(I)第1の実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。ただし、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。本実施の形態では、ループ状に形成された駆動機構により駆動されるステップと、ループ状のステップのループの端部近傍に保守作業時に開閉可能な開口部とを備える乗客コンベアを点検する乗客コンベア点検システムを例に挙げて説明する。
一般に、乗客コンベア内に複数のカメラを備える乗客コンベア点検システムでは、ステップの異常を常時検出できるものの、乗客コンベア内にカメラを備えていることから、経年によって生じる可能性のある埃等が点検に与える影響を考慮する必要がある。また、カメラで撮像可能な大きさの汚損、破損等を検出した場合、その対応には乗客コンベアを停止させて保守作業を行う必要がある。乗客コンベアは、建物内の人の輸送装置であることから、保守作業は、利用状況に応じて計画的に実施されるため、定期的に計画された保守作業において、ステップを正常な状態に保つことが望ましい。また、利用者に不便をかけないためには、短い作業時間で確実に確認作業を実施する必要がある。
この点、本乗客コンベア点検システムは、乗客コンベアの保守作業時に画像(静止画像、動画等)を撮像する撮像装置と、乗客コンベアの駆動機構およびステップを締結するための所定の色で着色された固定具を検出するためのキャリブレーション部材と、を備える。本乗客コンベア点検システムでは、キャリブレーション部材は、固定具の近傍の乗客コンベアの部位に設けられ、撮像装置において開口部内の固定具と、キャリブレーション部材とが同一画角内の画像として撮像される。
キャリブレーション部材は、固定具の色と同色の色マーカと、固定具の色の補色の色マーカとの少なくとも1つの色マーカを備える。ここで、補色としては、例えば、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)という3つの数値の組み合わせで、色を表現するHSV色空間における色相が示された色環上で、180°異なる色相を用いることができる。なお、キャリブレーション部材は、色マーカに代えて、固定具の色と同一の輝度を持つ色の輝度マーカを備えてもよい。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
なお、以下の説明では、図面において同一要素については、同じ番号を付し、説明を適宜省略する。また、同種の要素を区別しないで説明する場合には、枝番を含む参照符号のうちの共通部分(枝番を除く部分)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、枝番を含む参照符号を使用することがある。例えば、マーカを特に区別しないで説明する場合には、「マーカ131」と記載し、個々のマーカを区別して説明する場合には、「マーカ131-1」、「マーカ131-2」のように記載することがある。
また、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は、文脈毎に用いられ、1つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
図1は、乗客コンベア点検システム100に係る構成の一例を示す図である。乗客コンベア点検システム100は、エスカレーター、動く歩道等の乗客コンベアのステップを固定する固定具の締結状態の点検を支援するシステムである。例えば、乗客コンベア点検システム100は、ステップ固定ボルトと共に挿入された色付きのワッシャを映像から自動検出し、ステップ固定ボルトの締結状態の良否判定を行うシステムである。以下では、図1~図3を用いて、乗客コンベアの一例であるエスカレーター101を例に挙げて説明する。
エスカレーター101は、図示を省略する建築構造物に設置された枠体102と、制御盤103と、欄干部104と、ステップ105と、レール106と、ハンドレール107と、駆動機構108と、伝達チェーン109と、ドライビングチェーン110と、ハンドレール駆動装置111と、駆動スプロケット112と、従動スプロケット113と、を備えている。なお、図1および図2では、ステップ105の短手方向(乗降方向)をX軸、ステップ105の長手方向(幅方向)をY軸、ステップ105の高さ方向(鉛直方向)をZ軸とする座標系を用いることがある。
枠体102における上階床側114には、制御盤103、駆動機構108、および駆動スプロケット112が配置されている。下階床側115には、従動スプロケット113が配置されている。
駆動機構108は、電動機および減速機を含んで構成されている。電動機には、制御盤103から電力が供給され、電動機は、制御盤103によりその動作が制御される。電動機と減速機とには、ベルト部材116が巻き掛けられ、電動機の回転力は、ベルト部材116を介して減速機に伝達される。
減速機と駆動スプロケット112とには、伝達チェーン109が巻き掛けられている。駆動機構108の駆動力が伝達チェーン109を介して駆動スプロケット112に伝達され、駆動スプロケット112が回転する。
