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JP7731941B2 - 正極活物質の前駆体及び製造方法 - Google Patents
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JP7731941B2 - 正極活物質の前駆体及び製造方法 - Google Patents

正極活物質の前駆体及び製造方法

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Description

本発明は、正極活物質の前駆体及びその製造方法に関する。
特許文献1には、非水電解質二次電池用の正極活物質の前駆体の製造方法が開示されている。この前駆体は、板状一次粒子が凝集された中心部と、該中心部の外側に、微細一次粒子が凝集して形成された低密度と、上記板状一次粒子が凝集して形成された高密度部とが積層した積層構造を備えていることを特徴の一つとしている。また、特許文献2には、多孔質な正極活物質を製造するための前駆体が開示されている。例えば、前駆体とLi化合物とを混合して焼成することで正極活物質を製造することができる。
特開2016-154143号公報 特開2019-021610号公報
ところで、正極活物質の前駆体を焼成して正極活物質を製造する際に、Liとの反応が不十分となり、出力特性が不十分となる場合がある。
そこで、本開示では出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現し得る技術を提供することを主な目的とする。
ここに開示される技術の一態様は、リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の前駆体である。この前駆体は、Niを有する遷移金属複合水酸化物粒子を含み、上記遷移金属複合水酸化物粒子は、SEM観察に基づく平均アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)が2以上の一次粒子が凝集した外殻部と、上記外殻部に囲まれた中空部とを備えている。上記一次粒子の50%以上は、上記遷移金属複合水酸化物粒子の中心から表面に向かって放射状に配向しており、上記遷移金属複合水酸化物粒子全体に含まれる一次粒子の90%以上が上記外殻部に存在している。
上記前駆体に含まれる遷移金属複合水酸化物粒子(前駆体粒子ともいう)は、一次粒子の90%以上が外殻部に存在しており、一次粒子が少ない若しくは存在しない中空部を備えている。これにより、前駆体粒子の反応面積が増加するため、焼成時にLiと反応が良好になり、未反応のLiを抑制することができる。また、外殻部の一次粒子の50%以上が放射状に配向していることで、Liが拡散し易くなり、出力特性を向上させることができる。
図1は、一実施形態に係る正極活物質の前駆体粒子の断面構造の模式図である。 図2は、一態様におけるリチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の製造方法の概要を示すフロー図である。 図3は、晶析装置の大まかな構成を示す模式図である。 図4は、図3に示すIV-IV線に沿った断面の模式図である。 図5は、一実施形態に係る前駆体粒子の焼成物を用いたリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。 図6は、捲回電極体20の構成を示す模式分解図である。 図7は、実施例1の前駆体粒子の断面SEM画像である。
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本技術の実施に必要な事柄(例えば、本技術を特徴付けないリチウムイオン二次電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
本明細書において、数値範囲を「A~B(ここでA、Bは任意の数値)」と記載している場合は、「A以上B以下」を意味すると共に、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」の意味を包含する。
本明細書において、「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池全般をいい、リチウムイオンキャパシタ等を包含する用語である。
本開示により、リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の前駆体材料が提供される。前駆体材料は、例えば、粉末状である。前駆体材料は、複数の前駆体粒子を含む。図1は、一実施形態に係る正極活物質の前駆体粒子200の断面構造の模式図である。前駆体粒子200は、外殻部210と、中空部220とを含む中空構造を有する。
前駆体材料は、主成分として前駆体粒子200を含む。前駆体粒子200は、例えば、前駆体材料の80wt%以上、90wt%以上、95wt%以上、または100wt%を占める。
前駆体粒子200は、遷移金属複合水酸化物を含む粒子(「遷移金属複合水酸化物粒子200」ともいう。)である。前駆体粒子200は、遷移金属を含んでおり、好ましくは少なくともニッケル(Ni)を含んでいる。前駆体粒子200は、リチウム元素(Li元素)が供給された状態で焼成されることでリチウム遷移金属複合酸化物に変換される。かかるリチウム遷移金属複合酸化物は、正極活物質として使用することができる。
いくつかの態様において、前駆体粒子200は、以下の一般式(i):
Ni(1-x-y-z)CoMn(OH)2+a (i)
で表される組成を有する。ただし、一般式(i)において、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z≦0.1、0≦a≦0.5、x+y+z<1を満たすものとする。また、一般式(i)においてAはMg、Ca、V、Cr、Al、Ti、Zr、Nb、Mo、Wから
