以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
尚、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。
(経緯)
まず、本実施形態に至った経緯を説明する。
電磁界解析では、例えば有限要素モデルなどとなる解析モデルが有する複数の要素ごとに電磁界の支配方程式(以下、単に、支配方程式という)を離散化し、複数の要素ごとに作成された離散化された方程式を連立させた連立方程式を境界条件の下で解くことにより、境界条件を満たす磁気ベクトルポテンシャル(以下、単に、ベクトルポテンシャルという)を求める。数値解析の計算時間の大部分は連立方程式の求解に割かれている。このため、磁化特性の変化(傾き)に精度よく合うように磁気特性を探索することができれば、反復計算の収束性を向上させることができ、計算時間を大幅に短縮させることができることが期待される。
図1は、磁化特性(磁化曲線)100の一例を示す図である。背景技術の欄で説明したように、非線形電磁界解析では、透磁率を線形とした解析を繰り返す収束計算を実行し、収束計算を繰り返すたびに透磁率を都度修正することで磁化特性100の非線形特性を表現する。しかしながら、透磁率が線形に変化するものとして透磁率を修正するため、図1に示すように、磁束密度の大きさBと磁界強度の大きさHとの関係は、原点0を通る直線110に拘束される。特に磁束密度の大きさBが大きい磁気飽和領域では、磁化特性100から大きく離れた直線110上で解(例えば磁束密度)を探索することになる。例えば、磁化特性(磁化曲線)100上の点130は、磁界強度の大きさHの変化に対する磁束密度の大きさBの変化が小さい磁気飽和領域に属するが、点130においては、磁化特性100の変化(傾き)と、原点0と点130とを通る直線110の傾き(=線形の透磁率)とは大きく異なる。従って、収束計算の収束性が劣化する虞がある。
一方、微分透磁率は、磁束密度を磁界強度で微分したものとして定義され、例えば、図1に示す磁化特性100の接線120で表される。従って、収束計算を実行する際に透磁率を修正するよりも微分透磁率を修正する方が、磁化特性100の接線120(直線)に近い範囲で解を探索することになり、磁化特性100とより離れなくなるため、収束計算の収束性が向上すると考えられる。しかしながら、発明を解決するための課題の欄で説明したように、非特許文献1や特許文献1に記載のように微分透磁率を各軸の成分ごとに定めると、磁気飽和は磁束密度の各軸の成分ごとではなく、磁束密度の絶対値に応じて生じる為、磁化特性100の変化(傾き)に精度よく合うように微分透磁率を求めることができない虞がある。従って、微分透磁率をベクトルで表現すると、収束計算を実行する場合には、実際の磁化特性100の変化(傾き)に精度よく追従するように微分透磁率を修正することができない虞がある。
そこで、本発明者らは、磁性材料は、磁束密度の方向に関わらず磁束密度の大きさが大きくなれば磁気飽和することに着目し、磁束密度ベクトルの大きさと磁界強度ベクトルの大きさとの比として定義した微分透磁率(スカラー量)を用いて磁束密度と磁界強度との関係を表現して支配方程式を導くことができれば、磁気飽和領域を含め、磁化特性100の接線120により近い範囲で解の探索が可能になると考えた。本発明者らは、このようにすることにより、収束計算の収束性を向上させることができ、計算時間を大幅に短縮させることができることを見出した。
(支配方程式)
以下に、本発明者らが導いた支配方程式について説明する。ここでは磁気特性をA法により求解する場合を例に挙げて説明する。A法における一般的な支配方程式は、以下の(1)式のAmpereの法則、(2)式のFaradayの法則、および(3)式のベクトルポテンシャルの定義式により構成される。
ここで、H→は磁界強度ベクトル(A/m)である。尚、H→は、各式においてHの上に→が付された記号に対応し、ベクトルであることを示す(このような表記の方法は、H→以外の記号でも同じであるものとする)。E→は、電界強度ベクトル(V/m)である。B→は、磁束密度ベクトル(T)である。A→は、ベクトルポテンシャル(Wb/m)である。σは、導電率(S/m)である。
(1)式~(3)式を連立させると以下の(4)式が得られる。
ここで、J0は、強制電流密度ベクトル(A/m2)である。(4)式から磁界強度ベクトルH→を消去して(4)式をベクトルポテンシャルA→の方程式とするには、磁束密度ベクトルB→と磁界強度ベクトルH→との関係式が必要になり、通常は、以下の(5)式の構成式が使用される。
ここで、μは、透磁率(H/m)である。(3)~(5)式より以下の(6)式が支配方程式として得られる。
透磁率μに代えて微分透磁率を使用しない場合、(6)式の支配方程式を解くことでベクトルポテンシャルA→(Ax、Ay、Az)を求めることになる。
他方、微分透磁率を使用する場合において、微分透磁率をベクトルで表す場合には、ここで、微分透磁率のx成分μ'x、y成分μ'y、z成分μ'zを、それぞれ以下の(7)式、(8)式、(9)式のように定義する。尚、非特許文献1および特許文献1では、微分透磁率は以下の(7)式~(9)式のように定義される。
(7)式~(9)式を用いると、(4)式の左辺のx成分、y成分、z成分は、それぞれ以下の(10)式、(11)式、(12)式にように変形される。
(3)式において、磁束密度ベクトルB→のx成分Bx、y成分By、z成分Bzを、ベクトルポテンシャルAのx成分Ax、y成分Ay、z成分Azで表す。そして、ベクトルポテンシャルAのx成分Ax、y成分Ay、z成分Azで表した磁束密度ベクトルB→のx成分Bx、y成分By、z成分Bzを、(10)式~(12)式の右辺に与えることにより(10)式~(12)式の右辺を、ベクトルポテンシャルAのx成分Ax、y成分Ay、z成分Azで表す。そして、ベクトルポテンシャルAのx成分Ax、y成分Ay、z成分Azで表された(10)式~(12)式の右辺を、(4)式の左辺のx成分、y成分、z成分とする。そうすると、(4)式は以下の(13)式~(15)式のように表される。
ここで、電磁界解析の次元は二次元以上であれば良いが、説明を簡単にするために電磁界解析の次元を、x軸およびy軸により定まる二次元に限定し、電磁界解析を実行する座標系を二次元直交座標系とする。そうすると、ベクトルポテンシャルA→のx成分Ax、y成分Ay、z成分Azのうち、z成分Azのみを求めることになるので、(13)式は、以下の(16)式のようになる。
(16)式における微分透磁率μ'x、μ'yは、それぞれ(7)式、(8)式のように定義されている。従って、微分透磁率を各軸の成分ごとに表した場合の支配方程式は(16)式のようになる。しかしながら、既に説明した通り、(16)式における微分透磁率μ'x、μ'yは、磁束密度の大きさと磁界強度の大きさとの関係で規定したい。従って、本実施形態では、微分透磁率μ'をスカラー量として、以下の(17)式のように定義する。
ここで、||B→||は、磁束密度ベクトルの大きさ(ノルム)であり、||H→||は、磁界強度ベクトルの大きさ(ノルム)である。本実施形態では、(17)式のように定義される微分透磁率μ'を用いる。従って、微分透磁率μ'を用いて電磁界の支配方程式を構築するためには、(16)式の1/μ'x、1/μ'y、つまり、∂Hx/∂Bx、∂Hy/∂Byを、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||および磁界強度ベクトルの大きさ||H→||を用いて表現する必要がある。
以下に、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||および磁界強度ベクトルの大きさ||H→||を用いて∂Hx/∂Bxを表現する方法について説明する。
図2は、磁束密度ベクトルB→のx成分の時間変化に対する磁界強度ベクトルH→の時間変化の一例を示す図である。前述したようにここでは、磁束密度ベクトルB→および磁界強度ベクトルH→は、x成分およびy成分からなる二次元ベクトルであるものとする。また、ここでは説明を簡単にするために、磁束密度ベクトルB→および磁界強度ベクトルH→の、磁化回転による位相差はないものとする。
図2において、解析時刻tにおける磁束密度ベクトルB→、磁界強度ベクトルH→を、それぞれBt→、Ht→と表記する。また、解析時刻tより時間ステップΔtだけ後の解析時刻t+Δtにおける磁束密度ベクトルB→、磁界強度ベクトルH→を、それぞれBt+Δt→、Ht+Δt→と表記する。