駆動スプロケット112と従動スプロケット113とには、1対のドライビングチェーン110が巻き掛けられている。駆動スプロケット112が回転することで、従動スプロケット113およびドライビングチェーン110が回転する。
また、駆動スプロケット112には、ハンドレール駆動チェーン117が巻き掛けられている。ハンドレール駆動チェーン117は、複数の伝達プーリ118に巻き掛けられると共に、ハンドレール駆動装置111に巻き掛けられている。
枠体102の幅方向には、1対のレール106が配置され、複数のステップ105は、この1対のレール106に移動可能に支持される。また、複数のステップ105は、1対のドライビングチェーン110を介して無端状に連結され、レール106に案内されて往路側と復路側とを循環移動する。
欄干部104は、枠体102の上部に支持されており、枠体102の幅方向の両側に配置されている。欄干部104には、無端状のハンドレール107が取り付けられている。ハンドレール107は、欄干部104に移動可能に支持され、ハンドレール駆動装置111によって、複数のステップ105と同一方向に同期して循環移動する。これにより、エスカレーター101では、ステップ105上に乗ってハンドレール107を把持している乗客を安全に搬送できる。
また、エスカレーター101は、図示は省略する乗降板を備えている。乗降板は、開口部119において、建物内からステップ105に向かって設けられる。乗降板は、略矩形状の板であり、上階床側114(床面内に位置する機械室)の蓋であるとともに、乗客用の通路となる。ただし、図1では、ステップ105の取り外しおよび取り付けの作業のために乗降板が取り外されている例が示されている。
開口部119において、乗降板が取り付けられる枠体102の縁部120(開口部119の断面部分)のうち、ステップ105側の縁部120-1にY軸方向に沿って、キャリブレーションシート130が設けられる。キャリブレーションシート130は、開口部119、開口部119に近い構造部材等に設けられ、例えば、ステップ105およびステップ105の固定具220と共に撮影可能な場所に設けられる。
キャリブレーションシート130には、マーカ131が1つ以上、設けられている。より具体的には、キャリブレーションシート130は、矩形の本体(シート状部材)の上に、円形のマーカ131が3個、設けられている。3個のマーカ131のうち、真ん中のマーカ131-1は、固定具220と同じ色に着色されている。一端のマーカ131-2および他端のマーカ131-3は、固定具220の色と異なる色(本実施の形態では、異色として補色を例に挙げて説明する)に着色されている。以下では、マーカ131-1を「同色マーカ」と記し、マーカ131-2およびマーカ131-3を「補色マーカ」と記すことがある。なお、シート状部材の色は、白色、黒色等である。
付言するならば、キャリブレーションシート130の形状は、矩形に限るものではなく、他の形状であってもよい。また、マーカ131の形状は、円形に限るものではなく、他の形状であってもよい。また、同色マーカと補色マーカとの形状は、同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。また、キャリブレーションシート130は、点検ごとに取り付けおよび取り外しが行われる構成であってもよいし、最初に一度だけ取り付けられる構成であってもよい。後者の構成であっても、通常時、乗降板により開口部119が閉じられているので、キャリブレーションシート130は乗客から視認されない。また、キャリブレーションシート130は、縁部120-1に設けられる構成を示したが、この構成に限らない。キャリブレーションシート130は、固定具220近傍のエスカレーター101の他の場所に設けられていてもよい。
乗客コンベア点検システム100は、乗客コンベア点検装置140を備える。乗客コンベア点検装置140は、ステップ105(固定具220)と一定の距離で正対するように設置されている固定治具141に、点検時に設置される。なお、乗客コンベア点検装置140は、常時、固定治具141に取り付けられていてもよい。つまり、乗客コンベア点検装置140については、作業者または作業責任者が点検の都度、運搬する可搬式としてもよいし、枠体102に固定する常設式としてもよい。また、固定治具141に代えて、ステップ105と一定の距離で正対するように設置可能な位置に目印が設けられていてもよい。また、乗客コンベア点検装置140の設置場所は、キャリブレーションシート130および固定具220を撮影可能な任意の場所でよく、機械室の上部に限らず、機械室の内部でもよい。また、固定治具141は、三脚のような台であってもよい。
本実施の形態では、上階床側114においてステップ105の点検が実施される例を挙げて説明するが、開口部が下階床側115に設けられている場合は、下階床側115においてステップ105の点検が実施されてもよい。次に、ステップ105の構造について具体的に説明する。
