」に記載されている配列等も挙げられる。上記ペプチド部は、上記細胞接着性のアミノ酸配列を1種のみ有していてもよく、2種以上を有してもよい。
上記細胞接着性のアミノ酸配列は、上述した細胞接着性のアミノ酸配列の内の少なくともいずれかを有することが好ましく、RGD配列、YIGSR配列、又はPDSGR配列を少なくとも有することがより好ましく、下記式(1)で表されるRGD配列を少なくとも有することが更に好ましい。この場合には、播種後の細胞との接着性をより一層高め、細胞の増殖率をより一層高めることができる。
Arg-Gly-Asp-X ・・・式(1)
上記式(1)中、Xは、Gly、Ala、Val、Ser、Thr、Phe、Met、Pro、又はAsnを表す。
上記ペプチド部は、直鎖状であってもよく、環状ペプチド骨格を有していてもよい。上記環状ペプチド骨格とは、複数個のアミノ酸より構成された環状骨格である。本発明の効果を一層効果的に発揮させる観点からは、上記環状ペプチド骨格は、4個以上のアミノ酸により構成されることが好ましく、5個以上のアミノ酸により構成されることが好ましく、10個以下のアミノ酸により構成されることが好ましい。
上記ペプチド含有アクリル樹脂において、上記ペプチド部の含有率は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上、特に好ましくは10モル%以上である。上記ペプチド含有アクリル樹脂において、上記ペプチド部の含有率は、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは35モル%以下、特に好ましくは25モル%以下である。上記ペプチド部の含有率が上記下限以上であると、相分離構造をより一層容易に形成することができる。上記ペプチド部の含有率が上記下限以上であると、播種後の細胞との接着性をより一層高めることができ、細胞の増殖率をより一層高めることができる。また、上記ペプチド部の含有率が上記上限以下であると、製造コストを抑えることができる。なお、上記ペプチド部の含有率(モル%)は、ペプチド部を有する合成樹脂を構成する各構造単位の物質量の総和に対する上記ペプチド部の物質量である。
上記ペプチド部の含有率は、FT-IR又はLC-MSにより測定することができる。
上記ペプチド含有アクリル樹脂100モル%中、上記第2の構造部分の含有量は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは35モル%以下である。上記第2の構造部分の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
<ペプチド含有アクリル樹脂の他の詳細>
上記ペプチド含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記重量平均分子量が上記上限以下である場合、細胞培養に際しての細胞の伸展性をより一層効果的に高めることができる。
なお、上記ペプチド含有アクリル樹脂の重量平均分子量の測定は、例えば以下の方法にて行うことができる。上記ペプチド含有アクリル樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ペプチド含有アクリル樹脂の0.2%溶液を調製する。次に、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定装置(APCシステム、Waters社製)を用いて、以下の測定条件により評価する。
カラム:HSPgel HR MB-M 6.0×150mm
流量:0.5mL/min
カラム温度:40℃
注入量:10μl
検出器:RI、PDA
標準試料:ポリスチレン
(細胞培養用足場材料)
上記足場材料は、細胞を培養するために用いられる。上記足場材料は、細胞を培養する際の該細胞の足場として用いられる。
上記細胞としては、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ及びサル等の動物細胞が挙げられる。また、上記細胞としては、体細胞等が挙げられ、例えば、幹細胞、前駆細胞及び成熟細胞等が挙げられる。上記体細胞は、癌細胞であってもよい。
上記幹細胞としては、間葉系幹細胞(MSC)、iPS細胞、ES細胞、Muse細胞
、胚性がん細胞、胚性生殖幹細胞、及びmGS細胞等が挙げられる。
上記成熟細胞としては、神経細胞、心筋細胞、網膜細胞及び肝細胞等が挙げられる。
上記足場材料は、細胞の二次元培養(平面培養)、三次元培養又は浮遊培養に用いられることが好ましく、二次元培養(平面培養)に用いられることがより好ましい。
