JP7697268B2 - 衛生陶器 - Google Patents
衛生陶器 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7697268B2 JP7697268B2 JP2021091692A JP2021091692A JP7697268B2 JP 7697268 B2 JP7697268 B2 JP 7697268B2 JP 2021091692 A JP2021091692 A JP 2021091692A JP 2021091692 A JP2021091692 A JP 2021091692A JP 7697268 B2 JP7697268 B2 JP 7697268B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- glaze layer
- weight
- sanitary ware
- glaze
- oxide
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Glass Compositions (AREA)
Description
陶器素地と、当該陶器素地の表面に形成された釉薬層とを備え、
前記釉薬層は、抗ウイルス剤としてランタノイドを含み、
前記釉薬層は、その表面粗さ(Ra)が0.07μm以下であり、
前記ランタノイドは、セリウム(Ce)、ユウロピウムおよびプロメチウム(Pm)を除く、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とするものである。
本発明において、「衛生陶器」とは、トイレおよび洗面所周りで用いられる陶器製品を意味し、具体的には大便器、小便器、便器の目皿、便器タンク、洗面台の洗面器、手洗い器などを意味する。また、「陶器」とは、陶磁器のうち、素地の焼き締まりがやや吸水性のある程度で、かつ表面に釉薬を施したものを意味する。
本発明による衛生陶器は、図1Aに示すように、陶器素地10と、その表面に形成された、抗ウイルス剤を含む釉薬層20とを少なくとも備える。
陶器素地10は、特に限定されず、従来知られている陶器素地であってよい。すなわち、ケイ砂、長石、粘土等を原料として調製された衛生陶器素地泥漿を適宜成形したものであってよい。
本発明において、釉薬層20は、その成分として、抗ウイルス剤、および抗ウイルス剤とともに後述する表面性状を実現可能な釉薬材料を含む。
本発明において、抗ウイルス剤は、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)の12種の元素からなる群から選択される少なくとも一種のランタノイドである。言い換えると、抗ウイルス剤は、セリウム(Ce)、ユウロピウム(Eu)およびプロメチウム(Pm)を除くランタノイドである(以下、Ce、EuおよびPmを除く上記12種のランタノイドを「特定ランタノイド」ということもある)。本発明の好ましい態様によれば、特定ランタノイドは、La、Gd、DyおよびYbからなる群から選択される少なくとも一種である。
本発明において、ランタノイドからPmを除く理由は、ランタノイドのうちこの原子は安定的に存在しておらず、放射性を有しており他のランタノイドと大きく物性が異なるからである。
・ 試験片(特定ランタノイドを含む釉薬層を備える衛生陶器の試験片、およびコントロール(抗ウイルス剤を含んでいない釉薬層を備える衛生陶器の試験片))に0.4mLのウイルス液を滴下し、フィルムで被覆する。
・ 試験片を25℃で24時間静置する。
・ 静置後、試験片上のウイルスを洗い出して回収した後、ウイルス感染価を測定する。
・ 次式により、抗ウイルス活性値を算出し、抗ウイルス性を評価する。
R=Ut-At
R:抗ウイルス活性値
Ut:コントロールの24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数
At:特定ランタノイドを含む釉薬層を備える衛生陶器の試験片の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数
TV:光照射後の特定ランタノイドを含む釉薬層を備える衛生陶器のバクテリオファージ感染価(pfu)
UV:光照射後のコントロールあたりのバクテリオファージ感染価(pfu)
なお、コントロールとして、抗ウイルス剤を含んでいない釉薬層を備える衛生陶器を用いる。