図2は、ステップ105の概略構成を示す図である。ステップ105は、骨格となるフレーム200と、乗客が乗る踏板201とを備える。踏板201は、フレーム200の上部に固定されている。図示は省略するが、踏板201の前後左右の端部には、黄色等に着色されたデマケーションが設けられている。デマケーションにより、乗客が踏板201の中央近傍に乗るよう案内する。なお、デマケーションについては、踏板201の後(ライザー側)のデマケーションが設けられていなくてもよいし、踏板201の前後のデマケーションが設けられていなくてもよい。
また、図2に示すように、ステップ105は、フレーム200に設けられた図示しない孔を介して、ドライビングチェーン110と連結されている前輪軸211の両端部近傍に回動自在に外嵌されたカラー212に、1以上のステップ固定ボルト220-1で締結される。ステップ固定ボルト220-1とフレーム200との間には、赤ワッシャ220-2が挿入される。なお、本実施の形態では、テップ固定ボルト220-1および赤ワッシャ220-2を固定具220の例として説明する。続いて、赤ワッシャ220-2について具体的に説明する。
図3は、赤ワッシャ220-2の一例を示す図である。第1の態様310は、ステップ固定ボルト220-1の締結完了前の赤ワッシャ220-2を示している。第1の態様310では、赤ワッシャ220-2が備える3枚の舌は、A方向およびB方向に平行な状態(例えば、水平)となり、表面は、金属色である。これに対し、第2の態様320は、ステップ固定ボルト220-1の締結完了後の赤ワッシャ220-2を示している。作業者は、赤ワッシャ220-2が備える3枚の舌の内、一枚をC方向に平行な向き(例えば、垂直)に折り曲げることで、赤ワッシャ220-2の裏面に塗装された赤色321を表示する。なお、赤ワッシャ220-2の舌の折り曲げ(赤色321の表示)によりステップ固定ボルト220-1が適切に取り付けられていることが確認されるので、折り曲げられる舌は、作業者が最も視認し易い舌であることが好ましい。
ここで、ステップ固定ボルト220-1とフレーム200とに挿入されるワッシャは、赤ワッシャ220-2に限定しない。例えば、ワッシャの裏面は、所定の色(例えば、緑色等、ステップ105の構成部品にない色)であってもよい。また、例えば、ワッシャの舌(折り曲げ部)の数は、3枚に限らず、1枚であってもよいし、2枚以上であってもよい。また、赤ワッシャ220-2は、設けられていなくてもよい。この場合、例えば、ステップ固定ボルト220-1の一部または全部が所定の色(例えば、赤色、緑色等)に着色されている。
乗客コンベア点検システム100では、乗客コンベア点検装置140は、赤ワッシャ220-2の赤色321を検出し、ステップ固定ボルト220-1の締結状態の良否判定を行う。次に、乗客コンベア点検装置140に係る構成について図4および図5を用いて説明する。
図4は、乗客コンベア点検装置140に係るハードウェア構成の一例を示す図である。
乗客コンベア点検装置140は、撮像機能と情報処理機能と表示機能とを備える、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等である。乗客コンベア点検装置140は、制御装置410、演算装置420、メモリ430、ストレージ装置440、ディスプレイ450、およびセンサ460を含んで構成されている。
制御装置410と演算装置420とは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。メモリ430は、プログラム、データ等を記憶する主記憶装置である。ストレージ装置440は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等である。ストレージ装置440に格納されているプログラム、データ等は、メモリ430に随時読み込まれる。ディスプレイ450は、タッチパネルを備える表示装置である。センサ460は、カメラ461(画像センサ)、音センサ(振動センサ)、GPS(Global Positioning System)センサ、傾斜センサ、ジャイロセンサ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、磁気センサ、加速度センサ等を含んで構成される。なお、カメラ461には、広角カメラ、望遠カメラ、レフレックスカメラ、TOF(Time Of Flight)カメラ等のカメラが1以上含まれる。また、カメラ461には、マグニファイヤー等が取り付けられてもよい。
乗客コンベア点検装置140において、ディスプレイ450は、各種の表示をすることに加えて、作業者からの各種の入力を受け付ける入力装置でもある。点検時は、作業者は、ディスプレイ450に入力を行うことで点検を実施し、ステップ105の検出結果および固定具220の検出結果を示す検出結果データが算出され、検出結果データに基づく点検結果データがディスプレイ450に表示される。なお、検出結果データは、ストレージ装置440に格納される。点検の実施については、図6および図7を用いて後述する。検出結果データについては、図8を用いて後述する。また、点検結果データについては、図9を用いて後述する。
図5は、乗客コンベア点検装置140に係る機能構成の一例を示す図である。
