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JP7722011B2 - マイクロ流路チップ - Google Patents
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JP7722011B2 - マイクロ流路チップ - Google Patents

マイクロ流路チップ

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本開示は、マイクロ流路チップ及びその製造方法に関するものである。
近年、リソプロセスや厚膜プロセス技術を応用して、微細な反応場を形成し、数μLから数nL単位での検査を可能とする技術が提案されている。このような微細な反応場を利用した技術をμ-TAS(Micro Total Analysis system)という。
μ-TASは、遺伝子検査、染色体検査、細胞検査、医薬品開発などの領域や、バイオ技術、環境中の微量な物質検査、農作物等の飼育環境の調査、農作物の遺伝子検査などに応用される。μ-TAS技術の導入により、自動化、高速化、高精度化、低コスト、迅速性、環境インパクトの低減など、大きな効果を得られる。
μ-TASでは、多くの場合、基板上に形成されたマイクロメートルサイズの流路(マイクロ流路、マイクロチャンネル)が利用され、このような基板はチップ、マイクロチップ、マイクロ流路チップなどと呼ばれる。
従来、こうしたマイクロ流路チップは、例えば、ガラス、プラスチック、樹脂、金属などの複数の部材同士を接合させて作製される。一般的には、これらの部材以外の中間材を介在させて部材同士を接合する接合方法がある。ここで、中間材としては、いわゆる接着剤が使用される。この場合、一方の部材の表面(例えば基板の表面)に流路を形成した後に、流路を形成する壁部の表面に接着剤を塗布し、流路の蓋となる他方の部材を貼り合わせることで部材同士を接合してマイクロ流路チップを作製する。
例えば、特許文献1には、接着剤を介して接合する方法からなるマイクロ流路チップについて開示されている。
特開2007-240461号公報
特許文献1に開示されているような接着剤を介して部材同士を接合する方法で形成されるマイクロ流路チップにおいては、接着剤の成分がマイクロ流路内を流れる溶液中へ溶出し、これにより溶液の反応阻害が生じ得るといった問題がある。
このため、近年、接着剤を使用することなくマイクロ流路チップの蓋を形成すること、すなわち接着剤成分の流路内への溶出を防ぐことが求められている。
そこで、本開示は上記課題に鑑み、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップは、基部と、
前記基部上に流路を形成する隔壁部層と、前記隔壁部の前記基部とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記隔壁部と前記上蓋部との間に粘着層が設けられていないことを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップは、基部と、前記基部上に流路を形成する隔壁部と、前記隔壁層の前記基板とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記上蓋部と前記隔壁部とは互いに溶着していることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本開示のさらに他の態様に係るマイクロ流路チップは、マイクロ流路チップであって、流路と、前記流路の蓋となる上蓋部と、を備え、前記上蓋部の材料は、熱流動性を有する樹脂であり、前記流路の断面形状は、角丸であることを特徴とする。
また、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基部上に、感光性樹脂を塗工する工程と、塗工した前記感光性樹脂を露光する工程と、露光した前記感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基部上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部を加熱処理して前記感光性樹脂を流動させ、前記流路の上蓋部を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基部上に、第一の感光性樹脂を塗工する工程と、塗工した前記第一の感光性樹脂の上に、第二の感光性樹脂を塗工する工程と、前記第一の感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を露光する工程と、露光した前記第一感光性樹脂及び前記第二の感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基部上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部上の前記第二の感光性樹脂を加熱処理して該第二の感光性樹脂を流動させ、前記流路の上蓋部を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
本開示の態様によれば接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップを提供することができる。
本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す概略図であって、(a)は本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す平面模式図であり、(b)は本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。 本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの流路の断面形状の一例を示す断面模式図である。 本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの断面を拡大して示す断面模式図である。 本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本開示の第一実施形態に係る一の製造方法によるマイクロ流路チップの製造工程の一部を説明する図であって(a)は、基板上に塗工された樹脂材料を示す断面模式図であり、(b)は隔壁層の間に形成された溝部を示す断面模式図であり、(c)は一の製造方法によって作製されたマイクロ流路チップの一例を示す断面模式図である。 本開示の第一実施形態に係る他の製造方法によるマイクロ流路チップの製造工程を説明する図であって(a)は、基板上に塗工された樹脂材料を示す断面模式図であり、(b)は隔壁部の間に形成された溝部を示す断面模式図であり、(c)は一の製造方法によって作製されたマイクロ流路チップの一例を示す断面模式図である。 本開示の第一実施形態に係るさらに他の製造方法によるマイクロ流路チップの製造工程を説明する図であって(a)は、基板上に塗工された樹脂材料を示す断面模式図であり、(b)は隔壁部の間に形成された溝部を示す断面模式図であり、(c)は一の製造方法によって作製されたマイクロ流路チップの一例を示す断面模式図である。 本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップの流路の断面形状の一例を示す断面模式図である。 本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップの一の製造方法によるマイクロ流路チップの製造工程を説明する図であって(a)は流路パターンの一例を示す平面模式図であり、(b)は流路パターンの入力領域の断面模式図であり、(c)は流路パターンの流路領域の断面模式図であり、(d)は一の製造方法により作製されたマイクロ流路チップの平面模式図であり、(e)は一の製造方法により作製されたマイクロ流路チップの入力部の断面模式図であり、(f)は一の製造方法により作製されたマイクロ流路チップの流路部の断面模式図である。 (a)は実施例におけるマイクロ流路チップのポストベーク前の断面SEM図であり、(b)は実施例におけるマイクロ流路チップのポストベーク語の断面SEM図である。
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップについて説明する。なお、以下の説明では、マイクロ流路チップの基板側を「下」、マイクロ流路チップの基板側と反対側(蓋材側)を「上」として説明する場合がある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、マイクロ流路チップにおいて樹脂材料を加熱して流動させることによって流路部の蓋となる上蓋部を形成することで、接着剤を用いずに隔壁部上に上蓋を設けることが可能となることを見出した。これにより、本発明者らは、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップ及びその製造方法を発明するに至った。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
1.第一実施形態
(1.1)マイクロ流路チップの基本構成
