(一実施形態)
以下、本発明によるアクチュエータ制御装置を図面に基づいて説明する。一実施形態を図1~図10に示す。図1に示すように、電動アクチュエータ10は、パークロックシステム1に適用される。パークロックシステム1は、電動アクチュエータ10、ディテント機構20、および、パーキングロック機構30を備える。電動アクチュエータ10は、回転式であって、例えばブラシ付きDCモータおよび減速ギア機構等から構成される。電動アクチュエータ10は、出力軸15を回転させることで、ディテント機構20を駆動する。
ディテント機構20は、ディテントプレート21、および、ディテントスプリング25等を有し、電動アクチュエータ10から出力された回転駆動力を、パーキングロック機構30へ伝達する。
ディテントプレート21は、出力軸15に固定され、電動アクチュエータ10により駆動される。ディテントプレート21のディテントスプリング25側には、2つの谷部211、212、および、谷部211、212を隔てる山部215が設けられる。
付勢部材であるディテントスプリング25は、弾性変形可能な板状部材であり、先端にディテントローラ26が設けられる。ディテントスプリング25は、ディテントローラ26をディテントプレート21の回動中心側に付勢する。
ディテントプレート21に所定以上の回転力が加わると、ディテントスプリング25が弾性変形し、ディテントローラ26が谷部211、212間を移動する。ディテントローラ26が谷部211、212のいずれかに嵌まり込むことで、ディテントプレート21の揺動が規制され、パーキングロック機構30の状態が固定される。
パーキングロック機構30は、パーキングロッド31、円錐体32、パーキングレバー33、軸部34、および、パーキングギア35を有する。パーキングロッド31は、略L字形状に形成され、一端311側がディテントプレート21に固定される。パーキングロッド31の他端312側には、円錐体32が設けられる。円錐体32は、他端312側にいくほど縮径するように形成される。ディテントローラ26がPレンジに対応する谷部211に嵌まり込む方向にディテントプレート21が回転すると、円錐体32が矢印Pの方向に移動する。
パーキングレバー33は、円錐体32の円錐面と当接し、軸部34を中心に揺動可能に設けられる。パーキングレバー33のパーキングギア35側には、パーキングギア35と噛み合い可能な凸部331が設けられる。ディテントプレート21の回転により、円錐体32が矢印P方向に移動すると、パーキングレバー33が押し上げられ、凸部331とパーキングギア35とが噛み合う。一方、円錐体32が矢印notP方向に移動すると、凸部331とパーキングギア35との噛み合いが解除される。
パーキングギア35は、図示しないドライブシャフトと接続しており、パーキングレバー33の凸部331と噛み合い可能に設けられる。パーキングギア35と凸部331とが噛み合うと、ドライブシャフトの回転が規制される。シフトレンジがP以外のレンジであるnotPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングレバー33によりロックされず、ドライブシャフトの回転は、パーキングロック機構30により妨げられない。また、シフトレンジがPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングレバー33によってロックされ、ドライブシャフトの回転が規制される。
以下適宜、Pレンジのときにディテントローラ26が嵌まり込む谷部211を「P谷」、notPレンジのときにディテントローラ26が嵌まり込む谷部212を「notP谷」、谷部211、212の谷底を「最底部」とする。
図2に示すように、電動アクチュエータ10は、モータ40、減速機構42、ケース51、および、基板カバー57等を有する。モータ40は、モータ軸がケース51の底面と略平行になるように基板カバー57上に横置きされている。
減速機構42は、ウォームギア43、ヘリカルギア44、中間ギア45、ドリブンプレート46およびドリブンシャフト47を有する。ウォームギア43は、モータ40のモータ軸と一体に回転する。ヘリカルギア44は、ウォームギア43および中間ギア45の大径部と噛み合う。中間ギア45は大径部および小径部を有し、大径部はヘリカルギア44と噛み合い、小径部はドリブンプレート46と噛み合う。