ランタン(La):1.0重量%~20.0重量%、上限は、好ましくは約14重量%、より好ましくは11~12重量%、さらにより好ましくは約9重量%であり、下限は、好ましくは5重量%以上である。
プラセオジム(Pr):1.0重量%~20.0重量%、上限は、好ましくは約14重量%、より好ましくは11~12重量%、さらにより好ましくは約9重量%であり、下限は、好ましくは5重量%以上である。
ネオジム(Nd):1.0重量%~20.0重量%、上限は、好ましくは約14重量%、より好ましくは11~12重量%、さらにより好ましくは約9重量%であり、下限は、好ましくは5重量%以上である。
サマリウム(Sm):1.1重量%~22.0重量%、上限は、好ましくは約15.4重量%、より好ましくは12.1~13.2重量%、さらにより好ましくは約9.9重量%であり、下限は、好ましくは5.5重量%以上である。
ガドリニウム(Gd):1.1重量%~22.0重量%、上限は、好ましくは約15.4重量%、より好ましくは12.1~13.2重量%、さらにより好ましくは約9.9重量%であり、下限は、好ましくは5.5重量%以上である。
テルビウム(Tb):1.1重量%~22.0重量%、上限は、好ましくは約15.4重量%、より好ましくは12.1~13.2重量%、さらにより好ましくは約9.9重量%であり、下限は、好ましくは5.5重量%以上である。
ジスプロシウム(Dy):1.1重量%~22.0重量%、上限は、好ましくは約15.4重量%、より好ましくは12.1~13.2重量%、さらにより好ましくは約9.9重量%であり、下限は、好ましくは5.5重量%以上である。
ホルミウム(Ho):1.2重量%~24.0重量%、上限は、好ましくは約16.8重量%、より好ましくは13.2~14.4重量%、さらにより好ましくは約10.8重量%であり、下限は、好ましくは6重量%以上である。
エルビウム(Er):1.2重量%~24.0重量%、上限は、好ましくは約16.8重量%、より好ましくは13.2~14.4重量%、さらにより好ましくは約10.8重量%であり、下限は、好ましくは6重量%以上である。
ツリウム(Tm):1.2重量%~24.0重量%、上限は、好ましくは約16.8重量%、より好ましくは13.2~14.4重量%、さらにより好ましくは約10.8重量%であり、下限は、好ましくは6重量%以上である。
イッテルビウム(Yb):1.2重量%~24.0重量%、上限は、好ましくは約16.8重量%、より好ましくは13.2~14.4重量%、さらにより好ましくは約10.8重量%であり、下限は、好ましくは6重量%以上である。
ルテチウム(Lu):1.2重量%~24.0重量%、上限は、好ましくは約16.8重量%、より好ましくは13.2~14.4重量%、さらにより好ましくは約10.8重量%であり、下限は、好ましくは6重量%以上である。
(測定条件)
管電圧:60kV
管電流:50mA
測定深さ:数十μm(0~50μm程度)
測定面積:Φ20mm
(分析条件)
La検出線:La Lα(アルファ)線、2θ=82.88
分光結晶:LiF(200)
検出器:SC
なお、上記走査型蛍光X線分析装置は、釉薬層20の最表面(0μm)から陶器素地の方向(図1に示す矢印方向)に深さ約50μmの領域がその測定限界であるため、本発明において、上記走査型蛍光X線分析装置を用いた特定ランタノイドの定量は、釉薬層20の最表面から約50μmの深さ領域における特定ランタノイドの含有量(質量%)をもって、釉薬層20を特定するものである。
すなわち、既に説明した特定ランタノイド酸化物換算での特定ランタノイドの含有量は、釉薬層20全体における特定ランタノイドの含有割合(百分率)を表すものであり、蛍光X線分析法(XRF)により測定される特定ランタノイドの含有量は、釉薬層20の表面付近における特定ランタノイドの含有割合をピンポイントで且つ正確に表すものである。 また、蛍光X線分析法(XRF)により測定される特定ランタノイドの含有量は、抗ウイルス剤の出発原料としての特定ランタノイドの酸化物、塩化物等の種々の化合物の添加量を化学量論に基づき正確に把握することに役立つ。
釉薬層20は、抗ウイルス剤(特定ランタノイド)とともに、通常釉薬に使用される材料、例えばSiO2、Al2O3、2価金属酸化物および1価金属酸化物などを含む。
本発明の好ましい態様によれば、SiO2のガラス成分に対する重量%が52~76%であり、Al2O3のガラス成分に対する重量%が6~14%であり、2価金属酸化物のガラス成分に対する重量%が11.4~27.6%であり、1価金属酸化物のガラス成分に対する重量%が1.5~6.5%である。
