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JP7700802B2 - 電気機械変換素子、その製造方法及び液体吐出ヘッド - Google Patents
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電気機械変換素子、その製造方法及び液体吐出ヘッド Download PDF

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Description

本発明は電気機械変換素子、その製造方法及び液体吐出ヘッドに関する。より詳しくは、本発明は、高温環境下で長期的に連続してパルス駆動させたときの、圧電体の変位量の経時的な低下が抑制された電気機械変換素子、その製造方法及び液体吐出ヘッドに関する。
近年、駆動素子やセンサーなどに応用するための電気機械変換素子として、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)などの鉛系の圧電体や、鉛を含まない非鉛系の圧電体が用いられている。このような圧電体は、シリコン(Si)等の基板上に薄膜として形成することで、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子へ応用が期待されている。
MEMS素子の製造においては、フォトリソグラフィーなど半導体プロセス技術を用いた高精度な加工を適用できるため、素子の小型化や高密度化が可能となる。特に、直径6インチや直径8インチといった比較的大きなSiウェハ上に素子を高密度に一括で作製することにより、素子を個別に製造する枚葉製造に比べて、コストを大幅に低減することができる。
また、圧電体の薄膜化やデバイスのMEMS化により、機械電気の変換効率が向上することで、デバイスの感度や特性が向上するといった新たな付加価値も生み出されている。例えば、熱センサーでは、MEMS化による熱コンダクタンス低減により、測定感度を上げることが可能となり、プリンター用のインクジェットヘッドでは、ノズルの高密度化による高精細パターニングが可能となる。また、このようなデバイスで必要とされる圧電体を含有する電気機械変換層、例えば、ベンドモードと呼ばれる方式の電気機械変換層では、高い圧電定数d31が求められている。
電気機械変換層をMEMS駆動素子として用いる際には、設計するデバイスにもよるが、必要な変位発生力を満たすために、例えば1~10μmの厚さで電気機械変換層を成膜しなければならない。電気機械変換層をSiなどの基板上に成膜するには、CVD(Chemical Vapor Deposition)法など化学的成膜法、スパッタ法やイオンプレーティング法といった物理的な方法、ゾルゲル法など液相での成長法が知られており、これらの成膜方法に応じて、必要な性能の膜を得るための成膜条件を見いだすことが重要である。
上記圧電体としては、強誘電性及び良好な圧電特性を有する、ペロブスカイト構造を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が一般的に用いられている。また、上記圧電体に対して厚さ方向に電圧を印加する上下の電極には、多種多様な金属又はその酸化物を使用できることが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
また、特許文献1~特許文献5に記載のように、ペロブスカイト構造を有する圧電体を用いた薄膜状の電気機械変換素子は広く使用されている。
例えば、上記薄膜状の電気機械変換素子をインクジェットヘッドに用いるときは、長期的に連続してパルス駆動させたときに圧電体の変位量が低下すると、インクジェットヘッドからのインク液滴の射出速度も経時的に変化してしまう。薄膜状の電気機械変換素子の耐久性を高める観点から、圧電体には、長期的な使用による変位量の変化が少ないことが求められる。
特に、本発明者らの知見によれば、ペロブスカイト構造を有する圧電体を高温環境下で長期的に連続してパルス駆動させたときに、変位量の低下が顕著である。
つまり、室温駆動ではPZTの膜特性が所望のインク吐出量やインク吐出時の吐出速度を確保できるが、高粘度のインクを射出するためにインクを加熱した際には、電気機械変換層も加熱され、50℃以上の高温では長期的に連続してパルス駆動すると圧電性が低下し、十分な射出性能を確保できないという問題があることが分かった。
特開2016-36006号公報 特開2005-228838号公報 特開2004-47928号公報 特開2004-186646号公報 特開2005-119166号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高温環境下で長期的に連続してパルス駆動させたときの、圧電体の変位量の経時的な低下が抑制された電気機械変換素子、その製造方法及び当該電気機械変換素子を具備する液体吐出ヘッドを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、第1電極、第1高温耐久層、電気機械変換層、第2高温耐久層及び第2電極をこの順で備える電気機械変換素子において、前記電気機械変換層が、ペロブスカイト型結晶を含有し、かつ当該結晶が、(001)面が優先配向している場合、課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基板上に設けられた第1電極、電気機械変換層及び第2電極を備える電気機械変換素子であって、
第1電極と電気機械変換層との間に金属酸化物を含有する第1高温耐久層、及び電気機械変換層と第2電極との間に金属酸化物を含有する第2高温耐久層を備え、
前記電気機械変換層がペロブスカイト型結晶を含有し、
前記電気機械変換層のX線回析測定における、(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、
{I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上であり、
