以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、一実施形態に係るワーク加工用シートの断面図が示される。図1に示されるワーク加工用シート1は、基材11と、基材11における片面側に積層された粘着剤層12とを備える。
上記基材11は、図1に示されるように、粘着剤層12に対して近位に位置する表面層111と、粘着剤層12に対して遠位に位置する裏面層113と、表面層111と裏面層113との間に位置する中間層112とを備える。そして、表面層111および裏面層113の各々が、帯電防止剤を含有する。
上記の通り、基材11が帯電防止剤を含有する層を備えることにより、本実施形態に係るワーク加工用シート1は、優れた帯電防止性を有するものとなる。そのため、ワーク加工用シート1から剥離シートやワークを分離する際における剥離帯電を良好に抑制することができる。
さらに、本実施形態における基材11では、表面層111に含有される帯電防止剤のASTM D1238(190℃、21.18N)に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が、15g/10min以下となっており、裏面層113に含有される帯電防止剤のASTM D1238(190℃、21.18N)に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が、14g/10min以上となっている。
表面層111に含有される帯電防止剤は、15g/10min以下といった比較的低いMFRを示すことにより、帯電防止剤単体での粘度が高いものとなり、表面層111からの流出が生じ難い。そのため、表面層111から粘着剤層12への帯電防止剤の移行が抑制され、本実施形態に係るワーク加工用シート1における粘着力の経時変化を良好に抑制することができる。
このような観点から、表面層111に含有される帯電防止剤の上記MFRは、13g/10min以下であることがより好ましく、特に10g/10min以下であることが好ましい。なお、上記MFRの下限値については特に限定されず、例えば、1g/10min以上であってよく、特に2g/10min以上であってよい。
一方、裏面層113に含有される帯電防止剤のMFRは、上述の通り14g/10min以上であるが、このようにMFRが比較的高い場合、帯電防止剤に含まれるアルカリ金属イオンの量が少ない傾向にある。裏面層113が当該MFRを示す帯電防止剤を含有することにより、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのアルカリ金属イオンの流出が効果的に抑制される。特に、ダイシングが行う場合には、切削水やダイシング後の洗浄水中にアルカリ金属イオンの流出が生じることが多いものの、本実施形態に係るワーク加工用シート1によれば、このような切削水や切削水への流出も効果的に抑制することができる。それにより、ワークや、ワーク加工用シート1を取り扱うための各種装置へのアルカリ金属イオンの移行を効果的に抑制することができ、アルカリ金属イオンの影響を低減することが可能となる。
このような観点から、裏面層113に含有される帯電防止剤の上記MFRは、14g/10min以上であることがより好ましく、特に17g/10min以上であることが好ましい。なお、上記MFRの下限値については特に限定されず、例えば、30g/10min以下であってよく、特に25g/10min以下であってよい。
なお、以上のMFRの測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
1.ワーク加工用シートの構成
(1)基材
本実施形態における基材11は、上述の通り、表面層111、中間層112および裏面層113を備える。これらの層の組成に関しては、表面層111および裏面層113が、それぞれ上述したMFRを示す帯電防止剤を含有することを満たす限り、特に限定されない。
基材11を構成する各層における帯電防止剤以外の材料としては、それらの層を形成することができるものである限り特に限定されず、例えば樹脂を使用することが好ましい。特に、エキスパンド性や切削片の抑制といったワーク加工用シートに求められる性能を発揮し易いという観点から、ポリオレフィン系樹脂、および熱可塑性エラストマーの少なくとも一種を主材として使用することが好ましい。なお、表面層111と裏面層113とは、異なる組成であってもよく、全く同一の組成であってもよい。
(1-1)ポリオレフィン系樹脂
上述したポリオレフィン系樹脂の具体例は、特に限定されない。なお、本明細書において、ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィンを単量体とするホモポリマーもしくはコポリマー、またはオレフィンとオレフィン以外の分子とを単量体とするコポリマーであって重合後の樹脂におけるオレフィン単位に基づく部分の質量比率が1.0質量%以上である樹脂をいう。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成する高分子は直鎖状であってもよいし、側鎖を有していてもよい。また、当該高分子は、芳香環、脂肪族環を有していてもよい。
ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィン単量体としては、炭素数2~8のオレフィン単量体、炭素数3~18のα-オレフィン単量体、環状構造を有するオレフィン単量体などが例示される。炭素数2~8のオレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、2-ブテン、オクテンなどが例示される。炭素数3~18のα-オレフィン単量体としては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセンなどが例示される。環状構造を有するオレフィン単量体としては、ノルボルネン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエンおよびテトラシクロドデセンならびにこれらの誘導体などが例示される。
ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上述したポリオレフィン系樹脂の具体例の中でも、エチレンを主な重合単位として含むポリエチレンおよびプロピレンを主な重合単位として含むポリプロピレンの少なくとも一方を使用することが好ましい。
上記ポリプリピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびブロックポリプロピレンを使用することが好ましい。これらは、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。特に、ホモポリプロピレンとランダムポリプロピレンとを混合して使用することが好ましい。