乗客コンベア点検装置140は、乗客コンベア点検装置140の機能として、入力部501、設置部502、算出部503、撮影部504、判定部505、および出力部506を備える。
入力部501は、センサ460において取得されたデータ(センサ値)を入力する。例えば、入力部501は、カメラ461により撮像された画像を入力する。設置部502は、入力部501により入力されたセンサ値に基づいて、キャリブレーションシート130および乗客コンベア点検装置140が正しく設置されているか否かを判定する。算出部503は、入力部501により入力されたカメラ461により撮像された画像に基づいて、赤ワッシャ220-2の赤色321を検出するためのキャリブレーション値を算出する。撮影部504は、カメラ461に撮影の開始および終了を指示する。判定部505は、撮影部504による指示に基づいてカメラ461により撮像された画像から、算出部503により算出されたキャリブレーション値に基づいて固定具220の締結状態を判定する。出力部506は、判定部505によって判定された結果を出力する。
乗客コンベア点検装置140の機能は、例えば、制御装置410および演算装置420がストレージ装置440に格納されたプログラムをメモリ430に読み出して実行すること(ソフトウェア)により実現されてもよいし、専用の回路等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが組み合わされて実現されてもよい。なお、乗客コンベア点検装置140の1つの機能は、複数の機能に分けられていてもよいし、複数の機能は、1つの機能にまとめられていてもよい。また、乗客コンベア点検装置140の機能の一部は、別の機能として設けられてもよいし、他の機能に含められていてもよい。また、乗客コンベア点検装置140の機能の一部は、乗客コンベア点検装置140と通信可能な他のコンピュータにより実現されてもよい。
図6は、ステップ105の点検に係る処理(点検処理)の一例を示す図である。
S601では、乗客コンベア点検装置140は、乗客コンベア点検装置140およびキャリブレーションシート130を所定の位置に設置するための設置指示をディスプレイ450に表示する。例えば、乗客コンベア点検装置140は、図示は省略する点検アプリケーション上のスタートボタンが作業者により押下された場合、設置指示をディスプレイ450に表示する。
S602では、乗客コンベア点検装置140およびキャリブレーションシート130の設置が作業者により行われる。例えば、ステップ105が開口部119の近傍で反転するので、乗客コンベア点検装置140は、反転するタイミングで、開口部119を介して固定具220を撮影できる位置に設置される。また、乗客コンベア点検装置140は、開口部119を介して、キャリブレーションシート130と固定具220とが同一画角内に収まるように設置される。そして、乗客コンベア点検装置140およびキャリブレーションシート130が設置指示に従って所定の画面領域(画角)に納まるように作業者により設置された後、乗客コンベア点検装置140は、作業者からの操作に応じて撮影(キャリブレーションシート130の画像を撮像)する。
S603では、乗客コンベア点検装置140は、キャリブレーションシート130の補色マーカを検出する。
ここで、補色については上述したように、例えば、HSV色空間により規定することができる。HSV色空間において、色相を0°~360°の値で表す場合、固定具220の色の色相に対し、180度異なる色を補色とする。例えば、固定具220の色の色相が0°である場合は色相が180°の色が補色となり、固定具220の色の色相が30°である場合は、色相が210°の色が補色となる。また、色相が350°である場合は、色相が170°の色が補色となる。
実際には、補色の前後に色相として30°の猶予を設け、色相が0°である場合は色相が150°~210°の範囲を補色の範囲と規定する。これは、実際の撮像条件下では、照明条件等によりキャリブレーションシート130の色が実際の色から変化して見える可能性があることを考慮するためである。マーカ131の検出においては、補色マーカの検出を先に行うが、その検出範囲を固定具220の色の完全な補色に限定すると、補色マーカの検出に失敗する可能性があるためである。補色マーカの検出は、あくまで同色マーカの色が実際の環境下でどのような色として撮像できるかという情報を取得するために、キャリブレーションシート130自体を検出することが目的であるため、その色が実際はどのように乗客コンベア点検装置140(カメラ461)で見えていても問題はない。しかしながら、あまりにも実際の色と異なるように撮像される場合は、その後の点検で誤判定が生じる可能性もあるため、適切な環境条件下で撮像が行われていることを確認するために、一定の範囲を設けて補色の範囲を規定する。
例えば、S603では、乗客コンベア点検装置140は、撮像した画像内の所定の画面領域において、予め定められた特定の色の色情報(例えば、赤ワッシャ220-2の赤色321の補色を検出するための補色の範囲)に基づいて、キャリブレーションシート130における特定の色の2箇所の円のかたまりを補色マーカ(マーカ131-2およびマーカ131-3)として検出する。