なる群から選択される少なくとも1種の元素である。
いくつかの態様では、Niの割合がCoおよびMnの合計割合よりも高い。即ち、一般式(i)において、x+y+z<0.5であり得る。
いくつかの態様では、前駆体粒子200は、Ni、Co、およびMnを含む。即ち、一般式(i)において、0<x<0.5、かつ、0<y<0.5であり得る。また、いくつかの態様では、0<x<0.3、かつ、0<y<0.3であり得る。
いくつかの態様において、前駆体粒子200は、略球状である。また、いくつかの態様において前駆体粒子200は不定形状等であってもよい。
本明細書において「略球状」とは、全体として概ね球体とみなせる形態を示し、電子顕微鏡の断面観察画像に基づく平均アスペクト比が、概ね1~2、好ましくは1~1.5、より好ましくは1~1.2であることをいう。また、本明細書において「アスペクト比」とは、粒子の輪郭に外接する長方形のうち最も面積が小さくなる長方形の長辺を短辺で割った値のことをいう。また、「平均アスペクト比」とは、ランダムに選ばれた少なくとも100個の粒子におけるアスペクト比の算術平均のことをいう。
前駆体粒子200の平均粒径は、例えば3.0μm以上であって、好ましくは4.0μm以上、より好ましくは4.5μm以上である。また、前駆体粒子200の平均粒径は、例えば、9.0μm以下であって、好ましくは7.0μm以下、より好ましくは5.5μm以下である。
本明細書において、「平均粒径」とは、メジアン径(D50粒径)を指し、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径をいう。
外殻部210は、複数の一次粒子212を含む。本実施形態において、外殻部210は、複数の一次粒子212が物理的または化学的な結合力によって凝集して形成されている。本明細書において、「一次粒子」とは、前駆体粒子200を構成する粒子の最小単位をいい、具体的には、外見上の幾何学的形態から判断した最小の単位をいう。
外殻部210は、単層構造であってよく、複数の層が重なった多層構造であってもよい。
外殻部210の平均厚みは、前駆体粒子200の平均粒径に対して、例えば、1/5以下であるとよく、好ましくは1/6以下である。また、外殻部210の平均厚みは、前駆体粒子200の平均粒径に対して、例えば、1/10以上、または1/8以上であってよい。外殻部210の平均厚みが前駆体粒子200の平均粒径に対して薄肉化することで、Liイオンの拡散抵抗が低減し、出力特性が向上する。
なお、本明細書において、外殻部210の厚みは、電子顕微鏡による前駆体粒子200の断面観察画像において測定されたものをいい、外殻部210の平均厚みは、少なくとも100個の前駆体粒子100において測定される外殻部210の厚みの算術平均のことをいう。
一次粒子212の形状は、例えば、針状、板状、楕円状等であり得る。また、前駆体粒子200の電子顕微鏡の断面観察画像に基づく平均アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)は、例えば、2以上であって、好ましくは3以上、より好ましくは5以上である。一次粒子212の平均アスペクト比が長いほど、Liイオンの拡散抵抗が低減し得る。一次粒子212の平均アスペクト比は、例えば50以下、20以下、または10以下であり得る。
一次粒子212の長軸の平均長さは、例えば、0.05μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、または0.3μm以上である。また、一次粒子212の長軸の平均長さは、例えば、1.2μm以下、1μm以下、または0.8μm以下である。
一次粒子212の短軸の平均長さは、例えば、0.01μ以上、0.02μm以上、0.05μm以上、または0.1μm以上である。また、一次粒子212の短軸の平均長さは、例えば、0.6μm以下、0.4μm以下、または0.2μm以下である。
一次粒子212の長軸及び短軸の平均長さは、前駆体粒子200の電子顕微鏡の断面観察画像に基づいて測定される。本明細書において、一次粒子212の長軸及び短軸の平均長さは、少なくとも100個の一次粒子212における長軸及び短軸の算術平均のことをいう。
外殻部210に含まれる一次粒子212の50%以上は、前駆体粒子200の中心から前駆体粒子200の表面に向かって放射状に配向している。好ましい態様では、上記配向している一次粒子212が60%以上であり、より好ましくは65%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。より多くの一次粒子212が放射状に配向することにより、Liイオンの拡散抵抗が低減し、出力特性が向上し得る。なお、上述の一次粒子212の割合は、個数ベースの割合を示し、測定した一次粒子212の全体の個数(少なくとも100個)のうち、放射状に配向している一次粒子212の個数の割合を示している。
本明細書において、「一次粒子が放射状に配向している」とは、一次粒子212の中心と前駆体粒子200の中心とを結ぶ基準線に対して、当該一次粒子212の長軸方向がなす角度が30°以下であるものをいう。なお、かかる測定は、イオンビームで前駆体粒子200の断面加工を行い、かかる断面を電子顕微鏡で観察することにより行うことができる。なお、他の方法として、電子線後方散乱回折法(EBSD)により配向性を確認することもできる。
中空部220は、外殻部210に囲まれた空間である。中空部220は、外殻部210完全に囲まれていなくてもよく、外殻部210の一部が欠損している態様等を包含する。中空部220には、一次粒子の数が外殻部210よりも少ない若しくは存在していない。即ち、前駆体粒子200全体に含まれる一次粒子のうち、外殻部210に含まれる一次粒子212の割合は、例えば90%以上、95%以上、98%以上、または100%であり得る。これにより、焼成時にLiとの反応が良好な活物質を得ることができる。