本発明において、抗ウイルス剤(特定ランタノイド)が、釉薬層20の少なくとも表面において、アモルファス(非晶質)状態で存在していることが好ましい。抗ウイルス剤が釉薬層20の表面にアモルファス状態で存在することにより、抗ウイルス剤は、釉薬層の表面に効率的にイオン化して溶出することができ、釉薬層表面に付着したウイルスを効率的に不活化することが可能となる。また、非晶質状態で存在するため釉薬層表面の表面性状への影響を抑えることができる。
XRD測定条件
測定範囲:3°~60°
スキャンレート:4°/min
印加電圧:45V、印加電流:40mA
なお、釉薬層の表面付近に特定ランタノイドがスピノーダル分相状態で存在している態様には、特定ランタノイドがリッチな相が、特定ランタノイドがリッチではない相(-Si-O-構造)と絡み合って存在している状態や、特定ランタノイドがリッチな部分が、特定ランタノイドがリッチではない部分とより絡み合って存在(つまり、より高解像度に均一に存在)している状態など、釉薬層表面のガラスのマトリクス構造中で特定ランタノイドがリッチな部分が他の部分と共同して、全体として絡み合い構造をなす状態も含まれると考える。このような状態で特定ランタノイドが釉薬層の表面付近に存在することにより、特定ランタノイドが釉薬層表面からマクロ的に見て均一に溶出することが可能とされ又は促進され、その結果、高い抗ウイルス性が発揮されるものと考えられる。
ランタン(La):約0.05ppm
プラセオジム(Pr):約0.052ppm
ネオジム(Nd):約0.052ppm
サマリウム(Sm):約0.054ppm
ガドリニウム(Gd):約0.056ppm
テルビウム(Tb):約0.057ppm
ジスプロシウム(Dy):約0.057ppm
ホルミウム(Ho):約0.058ppm
エルビウム(Er):約0.059ppm
ツリウム(Tm):約0.059ppm
イッテルビウム(Yb):約0.060ppm
ルテチウム(Lu):約0.061ppm
また、本発明の好ましい態様において、特定ランタノイドの溶出量は、釉薬層の表面から陶器素地の方向(図1に示す矢印方向)に深さ10nmの領域に含まれる特定ランタノイドの含有量の1~2%程度である。
平均粗さ(Ra)
釉薬層20は、その表面粗さ(Ra)が0.07μm未満である。表面粗さ(Ra)が0.07μm未満であることにより、衛生陶器に尿石、黴、黄ばみ、その他の汚れが付着しにくくなり、たとえ付着したとしても弱い水流により容易に除去することができる。その結果、衛生陶器の表面を、頻繁な洗浄操作を要することなく、長期間に亘り清浄な状態に維持することが可能となる。
釉薬層20は、その表面のウェーブスキャンDOI測定装置によるDOI値が80以上であることが好ましい。本発明において、「DOI値」とは、ウェーブスキャンDOI測定装置、例えばBYK Gardner社製(ドイツ国) Wave-ScanDIO(オレンジピール測定装置)により測定されるDOI値をいう。本発明において、DOI値は、本発明による衛生陶器が備える釉薬層の表面の写像性を表す指標として用いられる。「写像性」とは、ものの映り込みの鮮明さを表し、この外観品質は、釉薬層の表面形状により光の反射が異なることによって決定され、人間の視覚で認められる。
du:波長0.1mm以下
Wa:波長0.1~0.3mm
Wb:波長0.3~1mm
Wc:波長1~3mm
Wd:波長3~10mm
We:波長10~30mm
Sw:波長0.3~1.2mm
Lw:波長1.2~12mm
DOI:波長0.3mm以下
ここで、DOIはdu、Wa、Wbからなるパラメータで、DOI=f(du,Wa,Wb)で表わされる。
本発明において、釉薬層20は、その表面の色差:ΔE*値が1.20以下であることが好ましい。釉薬層20の表面のΔE*値が1.20以下であることにより、耐光性に優れた衛生陶器を得ることができる。ΔE*値は、JIS K5400(1990)の9章8節に記載のサンシャインカーボンアーク灯式に準拠して、サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(スガ試験機社製、S-300)にて耐候性試験を実施する。試験時間は8時間とし、試験前後における光触媒塗装体のL*、a*、b*値をSCE方式にて測色し、色差:ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2を求める。色差計として、色彩色差計(コニカミノルタ社製、CR―400)を用いることができる。