上述したホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびブロックポリプロピレンとしては、それぞれ、上市されている市販品を用いてもよい。ホモポリプロピレンの市販品の例としては、いずれもプライムポリマー社製の製品名「プライムポリプロ E111G」、製品名「プライムポリプロ E-100GV」、製品名「プライムポリプロ E-100GPL」、製品名「プライムポリプロ E-200GP」等が挙げられる。ランダムポリプロピレンの市販品の例としては、いずれもプライムポリマー社製の製品名「プライムポリプロ B221WA」、製品名「プライムポリプロ B241」、製品名「プライムポリプロ E222」、製品名「プライムポリプロ E-333GV」等が挙げられる。ブロックポリプロピレンの市販品の例としては、いずれもプライムポリマー社製の製品名「プライムポリプロ E701G」、製品名「プライムポリプロ E702G」、製品名「プライムポリプロ E702MG」等が挙げられる。
上記ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンのいずれであってもよいし、これらの2種以上の混合物であってもよい。
特に、上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレンを使用することが好ましく、その市販品の例としては、三菱ケミカル社製の製品名「ノバテックLL」、プライムポリマー社製のネオゼックスシリーズやウルトラゼックスシリーズ等が挙げられる。
基材11を構成する層のいずれかがポリオレフィン系樹脂を含有する場合、当該層中におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、特に15質量%以上であることが好ましく、さらには20質量%以上であることが好ましい。また、上記含有量は、100質量%以下であることが好ましく、特に95質量%以下であることが好ましく、さらには90質量%以下であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の含有量が上記範囲であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1がより良好なエキスパンド性を有し易いものとなる。
(1-2)熱可塑性エラストマー
前述した熱可塑性エラストマーとしては、上記ポリオレフィン系樹脂以外のものであって、基材11の形成を可能とするものである限り、特に限定されない。熱可塑性エラストマーの例としては、例えば、オレフィン系エラストマー、ゴムエラストマー、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述したエラストマーの中でも、良好なエキスパンド性を得易いという観点からは、オレフィン系エラストマーが好ましい。特に、表面層111および裏面層113の少なくとも一方が、オレフィン系エラストマーを含有することが好ましい。なお、本明細書において「オレフィン系エラストマー」とは、オレフィンまたはその誘導体(オレフィン系化合物)に由来する構造単位を含む共重合体であって、常温を含む温度域ではゴム状の弾性を有するとともに、熱可塑性を有する材料を意味する。
オレフィン系エラストマーの例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、ブテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・ブテン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・ブテン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・プロピレン・ブテン・α-オレフィン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むものが挙げられる。これらの中でも、エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。
基材11を構成する層のいずれかがオレフィン系エラストマーを含有する場合、当該層中におけるオレフィン系エラストマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また、上記含有量は、90質量%以下であることが好ましく、特に80質量%以下であることが好ましく、さらには70質量%以下であることが好ましい。オレフィン系エラストマーの含有量が上記範囲であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1がより良好なエキスパンド性を得易いものとなる。
また、良好なエキスパンド性を得易いという観点からは、スチレン系エラストマーを使用することも好ましい。特に、中間層112が、スチレン系エラストマーを含有することが好ましい。なお、本明細書において「スチレン系エラストマー」とは、スチレンまたはその誘導体(スチレン系化合物)に由来する構造単位を含む共重合体であって、常温を含む温度域ではゴム状の弾性を有するとともに、熱可塑性を有する材料を意味する。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-共役ジエン共重合体およびスチレン-オレフィン共重合体などが挙げられ、中でもスチレン-共役ジエン共重合体が好ましい。スチレン-共役ジエン共重合体の具体例としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-イソプレン-スチレン共重合体等の未水添スチレン-共役ジエン共重合体;スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS:スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の水素添加物)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS:スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物)等の水添スチレン-共役ジエン共重合体などを挙げることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加物(水添物)でも未水添物であってもよいが、水素添加物であることが好ましい。上記の中でも、良好なエキスパンド性を得易いという観点から、水添スチレン-共役ジエン共重合体が好ましく、特にスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)が好ましい。
スチレン系エラストマーにおけるスチレンまたはスチレン系化合物に由来する構造単位の含有量(スチレン比率)は、1質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上であることが好ましい。また、上記構造単位の含有量は、優れた製膜性を得易いという観点から、80質量%以下であることが好ましく、特に70質量%以下であることが好ましく、さらには60質量%以下であることが好ましい。これにより、優れたエキスパンド性を達成し易くなる。
基材11を構成する層のいずれかがスチレン系エラストマーを含有する場合、当該層中におけるスチレン系エラストマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また、上記含有量は、90質量%以下であることが好ましく、特に80質量%以下であることが好ましく、さらには70質量%以下であることが好ましい。スチレン系エラストマーの含有量が上記範囲であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1がより良好なエキスパンド性を得易いものとなる。