なお、本明細書において、かかる一次粒子の割合は、断面SEMにおける面積比により測定される。
図2は、一態様におけるリチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の製造方法の概要を示すフロー図である。この製造方法は、原料準備工程S10、晶析工程S20、混合工程S30、および焼成工程S40を含む。原料準備工程S10および晶析工程は、上述した前駆体粒子200の製造工程に含まれる。なお、ここで開示される製造方法には、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
原料準備工程S10は、例えば前駆体材料の原料を準備する工程である。前駆体材料としては、例えば、前駆体粒子200に含まれる金属元素を含む金属化合物、アンモニウムイオン供給体が挙げられる。前駆体粒子200に含まれる金属元素を含む金属化合物は、例えば、水溶性塩であり得る。かかる水溶性塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩等を適宜使用し得る。これらの水溶性塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前駆体粒子200に含まれる金属元素は、例えば、上記一般式(1)に示される金属元素であり、少なくともNiを含む。
原料準備工程S10では、例えば、上記金属化合物を水に溶解して、前駆体粒子200に含まれる金属元素を有する原料金属水溶液を準備する。水としては、不純物の混入を防止する観点から、イオン交換水、蒸留水、限外濾過水、逆浸透水等を好適に用いることができる。
原料準備工程S10では、アンモニウムイオン供給体を準備する。アンモニウムイオン供給体は、例えば、アンモニアイオンを含む水溶液である。かかる水溶液は、例えば市販品(アンモニア水)を購入してもよいし、水を含む溶媒とアンモニウムイオンを供給する化合物を溶解させて準備してもよい。かかる化合物は、例えば、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム水、アンモニア等を適宜使用し得る。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アンモニウムイオンは、後述する晶析工程S20において、核の生成ないし成長を促進したり、一次粒子間の接着性ないし付着性を高めたりすることができる。限定されるものではないが、アンモニウムイオンを含む水溶液は、例えば、アンモニウムイオンを0.1wt~5wt%、好ましくは0.5wt%~2wt%含む。
晶析工程S20では、晶析装置を用いて前駆体粒子を調製する。晶析装置は、反応場にテイラー渦流(Taylor Vortex Flow)を発生させることができる装置であることが好ましい。テイラー渦流を発生させる装置は市販品であってよい。図3は、晶析装置の大まかな構成を示す模式図である。図4は、図3に示すIV-IV線に沿った断面の模式図である。図3中のL、Rはそれぞれ左、右を示しているが、晶析装置の設置態様を限定するものではない。
図3に示す晶析装置300は、外筒310と、内筒320と、モータ322とを備える。晶析装置300は、外筒310と内筒320との間に反応室330を有する。反応室330は、晶析反応を行う領域であり、テイラー渦流が発生する領域である。なお、テイラー渦流とは、テイラー渦を生成した流体の流れを示す。テイラー渦とは環状に流れる渦の形態を示す。
外筒310は、本実施形態では円筒状である。外筒310の中心軸は、図3の左右方向に延びている。ここでは、外筒310は中心軸を中心に回転しないように固定されている。
本実施形態では、外筒310には、第1供給口312、第2供給口314、第3供給口316、および排出口318が設けられている。これらはいずれも反応室330と連通している。
本実施形態では、第1供給口312は、原料金属水溶液を反応室330へ供給する部分である。また、第2供給口314は、pH調整剤を反応室330へ供給する部分である。また、第3供給口316は、アンモニウムイオン供給体を反応室330へ供給する部分である。なお、本実施形態では、供給口が3つ設けられているが、その数は特に限定されるものでなく、1つ、2つ、または4以上であってよい。供給口ごとに供給物の種類を分けてもよいが、2種以上の供給物を1つの供給口から供給してもよい。
排出口318は、反応室330内の流体を排出するために設けられている。排出口318から排出された流体には、晶析反応により得られた前駆体粒子200が含まれる。これにより、反応室330から前駆体粒子200を回収することができる。
内筒320は、本実施形態では円筒状である。なお、内筒320は、円柱状であってもよい。内筒320の直径は、外筒310の直径よりも小さくなるように設計されている。外筒310の内径と内筒320の外径との間の空間は反応室330である。内筒320の直径は、反応室330にテイラー渦流を発生可能な大きさに設計されている。内筒320の中心軸は、図3の左右方向に延びている。本実施形態では、内筒320の中心軸は、外筒310の中心軸と重なるように配置されている。
内筒320は、モータ322と連結しており、モータ322により、内筒320がその中心軸を中心として時計回りまたは反時計回りに回転可能なように設計されている。内筒320を回転させることで、反応室330の流体(例えば液相)にテイラー渦を生成することができる。