50℃における残留分極をPr(50℃)[μC/cm 2 ]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm 2 ]としたとき、下記式1を満足することを特徴とする電気機械変換素子。
(式1):Pr(50℃)/Pr(20℃)≧1.00
2.基板上に設けられた第1電極、電気機械変換層及び第2電極を備える電気機械変換素子であって、
第1電極と電気機械変換層との間に金属酸化物を含有する第1高温耐久層、及び電気機械変換層と第2電極との間に金属酸化物を含有する第2高温耐久層を備え、
前記電気機械変換層がペロブスカイト型結晶を含有し、
前記電気機械変換層のX線回析測定における、(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、
{I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上であり、
85℃における残留分極をPr(85℃)[μC/cm 2 ]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm 2 ]としたとき、下記式2を満足することを特徴とする電気機械変換素子。
(式2):Pr(85℃)/Pr(20℃)≧0.90
.前記第1高温耐久層及び第2高温耐久層に含有される前記金属酸化物が、それぞれ独立に、チタン酸ランタン鉛(PLT)、ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)、ニッケル酸ランタン(LNO)又はチタン酸鉛(PT)を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の電気機械変換素子。
.前記ペロブスカイト型結晶が、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含有することを特徴とする第1項からまでのいずれか一項に記載の電気機械変換素子。
.前記第1高温耐久層及び第2高温耐久層の比誘電率が、ともに前記電気機械変換層の比誘電率よりも小さいことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電気機械変換素子。
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の電気機械変換素子を製造する電気機械変換素子の製造方法であって、
前記第1高温耐久層上に電気機械変換層を成膜する電気機械変換層成膜工程を有し、
当該電気機械変換層成膜工程において、電気機械変換層を500℃以上に加熱してその後300℃以下に冷却する工程を2回以上繰り返して電気機械変換層を成膜することを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の電気機械変換素子を具備することを特徴とする液体吐出ヘッド。
本発明の上記手段により、高温環境下で長期的に連続してパルス駆動させたときの、圧電体の変位量の経時的な低下が抑制された電気機械変換素子、その製造方法及び当該電気機械変換素子を具備する液体吐出ヘッドを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
圧電性を発現するメカニズムとしてはペロブスカイト構造のBサイトの分極の大きさに依ることが一般的に知られている。分極の度合いを示すのが残留分極Prの値の大きさであり、より大きい値を示す方が高い圧電性を発現する。
特に電圧の印加方向と同じ向きの(001)面に優先配向をしている場合に、圧電定数d31が大きくなり、効率的な電気・機械変換素子として機能する。異相である(101)や(111)方向は電界の印加方向とは一致しないため、圧電特性にあまり寄与しない。
大きな電界を加えた場合は分極の回転等による電歪効果で圧電性を発現するが、繰り返し分極の移動を行うことになり分極の疲労等を招き、連続的な駆動では圧電性のロスを生じる。特に高温条件下での駆動においては、分極の劣化が進みやすいと考えられている。したがって、分極の回転等がない(001)面の配向のみの方が連続駆動での劣化に対しても有利になると推察される。
また、分極の劣化を起こす他の要因として、電極界面での圧電体の劣化が考えられている。メカニズムとしてはまだ完全には解明されていないが、例えば素子のパルス駆動等で電荷のやり取りを行うことにより、ペロブスカイト構造中の酸素欠陥等が生じて分極の劣化が進行し、残留分極Prの値が低下していくようなモデルが考えられる。さらに、高温での駆動条件下では、電極に含まれる一部の元素の拡散が進むことも圧電体の劣化要因として考えられる。
したがって、電気機械変換層と電極との界面の相互作用を緩和し、電気機械変換層の分極の劣化が抑制される高温耐久層の導入が、高温の駆動条件下で顕著な効果を示すと推定される。
本発明の電気機械変換素子の断面図の一例 本発明の電気機械変換素子の分極-電界ヒステリシスの一例 本発明と比較例の電気機械変換素子における残留分極の温度依存性の一例 本発明の液体吐出ヘッドの断面図の一例 本発明の液体吐出ヘッドを搭載した画像記録装置の一例 本発明の液体吐出ヘッドを搭載した画像記録装置の一例 電気機械変換層の加熱冷却サイクル数とXRD測定における(001)面の配向度(%)の一例 印加したパルス数と、射出速度との関係を示すグラフ
本発明の電気機械変換素子は、基板上に設けられた第1電極、電気機械変換層及び第2電極を備える電気機械変換素子であって、第1電極と電気機械変換層との間に金属酸化物を含有する第1高温耐久層、及び電気機械変換層と第2電極との間に金属酸化物を含有する第2高温耐久層を備え、前記電気機械変換層がペロブスカイト型結晶を含有し、前記電気機械変換層のX線回析測定における、(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、{I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上であることを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記第1高温耐久層及び第2高温耐久層に含有される前記金属酸化物が、それぞれ独立に、チタン酸ランタン鉛(PLT)、ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)、ニッケル酸ランタン(LNO)又はチタン酸鉛(PT)を含有することが好ましい。これにより、上下電極とそれぞれの高温耐久層との良好な密着性が得られる。また、電気機械変換層とのバッファー層として連続駆動時に電気機械変換層の酸素欠陥等の劣化を防ぐことにより、分極の維持が図れ、残留分極Prの低下を防ぐことができる。