(1-3)帯電防止剤
本実施形態における帯電防止剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。帯電防止剤の例としては、低分子型帯電防止剤や高分子型帯電防止剤等が挙げられるが、切削片の発生を抑制し易く、また、基材11からのブリードアウトが生じ難く、それにより粘着力の経時変化を抑制し易いという観点から、高分子型帯電防止剤が好ましい。
高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルポリオレフィンブロック共重合体など、ポリエーテルユニットを有する共重合体が挙げられ、これら共重合体にはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの金属塩や、イオン液体が含まれていても良い。これらの中でも、十分な帯電防止性を実現しつつも、粘着力の経時変化を抑制し易いし易いという観点からは、ポリエーテルポリオレフィンブロック共重合体が好ましい。
ポリエーテルポリオレフィンブロック共重合体とは、ポリエーテル部位とポリオレフィン部位のそれぞれのユニットを備える共重合体である。ポリエーテル部がイオン伝導性を示すことで、帯電防止性が発揮され、ポリオレフィン部によって、ポリオレフィン系樹脂との分散性に優れたものとなる。
ポリエーテルポリブロックオレフィン共重合体の市販品の例としては、いずれも三洋化成社製の製品名「ペレスタット300」、「ペレスタット230」、「ペレクトロンPVH」、「ペレクトロンPVL」、「ペレクトロンHS」、「ペレスタット201」、「ペレクトロンUC」等や、三光化学工業社製の製品名「サンコノールTBX-310」等が挙げられる。
これらのポリエーテルポリオレフィンブロック共重合体に係る帯電防止剤のうち、表面層111に含有される帯電防止剤(MFRが15g/10min以下)として好適なものは、製品名「ペレクトロンPVH」(MFR:9.8g/10min)、製品名「ペレスタット230」(MFR:9g/10min)、製品名「ペレクトロンUC」(MFR:14g/10min)等が挙げられる。また、裏面層113に含有される帯電防止剤(MFRが14g/10min以上)として好適なものは、製品名「ペレクトロンPVL」(MFR:19g/10min)等が挙げられる。
また、帯電防止剤は、その1gを純水20mlと混合して得られた試料液を121℃で24時間加熱したときの、当該純水中へのリチウムイオンの抽出量が、50ppm以下であることが好ましく、特に30ppm以下であることが好ましく、さらには10ppm以下であることが好ましい。上記抽出量が50ppm以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのリチウムイオンの流出を効果的に抑制し易いものとなる。なお、上記抽出量の下限値については特に限定されず、例えば0.0001ppm以上であってよく、特に0.001ppm以上であってよい。上記抽出量の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
また、帯電防止剤は、その1gを純水20mlと混合して得られた試料液を121℃で24時間加熱したときの、当該純水中へのナトリウムイオンの抽出量が、150ppm以下であることが好ましく、特に50ppm以下であることが好ましく、さらには10ppm以下であることが好ましい。上記抽出量が150ppm以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのナトリウムイオンの流出を効果的に抑制し易いものとなる。なお、上記抽出量の下限値については特に限定されず、例えば0.0001ppm以上であってよく、特に0.001ppm以上であってよい。上記抽出量の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
本実施形態における基材11では、前述の通り、表面層111および裏面層113が帯電防止剤を含有するものの、中間層112も帯電防止剤を含有してよい。しかしながら、ダイシング時の切削片の発生を抑制し易いという観点からは、中間層112は、帯電防止剤を含有していないか、または、中間層112は、表面層111および裏面層113の各々よりも少ない含有量(単位:質量%)で帯電防止剤を含有していることが好ましい。このように、帯電防止剤を含有していないか、またはその含有量が少ない中間層112が、表面層111と裏面層113との間に存在することにより、ダイシングの際に、ダイシングブレードが中間層112に到達した場合に、中間層112からの切削片の発生を良好に抑制することができる。
表面層111中における帯電防止剤の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上であることが好ましい。帯電防止剤の含有量が3質量%以上であることで、良好な帯電防止性を発揮し易いものとなる。また、表面層111中における帯電防止剤の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、特に35質量%以下であることが好ましく、さらには30質量%以下であることが好ましい。帯電防止剤の含有量が40質量%以下であることで、粘着剤層12の経時変化を抑制し易いものとなる。
裏面層113中における帯電防止剤の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、特に20質量%以上であることが好ましく、さらには30質量%以上であることが好ましい。帯電防止剤の含有量が10質量%以上であることで、良好な帯電防止性を発揮し易いものとなる。また、裏面層113中における帯電防止剤の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、特に45質量%以下であることが好ましく、さらには40質量%以下であることが好ましい。帯電防止剤の含有量が50質量%以下であることで、アルカリ金属イオンの流出を抑制し易いものとなる。
なお、前述の通り、中間層112は、帯電防止剤を含有していないか、または、中間層112は、表面層111および裏面層113の各々よりも少ない含有量(単位:質量%)で帯電防止剤を含有していることが好ましい。中間層112が帯電防止剤を含有する場合、中間層112中におけるその含有量は、10質量%以下であることが好ましく、特に5質量%以下であることが好ましく、さらには3質量%以下であることが好ましい。中間層112中の帯電防止剤の含有量が10質量%以下であることで、切削片の発生を抑制し易いものとなる。なお、上記含有量の下限値としては、例えば、0.01質量%以上であってよい。
(1-4)酸変性樹脂
基材11を構成する各層は、酸変性樹脂を含有することも好ましい。特に、表面層111が、酸変性樹脂を含有することが好ましい。本明細書において「酸変性樹脂」とは、酸成分に由来する構造が高分子鎖に付加されたものを意味する。酸成分に由来する構造は、酸無水物の形態になっていてもよいし、カルボキシ基を有するものであってもよい。表面層111が上記のように酸変性樹脂を含有することにより、基材11と粘着剤層12との密着性がより向上し、ピックアップ時に粘着剤がチップ側に残ることをさらに抑制することができる。