内筒320の中心軸を中心とした回転の回転数は、テイラー渦流を生成することができれば特に限定されないが、例えば、300rpm以上、500rpm以上、1000rpm以上、1500rpm以上、または2000rpm以上である。また、内筒320中心軸を中心とした回転の回転数は、例えば、3000rpm以下、2800rpm以下、または2600rpm以下である。
晶析装置300を用いて前駆体粒子200を調製するために、例えば、反応室330に前駆体粒子に含まれる金属元素を含む金属化合物と、アンモニウムイオン供給体とを含む反応液を準備する。かかる反応液は、例えば、原料金属水溶液と、アンモニウムイオン供給体とをそれぞれ反応室330に供給することで準備される。なお、原料金属水溶液とアンモニウムイオン供給体との混合液を反応室330に供給してもよい。
晶析工程S20では、反応場の酸素濃度を調整して行われることが好ましい。反応室330における酸素濃度は、例えば、20vol%以上であるとよく、好ましくは22vol%以上である。また、反応室330における酸素濃度は、例えば、40vol%以下であって、好ましくは35vol%以下、より好ましくは30vol%以下、さらに好ましくは25vol%以下である。反応室330における酸素の供給が多いほど、前駆体粒子の中空部の割合が高くなる傾向にある。即ち、反応室330における酸素の供給が多いほど、前駆体粒子の平均粒径に対する外殻部の厚みを小さくすることができる。
反応液の25℃におけるpHは、例えば9以上であって、好ましくは10.5以上、より好ましくは10.8以上、さらに好ましくは11以上、特に好ましくは11.4以上である。また、特に限定されないが、反応液の25℃におけるpHは、例えば13.5以下であって、好ましくは13以下、より好ましくは12.5以下、さらに好ましくは12以下である。好ましいいくつかの態様では、反応液のpHは晶析反応の開始から終了までpHを一定に維持する。かかる条件であれば、晶析反応の途中でpHを変化させないため、前駆体粒子200の生産効率が向上する。なお、一定のpHとは、厳密に同じ値のpHでなくてもよく、例えば、晶析反応の開始時のpHの±0.3、好ましくは±0.2のpHの変化は許容されるものとする。
反応液のpHの調整には、例えば、pH調整剤を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化塩、硫酸塩等を適宜使用し得る。これらのpH調整剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この中でもアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化塩の使用が好ましく、水酸化ナトリウムの使用が特に好ましい。
反応室330に収容された反応液は、中心軸を中心として内筒320を回転させることで撹拌される。内筒320を回転させることで、反応液にテイラー渦を生成することができる。テイラー渦は、反応室330内の反応液の少なくとも一部に生成される。テイラー渦は、反応液全体に生成されてもよい。テイラー渦は、例えば、第1のテイラー渦332と、これに隣接する第2のテイラー渦334とをペアとして生成させる。第1のテイラー渦332は、内筒320の円周に沿って生成され、円周方向に向かって時計回りの渦を有している。第2のテイラー渦334は、内筒320の円周に沿って生成され、円周方向に向かって第1のテイラー渦とは反対周り(反時計回り)の渦を有している。テイラー渦自体は、内筒320の円周に沿ってリング上に生成されているが、テイラー渦を形成している流体自体は隣接するテイラー渦に移動する(図3では、左側から右側に向かって移動する)。そのため、テイラー渦により撹拌された反応液は、供給口312、314,316から排出口318に向かって移動すると共に晶析が進行し、排出口318から前駆体粒子200を回収することができる。
反応室330から回収した前駆体粒子200は、例えば、濾過などの固液分離法により分離し、水等で洗浄し乾燥させることで回収することができる。
特に限定されないが、晶析反応の反応時間は、例えば、0.1時間~5時間であって、好ましくは0.3時間~2時間、より好ましくは0.5時間~1時間である。ここで、晶析反応の反応時間とは、例えば、アンモニウムイオン供給体が反応室330に収容された状態において、第1供給口312から原料金属水溶液を反応室330に供給してから、排出口318から前駆体粒子200を初めて回収できたときまでの時間として測定することができる。
好ましいいくつかの態様では、反応室330に原料金属水溶液を供給する前に、アンモニウムイオン供給体を反応室330に供給する。このとき、アンモニウムイオン供給体は、上述した反応室330の酸素濃度および反応液のpHとなるように調整することが好ましい。これにより、原料金属水溶液を第1供給口312から反応室330に供給したときから晶析反応を開始させることができるため、晶析反応の開始から排出口318から前駆体粒子200が回収されるまでの時間を制御することができるため、前駆体粒子の粒度分布をより均一にすることができる。
好ましいいくつかの態様では、反応室330に原料金属水溶液を供給する前に、反応室330内の内筒320を回転させ、アンモニウムイオン供給体にテイラー渦を生成しておくことが好ましい。これにより、晶析反応の開始から前駆体粒子が回収されるまでの反応室330における撹拌条件が一定になるため、前駆体粒子の品質をより均一とすることができる。
好ましいいくつかの態様では、晶析反応の開始から終了まで内筒320の回転数を一定とする。これにより、前駆体粒子200の品質のばらつきが抑制されるとともに、煩雑な操作が不要となり、生産効率が向上する。