釉薬層20の表面の色差:ΔE*値は、0.8以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらにより好ましい。
本発明において、釉薬層20の膜厚は、好ましくは50~1200μmであり、より好ましくは100~800μmであり、さらにより好ましくは150μm~400μmである。このような厚みの釉薬層20により、上述した表面性状が実現できる。
本発明による衛生陶器は、以下のような方法により好ましく製造することができる。
また、釉薬スラリーに含まれる抗ウイルス剤は、通常、釉薬層20に含まれる抗ウイルス剤である特定ランタノイドの出発材料としての特定ランタノイド化合物であることが好ましい。このような特定ランタノイド化合物として、例えば、特定ランタノイドの酸化物などの沸点が1000℃以上のもの、より好ましくは沸点が1300℃以上のものであり、融点が1000℃以上のものを用いることができる。さらにより好ましくは、融点が1000℃以上であり、非水溶性の化合物が好ましい。
実施形態1
表1に記載の組成からなる釉薬材料と水および分散メディア(例えばアルミナボール)を陶器製ポット中に入れ、例えばボールミルにより粉砕して、釉薬スラリー前駆体を得る。この釉薬スラリー前駆体に抗ウイルス剤化合物を添加して混合、粉砕し、釉薬層20形成用釉薬スラリーを得る。
実施形態2
表1に記載の組成からなる釉薬材料を所定の温度にて溶融し、冷却してフリット原料を得る。このフリット原料に抗ウイルス剤化合物を添加し、さらに水、および分散メディア、必要に応じてその他の原料(例えば、陶石やZnOなど)を添加し、陶器製ポット中に入れ、例えばボールミルにより粉砕して、釉薬層20形成用釉薬スラリーを得る。
珪砂、長石、粘土等を原料として調製した陶器素地泥漿を用いて、70mm×150mm板状試験片を作製した。
下記表2に記載の組成からなる釉薬材料2kgと水1kgおよびアルミナボール4kgを、容積6Lの陶器製ポットに入れ、レーザー回折式粒度分布計を用いた粉砕後の釉薬スラリーの粒度測定結果が、10μm以下が65%、50%粒径が6.5μm程度になるように、ボールミルにより粉砕を行い、ベース釉薬層形成用釉薬スラリーを得た。
下記表3に記載の組成からなる釉薬材料2kgと水1kgおよびアルミナボール4kgを、容積6Lの陶器製ポットに入れ、レーザー回折式粒度分布計を用いた粉砕後の釉薬スラリーの粒度測定結果が、10μm以下が65%、50%粒径(D50)が6.5μmになるように、ボールミルにより粉砕を行い、釉薬スラリー前駆体を得た。この釉薬スラリー前駆体に、表4に記載のランタノイドの酸化物5重量%を添加し(すなわち、上記釉薬材料の合計含有量100重量%に対し、ランタノイド酸化物5重量%を添加し)、混合し、10μm以下が65%、50%粒径(D50)が6.5μmになるように、ボールミルにより粉砕を行い、粉砕し、実施例1~9および比較例1の衛生陶器用の抗ウイルス釉薬スラリーを調製した。
上記のとおり調製した各抗ウイルス釉薬スラリーを、上記陶器素地試験片にスプレーコーティング法により塗布した。その後、釜にて1200℃で一体的に1回焼成し、冷却し、実施例1~9および比較例1の衛生陶器を作製した。
実施例1~9および比較例1の衛生陶器について、以下の評価を行った。
実施例1~9および比較例1の衛生陶器の釉薬層に含まれる、特定ランタノイド酸化物換算量に基づく特定ランタノイド含有量は、例えば実施例1の衛生陶器については、表1に示す釉薬材料100重量%と酸化ランタン5重量%の合計(105重量%)に対する酸化ランタン(5重量%)の百分率として、5重量%/(100重量%+5重量%)×100≒4.8%と算出される。その他の実施例2~9、比較例1についても同様である。
ISO 21702に準拠した下記試験方法によりバクテリオファージQβに対する抗ウイルス活性値を求めた。
・ 実施例1~9、比較例1の衛生陶器、およびコントロールとして釉薬層が抗ウイルス剤を含んでいない衛生陶器に0.4mLのウイルス液を滴下し、フィルムで被覆した。
・ 各衛生陶器を25℃で24時間静置した。
・ 静置後、各衛生陶器上のウイルスを洗い出して回収した後、ウイルス感染価を測定した。
・ 次式により、抗ウイルス活性値を算出した。