酸変性樹脂の主鎖としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン-アクリル系共重合体が好ましく挙げられる。かかる樹脂によれば、表面層111と粘着剤層12との密着性を向上し易いものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1~4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル等が好ましく挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸エチルがより好ましく、特にアクリル酸エチルが好ましい。
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、20質量%以下であることが好ましく、特に15質量%以下であることが好ましく、さらには10質量%以下であることが好ましい。
樹脂を酸変性するには、樹脂に不飽和カルボン酸を反応させることが好ましい。不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、粘着剤層12との密着性の観点から、無水マレイン酸が特に好ましい。
上記酸変性樹脂における酸成分量(酸成分に由来する構造の量)は、1質量%以上であることが好ましく、特に2質量%以上であることが好ましい。また、当該酸成分量は、7質量%以下であることが好ましく、特に5質量%以下であることが好ましい。上記酸成分量が上記の範囲にあることにより、表面層111と粘着剤層12との密着性がより向上する。
表面層111が酸変性樹脂を含有する場合、表面層111中における酸変性樹脂の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましい。これにより、表面層111と粘着剤層12との密着性がより向上する。また、当該含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。
(1-5)その他の成分
基材11を構成する層は、上述した成分以外のその他の成分を含有してもよい。特に、当該樹脂組成物には、一般的なワーク加工用シートの基材に用いられる成分を含有させてもよい。
そのような成分の例としては、難燃剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤が挙げられる。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
(1-6)基材の表面処理
基材11における粘着剤層12が積層される面には、当該粘着剤層12との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、粗面化処理(マット加工)等の表面処理が施されてもよい。粗面化処理としては、例えば、エンボス加工法、サンドブラスト加工法等が挙げられる。これらの中でも、コロナ処理を施すことが好ましい。
(1-7)基材の製法
本実施形態における基材11の製造方法は特に限定されず、例えば、Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法などを使用することができる。これらの中でも、効率良く基材を製造する観点から、溶融押出法を採用することが好ましく、特にTダイ法を採用することが好ましい。
また、基材11を溶融押出法により製造する場合、各層を構成する成分をそれぞれ混練し、得られた混練物から直接、または一旦ペレットを製造したのち、公知の押出機を用いて、複数層を同時に押し出して製膜すればよい。
(1-8)基材の物性等
本実施形態における基材11は、その1g分を純水20mlと混合して得られた試料液を121℃で24時間加熱したときの、当該純水中へのリチウムイオンの抽出量が、1ppm以下であることが好ましく、特に0.5ppm以下であることが好ましく、さらには0.3ppm以下であることが好ましい。上記抽出量が1ppm以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのリチウムイオンの流出を効果的に抑制し易いものとなる。なお、上記抽出量の下限値については特に限定されず、例えば0.001ppm以上であってよく、特に0.01ppm以上であってよい。上記抽出量の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
また、本実施形態における基材11は、その1g分を純水20mlと混合して得られた試料液を121℃で24時間加熱したときの、当該純水中へのナトリウムイオンの抽出量が、1ppm以下であることが好ましく、特に0.5ppm以下であることが好ましく、さらには0.3ppm以下であることが好ましい。上記抽出量が1ppm以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのナトリウムイオンの流出を効果的に抑制し易いものとなる。なお、上記抽出量の下限値については特に限定されず、例えば0.001ppm以上であってよく、特に0.01ppm以上であってよい。上記抽出量の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
本実施形態における基材11における表面層111側の面の表面抵抗率は、1.0×1013Ω/□以下であることが好ましく、特に1.0×1012Ω/□以下であることが好ましく、さらには1.0×1011Ω/□以下であることが好ましい。上記表面抵抗率が1.0×1013Ω/□以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1が良好な帯電防止性を有し易いものとなる。なお、上記表面抵抗率の下限値は特に限定されず、例えば、1.0×108Ω/□以上であってよく、特に1.0×109Ω/□以上であってよい。上記表面抵抗率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
本実施形態における表面層111の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、特に2μm以上であることが好ましく、さらには4μm以上であることが好ましい。また、表面層111の厚さは、8μm未満であることが好ましく、特に4μm以下であることが好ましい。表面層111の厚さが上記範囲であることで、ワーク加工用シート1が優れた帯電防止性を有し易いものとなる。また、表面層111の厚さが8μm未満であることで、ワーク加工用シート1の粘着力の経時変化を抑制し易いものとなる。
本実施形態における中間層112の厚さは、40μm以上であることが好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには60μm以上であることが好ましい。また、中間層112の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に90μm以下であることが好ましく、さらには80μm以下であることが好ましい。中間層112の厚さが上記範囲であることで、ワーク加工用シート1が優れたエキスパンド性を達成し易くなるとともに、ワーク加工用シート1に所望の性能を付与し易いものとなる。