また、下部電極上の第1高温耐久層は電気機械変換層の結晶成長を促進するシード層の機能も有し、電気機械変換層の良好な結晶性と圧電特性を提供する効果がある。上部電極との界面の第2高温耐久層は上記の効果に加え、結晶性が非連続になるため結晶粒界からの電流リークパスが起きにくくなる効果がある。
本発明の実施態様としては、前記ペロブスカイト型結晶が、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含有することが、高い圧電特性を発現できるため、高い変位量を得ることが可能で高い性能を有する電気機械変換素子となることから好ましい。
さらに、本発明においては、50℃における残留分極をPr(50℃)[μC/cm2]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm2]としたとき、前記式1を満足することが、分極が大きい状態で維持されるため、高い圧電特性を発生することから好ましい。
本発明の実施態様としては、85℃における残留分極をPr(85℃)[μC/cm2]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm2]としたとき、前記式2を満足することが、分極の低下が抑えられ、圧電特性の低下も少ない
から好ましい。
また、第1高温耐久層及び第2高温耐久層の比誘電率が、ともに前記電気機械変換層の比誘電率よりも小さいことが好ましい。電気機械変換層のみで形成された電気機械変換素子と比較して、容量が低下する効果があり、駆動時の負荷が下げられ駆動寿命の劣化を緩和できる効果を有する。
さらに、本発明の電気機械変換素子を製造する電気機械変換素子の製造方法としては、前記第1高温上に電気機械変換層を成膜する電気機械変換層成膜工程を有し、当該電気機械変換層成膜工程において、電気機械変換層を500℃以上に加熱してその後300℃以下に冷却する工程を2回以上繰り返して電気機械変換層を成膜する態様の製造方法であることが、(001)面の配向度を向上させ、単一配向の結晶性が高い電気機械変換層を提供できることから好ましい。
本発明の電気機械変換素子は、液体吐出ヘッドに好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《電気機械変換素子》
本発明の電気機械変換素子は、基板上に設けられた第1電極、電気機械変換層及び第2電極を備える電気機械変換素子であって、第1電極と電気機械変換層との間に金属酸化物を含有する第1高温耐久層、及び電気機械変換層と第2電極との間に金属酸化物を含有する第2高温耐久層を備え、前記電気機械変換層がペロブスカイト型結晶を含有し、前記電気機械変換層のX線回析測定における、(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、{I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上であることを特徴とする。
図1は、本発明の電気機械変換素子の断面図の一例である。電気機械変換素子1は、基板2上に、第1電極3、第1高温耐久層4、電気機械変換層5、第2高温耐久層6及び第2電極7をこの順で備える。本発明においては、前記電気機械変換層が、ペロブスカイト型結晶を含有し、かつ(001)面の面配向度が99.0%以上である。
このような構成により、高温環境下で長期的に連続してパルス駆動させたときの、圧電体の変位量の経時的な低下が抑制された電気機械変換素子を得ることができる。
[電気機械変換層]
本発明においては、前記電気機械変換層は、ペロブスカイト型結晶を含有し、かつ(001)面の面配向度が99.0%以上である。さらに前記ペロブスカイト型結晶が、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含有することが好ましい。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含有することにより、(001)面の配向度を向上させ、単一配向の結晶性が高い電気機械変換層が得られる。PZTの含有量は、90質量%以上が好ましく、ペロブスカイト型結晶がPZTから構成されていることがより好ましい。
PZTは、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、酸素(O)からなる結晶を用いる。PZTは、ABO3型のペロブスカイト構造となるときに良好な圧電効果を発現するため、ペロブスカイトの結晶配向を単相にすることが好ましい。パイロクロア構造の結晶や非晶質な構造を取る結晶構造では圧電性を示さないので、良好な圧電特性を発現する阻害要因となってしまい好ましくない。PZTの成膜時は、Pb蒸発が起きやすいため、ターゲットの過剰鉛組成を制御したり、最適な成膜条件を設定してペロブスカイト結晶を得ることが求められる。
ABO3型のペロブスカイト構造を取るPZTの結晶の単位格子の形は、Bサイトに入る原子であるTiとZrとの比率によって変化する。つまり、Tiが多い場合には、PZTの結晶格子は正方晶となり、Zrが多い場合には、PZTの結晶格子は菱面体晶となる。ZrとTiとのモル比が52:48付近では、これらの結晶構造が両方とも存在し、このような組成比を採る相境界のことを、MPB(Morphotropic Phase Boundary)と呼ぶ。このMPB組成では、圧電定数、分極値、誘電率といった圧電特性の極大が得られることから、MPB組成の圧電体が積極的に利用されている。
ここで、PZTをPb(ZrxTi1-x)O3で表したとき、x=0.50~0.58の範囲内であり、MPB組成又はそれに近い組成となっている。これにより、MPB以外の組成に比べて高い圧電特性(例えば高い圧電定数d31)を得ることができる。特に、ZrとTiとのモル比は、MPB組成となる52:48付近であることが望ましい。