ドリブンプレート46とドリブンシャフト47とは、一体に形成されているが、別体としてもよい。ドリブンシャフト47と出力軸15とは、スプライン軸継手にて接続されている。これにより、モータ40の回転は、ウォームギア43、ヘリカルギア44、中間ギア45、ドリブンプレート46およびドリブンシャフト47を経由し、出力軸15に伝達される。
ケース51は、例えば樹脂等で形成され、ドリブンシャフト47と対応する箇所に筒部54が形成されている。筒部54は、ドリブンシャフト47側に開口する筒状に形成されており、端面にてドリブンシャフト47と当接可能に設けられている。ドリブンシャフト47と筒部54とが当接することで、筒部54はドリブンシャフト47の軸方向の荷重を受ける。
ドリブンシャフト47には、図示しないセンサマグネットが設けられている。また、筒部54の内側であって、ドリブンシャフト47と対向する箇所には、位置センサ55(図3参照)が設けられている。本実施形態では、ドリブンシャフト47を「センサ軸」とし、位置センサ55により出力軸15の回転位置を検出している。基板カバー57は、ケース51に固定されており、内部に図示しない基板が設けられている。基板には、制御装置60を構成する各種電子部品が実装されている。
図3に示すように、制御装置60は、駆動回路61、および、制御部70等を有する。駆動回路61は、図示しない駆動素子を有する。制御部70は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部50における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
制御部70は、要求シフトレンジを取得して目標レンジを設定し、ディテントローラ26が目標レンジに応じた谷部211、212に位置するように、電動アクチュエータ10の駆動を制御する。制御部70は、機能ブロックとして、信号取得部71、回転演算部72、位置判定部73、閾値設定部74、および、駆動制御部75等を有する。信号取得部71は、位置センサ55からの位置検出信号、図示しない上位ECU等からの要求シフトレンジに係る信号、モータ40の電流、電圧、温度等に係るセンサ信号等を取得する。
回転演算部72は、位置センサ55の検出値に基づき、ドリブンシャフト47の回転角であるセンサ角度θs、および、ドリブンシャフト47の回転数であるセンサ回転数Nsを演算する。センサ角度θsおよびセンサ回転数Nsは、ガタが詰まった状態にてドリブンシャフト47と出力軸15とが一体に回転している場合、出力軸15に係る値とみなせる。
位置判定部73は、ディテント機構20におけるディテントローラ26の位置を判定する。閾値設定部74は、ディテントローラ26の位置判定に係る閾値を設定する。ディテントローラ26の位置判定、および、位置判定に係る閾値設定については後述する。駆動制御部75は、駆動回路61の駆動素子のオンオフ作動を制御することで、モータ40の駆動を制御する。
図4は、モータ40と出力軸15との遊びを模式的に示しており、紙面左右方向を回転方向とみなし、ディテントローラ26が谷部211、212を移動する様子を表している。なお、実際には、出力軸15と一体に回転するディテントプレート21が回転することで、ディテントローラ26が谷部211、212間を移動する。図4では、モータ40等の動作を一点鎖線の矢印で示した。
モータ40と出力軸15との間には、減速機構42が設けられており、遊びが存在している。以下適宜、モータ軸とセンサ軸であるドリブンシャフト47との間の遊びの合計を内部ガタGm、ドリブンシャフト47と出力軸15との間のガタをスプラインガタGsとし、内部ガタGmおよびスプラインガタGsの合計を単に「ガタ」という。
シフトレンジをPレンジからnotPレンジに切り替えるとき、内部ガタGmおよびスプラインガタGsを進行方向側に詰め、モータ軸が先行する状態にてディテントローラ26を山部215側へ押し上げる。ディテントローラ26が山部215を超えると、ディテントスプリング25のスプリング力にて出力軸15が先行して谷部212側へ移動する。ディテントローラ26が山部215を超えるとき、トルクの向きが逆になり、ガタが反対側に一気に詰まるため、位置センサ55の検出値が急峻に変動する。
また、本実施形態では、減速機構42にウォームギア43を用いており、被駆動トルクが比較的大きい。詳細には、減速機構42における被駆動トルクは、ディテントスプリング25がディテントローラ26を谷底方向へ付勢する付勢トルクよりも大きい。そのため、レンジ切替時において、山部215を超えた後、最底部に到達する前にモータ40の通電をオフにすると、通電をオフした位置にて停止し、ディテントローラ26を最底部まで落とし込めない虞がある。そこで本実施形態では、ディテントローラ26が最底部にて停止していると判定した後、通電をオフにする。
