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JP7744004B2 - Fucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物及び方法 - Google Patents
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JP7744004B2 - Fucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物及び方法 - Google Patents

Fucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物及び方法

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本発明は、糖鎖構造のうちフコースがN-アセチルグルコサミンにα1,3結合したFucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物及び方法に関し、特にレクチンを用いたFucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物及び方法に関する。
細胞表面や体液中に存在する糖タンパク質や糖脂質等の複合糖質の糖鎖は、一種の情報素子として機能し、発生、免疫、がん、感染等の重要な生命現象に深く関わっている。一方、糖鎖結合性タンパク質であるレクチンは、海藻類又は藻類(淡水産藍藻)等から多くの種類が単離されており、糖鎖認識分子として機能し、糖鎖と同様に生物学的に重要な役割を担っている。レクチンは、その種類によって認識する糖鎖が異なることが知られており、例えば特許文献1には、N-結合型糖鎖(アスパラギン結合型糖鎖)の還元末端のN-アセチルグルコサミンにα1,6結合したフコース(α1,6フコース)と強く相互作用するレクチンとして、紅藻カギイバラノリ(Hypnea japonica)から単離されたHypnin Aが開示されている。また、特許文献1には、このHypnin Aを用いたα1,6フコース糖鎖の検出方法も開示されている。
また、レクチンの一部は、種々のウイルスやがん細胞の表面の糖鎖を認識して結合することが知られており、このため、レクチンをウイルス等の検出のために応用することも考えられている(特許文献2及び3等を参照。)。
特許第5109001号公報 特開2020-117445号公報 特開2021-013375号公報
しかしながら、現在のところ種々のウイルスやがん細胞等の表面に存在する糖鎖に特異的に結合し、それらを特異的に検出できる物質はまだ十分に知られているとは言いがたく、その数は限られているため、上記物質が十分に供給できる状況にはなっていない。従って、特定の糖鎖を特異的に認識する物質がさらに多く見出され、その特性が明らかにされることが必要である。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レクチンを用いて特定の糖鎖構造を特異的に検出できるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、緑藻ヒラミル(Codium latum)から単離されたCLAレクチンが、糖鎖構造のうちフコースがN-アセチルグルコサミンにα1,3結合したFucα1-3GlcNAc構造を特異的に認識することを見出して、本発明を完成した。
具体的に、本発明に係る組成物は、CLAレクチンを含むことを特徴とするFucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物である。上述の通り、CLAレクチンはFucα1-3GlcNAc構造を特異的に認識できるため、CLAレクチンを含む本発明に係る組成物は、所定の試料中の糖鎖におけるFucα1-3GlcNAc構造を検出するのに有用である。従って、例えば細胞表面にFucα1-3GlcNAc構造を含む糖鎖を発現するがん細胞やウイルスを検出するのに応用できる。
本発明に係る組成物において、CLAレクチンには、標識分子が結合されていてもよい。この場合、例えばFucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンを定量又は検出するために、標識分子を認識して結合する結合分子を利用することが可能となり、その定量及び検出を簡便に行うことができる。
本発明に係る試料中のFucα1-3GlcNAc構造を検出する方法は、試料に対してCLAレクチンを接触させるステップと、Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンを定量するステップと、前記Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンの量が所定の閾値以上である場合に、試料中にFucα1-3GlcNAc構造が存在すると判定するステップとを含むことを特徴とする。上述の通り、CLAレクチンはFucα1-3GlcNAc構造を特異的に認識できるため、上記本発明に係る方法によると、試料に対してCLAレクチンを接触させて、試料中のFucα1-3GlcNAc構造に対するCLAレクチンの結合量や結合の有無を評価して、試料中のFucα1-3GlcNAc構造を検出することができる。