S604では、乗客コンベア点検装置140は、補色マーカを2個、検出したか否かを判定する。乗客コンベア点検装置140は、補色マーカを2個、検出したと判定した場合、S605に処理を移す。乗客コンベア点検装置140は、補色マーカを2個、検出しなかったと判定した場合、乗客コンベア点検装置140および/またはキャリブレーションシート130の設置状態が不適切であるため、設置指示に従い設置をやり直すように、S601に処理を戻す。
S605では、乗客コンベア点検装置140は、画像内の補色マーカ間の距離(ピクセル座標距離)を測定する。
S606では、乗客コンベア点検装置140は、距離変換係数を算出する。キャリブレーションシート130の補色マーカの実際の距離は既知であるため、乗客コンベア点検装置140は、実際の距離とピクセル座標距離とを比較することで、画像内のピクセル座標距離を実際の距離に変換するための係数(距離変換係数)を算出する。
S607では、乗客コンベア点検装置140は、乗客コンベア点検装置140に備えられた傾斜センサのセンサ値と、撮像した補色マーカの形状の歪みと、に基づいて、乗客コンベア点検装置140(カメラ461)の傾きを算出する。
S608では、乗客コンベア点検装置140は、S606において算出した距離変換係数とS607において算出した傾きとに基づいて、乗客コンベア点検装置140の設置が適切であるか否かを判定する。乗客コンベア点検装置140は、乗客コンベア点検装置140の設置が適切であると判定した場合(距離変換係数が閾値の範囲内であり、かつ、傾きが閾値の範囲内であると判定した場合)、S609に処理を移す。乗客コンベア点検装置140は、乗客コンベア点検装置140の設置が適切でないと判定した場合、S601に処理を戻す。
S609では、乗客コンベア点検装置140は、キャリブレーションシート130の同色マーカの色情報を測定(取得)する。乗客コンベア点検装置140は、補色マーカ間にある同色マーカを特定し、点検環境下での同色マーカの色に対応するHSV空間における色の数値を取得する。
S610では、乗客コンベア点検装置140は、S609において取得した色情報に基づいて、撮像時の色を補正するためのキャリブレーション値を算出する。乗客コンベア点検装置140は、S609において取得した色情報(数値)を含む前後の範囲をキャリブレーション値(閾値)とする。なお、乗客コンベア点検装置140は、後述のS616において、その範囲の色を検出し、検出した面積で固定具220の締結状態(固定具220の有無、固定具220が適切に取り付けられていること)を判定する。
S611では、点検のための撮影が可能となるため、乗客コンベア点検装置140は、撮影OK指示をディスプレイ450に表示する。
S612では、乗客コンベア点検装置140は、作業者からの動画撮影の開始指示に応じてカメラ461による動画の撮影を開始する。
S613では、作業者は、エスカレーター101を操作し、エスカレーター101を運転(駆動)する。
S614では、乗客コンベア点検装置140は、作業者からの動画撮影の終了指示に応じてカメラ461による動画の撮影を終了する。
なお、乗客コンベア点検装置140は、動画の撮影中に所定の値以上の振動(ブレ)を検出した場合、固定治具141を止め直すこと等を促すアラートを出力してもよい。アラートの出力は、動画の撮影中に行われてよいし、ストレージ装置440に記憶しておいた振動データをもとに動画の撮影後に行われてもよい。
S615では、乗客コンベア点検装置140は、撮影した動画をもとに、ステップ105の枚数を検出する。例えば、乗客コンベア点検装置140は、デマケーションの切れ目によりステップ105を検出する。なお、ステップ105を検出方法は、上述の内容に限らない。例えば、乗客コンベア点検装置140は、パターンマッチングによりステップ105を検出してもよいし、ディープニューラルネットワークによりステップ105を検出してもよいし、その他の方法によりステップ105を検出してもよい。
S616では、乗客コンベア点検装置140は、S610において取得したキャリブレーション値に基づいて固定具220を検出する。例えば、第1のステップ105が現れた後に第2のステップ105が現れる場合、乗客コンベア点検装置140は、ステップ105間が撮像されている画像から、キャリブレーション値(閾値)を満たす色を検出し、検出した色のかたまりごとに画素の数(面積)が所定の値以上であるか否かを判定し、面積が所定値以上であるかたまりの数を、第2のステップ105に固定具220が取り付けられている数として検出する。
S617では、乗客コンベア点検装置140は、S615およびS616において検出した結果を含む検出結果データをもとに点検結果データを生成してディスプレイ450に表示し、点検処理を終了する。
なお、点検処理は、上述の内容に限らない。例えば、乗客コンベア点検装置140は、動画の撮影中に、ステップ105および固定具220の検出を行ってもよい。この場合、固定具220が適切に検出されなかった場合、エラーとして点検処理を中止してもよい。作業者は、リアルタイムに出力されたエラーに対応することで、エラーが出たステップ105から残りのステップ105の撮影を行わなくて済み、点検に要する時間を短縮することができる。
