JP7728830B2 - パスタフィラータチーズの製造方法 - Google Patents
パスタフィラータチーズの製造方法Info
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例えば、特許文献1には、パスタフィラータチーズの物性を改善する方法として、チーズカードを温湯中で練圧する際に、チーズカードと、カルシウムと結合または吸着し得る食感改良剤と接触させる方法が知られている(特許文献1)。
また、特許文献2には、脂肪の添加を行わず、混練工程で温湯を使用しない方法が記載されている。
また本発明者らは、モッツァレラチーズにおける可溶性カルシウム及び不溶性カルシウムの分布の変化の影響について発表しており、原料乳のpHを調整し、カルシウムの分布を変化させることで、モッツァレラチーズの物性を調整することができることについて知見を得ている(非特許文献1)。
原料乳のpHを5.7~6.3に調整するpH調整工程と、
pHを調整した前記原料乳を発酵させる発酵工程と、
発酵後、発酵乳にレンネットを加えて、チーズカードを形成させるカード調製工程と、
前記チーズカードを延伸し、成形してチーズ塊を得るチーズ塊形成工程と、
前記チーズ塊を、食塩水に浸漬させる浸漬工程と、を備えるフレッシュタイプのパスタフィラータチーズの製造方法である。
本発明の製造方法によれば、軟らかい食感を有し、かつ外観が滑らかなパスタフィラータチーズを製造することができる。
本発明の製造方法によれば、保存時における離水率が少なく、長期間風味やジューシーさが維持されるパスタフィラータチーズを製造することができる。
このような工程とすることで、原料乳のpH調整を容易に行うことができる。
このよう形態で酸を原料乳に添加することで、容易に原料乳のpHを調整することができる。
なお、本発明の製造方法により製造されたチーズは、さらにジューシーさ及び口溶けに優れる。
本発明の製造方法において用いられる原料乳(チーズ製造のための原料に用いられる乳)としては、パスタフィラータチーズを製造するのに通常用いられる牛由来の原料乳を用いることができ、具体的には生乳、牛乳、成分調整牛乳を用いることができる。
原料乳は、加熱殺菌後、好ましくは20~60℃、より好ましくは25~55℃、さらに好ましくは30~50℃、特に好ましくは35~45℃に調節する。
原料乳のpHは、通常6.6~6.8である。すなわち、原料乳のpHを下げることで、原料乳のpHを5.7~6.3に調整する。
酸としては、食用酸であれば特に限定されず、酢酸、リン酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸及びこれらの金属塩等が例示できる。
本発明においては、クエン酸、及び/又は乳酸を用いることが好ましい。
水溶液とすることで、添加が容易となり、ムラなく均一に添加することができる。
酸の水溶液を添加することで、原料乳の温度が高すぎる、又は低すぎると、スターターの酵素活性温度まで原料乳の温度を調節する必要があり、手間を要する。また、余計な加熱、及び冷却は、最終製品の品質の低下を招く。
酸の水溶液を上記温度範囲内に調節した状態で原料乳に添加することで、原料乳が酵素活性温度から大きく外れることなく、pHを調整することができる。
一方で、乳酸を採用した場合、pHを5.7~6.3に調整することで、上記特性を有するパスタフィラータチーズを得ることができる。
本発明の製造方法は、pH調整された原料乳を、常法により発酵させる。
スターターとしては、チーズの製造において通常用いられるものを用いることができる。例えば、乳酸菌スターターとして、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(L.lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)等を用いることができる。
乳酸菌スターターの添加量は特に限定されないが、原料乳100質量%に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.5~4質量%であり、さらに好ましくは1~3質量%である。