本発明に係る試料中のFucα1-3GlcNAc構造を検出する方法においても、上述の通り、CLAレクチンには、標識分子が結合されていてもよい。
本発明に係る方法において、前記定量するステップは、前記CLAレクチン又は前記標識分子に結合する結合分子と、前記Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンとを接触するステップを含むことができる。また、本発明に係る方法において、前記定量するステップは、前記結合分子を定量することによりFucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンを定量するステップを含むことができる。
Fucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物及び方法によると、糖鎖構造のうちFucα1-3GlcNAc構造を特異的に検出することができて、極めて有用である。
糖鎖構造としてのルイスX構造及びシアリルルイスX構造を示す図である。 実施例におけるCLAの遠心限外ろ過-HPLC法による糖鎖結合特異性解析の結果を示す図である。 実施例におけるCLAの遠心限外ろ過-HPLC法による糖鎖結合特異性解析の結果を示す図である。 実施例におけるグリカンアレイで用いたN-結合型糖鎖を示す図である。 実施例におけるグリカンアレイで用いたN-結合型糖鎖を示す図である。 実施例におけるグリカンアレイで用いたN-結合型糖鎖を示す図である。 実施例におけるグリカンアレイで用いたO-結合型糖鎖を示す図である。 実施例におけるグリカンアレイで用いたO-結合型糖鎖を示す図である。 実施例におけるグリカンアレイで用いたスフィンゴ糖脂質糖鎖を示す図である。 実施例におけるN-結合型糖鎖を対象としたグリカンアレイの結果を示すグラフである。 実施例におけるO-結合型糖鎖を対象としたグリカンアレイの結果を示すグラフである。 実施例におけるスフィンゴ糖脂質糖鎖を対象としたグリカンアレイの結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明の一実施形態は、CLAレクチン(以下、CLAと呼ぶ。)を含むFucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物である。後の実施例にて詳説するが、今般、CLAがFucα1-3GlcNAc構造に特異的に結合できることが本発明者らによって見出された。CLAは、緑藻ヒラミル(Codium latum)に由来する糖鎖結合タンパク質の一種であり、配列番号1のアミノ酸配列を有する約16kDaのタンパク質である。特に、CLAは、配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなることが好ましく、より好ましくは95%、96%、97%、98%又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなることが好ましい。最も好ましくは、CLAは配列番号1のアミノ酸配列からなる。
本実施形態におけるCLAは、上記の通り緑藻ヒラミル(Codium latum)に由来するが、天然の精製産物の他に、化学合成手順の産物、及び原核生物宿主又は真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物としての組換え型CLAも含む。
本実施形態において、「糖鎖」とは、直鎖又は分岐したオリゴ糖又は多糖を意味する。また上記糖鎖は、タンパク質との結合様式によって、アスパラギンと結合するN-グリコシド結合糖鎖(以下、「N型糖鎖」、「N-グリカン」という)及びセリン、スレオニンなどと結合するO-グリコシド結合糖鎖(以下、「O型糖鎖」、「O-グリカン」という)等に大別され、N型糖鎖には高マンノース型糖鎖、複合型糖鎖及び混成型糖鎖がある。
なお、オリゴ糖とは、単糖又は単糖の置換誘導体が2~10個脱水結合して生じたものをいう。さらに多数の単糖が結合している糖質を多糖という。多糖は、構成糖の種類によって異なるが、ウロン酸やエステル硫酸を多く含む糖質を酸性多糖、中性糖のみのものを中性多糖という。多糖のうち、ムコ多糖とよばれる一群の多糖は、ほとんどがタンパク質と結合しており、プロテオグリカンという。単糖とは、糖鎖の構成単位となるもので、加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本的物質である。
さらに、単糖は、カルボキシル基などの酸性側鎖を有する酸性糖、ヒドロキシル基がアミノ基で置換されたアミノ糖、それ以外の中性糖の3つに大別される。生体内に存在する単糖としては、酸性糖はN-アセチルノイラミン酸(NeuAc)やN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)等のシアル酸や、ウロン酸等があり、アミノ糖としてはN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)やN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)等があり、中性糖としてはグルコース(Glc)、マンノース(Man)、ガラクトース(Gal)、フコース(Fuc)等が挙げられる。