図7は、カメラ461により撮像された画像の一例(画像700)を示す図である。
画像700には、枠体102の縁部120-1に対応する縁部画像701と、キャリブレーションシート130に対応するキャリブレーションシート画像710と、固定具220に対応する固定具画像720とが含まれている。キャリブレーションシート画像710には、マーカ131-1に対応するマーカ画像711-1と、マーカ131-2に対応するマーカ画像711-2と、マーカ131-3に対応するマーカ画像711-3と、が含まれている。
例えば、画像700を用いて、画像700の左側の固定具220が適切に締結されているか否かが判定される場合、固定具画像720-1の赤色の画素がキャリブレーション値に基づいて検出され、検出された画素の数(面積)が所定の値以上である場合、適切に締結されていると判定される。また、画像700の右側の固定具220についても同様に、固定具画像720-2の赤色の面積が所定の値以上である場合、適切に締結されていると判定される。そして、ステップ105の全て(左右2箇所)の固定具220が適切に締結されていると判定された場合、当該ステップ105が適切に取り付けられていると判定される。
図8は、S615およびS616において生成される検出結果データの一例を示す図である。検出結果データは、作業者が指定した点検対象のエスカレーター101の装置番号に、点検の日時が付与されたファイル名のCSV(Comma Separated Value)ファイル800としてストレージ装置440に格納される。
CSVファイル800には、点検の開始時刻から連続してフレーム(動画を構成する静止画像の1コマ)に割り振られるフレーム番号801と、各フレームにおけるステップ検出フラグ802と、固定具検出数803とのデータがカンマで区切られて含まれている。
固定具220は、連続するステップ105の間に位置するため、撮像した画像が主としてステップ105を撮像している場合にはステップ検出フラグ802が「1」となり、そうでない場合はステップ検出フラグ802が「0」となる。ステップ検出フラグ802が「0」のフレームが、固定具220を検出すべき対象のフレームとなるため、この部分で固定具220の検出が行われ、検出された固定具220の数が固定具検出数803に記録される。図8では、1つのステップに対して2個の固定具220を検出する場合の例を示している。
図9は、検出結果データをもとに生成される点検結果データの一例(点検結果画面900)を示す図である。点検結果画面900は、例えば、ディスプレイ450に表示される。
点検結果画面900には、点検結果901と、点検装置番号902と、点検日903と、検出ステップ枚数904と、検出固定具数905との表示領域が設けられている。点検結果901は、点検処理において検出されたステップ105の枚数と点検処理において検出された固定具220の個数とに基づいて「OK」または「NG」が表記される表示領域である。点検結果901の合否の基準については、乗客コンベア点検装置140の装置番号ごとに予め設定した数値を用いることができる。
点検装置番号902は、点検対象のエスカレーター101の装置番号を表示する表示領域である。点検日903は、点検が実施された日にちを表示する表示領域である。検出ステップ枚数904は、点検処理において検出されたステップ105の総数を表示する表示領域である。検出固定具数905は、点検処理において検出された固定具220の総数を表示する表示領域である。
点検結果画面900によれば、作業者は、容易に点検結果を把握することができる。なお、上述したように、乗客コンベア点検装置140は、点検対象のステップ105の総数が「60」であるか否かを判定し、固定具220の総数が「120」であるか否かを判定しているが、各ステップ105において固定具220の数が「0」または「1」として検出されたときにエラーを出してもよい。つまり、全ての固定具220の締結状態を撮影の終了後にまとめて点検してもよいが、撮影中に各固定具220の締結状態を点検し、異常を検出したとき(リアルタイム)にエラーを出してもよい。
本実施の形態によれば、環境の変化によって乗客コンベアに照射される光量が変化する場合でも、キャリブレーション部材を用いて環境に応じたキャリブレーションが行われるので、固定具の締結状態を画像から判定することができ、多様な環境下において固定具の締結状態を確認することができる。
(II)第2の実施の形態
本実施の形態は、キャリブレーションシートに補色マーカが設けられていない点が第1の実施の形態と異なる。本実施の形態では、第1の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を用いてその説明を省略する。
図10は、カメラ461により撮像された画像の一例(画像1000)を示す図である。