R=Ut-At
R:抗ウイルス活性値
Ut:コントロールの衛生陶器の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数
At:実施例1~9、比較例1の衛生陶器の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm2)の常用対数
実施例1~9、比較例1の衛生陶器の抗ウイルス活性値は表4に示されるとおりであった。
平均粗さ(Ra)
触針式表面粗さ測定装置(JIS-B0651)を用い、JIS-B0601(1994)により定義される中心線平均粗さ(μm)を求めた。結果は表4に示されるとおりであった。
ウェーブスキャンDOI測定装置:BYK Gardner社製(ドイツ国) Wave-ScanDIO(オレンジピール測定装置)を用い、DOI値を測定した。結果は表4に示されるとおりであった。
<XRD測定>
XRD装置:パナリティカル製<X’Pert PRO>を用い、以下の条件で測定を行った。
XRD測定条件
測定範囲:3°~60°
スキャンレート:4°/min
印加電圧:45V、印加電流:40mA
図2に示されるように、特定ランタノイドを含む抗ウイルス釉薬層の表面のXRD測定においてピークは観察されず、したがって、抗ウイルス釉薬層の表面において、特定ランタノイドがアモルファス(非晶質)状態またはガラス化された状態で存在していることが確認された。
抗ウイルス釉薬層の表面付近における特定ランタノイドの存在状態をSEM観察した。SEM観察は、装置:S4800(日立ハイテクノロジーズ製)を用い、条件:倍率50000倍、印加電圧2.0kV、印加電流20mAにて行った(2.0mm×50.0k SE(U,LA100))。SEM画像を図3~11に示す。各図Aは抗ウイルス釉薬層の表面SEM画像であり、各図Bは抗ウイルス釉薬層の断面SEM画像である。図AB双方において、白色部分は特定ランタノイドの存在、黒色部分はSi-O構造を示す。図Bにおいて、境界線のように見える部分は、白色部分は特定ランタノイドがリッチに存在している様子を示す。白色部分より上側の画像領域は空気領域であるため、観察対象外である。
各図より、特定ランタノイドが釉薬層において、特に釉薬層の表面付近においてリッチに存在し、また特定ランタノイドがスピノーダル分相していること、さらに釉薬層の表面付近では特定ランタノイドのスピノーダル分散領域がリッチであることが確認された。
上述した実施例1の衛生陶器において、ランタンの含有量を様々な量に変化させた例1~15の衛生陶器を、実施例1の作製方法と同様に作製した。
例1~15の衛生陶器の釉薬層に含まれるランタンの酸化ランタン(La2O3)換算量(重量%)およびXRFにより測定した原子存在量(質量%)はそれぞれ表5に示されるとおりであった。
なお、表5に示される各衛生陶器の酸化ランタン(La2O3)換算量に基づくランタン含有量(重量%)は、例えば例4の衛生陶器については、表1に示す釉薬材料100重量%と酸化ランタン5重量%の合計(105重量%)に対する酸化ランタン(5重量%)の百分率として、5重量%/(100重量%+5重量%)×100≒4.8%と算出した。他の例1~3、4~15についても同様である。例4の衛生陶器は実施例1の衛生陶器と同一である。
各衛生陶器の酸化ランタン(La2O3)換算量に基づくランタン含有量(重量%)と、XRFにより測定したランタン含有量(質量%)とを対比すると、後者の方が多いことが確認された。これは、抗ウイルス釉薬層全体に含まれるランタン含有量よりも抗ウイルス釉薬層の表面付近に含まれるランタン含有量の方が多いことを示している。すなわち、ランタンが抗ウイルス釉薬層の表面付近に濃縮されていることを示している。
したがって、本発明によれば、抗ウイルス剤(特定ランタノイド)を釉薬層の表面付近に濃縮して存在させることができ、その結果、良好な抗ウイルス性を発揮することができる。また本発明によれば、少ない量の抗ウイルス剤であっても釉薬層の表面付近に抗ウイルス剤を濃縮させることができるため、良好な抗ウイルス性を効率的に発揮するとともに、抗ウイルス剤の量が少ないため釉薬層のSi-O構造に影響を与えない、つまり優れた表面性状が維持された衛生陶器を実現することができる。
また、例1~15の衛生陶器の耐光性(変色抑制能)を評価した。