図1は、本開示の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係るマイクロ流路チップ1の一構成例を説明するための概略図である。具体的には、図1(a)は本実施形態のマイクロ流路チップ1の平面概略図である。また、図1(b)は、図1(a)に示すA-A線でマイクロ流路チップ1を切断した断面を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、マイクロ流路チップ1は、流体(例えば液体)を導入するための入力部2と、入力部2から導入された流体が流れる流路部3と、流路部3から流体を排出するための出力部4とを備えている。マイクロ流路チップ1において、流路部3の上面は、上蓋層12に覆われており、入力部2および出力部4は、上蓋層12に設けられた貫通孔である。上蓋層12の詳細は後述する。
図1(a)では、透明性を有する上蓋層12を介して視認される流路部3を図示している。
マイクロ流路チップ1において、入力部2及び出力部4は、少なくとも1つ以上設けられていればよく、それぞれ複数個設けられていてもよい。またマイクロ流路チップ1において、流路部3は、複数設けられてもよいし、入力部2から導入された流体の合流や分離が可能な設計であってもよい。
ここで、マイクロ流路チップ1において、流路部3を構成する部材の詳細について説明する。図1(b)に示すように、マイクロ流路チップ1は、基板(基部の一例)10と、基板10上に流路を形成する隔壁層(隔壁部の一例)11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層(上蓋部の一例)12と、を備えている。
マイクロ流路チップ1において、入力部2から導入された流体が流れる流路部3は、基板10と隔壁層11と上蓋層12とに囲まれた領域である。流路部3は、基板10上に設けられた対向する隔壁層11によって画定され、基板10とは反対側を蓋材となる上蓋層12に覆われている。つまり、流路部3は、基板10、隔壁層11および上蓋層12で構成される空間である。上述のように、流路部3には、上蓋層12に設けられた入力部2(図1(a)参照)から流体が導入され、流路部3を流れた流体は出力部4から排出される。
詳しくは後述するが、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、隔壁層11と上蓋層12との間には、粘着層が設けられていない。本実施形態において、隔壁層11と上蓋層12とは互いに溶着している。ここで、粘着層とは接着剤を含有する層であって、複数の部材同士を貼り合わせるために用いられるものである。マイクロ流路チップ1は、隔壁層11と上蓋層12との間に粘着層を設けずに溶着(接合)することにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、図1(b)に示すように、隔壁層11と上蓋層12とは別体である。ここで、別体とは、例えば隔壁層11と上蓋層12とが異なる樹脂材料で形成されていることを示す。この場合、上蓋層12を形成する樹脂材料としては、隔壁層11に対してガラス転移温度や露光感度が異なる等、適宜、上蓋として好適な性質を持つものを選択することができる。また、本開示はこれに限られず、隔壁層11と上蓋層12とが積層構造を有し、隔壁層11と上蓋層12との界面が形成されていることを以て別体としてもよい。この場合、隔壁層11と上蓋層12とは同じ樹脂材料で形成されていてもよい。
(1.1.1)基板
基板10は、マイクロ流路チップ1の基礎となる部材であり、基板10上に設けられた隔壁層11によって流路部3が構成される。つまり、基板10および隔壁層11は、マイクロ流路チップ1の本体部といえる。
基板10は、透光性材料又は非透光性材料のいずれかによって形成することができる。例えば、流路部3内の状態(流体の状態)を光によって検出、観察する場合は、該光に対して透明性に優れる材料を用いることができる。透光性材料としては、樹脂又はガラス等を用いることができる。基板10を形成する透光性材料に用いる樹脂としては、マイクロ流路チップ1の本体部の形成に適しているという観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
また例えば、流路部3内の状態(流体の状態)を光によって検出、観察する必要がない場合は、非透光性材料を用いてもよい。非透光性材料としては、シリコンウエハ、銅板等が挙げられる。基板10の厚みは特に限定されないが、流路形成工程においてはある程度の剛性は必要となることから、10μm(0.01mm)以上10mm以下の範囲内が好ましい。
(1.1.2)隔壁層
隔壁層11は、基板上に設けられて、流路部3を形成する構成である。隔壁層11は、樹脂材料で形成することができる。隔壁層11の樹脂材料としては、例えば感光性樹脂を用いることができる。
隔壁層11を形成する感光性樹脂は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂ことが望ましい。当該感光性樹脂としては、液体レジスト又はドライフィルムレジスト等のフォトレジストを用いることができる。これらの感光性樹脂は、感光領域が溶解するポジ型、又は感光領域が不溶化するネガ型のいずれであってもよい。マイクロ流路チップ1における隔壁層11の形成に適する感光性樹脂組成物としては、アルカリ可溶性高分子と付加重合性モノマーと光重合開始剤とを含むラジカルネガ型の感光性樹脂を挙げることができる。例えば、感光性樹脂材料としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フェノールノボラック系樹脂、その他の感光性を有する樹脂を単独で又は複数混合あるいは共重合して用いることができる。
なお本実施形態においては、隔壁層11の樹脂材料は感光性樹脂に限定されるものではなく、例えば、シリコーンゴム(PDMS:ポリジメチルシロキサン)や、合成樹脂を用いてもよい。合成樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)などを用いることができる。隔壁層11の樹脂材料は、用途に応じて適宜選択されることが望ましい。
また、基板10上における隔壁層11の厚み、すなわち流路部3の高さは特に限定されないが、流路部3に導入される流体に含まれる解析・検査対象の物質(例えば、薬剤、菌、細胞、赤血球、白血球等)よりは流路部3の高さを大きくする必要がある。このため、隔壁層11の厚み、すなわち流路部3の高さ(深さ)は、1μm以上500μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上100μmの範囲内がより好ましく、40μm以上60μm以下の範囲内がさらに好ましい。
また同様に、解析・検査対象の物質よりは流路部3の幅を大きくする必要から、隔壁層11によって画定される流路部3の幅は、1μm以上500μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上100μmの範囲内がより好ましく、10μm以上30μm以下の範囲内がさらに好ましい。
また、隔壁層11により確定される流路長は、反応溶液の十分な反応時間を確保する必要から、10mm以上100mm以下の範囲内が好ましく、30mm以上70mm以下の範囲内がより好ましく、40mm以上60mm以下の範囲内がさらに好ましい。
(1.1.3)上蓋層
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は、図1(a)、図1(b)に示すように流路部3を覆う蓋材である。上述のように、上蓋層12は、隔壁層11の基板10とは反対側の面に設けられており、隔壁層11を挟んで基板10と対向している。より具体的には、図1(b)に示すように、断面視において上蓋層12は側端部が隔壁層11に支持され、中央領域が基板10と対向しており、該中央領域が流路部3の上部を画定している。
上蓋層12は、透光性材料又は非透光性材料のいずれかによって形成することができる。例えば、流路内の状態を光によって検出、観察する場合は、該光に対して透明性に優れる材料を用いることができる。透光性材料としては、樹脂を用いることができる。上蓋層12を形成する樹脂としては、隔壁層11に用いられるのと同様の感光性樹脂を使用することができる。
また、上蓋層12に用いる感光性樹脂は、熱流動性を有する樹脂である。上蓋層12の材料として熱流動性を有する感光性樹脂を用いることで、マイクロ流路チップ1において、接着剤を用いることなく上蓋層12の形成が可能となる。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また従来、接着剤による隔壁層と蓋部材との接合は、高度な装置や技術が必要となるため製造方法が複雑になっていた。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1では、上蓋層12の材料として、熱流動性を有する樹脂(本例では、感光性樹脂)を用いることにより従来よりも容易に隔壁層11上に上蓋層12を形成することができる。このため、製造方法の複雑化を抑制することができる。
熱流動性を有する感光性樹脂は、メルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)が1g/10min以上100g/10min(230℃)以下の範囲内であることが好ましい。これにより、後述する製造工程において、上蓋層12を容易に形成することができる。