磁化特性が線形である場合、磁界強度ベクトルB→のx成分が時間変化すると、磁界強度ベクトルH→も磁束密度ベクトルB→と同様にx成分のみが時間変化する。これに対し、磁化特性が非線形である場合、図2に示すように、磁束密度ベクトルB→のx成分がΔBxだけ時間変化し、磁束密度ベクトルB→がBt→からBt+Δt→に時間変化すると、磁界強度ベクトルH→は、x成分に加えてy成分も時間変化し、Ht→からHt+Δt→に時間変化する。
ここで、微分磁気抵抗率ν'を(17)式で定義される微分透磁率μ'の逆数として以下の(18)式のように定義する。
解析時刻tにおける微分磁気抵抗率ν'をνt'と表記すると、(18)式より以下の(19)式が成立する。
図2に示すように、解析時刻tにおける磁束密度ベクトルBt→のx軸とのなす角度(°)をθxとすると、(19)式のΔ||Bt→||は、幾何学的に以下の(20)式のように表される。尚、解析時刻tにおける磁束密度ベクトルBt→のx軸とのなす角度θxは、解析時刻tにおける磁束密度ベクトルBt→のx軸とのなす角度のうち小さい方の角度(鋭角)または90°である。
(20)式から、解析時刻t+Δtにおける磁束密度ベクトルの大きさ||Bt+Δt→||は、以下の(21)式のように表される。また、(19)式および(20)から、解析時刻t+Δtにおける磁界強度ベクトルの大きさ||Ht+Δt→||は、以下の(22)式のように表される。
ここでは磁束密度ベクトルB→のx成分が時間変化することとしている。従って、解析時刻t+Δtにおける磁束密度ベクトルの大きさ||Bt+Δt→||および磁界強度ベクトルの大きさ||Ht+Δt→||の比は、解析時刻t+Δtにおける磁束密度ベクトルのx成分Bx+ΔBxおよび磁界強度ベクトルのx成分Hx+ΔHxの比と等しくなる。よって、以下の(23)式が成立する。
(22)式~(23)式より、以下の(24)式が成立する。
(24)式を整理し、二次の微小項を0(零)に近似すると、以下の(25)式が得られる。
(25)式の両辺を||Bt→|| ||Ht→||で除すると以下の(26)式が得られる。
ここでは磁束密度ベクトルB→のx成分が時間変化することとしている。従って、以下の(27)式が成立する。以下の(27)式を(26)式に代入すると、以下の(28)式が得られる。
ΔHx/ΔBxを独立させるために(28)式の両辺に||Ht→||/ΔBxを乗ずると、以下の(29)式が得られる。
ここで、以下の(30)式のように、磁界強度ベクトルの大きさ||H→||に対する磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の比を透磁率μとスカラー量で定義すると、その逆数である磁気抵抗率νは以下の(31)式のように定義される。
(31)式に示す磁気抵抗率νを用いると、∂Bx/∂Hxは(29)式より以下の(32)式のように表される。
(32)式のように、∂Hx/∂Bxは、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||および磁界強度ベクトルの大きさ||H→||を用いて表現される。∂Hy/∂Byも同様にして検討すると、以下の(33)式のように表される。
(32)式、(33)式は、それぞれ、(16)式における1/μ'x、1/μ'yであるので、(16)式は、以下の(34)式のように表される。
本実施形態では、二次元電磁界解析の支配方程式を(34)式のように定義する。以上のように、本発明者らは、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||および磁束密度ベクトルの大きさ||H→||により定義される磁気抵抗率νおよび微分磁気抵抗率ν'を用いて表現された支配方程式が得られることに想到した。(34)式で定義される二次元電磁界解析の支配方程式は、磁気抵抗率νおよび微分磁気抵抗率ν'を用いてベクトルポテンシャルA→(のz成分Az)を求めるための方程式である。
磁気抵抗率νおよび微分磁気抵抗率ν'を定数として(34)式に与えることにより、変数であるベクトルポテンシャルA→(のz成分Az)が求められる。そして、二次元電磁界解析の支配方程式(34)式を用いて求めたベクトルポテンシャルA→(のz成分Az)に基づいて、以下の(35)式および(36)式により磁束密度ベクトルB→の各軸の成分Bx、Byが求められる。
すなわち、(34)式で定義される二次元電磁界解析の支配方程式は、磁束密度ベクトルB→の各軸の成分Bx、Byおよび磁界強度ベクトルH→の各軸の成分Hx、Hyを用いて(7)式~(8)式のようにして定義される微分透磁率を用いて表現されない。非特許文献1および特許文献1に記載の技術では、(17)式で定義される微分透磁率(の大きさ)が同じであっても(7)式~(8)式で定義される微分透磁率(の各軸の成分)が異なる場合には、微分透磁率を各軸の成分ごとに定めた場合の支配方程式となる(16)式により求められるベクトルポテンシャルA→(のz成分Az)は異なる。これに対し、(34)式で定義される二次元電磁界解析の支配方程式では、(17)式で定義される微分透磁率(の大きさ)が同じであれば、(7)式~(8)式で定義される微分透磁率(の各軸の成分)が異なっていても、支配方程式により求められるベクトルポテンシャルA→(のz成分Az)は同じになる。つまり、微分透磁率をベクトル量で定義すると、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||が同じであっても、磁束密度ベクトルB→の向きの取り方によって微分透磁率が変わることがあるが、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||および磁束密度ベクトルの大きさ||H→||により微分透磁率μ'をスカラー量で定義することで、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||が同じであれば、磁束密度ベクトルB→の向きの取り方によって微分透磁率μ'が変わることがなく、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性の変化(傾き)に精度よく合うようになる。
解析時刻tにおける磁束密度ベクトルBt→のx軸、y軸、z軸とのなす角度(°)を、それぞれθx、θy、θzとすると、三次元電磁界解析の支配方程式は、前述した二次元電磁界解析の支配方程式の導出の説明における二次元直交座標系を三次元直交座標系に拡張することにより得られ、以下の(37)式で定義される。尚、磁束密度ベクトルBt→のx軸、y軸、z軸とのなす角度(°)を、それぞれθx、θy、θzは、それぞれ、解析時刻tにおける磁束密度ベクトルBt→のx軸、y軸、z軸とのなす角度のうち小さい方の角度(鋭角)または90°である。
ここで、(37)式のKx、Ky、Kzは、それぞれ以下の(38)式、(39)式、(40)式で定義される。
三次元電磁界解析の支配方程式を用いて求められるベクトルポテンシャルA→(Ax、Ay、Az)から、以下の(41)式~(43)式のようにして磁束密度ベクトルB→の各軸の成分Bx、By、Bzが求められる。
尚、(16)式~(34)式を参照しながら前述した説明を理解できる当業者であれば、(16)式~(34)式を参照しながら前述した説明を三次元直交座標系に拡張することにより、三次元電磁源解析における支配方程式を導出することができるので、ここでは(37)式の導出過程の詳細な説明を省略する。
以上の通り、二次元電磁界解析を実行する際には(6)式に代えて(34)式に示す支配方程式を複数の要素ごとに離散化(微分方程式を連立方程式で表現)し、複数の要素ごとの方程式を連立させた連立方程式を解くことによりベクトルポテンシャルA→(のz成分Az)を求める。三次元電磁界解析を実行する際には(6)式に代えて(37)式に示す支配方程式を複数の要素ごとに離散化し、複数の要素ごとの方程式を連立させた連立方程式を解くことによりベクトルポテンシャルA→(のx成分Ax、y成分Ay、z成分Az)を求める。
尚、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'および(31)式で定義される磁気抵抗率νに代えて、(17)式で定義される微分透磁率μ'および(30)式で定義される透磁率μを用いて、(34)式および(37)式を表現してもよい。
また、ここでは、支配方程式の座標系が直交座標系である場合を例示した。しかしながら、支配方程式の座標系は、直交座標系に限定されない。例えば、(34)式および(37)式に示す直交座標系の座標(x、y、z)を、極座標系や円筒座標系等の他の座標系の座標に変換することにより各座標系における支配方程式を構築してもよい。