好ましいいくつかの態様では、反応室330内の反応液に原料金属水溶液を連続的に供給する。これにより、晶析反応により得られた前駆体粒子200を排出口318から連続的に回収することができるため、前駆体粒子の生産効率が向上する。また、好ましくは、反応室330内の反応液にアンモニウムイオン供給体を連続的に供給する。これにより、反応室330内の反応液中の金属化合物とアンモニウムイオンとの濃度バランスを維持することができる。
混合工程S30では、得られた前駆体粒子200と、リチウム化合物とを混合する。混合方法は特に限定されず、例えば、公知の混合装置(例、シェーカミキサ、Vブレンダ、リボンミキサ、ジュリアミキサ、レーディゲミキサ等)を用いて混合し、混合物を得ることができる。リチウム化合物としては、焼成により酸化物に変換される化合物を用いることができ、例えば、炭酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム等を適宜用いることができる。
焼成工程S40では、上記得られた混合物を焼成し、リチウム遷移金属複合酸化物である正極活物質を得る。焼成は、従来公知の焼成炉で行うことができる。特に限定されるものではないが、焼成温度は、例えば、600~1000℃程度とするとよい。なお、焼成温度は、焼成炉内の温度のことをいう。焼成時間は、概ね1時間以上、例えば1~48時間、好ましくは5~24時間とするとよい。焼成雰囲気は、得られる酸化物の結晶性を高める観点から、酸素含有雰囲気、例えば、酸素雰囲気ないし大気雰囲気とすることが好ましい。酸素含有雰囲気の酸素濃度は、10体積%以上が好ましく、18~100体積%がより好ましい。
焼成によって得られたリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池は、出力特性およびサイクル特性に優れたものになる。以下、リチウムイオン二次電池の具体的な構成例を、図面を参照しながら説明する。
図5は、一実施形態に係る前駆体粒子200の焼成物を用いたリチウムイオン二次電池100の構成を模式的に示す断面図である。図5のリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と、非水電解質(図示せず)とが、扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されてなる密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。正負極端子42,44はそれぞれ正負極集電板42a,44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質には、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
図6は、捲回電極体20の構成を示す模式分解図である。図5および図6に示すように、捲回電極体20は、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータ70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極集電体露出部52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極集電体露出部62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極集電体露出部52aおよび負極集電体露出部62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
正極シート50を構成する正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54は、正極活物質として、上述の本実施形態に係る前駆体粒子の焼成物であるリチウム遷移金属複合酸化物を少なくとも含む。また正極活物質層54は、導電材、バインダ等をさらに含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
負極シート60を構成する負極集電体62としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等をさらに含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種多孔質シートを用いることができ、その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
非水電解質としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、正極材料による低温抵抗の低減効果が特に高くなることから、カーボネート類が好ましい。カーボネート類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が挙げられる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
なお、非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒および支持塩以外の成分、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
このようなリチウムイオン二次電池100は、上記製造方法によって製造された正極活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)を用いて正極シート50を作製する正極作製工程を含む製造方法によって製造することができる。
以上、一好適例として、扁平形状の捲回電極体を備える角型のリチウムイオン二次電池について説明した。しかしながら、本実施形態に係る前駆体粒子の焼成物であるリチウム遷移金属複合酸化物は、公知方法に従い、他の種類のリチウムイオン二次電池にも使用可能である。例えば、本実施形態に係る前駆体粒子の焼成物であるリチウム遷移金属複合酸化物を用いて、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池を構築することもできる。また、本実施形態に係る前駆体粒子の焼成物であるリチウム遷移金属複合酸化物を用いて、円筒型リチウムイオン二次電池、コイン型リチウムイオン二次電池、ラミネート型リチウムイオン二次電池等を構築することもできる。さらに、電解質を固体電解質とした全固体二次電池を構築することもできる。
リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
以上のとおり、ここに開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:
リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の前駆体であって、
Niを有する遷移金属複合水酸化物粒子を含み、
上記遷移金属複合水酸化物粒子は、SEM観察に基づく平均アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)が2以上の一次粒子が凝集した外殻部と、上記外殻部に囲まれた中空部とを備え、
上記一次粒子の50%以上が上記遷移金属複合水酸化物粒子の中心から表面に向かって放射状に配向しており、
上記遷移金属複合水酸化物粒子全体に含まれる一次粒子の90%以上が上記外殻部に存在する、前駆体。
項2:上記遷移金属複合水酸化物粒子の平均粒径に対する上記外殻部の平均厚さが6分の1以下である、項1に記載の前駆体。
項3:上記遷移金属複合水酸化物粒子が、一般式:
Ni(1-x-y-z)CoMn(OH)2+a
(ただし、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z≦0.1、0≦a≦0.5、x+y+z<1AはMg、Ca、V、Cr、Al、Ti、Zr、Nb、Mo、Wからなる群から選択される少なくとも1種の元素)
で表される化合物である、項1または2に記載の前駆体。
項4:上記一次粒子の長軸の平均長さが、0.05μm以上1.2μm以下である、項1~3のいずれか一項に記載の前駆体。
項5:
リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の前駆体の製造方法であって:
Niを含む金属化合物と、アンモニウムイオン供給体とを準備すること;
外筒と、該外筒の内側に配置されている内筒と、該外筒と該内筒との間に位置する反応室とを含む装置を準備し、上記内筒の軸方向を中心に上記内筒を回転させることで、上記反応室に収容された上記金属化合物と上記アンモニウムイオン供給体とを含む反応液にテイラー渦を生成させて、遷移金属複合水酸化物を晶析させること;
を含み、
上記反応液の25℃におけるpHが9以上であり、
上記反応室における酸素濃度が20vol%以上50vol%以下であり、
上記内筒の回転数が300rpm以上3000rpm以下である、
製造方法。
項6:上記反応液の25℃におけるpHが10.5以上13以下である、請求項5に記載の製造方法。
項7:
リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の製造方法であって:
項5または6に記載の製造方法で得られた上記前駆体とリチウム化合物とを混合すること;および
上記混合した混合物を焼成すること;
を包含する、製造方法。
項8:項7に記載の製造方法によって得られた正極活物質を含む正極を作製することを含む、リチウムイオン二次電池の製造方法。
以下、本技術に関する試験例を説明する。ただし、本技術は、以下の試験例に示すものに限定されるものではない。
(実施例1)
[前駆体晶析]
反応室にテイラー渦を発生させることができる晶析装置を使用した。晶析装置の大まかな構成は、上述した晶析装置300と同様である。
0.1Lの反応室内の酸素濃度を25vol%に調整し、1wt%アンモニア水を加え、上記装置の内円筒を2000rpmで回転させ、反応室内のアンモニア水にテイラー渦を発生させた。次に、30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給し、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH12となるように調整した。
硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを水に溶解し、1mol/Lの原料金属水溶液を調製した。このとき、硫酸ニッケル:硫酸コバルト:硫酸マンガンのモル比が、60:20:20とした。
上記反応室内のテイラー渦が生じている混合液に、上記原料金属水溶液、30wt%水酸化ナトリウム水溶液、および1wt%アンモニア水溶液を体積基準で1:1:1の比率になるように供給し、pH12の条件で30分間の晶析を行った。その後、晶析した生成物を、水洗、濾過および乾燥させることにより、粉末状の複合水酸化物(前駆体)を得た。
ICP発光分光装置により、上記得られた複合水酸化物がNi0.6Co0.2Mn0.2(OH)であることを確認した。
[活物質焼成]
リチウム(Li)と、リチウム以外の金属元素(M)とのモル比(Li:M)が1.1:1となるように、リチウム化合物を上記複合水酸化物に混合した。この混合物を700℃の焼成炉で酸化性雰囲気下で5時間保持して焼成した。これにより、正極活物質を得た。
[正極板の作製]
上記得られた正極活物質:導電材:バインダ=100:1:1(重量基準)となるようにN-メチルー2-ピロリドン(NMP)に混合し、正極合剤ペーストを調製した。導電材はアセチレンブラックを使用した。バインダはPVDFを使用した。調製した正極合剤ペーストを15μmのアルミニウム箔上に塗布して乾燥させた後、所定の厚みまでプレスし、所定のサイズに加工することで正極板を作製した。