また、本発明において、電気機械変換層5は、ペロブスカイト相の(001)面を主配向としている。すなわち。電気機械変換層のX線回析測定における、(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、{I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上である。配向度を向上させるためには、後述するように、電気機械変換層の成膜工程において、電気機械変換層を500℃以上に加熱してその後300℃以下に冷却する工程を2回以上繰り返して成膜することが好ましい。
(XRD測定における(001)面の配向度)
電気機械変換層のX線回析測定は、以下の条件で行う。
電気機械変換層5において、X線回折(XRD:X-ray diffraction)の2θ/θ測定によって得られる、ペロブスカイト相の(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、{I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上である。
測定装置として、Rigaku社製X線回折装置 RINT-TTR IIIを用い、以下の条件で測定することができる。
Out-of-plane測定:測定角度範囲10-110°(001)-(004)
(残留分極)
上記した(001)面の配向度を向上させ、単一配向の結晶性が高い電気機械変換層を有する電気機械変換素子は、高温下においても残留分極の低下を少なくすることができ、高温環境下で長期的に連続してパルス駆動させたときの、圧電体の変位量の経時的な低下を抑制することができる。
本発明の電気機械変換素子は、50℃における残留分極をPr(50℃)[μC/cm2]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm2]としたとき、下記式1を満足することが好ましい。
(式1):Pr(50℃)/Pr(20℃)≧1.00
さらに、85℃における残留分極をPr(85℃)[μC/cm2]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm2]としたとき、下記式2を満足することが好ましい。
(式2):Pr(85℃)/Pr(20℃)≧0.90
図2は、本発明の電気機械変換素子の分極-電界ヒステリシスの一例である。一般的に電気機械素子において分極(P)と電界(E)との関係を示す分極-電界ヒステリシス(以下、P-Eヒステリシスともいう。)は、縦軸(E=0V)に対して正電界側と負電界側とで分極(絶対値)がほぼ対称となるような形状となる。しかし、電気機械変換層にドナーを添加した場合はP-Eヒステリシスが+又は―側にシフトすることが知られている。またメモリ素子では分極反転を繰り返しながら長時間使用した場合もヒステリシスのシフトが起こることが知られている。その場合電極を変えた場合にシフト量が緩和されることが知られているように、電極との界面の状態によってもヒステリシスの変化が起こる。P-Eヒステリシスの縦軸(E=0V)と交わる点を残留分極Prといい、横軸(P=0μC/cm2)と交わる点を抗電界という。
ここで圧電特性の大きさに関係するのがPrであり、Prが大きい方が圧電特性が大きいといえるので、非対称のヒステリシスにおいてもPrが大きいことが電気機械変換素子としての性能上重要である。本発明に係る電気機械変換層を第1電極及び第2電極で挟んで電気機械変換素子を構成した場合において、第1電極をコモン電極とし、第2電極を個別電極として使い、第2電極に+の電界を印加して駆動を行う場合は、図2のような非対称なP-Eヒステリシスを有する電気機械変換素子となり、+の電界側のPr(+Pr)をPrとして定義した場合、使用する温度によってPrが変化することが分かる。
本発明においては高温耐久層の効果により55℃においてPrの劣化がみられず、85℃の高温領域においてもほぼ同等のPrを維持している.したがって、式1及び式2で、規定したように、高温においても残留分極の低下が少ない特性を有することが、高温領域での使用においても十分耐久性が保たれることを示唆していると考えられる。
図3は、本発明と比較例の電気機械変換素子における残留分極の温度依存性の一例である。実施例で後述するが、高温領域においても、室温(20℃)とほぼ同等の残留分極Prを維持している。
残留分極Prは、ラジアントテクノロジー社製の強誘電体テスター プレシジョンLCIIを用いて、-120~+120kV/cm、周波数1kHz、三角波を印可してP-Eヒステリシスを測定して求めることができる。
[第1高温耐久層及び第2高温耐久層]
第1高温耐久層及び第2高温耐久層に含有される前記金属酸化物が、それぞれ独立に、チタン酸ランタン鉛(PLT)、ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)、ニッケル酸ランタン(LNO)又はチタン酸鉛(PT)を含有することが好ましい。これにより、第1電極及び第2電極と、それぞれの高温耐久層との良好な密着性が得られる。また、電気機械変換層とのバッファー層として連続駆動時に電気機械変換層の酸素欠陥等の劣化を防ぐことにより、分極の維持が図れ、残留分極Prの低下を防ぐことができる。
前記金属酸化物は電気機械変換層のPZTのシード層や配向制御層のバッファー層として用いる材料を選択して用いることが好ましい。PZT層との親和性が高いため、界面での接合状態が良好で高い密着性が得られる。そのため振動時の機械的ロスがなく、また電荷のやり取りでの電気的な損失もないため、耐久性や素子の性能を損なうことなく機能する。明確にはわかっていないが、PZTの駆動での第1、第2電極間との界面との相互作用で生じる酸素欠陥等を第1高温耐久層及び第2高温耐久層があることで緩和でき、駆動時の劣化が抑制されると考えられている。