ここで、モータ40および減速機構42の挙動は温度や電圧等の環境条件によっても変動するため、ディテントローラ26が最底部に落ちたことを判定するための閾値を一定とすると、応答性の面で不利になる。そこで本実施形態では、温特や電圧等の環境ばらつきを考慮し、可及的速やかにディテントローラ26が最底部に落ちたことを判定可能すべく、ディテントローラ26が山部215を乗り越える前の回転数および環境条件に基づいて判定閾値を設定する。
本実施形態の駆動モード切替処理を図5のフローチャートに基づいて説明する。図5および図6の処理は、制御部70にて所定の周期で実行される。以下、ステップS101等の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
S101では、制御部70は、駆動モードがスタンバイモードか否か判断する。駆動モードがスタンバイモードでないと判断された場合(S101:NO)、S104へ移行する。駆動モードがスタンバイモードであると判断された場合(S101:YES)、S102へ移行する。
S102では、制御部70は、目標レンジが切り替わったか否か判断する。目標レンジが切り替わっていないと判断された場合(S102:NO)、スタンバイモードを継続する。目標レンジが切り替わったと判断された場合(S102:YES)、S103へ移行し、駆動モードをスタンバイモードから切替モードに変更し、モータ40の駆動を開始する。
駆動モードがスタンバイモードでないと判断された場合(S101:NO)に移行するS104では、制御部70は、駆動モードが切替モードか否か判断する。駆動モードが切替モードでないと判断された場合(S104:NO)、S107へ移行する。駆動モードが切替モードであると判断された場合(S104:YES)、S105へ移行する。
S105では、制御部70は、谷位置判定フラグFvjがオンされているか否か判断する。谷位置判定フラグFvjに係る処理の詳細は後述する。谷位置判定フラグFvjがオフであると判断された場合(S105:NO)、切替モードを継続する。谷位置判定フラグFvjがオンされていると判断された場合(S105:YES)、S106へ移行し、駆動モードを切替モードから停止モードに変更する。停止モードでは、逆起電流を還流させてブレーキ力を発生させる。
駆動モードが切替モードでないと判断された場合(S104:NO)に移行するS107では、制御部70は、駆動モードが停止モードか否か判断する。駆動モードが停止モードでないと判断された場合(S107:NO)、S108以降の処理をスキップする。駆動モードが停止モードであると判断された場合(S107:YES)、S108へ移行する。
S108では、制御部70は、停止モードを開始してから停止モード継続時間Xstが経過したか否か判断する。停止モード継続時間Xstが経過していないと判断された場合(S108:NO)、停止モード計時カウンタをインクリメントする。停止モード継続時間Xstが経過したと判断された場合(S108:YES)、S109へ移行し、駆動モードを停止モードからスタンバイモードに変更する。また、停止モード計時カウンタをリセットする。
本実施形態の谷位置判定処理を図6のフローチャートに基づいて説明する。S201では、制御部70は、駆動モードが切替モードか否か判断する。駆動モードが切替モードでないと判断された場合(S201:NO)、S215へ移行し、谷位置判定フラグFvjをオフにする。谷位置判定フラグFvjがオフの場合は、その状態を継続する。駆動モードが切替モードであると判断された場合(S201:YES)、S202へ移行する。
S202では、位置判定部73は、谷位置判定禁止フラグFfがオフか否か判断する。谷位置判定禁止フラグFfがオンされていると判断された場合(S202:NO)、S203以降の処理をスキップし、谷位置判定を行わない。谷位置判定禁止フラグFfがオフであると判断された場合(S202:YES)、S203へ移行する。
S203では、位置判定部73は、モータ40の実電流であるモータ電流Iが電流判定閾値Ithより小さいか否か判断する。電流判定閾値Ithは、メカロックが生じた場合の電流に応じて設定される。本実施形態では、異物の噛み込み等により、通電しても出力軸15が回転しない状態を「メカロック」とする。モータ電流Iが電流判定閾値Ith以上であると判断された場合(S203:NO)、S214へ移行し、谷位置判定禁止フラグFfをオンにする。モータ電流Iが電流判定閾値Ithより小さいと判断された場合(S203:YES)、S204へ移行する。