次いで、発酵工程を経て得られた発酵乳から、カードを調製する。
カードの調整は、常法により行うことができる。すなわち、発酵乳に、レンネット(凝乳酵素)を加えて凝固させる。
レンネットの添加、混合後、一定時間静置することにより、カードが形成されたら、これを例えば2~5cmの四方にカッティングする。カッティングしたカードを撹拌、静置することにより、カードからホエイを排出する。
その中でも、酵素活性温度が30~50℃のレンネットが好ましく、35~45℃のレンネットがより好ましい。また、45℃より高い温度では、失活するレンネットが好ましい。
そのようなレンネットとして、例えば、Rhizomucor miehei由来のレンネットが例示できる。
クロマトグラフィー精製としては、陽イオン交換クロマトグラフィーによる精製、及び疎水クロマトグラフィーによる精製等が例示できる。
クロマトグラフィー精製された微生物由来のレンネットを用いることで、アミラーゼ及びグルカナーゼ等の、凝乳酵素以外の酵素が除去されていることから、苦味が少ない。また、他の酵素分解反応が起こり難いことから、チーズの物性をよりコントロールしやすくなる。
前記カード形成工程において、ホエイ除去後、カードを裁断してから、加熱及び混練を行う。
カードの加熱及び混練は、カードに湯を加えて行う、いわゆる湯練りを採用することができる。
また、カードを水蒸気加熱、又はジュール加熱(通電加熱、オーミック加熱ともいう)により加熱した後に、混練を行っても良い。
混練は、常法により行うことができ、カードの混練に用いられる混錬機を用いて行うことができる。
カードの混練及び成形は、連続式で行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。
チーズ塊1個当たりの重量は、特に制限されないが、通常4~200gであり、好ましくは50~200gであり、特に好ましくは80~120gである。
例えば、10~20℃である液中にチーズ塊を投入することにより冷却する。
冷却後のチーズ塊を、食塩水に浸漬することで、本発明のフレッシュタイプのパスタフィラータチーズが完成する。
食塩水の濃度は、特に限定されないが、通常0.1~20質量%であり、好ましくは0.2~10質量%であり、より好ましくは0.25~2質量%であり、さらに好ましくは0.3~1質量%である。
食塩水に浸漬させることで、パスタフィラータチーズに塩味を付与することができる。また、パスタフィラータチーズの保存性が向上する。
パスタフィラータチーズの軟らかい食感は、例えば、10℃での硬度が1.0~8.0×104N/m2である。
ここで、本明細書における滑らかな外観とは、チーズの表面に荒れ等が発生せず、ツルツルとしている状態を意味する。
ここで、コク味という用語は広範に用いられているが、特に乳製品のコク味については、乳脂肪感やクリーミー感がコク味として表現されている(参考文献:日本味と匂学会誌、第16巻、第3号、2009年12月、第637-640頁)。
このように、保存時における離水が十分に抑制されていることから、本発明の製造方法により製造されたパスタフィラータチーズは、組織が均一で、滑らかな外観を有している。
(1)原料乳のpH調整
100Lの全乳を、プレート式熱交換機を用いて、HTST法で75℃15秒の加熱処理条件で殺菌した。殺菌した原料乳を40℃に冷却後、40℃に加温した10質量%クエン酸水溶液を、原料乳が所定のpHとなる量添加した(比較例:pH5.7、実施例1:pH5.8、実施例2:pH6.3、比較例2:pH6.4)。
pHを調整した原料乳に、バルクスターター(クリスチャンハンセン社製)を所定量添加し、混合し、1時間発酵を行った。
発酵後、発酵液にレンネット(DSM社製、Fromase XLG)を3g添加し、混合し、30分間静置してカードを形成した。
得られたカードを2.0cm四方の立方体にカッティングした後、ホエイ排出を行った。
レンネット添加から全量排出までは、約4時間で行った。さらに、カッティングしたカードを1時間撹拌し、その後静置した。
ホエイ排出後、カードを40℃に保温しながら堆積し、pHを5.3にした。
得られたカードを、1cm四方の立方体にカットしてから、85℃のお湯30Lを加え、延伸を行った。延伸は、カードの温度が60℃に達するまで行った。