さらに前記金属酸化物はPZTと比較して比誘電率が低いことが好ましい。これにより電気機械変換層のみの場合と比較して、電気機械変換素子の電極に挟まれたすべての層の静電容量を下げることが可能で、パルス駆動時に生じる変位電流が小さくなることにより、発熱等の発生が少なくなり負荷が小さくなる。また電荷のやりとりも少なくなるので界面の劣化等を抑える効果が見込まれる。このため駆動時の負荷が下がり、長時間の駆動では有利に働き、劣化を抑制できる。
つまり、第1高温耐久層及び第2高温耐久層の比誘電率が、ともに電気機械変換層の比誘電率よりも小さいことが好ましい。
比誘電率の測定は、20℃で、測定器として、横河・ヒューレットパッカード社製インピーダンスアナライザー4194Aを用い、容量測定を1kHz、1Vの条件で行い、素子の面積と厚さから換算して求めることができる。
なお、第1及び第2高温耐久層は、絶縁体であることは必須ではなく、導電性の金属酸化物を選択することも可能である。
第1高温耐久層及び第2高温耐久層ともに圧電性能は低いので、厚く形成すると変位量が低下するため、層の厚さは、0.05~0.5μmの範囲内であることが好ましく、0.1~0.3μmの範囲内であることがより好ましい。
第1高温耐久層及び第2高温耐久層はシ-ド層又はバッファー層ともいい、電気機械変換層と、第1、第2電極との間に設けられ、電気機械変換層と電極との接着性を向上させる役割も有する。
ここでいうシ-ド層とバッファー層は、どちらも基本的に密着性の向上や圧電体の結晶成長を助長する役割を持つ。一般的にシ-ド層は厚さが薄く、密着性を向上させる役割を主に持ち、配向性は金属の酸化物が膜表面に島状に析出して、それが配向成長の核となるような役割になる。バッファー層は配向制御層として圧電体の配向成長をより精度よく制御するために、自身も配向性を有している構成となっている。
特に、第1高温耐久層は電気機械変換層の配向を制御するのに非常に重要な役割を果たす。最適な第1高温耐久層を用いることにより(101)面及び(111)面等の配向を減らすことができる。
高温耐久層は単層ではなく積層構成を取る場合もある。LNOやSROは導電性を有する金属酸化物のため、第1電極上にLNOを形成してその上にPLTを積層する構成も高温耐久層として機能する。この場合PLTはバッファー層としての機能をより発揮できるため圧電体薄膜の良好な結晶配向性に寄与する。同様に第2高温耐久層も第2電極と接する層を導電性金属酸化物層にした積層構成を取りうる。
また、絶縁体と導電性の金属酸化物の積層構成を取ることも可能である。
[第1電極及び第2電極]
第1電極3は、第2電極7との間で電気機械変換層5を厚さ方向から挟むように設けられている。第1電極3及び第2電極7は、公知の導電性材料が用いられ、例えば、白金(Pt)、プラチナ(Pt)及びチタン(Ti)からなる層であることが好ましい。
Ti層の厚さは例えば0.02μm程度であり、Pt層の厚さは例えば0.1~0.2μm程度である。なお、Pt層の代わりに、イリジウム(Ir)からなる層を形成してもよい。
[基板]
基板は、厚さが例えば250~750μm程度の単結晶Si(シリコン)単体からなる半導体基板又はSOI(Silicon on Insulator)基板で構成することができる。基板は、他の材料で構成されていてもよいが、Si基板又は、SOI(Silicon on Insulator)基板で構成されることが望ましい。
[その他の層]
上記の層に加えて、例えば密着性を上げるために、中間層等の他の層を必要に応じ設けることもできる。
《電気機械変換素子の製造方法》
本発明の電気機械変換素子の製造方法は、第1高温耐久層上に電気機械変換層を成膜する電気機械変換層成膜工程を有し、当該電気機械変換層成膜工程において、電気機械変換層を500℃以上に加熱してその後300℃以下に冷却する工程を2回以上繰り返して電気機械変換層を成膜することを特徴とする。
[電気機械変換層]
本発明では所定の厚さの電気機械変換層を形成するのに、分割して成膜することを特徴とする。各々の層の厚さは均等に配分する必要はないが、各層の厚さの比が極端に変わると厚さ方向の結晶成長に差が出る可能性があるので、注意が必要である。一般的に基板加熱を行いながら結晶成長を行う成膜方法では、厚さが厚く、連続的に堆積する場合に装置内面の変動、特に温度変化の影響等を受けて結晶成長に擾乱が起こり、異相である(101)面等の配向が起こりやすくなる。厚さが厚い場合は成膜時間が長くなるのでその傾向が表れやすくなる。また基板加熱を行いながら一度に成膜を行って取り出す場合には成膜中に入った膜応力を一挙に開放するため、クラックの発生や内部応力の大きな膜ができてしまう。
これに対して分割成膜を行うことで、各層の結晶成長が装置内の変動を受けにくいため異相の成長がなく、単相で良好な結晶成長状態を形成することができる。また500℃以上で加熱することにより、(001)面の成長を形成することができる。さらに膜内部に蓄積した応力の解放を行うために冷却する工程を行う。
圧電特性を損なわず行う方法として、電気機械変換層を500℃以上に加熱してその後300℃以下に冷却する工程が必要である。高温で成膜したことにより成膜中に分極が発現するが、300℃以下に冷却することでPZTの場合はキューリー点以下の温度まで下げることで分極の固定ができる効果があるためであると考えている。
また、デバイス化した時の信頼性を向上させるという点より、分割成膜を行う場合に洗浄工程を有することがより好ましい。洗浄工程においては、成膜ごとに洗浄することが好ましい。洗浄には、溶液を用いる場合、アルカリ系の洗浄剤、例えば柴田科学社製のクリーンエースを用いて、成膜中に混入した異物をブラシ洗浄等の物理的な洗浄をメインとした洗浄方法により異物の除去を行うことにより、次の成膜で除去した部分の欠陥を埋めることができる。一度に所定成膜まで行った場合、成膜中に混入した異物が成膜後に脱落した場合、空隙部が生じてその部分の実効厚さが薄くなることとなる。その場合電圧印加時にリーク電流が流れ、素子破壊が起こる。分割成膜を行うことで少なくとも最低限の実効厚さを確保することが可能となるため、素子の信頼性を高い水準で確保することが可能となる。