N型糖鎖は全て、「トリマンノシルコア」と呼ばれる〔Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc〕からなる共通母核構造を持っている。高マンノース型糖鎖は、トリマンノシルコアに加え、分岐構造部分にα-マンノース残基のみを含む。この糖鎖には〔Manα1-6(Manα1-3)Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc〕という七糖が共通の母核として含まれている。また混成型糖鎖は、複合型と高マンノース型の両方の特徴を併せ持っていることからそう呼ばれている。1つ又は2つのα-マンノシル基が、高マンノース型の場合と同様に、トリマンノシルコアのManα1-6腕と結合し、複合型糖鎖の側鎖と同じものがコアのManα1-3腕に結合している。
トリマンノシルコアの還元末端に位置するGlcNAcのC-6位へのフコースの結合の有無、またβ-マンノシル残基のC-4位へのβ-GlcNAcの結合(バイセクテイングGlcNAcと呼ばれる)の有無は、複合型や混成型糖鎖の構造の多様性に寄与している。3つのN型糖鎖の間で、複合型が最も多様な構造を含んでいる。
この多様性は、主に2つの要素で作り出され、トリマンノシルコアに1個から5個の側鎖がそれぞれ異なる結合位置で結合しており、一、二、三、四、又は五本側鎖糖鎖を形成している。三本側鎖の複合型糖鎖には、〔GlcNAcβ1-4(GlcNAcβ1-2)Manα1-3〕あるいは〔GlcNAcβ1-6(GlcNAcβ1-2)Manα1-6〕のどちらかを含む2つの異性体が見つかっている。
本実施形態に係るCLAが特異的に結合するFucα1-3GlcNAc構造は、糖鎖構造のうち特にFucがGlcNAcにα1,3結合したものであり、このような構造をもつ代表的な構造として、図1に示すルイスXやシアリルルイスXが知られている。図1に示すように、ルイスXは、Fucとα1,3結合したGlcNAcにGalがβ1-4結合した構造であり、シアリルルイスXは、当該GalにNeuAcがα1-3結合した構造である。なお、図1において四角で囲った部分がFucα1-3GlcNAc構造である。ルイスX及びシアリルルイスXは、種々のがん細胞の表面に発現していることが知られており、具体的に、ルイスXは大腸がん及び血液がん等のがん細胞表面に発現し、シアリルルイスXは肺がん、乳がん及び膵臓がん等のがん細胞表面に発現している。従って、本実施形態に係るCLAを含む組成物は、上記のようながん細胞に特異的に結合できて、それらのがん細胞を検出するのに応用できる可能性がある。
CLAが糖鎖と結合するか否かは、例えば標的となる糖鎖、又は糖鎖が結合した糖タンパク質等を固定化したカラムに、試験対象であるCLAを通し、当該カラムにCLAが結合したか否かをその通過液に含まれるCLAの量、又は特異的溶出剤でカラムから溶出したCLAの量により評価することができる。また標的となる糖鎖が結合した糖タンパク質をメンブレン等に固定化し、ビオチン、フルオレセインイソチオシアネート、ペルオキシダーゼ等で標識したCLAを用いて検出するウエスタンブロット法(法医学の実際と研究、37, 155, 1994 参照)、ドットブロット法(Analytical Biochemistry, 204(1), 198, 1992 参照)を用いて評価することができる。
また標的となる糖鎖、又は糖鎖が結合した糖タンパク質等を固定化したチップと、試験対象であるCLAとの親和性を表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いて測定すればよい。上記方法によれば、その親和性の有無のみならず、その強度まで測定できるために好ましい方法であるといえる。このとき得られる結合定数(親和定数)(K)が、10(M-1)以上、より好ましくは10(M-1)以上、最も好ましくは10(M-1)以上であればCLAと糖鎖とが結合していると判断できる。
本実施形態におけるCLAには、標識分子が結合されていてもよい。標識分子は、CLAの検出を容易にするためにCLAを標識できるものであれば特に限定されないが、例えば、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、ビオチン、アビジン、Hisタグペプチド、GSTタグペプチド、FLAGタグペプチド等が挙げられる。このような標的分子がCLAに結合されていることにより、CLAの存否を簡便に評価することができて有利である。
本実施形態に係る組成物は、CLAと溶媒とを含み、その他に溶媒中において例えばCLAの安定性を向上させるための添加剤等を含んでいてもよい。
本発明に係る他の実施形態は、試料中のFucα1-3GlcNAc構造を検出する方法である。当該方法は、試料に対してCLAを接触させるステップと、Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAを定量するステップと、Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAの量が所定の閾値以上である場合に、試料中にFucα1-3GlcNAc構造が存在すると判定するステップとを含むものである。
本実施形態において、試料は、Fucα1-3GlcNAc構造を含む糖鎖の存否を評価される対象であり、例えば人工的に調製された所定の糖鎖を含む溶液や、体液、細胞及び組織等の生体試料であってもよい。