本実施の形態において、キャリブレーションシート1010は、1つ以上の円形のマーカ1011を備えている。マーカ1011は、固定具220と同じ色(同色マーカ)である。このように、キャリブレーションシート1010に単一のマーカ1011のみが存在する場合、マーカ1011の検出時の画面1000内に固定具画像720が存在すると、固定具画像720をマーカ1011に対応するマーカ画像1021であると誤検出する可能性がある。そのため、画面1000内にマーカ画像1021を検出するためのマーカ検出エリア1030を手動で定めるとともに、固定具画像720がマーカ検出エリア1030に入らないように、キャリブレーションシート1010の設置位置を調整する。
このように、マーカ検出エリア1030を指定した上でキャリブレーションシート画像1020のマーカ画像1021を検出し、マーカ画像1021の色に基づいて固定具220を検出するためのキャリブレーション値を算出することで、多様な環境下においても固定具220の色を検出することが可能となる。
(III)その他の実施の形態
以上の実施の形態においては、キャリブレーションシート130,1010のマーカ131,1011の色に基づいて、固定具220を検出するためのキャリブレーション値を算出したが、マーカ131,1011の色に基づいて、固定具220を検出するための閾値を直接、設定してもよい。その場合、固定具220は、キャリブレーションシート130,1010よりもエスカレーター101の筐体内部に位置するため、固定具220が受ける光量は減少する。そのため、輝度が低下する可能性があるため、それを考慮して固定具220のキャリブレーション値(閾値)を設定すればよい。
また、第2の実施の形態においては、固定具220の色を検出していたが、グレイスケール画像で撮像した場合に固定具220の輝度が画面1000内の他と比べて十分大きい場合、または、固定具220が存在し得る領域が画面1000内に設定でき、かつ、その領域内で固定具220の輝度が他と比べて十分大きい場合は、輝度情報に基づいて固定具220を検出してもよい。その場合は、キャリブレーションシート1010には、固定具220と輝度が等しくなるマーカ(輝度マーカ)を設ければよい。
また、第2の実施の形態においては、キャリブレーションシート1010には、固定具220と同じ色である同色マーカが設けられる例を挙げて説明したが、同色マーカに代えて、固定具220の色の補色からなる補色マーカが設けられる構成であってもよい。乗客コンベア点検装置140は、補色マーカの色が検出できた場合、HSV空間において、当該色と逆の色相の色を固定具220の色として取得し、キャリブレーション値を算出する。
また、第2の実施の形態においては、キャリブレーションシート1010には、固定具220と同じ色である同色マーカが設けられる例を挙げて説明したが、キャリブレーションシート1010自体が同色マーカ(キャリブレーションシート1010が固定具220と同じ色)であってもよい。
また、ステップ105および固定具220の検出では、多様な合否基準が存在する。以上の実施の形態で示したように、検出結果データに基づいて数値として判定するだけでなく、検出結果データを参考情報に、別途目視で確認を行ってもよい。その場合は、点検処理において撮影した動画、検出時の画像をストレージ装置440に格納し、確認時にディスプレイ450に表示してもよい。
(IV)付記
上述の実施の形態には、例えば、以下のような内容が含まれる。
上述の実施の形態においては、本発明を乗客コンベア点検システムに適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々のシステム、装置、方法、プログラムに広く適用することができる。
また、上述の実施の形態において、プログラムの一部またはすべては、プログラムソースから、乗客コンベア点検装置140を実現するコンピュータのような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、ネットワークで接続されたプログラム配布サーバまたはコンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。また、上述の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
また、上述の実施の形態において、説明の便宜上、乗客コンベア点検システムに係る情報を、CSVを用いて説明したが、データ構造はCSVに限定されるものではない。乗客コンベア点検システムに係る情報は、XML(Extensible Markup Language)、YAML(YAML Ain't a Markup Language)、ハッシュテーブル、木構造等、CSV以外のデータ構造によって表現されてもよい。
また、上述の実施の形態において、図示および説明した画面は、一例であり、提示する情報が同じであるならば、どのようなデザインであってもよい。
また、上述の実施の形態において、情報の出力は、ディスプレイへの表示に限るものではない。情報の出力は、スピーカによる音声出力であってもよいし、ファイルへの出力であってもよいし、印刷装置による紙媒体等への印刷であってもよいし、プロジェクタによるスクリーン等への投影であってもよいし、その他の態様であってもよい。