また、ここでは、A法における支配方程式を、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'と(31)式で定義される磁気抵抗率νと、を用いて表現する場合を例示した。しかしながら、支配方程式は、A法における支配方程式に限定されない。例えば、ベクトルポテンシャルA→および電気スカラーポテンシャルφを用いてマクスウェル方程式を書き換えてベクトルポテンシャルA→および電気スカラーポテンシャルφを求解するA-φ法、または、電流ベクトルポテンシャルTおよび磁気スカラーポテンシャルΩを用いてマクスウェル方程式を書き換えて電流ベクトルポテンシャルTおよび磁気スカラーポテンシャルΩを求解するT-Ω法等、A法以外の解法における支配方程式を、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'と(31)式で定義される磁気抵抗率νとを用いて表現してもよい。
A法以外の解法における支配方程式は、(1)式~(43)式を参照しながら説明したように、それぞれの解法における一般的な支配方程式を、(7)式~(9)式で定義される微分透磁率のx成分μ'x、y成分μ'y、z成分μ'zを用いて書き換え、書き換え
た支配方程式を、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'および(31)式で定義される磁気抵抗率νを用いて書き換えることにより導出することができる。すなわち、A法以外の解法における一般的な支配方程式についての知識のある当業者であれば、(1)式~(43)式を参照しながら前述した説明を参照することにより、A法以外の解法における支配方程式として、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'および(31)式で定義される磁気抵抗率νを用いて表現された支配方程式を導出することができる。従って、ここでは、これらの支配方程式の導出過程の詳細な説明を省略する。尚、これらの支配方程式についても、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'および(31)式で定義される磁気抵抗率νに代えて、(17)式で定義される微分透磁率μ'および(30)式で定義される透磁率μを用いて表現してもよい。
(解析装置)
次に、図3を用いて解析装置300について説明する。図3は、解析装置300の機能的な構成の一例を示す図である。解析装置300のハードウェアは、例えば、プロセッサ、主記憶装置や外部記憶装置等の記憶装置、および各種のインターフェースを備える情報処理装置(コンピュータ)、または、専用のハードウェアを用いることにより実現される。
解析装置300は、磁性体を含む解析対象領域のベクトルポテンシャルを、電磁界の支配方程式に基づく数値解析により求めるための装置である。
磁性体は、例えば、電磁鋼板等の軟磁性体である。
解析対象領域は、例えば、モータ、発電機、およびトランス(変圧器や変流器)等の鉄心(コア)を有する電気機器の一部または全部の領域としてもよい。電気機器の一部の領域は、例えば、モータのステータ等、電気機器の構成部品の領域であってもよい。また、解析対象領域は、電気機器の一部または全部の領域に限定されない。例えば、解析対象領域は、磁気シールドルームの一部または全部の領域であってもよい。また、解析対象領域は、成形された磁性体(例えば、鋼板、条鋼、および鋼管等)の全部または一部の領域であってもよい。また、解析対象領域は、実在する物体の領域でなくてもよい。例えば、解析対象領域は、新規に設計された実在しない物体の全部または一部の領域であってもよい。また、解析対象の物体が対称性を有する場合、当該物体の、対称関係にある複数の領域のうちの一つの領域を解析対象領域としてもよい。
二次元電磁界解析を実行する際の支配方程式は、例えば(34)式に示す支配方程式である。三次元電磁界解析を実行する際の支配方程式は、例えば(37)式に示す支配方程式である。支配方程式として、(34)式または(37)式を用いる場合、解析装置300で求められるベクトルポテンシャルは、ベクトルポテンシャルA→である。
図3に示すように、解析装置300は、取得部310と、数値解析部320と、を備えており、解析対象領域のベクトルポテンシャルを、電磁界の支配方程式に基づく数値解析により求めることが可能に構成される。また、本実施形態では、解析装置300は出力部330をさらに備えている。以下、これらの機能部について、それぞれ説明する。
<取得部310>
取得部310は、後述する数値解析部320における数値解析に必要な各種の情報を取得する。本実施形態では、取得部310は、解析モデル取得部311と、磁化特性取得部312と、方程式取得部313と、初期値取得部314と、を備える。
解析モデル取得部311は、解析対象領域の例えば有限要素モデルなどとなる解析モデルを取得する。解析モデルは、コンピュータで数値解析が可能となるように解析対象領域の形状を複数の要素で近似して表現したものであり、複数の要素を特定する情報を含む。尚、要素は、メッシュや微小領域等とも称される。複数の要素を特定する情報は、例えば、各要素の座標値を含む。
解析モデル取得部311は、例えば、解析装置300のユーザインターフェースを用いた解析モデルの入力操作に応じて、解析モデルの情報を取得してもよい。また、解析モデル取得部311は、外部装置から送信された解析モデルの情報を受信して取得してもよい。また、解析モデル取得部311は、可搬型記憶媒体に記憶された解析モデルの情報を読み込んで取得してもよい。
磁化特性取得部312は、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性を示す情報を取得する。磁化特性は、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||との関係を示す。図1に示す磁化特性100のように、磁化特性取得部312により取得される情報により特定される磁化特性は非線形であるものとし、後述する数値解析部320により非線形電磁界解析が実行させるものとする。ただし、磁化特性取得部312により取得される情報により特定される磁化特性は線形であってもよい。
磁化特性を示す情報は、例えば、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||との関係式でもよい。ただし、磁化特性を示す情報は、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||との関係式に限定されない。例えば、磁化特性を示す情報は、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||とを相互に関連付けて記憶したテーブルであってもよい。尚、このようにする場合、テーブルに記憶されていない情報は、テーブルに記憶されている情報を用いて内挿および外挿を行うことにより求められる。
磁化特性取得部312は、例えば、解析装置300のユーザインターフェースを用いた磁化特性を示す情報の入力操作に応じて、磁化特性を示す情報を取得してもよい。また、磁化特性取得部312は、外部装置から送信された磁化特性を示す情報を受信して取得してもよい。また、磁化特性取得部312は、可搬型記憶媒体に記憶された磁化特性を示す情報を読み込んで取得してもよい。
方程式取得部313は、解析モデル取得部311により取得された解析モデルにより特定される複数の要素に基づいて離散化した方程式を含む連立方程式を取得する。本実施形態では、二次元電磁界解析を実行する場合、支配方程式は(34)式で定義される支配方程式である。一方、三次元電磁界解析を実行する場合、支配方程式は(37)式で定義される支配方程式である。
数値解析の手法として、例えば、有限要素法(FEM(Finite Element Method))および有限差分法(FDM(Finite Difference Method))等、公知の手法が用いられる。従って、数値解析に際しては、(34)式または(37)式で定義される支配方程式そのものではなく、これらの手法で数値解析を実行することができるように(34)式または(37)式で定義される支配方程式を、複数の要素ごとに離散化した方程式を連立させた連立方程式が用いられる。また、本実施形態では、時間ステップΔtごとの各解析時刻tにおけるベクトルポテンシャルを求める場合を例示する。従って、(34)式または(37)式で定義される支配方程式を、さらに時間ステップΔtごとに離散化する必要がある。尚、一つの解析時刻tにおけるベクトルポテンシャルを求める場合には、時間ステップΔtごとの離散化は不要である。