本実施形態において、試料に対してCLAを接触させるステップは、例えば試料としての上記溶液や体液にCLAを含む溶液を添加及び混合することで行われる。組織を試料とする場合、その一部を生体外に取り出したものを試料として用いてもよく、また、生体内において組織に対してCLAを処理して、内視鏡等を利用して生体内でCLAに結合されたFucα1-3GlcNAc構造の検出を行ってもよい。
本実施形態において、Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAを定量するステップは、例えば下記実施例で用いた遠心限外ろ過-HPLC法を用いることができ、また、CLA又はそれに結合する標識分子に特異的に結合する抗体や結合分子を用いた本技術分野で用いられる常法を利用することができる。例えば、これに限られないが、CLAに標識分子としてタグペプチドが結合されている場合、当該タグペプチドを標的とする抗体を用いてCLAを検出し、当該抗体を蛍光分子等で標識することで、蛍光強度によってFucα1-3GlcNAc構造に結合したCLA量を定量できる。このような方法によっても、Fucα1-3GlcNAc構造を検出及び定量することができる。
本実施形態において、試料中にFucα1-3GlcNAc構造が存在すると判定するステップでは予め閾値(基準値)を設定する。このような基準値は、以下のものに限られないが、例えばFucα1-3GlcNAc構造を含まない試料を参照として、上記CLAを定量するステップと同様のステップで当該参照から得られるCLAの定量値を基準値とすることができる。この場合、判定対象の試料から得られたCLAの定量値が基準値よりも大きい場合に試料中にFucα1-3GlcNAc構造が存在すると判定することができる。
以上のように、本実施形態に係る方法によると、Fucα1-3GlcNAc構造に特異的に結合できるCLAを利用して試料中のFucα1-3GlcNAc構造を含む糖鎖を簡便に検出することができる。このため、当該方法は、Fucα1-3GlcNAc構造を含む糖鎖を細胞表面に発現するがん細胞を検出するのに応用できる可能性がある。
以下に、本発明に係るFucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物及び方法について詳細に説明するための実施例を示す。
[実施例1:Hisタグ融合組換え型CLAの調製]
(Hisタグ融合組換えCLA発現用大腸菌株の作製)
CLA cDNAがコードする翻訳領域の配列情報(配列番号2を参照)をもとにCLAコード合成DNAを設計し、Integrated DNA Technologies社に依頼して作製した。制限酵素認識部位を5’末端に付加したプライマー(Forward primer:NheI付加、Reverse primer:XhoI付加)、及びPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRによりCLAコードDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片を制限酵素NheI及びXhoIで処理し、同じく両制限酵素で処理したベクターpET-28a(+)(Merck社)にサブクローニングし、CLA発現用プラスミドpET28a-rCLAを得た。さらにこのpET28a-rCLAを用いて発現用大腸菌SHuffle T7 Express株(New England Biolabs社)を形質転換し、Hisタグ融合組換えCLA発現株pET28a-rCLA/SHuffle T7 Expressを得た。
(Hisタグ融合組換えCLAの発現)
上記のようにして得られたHisタグ融合組換えCLA(His-rCLA)発現用大腸菌株(pET28a-CLA/SHuffle T7 Express)を3mLのカナマイシン含有LB液体培地に植菌し、37℃で一晩培養した。その後、培養液を250mLのカナマイシン含有LB液体培地に加え、37℃で対数増殖期中期になるまで振盪培養した。OD600が0.5に達したところで、終濃度が0.5mMとなるようにイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することで発現誘導を開始し、20℃で16時間振盪培養した。これを遠心分離(10000×g、4℃、20min)により集菌し、培養液に対し1/20容の超音波破砕用緩衝液(20mMのリン酸緩衝液(PB)(pH7.4)、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール)を添加及び懸濁した後、氷上で冷却しながら超音波破砕を行った。超音波破砕時の条件は「超音波破砕1分-休止1分」のセットを7回行った。破砕処理後、遠心分離(10000×g、4℃、20min)し、上清を可溶性画分とした。
(Hisタグ融合組換えCLAの精製)
ニッケルキレートカラム(Vt=1mL、His GraviTrap、GEヘルスケア)を同緩衝液10mLで平衡化後、可溶性画分をカラムに添加し、Hisタグ融合組換えレクチンを吸着させた。カラムに非特異的に吸着した夾雑成分を洗浄するため、イミダゾールを150mM含有する緩衝液(20mMのPB(pH7.4)、500mMのNaCl)を用いてカラムを洗浄した。その後、溶出用緩衝液(20mMのPB(pH7.4)、500mMのNaCl、500mMのイミダゾール)を3mL、2mLの順に添加して回収して、精製Hisタグ融合組換えCLAを得た。以下の試験では、CLAとして当該精製Hisタグ融合組換えCLAを用いて行った。