S204では、位置判定部73は、谷位置判定フラグFvjがオフか否か判断する。谷位置判定フラグFvjがオンされていると判断された場合(S204:YES)、S212へ移行する。谷位置判定フラグFvjがオフであると判断された場合(S204:NO)、S205へ移行する。
S205では、位置判定部73は、山越え判定フラグFmvがオフか否か判断する。山越え判定フラグFmjがオンされていると判断された場合(S205:NO)、S209へ移行する。山越え判定フラグFmjがオフであると判断された場合(S205:YES)、S206へ移行する。
S206では、位置判定部73は、位置センサ55の検出角度であるセンサ角度θsの前回値と今回値との差の絶対値である角度変化量Δθが急変判定閾値θth以上か否か判断する。急変判定閾値θthは、ディテントローラ26が山部215を乗り越え、ガタが反対側に詰まるときの回転角度に応じた値であって、ディテントプレート21の形状やガタの大きさに応じて設定される。急変判定閾値θthは、ディテントプレート21の形状により、PレンジからnotPレンジへの切替時と、notPレンジからPレンジへの切替値とで異なる値であってもよい。角度変化量Δθが急変判定閾値θthより小さいと判断された場合(S206:NO)、ディテントローラ26は山上り中であって、現在の駆動状態を継続する。角度変化量Δθが急変判定閾値θth以上であると判断された場合(S206:YES)、S207へ移行する。
S207では、位置判定部73は、ディテントローラ26が山部215を乗り越えたと判定し、山越え判定フラグFmjをオンにする。また、制御部70では、山越え判定フラグFmjがオンされるまでのセンサ回転数Nsに係る情報が時刻情報と関連付けて記憶されており、S208では、制御部70は、山越え判定フラグFmjがオンになる所定時間Xc前におけるセンサ回転数Nsを、山上り中回転数Ncとして取得する。所定時間Xcは、ディテントローラ26の山上り中であって、センサ回転数Nsが安定しているときの値を山上り中回転数Ncとして取得可能なように設定される。なお、ディテントローラ26の山越えにて回転数が急変する可及的直近の値を山上り中回転数Ncとして取得することが望ましい。また、センサ回転数Nsが安定している区間において取得される複数の値を用いた平均値等の演算値を山上り中回転数Ncとしてもよい。
谷位置判定フラグFvjがオフ、かつ、山越え判定フラグFmjがオンであると判断された場合(S204:YES、S205:NO)に移行するS209では、位置判定部73は、現在のセンサ回転数Nsが、位置判定閾値Nthより小さいか否かを判断する。本実施形態では、レンジ切替ごとに、位置判定閾値Nthを設定している。位置判定閾値Nthは、山上り中回転数Ncに1より小さい値である安全係数kを乗じた値である(式(1))。すなわち、本ステップでは、Ns<Nc×kが成立している場合、肯定判断される。
Nth=Nc×k ・・・(1)
安全係数kは、1より小さい任意の値(例えば0.7)を基準値とし、環境条件に応じた基準値以下の値に設定される。例えば、図7(a)に示すように、最大電圧降下した場合(この例では9[V])の安全係数kを基準値とし、モータ40に印加される電圧が大きいほど小さい値となるように設定される。図7(b)に示すように、高温の場合、モータ40の回転数が大きくなるため、温度が高いほど安全係数kが小さい値となるように設定される。また図7(c)に示すように、山越え前の負荷トルクが小さいほど、センサ回転数Nsが大きいため、負荷トルクが小さいほど安全係数kが小さい値となるように設定する。安全係数kは、例えば電圧、温度および負荷トルク等、パラメータ毎に個別に設定されたマップを用いて値を取得し、最も小さい値を安全係数kとして設定する。
図6に戻り、センサ回転数Nsが位置判定閾値Nth以上であると判断された場合(S209:NO)、センサ回転数Nsが位置判定閾値Nth未満となってからの経過時間を計時する谷位置判定カウンタをリセットする。センサ回転数Nsが位置判定閾値Nthより小さいと判断された場合(S209:YES)、S210へ移行する。
S210では、位置判定部73は、センサ回転数Nsが位置判定閾値Nth未満となってから谷位置判定時間Xvが経過したか否か判断する。谷位置判定時間Xvが経過していないと判断された場合(S210:NO)、谷位置判定カウンタをインクリメントする。谷位置判定時間Xvが経過したと判断された場合(S210:YES)、ディテントローラ26が谷に落ちた、とみなし、谷位置判定フラグFvjをオンにする。また、谷位置判定カウンタをリセットする。谷位置判定フラグFvjがオンされると、図5のS105にて肯定判断され、駆動モードが停止モードに移行する。
谷位置判定フラグFvjがオンであると判断された場合(S204:NO)に移行するS212では、制御部70は、モータ40の通電に係る指令デューティを0とし、モータ40への通電をオフにする。S213では、位置判定部73は、山越え判定フラグFmjをオフにする。
本実施形態の谷位置判定処理を図8~図10のタイムチャートに基づき、PレンジからnotPレンジへ切り替える場合を例に説明する。図8および図9では、共通時間軸を横軸とし、上段から、目標シフトレンジ、回転角度、回転数、山越え判定フラグFmj、位置判定閾値Nth、谷位置判定フラグFvj、デューティ指示値を示している。回転角度および回転数について、位置センサ55の検出値に基づく値を実線、モータ40の挙動に応じた値を二点鎖線で示し、ギア比換算によりスケールを揃えている。また、ディテントローラ26が谷部211の最底部にあるときのモータ角度を「P」、谷部212の最底部にあるときのモータ角度を「notP」とした。
図8は、内部ガタGmとスプラインガタGsの合計が、山部215の頂点と谷部212の最底部との間の角度より小さい例である。時刻x10にて目標シフトレンジがPレンジからnotPレンジに切り替わると、モータ40が駆動され、ガタが詰まった時刻x11にてセンサ軸の回転が開始される。図8等では、モータ駆動時のデューティ指示値を100[%]としているが、任意の値としても差し支えない。本実施形態では、少なくとも山越え判定フラグFmjがセットされるまでの期間において、センサ回転数Nsを時刻情報と関連付けて記憶しておく。
ディテントローラ26が山部215を乗り越えると、トルクが逆向きとなりガタが反対側に一気に詰まることにより、時刻x12にて位置センサ55の検出値が急速に動作する。本実施形態では、センサ角度θsの前回値と今回値との差である角度変化量Δθが急変判定閾値θth以上となった場合、ディテントローラ26が山部215を乗り越えたと判定し、山越え判定フラグFmjをオンにする。また、時刻x12から所定時間Xc前のタイミングにおけるセンサ回転数Nsを、山上り中回転数Ncとして取得し、位置判定閾値Nthを設定する(式(1))。
センサ回転数Nsが位置判定閾値Nthより小さくなった時刻x13から、谷位置判定時間Xvが経過した時刻x14にて、ディテントローラ26が確実に谷に落ちたと判定し、谷位置判定フラグFvjをオンにする。そして、デューティ指示値を0[%]とし、モータ40への通電オフにする。また、山越え判定フラグFmjをオフにする。
図9は、内部ガタGmとスプラインガタGsの合計が、山部215の頂点と谷部212の最底部との間の角度より大きい例である。時刻x20~時刻x21までは、図8の時刻x10~時刻x11と同様である。ガタの合計が山谷間角度より大きい場合、時刻x22にてディテントローラ26が山部215を乗り越えると、出力軸15がガタの範囲内で回転することで、ディテントローラ26が最底部まで落とし込まれる。このとき、略無負荷状態で出力軸15が回転するため、センサ角度θsが振動する。そのため、一時的にセンサ回転数Nsが位置判定閾値Nthより小さく状況が生じ得るが、Ns<Nthが継続しなかった場合は、谷位置判定フラグFvjをオンしない。センサ回転数Nsが位置判定閾値Nthより小さくなった時刻x23から、その状態が所定時間Xcに亘って継続した時刻x24にて、谷位置判定フラグFvjをオンにする。
回転数の挙動は、温度や電圧等の環境条件によって変動するため、ディテントローラ26が確実に谷に落ちたことを判定するための閾値を一定値にすると、応答性の面で不利になる。そこで本実施形態では、ディテントローラ26の山上り中における回転数である山上り中回転数Ncに基づいて位置判定閾値Nthを設定することで、今回のレンジ切替時の環境条件に応じた位置判定閾値Nthを適切に設定することができる。これにより、ディテントローラ26が最底部に落ちたことを確実に判定可能であるとともに、環境条件に応じ、可及的速やかにモータ40の通電をオフにすることができる。
また、山上り中回転数Ncに乗じる安全係数を、電圧、温度および山越え前の負荷トルクに応じて可変とすることで、位置判定閾値Nthを、より状況に即した値に設定することができる。
図10は、ディテントローラ26が山部215と谷部212との間でメカロックされる例である。図10では、共通時間軸を横軸とし、上段から、目標シフトレンジ、回転角度、回転数、モータ電流、山越え判定フラグFmj、位置判定閾値Nth、谷位置判定禁止フラグFf、谷位置判定フラグFvj、デューティ指示値を示している。図10では、図8と同様、ガタが比較的小さい場合を示しているが、図9のようにガタが比較的大きい場合も同様である。
時刻x30~時刻x32は、図6の時刻x10~時刻x12と同様である。時刻x33にて、メカロックにて出力軸15の回転が停止すると、センサ回転数Nsが位置判定閾値Nthより小さくなる。ここで、メカロックではなく、ディテントローラ26が最底部に落ちることで出力軸15が停止する場合、モータ電流Iは電流判定閾値Ithより小さい状態が維持される。
一方、メカロックが生じている場合、モータ電流Iが上昇し、時刻x34にてモータ電流Iが電流判定閾値Ith以上になると、谷位置判定禁止フラグFfがオンされる。谷位置判定禁止フラグFfがセットされているとき、谷位置判定が無効化されるので、センサ回転数Nsが位置判定閾値Nthより小さい状態が谷位置判定時間Xvに亘って継続したとしても、谷位置判定フラグFvjはオフの状態が維持される。
これにより、メカロックでの出力軸15の停止を、ディテントローラ26が最底部に落とし込まれることで停止していると誤判定するのを避けることができる。なお、メカロック等の異常は、本処理とは別途の異常判定処理により判定し、適宜フェイルセーフ処置に移行する。
以上説明したように、制御装置60は、モータ40を有する電動アクチュエータ10と、ディテント機構20と、位置センサ55と、を備えるパークロックシステム1において、モータ40の駆動によりディテント機構20の切り替えを制御する。
ディテント機構20は、ディテントプレート21、および、ディテントローラ26を有する。ディテントプレート21は、複数の谷部211、212および谷部211、212を隔てる山部215が形成されている。ディテントローラ26は、電動アクチュエータ10により出力軸15が駆動されることで谷部211、212間を移動可能である。位置センサ55は、出力軸15の位置を検出可能である。ここで、位置センサ55は、出力軸15の位置を直接的に検出するものに限らず、出力軸15と接続されるシャフトやギア比等で換算可能な検出対象を検出するものも含む。
制御装置60の制御部70は、回転演算部72と、位置判定部73と、閾値設定部74と、を備える。回転演算部72は、位置センサ55の検出値に基づき、センサ回転数Nsを演算する。位置判定部73は、ディテントローラ26を目標谷部に移動させるとき、ディテントローラ26の位置を判定する。閾値設定部74は、位置判定に係る閾値である位置判定閾値Nthを設定する。
閾値設定部74は、ディテントローラ26が山部215を乗り越えるときに生じる位置センサ55の検出値の急変が検出されると、急変開始の変曲点以前におけるセンサ回転数Nsに基づいて位置判定閾値Nthを設定する。位置判定部73は、センサ回転数Nsが位置判定閾値Nthより小さくなった場合、ディテントローラ26が目標谷部の最底部に落ちたと判定する。「ディテントローラが目標谷部の最底部に落ちた」とは、センサ軸の状態によらず、ディテントローラ26の揺動が収束しており、谷底にて停止している状態とする。また、PレンジからnotPレンジへ切り替えるときの目標谷部は谷部212であり、notPレンジからPレンジへ切り替えるときの目標谷部は谷部211である。
これにより、ディテント切替時の環境条件に応じて位置判定閾値Nthを設定することが可能であるので、ディテントローラ26が目標谷部に落とし込まれたことを適切に判定することができる。また、一律の閾値にて判定する場合よりも、ディテントローラ26が目標谷部に落とし込まれたことを速やかに判定することができる。また、位置センサ55の検出値の急変後に位置判定閾値Nthを設定して位置判定を行うようにすることで、例えば、ディテントローラ26の動き出し等を谷位置であると誤判定するのを防ぐことができる。