また、上記の説明において、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
上述した実施の形態には、例えば、以下の特徴的な構成が含まれる。
(1)
循環移動するチェーン(例えば、ドライビングチェーン110)と、上記チェーンに連結可能な複数のステップ(例えば、ステップ105)とを備える乗客コンベア(例えば、エスカレーター101)において、上記複数のステップの各々を上記チェーンに固定するために用いられる所定の色(例えば、赤色であってもよいし、緑色であってもよいし、他の色であってもよい)に着色された固定具(例えば、固定具220、ステップ固定ボルト220-1および赤ワッシャ220-2)の締結状態を点検する乗客コンベア点検装置(例えば、乗客コンベア点検装置140)は、上記固定具の近傍に設けられている上記固定具を検出するためのキャリブレーション部材(例えば、キャリブレーションシート130、キャリブレーションシート1010)が撮像装置(例えば、カメラ461)により撮像された上記キャリブレーション部材の画像(例えば、キャリブレーションシート画像710、キャリブレーションシート画像1020)をもとに、上記固定具を検出する閾値(例えば、キャリブレーション値)を算出する算出部(例えば、算出部503、演算装置420、回路)と、上記固定具が上記撮像装置により撮像された上記固定具の画像(例えば、固定具画像720)について、上記固定具の締結状態を上記算出部により算出された閾値に基づいて判定する判定部(例えば、判定部505、演算装置420、回路)と、を備える。
上記構成では、例えば、固定具の近傍に設けられているキャリブレーション部材の画像をもとに固定具を検出するためのキャリブレーションが行われる。上記構成によれば、乗客コンベアが設置されている環境が異なる場合であっても、固定具の締結状態の判定を高精度に実施することができる。
(2)
上記キャリブレーション部材は、上記所定の色と同色である同色マーカ(例えば、マーカ131-1、マーカ1011)を含んで構成され、上記算出部は、上記キャリブレーション部材の画像から上記同色マーカの色を検出し、検出した色をもとに上記固定具の色を検出する閾値を算出する。
上記構成では、例えば、乗客コンベアが設置されている環境下において同色マーカの色が検出され、撮像時の色を補正するための閾値が設定されるので、乗客コンベアに照射される光量にかかわりなく、固定具の締結状態の判定を高精度に実施することができる。
(3)
上記キャリブレーション部材は、上記所定の色とは異なる色である異色マーカ(例えば、異色マーカ、補色マーカ、マーカ131-2、マーカ131-3)を更に含んで構成され、上記算出部は、上記撮像装置により撮像された画像から上記異色マーカを検出し、上記異色マーカをもとに上記キャリブレーション部材の画像を特定する。
上記構成では、同色マーカと異色マーカとが同じキャリブレーション部材に設けられているので、異色マーカをもとにキャリブレーション部材を特定することで、同色マーカを検出できる。例えば、異色マーカと同色の部品、機器等が乗客コンベアに用いられていない場合、異色マーカを容易に検出でき、キャリブレーション部材を確実に特定できるので、同色マーカの色を検出する際に、誤って固定具の色を検出してしまう事態を回避することができる。
(4)
上記キャリブレーション部材は、上記所定の色の補色である補色マーカ(例えば、マーカ1011に代えて設けられる補色マーカ、マーカ131-2、マーカ131-3)を含んで構成され、上記算出部は、上記キャリブレーション部材の画像から上記補色マーカの色を検出し、検出した色をもとに上記固定具の色を検出する閾値を算出する。
上記構成では、例えば、補色マーカの色から固定具の色が推定されて閾値が算出されるので、誤って固定具の色を検出してしまい、誤った閾値が設定される事態を回避することができる。
(5)
上記キャリブレーション部材は、上記所定の色と同一の輝度を持つ色の輝度マーカ(例えば、輝度マーカ)を含んで構成され、上記算出部は、上記キャリブレーション部材の画像から上記輝度マーカの輝度を検出し、検出した輝度をもとに上記固定具の輝度を検出する閾値を算出する。
上記構成では、例えば、乗客コンベアが設置されている環境下において輝度マーカの輝度が検出され、撮像時の輝度を補正するための閾値が設定されるので、当該環境下において固定具の締結状態の判定を実施することができる。
また上述した構成については、本発明の要旨を超えない範囲において、適宜に、変更したり、組み替えたり、組み合わせたり、省略したりしてもよい。
「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式におけるリストに含まれる項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができると理解されたい。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」の形式においてリストされた項目は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、B、およびC)を意味することができる。