方程式取得部313は、(34)式または(37)式で定義される支配方程式を示す情報を取得する。
方程式取得部313は、例えば、解析装置300のユーザインターフェースを用いた支配方程式を示す情報の入力操作に応じて、支配方程式を示す情報を取得してもよい。また、方程式取得部313は、外部装置から送信された支配方程式を示す情報を受信して取得してもよい。また、方程式取得部313は、可搬型記憶媒体に記憶された支配方程式を示す情報を読み込んで取得してもよい。
そして、方程式取得部313は、(34)式または(37)式で定義される支配方程式を、複数の要素および時間ステップΔtに基づいて離散化し、複数の要素のそれぞれに対する複数の方程式(離散化された支配方程式)を立式(作成)する。この際、方程式取得部313は、解析モデル取得部311により取得された解析モデルに含まれる、複数の要素を特定する情報に基づいて、複数の要素を特定する。また、方程式取得部313は、例えば、解析装置300のユーザインターフェースを用いた時間ステップΔtを示す情報の入力操作に基づいて、時間ステップΔtを特定する。そして、方程式取得部313は、以上のようにして立式(作成)した複数の方程式を連立させて連立方程式を立式(作成)する。
尚、方程式取得部313は、数値解析に用いる連立方程式を、必ずしも以上のようにして取得する必要はない。例えば、方程式取得部313は、(34)式または(37)式で定義される支配方程式そのものではなく、数値解析に用いる連立方程式(そのもの)を示す情報を、解析装置300のユーザインターフェースを用いた入力操作、外部装置からの受信、または、可搬型記憶媒体からの読み込みによって取得してもよい。
初期値取得部314は、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量の初期値を取得する。磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量は、磁束密度の変化に対して磁界強度がどのように変化するのかを示す物理量である。本実施形態では、解析対象領域の磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量に、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の変化量Δ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||の変化量Δ||H→||との関係をスカラー量で定義した第1の物理量の一例である微分透磁率μ'が含まれる場合を例示する。さらに本実施形態では、解析対象領域の磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量に、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||との関係をスカラー量で定義した第2の物理量の一例である透磁率μが含まれる場合を例示する。そこで、初期値取得部314は、複数の要素の各々に対する微分透磁率μ'の初期値、および複数の要素における透磁率μの初期値をそれぞれ取得する。本実施形態では、微分透磁率μ'、透磁率μは、それぞれ(17)式、(30)式で定義されるものである。
尚、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の変化量Δ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||の変化量Δ||H→||との関係をスカラー量で定義した第1の物理量は、微分透磁率μ'に限定されず、例えば、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'であってもよいし、微分透磁率μ'を例えば二乗したものなど、微分透磁率μ'に対して所定の演算を加えたものであっても良い。また、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と磁界強度ベクトルの大きさ||H→||との関係をスカラー量で定義した第2の物理量は、透磁率μに限定されず、例えば、(31)式で定義される磁気抵抗率νであってもよいし、磁気抵抗率νを例えば二乗したものなど、磁気抵抗率νに対して所定の演算を加えたものであっても良い。この場合、初期値取得部314は、(17)式で定義される微分透磁率μ'および(30)式で定義される透磁率μに代えて、(18)式で定義される微分磁気抵抗率ν'および(31)式で定義される磁気抵抗率νを取得する。
本実施形態では、初期値取得部314は、複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→の初期値を取得し、複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→の初期値に基づいて複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値を求める(上記の(35)式および(36)式、あるいは、(41)式~(43)式参照)。そして、初期値取得部314は、複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値と、磁化特性取得部312により取得された情報により特定される磁化特性と、に基づいて、複数の要素における微分透磁率μ'の初期値と、複数の要素における透磁率μの初期値とを求める。
後述する数値解析部320における数値解析は、解析開始時刻tsから解析完了時刻teまでの時間ステップΔtごとの離散化された各解析時刻tにおいて実行される。初期値取得部314は、解析開始時刻tsにおける数値解析を実行する際のベクトルポテンシャルA→の初期値を、例えば、乱数を用いて求めることにより取得してもよい。ただし、解析時刻tsにおける数値解析を実行する際のベクトルポテンシャルA→の初期値は、必ずしも乱数を用いて求める必要はない。初期値取得部314は、例えば、予め設定された値(例えば、0(零))を、解析時刻tsにおける数値解析を実行する際のベクトルポテンシャルA→の初期値として取得してもよい。
また、初期値取得部314は、解析開始時刻tsよりも後の解析時刻tにおける数値解析を実行する際のベクトルポテンシャルA→の初期値として、当該解析時刻tの1つ前の解析時刻t-Δtにおける数値解析により求められた値を取得してもよい。解析開始時刻tsよりも後の解析時刻tにおける数値解析を実行する際のベクトルポテンシャルA→の初期値は、当該解析時刻tの1つ前の解析時刻t-Δtにおける数値解析により求められた値に限定されない。初期値取得部314は、例えば、当該解析時刻tの一周期前の値を、当該解析時刻tにおける数値解析を実行する際のベクトルポテンシャルA→の初期値として取得してもよい。
初期値取得部314は、解析時刻tでの複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→の初期値に基づいて、当該解析時刻tでの複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値を求め、当該解析時刻tでの複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値と、磁化特性取得部312により取得された情報により特定される磁化特性と、に基づいて、当該解析時刻tでの複数の要素における微分透磁率μ'の初期値と、当該解析時刻tでの複数の要素における透磁率μの初期値とを求めることを、解析開始時刻tsから解析完了時刻teまでの時間ステップΔtごとの各解析時刻tについて実行する。
尚、初期値取得部314は、必ずしも以上のようにして各解析時刻tでの複数の要素における微分透磁率μ'の初期値および透磁率μの初期値を取得する必要はない。例えば、初期値取得部314は、複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→の初期値を取得せずに、複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値を取得してもよいし、複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→の初期値および複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値を取得せずに、複数の要素における微分透磁率μ'の初期値および複数の要素における透磁率μの初期値を取得してもよい。
また、取得部310が取得する情報は、後述する数値解析部320における数値解析に必要な各種の情報であり、前述した情報に限定されない。例えば、取得部310は、前述した情報に加えて、数値解析に必要な一般的な情報を取得してもよい。例えば、取得部310は、解析対象領域の物性値(導電率σ等)を示す情報、境界条件を示す情報、解析時間(解析開始時刻tsから解析完了時刻teまでの期間)を示す情報等を取得してもよい。
<数値解析部320>
数値解析部320は、取得部310により数値解析部320における数値解析に必要な情報が取得された後に起動する。数値解析部320は、解析対象領域の磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量に基づいて、解析対象領域のベクトルポテンシャルを、複数の要素ごとに、支配方程式に基づく数値解析により求める。前述したように本実施形態では、(34)式または(37)式で定義される支配方程式を、複数の要素および時間ステップΔtに基づいて離散化した方程式を連立させた連立方程式を解くことにより、複数の要素ごとのベクトルポテンシャルA→を時間ステップΔtごとの各解析時刻tにおいて求める。本実施形態では、複数の要素および時間ステップΔtに基づいて離散化した方程式を連立させた連立方程式が、方程式取得部313により取得された連立方程式である場合を例示する。
数値解析部320における処理は、例えば、以下の(a)~(h)の処理が、解析開始時刻tsから解析完了時刻teまでの時間ステップΔtごとの各解析時刻tにおいて実行されることにより実現される。
(a) まず、数値解析部320は、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量の初期値に基づいて、境界条件を満足するように、前述した連立方程式を解くことで、ベクトルポテンシャルA→を複数の要素のそれぞれにおいて求める。
尚、前述したように本実施形態では、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量は、微分透磁率μ'および透磁率μを含む。従って、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量の初期値として、初期値取得部314により取得された、複数の要素における微分透磁率μ'の初期値、および複数の要素における透磁率μの初期値が用いられる。また、境界条件は、取得部310で取得された境界条件を示す情報から特定される。
(b) 次に、数値解析部320は、(a)で求めた複数の要素におけるベクトルポテンシャルに基づいて、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量の少なくとも1つを求める。そして、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量に基づいて、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を求める。
磁化特性は、磁束密度と磁界強度との関係を示すものである。従って、磁化特性の値を定める物理量は、磁束密度および磁界強度である。本実施形態では、磁化特性の値を定める物理量が、磁束密度である場合を例示する。また、前述したように本実施形態では、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量が、微分透磁率μ'および透磁率μである場合を例示する。
そこで、本実施形態では、数値解析部320は、複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→に基づいて、複数の要素における磁束密度ベクトルB→を求める。そして、数値解析部320は、複数の要素における磁束密度ベクトルB→と、磁化特性取得部312により取得された情報により特定される磁化特性と、に基づいて、複数の要素における微分透磁率μ'と、複数の要素における透磁率μと、を求める。例えば、図1に示した磁束密度ベクトルB→の大きさに対応する磁化特性(磁化曲線)100上の点130を求め、求めた点130における磁化特性(磁化曲線)100の接線120の傾きが微分透磁率μ'として求められる。また、原点0と求めた点130とを通る直線110の傾きが透磁率μとして求められる。尚、数値解析部320は、微分透磁率μ'および透磁率μに代えてまたは加えて、微分磁気抵抗率ν'および磁気抵抗率νを求めてもよい。
(c) 次に、数値解析部320は、収束条件を満足するか否かを判定する。収束条件は、例えば、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量のうちの少なくとも1つの物理量の、前回値と今回値との差が閾値以下であるという条件でもよい。磁化特性の値を定める物理量のうちの少なくとも1つの物理量として、例えば、磁束密度を用いてもよい。このようにする場合、収束条件は、例えば、複数の要素における磁束密度ベクトルB→の代表値の、前回値と今回値との差が閾値以下であるという条件としてもよい。代表値は、例えば、磁束密度ベクトルB→の大きさの平均値、中央値、最頻値、および最大値のいずれかとしてもよい。また、収束条件は、このような条件に限定されず、例えば、収束条件を満足するか否かの判定回数が所定回数になったという条件であってもよい。
(d) (c)の判定の結果、収束条件を満足しない場合、数値解析部320は、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を、(b)の処理で求めたものに更新する。本実施形態では、数値解析部320は、複数の要素における、微分透磁率μ'および透磁率μを、(b)の処理で求めたものに更新する。
(e) 次に、数値解析部320は、(a)の処理において、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を、(d)の処理で更新されたものとして、(a)~(c)の処理を再び実行する。そして、(c)の処理において収束条件を満足しないと判定した場合、数値解析部320は、(d)の処理を再び実行する。
(f) 数値解析部320は、(d)および(e)の処理を、(c)の処理において収束条件を満足すると判定するまで繰り返す収束計算を、第1の反復計算の一例として実行する。
収束計算は、ニュートン・ラフソン法(Newton-Raphson method)等の公知の手法により実現される。従って、収束計算が実行される場合、方程式取得部313は、ニュートン・ラフソン法(Newton-Raphson method)等による収束計算を実現することができるように立式(作成)された連立方程式を取得する。尚、数値解析の手法自体は、非特許文献2等に記載されているように一般的な手法であるので、その詳細な説明を省略する。
(g) 数値解析部320は、前述した(a)~(f)の処理を、解析開始時刻tsから解析完了時刻teまでの時間ステップΔtごとの各解析時刻tにおいて実行する処理を、第2の反復計算の一例として実行する。各解析時刻tでの複数の要素における磁化特性の値を定める物理量(本実施形態では磁束密度(より具体的には磁束密度ベクトルB→))は、各解析時刻tにおいて前述した(b)の処理で求めた、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量である。同様に、各解析時刻tの複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量(本実施形態では微分透磁率μ'および透磁率μ)は、各解析時刻tにおいて前述した(b)の処理で求めた、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量となる。
(h) 数値解析部320は、解析終了条件を満足するか否かを判定する。解析終了条件は、例えば、解析完了時刻teにおいて、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量(本実施形態では磁束密度(より具体的には磁束密度ベクトルB→))を求めたという条件としてもよい。ただし、解析終了条件は、このような条件に限定されない。例えば、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量が所定の条件を満足するという条件を解析終了条件としてもよい。このようにする場合、所定の条件として、例えば、各要素における磁束密度ベクトルB→の、目標値との差が閾値以下であるという条件を用いてもよい。
<出力部330>
出力部330は、数値解析部320により求められた、各解析時刻tでの複数の要素における磁化特性の値を定める物理量(本実施形態では磁束密度)および複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量(本実施形態では微分透磁率μ'および透磁率μ)を表す情報を出力する。出力部330による情報の出力先は特に限定されない。本実施形態では、コンピュータディスプレイ340であるが、これと共に、あるいはこれ代えて、例えば外部装置への送信と、解析装置300の内部または外部の記憶媒体への記憶と、のうち、少なくとも1つの形態などを採用してもよい。
(解析方法)
次に、図4のフローチャートを参照しながら、解析装置300を用いて実行される本実施形態の解析方法の一例を説明する。
まず、ステップS401において、解析モデル取得部311は、解析対象領域における解析モデルを取得する。
次に、ステップS402において、磁化特性取得部312は、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性を示す情報を取得する。
次に、ステップS403において、方程式取得部313は、(34)式または(37)式に示す支配方程式を、複数の要素および時間ステップΔtに基づいて離散化して連立させた連立方程式を取得する。連立方程式は、例えば、(34)式または(37)式に示す支配方程式を、有限要素法や有限差分法等による数値解析およびを実行することができるように離散化して複数の要素ごとの方程式とし、これら複数の要素ごとの方程式を、ニュートン・ラフソン法等による収束計算を実行することができるように変形することにより得られる。
次に、ステップS404において、解析装置300は、現在の解析時刻tを解析開始時刻tsに設定する。
次に、ステップS405において、初期値取得部314は、現在の解析時刻tにおける数値解析を実行する際の、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量の初期値を取得する。本実施形態では、初期値取得部314は、現在の解析時刻tにおける数値解析を実行する際の、複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→の初期値を取得する。そして、初期値取得部314は、複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→の初期値に基づいて、現在の解析時刻tにおける数値解析を実行する際の、複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値を求める。そして、初期値取得部314は、複数の要素における磁束密度ベクトルB→の初期値と、ステップS402で取得した情報により特定される磁化特性と、に基づいて、現在の解析時刻tにおける数値解析を実行する際の、複数の要素における微分透磁率μ'の初期値と、複数の要素における透磁率μの初期値と、をそれぞれ求める。
次に、ステップS406において、数値解析部320は、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量に基づいて、解析対象領域のベクトルポテンシャルを、複数の要素ごとに、支配方程式に基づく数値解析により求める。そして、数値解析部320は、複数の要素におけるベクトルポテンシャルに基づいて、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量と、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量と、を求める。
各解析時刻tにおける最初のステップS406の処理では、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量として、ステップS405で取得された初期値が用いられる。各解析時刻tにおける2回目以降のステップS406の処理では、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量として、後述するステップ408で更新された値が用いられる。
本実施形態では、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量が磁束密度であり、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量が微分透磁率μ'および透磁率μである場合を例示する。
従って、数値解析部320は、ステップS403で取得された連立方程式を解くことにより、現在の解析時刻tでの複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→を求める。そして、数値解析部320は、現在の解析時刻tの複数の要素におけるベクトルポテンシャルA→に基づいて、現在の解析時刻tでの複数の要素における磁束密度ベクトルB→を求める。そして、数値解析部320は、現在の解析時刻tでの複数の要素における磁束密度ベクトルB→と、ステップS402で取得された情報により特定される磁化特性と、に基づいて、現在の解析時刻tでの複数の要素における微分透磁率μ'と、現在の解析時刻tでの複数の要素における透磁率μと、を求める。
次に、ステップS407において、数値解析部320は、収束条件を満足するか否かを判定する。この判定の結果、収束条件を満足しない場合(ステップS407でNOの場合)、ステップS408の処理が実行される。ステップS408において、数値解析部320は、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を、ステップS406で求めたものに更新する。本実施形態では、数値解析部320は、微分透磁率μ'および透磁率μを、本ステップS408の直近のステップS406で求められたものに更新する。
そして、前述したステップS406の処理が再び実行される。前述したように各解析時刻tにおける2回目以降のステップS406の処理では、複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量(本実施形態では、微分透磁率μ'および透磁率μ)の値として、ステップ408で更新された値が用いられる。そして、ステップS407において収束条件を満足すると判定するまで、ステップS406~S408の処理は繰り返し実行される。図4に示すフローチャートでは、ステップS406~S408の処理が、第1の反復計算の一例である。
ステップS407において収束条件を満足すると判定されると(ステップS407でYESの場合)、ステップS409の処理が実行される。ステップS409において、数値解析部320は、本ステップS409の直近のステップS406で求めた、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量(本実施形態では磁束密度)および複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量(本実施形態では微分透磁率μ'および透磁率μ)を示す情報を、現在の解析時刻tでの複数の要素における磁化特性の値を定める物理量、および、現在の解析時刻tでの複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を示す情報として記憶する。尚、磁束密度はベクトル量であるので、磁束密度を示す情報は、磁束密度ベクトルB→を特定することができる情報である。
次に、ステップS410において、数値解析部320は、解析終了条件を満足するか否かを判定する。この判定の結果、解析終了条件を満足しない場合(ステップS410でNOの場合)、ステップS411の処理が実行される。ステップS411において、解析装置300は、解析時刻tを更新する。本実施形態では、ステップS411において、解析装置300は、現在の解析時刻tに時間ステップΔtを加算した解析時刻tを新たな解析時刻tとする。そして、ステップS405の処理が再び実行され、更新後の解析時刻tに対するステップS405~S409の処理が実行される。図4に示すフローチャートでは、ステップS405~S411の処理が、第2の反復計算の一例である。
ステップS410の判定の結果、解析終了条件を満足する場合(ステップS410でYESの場合)、ステップS412の処理が実行される。ステップS412において、出力部330は、各解析時刻tにおけるステップS409で記憶された、複数の要素における磁化特性の値を定める物理量(本実施形態では磁束密度)および複数の要素における磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量(本実施形態では微分透磁率μ'および透磁率μ)を示す情報を出力する。ステップS412の処理が終了すると、図4のフローチャートによる処理は終了する。
(計算例)
次に、計算例を説明する。本計算例では、(34)式を支配方程式として用いた手法(以下、発明例と称する)と、(6)式をx軸およびy軸の二次元直交座標系で表した方程式を支配方程式として用いた手法(以下、比較例と称する)とのそれぞれにおいて、一つの解析時刻における磁束密度ベクトルB→を求めるための収束計算を実行した。表1に、数値解析の条件を示す。
<第1計算例>
まず、第1計算例を説明する。
図5は、解析対象領域の複数の要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の初期値の第1の例を示す図である。図5に示す四角形の二次元の領域を解析対象領域500とし、解析対象領域500を、表1に示すように20×20個の格子状の領域に分割することにより得られるそれぞれの領域を複数の要素とする。解析対象領域500の複数の要素のそれぞれにおけるベクトルポテンシャルA→の初期値を、乱数を用いて設定し、ベクトルポテンシャルA→の初期値に基づいて、解析対象領域500の複数の要素のそれぞれにおける磁束密度ベクトルB→の初期値を求めた。領域510は、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と濃度との対応関係を示す。複数の要素のそれぞれにおける磁束密度ベクトルの初期値の大きさ||B→||を、領域510に示す対応関係に従って濃度に変換したものを、磁束密度の初期分布として図5の解析対象領域500内に示す。
以上のようにして磁束密度の初期分布が設定された解析対象領域500に対し、解析対象領域の磁束密度が1.25Tの一様な磁束密度になるようなベクトルポテンシャルA→を境界条件として設定し、発明例および比較例のそれぞれの手法で、境界条件を満足する磁束密度ベクトルB→を、表1に示すようにニュートン・ラフソン法による非線形収束計算により求めた。非線形収束計算においては、複数の要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の最大値の、前回値と今回値との差の絶対値ΔBmaxが10-5T以下になることを収束条件として用いた。以下の説明では、複数の要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の最大値の、前回値と今回値との差の絶対値ΔBmaxを、最大磁束密度差ΔBmaxとも称する。
比較例では、磁束密度ベクトルB→が収束せずに発散することを防止するために、ベクトルポテンシャルA→に対して緩和係数を掛けることにより、前回の収束計算で求めたベクトルポテンシャルA→に対する変化量が小さくなるように、求めたベクトルポテンシャルA→を変更し、変更後のベクトルポテンシャルA→に基づいて磁束密度ベクトルB→を求め、求めた磁束密度ベクトルB→に基づいて透磁率を求めた。
図6は、解析対象領域の複数の要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の収束計算後の値の第1の例を示す図である。図6(a)は、発明例における図であり、図6(b)は、比較例における図である。
図6(a)に示すように発明例では、図6(b)に示す比較例と同様に、解析対象領域500の磁束密度は1.25T程度の一様な分布になった。このように、発明例では、既に確立されている手法と同程度の精度で磁束密度ベクトル||B→||を求めることができることが分かる。
図7は、最大磁束密度差ΔBmaxと収束計算回数との関係の第1の例を示す図である。
図7に示すように発明例では、最大磁束密度差ΔBmaxは3回目の収束計算から急激に低下することが分かる。また、発明例では、緩和係数を用いなくても最大磁束密度差ΔBmaxが10-5T以下になり収束条件を満足することが分かる。これに対し、比較例では、収束条件を満足し易いように緩和係数を用いたのにも関わらず、12回の収束計算を実行しても収束条件を満足しない。
以上のように第1計算例の結果から、解析対象領域に含まれる軟磁性体が磁気飽和していない場合に、磁束密度の分布の精度を保ちつつ、収束計算の回数を低減することができ、数値解析に要する時間を低減することができることが分かる。
<第2計算例>
次に、第2計算例を説明する。第2計算例は、第1計算例に対し、解析対象領域の複数の要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の初期値と、境界条件とを異ならせた。
図8は、解析対象領域の複数の要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の初期値の第2の例を示す図である。図8に示す解析対象領域800および解析対象領域800内の複数の要素は、図6に示す解析対象領域500および解析対象領域500内の複数の要素と同じである。図5および図8との違いは、各要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の初期値(濃度)のみである。領域810は、磁束密度ベクトルの大きさ||B→||と濃度との対応関係を示す。複数の要素のそれぞれにおける磁束密度ベクトルの初期値の大きさ||B→||を、領域810に示す対応関係に従って濃度に変換したものを、磁束密度の初期分布として図8の解析対象領域800内に示す。
以上のようにして磁束密度の初期分布が設定された解析対象領域800に対し、解析対象領域の磁束密度が1.8Tの一様な磁束密度になるようなベクトルポテンシャルA→を境界条件として設定し、発明例および比較例のそれぞれの手法で、境界条件を満足する磁束密度ベクトルB→を、表1に示すようにニュートン・ラフソン法による非線形収束計算により求めた。収束条件は、第1計算例と同じ(ΔBmax≦10-5T)である。第1計算例と同様に第2計算例でも、発明例では緩和係数を用いずに収束計算を実行したのに対し、比較例では緩和係数を用いて収束計算を実行した。
図9は、解析対象領域の複数の要素における磁束密度ベクトルの大きさ||B→||の収束計算後の値の第2の例を示す図である。図9(a)は、発明例における図であり、図9(b)は、比較例における図である。
図9(a)に示すように発明例では、図9(b)に示す比較例と同様に、解析対象領域800の磁束密度は1.8T程度の一様な分布になった。このように、発明例では、解析対象領域に含まれる軟磁性体が磁気飽和しているような場合でも、既に確立されている手法と同程度の精度で磁束密度ベクトル||B→||を求めることができることが分かる。
図10は、最大磁束密度差ΔBmaxと収束計算回数との関係の第2の例を示す図である。
図10に示すように発明例では、最大磁束密度差ΔBmaxは3回目の収束計算からから急激に低下することが分かる。また、発明例では、緩和係数を用いなくても最大磁束密度差ΔBmaxが10-5T以下になり収束条件を満足することが分かる。これに対し、比較例では、収束条件を満足し易いように緩和係数を用いたのにも関わらず、13回の収束計算を実行しても収束条件を満足しない。
以上のように第2の計算例の結果から、解析対象領域に含まれる軟磁性体が磁気飽和しているような場合でも、磁束密度の分布の精度を保ちつつ、収束計算の回数を低減することができ、数値解析に要する時間を低減することができることが分かる。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、解析装置300は、解析対象領域の磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量として、磁束密度ベクトルの大きさの変化量と磁界強度ベクトルの大きさの変化量との関係をスカラー量で定義した第1の物理量を含む物理量に基づいて、解析対象領域のベクトルポテンシャルを、複数の要素ごとに求める。これによって、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を成分ごとに定める場合(ベクトル量で定義した場合)よりも、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性の変化(傾き)に精度よく合うように、磁束密度と磁界強度との関係を求めることができる。したがって、電磁界解析における非線形収束計算の収束性を改善させることができ、解析速度を向上させることができる。
また、本実施形態では、磁束密度ベクトルの大きさの変化量と磁界強度ベクトルの大きさの変化量との関係をスカラー量として定義した第1の物理量として、磁束密度ベクトルの大きさを磁界強度ベクトルの大きさで偏微分した値として定義される微分透磁率((17)式を参照)、または、微分透磁率の逆数として定義される微分磁気抵抗率((18)式を参照)を用いる。従って、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性の接線の傾きを、第1の物理量として求めることができる。
また、本実施形態では、x軸およびy軸からなる二次元直交座標系における電磁界を解析する場合、ν、ν'をそれぞれ(31)式、(18)式として、支配方程式を(34)式で表す。従って、二次元直交座標系における磁束密度と磁界強度との関係を、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性の変化(傾き)に精度よく合うように求めることができる。
また、本実施形態では、x軸、y軸、およびz軸からなる三次元直交座標系における電磁界を解析する場合、Kx、Ky、Kz、ν、ν'をそれぞれ(38)式、(39)式、(40)式、(31)式、(18)式として、支配方程式を(34)式で表す。従って、三次元直交座標系における磁束密度と磁界強度との関係を、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性の変化(傾き)に精度よく合うように求めることができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量の初期値を取得する。解析装置300は、取得した磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量の初期値に基づいて、解析対象領域のベクトルポテンシャルを複数の要素ごとに求め、求めた前記解析対象領域のベクトルポテンシャルに基づいて、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を更新し、更新後の磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量に基づいて、解析対象領域のベクトルポテンシャルを複数の要素ごとに求めることを、収束条件を満足するまで繰り返す第1の反復計算を実行する。従って、例えば1回の計算ではベクトルポテンシャルの精度が低いような場合に実行される第1の反復計算に際し、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を実際の磁化特性の変化に精度よく追従するように修正することができ、第1の反復計算の回数を低減することができる。よって、数値解析の計算時間を低減することができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、第1の反復計算において収束条件を満足する場合、時間ステップを更新して次の時刻における第1の反復計算を実行することを、解析終了条件を満足するまで繰り返す第2の反復計算を実行する。前述したように第1の反復計算の回数を低減することができるので、第2の反復計算の時間も低減することができる。従って、解析対象領域の複数の要素におけるベクトルポテンシャルの時間変化を短時間に求めることができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性を示す情報として、磁束密度ベクトルの大きさと磁界強度ベクトルの大きさとの関係を示す情報を取得し、ベクトルポテンシャルに基づいて定まる磁束密度ベクトルの大きさまたは磁界強度ベクトルの大きさと、磁化特性と、に基づいて、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を求める。従って、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性に応じて、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量を求めることができる。よって、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量をより高精度に求めることができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量として、磁束密度ベクトルの大きさと磁界強度ベクトルの大きさとの関係をスカラー量で定義した第2の物理量として、磁界強度ベクトルの大きさに対する磁束密度ベクトルの大きさの比で定義される透磁率((30)式を参照)、または、当該透磁率の逆数として定義される磁気抵抗率((31)式を参照)をさらに用いる。従って、解析対象領域に含まれる磁性体の磁化特性上の点と原点とを結ぶ直線の傾きを第2の物理量として求めることができ、第1の物理量に加えて第2の物理量を、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量として用いることができる。よって、解析対象領域のベクトルポテンシャルをより高精度に求めることができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、解析対象領域における解析モデルとして、前記複数の要素を特定する情報を含む解析モデルを取得する。従って、例えば、解析者の意図に応じて解析対象領域の形状を複数の要素に近似することができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、複数の要素ごとに支配方程式を離散化した方程式を連立させた連立方程式を取得し、取得した連立方程式を解くことにより、ベクトルポテンシャルを求める。従って、例えば、解析する電磁界の次元数や、座標系や、解法等に応じた連立方程式を取得してベクトルポテンシャルを求めることができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、ベクトルポテンシャルに基づいて、磁束密度ベクトルおよび磁界強度ベクトルの少なくとも一方を求める。従って、解析対象領域の磁束密度や磁界強度を複数の要素ごとに定量化することができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、ベクトルポテンシャルA→を求める。従って、T-Ω法に比べて非線形反復の収束性が優位であるとされるA法やA-φ法に基づいてベクトルポテンシャルA→を求めることができる。
また、本実施形態では、解析装置300は、二次元以上の次元の電磁界を解析する。従って、解析対象領域を平面や空間とし、平面や空間におけるベクトルポテンシャルを複数の要素ごとに求めることができる。よって、解析対象領域の磁気特性をより詳細に求めることができる。
(変形例)
本実施形態では、磁化特性の値を定める物理量として、磁束密度ベクトルB→を求める場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、磁化特性の値を定める物理量として、磁束密度ベクトルB→に加えてまたは代えて磁界強度ベクトルH→を求めてもよい。このようにする場合、磁界強度ベクトルH→と磁化特性とに基づいて、磁束密度と磁界強度との関係を示す物理量(本実施形態では微分透磁率μ'および透磁率μ)を求めてもよい。また、磁束密度ベクトルB→に基づいて、解析対象領域に含まれる軟磁性体の異常渦電流損を求めてもよい。また、磁界強度ベクトルH→に基づいて、解析対象領域に含まれる軟磁性体のヒステリシス損を求めてもよい。
また、本実施形態では、二次元および三次元の電磁界を解析する場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、一次元の電磁界を解析してもよい。
また、本実施形態のように第1の反復計算(収束計算)を実行すれば、ベクトルポテンシャル(およびベクトルポテンシャルに基づいて求められる磁気特性)をより精度よく求めることができるので好ましい。しかしながら、必ずしも第1の反復計算を実行する必要はない。例えば、解析対象領域における磁束密度が低磁束密度である場合には、第1の反復計算を実行しなくてもある程度の精度でベクトルポテンシャルを求めることができる場合があるので、必ずしも第1の反復計算を実行する必要はない。また、一つの解析時刻tにおけるベクトルポテンシャルを求める場合には、時間ステップΔtごとの各解析時刻tにおけるベクトルポテンシャルを求める第2の反復計算を実行する必要はない。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。