具体的には、JIS K5400-9-8 サンシャインカーボンアーク式に準拠して、サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(米国アトラス社製)にて耐候性試験を実施した。試験時間は8時間とし、試験前後における光触媒塗装体のL*、a*、b*値をSCE方式にて測色し、色差:ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2を求めた。色差計として、色彩色差計(コニカミノルタ社製、CR―400)を用いた。結果は表5に示されるとおりであった。
また、例1~15の衛生陶器における抗ウイルス剤の含有量、抗ウイルス剤の溶出量、および抗ウイルス活性値の関係を確認した。
図12Aに、ランタンの酸化ランタン(La2O3)換算量(重量%)と、ランタンの釉薬層表面への溶出量(ppm)との関係を示す。図12Bに、ランタンの溶出量と抗ウイルス活性値との関係を示す。図13Aに、ランタンの酸化ランタン(La2O3)換算量(重量%)と、XRFにより測定した原子存在量(質量%)との関係を示す。図13Bに、ランタンのXRFにより測定した原子存在量(質量%)と、抗ウイルス活性値との関係を示す。
図12および図13から、ランタンの酸化ランタン(La2O3)換算量(重量%)と、ランタンのXRFにより測定した原子存在量(質量%)との間に比例関係が成立し、ランタンの含有量と、ランタンの釉薬層表面への溶出量との間に比例関係が成立し、ランタンの溶出量と抗ウイルス活性値との間にも比例関係が成立することが確認された。
酸化ランタンの添加量を10重量%とし、上記調製例により調製した抗ウイルス釉薬スラリーを、上記陶器素地試験片にスプレーコーティング法により塗布した。その後、釜にて、下記条件1~3にて焼成し、3種類の衛生陶器A~Cを作製した。
衛生陶器A:焼成条件1(焼成温度:1200℃、総焼成時間:10時間)
衛生陶器B:焼成条件2(焼成温度:1200℃、総焼成時間:15時間)
衛生陶器C:焼成条件3(焼成温度:1200℃、総焼成時間:20時間)
衛生陶器A~Cの抗ウイルス活性値は下記表6に示されるとおりであった。また、衛生陶器A~Cの抗ウイルス釉薬層表面付近のランタンの存在状態は図14A~Cに示されるとおりであった。
Claims (7)
- 陶器素地と、当該陶器素地の表面に形成された釉薬層とを備える衛生陶器であって、
前記釉薬層は、抗ウイルス剤としてランタノイドを含み、
前記釉薬層は、その表面粗さ(Ra)が0.07μm以下であり、
前記ランタノイドは、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)からなる群から選択される少なくとも一種であり、
ランタン(La)の含有量(酸化物換算)は、5重量%以上10重量%未満であり、
プラセオジム(Pr)の含有量(酸化物換算)は、1.0重量%以上20.0重量%以下であり、
ネオジム(Nd)の含有量(酸化物換算)は、1.0重量%以上20.0重量%以下であり、
サマリウム(Sm)の含有量(酸化物換算)は、1.1重量%以上22.0重量%以下であり、
ガドリニウム(Gd)の含有量(酸化物換算)は、1.1重量%以上22.0重量%以下であり、
テルビウム(Tb)の含有量(酸化物換算)は、1.1重量%以上22.0重量%以下であり、
ジスプロシウム(Dy)の含有量(酸化物換算)は、1.1重量%以上22.0重量%以下であり、
ホルミウム(Ho)の含有量(酸化物換算)は、1.2重量%以上24.0重量%以下であり、
エルビウム(Er)の含有量(酸化物換算)は、1.2重量%以上24.0重量%以下であり、
ツリウム(Tm)の含有量(酸化物換算)は、1.2重量%以上24.0重量%以下であり、
イッテルビウム(Yb)の含有量(酸化物換算)は、1.2重量%以上24.0重量%以下であり、
ルテチウム(Lu)の含有量(酸化物換算)は、1.2重量%以上24.0重量%以下であり、
前記抗ウイルス剤が、前記釉薬層の少なくとも表面にアモルファス(非晶質)状態で存在することを特徴とする、衛生陶器。 - 前記釉薬層は、その表面のウェーブスキャンDOI測定装置によるDOI値が80以上であることを特徴とする、請求項1に記載の衛生陶器。
- 前記抗ウイルス剤が、前記釉薬層の少なくとも表面に、スピノーダル分相していることを特徴とする、請求項1または2に記載の衛生陶器。
- 前記陶器素地と前記釉薬層との間にベース釉薬層をさらに備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の衛生陶器。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の衛生陶器の製造方法であって、