閾値設定部74は、位置センサ55の検出値の急変が検出される所定時間Xc前におけるセンサ回転数Nsに係る値を用いて位置判定閾値Nthを設定する。これにより、環境条件に応じた位置判定閾値Nthを適切に設定することができる。所定時間Xcは、出力軸15の初動時およびガタ反転時の過渡状態を除いたタイミングのセンサ回転数Nsを取得可能に設定される。好ましくは、ガタ反転直前のセンサ回転数Nsを取得可能に設定される。ガタ反転直前は略無負荷状態であり、センサ回転数Nsが最も大きくなるため、位置判定閾値Nthを比較的大きい値に設定でき、ディテントローラ26が谷底に落とし込まれたことを、より速やかに判定することができる。
位置判定閾値Nthは、モータ40に印加される電圧に応じて可変である。位置判定閾値Nthは、電動アクチュエータ10の温度に応じて可変である。位置判定閾値Nthは、電動アクチュエータ10の負荷トルクに応じて可変である。また、位置判定閾値Nthは、ディテント機構20の切り替え毎に設定される。これにより、位置判定閾値Nthを環境条件に応じて適切に設定することができる。
位置センサ55は、電動アクチュエータ10と出力軸15との間に設けられる減速機構42を構成するドリブンシャフト47の位置を検出する。換言すると、位置センサ55の検出対象であるセンサ軸は、モータ軸と出力軸とも異なっている。位置センサ55の検出対象であるセンサ軸をモータ軸以外とし、センサ角度θsの急変によりモータ軸とセンサ軸とが共連れ状態になっていない状態を検出することで、ディテントローラ26の位置を適切に判定することができる。
位置判定部73は、モータ40の電流が電流判定閾値Ith以上である場合、センサ回転数Nsに基づく位置判定を無効化する。これにより、メカロック等により出力軸15が動かなくなった状態を、ディテントローラ26が谷底まで落とし込まれたと誤判定するのを避けることができる。
実施形態では、パークロックシステム1が「駆動システム」、電動アクチュエータ10が「アクチュエータ」、ディテントプレート21が「ディテント部材」、ディテントローラ26が「係合部材」、モータ40が「駆動源」、ドリブンシャフト47が「被検出部品」、制御装置60が「アクチュエータ制御装置」、回転演算部72が「変化率演算部」に対応する。また、センサ回転数Nsが「駆動変化率」に対応する。また、PレンジからnotPレンジへ切り替えるときの目標谷部は谷部212であり、notPレンジからPレンジへ切り替えるときの目標谷部は谷部211である。
(他の実施形態)
上記実施形態では、モータ印加電圧、モータ電流および負荷トルクに応じて位置判定閾値を可変にしている。他の実施形態では、これらの一部を省略してもよいし、他のパラメータにより位置判定閾値を変更するようにしてもよい。
上記実施形態では、レンジ切替毎に位置判定閾値を設定している。他の実施形態では、例えば車両のイグニッションスイッチ等である始動スイッチがオンされた後の初回のレンジ切替時に位置判定閾値を設定し、始動スイッチがオフされるまでの間は初回に設定された位置判定閾値を用いる、といった具合に、レンジ切替毎に位置判定閾値を設定しなくてもよい。
上記実施形態では、減速機構は、ウォームギア、ヘリカルギアおよび中間ギア等によって構成されている。他の実施形態では、減速機構の構成や減速段数は、上記実施形態と異なっていてもよい。上記実施形態では、駆動源は、ブラシ付きDCモータである。他の実施形態では、駆動源は、ブラシ付きDCモータ以外のモータであってもよいし、ソレノイド等であってもよい。上記実施形態では電動アクチュエータは回転式であるが、他の実施形態では直動式のものであってもよい。
上記実施形態では、電動アクチュエータはパークロックシステムに適用される。他の実施形態では、電動アクチュエータをパークロックシステム以外の車載システム、または、車載以外の駆動システムに適用してもよい。
本発明の特徴は、例えば以下の通りとしてもよい。「位置判定閾値は、ディテント機構の切り替え毎に設定される請求項1~5のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置」、「位置センサは、駆動源と出力軸との間に設けられる減速機構を構成する被検出部品の位置を検出する請求項1~6のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置」、「位置判定部は、駆動源の電流が電流判定閾値以上である場合、駆動変化率に基づく位置判定を無効化する請求項1~7のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置」である。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。