上記足場材料は、無血清培地培養に用いられることが好ましい。上記足場材料は上記ペプチド含有アクリル樹脂を含むので、フィーダー細胞や接着タンパク質を含まない無血清培地培養であっても、細胞の接着性を高めることができ、特に、細胞播種後の初期定着率をより一層高めることができる。
上記足場材料100重量%中、上記ペプチド含有アクリル樹脂の含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは97.5重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、上記足場材料は、上記ペプチド含有アクリル樹脂のみを含むことが最も好ましい。上記ペプチド含有アクリル樹脂の含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
上記足場材料は、上記ペプチド含有アクリル樹脂以外の成分を含んでいてもよい。上記ペプチド含有アクリル樹脂以外の成分としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、多糖類、セルロース、ポリペプチド、合成ペプチド等が挙げられる。
本発明の効果を効果的に発揮させる観点から、上記ペプチド含有アクリル樹脂以外の成分の含有量は少ないほどよい。上記足場材料100重量%中、該成分の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは2.5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0重量%(未含有)である。したがって、足場材料は、上記ペプチド含有アクリル樹脂以外の成分を含まないことが最も好ましい。
上記足場材料は、動物由来の原料を実質的に含まないことが好ましい。動物由来の原料を含まないことにより、安全性が高く、かつ、製造時に品質のばらつきが少ない細胞培養用足場材料を提供することができる。なお、「動物由来の原料を実質的に含まない」とは、足場材料中における動物由来の原料が、3重量%以下であることを意味する。上記足場材料では、足場材料中における動物由来の原料が、1重量%以下であることが好ましく、0重量%であることが最も好ましい。すなわち、上記足場材料は、動物由来の原料を全く含まないことが最も好ましい。
上記足場材料の形状は特に限定されない。上記足場材料は、粒子であってもよく、繊維であってもよく、多孔体であってもよく、フィルムであってもよい。なお、上記粒子、上記繊維、上記多孔体及び上記フィルムはそれぞれ、上記足場材料以外の構成要素を含んでいてもよい。
また、上記足場材料は、該足場材料と、多糖類とを含む細胞培養用担体(媒体)として用いることもできる。上記多糖類は、特に限定されず、従来公知の多糖類を用いることができる。上記多糖類は、水溶性多糖類であることが好ましい。
また、上記足場材料は、繊維本体と、該繊維本体の表面上に配置された足場材料とを備える細胞培養用繊維として用いることもできる。この場合、細胞培養用足場材料は、繊維
本体の表面に塗布されていることが好ましく、塗布物であることが好ましい。この細胞培養用繊維では、繊維本体中に足場材料が存在していてもよい。例えば、繊維本体を液状の足場材料に含浸したり、練り込んだりすることにより足場材料を繊維本体中に存在させることができる。幹細胞は、一般に、平面構造には接着しにくく、線維状構造などの立体構造には接着しやすい性質を有するため、細胞培養用繊維は、幹細胞の三次元培養に好適に用いられる。幹細胞のなかでも、脂肪幹細胞の三次元培養により好適に用いられる。
<樹脂膜>
本発明に係る樹脂膜は、上述した足場材料により形成された樹脂膜である。上記樹脂膜は、細胞培養用足場材料を用いて形成される。上記樹脂膜は、膜状の足場材料であることが好ましい。上記樹脂膜は、足場材料の膜状物であることが好ましい。
上記樹脂膜の厚みは特に限定されない。上記樹脂膜の平均厚みは、50nm以上であってもよく、500nm以上であってもよく、1000μm以下であってもよく、500μm以下であってもよい。
上記樹脂膜を37℃のイオン交換水中に24時間浸水した後、上記イオン交換水中でナノインデンター装置を用いてISO14577-1に準拠して測定した周波数1Hzでの圧縮弾性率は、好ましくは1GPa以上、より好ましくは1.5GPa以上、更に好ましくは2GPa以上である。上記圧縮弾性率が上記下限以上であると、細胞培養に際しての細胞の伸展性を高めることができる。上記圧縮弾性率の上限は、特に限定されない。上記圧縮弾性率は、15GPa以下であってもよい。
上記圧縮弾性率は、以下のようにして測定される。
上記樹脂膜をイオン交換水で満たされたビーカーに入れた後、上記ビーカーを37℃の恒温槽内で24時間放置する。24時間浸水した樹脂膜を、イオン交換水中でナノインデンター装置(例えば、Triboindenter、Hysitron社製)を用いてISO14577-1に準拠して周波数1Hzにて測定を行う。以下の式に従い、圧縮弾性率を算出する。