陶器素地を用意する工程と、
抗ウイルス剤であるランタノイドまたはランタノイド化合物と、当該抗ウイルス剤以外の釉薬材料とを含む釉薬スラリーを調製する工程と、
前記釉薬スラリーを前記陶器素地の表面に適用する工程と、
釉薬スラリーが適用された陶器素地を焼成し、釉薬層を形成する工程と
を少なくとも含むことを特徴とする、方法。 - 前記抗ウイルス剤の平均粒径と、前記釉薬材料の平均粒径との比(前者/後者)が0.9~1.1の範囲内にあることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- 前記陶器素地の表面にベース釉薬層を形成する工程をさらに含み、当該ベース釉薬層の表面に前記釉薬スラリーを適用することを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2021091692A JP7697268B2 (ja) | 2021-05-31 | 2021-05-31 | 衛生陶器 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2021091692A JP7697268B2 (ja) | 2021-05-31 | 2021-05-31 | 衛生陶器 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2022184064A JP2022184064A (ja) | 2022-12-13 |
| JP7697268B2 true JP7697268B2 (ja) | 2025-06-24 |
Family
ID=84437331
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2021091692A Active JP7697268B2 (ja) | 2021-05-31 | 2021-05-31 | 衛生陶器 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP7697268B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN117510068B (zh) * | 2023-12-15 | 2024-12-27 | 景德镇陶瓷大学 | 一种复合抗菌釉的制备方法 |
Citations (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2001049716A (ja) | 1999-08-05 | 2001-02-20 | Toto Ltd | 水洗式便器 |
| JP2012072609A (ja) | 2010-09-29 | 2012-04-12 | Toto Ltd | 写像性に優れた衛生陶器 |
| WO2020017493A1 (ja) | 2018-07-18 | 2020-01-23 | 国立大学法人東京工業大学 | 複合酸化物セラミックス及びその製造方法、並びに物品 |
-
2021
- 2021-05-31 JP JP2021091692A patent/JP7697268B2/ja active Active
Patent Citations (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2001049716A (ja) | 1999-08-05 | 2001-02-20 | Toto Ltd | 水洗式便器 |
| JP2012072609A (ja) | 2010-09-29 | 2012-04-12 | Toto Ltd | 写像性に優れた衛生陶器 |
| WO2020017493A1 (ja) | 2018-07-18 | 2020-01-23 | 国立大学法人東京工業大学 | 複合酸化物セラミックス及びその製造方法、並びに物品 |
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JP2022184064A (ja) | 2022-12-13 |
Similar Documents
| Publication | Publication Date | Title |
|---|---|---|