延伸されたカードを、モールダーを用いて100g/1個の球形に成形し、これを15℃の冷水に投入し、チーズ塊を得た。
チーズ塊を、食塩水に浸漬し、フレッシュタイプのパスタフィラータチーズを得た。当該パスタフィラータチーズを、5℃で保存した。
本発明の技術分野に精通するパネラーに、5℃で保存開始5日後の実施例1~2、及び比較例1~2のパスタフィラータチーズを観察、及び喫食してもらい、軟らかさ、ジューシーさ、口溶けの良さ、及び組織の均一さ(表面の滑らかさ)を、評価した。
評価は、各項目について、最高点を5点、最低点を1点とした。
結果を表1に示す。
製造したチーズの保存開始後1日後に、各試料を2つずつ取り出し、硬度を測定した。
硬度の測定は、各試料から3cm×3cm×高さ2cmのサンプルを切り出し、レオメーター((株)山電製;RE-3305RHEONER)を用いて、品温10℃で、直径8mmの円柱型のプランジャーを、1.0mm/sでサンプルに1.5cm差し込み、破断強度を測定し、平均値を算出した。結果を表2に示す。
離水率は各試料から4等分にスライスした1片を室温で30分静置し、遊離した水の重量/元のチーズ片重量×100で算出した。
結果を表2に示す。
実施例2(原料乳のpH6.3)は、わずかに実施例1に劣るものの、十分な軟らかさ、ジューシーさ、口どけの良さ、組織の均一さを有していると評価された。
比較例2は、全ての評価項目において、実施例1及び2と比べて劣っていた。
推定ではあるが、この高い離水率が、チーズの組織が崩壊し、表面が溶けて荒れた外観の原因になったと考えられる。
一方、比較例2は、離水率は実施例1及び2と比べても遜色ないが、硬度が高く、軟らかいパスタフィラータチーズと言うことはできなかった。
加えて、本発明の製造方法により製造されたパスタフィラータチーズは、ジューシーで、口どけも良く、優れた嗜好性を有するチーズであった。
したがって、本発明の製造方法は、原料乳のpHを5.7~6.3に調整することが発明の特徴であるといえる。
Claims (6)
- パスタフィラータチーズの製造方法であって、
原料乳のpHを5.7~6.3に調整するpH調整工程と、
pHを調整した前記原料乳を発酵させる発酵工程と、
発酵後、発酵乳にレンネットを加えて、チーズカードを形成させるカード調製工程と、
前記チーズカードを延伸し、成形して、チーズ塊1個当たりの重量が4~200gのチーズ塊を得るチーズ塊形成工程と、
前記チーズ塊を、濃度が0.1~2質量%の食塩水に浸漬させる浸漬工程と、
を備え、
前記原料乳の脂肪分が3.0~4.5質量%であり、
前記のパスタフィラータチーズの10℃での硬度が1.0~8.0×10 4 N/m 2 である、
フレッシュタイプのパスタフィラータチーズの製造方法。 - 前記チーズ塊形成工程が、前記チーズカードを延伸し、成形後、液中に投入することにより冷却することでチーズ塊を得る工程である、請求項1に記載のパスタフィラータチーズの製造方法。
- 前記pH調整工程が、原料乳にクエン酸及び/又は乳酸を加える工程であり、
前記クエン酸及び/又は乳酸が、1~20質量%クエン酸水溶液、及び/又は1~20質量%乳酸水溶液であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパスタフィラータチーズの製造方法。 - 前記レンネットがクロマトグラフィー精製された微生物由来のレンネットであり、
前記レンネットの酵素活性温度が30~50℃のレンネットであることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のパスタフィラータチーズの製造方法。 - 前記チーズ塊形成工程が、前記チーズカードに湯を加えて加熱及び混錬を行い、該加熱は前記チーズカードの温度が50~80℃となるように行われる、請求項1~4の何れか一項に記載のパスタフィラータチーズの製造方法。
- 前記食塩水の濃度は、0.25~2質量%である、請求項1~5の何れか一項に記載のパスタフィラータチーズの製造方法。
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