本実施形態における裏面層113の厚さは、2μm以上であることが好ましく、特に4μm以上であることが好ましく、さらには8μm以上であることが好ましい。裏面層113の厚さが2μm以上であることで、ワーク加工用シート1が優れた帯電防止性を有し易いものとなる。また、裏面層113の厚さは、40μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましく、さらには25μm以下であることが好ましい。裏面層112の厚さが40μm以下であることで、ワーク加工用シート1からのアルカリ金属イオンの流出を抑制し易いものとなる。
(2)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層12を構成する粘着剤としては、被着体に対する十分な粘着力(特に、ワークの加工を行うために十分となるような対ワーク粘着力)を発揮することができる限り、特に限定されない。粘着剤層12を構成する粘着剤の例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の粘着力を発揮し易いという観点から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
本実施形態における粘着剤層12を構成する粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤であってもよいものの、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤(以下、「活性エネルギー線硬化性粘着剤」という場合がある。)であることが好ましい。粘着剤層12が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されていることで、活性エネルギー線の照射により粘着剤層12を硬化させて、ワーク加工用シート1の被着体に対する粘着力を容易に低下させることができる。特に、活性エネルギー線の照射によって、加工後のワークを当該ワーク加工用シート1から容易に分離することが可能となる。
粘着剤層12を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性ポリマー(活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。また、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーと、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよい。
上記活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下「活性エネルギー線硬化性重合体」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化性重合体は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系重合体と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られるものであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。さらに、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
上述した官能基含有モノマー単位を有するアクリル系重合体は、官能基含有モノマーとともに、その他のモノマーを重合させてなるものであってよい。このような官能基含有モノマーおよびその他のモノマー、ならびに上述した不飽和基含有化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば国際公開第2018/084021号に開示されるものを使用することができる。
上記活性エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、特に15万以上であることが好ましく、さらには20万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、150万以下であることが好ましく、特に100万以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
上述した活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としては、例えば、不飽和基含有化合物を反応させる前の上記アクリル系重合体を使用することができる。
上記活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としてのアクリル系重合体の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、特に15万以上であることが好ましく、さらには20万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、150万以下であることが好ましく、特に100万以下であることが好ましい。
また、上述した少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
なお、活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、当該粘着剤に対して、光重合開始剤を添加することが好ましい。また、当該粘着剤には、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分や、架橋剤等を添加してもよい。
本実施形態における粘着剤層12の厚さは、1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましく、さらには5μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層12の厚さは、70μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましく、さらには15μm以下であることが好ましい。粘着剤層12の厚さが上述した範囲であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1が所望の粘着性を発揮し易いものとなる。
(3)剥離シート
本実施形態に係るワーク加工用シート1では、粘着剤層12における基材11とは反対側の面(以下、「粘着面」という場合がある。)をワークに貼付するまでの間、当該面を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されていてもよい。
上記剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。当該プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。上記剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中でも、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
上記剥離シートの厚さについては特に制限はなく、例えば、16μm以上、250μm以下であってよい。
(4)その他
本実施形態に係るワーク加工用シート1では、粘着剤層12における基材11とは反対側の面に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シート1は、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。当該シートでは、接着剤層における粘着剤層12とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたチップを得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該チップが搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
また、本実施形態に係るワーク加工用シート1では、粘着剤層12における粘着面に保護膜形成層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シート1は、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。このようなシートでは、保護膜形成層における粘着剤層12とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたチップを得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をチップに形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
2.ワーク加工用シートの物性等
本実施形態に係るワーク加工用シート1は、その1g分を純水20mlと混合して得られた試料液を121℃で24時間加熱したときの、当該純水中へのリチウムイオンの抽出量が、1ppm以下であることが好ましく、特に0.5ppm以下であることが好ましく、さらには0.3ppm以下であることが好ましい。上記抽出量が1ppm以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのリチウムイオンの流出を効果的に抑制し易いものとなる。なお、上記抽出量の下限値については特に限定されず、例えば0.001ppm以上であってよく、特に0.01ppm以上であってよい。上記抽出量の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
また、本実施形態に係るワーク加工用シート1は、その1g分を純水20mlと混合して得られた試料液を121℃で24時間加熱したときの、当該純水中へのナトリウムイオンの抽出量が、1ppm以下であることが好ましく、特に0.5ppm以下であることが好ましく、さらには0.3ppm以下であることが好ましい。上記抽出量が1ppm以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのナトリウムイオンの流出を効果的に抑制し易いものとなる。なお、上記抽出量の下限値については特に限定されず、例えば0.001ppm以上であってよく、特に0.01ppm以上であってよい。上記抽出量の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
さらに、本実施形態に係るワーク加工用シート1は、その1g分を純水20mlと混合して得られた試料液を121℃で24時間加熱したときの、当該純水中へのリチウムイオンおよびナトリウムイオンの合計抽出量が、2ppm以下であることが好ましく、特に1.5ppm以下であることが好ましく、さらには1ppm以下であることが好ましい。上記抽出量が2ppm以下であることで、本実施形態に係るワーク加工用シート1からのリチウムイオンおよびナトリウムイオンの流出を効果的に抑制し易いものとなる。なお、上記抽出量の下限値については特に限定されず、例えば0.001ppm以上であってよく、特に0.02ppm以上であってよい。上記抽出量の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
本実施形態に係るワーク加工用シート1では、ワーク加工用シートのシリコンウエハの鏡面に対する粘着力(活性エネルギー線未照射且つ後述の保管を行う前の粘着力)(以下、「保管前の粘着力」という場合がある。)が、3000mN/25mm以上であることが好ましく、特に4000mN/25mm以上であることが好ましく、さらには5000mN/25mm以上であることが好ましい。上記保管前の粘着力が3000mN/25mm以上であることにより、ワーク加工用シート1上にワークを良好に固定し易くなる。なお、上記保管前の粘着力の上限値は特に限定されず、20000mN/25mm以下であってよく、特に10000mN/25mm以下あってよく、さらには8000mN/25mm以下あってよい。上記保管前の粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
また、本実施形態に係るワーク加工用シート1では、60℃の環境に2日間保管した後における、ワーク加工用シートのシリコンウエハの鏡面に対する粘着力(活性エネルギー線未照射の粘着力)(以下、「保管後の粘着力」という場合がある。)が、3000mN/25mm以上であることが好ましく、特に4000mN/25mm以上であることが好ましく、さらには5000mN/25mm以上であることが好ましい。上記保管後の粘着力が3000mN/25mm以上であることにより、ワーク加工用シート1上にワークを良好に固定し易くなる。なお、上記保管後の粘着力の上限値は特に限定されず、20000mN/25mm以下であってよく、特に10000mN/25mm以下あってよく、さらには8000mN/25mm以下あってよい。上記保管後の粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
さらに、本実施形態に係るワーク加工用シート1では、上記保管前の粘着力に対する上記保管後の粘着力の割合(以下、「粘着力維持率」という場合がある。)が、70以上であることが好ましく、特に80以上であることが好ましく、さらには90以上であることが好ましい。本実施形態に係るワーク加工用シート1は、前述の通り、表面層111が前述したMFRを有する帯電防止剤を有するものであることにより、良好な帯電防性を示しながらも、上述したように高い粘着力維持率を達成することができる。なお、上記粘着力維持率の上限値は特に限定されず、例えば100以下であってよく、特に95以下であってよい。
3.ワーク加工用シートの製造方法
本実施形態に係るワーク加工用シート1の製造方法は特に限定されない。例えば、剥離シート上に粘着剤層12を形成した後、当該粘着剤層12における剥離シートとは反対側の面に基材11の片面を積層することで、ワーク加工用シート1を得ることが好ましい。
上述した粘着剤層12の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、粘着剤層12を形成するための粘着性組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗布液を調製する。そして、剥離シートの剥離性を有する面(以下、「剥離面」という場合がある。)に上記塗布液を塗布する。続いて、得られた塗膜を乾燥させることで、粘着剤層12を形成することができる。
上述した塗布液の塗布は公知の方法により行うことができ、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により行うことができる。なお、塗布液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層12を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。また、剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、被着体に貼付するまでの間、粘着剤層12を保護していてもよい。
粘着剤層12を形成するための粘着性組成物が前述した架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のポリマー成分と架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層12内に所望の存在密度で架橋構造を形成することが好ましい。さらに、上述した架橋反応を十分に進行させるために、粘着剤層12と基材11とを貼り合わせた後、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
4.ワーク加工用シートの使用方法
本実施形態に係るワーク加工用シート1は、半導体ウエハ等のワークの加工のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用シート1の粘着面をワークに貼付した後、ワーク加工用シート1上にてワークの加工を行うことができる。当該加工に応じて、本実施形態に係るワーク加工用シート1は、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシート、ピックアップシート等として使用されることとなる。ここで、ワークの例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材、ガラス板等のガラス部材が挙げられる。
本実施形態に係るワーク加工用シート1は、前述した通り、優れた帯電防止性を有しながらも、粘着力の経時変化およびアルカリ金属イオンの流出が抑制されたものとなる。特に、本実施形態に係るワーク加工用シート1では、ダイシング時に使用される切削水やダイシング後の洗浄水中へのアルカリ金属イオンの流出を効果的に抑制することができる。そのため、本実施形態に係るワーク加工用シート1は、上述したワーク加工用シートの中でも、特にダイシングシートとして使用することが好適である。
なお、本実施形態に係るワーク加工用シート1が前述した接着剤層を備える場合には、当該ワーク加工用シート1は、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。さらに、本実施形態に係るワーク加工用シート1が前述した保護膜形成層を備える場合には、当該ワーク加工用シート1は、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。
また、本実施形態に係るワーク加工用シート1における粘着剤層12が、前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される場合には、使用の際に、次のような活性エネルギー線の照射することも好ましい。すなわち、ワーク加工用シート1上にてワークの加工が完了し、加工後のワークをワーク加工用シート1から分離する場合に、当該分離の前に粘着剤層12に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、粘着剤層12が硬化して、加工後のワークに対する粘着シートの粘着力が良好に低下し、加工後のワークの分離が容易となる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、本実施形態に係るワーク加工用シート1における基材11と粘着剤層12との間、または基材11における粘着剤層12とは反対側の面には、他の層が積層されていてもよい。また、表面層111における中間層112とは反対側の面、表面層111と中間層112との間、中間層112と裏面層113との間、および、裏面層113における中間層112とは反対側の面には、それぞれ他の層が積層されていてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)基材の作製
ランダムポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製,製品名「ノバテック FX3B」)28質量部、オレフィン系熱可塑性エラストマー(日本ポリプロ社製,製品名「ウェルネクス RFX4V」)47質量部、および帯電防止剤(三洋化成社製,製品名「ペレクトロンPVH」,メルトフローレート:9.8g/10min)25質量部を、各々乾燥させた後、二軸混錬機にて混錬することで、表面層用のペレットを得た。
また、ランダムポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製,製品名「ノバテック FX3B」)80質量部、およびオレフィン系熱可塑性エラストマー(日本ポリプロ社製,製品名「ウェルネクス RFX4V」)20質量部を、各々乾燥させた後、二軸混錬機にて混錬することで、中間層用ペレットを得た。
さらに、オレフィン系熱可塑性エラストマー(日本ポリプロ社製,製品名「ウェルネクス RFX4V」)70質量部、および帯電防止剤(三洋化成社製,製品名「ペレクトロンUC」,メルトフローレート:14g/10min)30質量部を、各々乾燥させた後、二軸混錬機にて混錬することで、裏面層用のペレットを得た。
上記の通り得られた3種のペレットを用いて、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって共押出成形し、厚さ2μmの表面層と、厚さ70μmの中間層と、厚さ8μmの裏面層とが順に積層されてなる3層構造の基材を得た。
なお、上述した帯電防止剤のメルトフローレートの値は、後述する試験例1に記載の通り測定されたものである。
(2)粘着性組成物の調製
アクリル酸n-ブチル62質量部と、メタクリル酸メチル10質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル28質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。続いて、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当する量の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を添加するとともに、スズ含有触媒としてのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して0.025質量部の量で添加した。その後、50℃で24時間反応させることで、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。当該活性エネルギー線硬化型重合体の重量平均分子量を後述の方法によって測定したところ、50万であった。
上記で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製,製品名「オムニラッド127」)2質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)5.71質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物の塗布液を得た。
(3)粘着剤層の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記工程(2)で得られた粘着性組成物の塗布液を塗布し、90℃で1分間乾燥させることで、剥離シート上に、コンマコーターを用いて、厚さ5μmの粘着剤層が形成されてなる積層体を得た。
(4)ワーク加工用シートの作製
上記工程(1)で得られた基材における表面層側の面にコロナ処理を施した後、当該コロナ処理面と、上記工程(3)で得られた積層体における粘着剤層側の面とを貼り合わせることで、ワーク加工用シートを得た。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔実施例2~6,比較例1~3〕
基材の各層を形成するためのペレットの組成および各層の厚さを表1に記載の通り変更した以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
〔比較例4〕
エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)(三井・デュポンポリケミカル社製,製品名「ニュクレルN0903HC」)を、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって押出成形することで、厚さ80μmのEMAAフィルムを得た。当該EMAAフィルムを基材として使用した以外は、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
〔試験例1〕(帯電防止剤のMFRの測定)
実施例および比較例で使用した帯電防止剤について、フローテスター(島津製作所社製,製品名「CFT-100D」)を使用して、ASTM D1238(190℃、21.18N)におけるメルトフローレート(MFR)(g/10min)を測定した。結果を表2に示す。
〔試験例2〕(帯電防止剤の抽出イオン量の測定)
実施例および比較例で使用した帯電防止剤について、その1gを純水20mlと混合して試料液を調製した。かかる試料液をイオン濃度測定用テフロン(登録商標)製容器に入れて密封し、121℃で24時間加熱し、アルカリ金属イオンを抽出した。得られた抽出液中のリチウムイオンおよびナトリウムイオンの濃度(ppm)を、イオンクロマトグラフ装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製,製品名「DIONEX ICS-2100」)を用いて測定した。結果を表2に示す。
〔試験例3〕(基材単体およびシートの抽出イオンの測定)
実施例および比較例で作製した基材単体について、その1g分を切り出し、純水20mlと混合して試料液を調製した。かかる試料液をイオン濃度測定用テフロン(登録商標)製容器に入れて密封し、121℃で24時間加熱し、アルカリ金属イオンを抽出した。得られた抽出液中のリチウムイオンおよびナトリウムイオンの濃度(ppm)を、イオンクロマトグラフ装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製,製品名「DIONEX ICS-2100」)を用いて測定した。結果を表3に示す。また、表3には、それらのイオン量の合計量も示す。
さらに、実施例および比較例で作製したワーク加工用シートについても、上記と同様に試料液を調製し、抽出液中のリチウムイオンおよびナトリウムイオンの濃度(ppm)を測定した。その結果を表3に示す。また、それらのイオン量の合計量も表3に示す。なお、表中の「N.D.」との表記は、ナトリウムイオンの濃度については0.002ppm未満であり、リチウムイオンの濃度については0.0005ppm未満であったことを意味する。
〔試験例4〕(粘着力の測定)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートを、25mm幅の短冊状に裁断した。得られた短冊状のワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の粘着面を、鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、2kgゴムローラーを用いて貼付し、20分静置し、測定用サンプルとした。
得られた測定用サンプルについて、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンUTM-4-100」)を用い、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワーク加工用シートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を、保管前の粘着力として表3に示す。
また、上記と同様に作製した測定用サンプルを、60℃の環境に2日間保管した。当該保管後の測定用サンプルについても、上記と同様に粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を、60℃2日間保管後の粘着力として表3に示す。
さらに、上記保管前の粘着力に対する上記保管後の粘着力の割合を算出した。当該値を、粘着力維持率として表3に示す。
〔試験例5〕(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例にて製造した基材を、23℃、50%相対湿度下で24時間調湿したのち、表面層側の面の表面抵抗率を、DIGITAL ELECTROMETER(ADVANTEST社製)を用いて印加電圧100Vで測定した。結果を表3に示す。
〔試験例6〕(帯電防止性の評価)
グラインダー(ディスコ社製,製品名「DFG8540」)を用いて、厚さが350μmとなるまで、6インチシリコンウエハの片面を研削した。当該研削面に対し、ラミネーターを用いて、実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面を貼付した。
貼付から20分後、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD6362」)を用いて、以下のダイシング条件でダイシングを行うことで、シリコンウエハをチップに個片化した。
ダイシング条件
チップサイズ:10mm×10mm
カッティング高さ:60μm
ブレード:製品名「ZH05-SD2000-Z1-90 CC」
ブレード回転数:35000rpm
切削スピード:60mm/sec
切削水量:1.0L/min
切削水温度:20℃
ダイシング後、ワーク加工用シートをスピナーテーブル上に吸着により固定した状態で、上記の通り得られたチップの洗浄および乾燥を行った。そして、スピナーテーブルからワーク加工用シートを持ち上げた直後におけるワーク加工用シートの帯電圧(V)を測定器(Prostat社製,製品名「PFK-100」)を用いて測定した。そして、以下の基準に基づいて、帯電防止性を評価した。帯電圧および評価結果を表3に示す。
◎:帯電圧が、100V以下であった。
○:帯電圧が、100V超、500V以下であった。
×:帯電圧が、500V超であった。
表3から明らかなように、実施例で製造したワーク加工用シートは、良好な帯電防止性を有するものでありながらも、高い粘着力維持率を示すとともに、アルカリ金属イオンの流出量を低く抑えることができた。