また、詳しくは後述するが、上蓋層12は、隔壁層11上に形成された熱流動性を有する感光性樹脂を、加熱処理により流路部3上に流動(リフロー)させることで形成される。このため、図2に示すように、上蓋層12は、凹部120を有している。つまり、上蓋層12は、凹形状の領域を有している。具体的には、上蓋層12は、隔壁層11側から流路部3の中央部分に向かって厚みが薄くなっており、これにより、断面視において凹部120が形成される。
また、上蓋層12は、隔壁層11に対してガラス転移温度(Tg)が低い樹脂材料で形成されてもよい。例えば、上蓋層12は、隔壁層11に対してガラス転移温度が30℃から50℃の範囲で低くなっていてもよい。この場合、隔壁層11を形成する感光性樹脂は、上蓋層12を形成する感光性樹脂に対してガラス転移温度(Tg)が高いので、樹脂の流動はほとんど起こらない。このため、上蓋層12の形成時において隔壁層11に流動が起きて、流路パターンが変化することを抑制することができる。
また、上蓋層12のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上300℃以下の範囲内であることが好ましい。
また、上蓋層12は、露光感度が5μC/cm以上50μC/cm以下の範囲内であることが好ましい。
また、上蓋層12は、露光感度が隔壁層11と露光感度が異なっていてもよい。例えば、上蓋層12は隔壁層11に対して5μC/cm以上20μC/cm以下の範囲で露光感度が高くてもよい。
また例えば、上蓋層12は隔壁層11に対して5μC/cm以上20μC/cm以下の範囲で露光感度が低くてもよい。
このように、上蓋層12は隔壁層11に対して露光感度が高い又は低い構成であってもよい。
上蓋層12が隔壁層11と露光感度が異なっている場合、隔壁層11を形成する感光性樹脂に合わせた露光量を設定することで、隔壁層11を形成する感光性樹脂の開口幅、すなわち流路パターンの幅が十分大きく形成される。このため、上蓋層12の形成時に上蓋層用の樹脂材料を流動させる際に、隔壁層用の樹脂に流動が起こった場合も、隔壁層11を形成する感光性樹脂の開口幅を十分大きく形成できるため、流路部3として十分な空間を維持することができる。
(1.1.4)流路の構成
図3は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の流路部3の断面形状の一例を示す図である。本実施形態において、流路部3の断面形状が角丸であること(例えば、断面形状における流路部3の断面の各辺が円弧で連結されていること)が好ましい。これにより、流路部3における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させ、角部における検査対象物質の滞留を抑制することができる。
ここで、本実施形態における流路部3の断面形状について、図3を用いて説明する。図3は、角丸形状を有する流路部3の断面を模式的に示す拡大断面模式図である。図3に示すように、流路部3の断面形状が矩形である場合の仮想断面A1と角丸の断面形状を有する流路部3の断面とでは、面積が異なる。具体的には、図3に示すように流路部3の断面は四隅に円弧形状を有する。このため、流路部3の断面は、仮想角部A11,A12,A13,A14の面積の合計分だけ、仮想断面A1よりも面積が狭くなっている。
本実施形態において、角丸形状である流路部3の断面は、流路部3の断面の面積が、仮想断面A1の表面積の95%以上98%以下の範囲内であればよい。なお、図3では、流路部3の断面を角丸の四角形としたが、これに限られず、四角形以外(角丸の多角形)であってもよい。この場合も、流路部3の断面の面積が、角丸でない場合の仮想断面の95%以上98%以下の範囲内であればよい。
また、流路部3は、十点表面粗さRzが0.001μm以上0.03μm以下の範囲内であることが好ましい。ここで、流路部3の十点表面粗さRzは、隔壁層11の流路部3側の側面及び基板10の流路部3側の表面の粗さを示す。
十点表面粗さRzを上述の範囲内において適宜設計することにより、反応溶液や検査対象物、所望する検査条件に応じた検査を行うことができる。例えば、流路部3の表面粗さRzが0.001μm以上0.01μm以下の範囲内である場合、流路部3に導入される流体(例えば反応溶液)や検査対象物と流路部3の内面との接触を低減して、送液性(例えば、送液速度や流量)を向上することができる。
また、表面粗さRzが0.02μmより大きく0.03μm以下の範囲内である場合、送液速度を低減して流路部3に導入される流体や検査対象物質が流路部3内に留まる時間、すなわち反応時間を確保することができる。
また、表面粗さRzが0.01μmより大きく0.02μm以下の範囲内である場合、適度な送液速度と、流路部3内における流体や検査対象物質の反応時間の確保とを両立することができる。
また、流路部3の表面粗さは、マイクロ流路チップ1の製造時において、公知のエッチング法等により、適宜、制御することができる。
(1.2)マイクロ流路チップの製造方法
次に、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
ここでは、隔壁層11を感光性樹脂で形成する場合を例にとって説明する。
(ステップS1)
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、まず基板10上へ隔壁層11を形成するための隔壁用樹脂(第一の感光性樹脂の一例)を塗工する工程を行う。これにより、基板10上に隔壁層11を形成するための樹脂層を設ける。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、例えば基板10上に感光性樹脂による樹脂層(第一感光性樹脂層)を形成する。
基板10上への感光性樹脂層の形成方法は、例えば、基板10への感光性樹脂の塗工により行われる。塗工は、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、バーコーティングなどにより行われることができ、中でも膜厚制御性の観点からはスピンコーティングが好ましい。基板10上には、例えば液状、固体状、ゲル状、フィルム状など種々の形態の感光性樹脂を塗工することができる。中でも、液体レジストによって感光性樹脂層を形成することが好ましい。液体レジストは、流路パターンの特性に応じて、適宜、ポジ型、ネガ型のいずれかのレジストを使用すればよい。
また、基板10上には、樹脂層(例えば、感光性樹脂層)の厚み、すなわち隔壁層11の厚みが1μm以上500μm以下の範囲内となるように樹脂(例えば、感光性樹脂)を塗工すればよい。
(ステップS2)
基板10上に隔壁用樹脂による第一感光性樹脂層を形成すると、次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば、感光性樹脂)内に含まれる溶媒(溶剤)を除去する目的で加熱処理(プリベーク処理)する工程を行う。なお、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法において、プリベーク処理は必須の工程ではなく、適宜、樹脂の特性に合わせて最適な条件(温度、時間)で実施すればよい。例えば、基板10上の樹脂層が感光性樹脂である場合は、プリベーク温度、時間は感光性樹脂の特性に応じて、適宜、最適な条件で行う。基板と感光性樹脂との密着性を上げる目的で、必要に応じて、基板上にHMDS処理を行うことや薄膜の樹脂をコートしてもよい。
(ステップS3)
次に、第一感光性樹脂層上に上蓋層12を形成するための上蓋用樹脂(第二の感光性樹脂の一例)を塗工する工程を行う。これにより、プリベーク後の隔壁用樹脂上に上蓋層12を形成するための樹脂層を設ける。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、例えば基板10上に熱流動性を有する感光性樹脂による樹脂層(第二感光性樹脂層)を形成する。基板10上への第二感光性樹脂層の形成方法は、上記ステップS1における第一感光性樹脂層の形成方法と同様の方法を用いることができる。
(ステップS4)
次に、隔壁用樹脂による第一感光性樹脂層上に上蓋用樹脂による第二感光性樹脂層を形成すると、次に、第一感光性樹脂層上に塗工した上蓋用樹脂内に含まれる溶媒(溶剤)を除去する目的で加熱処理(プリベーク処理)する工程を行う。本工程におけるプリベーク処理は必須の工程ではなく、上記ステップS2のプリベーク処理と同様に、適宜、樹脂の特性に合わせて最適な条件(温度、時間)で実施すればよい。また、第一感光性樹脂層と第二感光性樹脂層との密着性を上げる目的で、必要に応じて、基板上にHMDS処理を行うことや薄膜の樹脂をコートしてもよい。これにより、基板10上に2層の感光性樹脂層が形成される。
上記ステップS1からステップS4に示すように、隔壁層11、上蓋層12を形成するための2層の感光性樹脂層(第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)は、接着剤を用いることなく溶着されている。つまり、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、隔壁層11と上蓋層12とは互いに溶着している。つまり、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、隔壁層11と上蓋層12とは中間部材(例えば、接着剤)を用いずに接合させることができる。これにより、接着剤成分の流路部3への流出を防ぐとともに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
なお、本実施形態では感光性樹脂を2層としているが、これに限定されることなく、3層以上であってもよい。
(ステップS5)
次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)を露光する工程を行う。具体的には、基板10上に塗工した感光性樹脂には、露光により流路パターンが描画される。露光は、例えば、紫外線を光源とした露光装置、レーザー描画装置により行うことができる。中でも、紫外線を光源としたプロキシミティ露光やコンタクト露光装置を用いた露光が好ましい。プロキシミティ露光装置の場合、マイクロ流路チップ1における流路パターン配列を有するフォトマスクを介して露光が行われる。フォトマスクはクロム及び酸化クロムの二層構造を遮光膜とするフォトマスクなどを使用すればよい。
基板10上に塗工された感光性樹脂(第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)がポジ型レジストの場合、露光領域が溶解して流路部3となり、未露光領域に残存する感光性樹脂が隔壁層11、上蓋層12となる。また、基板10上に塗工された感光性樹脂がネガ型レジストの場合、露光領域に残存する感光性樹脂が隔壁層11、上蓋層12となり、未露光領域が溶解して流路部3となる。このように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、フォトリソグラフィを用いて基板10上に流路部3を構成する隔壁層11を形成することができる。
なお、基板10上における樹脂層の形成に化学増幅型レジストなどを用いる場合には、露光により発生した酸の触媒反応を促すために、露光後にさらに加熱処理(ポストエクスポージャーベーク:PEB)を行うとよい。
(ステップS6)
次に、露光した感光性樹脂に対して現像を行い、流路パターンを形成する工程を行う。
現像は、例えば、スプレー、ディップ、パドル形式などの現像装置にて感光性樹脂と現像液の反応により行われる。現像液は、例えば炭酸ナトリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、有機溶剤などを用いることができる。現像液は感光性樹脂の特性に応じた最適なものを適宜使用すればよく、これらに限定されるものではない。また、濃度や現像処理時間は、感光性樹脂の特性に合わせて適宜最適な条件に調整することができる。
(ステップS7)
次に、洗浄により基板10上の樹脂層(感光性樹脂層)から現像に用いた現像液を完全に除去する工程を行う。洗浄は、例えば、スプレー、シャワー、浸漬形式などの洗浄装置によって行うことができる。洗浄水としては、例えば純水、イソプロピルアルコールなどから、現像処理に用いた現像液を除去するために最適な洗浄水を適宜使用すればよい。洗浄後はスピンドライヤ、IPAベーパドライヤ、自然乾燥などにより乾燥を行う。
この段階においても、隔壁層11上には、上蓋用樹脂による第二感光性樹脂層が残存している。
(ステップS8)
次に、流路パターン、すなわち流路部3を形成する隔壁層11および第二感光性樹脂層に対して加熱処理(ポストベーク)する工程を行う。このポストベーク処理により、現像や洗浄時の残留水分を除去する。また、このポストベーク処理により、流路部3の蓋となり、流路部3の上部を画定する上蓋層12が形成される。具体的には、このポストベーク処理により流動性を有する感光性樹脂である上蓋用樹脂の流動(リフロー)を促し、流路部3の上蓋層12を形成できる。ポストベークの温度、時間は上蓋用樹脂の特性に合わせて最適な条件で実施する。なお、図1に示すように、上蓋層12は流路部3を覆う蓋材であって流路部3上に形成される。入力部2及び出力部4は、上蓋層12に覆われずに開口している。
また、ポストベーク処理は、例えば、ホットプレート、オーブン、などを用いて行われる。上記ステップS7の洗浄工程での乾燥が不十分な場合、現像液や洗浄時の水分が隔壁層11に残留している場合がある。また、プリベーク処理において除去されなかった溶剤も隔壁層11に残留している場合がある。ポストベーク処理を行うことで、それらを除去することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法は、基板10上に、隔壁用樹脂を塗工する工程(上記ステップS1)と、塗工した隔壁用樹脂の上に、上蓋用樹脂を塗工する工程(上記ステップS3)と、隔壁用樹脂及び上蓋用樹脂を露光する工程(上記ステップS5)と、露光した隔壁用樹脂及び上蓋用樹脂を現像及び洗浄し、基板10上において流路部3を画定する隔壁層11を形成する工程(上記ステップS6及びステップS7)と、隔壁層11上の上蓋用樹脂を加熱処理して該上蓋用樹脂を流動させ、流路部3の上蓋層12を形成する工程(上記ステップS8)と、を含んでいる。
これにより、接着剤を用いることなく隔壁層11と上蓋層12とを溶着することができ、接着剤成分の流路部3内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
(1.3)隔壁層及び上蓋層の製造工程の詳細
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法においては、隔壁層11を形成するための隔壁用樹脂、および上蓋層12を形成するための上蓋用樹脂の物性に応じて各製造工程を調整する。以下、具体的な例を挙げて説明する。
(1.3.1)ガラス転移温度が異なる樹脂を用いた隔壁層及び上蓋層の形成
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とでガラス転移温度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図5を用いて説明する。図5(a)は、基板40上に形成された第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42を示す断面模式図であり、図5(b)は、基板40上の流路パターンを示す断面模式図であり、図5(c)は本例によるマイクロ流路チップ400の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)が隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い(上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)<隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
図5(a)に示すように、本例では、上記ステップS1の塗工工程において、基板40上へ隔壁用感光性樹脂を塗布して第一感光性樹脂層41を形成する。隔壁用感光性樹脂は、例えばスピンコーティングにより所望の厚さで基板40上へ塗布する。また、本例では、上記ステップS3において第一感光性樹脂層41の上に上蓋用感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層42を形成する。本例では、第二感光性樹脂層42を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層41を形成する隔壁用感光性樹脂よりもガラス転移温度(Tg)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層42は、第一感光性樹脂層41と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層41上へ塗布する。
また本例では、上記ステップS5の露光工程において、基板40上に塗工した第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42に対して、フォトマスクを介して流路パターンを描画する。例えば、本例では、紫外光領域である350nm以上400nm以下の波長の光を光源としたプロキシミティ露光装置を用いる。次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42に対して現像を行い、流路パターン43形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層41及び第二感光性樹脂層42を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図5(b)に示すように隔壁層41aが形成され、流路パターン43が画定される。
次いで、流路パターン43を形成したマイクロ流路チップに対し、ステップS8の加熱処理(ポストベーク)を行う。本例では、ホットプレートを用いて第二感光性樹脂層42のガラス転移温度(Tg)付近の温度にて加熱処理行う。本例では、加熱処理によって第二感光性樹脂層42、すなわち上蓋用樹脂の流動(リフロー)が促され、対向する左右の隔壁層11上から流路パターン43の中央に向かって上蓋用樹脂が流動する。隔壁層41a上から流動した上蓋用樹脂は、基板40と反対側、すなわち流路パターン43の上側において接合し、上蓋層42aが形成される。これにより、図5(c)に示すように、流路パターン43の上部が上蓋層42aで覆われ、流路部43aが形成されてマイクロ流路チップ400が作製される。
本例のように、隔壁層41aを形成する第一感光性樹脂層41、すなわち隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)が第二感光性樹脂層42、すなわち上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも高い場合には、加熱処理によって上蓋用樹脂の流動(リフロー)が起きる際にも、隔壁用樹脂には流動がほぼ起きない。したがって、「上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)<隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)」という条件を満たすことで、上蓋用樹脂の流動による流路パターンの変形を生じさせることなく、上蓋用樹脂を流動させて上蓋層42aを容易に形成することができる。
(1.3.2)露光感度が異なる樹脂を用いた隔壁層及び上蓋層の形成(1)
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とで露光感度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図6を用いて説明する。図6(a)は、基板50上に形成された第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52を示す断面模式図であり、図6(b)は、基板50上の流路パターンを示す断面模式図であり、図6(c)は本例によるマイクロ流路チップ500の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂の露光感度(C/cm)が隔壁用樹脂の露光感度(C/cm)よりも低い(上蓋用樹脂の露光感度(C/cm)<隔壁用樹脂の露光感度(C/cm))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
図6(a)に示すように、本例では、上記ステップS1の塗工工程において、基板50上へ隔壁用感光性樹脂を塗布して第一感光性樹脂層51を形成する。隔壁用感光性樹脂は、例えばスピンコーティングにより所望の厚さで基板50上へ塗布する。第一感光性樹脂層51、すなわち隔壁用樹脂はポジ型のレジストである。また、本例では、上記ステップS3において第一感光性樹脂層51の上に上蓋用感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層52を形成する。第二感光性樹脂層52、すなわち上蓋用樹脂は、ポジ型のレジストである。つまり、本例では、隔壁用感光性樹脂及び上蓋用感光性樹脂として、ポジ型のレジストを用いる。
本例では、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用感光性樹脂よりも露光感度(C/cm)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層52は、第一感光性樹脂層51と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層51上へ塗布する。例えば、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用樹脂として化学増幅型レジスト、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用樹脂として非化学増幅型レジストを用いてもよい。
また本例では、上記ステップS5の露光工程において、基板50上に塗工した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52に対して、フォトマスクを介して流路パターンを描画する。例えば、本例では、紫外光領域である350nm以上400nm以下の波長の光を光源としたプロキシミティ露光装置を用いる。ここで、露光量は第一感光性樹脂層51に対して最適な露光量を設定する。上述のように、本例では第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用樹脂は、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用樹脂に対して露光感度が低い。このため、第二感光性樹脂層52において、第一感光性樹脂層51に合わせた露光量では反応が十分ではないが、パターン解像において問題は無い。
次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52に対して現像を行い、流路パターン53を形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図6(b)に示すように隔壁層51aが形成され、流路パターン53が画定される。本例では、上述のように第二感光性樹脂層52は第一感光性樹脂層51に比べて露光感度が低い樹脂で形成されている。このため図6に示すように、第二感光性樹脂層52における露光範囲の開口幅は、第一感光性樹脂層51の開口幅よりも小さくなっている。
次いで、流路パターン53を形成したマイクロ流路チップに対し、ステップS8の加熱処理(ポストベーク)を行う。本例では、ホットプレートを用いて第一感光性樹脂層51及び第二感光性樹脂層52のガラス転移温度(Tg)付近の温度にて加熱処理行う。本例では、加熱処理によって第二感光性樹脂層52、すなわち上蓋用樹脂の流動(リフロー)が促され、左右の隔壁層51a上から流路パターン53の中央に向かって上蓋用樹脂が流動する。隔壁層51a上から流動した上蓋用樹脂は、基板50と反対側、すなわち流路パターン53の上側において接合し、上蓋層52aが形成される。これにより、図6(c)に示すように、流路パターン53の上部が上蓋層52aで覆われ、流路部53aが形成されてマイクロ流路チップ500が作製される。
本例では、隔壁層51aを形成する第一感光性樹脂層51、すなわち隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)は、上蓋層52aを形成する第二感光性樹脂層52、すなわち上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)と同等である。このため、上蓋用樹脂が流動(リフロー)する際に隔壁用樹脂も流動する。ただし、本例では、第一感光性樹脂層51および第二感光性樹脂層52が、ポジ型のレジストで形成され、且つ第二感光性樹脂層52の露光感度が第一感光性樹脂層51よりも低い。このため、図6(b)に示すように第二感光性樹脂層52の開口幅は第一感光性樹脂層51の開口幅に比べて小さく形成され、第一感光性樹脂層51の開口幅は第二感光性樹脂層52の開口幅に比べて十分に大きく形成されている。
したがって、第二感光性樹脂層52と同程度の流動が第一感光性樹脂層51に起きることで流路パターン53の開口幅よりも流路部53aの幅が減少するものの、図6(c)に示すように流路部53aの幅は、十分に確保されることとなる。
したがって、第一感光性樹脂層51および第二感光性樹脂層52がポジ型のレジストで形成され、且つ「上蓋用樹脂の露光感度<隔壁用樹脂の露光感度」という条件を満たすことで、流路部の流路幅を十分に維持しつつ、上蓋用樹脂及び隔壁用樹脂を流動させて上蓋層52aを容易に形成することができる。
(1.3.3)露光感度が異なる樹脂を用いた隔壁層及び上蓋層の形成(2)
隔壁用樹脂と上蓋用樹脂とで露光感度の異なる場合における、隔壁層11及び上蓋層12の形成について、図7を用いて説明する。図7(a)は、基板60上に形成された第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62を示す断面模式図であり、図7(b)は、基板60上の流路パターンを示す断面模式図であり、図7(c)は本例によるマイクロ流路チップ600の概略構成を示す断面模式図である。
本例では、上蓋用樹脂の露光感度(C/cm)が隔壁用樹脂の露光感度(C/cm)よりも高い(上蓋用樹脂の露光感度(C/cm)>隔壁用樹脂の露光感度(C/cm))という条件によるマイクロ流路チップの製造方法について説明する。
図7(a)に示すように、本例では、上記ステップS1の塗工工程において、基板60上へ隔壁用感光性樹脂を塗布して第一感光性樹脂層61を形成する。隔壁用感光性樹脂は、例えばスピンコーティングにより所望の厚さで基板60上へ塗布する。第一感光性樹脂層61、すなわち隔壁用樹脂はネガ型のレジストである。また、本例では、上記ステップS3において第一感光性樹脂層61の上に上蓋用感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層62を形成する。第二感光性樹脂層62、すなわち上蓋用樹脂は、ネガ型のレジストである。つまり、本例では、隔壁用感光性樹脂及び上蓋用感光性樹脂として、ネガ型のレジストを用いる。
本例では、第二感光性樹脂層52を形成する上蓋用感光性樹脂としては、第一感光性樹脂層51を形成する隔壁用感光性樹脂よりも露光感度(C/cm)が低い樹脂を用いる。第二感光性樹脂層52は、第一感光性樹脂層51と同様にスピンコーティングにより所望の厚さで第一感光性樹脂層51上へ塗布する。例えば、第一感光性樹脂層61を形成する隔壁用樹脂として非化学増幅型レジスト、第二感光性樹脂層62を形成する上蓋用樹脂として化学増幅型レジストを用いてもよい。
また本例では、上記ステップS5の露光工程において、基板60上に塗工した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62に対して、フォトマスクを介して流路パターンを描画する。例えば、本例では、紫外光領域である350nm以上400nm以下の波長の光を光源としたプロキシミティ露光装置を用いる。ここで、露光量は第一感光性樹脂層61に対して最適な露光量を設定する。上述のように、本例では第二感光性樹脂層62を形成する上蓋用樹脂は、第一感光性樹脂層61を形成する隔壁用樹脂に対して露光感度が高い。このため、第二感光性樹脂層62において、第一感光性樹脂層61に合わせた露光量は必要十分である。
次いで、上記ステップS6の現像工程において、露光した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62に対して現像を行い、流路パターン63を形成する。ここでは例えば、スプレー方式にて炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いる。次いで、上記ステップS7において現像した第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62を洗浄により現像液を完全に除去する。ここでは、例えば、超純水を用いてスプレー方式にて洗浄する。これにより、図7(b)に示すように隔壁層61aが形成され、流路パターン63が画定される。本例では、第二感光性樹脂層62は、第一感光性樹脂層61に比べて露光感度が高い。このため図7(b)に示すように、露光後において、露光部のパターンとして残存する第二感光性樹脂層62の範囲は、第一感光性樹脂層61に対して広くなる。結果として、図6に示すように、第二感光性樹脂層62における露光範囲の開口幅は、第一感光性樹脂層61の開口幅よりも小さくなる。
次いで、流路パターン63を形成したマイクロ流路チップに対し、ステップS8の加熱処理(ポストベーク)を行う。本例では、ホットプレートを用いて第一感光性樹脂層61及び第二感光性樹脂層62のガラス転移温度(Tg)付近の温度にて加熱処理行う。本例では、加熱処理によって第二感光性樹脂層62、すなわち上蓋用樹脂の流動(リフロー)が促され、左右の隔壁層61a上から流路パターン63の中央に向かって上蓋用樹脂が流動する。隔壁層61a上から流動した上蓋用樹脂は、基板60と反対側、すなわち流路パターン63の上側において接合し、上蓋層62aが形成される。これにより、図7(c)に示すように、流路パターン63の上部が上蓋層62aで覆われ、流路部63aが形成されてマイクロ流路チップ600が作製される。
本例では、上述のマイクロ流路チップ500と同様に、マイクロ流路チップ600において、隔壁層61aを形成する第一感光性樹脂層61、すなわち隔壁用樹脂のガラス転移温度(Tg)は、上蓋層62aを形成する第二感光性樹脂層62、すなわち上蓋用樹脂のガラス転移温度(Tg)と同等である。このため、上蓋用樹脂が流動(リフロー)する際に隔壁用樹脂も流動する。本例では、第一感光性樹脂層61および第二感光性樹脂層62が、ネガ型のレジストで形成され、且つ第二感光性樹脂層62の露光感度が第一感光性樹脂層61よりも高い。このため、図6(b)に示すように第二感光性樹脂層62の開口幅は第一感光性樹脂層61の開口幅に比べて小さく形成され、第一感光性樹脂層51の開口幅は第二感光性樹脂層52の開口幅に比べて十分に大きく形成されている。
したがって、第二感光性樹脂層62と同程度の流動が第一感光性樹脂層61に起きることで流路パターン63の開口幅よりも流路部63aの幅が減少するものの、図7(c)に示すように流路部63aの幅は、十分に確保されることとなる。
したがって、第一感光性樹脂層61および第二感光性樹脂層62がネガ型のレジストで形成され、且つ「上蓋用樹脂の露光感度>隔壁用樹脂の露光感度」という条件を満たすことで、流路部の流路幅を十分に維持しつつ、上蓋用樹脂及び隔壁用樹脂を流動させて上蓋層62aを容易に形成することができる。
以上、本実施形態に係るマイクロ流路チップにおいて、隔壁層および上蓋層を別体形成(複層構成)とする例を説明した。上述のように、本実施形態に係る製造方法によれば、マイクロ流路チップの流路部を覆う蓋材(上蓋層)を、接着剤などの中間層を用いることなく、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で形成することができる。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良による品質低下も防ぐことができる。また、接着剤などの中間部材を用いて隔壁層と上蓋層とを接合する場合と比べて、製造方法を簡略化することができる。
なお、本開示はこれに限られず、隔壁層および上蓋層を3層以上で構成してもよい。またこの場合、上蓋層を形成する第二感光性樹脂層を複層構成としてもよい。熱流動性を有する感光性樹脂は、上層であるほど、加熱処理によって樹脂の流動性が大きくなる性質である。このため、複層構成の第二感光性樹脂層によって上蓋層を形成する場合において、上層部分の方が下層部分よりも早く接合する。したがって、複層構成の第二感光性樹脂層による上蓋層は、上層であるほど開口幅が狭く、最上層又は最上層と近接する層において接合した構成となる。
(1.4)第一実施形態の効果
以上のようなマイクロ流路チップ1は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、基板10と、基板10上に流路部3を形成する隔壁層11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、隔壁層11と上蓋層12との間に粘着層が設けられていない。
これにより、マイクロ流路チップ1は、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。さらに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
(2)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、基板10と、基板10上に流路部3を形成する隔壁層11と、隔壁層11の基板10とは反対側の面に形成され、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12と隔壁層11とは互いに溶着している。
これにより、マイクロ流路チップ1は、接着剤を用いることなく上蓋層12と隔壁層11とが接合され、接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。さらに、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良も防ぐことができる。
(3)また、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、マイクロ流路チップであって、流路部3と、流路部3の蓋となる上蓋層12と、を備え、上蓋層12の材料は、熱流動性を有する樹脂であり、流路部3の断面形状は、角丸である。
これにより、マイクロ流路チップ1は、接着剤を用いることなく上蓋層12と隔壁層11とが接合され、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。さらに、流路部3における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させ、角部における検査対象物質の滞留を抑制することができる。また、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で上蓋層12と隔壁層11とを接合することができる。
(4)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は、隔壁層11と別体であってもよい。
これにより、上蓋として好適な性質を有する樹脂を適宜選択することができる。
(5)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において隔壁層11及び上蓋層12は、樹脂材料で形成されており、当該樹脂材料は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂であってもよい。
これにより、接着剤を用いることなく感光性樹脂のリフローによって、マイクロ流路チップの蓋材(上蓋層)を形成することができ、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
(6)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は隔壁層11と別体であって、隔壁層11に対してガラス転移温度が低くてもよい。
これにより、上蓋層12の形成時において隔壁層11に流動が起きて、流路パターンが変化することを抑制することができる。
(7)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、上蓋層12は隔壁層11と別体であって、隔壁層11に対して露光感度が高い又は低い構成でもよい。
これにより、上蓋層12の形成時に上蓋層用の樹脂材料を流動させる際に、隔壁層用の樹脂に流動が起こった場合も、隔壁層11を形成する感光性樹脂の開口幅を十分大きく形成できるため、流路部3として十分な空間を維持することができる。
(8)また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法は、基板10上に、隔壁層11用の感光性樹脂を塗工する工程と、塗工した隔壁層11用の感光性樹脂の上に、上蓋層12用の感光性樹脂を塗工する工程と、隔壁層11用の感光性樹脂及び上蓋層12用の感光性樹脂を露光する工程と、露光した隔壁層11用の感光性樹脂及び上蓋層12用の感光性樹脂を現像及び洗浄し、基板10上において流路部3を画定する隔壁層11を形成する工程と、隔壁層11上の上蓋層12用の感光性樹脂を加熱処理して上蓋層12用の感光性樹脂を流動させ、流路部3の上蓋層12を形成する工程と、を含む。
これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップを提供することができる。
2.第二実施形態
以下、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップについて、図8を用いて説明する。図8は、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップ200の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ200は、基板20と、基板20上に流路部23を形成する隔壁層21と、隔壁層21の一部で形成された上蓋層22と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ200は、隔壁層21と上蓋層22とが、一体である。この点で、第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1,400,500,600と相違する。
(2.1)マイクロ流路チップ200の構成
以下、マイクロ流路チップ200の隔壁層21及び上蓋層22について、上記第一実施形態の隔壁層11、上蓋層12と異なる点を主に説明する。なお、上蓋層22以外の各構成(基板20及び流路部23)については、マイクロ流路チップ1の基板10及び流路部3と同様の構成であるため説明を省略する。
また、マイクロ流路チップ200の隔壁層21及び上蓋層22の材料は、マイクロ流路チップ1の隔壁層11と同様のものを用いればよい。
図8は、隔壁層21と上蓋層22とが一体であるマイクロ流路チップ200の一構成例を示している。マイクロ流路チップ200では、隔壁層21自体が上蓋層22となるため、製造工程を簡略化することができる。
(2.2)マイクロ流路チップ200の製造方法
以下、マイクロ流路チップ200の製造方法の一例について説明する。
マイクロ流路チップ200の製造方法では、図4に示すマイクロ流路チップ1の製造方法におけるステップS3(第二感光性樹脂の塗工工程)を省略することができる。これにより、製造工程を簡略化することができる。
以下、図9を用いて、マイクロ流路チップ200の製造方法をより詳細に説明する。
図9は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ200の製造方法の各工程を示す概略図である。なお、マイクロ流路チップ200の製造方法では、基板20上に形成される感光性樹脂が一層である点を除き、図4に示すマイクロ流路チップ1の製造方法におけるステップS1,S2,S4~S7における各工程と同様にして流路パターンを形成する。このため、ステップS1,S2,S4~S7における各工程については、説明を省略する。
図9(a)は本実施形態に係るマイクロ流路チップ200の製造時における流路パターン220の平面概略図である。隔壁層21に対して、液体を導入するための入力部32と、液体が流れる流路部33と、液体を排出するための出力部34とを有している。入力部32および出力部34は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の入力部2および出力部4と同等の構成であるため、説明は省略する。
図9(b)は図9(a)のB-B線における断面図である。ベースとなる基板20の上に隔壁層21が形成されている。基板20と隔壁層21に囲まれた領域に流体(例えば、反応溶液)を導入するための入力部32が形成される。なお流体を導入するため、入力部32の上部には、上蓋層22は形成されない。
図9(c)は、図9(a)のC-C線における断面図である。ベース部材となる基板20の上に隔壁層21が形成されており、基板20と隔壁層21に囲まれた領域に流体が流れる流路部3を画定する流路パターン220の領域23aが形成されている。領域23aの開口幅は、入力部32よりも狭く形成されている。
形成された流路パターン220に対し加熱処理(ポストベーク)を行う。加熱処理は、例えば、ホットプレート、オーブン、などにより行われる。ポストベークは、隔壁用樹脂(隔壁層21)のガラス転移温度(Tg)まで加熱して、隔壁用樹脂を流動(リフロー)させる目的で行う。この点が、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法における加熱処理と異なる。感光性樹脂の流動(リフロー)は、樹脂の性質によっては基板20と反対側、すなわち流路パターン220の上部側が流動しやすい特徴がある。流路パターン220の上部が流動することによって、隔壁層21同士が接合し、流路パターン220の上蓋材、つまり流路パターン220の領域23aを覆う上蓋層22としての機能を持つことになる。これにより、隔壁層21と一体の上蓋層22が形成され、本実施形態に係るマイクロ流路チップ200が作製される。
図9(d)は、加熱処理(ポストベーク)後のマイクロ流路チップ200の平面概略図である。加熱処理によって隔壁層21が流動して上蓋層22が形成され、後述する図9(f)に示すように流路部23が画定されている。なお、図9(d)では図示を省略しているが、透明性を有する上蓋層22を介して流路部23を視認することができる。入力部32及び出力部34も、隔壁層21の流動によってサイズは小さくなるものの、予めサイズの縮小を想定して大きなサイズで形成しているため、上蓋層22で塞がれることなく、貫通孔が形成されたままとなる。これは、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造時も同様である。
図9(e)は、図9(d)のB-B線におけるマイクロ流路チップ200の断面模式図である。ホットプレート25上でのポストベークによって、隔壁層21の上部側の樹脂は入力部32の幅方向の中央に向かって流動するが、入力部32は塞がれることなく開口端は外部と連通したままとなる。つまり、流体を導入するための入力部32の機能は維持される。
図9(f)は図9(d)のC-C線におけるマイクロ流路チップ200の断面模式図である。ホットプレート25上でのポストベークによって、隔壁層21の基板20と反対側(隔壁層21の上側)の樹脂が左右から流動して流路部23の幅方向の中央付近で接合し上蓋層22を形成している。このように、本実施形態によれば、マイクロ流路チップの流路部を覆う蓋材を、接着剤を用いることなく、既存のフォトリソグラフィ工程の範囲内で、マイクロ流路チップの蓋材(上蓋層)を形成することができる。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、接着剤の膜厚不均一に起因した接合不良による品質低下も防ぐことができる。また、接着剤などの中間部材を用いて隔壁層と上蓋層とを接合する場合と比べて、製造方法を簡略化することができる。また、隔壁層21と上蓋層22とを一体形成とすることで、より確実に接合不良を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ200の製造方法は、基板10上に、隔壁用樹脂を塗工する工程(上記ステップS1)と、隔壁用樹脂を露光する工程(上記ステップS5)と、露光した隔壁用樹脂を現像及び洗浄し、基板20上において流路部23を画定する隔壁層21を形成する工程(上記ステップS6及びステップS7)と、隔壁層21を加熱処理して該隔壁用樹脂を流動させ、上蓋層22を形成する工程と、を含んでいる。
これにより、接着剤を用いることなく隔壁層21の一部として隔壁層21に溶着して一体形成された上蓋層22を形成ことができ、接着剤成分の流路部23内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
(2.3)第二実施形態の効果
以上のようなマイクロ流路チップ200は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係るマイクロ流路チップ200は、隔壁層21と一体であってもよい。
これにより、隔壁層21と上蓋層22との接合不良をより確実に抑制することができる。
(2)また、本実施形態に係るマイクロ流路チップ200の製造方法は、基板10上に、隔壁用樹脂を塗工する工程(上記ステップS1)と、隔壁用樹脂を露光する工程と、露光した隔壁用樹脂を現像及び洗浄し、基板20上において流路部23を画定する隔壁層21を形成する工程と、隔壁層21を加熱処理して該隔壁用樹脂を流動させ、上蓋層22を形成する工程と、を含む。
これにより、接着剤を用いることなく隔壁層21の一部として隔壁層21に溶着して一体形成された上蓋層22を形成ことができ、接着剤成分の流路部23内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
(実施例)
上述したマイクロ流路チップ及びその製造方法について、具体的な実施例を用いて説明する。なお、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
<第一実施例>
上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
まず、ガラス基板上へ隔壁層用の感光性樹脂を塗工して、第一感光性樹脂層を形成した。隔壁層用の感光性樹脂はエポキシ系樹脂による透明体のネガ型液体樹脂(ネガ型の液体レジスト)を使用した。また当該感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)はガラス転移温度(TG)が160℃であった。ネガ型液体レジストは、スピンコーターにて回転数1100rpm、30秒でガラス基板上に塗工した。またスピンコーターは、第一感光性樹脂層の膜厚が50μmになるように回転数、時間を調整した。
次に、ホットプレート上にて隔壁層用の感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)内に含まれる残留溶媒を除去する目的で加熱処理(プリベーク)を行った。プリベークは、温度90℃で20分実施した。
次いで、第一感光性樹脂層の上に上蓋用の感光性樹脂を塗布して第二感光性樹脂層を形成した。上蓋用の感光性樹脂は、隔壁層用の感光性樹脂よりもガラス転移温度(TG)が50℃低い温度(110℃)である以外は、上述のネガ型液体レジストと同様のものを用いた。また隔壁層用の感光性樹脂と同条件でプリベークを行い、上蓋用の感光性樹脂内に含まれる残留溶媒を除去した。
次に、ガラス基板上の感光性樹脂層(第一感光性樹脂層、第二感光性樹脂層)を露光して流路パターンを描画した。具体的には、マイクロ流路のパターン配列を有するフォトマスクを介して、感光性樹脂へパターン露光した。フォトマスクはクロム及び酸化クロムの二層構造を遮光膜とするフォトマスクを使用した。また、露光にはプロキシミティ露光装置を用いた。露光装置は高圧水銀灯を光源とし、i線フィルタのカットフィルタを入れて露光した。露光量は170mJ/cmとした。
次に、露光した感光性樹脂層に対して現像を行い、流路パターンを形成した。具体的には、アルカリ現像液(TMAH2.38%)を用いて感光性樹脂層を60秒間現像することにより、未露光部分を溶解し、流路構造をパターニングした。
続いて、超純水によるシャワー洗浄を行い、基板上の感光性樹脂層から現像液を除去し、スピンドライヤにて乾燥を行った。この段階では、流路パターンの流路部においてガラス基板とは反対側の上側部分は開口している。また、隔壁層上には第二感光性樹脂層が残存している。
次に、流路パターンをオーブンで110℃、30分、加熱処理(ポストベーク)した。このとき、感光性樹脂のリフローにより流路パターン上部、すなわち第二感光性樹脂層が流路部の中心に向かって流動し、対向する隔壁層上の第二感光性樹脂層同士が接合される。これにより上蓋層が形成され、本実施例によるマイクロ流路チップを得た。なお、流路部の両端部には、貫通孔である入力部および出力部が上蓋層で塞がれることなく形成された。
上述のようにして作製した本実施例によるマイクロ流路チップは、接着剤を用いることなく隔壁層と上蓋層とを溶着しており、ポストベーク時の上蓋層用の樹脂(第二感光性樹脂層)の流動によって上蓋層を形成している。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、着色した反応溶液10μLの量をピペットにて採取し、流路の入口ポートより導入し、その送液の様子を顕微鏡にて観察した。導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
<第二実施例>
上記第二実施形態に係るマイクロ流路チップ及びその製造方法の実施例を説明する。
隔壁層と上蓋層とが一体形成である以外は、上記第一実施例と同様にして第二実施例によるマイクロ流路チップを作製した。
具体的には、まず、上記第一実施例と同様に、隔壁層用の感光性樹脂をガラス基板上へ塗工して第一感光性樹脂層を形成し、プリベーク処理を行った。
次に、上記第一実施例と同様の露光条件で、ガラス基板上の第一感光性樹脂層を露光して流路パターンを描画した。
次に、露光した第一感光性樹脂層に対し、上記第一実施例と同様の条件で現像を行った後に現像液を除去し、スピンドライヤにて乾燥して流路パターンを形成した。この時点での流路パターンの断面SEM像の一例を図10(a)に示す。
図10(a)において、対向する隔壁層に挟まれた凹部が流路パターンの流路部にあたる。図10(a)に示すように、現像液の除去・乾燥後の流路パターンの流路部において、ガラス基板とは反対側の上側部分は開口している。流路部の上側の開口は、上記第一実施例でも同様である。
次に、流路パターンをオーブンで160℃、30分、加熱処理(ポストベーク)した。このとき、感光性樹脂のリフローにより流路パターン上部、すなわち隔壁層の上側が流路部の中心に向かって流動し、対向する隔壁層の上側の感光性樹脂(ネガ型液体レジスト)同士が接合された。これにより、本実施例によるマイクロ流路チップを得た。
ポストベーク後のマイクロ流路チップの断面SEM像の一例を図10(b)に示す。図10(b)に示すとおり、ポストベーク後において流路パターン上側、すなわち隔壁層の上側)の感光性樹脂が流動し、流路部の中心付近で接合され、上蓋層が形成されていることを確認した。
また図10(b)に示すように、隔壁層の流動で形成される上蓋層は、流路部の中央部分に向かって厚みが薄くなっており、凹部が形成されていることが確認された。また、図10(b)に示すように、流路部の断面形状は角丸であることが確認された。これらの点は、隔壁層と上蓋層とが別体である上記第一実施例でも同様である。
なお、流路部の両端部には、貫通孔である入力部および出力部が上蓋層で塞がれることなく形成された。
上述のようにして作製した本実施例によるマイクロ流路チップは、ポストベークによる隔壁層上部の流動によって上蓋層が形成され、隔壁層と上蓋層との接合に接着剤が用いられない。これにより、接着剤成分の流路内への溶出を防いで、流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、本実施例のマイクロ流路チップに対し、上記第一実施例と同様にして送液試験を行った。その結果導入された反応溶液は、流路内を滞りなく流れ、流路内からの液漏れも一切無く、送液は良好であった。よって、本実施例のマイクロ流路チップには流体が滞りなく流れ、液漏れも無く、マイクロ流路チップとしての基本性能は備わっていることが確認できた。
本開示は、研究用途、診断用途、検査、分析、培養などを目的としたマイクロ流路チップにおいて、複雑な製造工程が必要なく上蓋を形成できるマイクロ流路チップ及びその製造方法として好適に使用することができる。
1,200,400,500,600…マイクロ流路チップ
2、32…入力部
3、23、43a、53a、63a…流路部
4、34…出力部
10、20、40、50、60…基板
11、21、41a、51a、61a…隔壁層
12、22、42a、52a、62a…上蓋層
25…ホットプレート
120…流路パターン

Claims (9)

  1. 基部と、
    前記基部上に流路を形成する隔壁部と、
    前記隔壁部の前記基部とは反対側の面に形成され、前記流路の蓋となる上蓋部と、
    を備え、
    前記隔壁部及び前記上蓋部が樹脂材料で形成され、
    前記隔壁部と前記上蓋部とは、間に粘着層が設けられておらず直接接合されており、
    前記上蓋部は、前記流路と反対の面側であって該流路と重なる領域に凹部を有する
    ことを特徴とするマイクロ流路チップ。
  2. 前記上蓋部を形成する前記樹脂材料は、熱流動性を有する樹脂であってメルトフローレートが1g/10min以上100g/10min(230℃)以下の範囲内であり、
    前記上蓋部において凹部が形成された領域は、前記隔壁部側から前記流路の中央に向かって厚みが薄くなっている
    ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  3. 記上蓋部と前記隔壁部とは、感光性樹脂で形成されており、
    前記上蓋部及び前記隔壁部のそれぞれを形成する感光性樹脂同士が溶着されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流路チップ。
  4. 記流路の断面形状は、角丸である
    ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流路チップ。
  5. 記樹脂材料は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂である
    ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
  6. 前記上蓋部を形成する前記樹脂材料は、前記隔壁部を形成する前記樹脂材料に対してガラス転移温度が低い
    ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
  7. 前記上蓋部を形成する前記樹脂材料は、前記隔壁部を形成する前記樹脂材料に対してガラス転移温度が30℃から50℃の範囲で低い
    ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。
  8. 前記樹脂材料は感光性樹脂であり、
    前記上蓋部を形成する感光性樹脂は、前記隔壁部を形成する感光性樹脂に対して露光感度が高い又は低い
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
  9. 前記上蓋部を形成する感光性樹脂と前記隔壁部を形成する感光性樹脂との露光感度の差分は5μC/cm 以上20μC/cm 以下の範囲である
    ことを特徴とする請求項8に記載のマイクロ流路チップ。
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