具体的には、例えば、基板上に設けられた第1高温耐久層を温度580℃に加熱しながら2000Wの高周波電力を印加して所定の厚さに電気機械変換層を成膜する。所望の厚さが、例えば3.0μmだとすると、1回の分割成膜の場合(電気機械変換層を2層に分割する場合)は、まず1.5μmの成膜を行い、少なくとも300℃以下まで冷却を行ったのちにチャンバーより取り出す。このあと成膜時の異物を除去するために、ブラシ又はウエスを用いた湿式の擦り洗浄を行い、リンス後に基板を十分乾燥させることが好ましい。再び基板をチャンバーに入れ、最初の成膜条件で成膜を実施する。厚さは同様に1.5μm追加で積層して3.0μmとなり電気機械変換層を完成させることができる。なお2回分割成膜以上の場合は同様に所定の厚さ成膜後に基板を取り出し、洗浄を行い、さらに同じサイクルを繰り返すことによってトータル3.0μmの電気機械変換層を完成させる。なお分割した厚さは、適宜変更することができる。
[第1高温耐久層及び第2高温耐久層]
第1高温耐久層は第1電極上に形成され、チタン酸ランタン鉛(PLT)、ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)、ニッケル酸ランタン(LNO)又はチタン酸鉛(PT)等が用いられることが好ましい。この上に形成される電気機械変換層の結晶配向のためのシード層としての機能、又は配向性を制御するためのバッファー層として配向制御膜の機能を有する。電気機械変換層を(001)面が優先配向されるように成膜条件等が調整される。厚さは0.05~0.3μm、好適には従って配向性を有するか又は0.1~0.2μmである。
第2高温耐久層は電気機械変換層上に形成され、チタン酸ランタン鉛(PLT)、ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)、ニッケル酸ランタン(LNO)又はチタン酸鉛(PT)等が第1高温耐久層とは独立に用いられることが好ましい。配向性の膜が好ましいが、第1高温耐久層とは異なり、配向性よりは電気機械変換層と第2電極との密着性や膜界面の拡散等の相互作用を勘案して選ばれる。
第1高温耐久層及び第2高温耐久層は、公知の方法、例えば、蒸着法、スパッタ法等の方法により形成することができる
[第1電極及び第2電極]
第1電極は、導電性材料が用いられ、例えば、白金(Pt)ターゲットを用い、真空度1Paのアルゴンガス中において基板上に400℃に加熱しながら200Wの高周波電力を12分間印加して成膜することができる。
第2電極も第1電極と同様にして第2高温耐久層上に成膜することができる。
《液体吐出ヘッド》
次に、本発明の電気機械変換素子を備えた液体吐出ヘッドについて説明する。
図4は、本発明の液体吐出ヘッドの断面図の一例である。ノズルを複数個、並列配置した液体吐出ヘッドを示している。
本発明の液体吐出ヘッドは、液体としてインク液滴を吐出するノズル52と、該ノズル52が連通する加圧室51と、該加圧室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液体吐出ヘッドであって、吐出駆動手段は、加圧室51の基板(壁基板)54の一部を構成する振動板55を備えた電気機械変換素子62である。加圧室51は、基板54の一部を裏面からエッチングすることにより除去し、ノズル52が設けられたノズル板53を基板54に接合することにより形成される。
電気機械変換素子62は、基板(壁基板)54上に、振動板55、密着層56、第1電極57、第1高温耐久層58、電気機械変換層59、第2高温耐久層60及び第2電極61を順次積層した後、フォトリソグラフィーによりパターニングすることにより形成される。
このようにして作製される液体吐出ヘッドは、簡便な製造工程で作製できる。また、バルクセラミックスと同等の性能を持つ本発明の電気機械変換素子を備えているため、良好な吐出特性を得ることができる。液体吐出ヘッドは、インクジェットインクを吐出するインクジェットヘッドとして好適に用いることができる。
なお、図中、圧力室へインク等の液体を供給するための液体供給手段、流路、及び流路に設定される流体抵抗等についての記述は省略する。
《画像記録装置》
次に、本発明の液体吐出ヘッドを搭載した画像記録装置の一例について図5及び図6を参照して説明する。図5に画像記録装置の斜視図を示す。図6に、画像記録装置の機構部の側面図を示す。
画像記録装置81は、本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明を実施した液体吐出ヘッド94、液体吐出ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納し、本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明の液体吐出ヘッド94を、複数のノズルを主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向が下方となるように装着している。またキャリッジ93には液体吐出ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
〔実施例1〕
《電気機械変換素子の作製》
電気機械変換素子は、基板上に、第1電極、第1高温耐久層、電気機械変換層、第2高温耐久層、第2電極をスパッタ法によって順次成膜して作製した。
〈電気機械変換素子1-1の作製〉
(第1電極の形成)
第1電極は、Irターゲットを用い、真空度1Paのアルゴン酸素の混合ガス中において基板(シリコンウエハ)を350℃に加熱しながら800WのDC電源電力を印加して成膜した。第1電極は、100nmの厚さに形成した。
(第1高温耐久層の形成)
第1高温耐久層は、鉛(Pb)、ランタン(La)、及びチタン(Ti)を少なくとも含有する金属酸化物(AサイトのPbを10%Laに置換した(Pb・La)TiO3からなる)のペロブスカイト型構造を有するPLTターゲットを用いて真空度1Paのアルゴン酸素の混合ガス中において基板を550℃に加熱しながら2000WのRF電源電力を印加して第1電極上に成膜した。100nmの厚さに形成した。
PLTは、Pbが化学量論組成より5%多い過剰鉛組成であり、前記条件で形成した場合の比誘電率は180であった。
(電気機械変換層の形成)