圧縮弾性率=√π×(弾性領域の荷重-変位曲線の傾き)/(2×√(接触投影面積))
ここで、弾性領域とは荷重-変位曲線の傾きが一定になる領域を指す。また接触投影面積とは、圧子と試料が接触する面積を指す。
圧子はBerkovich(三角錐型、先端径R数100nm)を使用し、押し込み深さは50nmとすることができる。
上記圧縮弾性率は、例えばペプチド含有アクリル樹脂の種類及び重量平均分子量を調整することにより、良好に調整することができる。例えば、ペプチド含有アクリル樹脂における上記SP値を小さくしたり、重量平均分子量を大きしたり、分子間に架橋構造を形成したりすることによって、水中での膨潤が抑制され、圧縮弾性率を大きくすることができる。
上記樹脂膜の水膨潤倍率は、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、より一層好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。上記水膨潤倍率が上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。上記樹脂膜の水膨潤倍率の下限は特に限定されない。上記樹脂膜の水膨潤倍率は、0.5%以上であってもよい。
上記水膨潤倍率は、以下のようにして測定される。
上記樹脂膜を切り出して、縦1cm×横3cm×厚み100μmの樹脂膜(試験片)を得る。なお、上記足場材料を膜状に成形して、上記のサイズを有する試験片を得てもよい。得られた試験片を、37℃の純水50gに24時間浸漬し、浸漬した試験片を目開き200メッシュの平織金網を用いて濾過することにより膨潤試験片を得る。以下の式に従い、水膨潤倍率を算出する。
水膨潤倍率(%)=(膨潤試験片の重量(g)-試験片の重量(g))/(試験片の重量(g))×100
細胞の接着性及び増殖性をより一層高める観点から、上記樹脂膜は、相分離構造を有することが好ましい。上記相分離構造は、第1の相と第2の相とを少なくとも有する。
上記相分離構造としては、例えば、海島構造、シリンダー構造、ジャイロイド構造、及びラメラ構造等のミクロ相分離構造が挙げられる。海島構造では、例えば、第1の相を海部とし、第2の相を島部とすることができる。シリンダー構造、ジャイロイド構造、又はラメラ構造では、例えば、表面積が最も大きい相を第1の相とし、表面積が2番目に大きい相を第2の相とすることができる。上記樹脂膜が連続相と不連続相とを有することで、細胞との親和性を高め、細胞の接着性及び増殖性をより一層高めることができる。
上記相分離構造は、海島構造であることが好ましい。上記樹脂膜は、海島構造を有することが好ましい。この場合には、細胞の接着性及び増殖性をより一層高めることができる。
上記樹脂膜が海島構造を有する場合に、樹脂膜の表面全体に対する、島部(第2の相)の表面積分率は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。上記表面積分率が上記下限以上及び上記上限以下であると、細胞の接着性をより一層高めることができる。
上記樹脂膜が海島構造を有する場合に、島部がペプチド部を含むことが好ましい。すなわち、上記樹脂膜は、海部と島部とを有し、島部がペプチド部を含むことが好ましい。この場合には、細胞の接着ドメインが島部に集積することで、細胞の接着性を更に一層高めることができる。
相分離構造の有無は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)等により確認することができる。また、上記表面積分率は、顕微鏡観察画像から例えばImageJなどの画像解析ソフトを用いて求めることができる。
上記相分離構造は、例えば、ペプチド部の含有率を高くし、ペプチド含有ポリビニルアルコール誘導体の分子間又は分子内に相分離構造を形成することによって形成させることができる。
(細胞培養用容器)
上記細胞培養用容器は、細胞の培養領域の少なくとも一部に、上述した樹脂膜を備える。上記細胞培養用容器は、容器本体と、上記樹脂膜とを備え、上記容器本体の表面上に、該樹脂膜が配置されていることが好ましい。
図1は、本発明の一実施形態に係る細胞培養用容器を模式的に示す断面図である。
細胞培養用容器1は、容器本体2と、樹脂膜3とを備える。容器本体2の表面2a上に樹脂膜3が配置されている。容器本体2の底面上に樹脂膜3が配置されている。細胞培養用容器1に液体培地を添加し、また、細胞塊等の細胞を樹脂膜3の表面上に播種することで、細胞を平面培養することができる。
なお、容器本体は、第1の容器本体と、該第1の容器本体の底面上にカバーガラス等の第2の容器本体とを備えていてもよい。第1の容器本体と第2の容器本体とは分離可能であってもよい。この場合、第2の容器本体の表面上に、該樹脂膜が配置されていてもよい。
上記容器本体として、従来公知の容器本体(容器)を用いることができる。上記容器本体の形状及び大きさは特に限定されない。
上記容器本体としては、1個又は複数個のウェル(穴)を備える細胞培養用プレート、及び細胞培養用フラスコ等が挙げられる。上記プレートのウェル数は特に限定されない。該ウェル数としては、特に限定されないが、例えば、2、4、6、12、24、48、96、384等が挙げられる。上記ウェルの形状としては、特に限定されないが、真円、楕円、三角形、正方形、長方形、五角形等が挙げられる。上記ウェル底面の形状としては、特に限定されないが、平底、丸底、凹凸等が挙げられる。
上記容器本体の材質は特に限定されないが、樹脂、金属及び無機材料が挙げられる。上記樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイソプレン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン等が挙げられる。上記金属としては、ステンレス、銅、鉄、ニッケル、アルミ、チタン、金、銀、白金等が挙げられる。上記無機材料としては、酸化ケイ素(ガラス)、酸化アルミ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、窒化ケイ素等が挙げられる。
(細胞の培養方法)
上記足場材料、上記樹脂膜を用いて細胞を培養することができる。上記細胞の培養方法は、上記足場材料を用いる細胞の培養方法である。上記細胞の培養方法は、上記樹脂膜を用いる細胞の培養方法であることが好ましい。上記細胞としては、上述した細胞が挙げられる。
上記細胞の培養方法は、上記足場材料上に細胞を播種する工程を備えることが好ましい。上記細胞の培養方法は、上記樹脂膜上に細胞を播種する工程を備えることが好ましい。上記細胞は、細胞塊であってもよい。上記細胞塊は、コンフルエントになった培養容器に細胞剥離剤を添加し、ピペッティングにより均一に破砕処理することで得ることができる。細胞剥離剤としては、特に限定されないが、エチレンジアミン/リン酸緩衝溶液が好ましい。細胞塊の大きさは50μm~200μmであることが好ましい。
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
なお、得られたペプチド含有アクリル樹脂における構造単位の含有率は、合成樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解した後、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)により測定した。また、ペプチド含有アクリル樹脂におけるペプチドの含有率は
、FT-IR又はLC-MSにより測定した。
(実施例1)
ペプチド含有アクリル樹脂の作製:
アクリル酸ブチル29重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル3重量部と、アクリル酸1重量部とをテトラヒドロフラン30重量部に溶解させてアクリルモノマー溶液を得た。得られたアクリルモノマー溶液にIrgacure184(BASF社製)1重量部を溶解させ、得られた液をPETフィルム上に塗布した。塗布物を25℃にて、UVコンベア装置(アイグラフィックス社製「ECS301G1」)を用い、波長365nmの光を積算光量2000mJ/cmで照射することでアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂溶液を80℃で3時間真空乾燥し、アクリル樹脂を得た。
得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は約10万であった。
得られたアクリル樹脂を3重量%になるようにブタノール溶液に溶解して、アクリル樹脂含有ブタノール溶液を得た。得られたアクリル樹脂含有ブタノール溶液150μLをφ22mmのカバーガラス(松浪社製、22丸No.1をエアダスターで除塵して使用)上に吐出し、スピンコーターを用いて2000rpmで20秒間回転させて平滑な樹脂膜を得た。
次に、Gly-Arg-Gly-Asp-Serのアミノ酸配列を有する直鎖状のペプチド(アミノ酸残基数5個、表ではGRGDSと記載)を用意した。このペプチド1重量部と、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(縮合剤)1重量部とを、カルシウム及びマグネシウムの双方を含まないリン酸緩衝生理食塩水に該ペプチドの終濃度が1mMとなるよう添加し、ペプチド含有液を作製した。このペプチド含有液1重量部を得られた樹脂膜に添加し、アクリル樹脂のカルボキシル基と、ペプチドのArgのアミノ基とを脱水縮合させた。このようにして、実施例1のペプチド含有アクリル樹脂(樹脂膜)を得た。
細胞培養用容器の作製:
得られたペプチド含有アクリル樹脂(樹脂膜)とカバーガラスとの積層体を、φ22mmのポリスチレンディッシュに配置することにより細胞培養用容器を得た。
(実施例2,3)
アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルの配合量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、表1に示す構成を備えるペプチド含有アクリル樹脂(樹脂膜)を得た。また、得られたペプチド含有アクリル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、細胞培養用容器を得た。
(比較例1)
アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルの代わりに、アクリル酸メトキシ-トリエチレングリコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表2に示す構成を備えるペプチド含有アクリル樹脂(樹脂膜)を得た。また、得られたペプチド含有アクリル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、細胞培養用容器を得た。
(比較例2)
アクリル酸2-ヒドロキシエチルを用いなかったこと、アクリル酸ブチルの配合量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、表2に示す構成を備えるペプチド含有アクリル樹脂(樹脂膜)を得た。また、得られたペプチド含有アクリル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、細胞培養用容器を得た。
(比較例3)
アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-ヒドロキシエチルの配合量を変更したこと、ペプチド及びアクリル酸を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、表2に示す構成を備えるアクリル樹脂(樹脂膜)を得た。また、得られたアクリル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、細胞培養用容器を得た。
(評価)
(1)ペプチド含有アクリル樹脂における第1の構造部分の溶解パラメータ(SP値)
ペプチド含有アクリル樹脂における第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータ(SP値)を算出した。
(2)樹脂膜のイオン交換水中での圧縮弾性率
細胞培養用足場材料により形成された樹脂膜を有する細胞培養用容器を、イオン交換水で満たされたビーカーに入れた後、上記ビーカーを37℃の恒温槽内で24時間放置した。24時間浸水した細胞培養用容器を、樹脂膜がイオン交換水に浸水した状態で取り出した。ナノインデンター装置(Triboindenter、Hysitron社製)を用いてISO14577-1に準拠して、周波数1Hzにて、イオン交換水中で樹脂膜の圧縮弾性率の測定を行った。圧縮弾性率を、以下の式に従い算出した。
圧縮弾性率=√π×(弾性領域の荷重-変位曲線の傾き)/(2×√(接触投影面積))
上記弾性領域とは荷重-変位曲線の傾きが一定になる領域を指す。また接触投影面積とは、圧子と試料が接触する面積を指す。
圧子はBerkovich(三角錐型、先端径R数100nm)を使用し、押し込み深さは50nmとした。
(3)樹脂膜の水膨潤倍率
得られた樹脂膜を切り出して、縦1cm×横3cm×厚み100μmの樹脂膜(試験片)を得た。得られた試験片を、37℃の純水50gに24時間浸漬し、浸漬した試験片を目開き200メッシュの平織金網を用いて濾過することにより膨潤試験片を得た。以下の式に従い、水膨潤倍率を算出した。
水膨潤倍率(%)=(膨潤試験片の重量(g)-試験片の重量(g))/(試験片の重量(g))×100
(4)海島構造の有無
得られた樹脂膜をPBS溶液に30分間浸漬した。浸漬後の樹脂膜を原子間力顕微鏡(AFM、Bruker社製「Dimension XR」)により観察した。QNMモードでピークセットポイントを2nNに設定する測定条件とし、1μm×1μmの範囲を観察した。得られた高さマッピング画像と弾性率マッピング画像とを比較して海島構造の有無を判断した。
(5)細胞の培養評価(細胞の接着性)
以下の液体培地及びROCK(Rho結合キナーゼ)特異的阻害剤を用意した。
TeSR E8培地(STEM CELL社製)
ROCK-Inhibitor(Y27632)
得られた細胞培養用容器にリン酸緩衝生理食塩水1mLを加えて37℃のインキュベーター内で1時間静置後、細胞培養用容器からリン酸緩衝生理食塩水を除去した。
φ35mmのディッシュにコンフルエント状態になったh-iPS細胞253G1のコロニーを配置し、0.5mMエチレンジアミン/リン酸緩衝溶液1mLを加え、室温で2分静置した。エチレンジアミン/リン酸緩衝溶液を除去した後、TeSR E8培地1mLでピペッティングすることにより50μm~200μmの大きさに砕かれた細胞塊を得た。得られた細胞塊(細胞数0.2×10cells)を細胞培養用容器の樹脂膜上にクランプ播種した。
播種時は1.5mLの液体培地と、終濃度が10μMとなるようにROCK特異的阻害剤とを細胞培養用容器に添加した、37℃及びCO濃度5%のインキュベーター内で培養を行った。その後、24時間ごとに細胞培養用容器内の液体を新鮮な液体培地1.5mLと交換する作業を繰り返し5日間培養を行った。その際、樹脂膜から遊離又は浮遊している細胞はピペッティングにて回収、廃棄した。
5日間培養後の樹脂膜全体を位相差顕微鏡で撮影し、樹脂膜の面積に対する細胞塊の専有面積を算出した。細胞の接着性を以下の基準で判定した。
<細胞の培養評価(細胞の接着性)の判定基準>
AA:細胞塊の専有面積が70%以上
A:細胞塊の専有面積が50%以上、70%未満
B:細胞塊の専有面積が50%未満
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。
Figure 0007652553000001
Figure 0007652553000002
1…細胞培養用容器
2…容器本体
2a…表面
3…樹脂膜

Claims (11)

  1. ペプチド含有アクリル樹脂を含み、
    前記ペプチド含有アクリル樹脂が、ペプチド部を側鎖に有さない第1の構造部分と、ペプチド部を側鎖に有する第2の構造部分とを有し、
    前記第1の構造部分が、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有し、
    前記第1の構造部分が有する全構造単位100モル%中、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の平均割合が、80モル%以上であり、
    前記第1の構造部分のOkitsuの式により算出される溶解パラメータが9.8(cal/cm1/2以上、10.5(cal/cm1/2以下であり、
    前記第2の構造部分における前記ペプチド部が、細胞接着性のアミノ酸配列を有する、細胞培養用足場材料。
  2. 前記(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項1に記載の細胞培養用足場材料。
  3. 前記細胞接着性のアミノ酸配列が、RGD配列、YIGSR配列、又はPDSGR配列を少なくとも有する、請求項1又は2に記載の細胞培養用足場材料。
  4. 前記細胞接着性のアミノ酸配列が、下記式(1)で表されるRGD配列を少なくとも有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材料。
    Arg-Gly-Asp-X ・・・式(1)
    前記式(1)中、Xは、Gly、Ala、Val、Ser、Thr、Phe、Met、Pro、又はAsnを表す。
  5. 前記第2の構造部分における前記ペプチド部のアミノ酸残基の数が10個以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材料。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材料により形成された、樹脂膜。
  7. 37℃のイオン交換水中に24時間浸水した後、前記イオン交換水中でナノインデンター装置を用いてISO14577-1に準拠して測定した周波数1Hzでの圧縮弾性率が1GPa以上である、請求項に記載の樹脂膜。
  8. 水膨潤倍率が70%以下である、請求項又はに記載の樹脂膜。
  9. 海島構造を有し、
    前記海島構造における島部が前記ペプチド部を含む、請求項のいずれか1項に記載の樹脂膜。
  10. 細胞の培養領域の少なくとも一部に、請求項のいずれか1項に記載の樹脂膜を備える、細胞培養用容器。
  11. 請求項のいずれか1項に記載の樹脂膜上に細胞を播種する工程を備える、細胞の培養方法。
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