| TWI465413B (zh) | A sanitary pottery with an enamel layer with excellent substrate concealment | |
| EP2545992A1 (en) | Photocatalyst, slurry mixture, forming member and coating, coating film forming member, sintered body, glass-ceramic composite, glass, building material and clarification material | |
| JP7823322B2 (ja) | イットリウムまたはイットリウム化合物を含む抗ウイルス剤、当該抗ウイルス剤を含む釉薬、および当該釉薬を施釉した抗ウイルス性を有する衛生陶器 | |
| JP5882592B2 (ja) | ガラスセラミックス、その製造方法 | |
| WO2011013797A1 (ja) | ガラスセラミックス、ガラスセラミックス焼結体、ガラスセラミックス複合体、ガラス粉粒体、スラリー状混合物、及び光触媒 | |
| JP5702542B2 (ja) | ガラスセラミックス及びその製造方法 | |
| JP2012140275A (ja) | ガラスセラミックス及びその製造方法 | |
| JP7697268B2 (ja) | 衛生陶器 | |
| JP5715353B2 (ja) | 結晶化ガラスおよびその製造方法 | |
| JP2011093769A (ja) | ガラスセラミックスおよびその製造方法 | |
| JP5158168B2 (ja) | 写像性に優れた衛生陶器 | |
| JP2011093767A (ja) | ガラスセラミックスおよびその製造方法 | |
| JP7721967B2 (ja) | 衛生陶器 | |
| JP7700517B2 (ja) | 衛生陶器 | |
| KR20200078503A (ko) | 실리케이트 유리 및 치과용 제품 | |
| JP2011093766A (ja) | ガラス及びガラスセラミックス | |
| JP2011093768A (ja) | ガラスセラミックスおよびその製造方法 | |
| JP2011046601A (ja) | ガラスセラミックス複合体及びその製造方法、光触媒機能性部材、並びに親水性部材 | |
| JP7606405B2 (ja) | 歯科用陶材 | |
| JP5943535B2 (ja) | ガラスセラミックス及びその製造方法 | |
| JP7507332B1 (ja) | 歯科用陶材 | |
| JP2010275176A (ja) | ガラスセラミックスビーズ | |
| JP2019218243A (ja) | 衛生陶器及び衛生陶器の製造方法 | |
| JP5525228B2 (ja) | ガラスセラミックス及びその製造方法 | |
| JP2019218241A (ja) | 衛生陶器用の中間層組成物、衛生陶器、及び衛生陶器の製造方法 |
Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20240308 |
|
| A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20241113 |
|
| A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20241210 |
|
| A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20250210 |
|
| TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
| A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20250513 |
|
| A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20250526 |
|
| R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7697268 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |