以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。以下では、比較対象の層よりも先のプロセスで形成されている層を「下層」と称し、比較対象の層よりも後のプロセスで形成されている層を「上層」と称する。以下の説明において、2つの数AおよびBについての「A~B」という記載は、特に明示されない限り、「A以上かつB以下」を意味する。
〔実施形態1〕
本開示の一実施形態について、図1~図16に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、発光層上に、金属ハロゲン化物(第1金属ハロゲン化物)を含む中間層と、キャリア輸送性材料を含むキャリア輸送層とが、上記発光層側(つまり、下層側)からこの順に互いに隣接して設けられた発光素子を製造する方法について説明する。本開示に係る発光素子は、発光層に、発光材料として量子ドットを用いた量子ドット発光ダイオード(QLED)である。本開示では、発光層とキャリア輸送層との間の層を中間層と称する。
本実施形態に係る発光素子の製造方法は、発光層を形成する工程と、上記発光層上に、第1金属ハロゲン化物を含む中間層を形成する工程と、上記中間層上にキャリア輸送層を形成する工程と、を含み、上記キャリア輸送層を形成する工程は、上記中間層上に、キャリア輸送性材料と第1溶媒とを含むキャリア輸送性材料分散液を塗布する工程と、上記第1溶媒を除去する工程と、を含んでいる。上記中間層を形成する工程では、上記第1金属ハロゲン化物として25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物を含む中間層を形成し、上記発光層を形成する工程では、上記発光層として、(1)量子ドットと25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の第2金属ハロゲン化物とを含む発光層を形成するか、または、(2)上記量子ドットを含み、かつ、有機リガンドレスの発光層を形成する。なお、本開示において、溶解度とは、金属ハロゲン化物単体の25℃における飽和溶解重量を示す。
以下では、上記発光層を形成する工程で、上記発光層として、量子ドットと上記第2金属ハロゲン化物とを含む発光層を形成する場合を例に挙げて説明する。また、以下では、上記中間層上に形成されるキャリア輸送層が電子輸送層である場合を例に挙げて説明する。また、以下では、上記発光素子が、陽極を下層電極とし、陰極を上層電極とするコンベンショナル構造を有し、陽極と陰極との間に、機能層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、中間層、および電子輸送層を備えている場合を例に挙げて説明する。なお、本開示では、陽極と陰極との間の層を総称して機能層と称する。
しかしながら、本実施形態に係る発光素子は、これに限定されるものではなく、例えば、陰極を下層電極とし、陽極を上層電極とするインバーテッド構造を有していてもよい。また、上述したように、本実施形態に係る発光素子は、上記中間層上に形成されるキャリア輸送層が電子輸送層である場合、発光層上に、上記中間層と上記電子輸送層とが、上記発光層側からこの順に互いに隣接して設けられていればよい。したがって、上記中間層上に形成されるキャリア輸送層が電子輸送層である場合、正孔注入層および正孔輸送層は、設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。したがって、上記発光素子は、正孔注入層および正孔輸送層のうち少なくとも一方が設けられていない構成を有していてもよく、陽極と陰極との間に、上記機能層以外の機能層が設けられている構成を有していてもよい。
以下、発光層を「EML」と称し、キャリア輸送層を「CTL」と称し、電子輸送層を「ETL」と称し、正孔輸送層を「HTL」と称し、正孔注入層を「HIL」と称し、中間層を「IL」と称する場合がある。また、量子ドットを「QD」と称する場合がある。
図1は、本実施形態に係る発光素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図2は、本実施形態に係る発光素子1の概略構成を示す断面図である。図3は、図2に示す発光素子1におけるQD21の概略構成を示す断面図である。図4は、図2に示す発光素子1におけるQD21の概略構成を示す他の断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る発光素子1は、一例として、陽極2、HIL11、HTL12、EML13、IL14、ETL15、および陰極3が、下層側(例えば、基板等の図示しない支持体側)からこの順に設けられた構成を有している。陽極2から陰極3までの各層は、一般的に、支持体としての基板によって支持されている。なお、図示および説明は省略するが、発光素子1は、陽極2と陰極3との間に、HIL11、HTL12、EML13、IL14、およびETL15以外の、図示しない機能層を備えていてもよい。
本実施形態に係る発光素子1の製造方法では、図1および図2に示すように、まず、図示しない基板上に、下層電極として陽極2を形成する(ステップS1、下層電極形成工程、陽極形成工程)。次いで、HIL11を形成する(ステップS2、正孔注入層形成工程)。次いで、HTL12を形成する(ステップS3、正孔輸送層形成工程)。次いで、QD21と、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物、無機リガンド)とを含むEML13を形成する(ステップS4、発光層形成工程)。次いで、EML13上に、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)を含むIL14を形成する(ステップS5、中間層形成工程)。次いで、IL14上に、ETL15を形成する(ステップS6、キャリア輸送層形成工程、電子輸送層形成工程)。ステップS6では、図1に示すように、まず、IL14上に、キャリア輸送性材料41と溶媒(第1溶媒)とを含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、該キャリア輸送性材料分散液の塗膜を形成する(ステップS6a、キャリア輸送性材料分散液塗布工程)。次いで、上記塗膜を加熱する等して、該塗膜に含まれる溶媒、つまり、塗布したキャリア輸送性材料分散液中に含まれていた上記溶媒(第1溶媒)を除去する(ステップS6b、第1溶媒除去工程)。これにより、IL14上に、キャリア輸送性材料41を含むETL15が形成される。次いで、ETL15上に、上層電極として陰極3を形成する(ステップS7、上層電極形成工程、陰極形成工程)。これにより、図2に示す発光素子1が形成される。以下に、より詳細に説明する。
陽極2は、導電性材料を含み、電圧が印加されることにより、正孔(ホール)をEML13に供給する電極である。陰極3は、導電性材料を含み、電圧が印加されることにより、電子をEML13に供給する電極である。陽極2および陰極3の少なくとも一方は透光性電極である。なお、陽極2および陰極3の何れか一方は、光反射性を有する、いわゆる反射電極であってもよい。発光素子1は、透光性電極側から光を取り出すことが可能である。
例えば、発光素子1が、上層電極側から光を放射するトップエミッション型の発光素子である場合、上層電極に透光性電極が使用され、下層電極に反射電極が使用される。一方、発光素子1が、下層電極側から光を放射するボトムエミッション型の発光素子である場合、下層電極に透光性電極が使用され、下層電極に反射電極が使用される。
透光性電極は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、AgNW(銀ナノワイヤ)、MgAg(マグネシウム-銀)合金の薄膜、Agの薄膜等の、導電性の透光性材料で形成される。
一方、反射電極は、例えば、Ag、Al、Cu等の金属、それら金属を含む合金等の、導電性の光反射性材料で形成される。なお、上記透光性材料からなる層と上記光反射性材料からなる層とを積層することで反射電極としてもよい。
ステップS1における陽極2の形成並びにステップS5における陰極3の形成には、例えば、蒸着法、スパッタリング法等が用いられる。陽極2は、例えば、図示しない基板上に、蒸着法またはスパッタリング法等で、上記導電性材料を成膜することで形成することができる。同様に、陰極3は、ETL15上に、蒸着法またはスパッタリング等で、上記導電性材料を成膜することで形成することができる。
HIL11は、正孔輸送性を有し、陽極2からHTL12への正孔の注入を促進する層である。HIL11の材料には、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との複合物(PEDOT:PSS)等の正孔輸送性材料が用いられる。HIL11の形成には、例えば、スピンコート法、インクジェット法等、任意の方法を適宜選択し得る。
HTL12は、正孔輸送性を有し、HIL11からEML13に正孔を輸送する層である。HTL12の材料には、例えば、TFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)])、p-TPD(ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン])、PVK(ポリビニルカルバゾール)、NiO、WO3、MoO3等の正孔輸送性材料が用いられる。HTL12の形成には、例えば、スピンコート法、インクジェット法等、任意の方法を適宜選択し得る。
前述したように、発光素子1はQLEDであり、EML13は、発光材料としてQD21を含むQD発光層である。EML13は、QD21と、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)と、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)を含んでいる。EML13は、発光材料として、発光色に応じたナノサイズのQD21を含んでいる。
EML13では、陽極2から輸送された正孔と陰極3から輸送された電子とが再結合し、これによって生じた励起子がQD21の伝導帯準位から価電子帯準位に遷移する過程で、光を発する。
QD21は、粒子の最大幅が100nm以下のドットである。QD21は、一般的に、その組成が半導体材料由来であることから、半導体ナノ粒子と称される場合がある。また、QD21は、一般的に、その組成が無機材料由来であることから、無機ナノ粒子と称される場合がある。また、QD21は、その構造が例えば特定の結晶構造を有することから、ナノクリスタルと称される場合もある。
QD21の形状は、上記最大幅を満たす範囲であればよく、特に制約されず、球状の立体形状(円状の断面形状)に限定されるものではない。例えば、多角形状の断面形状、棒状の立体形状、枝状の立体形状、表面に凹凸を有す立体形状でもよく、または、それらの組合せでもよい。
QD21は、金属元素を少なくとも1つ含んでいてもよい。QD21に含まれる金属元素としては、例えば、Cd、Zn、In、Sb、Al、Si、Ga、Pb、Ge、Mg等が挙げられる。また、QD21は、少なくとも1つの金属元素と、S、Te、Se、N、P、As等の非金属元素とを組み合わせた半導体材料であってもよい。
QD21は、コアのみで形成されていてもよく、二成分コア型、三成分コア型、四成分コア型であってもよい。また、QD21は、図3に示すように、コア21aとシェル21bとを含むコアシェル構造を有していてもよく、コアシェル型またはコアマルチシェル型であってもよい。
図3に示すように、QD21がシェル21bを含む場合、中心部にコア21aがあり、シェル21bは、コア21aの表面に設けられていればよい。シェル21bは、コア21aの全体を覆っていることが望ましいが、シェル21bがコア21aを完全に覆っている必要はない。シェル21bは、コア21aの表面の一部に形成されていてもよい。QD21は、該QD21の一断面における観察にて、コア21aの表面の一部にシェル21bが形成されていることが判るか、または、コア21aをシェル21bが包んでいることが判れば、それでコアシェル構造を有していると言うことができる。したがって、シェル21bがコア21aの全体を覆うことは、QD21の一断面の観察で判断できれば足る。なお、上記断面観察は、例えば、走査透過電子顕微鏡(STEM)、あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)にて行うことができる。
また、QD21は、ドープされたナノ粒子を含んでいてもよく、または、組成傾斜した構造を備えていてもよい。また、シェル21bは、コア21aの表面に固溶化した状態で形成されていても構わない。図3では、コア21aとシェル21bとの境界を点線で示したが、これは、コア21aとシェル21bとの境界を分析により確認できてもできなくてもどちらでもよいことを示す。シェル21bは、複数層形成されていてもよい。
コア21aは、例えば、Si、Ge、CdSe、CdS、CdTe、InP、GaP、InN、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdSeTe、GaInP、ZnSeTe等で構成することができる。シェル21bは、例えば、CdS、ZnS、CdSSe、CdTeSe、CdSTe、ZnSSe、ZnSTe、ZnTeSe、AIP等で構成することができる。QD21がコアシェル構造を有する場合、QD21の材料(コア21a/シェル21bの材料の組み合わせ)の一例としては、例えば、ZnSe/ZnS、InP/ZnS、CdSe/CdS等が挙げられる。
QD21は、粒子の粒径、組成等によって、発光波長を種々変更することができる。QD21は、可視光を発光するQDであり、QD21の粒径および組成を適宜調整することによって、発光波長を、青色波長域~赤色波長域まで制御することが可能である。
金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)は、前述したように、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の金属ハロゲン化物である。なお、金属ハロゲン化物22については、後で、金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)と併せて説明する。
前述したようにリガンド除去を行う等してQD21の表面にリガンドが存在していない場合、QD21のバルクの物性が顕在化する。このようにリガンドレスのQD21の表面(コア21aまたはシェル21bの表面)がキャリア輸送性材料分散液と直接接触すると、EML13に対するキャリア輸送性材料分散液の濡れ性の課題が発生するおそれがある。また、例えばQD21の表面にZn原子が存在する、コア21aのみまたはコアシェル構造を有するQD21は、表面に露出したZn原子が励起子の失活要因となり得る。このため、QD21の表面には、リガンドが配位していることが望ましい。
なお、本開示において、「配位」とは、リガンドとQD21の表面とが相互作用していることを示し、例えば、QD21の表面にリガンドが吸着している(言い換えれば、リガンドがQD21表面を修飾している)ことを示す。なお、ここで、「吸着」とは、QD21の表面において、リガンドの濃度が周囲よりも増加していることを示す。上記吸着は、QD21とリガンドとの間に化学結合がある化学吸着であってもよいし、物理吸着あるいは静電吸着であってもよい。
したがって、リガンドは、QD21の表面との相互作用が可能であれば、配位結合、共有結合、イオン結合、水素結合等で結合していてもよいし、必ずしも結合していなくてもよい。上記相互作用は、例えば、配位結合性、共有結合性、イオン結合性、水素結合性の相互作用であってもよく、ファンデルワールス相互作用または他の分子相互作用であってもよい。このように、本開示において、「リガンド」とは、QD21の表面と相互作用可能な分子またはイオンを示す。本開示では、EML13において、QD21およびQD21の表面と相互作用可能な分子もしくはイオンが存在することが確認できれば、その分子もしくはイオンは「リガンド」ということができる。なお、本開示では、QD21の表面に配位している分子またはイオンだけでなく、配位可能だが配位していない分子またはイオンも含めて「リガンド」と称する。
キャリア注入型の発光素子において、リガンドの長さは、短ければ短いほど良い。そこで、本実施形態では、金属ハロゲン化物を、リガンド(無機リガンド)として使用する。金属ハロゲン化物は、安定分散のために一般的に用いられる有機リガンドと比較して、リガンドの長さが短く、QD21同士を近接させることができる。このため、金属ハロゲン化物は、有機リガンドと比較して、キャリア注入性を向上させることができるとともに、QD21の表面の欠陥による発光効率の低下を抑制することができる。
金属ハロゲン化物22は、アニオン22aとカチオン22bとして存在している。これらアニオン22aおよびカチオン22bのうち、アニオン22aであるハロゲンは、負に帯電していることから、ハロゲンリガンドとして、QD21の正に帯電した表面に引き付けられる。
同様に、金属ハロゲン化物31は、アニオン31aとカチオン31bとして存在している。これらアニオン31aおよびカチオン31bのうち、アニオン31aであるハロゲンは、負に帯電していることから、ハロゲンリガンドとして、QD21の正に帯電した表面に引き付けられる。
EML13は、例えば図2に示すように、QD21と、QD21に配位する前の状態または配位した状態の金属ハロゲン化物22と、QD21に配位する前の状態または配位した状態の金属ハロゲン化物31と、を含んでいてもよい。ここで、「配位する前の状態」とは、アニオンと、対イオンとなるカチオンとが結合した状態を示す。例えば、アニオン22aとカチオン22bとが結合した状態、あるいは、アニオン31aとカチオン31bとが結合した状態を示す。また、「配位した状態」とは、アニオン22aあるいはアニオン31aであるハロゲンとQD21の表面とが相互作用している状態(例えばハロゲンがハロゲンリガンドとしてQD21の表面に結合した状態)を示す。
アニオン22aあるいはアニオン31aとしては、例えば、F-、Cl-、Br-、I-等が挙げられる。カチオン22bあるいはカチオン31bとしては、例えば、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Sn2+、Pb2+等の金属イオンが挙げられる。なお、具体的な金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31については、後で説明する。
図4に示すように、本実施形態に係るEML13は、QD21および金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31に加えて、有機リガンド23を含んでいてもよく、QD21の表面には、有機リガンド23が配位していてもよい。
有機リガンド23は、QD21に配位可能な配位性官能基を少なくとも1つ含む有機化合物である。上記配位性官能基としては、代表的には、例えば、アミノ基、ホスホン基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、カルボキシル基、およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が挙げられる。
EML13が、有機リガンド23をさらに含む場合、EML13は、有機リガンド23として、QD21に配位する前の状態または配位した状態の有機化合物を含んでいてもよい。なお、有機リガンド23が配位性官能基として例えばチオール(-SH)基を有する場合、該有機リガンド23は、チオール基の水素原子が外れてスルフィド(-S-)結合でQD21に配位する。このため、ここで、「配位する前の状態」の有機化合物とは、例えば配位によって外れる水素原子が結合している状態の有機化合物を示す。
上記有機リガンド23としては、例えば、オレイルアミン、ドデシルアミン等のアミン系化合物;(12-ホスホノドデシル)ホスホン酸、11-メルカプトウンデシルホスホン酸等のホスホン系化合物;トリオクチルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン系化合物;トリオクチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド系化合物;オレイン酸、オクタン酸等の脂肪族系化合物;ドデカンチオール、オクタンチオール等のチオール系化合物;等が挙げられる。
但し、キャリア注入を容易にするためには、リガンドの総量における有機リガンド23の割合が少ないか、あるいは、EML13が、有機リガンド23を含まないか実質的に含まない有機リガンドレスであることが望ましい。ハロゲンリガンドの効果から見て、EML13におけるQD21に対する有機リガンド23の重量比率(QD21の重量に対する有機リガンド23の重量割合)は、QD21の種類およびサイズ、並びに、有機リガンド23の分子量にもよるが、30%以下であることが望ましく、20%以下であることがより望ましく、10%以下であることが特に望ましい。EML13におけるQD21に対する有機リガンド23の重量比率は、示差熱分析(TG-DTA)により評価できる。TG-DTAによって測定した、EML13におけるQD21に対する有機リガンド23の重量比率は、EML13がリガンドとして有機リガンド23のみを含む場合、30%程度である。有機リガンド23を金属ハロゲン化物22に置換することで、TG-DTAによって測定される上記有機リガンド23の重量比率を、例えば20%以下に減らすことができる。また、後述する有機リガンド除去工程を行うことで、TG-DTAによって測定される上記有機リガンド23の重量比率を、10%以下に減らすことができる。
本開示では、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)法で有機リガンド由来の吸収スペクトルを確認し、「該FT-IR法で有機リガンド由来の吸収スペクトルが検出できない、すなわち測定強度がノイズ以下である」ことが確認できれば、「有機リガンドレス」ということができる。
上記金属原子数に対する有機リガンド23の分子数は、TG-DTAにより、加熱時の有機リガンド23の脱離成分の量を測定することで算出することができる。なお、有機リガンド23の除去工程を行わずに形成したEML13における、QD21のサイズから計算される上記金属原子数に対する有機リガンド23の分子数は、通常、38%程度であり、溶液状態では概算100%以上である。
合成もしくは商業的に入手したQDには、多くの場合、リガンドとして、有機リガンドが配位している。市販のQDは、一般的に、有機リガンドを含む量子ドット分散液(QD分散液)の状態で提供される。有機リガンドは、QD分散液中でのQDの分散性を向上させる分散剤として用いられるとともに、QDの表面安定性の向上および保存安定性の向上にも使用される。また、QDの合成には例えば湿式法が用いられ、QDの表面に有機リガンドを配位させることでQDの粒径制御が行われる。このため、湿式法により合成されたQD分散液には、QDの合成に用いた有機リガンドが含まれている。
本実施形態では、前述したように、発光層形成工程(ステップS3)において、まず、QD21と金属ハロゲン化物22とを含むEML13を形成する。
したがって、発光層形成工程(ステップS3)においてQD21の表面に金属ハロゲン化物22が配位したEML13を形成するためには、合成もしくは商業的に入手したQD分散液に含まれる有機リガンドを、金属ハロゲン化物22に置換する必要がある。なお、QD21の表面には、有機リガンド23として、例えば、このように合成もしくは商業的に入手したQD分散液に含まれていた、未置換の有機リガンドが配位していてもよい。但し、例えば、QD21の分散性の向上等、様々な目的で、リガンドとして、合成もしくは商業的に入手したQD分散液に含まれる有機リガンドとは異なる有機リガンドが用いられてもよい。このため、有機リガンド23は、合成もしくは商業的に入手したQD分散液に含まれる有機リガンドとは異なる有機化合物であってもよい。
何れにしても、QD21の表面に金属ハロゲン化物22が配位したEML13を形成するためには、QD21の表面に存在する有機リガンド23の少なくとも一部を、金属ハロゲン化物22に置換する必要がある。
このため、上記発光層形成工程(ステップS4)は、QD21と有機リガンド23とを含むQD分散液を調液する工程と、上記QD分散液を塗布する前または上記QD分散液を塗布した後に、上記有機リガンド23を金属ハロゲン化物22で置換する工程と、を含んでいてもよい。このように有機リガンド23を金属ハロゲン化物22でリガンド置換することで、EML13として、QD21と金属ハロゲン化物22とを含むEMLを形成することができる。
なお、EML13中に含まれるリガンドの種類は、例えば、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化)法、TOF-MS(飛行時間型質量分析)法、LC-MS/MS(液体クロマトグラフ質量分析)法、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)法、ICP-AES(誘導結合プラズマ原子発光分析)法、NMR(核磁気共鳴)法等の複数の解析手法を組み合わせることで、特定することができる。
以下に、図5および図6を参照して、上記発光層形成工程(ステップS4)について、より具体的に説明する。
図5は、上記発光層形成工程の一例を示すフローチャートである。以下では、上記発光層形成工程が、QD21と有機リガンド23とを含むQD分散液を調液する工程と、上記QD分散液を塗布する前に、上記有機リガンド23を金属ハロゲン化物22で置換する工程と、を含む場合について説明する。
この場合、上記発光層形成工程では、まず、図5に示すように、QD21と有機リガンド23と溶媒(第2溶媒)とを含むQD分散液(以下、「第1QD分散液」と記す)を調液する(ステップS11、第1QD分散液調液工程)。なお、上記第1QD分散液調液工程は、QD合成工程あるいはQD合成工程で得られたQDを溶媒に再分散させる工程であってもよい。以下では、一例として、合成もしくは商業的に入手した、QD21および有機リガンド23を含むQD分散液(以下、「初期QD分散液」と記す)に含まれるQD21および有機リガンド23を用いて上記第1QD分散液を調液する場合を例に挙げて説明する。
上記第1QD分散液調液工程では、例えば、まず、初期QD分散液から、表面に有機リガンド23が配位したQD21を分離する。該QD21の分離工程では、例えば、まず、初期QD分散液を、遠沈管等の反応容器に採取する。初期QD分散液は、QD21と、有機リガンド23と、溶媒と、を含んでいる。上記溶媒には、非極性溶媒が用いられる。非極性溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、トルエン、ヘキサン、オクタン、クロロベンゼン等が挙げられる。
次いで、上記反応容器内の初期QD分散液に、過剰量の貧溶媒を滴下して、該初期QD分散液に含まれる、有機リガンド23が配位したQD21を沈殿させる。上記貧溶媒としては、エタノール等、QD21が分散しない溶媒が用いられる。
次いで、遠心分離を行い、上澄み液を除去する。次いで、沈澱した上記QD21を洗浄し、沈澱した上記QD21(つまり、有機リガンド23が配位したQD21)を分離する。なお、上記QD21の洗浄は、沈澱した上記21に、再度、溶媒として非極性溶媒を添加して該QD21を再分散させた後、再度貧溶媒を添加して遠心分離を行い、上澄み液を除去する操作を複数回繰り返すことで行われる。これにより、初期QD分散液に含まれる、QD21に配位していない余剰の有機リガンド23の少なくとも一部を除去することができる。
次いで、分離した、上記反応容器内のQD21に、溶媒(第2溶媒)として非極性溶媒を再度添加して、上記QD21を、上記非極性溶媒に再分散させる。これにより、QD21と、該QD21に配位した有機リガンド23と、上記第2溶媒として上記非極性溶媒と、を含む第1QD分散液を調液する。
次いで、上記反応容器内の第1QD分散液に、金属ハロゲン化物22と、溶媒(リガンド溶液の溶媒)として微量の極性溶媒と、を含むリガンド溶液を添加して撹拌する。リガンド溶液には、溶媒として、上述したように、金属ハロゲン化物22が溶解し易い極性溶媒を使用した。QD21が分散した非極性溶媒(前述したように、例えば、シクロヘキサン、トルエン等)と、金属ハロゲン化物22が溶解した極性溶媒(例えば、エタノール)とは、適切な範囲内であれば混和する。その後、上記反応容器内の反応液を、所定時間静置する。これにより、上記第1QD分散液に含まれる有機リガンド23の少なくとも一部を、金属ハロゲン化物22にリガンド置換する(ステップS12、リガンド置換工程)。
なお、リガンド溶液における金属ハロゲン化物22の濃度、および、リガンド溶液の添加量、並びに、上記撹拌および静置に要する時間等、リガンド置換に用いられる各条件は、特に限定されるものではない。これらの条件は、例えば、最終的に形成されるEML13における各リガンドの割合が所望の割合になるように、使用する材料等に応じて、適宜設定すればよい。
次いで、上記反応容器内に、再度、過剰量の貧溶媒を滴下する。その後、遠心分離を行い、上澄み液を除去する。これにより、上記上澄み液中に含まれる、QD21に配位していない余剰の金属ハロゲン化物22の少なくとも一部および上記反応容器中の溶媒を除去して、QD21と、該QD21の表面に存在する金属ハロゲン化物22と、を含むQD組成物を分離する(ステップS13、QD組成物分離工程)。
その後、上記反応容器内に、溶媒(後述する第2QD分散液用の溶媒)として非極性溶媒を添加して、該非極性溶媒に、上記QD組成物を分散させる。これにより、QD21と、金属ハロゲン化物22と、上記非極性溶媒と、を少なくとも含むQD分散液(以下、「第2QD分散液」と記す)を調液する(ステップS14、第2QD分散液調液工程)。
なお、第1QD分散液の溶媒は、金属ハロゲン化物22が溶解した極性溶媒と混和する(微量の極性溶媒を滴下してもQD21が沈澱せずに分散する)必要があるが、第2QD分散液に用いられる溶媒は、その必要はない。
次いで、HTL12上に上記第2QD分散液を塗布して該第2QD分散液の塗膜を形成する(ステップS15、第2QD分散液塗布工程)。第2QD分散液の塗布には、バーコート法、スピンコート法、インクジェット法等、任意の方法を適宜選択し得る。次いで、上記塗膜を、加熱乾燥する等して、塗布した第2QD分散液中に含まれていた溶媒を除去する(ステップS16、溶媒除去工程)。これにより、QD21と、該QD21の表面に存在する金属ハロゲン化物22と、を含む、図2に示すEML13を形成することができる。
なお、前述したように、上記EML13は、さらに有機リガンド23を含んでいてもよい。但し、前述したように、キャリア注入を容易にするためには、リガンドの総量における有機リガンド23の割合が少ないか、あるいは、EML13が、有機リガンド23を含まないか実質的に含まない有機リガンドレスであることが望ましい。したがって、第2QD分散液が有機リガンド23を含む場合、ステップS15で溶媒を除去して、上記QD組成物を含む薄膜を形成した後、さらに追加のリガンド置換を行ってもよい。
また、図6は、上記発光層形成工程(ステップS4)の他の一例を示すフローチャートである。以下では、上記発光層形成工程が、QD21と有機リガンド23とを含むQD分散液を調液する工程と、上記QD分散液を塗布した後に、上記有機リガンド23を金属ハロゲン化物22で置換する工程と、を含む場合について説明する。
この場合、上記発光層形成工程では、まず、図6に示すように、図5に示すステップS11と同様のステップS11を行う。これにより、QD21と、該QD21に配位した有機リガンド23と、前記第2溶媒として前記非極性溶媒と、を含む第1QD分散液を調液する(ステップS11、第1QD分散液調液工程)。
次いで、HTL12上に上記第1QD分散液を塗布することで、該第1QD分散液の塗膜を形成する(ステップS21、第1QD分散液塗布工程)。第1QD分散液の塗布には、バーコート法、スピンコート法、インクジェット法等、任意の方法を適宜選択し得る。次いで、上記塗膜を、加熱乾燥する等して、一旦、塗布した第1QD分散液中に含まれていた溶媒を除去する(ステップS22、溶媒除去工程)。これにより、QD21と、該QD21に配位した有機リガンド23と、を含むEML13を形成する。
次いで、このQD21と有機リガンド23とを含むEML13上に、金属ハロゲン化物22と、溶媒(リガンド溶液の溶媒)として極性溶媒と、を含むリガンド溶液を供給して、該リガンド溶液と上記EML13とを接触させる。上記リガンド溶液の供給には、例えば、インクジェット法を用いてもよいし、ミスト噴霧装置を用いてもよい。また、上記リガンド溶液を上記EML13に均一に接触させるため、十分な量の上記リガンド溶液を上記EML13に滴下する等して供給し、所定の時間静置した後、該リガンド溶液を、例えばスピンコート等により上記EML13上に塗布してもよい。上記極性溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコールが挙げられる。
このように上記リガンド溶液と上記EML13とを接触させることにより、上記EML13に含まれる有機リガンド23の少なくとも一部を、金属ハロゲン化物22にリガンド置換する(ステップS23、リガンド置換工程)。
なお、この場合にも、リガンド溶液における金属ハロゲン化物22の濃度、および、リガンド溶液の添加量、並びに、リガンド置換に要する時間等、リガンド置換に用いられる各条件は、特に限定されるものではない。この場合にも、これらの条件は、例えば、最終的に形成されるEML13における各リガンドの割合が所望の割合になるように、使用する材料等に応じて、適宜設定すればよい。
また、スピンコート塗布等により上記リガンド溶液を供給する代わりに、QD21と有機リガンド23とを含むEML13が形成された基板を上記リガンド溶液に浸漬することで、上記EML13に上記リガンド溶液を供給してもよい。
次いで、リガンド溶液供給後の上記EML13を加熱乾燥する等して、供給したリガンド溶液中に含まれていた溶媒を除去する(ステップS24、溶媒除去工程)。
次いで、上記EML13に、十分な量の洗浄液を供給して、上記EML13を、上記洗浄液で洗浄する。これにより、QD21に配位していない、余剰の金属ハロゲン化物22の少なくとも一部を除去する(ステップS25、洗浄工程)。
その後、上記EML13を加熱乾燥する等して、上記EML13中に含まれる溶媒、つまり、上記洗浄液を除去する(ステップS26、洗浄液除去工程)。上記洗浄液には、例えば、エタノール等の極性溶媒が用いられる。これにより、QD21と、該QD21の表面に存在する金属ハロゲン化物22と、を含む、図2に示すEML13を形成することができる。
なお、この場合にも、前述したように、上記EML13は、さらに有機リガンド23を含んでいてもよい。但し、この場合にも、前述したように、キャリア注入を容易にするためには、リガンドの総量における有機リガンド23の割合が少ないか、あるいは、EML13が、有機リガンド23を含まないか実質的に含まない有機リガンドレスであることが望ましい。
また、図5に示す発光層形成工程において、前述したようにステップS15の後でさらに追加のリガンド置換を行う場合、ステップS15の後で、ステップS23~ステップS26と同様の工程を行えばよい。このように追加のリガンド置換プロセスを行うことで、リガンド置換量を増加させ、有機リガンド23を除去することができる。但し、上記例示は一例であって、前記ステップS12(リガンド置換工程)において、リガンド置換条件を適宜調整することで、有機リガンド23を含まないか実質的に含まない有機リガンドレスのEML13を形成することもできる。
上記リガンド溶液に用いられる金属ハロゲン化物22としては、前述したように、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の金属ハロゲン化物が用いられる。このように25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の金属ハロゲン化物22としては、例えば、CaF2、ZnF2、およびGaF3からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
これら例示の金属ハロゲン化物22のなかでも、イオン半径の小さいハロゲンであるFと、QD21の表面、例えばシェル21bの表面のZnと同種のカチオンとからなるZnF2は、QD21の表面修飾に適している。
しかしながら、ZnF2等の一部の金属ハロゲン化物、具体的には、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の金属ハロゲン化物22は、ETL15等のCTLの形成に用いられる、アルコール等の極性溶媒への溶解度が非常に低い。リガンドとしてZnF2を用いた場合のように、QD21が、表面に例えばZn-F結合を有する場合、該QD21を含むEML13表面の表面張力が、該EML13上に積層するCTLの形成に用いられる溶媒(第1溶媒)の表面張力よりも小さくなる。このため、上述したようにZnF2等の金属ハロゲン化物22にリガンド置換されたQD21を含むEML13は、該EML13上に積層されるCTLの形成に用いられるキャリア輸送性材料分散液の濡れ性が悪い。
このため、QD21の表面修飾のために、上述したように例えば金属ハロゲン化物22を含むリガンド溶液を塗布する等して、EML13の表面に、このような金属ハロゲン化物22が存在していると、該金属ハロゲン化物22によって、EML13上に積層されるCTLの形成に用いられるキャリア輸送性材料分散液が弾かれる。この結果、EML13上にキャリア輸送性材料41を均一に積層することが困難となり、EML13上に積層されるCTLの層厚が不均一となる。このようなCTLの層厚均一性の低下は、得られる発光素子1の発光ムラや発光特性の悪化に繋がる。この結果、得られる発光素子1の素子特性の低下や信頼性の低下を招来する。
そこで、本実施形態では、上述したように、中間層形成工程(ステップS5)において、EML13上に、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)を含むIL14を形成する。そして、電子輸送層形成工程(ステップS6)で、上記IL14上に、CTLとして例えば上述したようにETL15を形成する。これにより、キャリア輸送性材料分散液の、下地に対する濡れ性を改善する。
図7は、図1に示す中間層形成工程(ステップS5)および電子輸送層形成工程(ステップS6)における要部の概略構成を示す断面図である。
IL14は、図2および図7に示すように、金属ハロゲン化物31を含み、EML13とCTLとの間(図2および図7に示す例ではEML13とETL15との間)に位置する層である。
ETL15は、電子輸送性材料を含み、EML13への電子輸送効率を高める電子輸送機能を有するCTLである。上記電子輸送性材料としては、例えば、ZnO、SnO、TiO2等の金属酸化物等が挙げられる。
図7に示すように、ETL15の形成に用いられるキャリア輸送性材料分散液43は、キャリア輸送性材料41と溶媒42(第1溶媒)とを含んでいる。上記キャリア輸送性材料分散液43に用いられる溶媒42には、例えば、アルコール等のプロトン性の極性溶媒が用いられる。25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物31は、このようにキャリア輸送性材料分散液43に用いられるアルコール等のプロトン性の極性溶媒に溶解する。
但し、金属ハロゲン化物の溶解度は、用いる溶媒によって変わる。とは言え、溶媒を変える度に金属ハロゲン化物の溶解度を調べるのは、容易ではなく、非常に手間がかかる。そこで、本実施形態では、極性溶媒として最も一般的であり、金属ハロゲン化物の溶解度がアルコールよりも大きく、溶解度傾向が、プロトン性の極性溶媒と類似した溶媒である水に対する溶解度で、金属ハロゲン化物の溶解度を規定する。
中間層形成工程(ステップS5)では、上述したリガンド置換工程を経て置換された金属ハロゲン化物22を含むEML13上に、金属ハロゲン化物31と、溶媒32(中間層形成用の溶媒、第3溶媒)として極性溶媒と、を含む金属ハロゲン化物含有液33を塗布して、該金属ハロゲン化物31を含む塗膜を形成する。その後、該塗膜を加熱乾燥する等して、塗布した金属ハロゲン化物含有液33中に含まれていた溶媒32を除去する。これにより、EML13におけるQD21の表面のリガンド(EML13が金属ハロゲン化物22、および、有機リガンド23を含む場合、有機リガンド23)の一部を、金属ハロゲン化物31で置換するとともに、EML13上に、IL14として、金属ハロゲン化物31を含む金属ハロゲン化物層を形成する。
金属ハロゲン化物含有液33の塗布は、EML13が形成された基板を上記金属ハロゲン化物含有液33に浸漬することにより行われてもよく、EML13上に、金属ハロゲン化物含有液33を、スピンコート法、インクジェット法等により塗布することで行われてもよい。また、この場合、金属ハロゲン化物含有液33を上記EML13に均一に接触させるため、十分な量の金属ハロゲン化物含有液33を上記EML13に滴下する等して供給し、所定の時間静置した後、該金属ハロゲン化物含有液33を、例えばスピンコート等により上記EML13上に塗布してもよい。この場合にも、上記極性溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコールが挙げられる。
上記金属ハロゲン化物31としては、例えば、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、BeF2、MgF2、SrF2、BaF2、AlF3、InF3、PbF2、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、BeCl2、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、AlCl3、GaCl3、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、CsBr、BeBr2、MgBr2、CaBr2、SrBr2、BaBr2、AlBr3、SnBr2、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、BeI2、MgI2、CaI2、およびSrI2からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
本実施形態によれば、EML13上にIL14を形成すると、図7に示すように、キャリア輸送性材料分散液43の塗布によりIL14の一部を溶かしながら、該キャリア輸送性材料分散液43により、ETL15を形成することができる。
例えば、QD21と、金属ハロゲン化物22としてのZnF2とを含むEML13上に、金属ハロゲン化物31としてBaF2あるいはZnCl2を含むIL14を形成すると、これら金属ハロゲン化物31(BaF2あるいはZnCl2)の一部を溶かしながらETL15が形成される。これにより、キャリア輸送性材料分散液43の、下地に対する濡れ性が改善される。
下地上へのキャリア輸送性材料分散液43の塗布、乾燥、ナノ粒子の表面凝集等の現象には、固体―液体の界面張力や、溶解性、固体表面電位等の物性が関与している。このため、下地に対するキャリア輸送性材料分散液43の濡れ性の改善は、これらの物性に基づいて、QD21の表面に存在するリガンドと、キャリア輸送性材料分散液43との濡れ性を改善することにより行われる。
例えば、上述したように、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物31は、キャリア輸送性材料分散液43の濡れ性が良い。このため、前記初期QD分散液における有機リガンドの一部を、そのような金属ハロゲン化物である例えばZnCl2に置換してEML13を形成した後、該EML13に対して、ZnCl2のアルコール溶液の塗布および洗浄を繰り返して追加のリガンド置換を行う。これにより、QD21の表面がZnCl2からなる場合、EML13に対するキャリア輸送性材料分散液43の濡れ性は悪化しない。
このため、EML13とCTLとの間にIL14を形成することなく、QD21表面のハロゲンリガンドの一部を、例えばアルコール塗布に適したハロゲンリガンドに置換することも考えられる。例えば、有機リガンド23がフッ化物リガンドにリガンド置換されたQD薄膜に、溶解度が高い金属ハロゲン化物のエタノール溶液を塗布する。あるいは、そのような金属ハロゲン化物のエタノール溶液に、上記QD薄膜が形成された基板を浸漬し、洗浄を行う。これにより、QD21の表面のフッ化物リガンドの一部を、例えば塩化物リガンド等の、アルコール塗布に適したハロゲンリガンドにリガンド置換することができる。この場合にも、キャリア輸送性材料分散液43の濡れ性を改善することが可能となる。
但し、QD21表面の例えばフッ化物リガンドを完全に塩化物リガンドに置換することは困難である。また、前述したように、ZnCl2等の金属ハロゲン化物31は、キャリア輸送性材料分散液43に溶解する。
そこで、本実施形態では、EML13上に、上記IL14を形成する。本実施形態によれば、このようにEML13上に、キャリア輸送性材料分散液43の濡れ性を改善できるIL14を形成することにより、キャリア輸送性材料分散液43の濡れ性をより改善することができるとともに、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を提供することができる。
上述したように、IL14は、プロセス上、EML13上に、ETL15等のCTLを設ける場合に、特に有効である。
なお、IL14の形成には、下地となるEML13におけるQD21表面の金属ハロゲン化物22に対応した金属ハロゲン化物31の選択が必要となる。金属ハロゲン化物22として例えばZnF2を使用する場合、金属ハロゲン化物31としては、上述したように、例えばZnCl2を用いてもよい。しかしながら、QD21表面のリガンド置換並びにIL14の形成の観点から、金属ハロゲン化物22と金属ハロゲン化物31とには、同じハロゲンを有する金属ハロゲン化物を使用することが望ましい。
金属ハロゲン化物31は、アニオン31aとカチオン31bとを含んでいる。金属ハロゲン化物22として例えばZnF2を使用する場合、金属ハロゲン化物31としては、CsFあるいはBaF2等、アニオン31aとしてフッ化物リガンドを含む金属ハロゲン化物が選択されることが望ましい。
前述したように、QD21と、金属ハロゲン化物22としてのZnF2とを含むEML13上に、金属ハロゲン化物31としてZnCl2を含むIL14を形成すると、ZnCl2の一部を溶かしながらETL15が形成される。
金属ハロゲン化物は、EML13におけるQD21間の隙間を通過する大きさを有している。このため、図7に示すように、IL14上にキャリア輸送性材料分散液43を塗布すると、該キャリア輸送性材料分散液43に含まれる溶媒42によって、上述したようにIL14の一部が溶解し、IL14に含まれる金属ハロゲン化物31が、EML13内に侵入する。
したがって、上述したように、金属ハロゲン化物22を含むEML13を形成する場合、EML13は、金属ハロゲン化物22に加えて、金属ハロゲン化物31をさらに含む。このため、この場合、QD21の表面には、リガンドとして、アニオン22aおよびアニオン31aの両方が存在する。したがって、金属ハロゲン化物22がZnF2である場合に、金属ハロゲン化物31としてZnCl2を使用すると、キャリア輸送性料分散液塗布後のEML13には、FおよびClの2種類のハロゲンが存在することになる。
これに対し、上述したように金属ハロゲン化物22と金属ハロゲン化物31とに、同じハロゲンを有する金属ハロゲン化物を使用することで、IL14の形成に用いられる金属ハロゲン化物含有液33に含まれる金属ハロゲン化物31がEML13内に侵入しても、EML13に含まれるハロゲン化物イオンの種類が増加しない。このため、EML13とIL14とにハロゲン種が同じ金属ハロゲン化物を使用することで、QD21に対する影響が少なく、発光特性の低下を抑制することができる。
なお、金属ハロゲン化物31はイオン結晶で構成されていることから、金属ハロゲン化物31が溶解した溶液が乾燥して形成されるIL14は、結晶質の薄膜となる。このため、IL14において存在する隙間は、結晶粒界の領域のみとなり、1nm以下である。したがって、IL14に隙間は、ほぼない。したがって、キャリア輸送性材料41は、IL14を通過しない。
キャリア輸送性材料分散液の濡れ性を改善するためには、IL14を2nm以上溶解することが好ましい。25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物31は、水を初めとする極性溶媒への溶解度が高く、キャリア輸送性材料分散液の塗布によって、2nm以上溶解する。このため、本実施形態では、キャリア輸送性材料分散液43に含まれる溶媒42によって溶解されるIL14の層厚をTnmとすると、中間層形成工程では、図7に示すように、2+Tnm以上の層厚Dを有するIL14を形成することが好ましい。
本実施形態では、キャリア輸送性材料分散液塗布工程(ステップS6a)において、キャリア輸送性材料分散液43に含まれる溶媒42によってIL14の一部を溶解させながらETL15を形成する。該キャリア輸送性材料分散液塗布工程では、上述したように、上記溶媒42によって、IL14を2nm以上溶解する。
一方で、最終的に形成される、発光素子1におけるIL14の層厚をFとすると、IL14の層厚Fは、トンネリングを抑制する観点から、2nm以上であることが好ましい。したがって、上記キャリア輸送性材料分散液塗布工程では、上記溶媒42によりIL14を2nm以上溶解するとともに、上記中間層形成工程では、2+Tnm(T≧2)以上の層厚を有するIL14を形成することで、上記キャリア輸送性材料分散液43の濡れ性を十分に改善することができるとともに、トンネリングによるキャリア注入を抑制することができる。
なお、本実施形態では、電子輸送層形成工程(ステップS6)後のIL14の層厚が、発光素子1におけるIL14の層厚Fとなる。このため、D-T=Fであり、TおよびFは、それぞれ2nm以上(つまり、T≧2nm、かつ、F≧2nm)であることが好ましい。したがって、中間層形成工程では、4nm以上の層厚Dを有するIL14を形成することが好ましい。
本実施形態において、金属ハロゲン化物22は、上述したように、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上であればよい。但し、金属ハロゲン化物31の溶解度が高すぎると、キャリア輸送性材料分散液43の塗布時に、IL14が完全に溶解してしまい、EML13における溶解度が低い金属ハロゲン化物22がキャリア輸送性材料分散液43に直接接触することで、キャリア輸送性材料分散液43の濡れ性の問題が発生するおそれがある。
このため、上記問題を発生させないためには、上記中間層形成工程で、IL14を、キャリア輸送性材料分散液43によってIL14が完全に溶解しない厚み(好適には、上述したようにF≧2nmとなる厚み)に形成することが望ましい。このため、金属ハロゲン化物31の溶解度が高いほど、IL14を厚く形成することが望ましい。あるいは、金属ハロゲン化物31として、上記溶解度(つまり、25℃における水に対する溶解度)が10,000mg(=10g)/100g以下の金属ハロゲン化物を使用することが望ましい。上記溶解度は、上記IL14を25℃の水に完全溶解するまで放置した場合、該IL14を約5μm溶かしきる溶解度である。したがって、金属ハロゲン化物31は、25℃における水に対する溶解度が、2.5mg/100g以上、10,000mg(=10g)/100g以下の金属ハロゲン化物であってもよい。
このように、本実施形態によれば、金属ハロゲン化物31の材料選択やIL14の厚みの調整を行うことで、電子過多を抑え、キャリアバランスを改善し、発光素子1の発光効率を改善することができる。
但し、本実施形態は、これに限定されるものではない。上述したように金属ハロゲン化物31の材料選択やIL14の厚みの調整を行う代わりに、例えば、スピンコート法におけるスピン中のキャリア輸送性材料分散液43の滴下時間(供給時間)を短くする等してIL14とキャリア輸送性材料分散液43との接触時間を減らすことで、IL14の溶解を制御してもよい。
上述したように、キャリア輸送性材料分散液43は、キャリア輸送性材料41と、溶媒42と、を含む。キャリア輸送性材料41は、前述したように金属酸化物であることが望ましく、上記キャリア輸送性材料分散液43の等電点は、pH7以上であることが好ましい。なお、上記金属酸化物は、金属酸化物ナノ粒子として用いられる。
等電点は、粒子表面のゼータ電位(チャージ)が0となっている溶液のpHを示す。等電点の測定には、電気泳動時の光散乱(レーザードップラー法)が広く用いられ、溶液中に分散させた、QDまたはETL粒子等のナノ粒子に電場をかけ、粒子が持つ電荷に応じた電気泳動速度からゼータ電位の算出を行う。また、この際の溶液のpHを変化させることで、等電点の測定を行う。
アルコールを主溶媒とするキャリア輸送性材料分散液43内の金属酸化物ナノ粒子は、その表面末端基により、表面電位が正に帯電している材料が多い。一般的に、金属酸化物ナノ粒子の表面は水酸基(-OH)で覆われている。等電点がpH7よりも大きい金属酸化物ナノ粒子において、該金属酸化物ナノ粒子の表面に存在する水酸基(表面水酸基)は、電気的中性の条件下(pH=7)では、M+またはM-OH2
+となっており、粒子表面は+(プラス)に帯電する。このため、SiO2除く大半の金属酸化物の等電点は、pH7よりも大きく、金属酸化物の表面は正電荷を帯び易い。
また、QD21の表面は、例えばZn原子が露出し、S原子が不足している状態のため、極性としては+の極性を有している。このように、QD21および金属酸化物ナノ粒子は、表面がともに正に帯電していることから、大半の組合せで、互いに静電反発する。このため、QD21上に、金属酸化物ナノ粒子を整然と配列することは困難である。
しかしながら、本実施形態によれば、上述したように、金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31を、QD21と金属酸化物ナノ粒子との間に挿入して、QD21と金属酸化物ナノ粒子とを空間的に離すことにより、表面電位の影響を低減することができる。この結果、QD21と金属酸化物ナノ粒子との静電反発を抑制することができ、金属酸化物ナノ粒子を整然と配列することが可能となる。このため、ETL15の層厚の均一性を向上させることができる。
一般的に、QLEDでは、電子輸送性材料と正孔輸送性材料とでは、電子輸送性材料の方が、移動度が大きい。このため、QLEDでは、EMLにおいて電子過多となることが多い。したがって、上述したようにEML13とETL15との間にIL14を形成する場合、IL14は、ワイドバンドギャップであることが好ましい。
具体的には、上述したようにQD21がコア21aとシェル21bとを有する場合、金属ハロゲン化物22のバンドギャップおよび金属ハロゲン化物31のバンドギャップは、それぞれ、シェル21bのバンドギャップよりも大きいことが好ましい。このように金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31のバンドギャップをシェル21bのバンドギャップよりも大きくすることで、CTLからEML13に注入されたキャリアを、QD21内に閉じ込めることができる。
図8は、QD21のシェル21bとETL15との間に金属ハロゲン化物が存在しない場合における電子注入障壁を説明するためのエネルギーバンド図である。図9は、QD21のシェル21bとETL15との間に金属ハロゲン化物が存在する場合における電子注入障壁を説明するためのエネルギーバンド図である。
キャリア注入型の発光素子において、QD21のシェル21bとETL15との間に金属ハロゲン化物が存在しない場合、ETL15からQD21に電子を注入するときの電子注入障壁の高さは、図8に示すように、ETL15の伝導帯の下端(CBM)とシェル21bの伝導帯の下端(CBM)とのエネルギー準位の差の絶対値ΔE1で示される。一方、QD21のシェル21bとETL15との間に、シェル21bのバンドギャップよりもバンドギャップが大きい金属ハロゲン化物が存在する場合、金属ハロゲン化物からQD21に電子を注入するときの電子注入障壁の高さは、図9に示すようにΔE2となり、ΔE1よりも大きくなる。
したがって、このようにQD21のシェル21bとETL15との間の金属ハロゲン化物のバンドギャップをシェル21bのバンドギャップよりも大きくすることで、図8に示すように、ETL15からEML13への電子注入を、図7に示す場合よりも抑制することができる。
なお、本実施形態では、QD21のシェル21bとETL15との間の金属ハロゲン化物は、金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31となる。このため、本実施形態によれば、金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31のバンドギャップを、シェル21bのバンドギャップよりも大きくすることで、ETL15からEML13への電子注入を抑制することができる。この結果、キャリアバランスを改善し、発光素子1の発光効率を改善することができる。
金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31のバンドギャップは、上述したようにシェル21bのバンドギャップよりも大きければよく、その具体的な値は、特に限定されない。しかしながら、金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31のバンドギャップの好適な値として、例えば、シェル21bに用いられるZnSのバンドギャップの値である3.4eVよりもワイドギャップであることが、キャリア注入のために好ましい。
図10に、主な金属ハロゲン化物のバンドギャップおよび25℃における水に対する溶解度をまとめて示す。
また、図11は、一例として、QD21として、青色発光する青色QDを使用し、金属ハロゲン化物のバンドギャップが約4.4eV(厳密には4.4eV以上)の発光素子の各層のエネルギー準位を示す図である。図12は、QD21として、赤色発光する赤色QDを使用し、金属ハロゲン化物のバンドギャップが約5.2eV(厳密には5.2eV以上)の発光素子の各層のエネルギー準位を示す図である。
なお、図11および図12では、エネルギー準位を比較するために、金属ハロゲン化物とQD21とのフェルミ準位EFの高さを合わせている。図11および図12に示すように、赤色QDと青色QDとでは、価電子帯の上端(VBM)は、ほぼ変わらず、正孔/電子の有効質量差が大きいことで赤色QDのCBMが青色QDよりも低下することによるバンドギャップ拡大の傾向が多く報告されている。
キャリア注入を効率的に行うためには、QD層(EML13)からのキャリア漏れを防ぐため、金属ハロゲン化物のVBMよりもETLのVBMが深いことが好ましい。
また、バンドギャップの観点から、キャリア注入のためには、上述したように、金属ハロゲン化物のバンドギャップは、シェル21bのバンドギャップ、例えば上述したようにZnSのバンドギャップよりも大きいことが好ましい。但し、金属ハロゲン化物のバンドギャップが大きすぎると、QD21以外の領域における正孔(h+)と電子(e-)との非発光再結合を起こし易くなり、発光効率が低下する。このため、ETL15およびQD21のエネルギー準位をもとに、非発光再結合を招かない金属ハロゲン化物のバンドギャップを算出すると、金属ハロゲン化物のバンドギャップは、例えば5.2eV未満であることが好ましい。
本実施形態に係る発光素子の製造方法により製造された発光素子1は、以上のように、QD21と、金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)と、金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)と、を含むEML13を備えるとともに、上記金属ハロゲン化物31を含むIL14と、キャリア輸送性材料を含むCTLとして、キャリア輸送性材料41を含むETL15とが、上記EML13側からこの順に互いに隣接して設けられた構成を有している。
本実施形態によれば、上記金属ハロゲン化物31を含むIL14と、キャリア輸送性材料41を含むETL15とが、上記EML13側からこの順に互いに隣接して設けられていることで、上記ETL15を形成する際の、上記EML13に対する上記キャリア輸送性材料41を含む塗布液(つまり、前記キャリア輸送性材料分散液43)の濡れ性を改善することができる。この結果、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を提供することができる。
(変形例1)
本実施形態では、図1に示すように、発光素子1が、陽極2を下層電極とするコンベンショナル構造を有している場合を例に挙げて説明した。しかしながら、前述したように、発光素子1は、陰極3を下層電極とするインバーテッド構造を有していてもよい。また、IL14上に形成されるCTLは、ETLに限定されるものではなく、HTLであってもよい。
図13は、本変形例に係る発光素子1の概略構成の一例を示す断面図である。
図13に示す発光素子1は、陰極3を下層電極とし、陽極2を上層電極とするインバーテッド構造を有し、一例として、陰極3、ETL15、EML13、HTL12、および陽極2が、下層側(例えば、基板等の図示しない支持体側)からこの順に設けられた構成を有している。なお、図示および説明は省略するが、本変形例でも、発光素子1は、陽極2と陰極3との間に、図示しない機能層を備えていてもよい。
図14は、本変形例に係る発光素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図14に示すように、本変形例では、まず、図示しない基板上に、下層電極として陰極3を形成する(ステップS31、下層電極形成工程、陰極形成工程)。次いで、ETL15を形成する(ステップS32、電子輸送層形成工程)。次いで、QD21と、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物、無機リガンド)とを含むEML13を形成する(ステップS4、発光層形成工程)。次いで、EML13上に、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)を含むIL14を形成する(ステップS5、中間層形成工程)。次いで、IL14上に、HTL12を形成する(ステップS33、キャリア輸送層形成工程、正孔輸送層形成工程)。ステップS33では、図14に示すように、まず、IL14上に、キャリア輸送性材料41’と溶媒(第1溶媒)とを含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、該キャリア輸送性材料分散液の塗膜を形成する(ステップS33a、キャリア輸送性材料分散液塗布工程)。次いで、上記塗膜を加熱する等して、該塗膜に含まれる溶媒、つまり、塗布したキャリア輸送性材料分散液中に含まれていた上記溶媒(第1溶媒)を除去する(ステップS33b、第1溶媒除去工程)。これにより、IL14上に、キャリア輸送性材料としてキャリア輸送性材料41’を含むHTL12が形成される。次いで、HTL12上に、上層電極として陽極2を形成する(ステップS34、上層電極形成工程、陽極形成工程)。
この場合、陰極3は、例えば、図示しない基板上に、蒸着法またはスパッタリング法等で、前記導電性材料を成膜することで形成することができる。陽極2は、HTL12上に、蒸着法またはスパッタリング等で、前記導電性材料を成膜することで形成することができる。下地となる層が異なることを除けば、ステップS31はステップS6と同様に実施することができ、ステップS33はステップS1と同様に実施することができる。また、下地となる層が異なることを除けば、ステップS32はステップS7と同様に実施することができ、ステップS33はステップS3と同様に実施することができる。
本変形例では、IL14上に、キャリア輸送性材料41を含むETL15に代えて、キャリア輸送性材料41’を含むHTL12を形成される。上記キャリア輸送性材料41’としては、例えば、NiO、WO3、MoO3等の正孔輸送性材料が用いられる。
このように、本変形例でも、キャリア輸送性材料41’は、金属酸化物であり、該キャリア輸送性材料41’を含むキャリア輸送性材料分散液の等電点は、pH7以上であることが好ましい。なお、本変形例でも、上記金属酸化物は、金属酸化物ナノ粒子として用いられる。
本実施形態では、キャリア輸送性材料分散液塗布工程(ステップS33a)において、キャリア輸送性材料分散液に含まれる溶媒によってIL14の一部を溶解させながらHTL12を形成する。該キャリア輸送性材料分散液塗布工程では、上記溶媒によって、IL14を2nm以上溶解する。上記溶媒には、溶媒42と同様の極性溶媒を用いることができる。このように、ステップS33では、ステップS6において、キャリア輸送性材料41を含むキャリア輸送性材料分散液43に代えて、キャリア輸送性材料41’を含むキャリア輸送性材料分散液を用いたことを除けば、ステップS6と同様にして、HTL12が形成される。このように、IL14上に形成されるCTLは、HTLであってもよく、上述したように具体的な材料を除き、ステップS6において、ETLは、HTLと読み替えることができる。なお、本変形例でも、EML13は、図5に示す方法で形成されてもよく、図6に示す方法で形成されてもよい。
本変形例に係る発光素子の製造方法により製造された発光素子1は、以上のように、QD21と、金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)と、金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)と、を含むEML13を備えるとともに、上記金属ハロゲン化物31を含むIL14と、キャリア輸送性材料を含むCTLとして、キャリア輸送性材料41’を含むHTL12とが、上記EML13側からこの順に互いに隣接して設けられた構成を有している。
本変形例によれば、以上のように、上記金属ハロゲン化物31を含むIL14と、キャリア輸送性材料41’を含むHTL12とが、上記EML13側からこの順に互いに隣接して設けられていることで、上記HTL12を形成する際の、上記EML13に対する上記キャリア輸送性材料41’を含む塗布液であるキャリア輸送性材料分散液の濡れ性を改善することができる。この結果、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を提供することができる。
本変形例では、金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31のバンドギャップを、シェル21bのバンドギャップよりも大きくすることで、HTL12からEML13への正孔注入を抑制することができる。
(変形例2)
図15は、本変形例に係る発光素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
本変形例に係る発光素子1の製造方法は、図15に示すように、図1に示すステップS4に代えて、ステップS4’を行うことを除けば、図1に示す発光素子1の製造方法と同じである。ステップS4’では、EML13として、QD21と金属ハロゲン化物22とを含むEMLを形成する。したがって、本変形例では、図15および図2に示すように、まず、図1と同様にして、ステップS1~ステップS3を行う。次いで、QD21を含み、かつ、有機リガンドレスのEML13を形成する(ステップS4’、発光層形成工程)。次いで、図1に示すステップS5~ステップS7と同様のステップS5~ステップS7を行う。ステップS4’では、例えば、前述したように、図5に示す発光層形成工程における前記ステップS12(リガンド置換工程)でリガンド置換条件を適宜調整することで、有機リガンドレスのEML13を形成することができる。
また、前記したように、図5に示すステップS15の後で図6に示すステップS23~ステップS26と同様の工程を行うことで、さらに追加のリガンド置換を行ってもよい。これにより、リガンド置換量を増加させて有機リガンド23を除去し、有機リガンドレスのEML13を形成することもできる。
また、図16は、本変形例に係る発光層形成工程の他の一例を示すフローチャートである。
図16に示す発光層形成工程では、まず、図6と同様にして、ステップS11~ステップS22を行う。つまり、上記発光層形成工程では、まず、図16に示すように、図5および図6に示すステップS11と同様のステップS11を行うことで、QD21と、該QD21に配位した有機リガンド23と、前記第2溶媒として前記非極性溶媒と、を含む第1QD分散液を調液する(ステップS11、第1QD分散液調液工程)。次いで、HTL12上に上記第1QD分散液を塗布することで、該第1QD分散液の塗膜を形成する(ステップS21、第1QD分散液塗布工程)。次いで、上記塗膜を、加熱乾燥する等して、一旦、塗布した第1QD分散液中に含まれていた溶媒を除去する(ステップS22、溶媒除去工程)。これにより、QD21と、該QD21に配位した有機リガンド23と、を含むEML13を形成する。その後、図16に示す発光層形成工程では、上記EML13を洗浄液で洗浄することで、上記EML13に含まれる有機リガンド23を除去する(ステップS41、有機リガンド除去工程、洗浄工程)。
有機リガンド23の除去率は、例えば洗浄時間、洗浄液の供給量等によって調節することができる。本実施形態では、ステップS41において、前述したように、FT-IR法で有機リガンド由来の吸収スペクトルを確認し、「該FT-IR法で有機リガンド由来の吸収スペクトルが検出できない、すなわち測定強度がノイズ以下である」ことが確認できるまで、EML13の洗浄を行う。
なお、上記洗浄液としては、上記EML13に含まれる有機リガンド23を除去することができる溶媒であればよい。より具体的には、上記洗浄液としては、QD21に配位した有機リガンド23およびQD21に配位していない余剰の有機リガンド23を溶解する溶媒であればよい。上記洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられる。
その後、上記EML13を加熱乾燥する等して、上記EML13中に含まれる溶媒、つまり、上記洗浄液を除去する(ステップS42、洗浄液除去工程)。これにより、有機リガンドレスのEML13を形成する。
次いで、有機リガンド23が除去された上記EML13上に、金属ハロゲン化物22と、溶媒(リガンド溶液の溶媒)として極性溶媒と、を含むリガンド溶液を供給して、該リガンド溶液と上記EML13とを接触させる。なお、上記リガンド溶液の供給は、例えば、前記ステップS23と同様にして行うことができる。但し、本変形例では、上述したように有機リガンド23が予め除去されている。このため、ステップS42では、リガンド置換ではなく、リガンド付与が行われる。
次いで、図6に示すステップS24~ステップS26と同様のステップS24~ステップS26を行う。これにより、QD21と、該QD21の表面に存在する金属ハロゲン化物22と、を含む、有機リガンドレスのEML13を形成することができる。
以上のように、発光層形成工程は、QD21と有機リガンド23と溶媒(第2溶媒)とを含むQD分散液(第1QD分散液)を調液する第1QD分散液調液工程(ステップS11)と、上記第1QD分散液を塗布する前または上記第1QD分散液を塗布した後に、上記有機リガンド23を除去する工程と、を含んでいてもよい。このように、上記第1QD分散液を塗布する前または上記第1QD分散液を塗布した後に、上記有機リガンド23を除去することで、EML13として、QD21を含み、かつ、有機リガンドレスのEMLを形成することができる。
なお、図16に示す発光層形成工程では、上述したように、ステップS42の後で、引き続き、ステップS43~ステップS26を行って、金属ハロゲン化物22を含む、有機リガンドレスのEML13を形成する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本変形例は、これに限定されるものではなく、ステップS42の後、図15に示すステップS6を行うことで、ステップS42で得られた有機リガンドレスのEML13上に、IL14を形成してもよい。この場合、最終的に、金属ハロゲン化物として金属ハロゲン化物31のみを含むEML13を有する発光素子1を製造することができる。
何れにしても、本変形例によれば、QD21と金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)とを含む、有機リガンドレスのEML13を備えるとともに、上記金属ハロゲン化物31を含むIL14と、キャリア輸送性材料を含むCTLとして、キャリア輸送性材料41を含むETL15とが、上記EML13側からこの順に互いに隣接して設けられた発光素子1を提供することができる。
以上のように、本変形例でも、上記金属ハロゲン化物31を含むIL14と、キャリア輸送性材料41を含むETL15とが、上記EML13側からこの順に互いに隣接して設けられていることで、上記ETL15を形成する際の前記キャリア輸送性材料分散液43の濡れ性を改善することができる。この結果、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を提供することができる。
なお、上述したように、本変形例でも、上記EML13は、QD21および金属ハロゲン化物31に加えて、金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)をさらに含んでいてもよい。また、本変形例でも、変形例1と同様に、IL14上に、キャリア輸送性材料を含むCTLとして、キャリア輸送性材料41’を含むHTL12を形成してもよい。
〔実施形態2〕
本実施形態では、実施形態1との相異点について説明する。
本実施形態に係る発光素子の製造方法は、EMLを形成する工程と、上記EML上にCTLを形成する工程と、を含み、上記CTLを形成する工程は、上記EML上に、キャリア輸送性材料と第1溶媒と第1金属ハロゲン化物とを含むキャリア輸送性材料分散液を塗布する工程と、上記第1溶媒を除去する工程と、を含んでいる。上記キャリア輸送性材料分散液を塗布する工程では、上記第1金属ハロゲン化物として、25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g以上の金属ハロゲン化物を使用し、上記EMLを形成する工程では、上記EMLとして、(1)QDと25℃における水に対する溶解度が2.5mg/100g未満の第2金属ハロゲン化物とを含むEMLを形成するか、または、(2)上記QDを含み、かつ、有機リガンドレスのEMLを形成する。
以下では、上記EMLを形成する工程で、上記EMLとして、QDと上記第2金属ハロゲン化物とを含むEMLを形成する場合を例に挙げて説明する。また、以下では、上記EML上に形成されるCTLがETLである場合を例に挙げて説明する。また、以下では、上記発光素子が、陽極を下層電極とし、陰極を上層電極とするコンベンショナル構造を有し、陽極と陰極との間に、機能層として、HIL、HTL、EML、およびETLを備えている場合を例に挙げて説明する。
以下、図を参照して、具体的に説明する。図17は、本実施形態に係る発光素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図18は、本実施形態に係る発光素子1の概略構成を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、実施形態1で説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、特に説明がない場合でも、実施形態1と同様の変形が可能であることは、言うまでもない。
図18に示すように、本実施形態に係る発光素子1は、一例として、陽極2、HIL11、HTL12、EML13、ETL15、および陰極3が、下層側(例えば、基板等の図示しない支持体側)からこの順に設けられた構成を有している。但し、本実施形態に係るETL15は、EML13上に、該EML13に隣接して積層されているとともに、キャリア輸送性材料41と、金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)と、を含んでいる。なお、本実施形態でも、図示および説明は省略するが、発光素子1は、陽極2と陰極3との間に、HIL11、HTL12、EML13、およびETL15以外の、図示しない機能層を備えていてもよい。
本実施形態に係る発光素子1の製造方法では、図17および図18に示すように、例えば、まず、図1と同様にして、ステップS1~ステップS4を行う。なお、本実施形態でも、ステップS4において、EML13は、図5に示す方法で形成されてもよく、図6に示す方法で形成されてもよい。
本実施形態では、上記ステップS4の後、次いで、上記EML13上に、ETL15を形成する(ステップS51、キャリア輸送層形成工程、電子輸送層形成工程)。ステップS51では、図17に示すように、まず、EML13上に、キャリア輸送性材料41と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、該キャリア輸送性材料分散液の塗膜を形成する(ステップS51a、キャリア輸送性材料分散液塗布工程)。次いで、上記塗膜を加熱する等して、該塗膜に含まれる溶媒、つまり、塗布したキャリア輸送性材料分散液中に含まれていた上記溶媒(第1溶媒)を除去する(ステップS51b、第1溶媒除去工程)。これにより、EML13上に、キャリア輸送性材料41と金属ハロゲン化物31とを含むETL15が形成される。次いで、図1に示すステップS7と同様のステップS7を行って、上記ETL15上に、上層電極として陰極3を形成する。これにより、図18に示す発光素子1が形成される。
このように、本実施形態では、EML13上に、キャリア輸送性材料41と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、キャリア輸送性材料41と金属ハロゲン化物31とを含むETL15を形成する。前記したように、金属ハロゲン化物は、EML13におけるQD21間の隙間を通過する大きさを有している。
このため、本実施形態では、上述したように、EML13上に上記キャリア輸送性材料分散液を塗布すると、該キャリア輸送性材料分散液に含まれる金属ハロゲン化物31が、EML13内に侵入する。これにより、EML13におけるQD21の表面のリガンド(金属ハロゲン化物22、および、有機リガンド23を含む場合、有機リガンド23)の一部が、金属ハロゲン化物31で置換される。それと同時に、本実施形態では、EML13上に、上記キャリア輸送性材料分散液の塗膜が形成される。
したがって、本実施形態によれば、上述したようにEML13上に、キャリア輸送性材料41と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、EML13に対する上記キャリア輸送性材料分散液の濡れ性を改善することができる。この結果、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を製造することができる。
また、本実施形態によれば、上述したようにEML13上に、キャリア輸送性材料41と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、EML13上に、直接ETL15を形成することができる。したがって、実施形態1よりも工程数を減らすことができ、製造工程を簡略化し、製造にかかる時間および費用を低減することができる。
しかも、本実施形態では、キャリア輸送性材料41を、上記金属ハロゲン化物31で修飾した状態で上記キャリア輸送性材料分散液を塗布することができる。このため、上記キャリア輸送性材料41の分散性を向上させることができる。本実施形態は、プロセス上、上述したようにEML13上にETL15等のCTLを設ける場合に、特に有効である。
なお、本実施形態では、ETL15が金属ハロゲン化物31を含むことで、ETL15の形成には、下地となるEML13におけるQD21表面の金属ハロゲン化物22に対応した金属ハロゲン化物31の選択が必要となる。本実施形態では、金属ハロゲン化物22と金属ハロゲン化物31とに、同じハロゲンを有する金属ハロゲン化物を使用することで、ETL15の形成に用いられる金属ハロゲン化物含有液に含まれる金属ハロゲン化物31がEML13内に侵入しても、EML13に含まれるハロゲン化物イオンの種類が増加しない。このため、EML13とETL15とにハロゲン種が同じ金属ハロゲン化物を使用することで、QD21に対する影響が少なく、発光特性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る発光素子の製造方法により製造された発光素子1は、以上のように、QD21と、金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)と、金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)と、を含むEML13を備えるとともに、上記EML13上に、該EML13に隣接して、キャリア輸送性材料と金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)とを含むCTLとして、キャリア輸送性材料41と金属ハロゲン化物31とを含むETL15が設けられた構成を有している。
本実施形態によれば、以上のように、上記EML13に隣接して、キャリア輸送性材料41と金属ハロゲン化物31とを含むETL15が設けられていることで、上記ETL15を形成する際の、上記EML13に対する上記キャリア輸送性材料41を含む塗布液(キャリア輸送性材料分散液)の濡れ性を改善することができる。この結果、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を提供することができる。
なお、本実施形態でも、上述したように、金属ハロゲン化物22を含むEML13を形成する場合、EML13は、図18に示すように、金属ハロゲン化物22に加えて、金属ハロゲン化物31をさらに含む。このため、本実施形態でも、QD21の表面には、リガンドとして、アニオン22aおよびアニオン31aの両方が存在する。
したがって、本実施形態では、上述したようにEML13とETL15とに、同じハロゲンを有する金属ハロゲン化物を使用することで、上記ETL15の形成に用いられるキャリア輸送性材料分散液に含まれる金属ハロゲン化物31がEML13内に侵入しても、EML13に含まれるハロゲン化物イオンの種類が増加しない。このため、EML13とETL15とにハロゲン種が同じ金属ハロゲン化物を使用することで、QD21に対する影響が少なく、発光特性の低下を抑制することができる。
なお、本実施形態において、発光素子1の各層の層厚は、従来と同様に設定すればよい。但し、金属ハロゲン化物31としてワイドギャップの金属ハロゲン化物を用いる場合、ETL15からのキャリア注入が抑制される。このため、必要に応じて、ETL15の層厚を適宜調整することが望ましい。
また、上述したように、キャリア輸送性材料分散液が、キャリア輸送性材料41と、溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含む場合であっても、実施形態1で説明した理由と同じ理由から、キャリア輸送性材料41は、金属酸化物であることが望ましく、上記キャリア輸送性材料分散液の等電点は、pH7以上であることが好ましい。
(変形例1)
図17および図18では、発光素子1が、陽極2を下層電極とするコンベンショナル構造を有している場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本実施形態でも、発光素子1は、陰極3を下層電極とするインバーテッド構造を有していてもよい。また、EML13上に形成されるCTLは、ETLに限定されるものではなく、HTLであってもよい。
したがって、図示はしないが、本実施形態に係る発光素子1は、陰極3を下層電極とし、陽極2を上層電極とするインバーテッド構造を有し、一例として、陰極3、ETL15、EML13、HTL12、および陽極2が、下層側(例えば、基板等の図示しない支持体側)からこの順に設けられた構成を有していてもよい。なお、図示および説明は省略するが、本変形例でも、発光素子1は、陽極2と陰極3との間に、図示しない機能層を備えていてもよい。
図19は、本変形例に係る発光素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図19に示すように、本変形例では、まず、図14と同様にして、ステップS31、ステップS32、ステップS4を、この順に行う。なお、本変形例でも、EML13は、図5に示す方法で形成されてもよく、図6に示す方法で形成されてもよい。次いで、ステップS4で形成したEML13上に、HTL12を形成する(ステップS51’、キャリア輸送層形成工程、正孔輸送層形成工程)。ステップS51’では、図19に示すように、まず、EML13上に、前記キャリア輸送性材料41’と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、該キャリア輸送性材料分散液の塗膜を形成する(ステップS51a’、キャリア輸送性材料分散液塗布工程)。次いで、上記塗膜を加熱する等して、該塗膜に含まれる溶媒、つまり、塗布したキャリア輸送性材料分散液中に含まれていた上記溶媒(第1溶媒)を除去する(ステップS51b’、第1溶媒除去工程)。これにより、EML13上に、前記キャリア輸送性材料41’と金属ハロゲン化物31とを含むHTL12が形成される。次いで、図14に示すステップS34と同様のステップS34を行って、上記HTL12上に、上層電極として陽極2を形成する。これにより、本変形例に係る発光素子1が形成される。
このように、本変形例では、EML13上に、キャリア輸送性材料41’と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、キャリア輸送性材料41’と金属ハロゲン化物31とを含むHTL12を形成する。前記したように、金属ハロゲン化物は、EML13におけるQD21間の隙間を通過する大きさを有している。
このため、本変形例でも、上述したように、EML13上に上記キャリア輸送性材料分散液を塗布すると、該キャリア輸送性材料分散液に含まれる金属ハロゲン化物31が、EML13内に侵入する。これにより、EML13におけるQD21の表面のリガンド(EML13が金属ハロゲン化物22、および、有機リガンド23を含む場合、有機リガンド23)の一部が、金属ハロゲン化物31で置換される。それと同時に、本変形例でも、EML13上に、上記キャリア輸送性材料分散液の塗膜が形成される。
したがって、本変形例によれば、上述したようにEML13上に、キャリア輸送性材料41’と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、EML13に対する上記キャリア輸送性材料分散液の濡れ性を改善することができる。この結果、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を製造することができる。
また、本変形例によれば、上述したようにEML13上に、キャリア輸送性材料41’と溶媒(第1溶媒)と、金属ハロゲン化物31と、を含むキャリア輸送性材料分散液を塗布することで、EML13上に、直接HTL12を形成することができる。したがって、実施形態1の変形例1よりも工程数を減らすことができ、製造工程を簡略化し、製造にかかる時間および費用を低減することができる。
しかも、本変形例では、キャリア輸送性材料41’を、上記金属ハロゲン化物31で修飾した状態で上記キャリア輸送性材料分散液を塗布することができる。このため、上記キャリア輸送性材料41’の分散性を向上させることができる。
なお、本変形例でも、実施形態1で説明した理由と同じ理由から、キャリア輸送性材料41’は、金属酸化物であり、該キャリア輸送性材料を含むキャリア輸送性材料分散液の等電点は、pH7以上であることが好ましい。本変形例でも、上記金属酸化物は、金属酸化物ナノ粒子として用いられる。
本変形例では、ステップS51’において、キャリア輸送性材料としてキャリア輸送性材料41’を用いたことを除けば、ステップS51と同様にして、EML13上にHTL12が形成される。このように、EML13上に形成されるCTLは、HTLであってもよく、上述したように具体的な材料を除き、前記ステップS51において、ETLは、HTLと読み替えることができる。
本変形例に係る発光素子の製造方法により製造された発光素子1は、以上のように、QD21と、金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)と、金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)と、を含むEML13を備えるとともに、上記EML13上に、該EML13に隣接して、キャリア輸送性材料と金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)とを含むCTLとして、キャリア輸送性材料41’と金属ハロゲン化物31とを含むHTL12が設けられた構成を有している。
本変形例によれば、以上のように、上記EML13に隣接して、キャリア輸送性材料41’と金属ハロゲン化物31とを含むHTL12が設けられていることで、上記ETL15を形成する際の、上記EML13に対する上記キャリア輸送性材料41’を含む塗布液(キャリア輸送性材料分散液)の濡れ性を改善することができ、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を提供することができる。
本変形例では、金属ハロゲン化物22および金属ハロゲン化物31のバンドギャップを、シェル21bのバンドギャップよりも大きくすることで、HTL12からEML13への正孔注入を抑制することができる。
(変形例2)
図20は、本変形例に係る発光素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
本変形例に係る発光素子1の製造方法は、図20に示すように、図17に示すステップS4に代えて、図15に示すステップS4’と同様のステップS4’を行うことを除けば、図17に示す発光素子1の製造方法と同じである。本変形例でも、ステップS4’では、例えば図5に示す発光層形成工程における前記ステップS12(リガンド置換工程)でリガンド置換条件を適宜調整することで、有機リガンドレスのEML13を形成してもよい。また、図5に示すステップS15の後で、図6に示すステップS23~ステップS26と同様の工程を行う等、追加のリガンド置換を行うことで、有機リガンドレスのEML13を形成してもよい。また、図16に示す方法を用いて有機リガンドレスのEML13を形成してもよい。
以上のように、本変形例でも、発光層形成工程は、QD21と有機リガンド23と溶媒(第2溶媒)とを含むQD分散液(第1QD分散液)を調液する第1QD分散液調液工程(ステップS11)と、上記第1QD分散液を塗布する前または上記第1QD分散液を塗布した後に、上記有機リガンド23を除去する工程と、を含んでいてもよい。このように、上記第1QD分散液を塗布する前または上記第1QD分散液を塗布した後に、上記有機リガンド23を除去することで、EML13として、QD21を含み、かつ、有機リガンドレスのEMLを形成することができる。
何れにしても、本変形例によれば、QD21と金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)とを含む、有機リガンドレスのEML13を備えるとともに、上記EML13上に、該EML13に隣接して、キャリア輸送性材料と金属ハロゲン化物31(第1金属ハロゲン化物)とを含むCTLとして、キャリア輸送性材料41と金属ハロゲン化物31とを含むETL15が設けられた発光素子1を提供することができる。
以上のように、本変形例でも、上記EML13に隣接して、キャリア輸送性材料41と金属ハロゲン化物31とを含むETL15が設けられていることで、上記ETL15を形成する際の、上記EML13に対する上記キャリア輸送性材料41を含む塗布液(キャリア輸送性材料分散液)の濡れ性を改善することができる。この結果、層厚の均一性が良く、発光特性および信頼性に優れた発光素子1を提供することができる。
なお、上述したように、本変形例でも、上記EML13は、QD21および金属ハロゲン化物31に加えて、金属ハロゲン化物22(第2金属ハロゲン化物)をさらに含んでいてもよい。また、本変形例でも、変形例1と同様に、EML13上に、CTLとして、キャリア輸送性材料41’と金属ハロゲン化物31とを含むHTL12を形成してもよい。
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。