電気機械変換層はスパッタ装置を用いて第1高温耐久層上に成膜した。ターゲットには、化学量論組成からPb量の多いPZT(Bサイトに入るジルコニウム(Zr)とチタン(Ti)との組成比が、Zr/Ti=52/48で、Aサイトに入るPbが20モル%過剰)の焼結体ターゲットを用いた。真空度0.5Paのアルゴンと酸素との混合雰囲気中において、基板を温度580℃に加熱しながら2000Wの高周波電力を印加して成膜して3.0μmの電気機械変換層を完成させた。
PZTは、Pbが化学量論組成より5%多い過剰鉛組成であり、ZrとTiの組成比はターゲットと同じ52/48であった。前記条件で形成した場合の比誘電率は950であった。
(第2高温耐久層の形成)
第2高温耐久層は、鉛(Pb)、ランタン(La)、及びチタン(Ti)を少なくとも含有する金属酸化物(AサイトのPbを10%Laに置換した(Pb・La)TiO3からなる)のペロブスカイト型構造を有するPLTターゲットを用いて真空度1Paのアルゴン酸素の混合ガス中において上記電気機械変換層まで形成した基板を第1高温耐久層と同様にして、550℃に加熱しながら2000WのRF電源電力を印加して成膜し、200nmの厚さに形成した。
(第2電極の形成)
第2電極は、Cuターゲットを用い、真空度0.5Paのアルゴンガス中において1000WのDC電源電力を印加して第2高温耐久層上に成膜した。第2電極の厚さは1000nmの厚さに形成した。
前記電気機械変換層の成膜においては、1回で目的の厚さである3.0μmを前記成膜条件により連続的に成膜を行い完成させた。
このようにして、電気機械変換素子1-1を作製した。
〈電気機械変換素子2-1~4-1の作製〉
電気機械変換素子1-1における電気機械変換層の作製において、目的の厚さに一度に成膜せずに所望の厚さまで成膜した後に、一度基板温度を室温(20℃)まで下げた後、前記の洗浄、乾燥を行った後、加熱成膜→冷却→洗浄、乾燥のサイクルで成膜を行って、トータルで同じ厚さの電気機械変換層を形成した。
その他は電気機械変換素子1-1と同様にして電気機械変換素子2-1~4-1を作製した。
電気機械変換素子2-1では、トータルの厚さ3.0μmを2層に等分して成膜(1分割成膜)した。具体的には、1回の分割成膜の場合はまず1.5μmの成膜を行い、20℃まで冷却を行ったのちにチャンバーより取り出した。このあと成膜時の異物を除去するために、ブラシを用いた湿式の擦り洗浄を行った。洗浄液としてアルカリ系洗浄液であるクリーンエース(アズワン株式会社製)の5%希釈液を用い、洗浄後には純水でリンス後に基板を十分乾燥させた。その後再び基板をチャンバーに入れ、最初の成膜条件で成膜を実施する。厚さは同様に1.5μm追加で積層して3.0μmとなりの電気機械変換層を完成させた。
電気機械変換素子3-1では、トータルの厚さ3.0μmを3層に等分して成膜(2分割成膜)した。
電気機械変換素子4-1では、トータルの厚さ3.0μmを4層に等分して成膜(3分割成膜)した。
〈電気機械変換素子5-1の作製〉
電気機械変換素子1-1の作製において、第1及び第2高温耐久層を形成しないで第1電極及び第2電極間に電気機械変換層のみを形成しそのほかは、電気機械変換素子1-1の作製と同様にして電気機械変換素子5-1を作製した。
電気機械変換素子1-1~5-1のそれぞれについて、それぞれの電気機械変換素子の作製と同一条件で、それぞれ電気機械変換素子をさらに2個ずつ、計3個作成した。
つまり電気機械変換素子1-1~1-3、2-1~2-3、3-1~3-3、4-1~4-3及び5-1~5-3の、計15個の電気機械変換素子を作製した。
[配向度の評価]
得られた15個の電気機械変換素子について、XRD測定を行った。具体的には、Rigaku社製X線回折装置 RINT-TTR IIIを用いてOut-of-plane測定:測定角度範囲10-110°(001)-(004)回折から配向度を評価した。(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、{I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度を評価した。その結果を表Iに示す。
また、図7に、電気機械変換層の加熱冷却サイクル数(分割成膜)とXRD測定における(001)面の配向度(%)を示した。なお、図中、●は電気機械変換素子*-1、□は電気機械変換素子*-2及び△は電気機械変換素子*-3の配向度を示し、*は1~4を表す。
なお、電気機械変換素子1-1、2-1、3-1、4-1及び5-1については、(001)面、(101面)及び(111)面ピーク強度の詳細を以下の表IIに示した。
Figure 0007700802000001
Figure 0007700802000002
表1の電気機械変換素子1-1~4-3から分かるように、分割成膜を行うことによって、99.0%以上の配向度が得られることから、配向度の高い電気機械変換層を作製することが可能となることが分かる。また、第1及び第2高温耐久層を有しない電気機械変換素子5-1~5-3は、異相の成分、回折強度ともに増加し(001)面の配向度が下がることが分かる。
[実施例2]
(残留分極の温度依存性)
図3は、電気機械変換素子2-1(本発明)と電気機械変換素子5-1(比較例)の電気機械変換素子における残留分極の温度依存性を、前記した方法で測定したものである。本発明の電気機械変換素子は、50℃の高温になっても、室温に比べて残留分極が大きい。また、85℃における残留分極も室温に対して高い値を示し前述の式2を満たしている。
このように高温駆動時での残留分極の低下が少ないことから、高温駆動条件下でも圧電特性の劣化が抑制され、圧電体の変位量の経時的な低下が抑制されることが分かる。
[実施例3]
[アクチュエーター及びインクジェットヘッドの作製]
上記作製した電気機械変換素子1-1(比較例)、3-1(本発明)及び5-1(比較例)のそれぞれを用いて、振動板、圧力室を形成し、アクチュエーターを作製し、更に流路基板とノズル板を貼り合わせて図4に示す液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドとして作製した。
(アクチュエーターの1素子分の静電容量の評価)