[負極板の作製]
黒鉛:SBR:CMC=100:1:1(重量基準)となるように水に混合し、負極合剤ペーストを調製した。調製した負極合剤ペーストを銅箔上に塗布して乾燥させた後、所定の厚みまでプレスし、所定のサイズに切り出すことで負極板を作製した。
[非水電解質二次電池の作製]
作製した正極板および負極板をセパレータを介して相互に積層し、積層型電極体を作製した。正極板と負極板とにそれぞれリードを取り付けた。作製した積層型電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に収容した後、非水電解液を注入し、外装体の開口部を封止して試験セルを作製した。なお、非水電解液は、EC:FEC:EMC:DMC=15:5:40:40(体積基準)からなる溶媒と、Li塩として1MのLiPFとを含むものを使用した。
<前駆体のSEM観察>
上記得られた複合水酸化物の粒子(前駆体粒子)をイオンビームで断面加工した後、粒子の断面をSEMで観察した。SEM観察により前駆体粒子の構造を評価した。図7に実施例1で得られた前駆体粒子の断面SEM画像を示す。
また、複合水酸化物の粒子の断面のSEM観察により、外殻部に含まれる一次粒子の配向性について確認した。具体的には、一次粒子の中心と複合水酸化物粒子の中心とを結ぶ基準線に対して、当該一次粒子の長軸方向がなす角度が30°以下であるものを放射状に配向していると評価した。外殻部に含まれる一次粒子をランダムに100個以上観察し、放射状に配向している一次粒子の割合を求めた。結果を表1に示す、
また、複合水酸化物の粒子の断面のSEM観察により、外殻部の厚さを測定した。ランダムに100個以上の粒子の外殻部の厚さを測定し、その算術平均を求めた。外殻部の厚さの算術平均を、下記に示す複合水酸化物粒子の平均粒径で割った値を「平均粒径に対する外殻部の厚さ」として表1に示す。
<前駆体の平均粒径解析>
複合水酸化物粒子の平均粒径は、レーザ回折散乱式の粒度分析計により測定される体積基準の粒度分布において、累積50%に相当する粒径(D50)とした。
<IV抵抗測定>
25℃環境下にて、試験セルをSOC(state of charge)が50%となるように充電し、1時間静置した。その後、5Cの電流で10秒間放電を行った。放電直前のOCV電圧をV0、10秒放電時点の電圧をV1としたとき、
式:IV抵抗=(V0-V1)/5C電流値
により、IV抵抗値を求めた。表1には、後述の比較例1を基準とした比率で結果を示す。
<サイクル容量維持率の測定>
25℃環境下にて、CCCV充電0.4C_4.2V_0.1Cカットを行った後、CC放電0.4C_2.5Vカットを行うことを1サイクルとし、250サイクル繰り返した。
式:250サイクル目の容量/1サイクル目の容量×100(%)
により、容量維持率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の前駆体晶析の条件から、反応室内の酸素濃度を30vol%に変更した。また、晶析装置の内円筒の回転数を700rpmに変更した。また、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH10.8となるように30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給した。これら以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物を得た。
その後の試験セルの準備までの手順、及び、前駆体ならびに試験セルの評価についても実施例1と同様とした(以下の例において同じ)。
(実施例3)
実施例1の前駆体晶析の条件から、反応室内の酸素濃度を22vol%に変更した。また、晶析装置の内円筒の回転数を2600rpmに変更した。また、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH11.4となるように30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給した。また、1mol/Lの原料金属水溶液は、硫酸ニッケル:硫酸コバルト:硫酸マンガン:硫酸ジルコニウムが、モル比で59.9:19.9:19.9:0.3となるように調製した。これら以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物を得た。ICP発光分光装置により、得られた複合水酸化物がNi0.599Co0.199Mn0.199Zr0.003(OH)であることを確認した。
(実施例4)
実施例1の前駆体晶析の条件から、反応室内の酸素濃度を22vol%に変更した。また、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH13.5となるように30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給した。これら以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物を得た。
(実施例5)
実施例1の前駆体晶析の条件から、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH9となるように30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給した。これ以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物を得た。
(比較例1)
実施例1の前駆体晶析の条件から、反応室内の酸素濃度を10vol%に変更した。また、晶析装置の内円筒の回転数を1000rpmに変更した。また、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH11.8となるように30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給した。これら以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物を得た。
(比較例2)
実施例1の前駆体晶析の条件から、晶析装置の内円筒の回転数を3500rpmに変更した。これら以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物得た。また、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH12.6となるように30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給した。これら以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物を得た。
(比較例3)
実施例1の前駆体晶析の条件から、反応室内の酸素濃度を22vol%に変更した。また、晶析装置の内円筒の回転数を200rpmに変更した。また、反応室内の混合液が液温25℃基準でpH10.8となるように30wt%の水酸化ナトリウム水溶液を反応室に供給した。これら以外は実施例1と同様にして、粉末状の複合水酸化物を得た。
表1および図7に示すように、酸化性雰囲気下(例えば、酸素濃度が20vol%以上)において、テイラー渦流による撹拌を伴う晶析反応を行うことで、中空構造を有する前駆体粒子が製造できることがわかる。また、かかる方法で製造される前駆体粒子は、前駆体粒子の外殻部を構成する一次粒子は放射状に配向する傾向にあることがわかる。そして、このような構造を有する前駆体粒子を用いて製造された正極活物質を備えるリチウムイオン二次電池では、抵抗が抑制されており、出力特性が向上していることがわかる。
以上、本技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極シート
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
70 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池
200 前駆体粒子(遷移金属複合水酸化物粒子)
210 外殻部
212 一次粒子
220 中空部
300 晶析装置
310 外筒
320 内筒
330 反応室

Claims (8)

  1. リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の前駆体であって、
    Niを有する遷移金属複合水酸化物粒子を含み、
    前記遷移金属複合水酸化物粒子は、SEM観察に基づく平均アスペクト比(長軸の長さ/短軸の長さ)が2以上の一次粒子が凝集した外殻部と、前記外殻部に囲まれた中空部とを備え、
    前記一次粒子の50%以上が前記遷移金属複合水酸化物粒子の中心から表面に向かって放射状に配向しており、
    前記遷移金属複合水酸化物粒子全体に含まれる一次粒子の90%以上が前記外殻部に存在する、
    前駆体。
  2. 前記遷移金属複合水酸化物粒子の平均粒径に対する前記外殻部の平均厚さが6分の1以下である、請求項1に記載の前駆体。
  3. 前記遷移金属複合水酸化物粒子が、一般式:
    Ni(1-x-y-z)CoMn(OH)2+a
    (ただし、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z≦0.1、0≦a≦0.5、x+y+z<1AはMg、Ca、V、Cr、Al、Ti、Zr、Nb、Mo、Wからなる群から選択される少なくとも1種の元素)
    で表される化合物である、請求項1に記載の前駆体。
  4. 前記一次粒子の長軸の平均長さが、0.05μm以上1.2μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の前駆体。
  5. リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の前駆体の製造方法であって:
    Niを含む金属化合物と、アンモニウムイオン供給体とを準備すること;
    外筒と、該外筒の内側に配置されている内筒と、該外筒と該内筒との間に位置する反応室とを含む装置を準備し、前記内筒の軸方向を中心に前記内筒を回転させることで、前記反応室に収容された前記金属化合物と前記アンモニウムイオン供給体とを含む反応液にテイラー渦を生成させて、遷移金属複合水酸化物を晶析させること;
    を含み、
    前記反応液の25℃におけるpHが9以上であり、
    前記反応室における酸素濃度が20vol%以上50vol%以下であり、
    前記内筒の回転数が300rpm以上3000rpm以下である、
    製造方法。
  6. 前記反応液の25℃におけるpHが10.5以上13以下である、請求項5に記載の製造方法。
  7. リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質の製造方法であって:
    請求項5または6に記載の製造方法で得られた前記前駆体とリチウム化合物とを混合すること;および
    前記混合した混合物を焼成すること;
    を包含する、製造方法。
  8. 請求項7に記載の製造方法によって得られた正極活物質を含む正極を作製することを含む、リチウムイオン二次電池の製造方法。
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