各ノズルに対応するアクチュエーターの1素子分の静電容量を測定した。電気機械変換素子1-1、3-1及び5-1に対応するそれぞれの、アクチュエーターの1素子分の静電容量は、200pF、195pF及び285pFであった。
(連続駆動パルス駆動耐久試験)
上記電気機械変換素子1-1(比較)、3-1(本発明)及び5-1(比較)を有するインクジェットヘッドを図5及び図6に示す画像形成装置に搭載し、50℃の高温環境下で、初期速度が7m/secとなるように波形を調整して、60kHzのパルス駆動耐久試験を行った。図8は、各々のインクジェットヘッドにそれぞれに100億パルスの駆動電圧を印加したときの、印加したパルス数と、射出速度(初期速度に対する相対値)との関係を示すグラフである。
図8から明らかなように、電気機械変換素子3-1をインクジェットヘッドに用いて、高温環境下で連続射出したときの射出速度の経時的な低下が抑制されることが分かる。
本発明の電気機械変換素子は、高温環境下で長期的に連続してパルス駆動させたときの、圧電体の変位量の経時的な低下が抑制されるため、インクジェットインクを吐出する液体吐出ヘッドに好適に用いることができる。
1 電気機械変換素子
2 基板
3 第1電極
4 第1高温耐久層
5 電気機械変換層
6 第2高温耐久層
7 第2電極
51 加圧室
52 ノズル
53 ノズル板
54 基板(壁基板)
55 振動板
56 密着層
57 第1電極
58 第1高温耐久層
59 電気機械変換層
60 第2高温耐久層
61 第2電極
62 電気機械変換素子
81 画像記録装置
82 印字機構部
83 用紙
84 給紙カセット
85 手差しトレイ
86 排紙トレイ
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 液体吐出ヘッド
95 インクカートリッジ
97 主走査モーター
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
100 タイミングベルト
101 給紙ローラー
102 フリクションパッド
103 ガイド部材
104 搬送ローラー
105 搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モーター
109 印写受け部材
111 搬送コロ
112 拍車
113 排紙ローラー
114 拍車
115、116 ガイド部材
117 回復装置

Claims (7)

  1. 基板上に設けられた第1電極、電気機械変換層及び第2電極を備える電気機械変換素子であって、
    第1電極と電気機械変換層との間に金属酸化物を含有する第1高温耐久層、及び電気機械変換層と第2電極との間に金属酸化物を含有する第2高温耐久層を備え、
    前記電気機械変換層がペロブスカイト型結晶を含有し、
    前記電気機械変換層のX線回析測定における、(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、
    {I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上であり、
    50℃における残留分極をPr(50℃)[μC/cm 2 ]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm 2 ]としたとき、下記式1を満足することを特徴とする電気機械変換素子。
    (式1):Pr(50℃)/Pr(20℃)≧1.00
  2. 基板上に設けられた第1電極、電気機械変換層及び第2電極を備える電気機械変換素子であって、
    第1電極と電気機械変換層との間に金属酸化物を含有する第1高温耐久層、及び電気機械変換層と第2電極との間に金属酸化物を含有する第2高温耐久層を備え、
    前記電気機械変換層がペロブスカイト型結晶を含有し、
    前記電気機械変換層のX線回析測定における、(001)面、(101)面及び(111)面の各回折ピーク強度を、それぞれI(001)、I(101)及びI(111)としたとき、
    {I(001)/(I(001)+I(101)+I(111))}×100%で表される(001)面の配向度が99.0%以上であり、
    85℃における残留分極をPr(85℃)[μC/cm 2 ]、20℃における残留分極をPr(20℃)[μC/cm 2 ]としたとき、下記式2を満足することを特徴とする電気機械変換素子。
    (式2):Pr(85℃)/Pr(20℃)≧0.90
  3. 前記第1高温耐久層及び第2高温耐久層に含有される前記金属酸化物が、それぞれ独立に、チタン酸ランタン鉛(PLT)、ルテニウム酸ストロンチウム(SRO)、ニッケル酸ランタン(LNO)又はチタン酸鉛(PT)を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気機械変換素子。
  4. 前記ペロブスカイト型結晶が、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気機械変換素子。
  5. 前記第1高温耐久層及び第2高温耐久層の比誘電率が、ともに前記電気機械変換層の比誘電率よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電気機械変換素子。
  6. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電気機械変換素子を製造する電気機械変換素子の製造方法であって、
    前記第1高温耐久層上に電気機械変換層を成膜する電気機械変換層成膜工程を有し、
    当該電気機械変換層成膜工程において、電気機械変換層を500℃以上に加熱してその後300℃以下に冷却する工程を2回以上繰り返して電気機械変換層を成膜することを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
  7. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電気機械変換素子を具備することを特徴とする液体吐出ヘッド。
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