[実施例2:CLAの糖鎖結合特異性]
(遠心限外ろ過-HPLC法による糖鎖結合特異性解析)
CLAの糖鎖結合特異性について遠心限外ろ過-HPLC法によって測定した。遠心限外ろ過-HPLC法は、レクチンや糖鎖の固定化を必要とせず、簡便にレクチンと糖鎖間の相互作用を分析可能な手法である。この手法では、レクチンをバッファー中で蛍光標識糖鎖と混合し、遠心限外ろ過によって回収された非結合糖鎖をHPLCによって分離及び定量する。結合活性は、結合糖鎖量と添加糖鎖量の比率で表し、結合糖鎖量は添加糖鎖量から非結合糖鎖量を差し引くことで求められる。レクチンの糖鎖結合特異性は、複数の糖鎖の結合活性を比較することで決定する。以下に具体的な方法及び結果について説明する。
まず、90μLの5μM Hisタグ融合組換えCLAと10μLの300nMピリジルアミノ化(PA)-オリゴ糖(タカラバイオ製)とを50mMトリス-塩酸(pH7.0)に混合し、室温で1時間インキュベートした。続いて、その混合液に対して、遠心限外ろ過器(分画分子量10kDa、PALL, NY, USA)を用いて室温で10000×gの遠心分離を30秒間行った。20μLのろ液を、15%メタノール含有0.1M酢酸アンモニウム緩衝液で平衡化されたTSKgel ODS-80TMカラム(4.6×150mm)(東ソー製)に注入し、同一の溶液を用いて溶出した。このHPLC(Waters Alliance HPLC system(Waters、Alliance e2695 Separations Module))は流速1mL/min、40℃で行った。溶出液は、励起波長320nm、蛍光波長400nmでモニターし、糖鎖のピークをEmpower3(Waters)で解析、定量した。一方、Hisタグ融合組換えCLAを含まない90μLの50mMトリス-塩酸(pH7.0)を上記PA-オリゴ糖と混合し、上記遠心限外ろ過を行い、ろ液をブランクとして用いた。CLAと結合したPA-オリゴ糖の量[Obound]は、加えられたPA-オリゴ糖の量[Oadded]から未結合のPA-オリゴ糖の量[Ounbound]を引くことにより得た。[Oadded]に対する[Obound]の比率を結合活性(%)として定義した。用いた32種のPA-オリゴ糖及び結合活性を図2及び図3に示す。
図2及び図3に示すように、高い結合活性を示した糖鎖は、No.10(89.2%)、No.7(77.7%)及びNo.22(45.1%)であった。これらの糖鎖は共通してGalβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcの構造を持ち、この構造を持つ糖鎖としてルイスX抗原及びシアリルルイスX抗原がある。また、No.20、28、30、31及び32が持つFucα1-2GalやNo.21、28及び30が持つFucα1-4GlcNAc、並びに高マンノース型糖鎖のNo.14が持つFucα1-6GlcNAcには結合を示さず、複合型糖鎖のNo.4、6及び9が持つFucα1-6GlcNAcに対しては、約10%前後の極めて弱い結合活性を示した。このことから、CLAはフコースを含む糖鎖の中でも特にFucα1-3GlcNAcに対して強く結合することが示された。さらに、糖鎖のアンテナ数(非還元末端分岐数)が多いほど、糖鎖に強く結合する傾向がみられた。
(グリカンアレイによる糖鎖結合特異性解析)
さらに、種々の糖鎖に対するCLAの結合特異性について評価するために、グリカンアレイを行った。グリカンアレイは、糖鎖と生体分子間の相互作用を調べるためのツールであり、一度の試験で複数の糖鎖間との相互作用を分析することができる。原理としては、まず、複数種の糖鎖がスポットされたガラススライドに生体分子を添加し、生体分子と糖鎖を反応させる。その後、蛍光標識された二次抗体を生体分子に結合させ、蛍光標識のシグナルを定量し、糖鎖と生体分子間の結合性の評価を行う。本実施例では、CLAを対象に100種のN-結合型糖鎖、94種のO-結合型糖鎖及び58種のスフィンゴ糖脂質糖鎖との結合活性をグリカンアレイで網羅的に解析した。具体的には図4~図6に示す100種のN-結合型糖鎖を搭載する、Z Biotech社の糖鎖固定化マイクロアレイスライドN-Glycan Array(8-subarray slide)、図7及び図8に示す94種のO-結合型糖鎖を搭載するZ Biotech社の糖鎖固定化マイクロアレイスライドO-Glycan Array及び図9に示す58種のスフィンゴ糖脂質糖鎖を搭載するZ Biotech社の糖鎖固定化マイクロアレイスライドGlycosphingolipid-Glycan Arrayをそれぞれ用いた。以下にその方法及び結果を説明する。
まず、上記スライドを付属のカセットに取り付け、各ウェルに200μlの1%BSA含有Hydrazide Blocking Buffer(Z Biotech)を添加し、付属の粘着フィルムでウェルを覆うことでバッファーの蒸発を防ぎ、振とう培養器で85rpmで60分間インキュベートした。インキュベート後、同緩衝液を取り除き、各ウェルに5μg/mLのCLAを含む1%BSA含有Glycan Array Assay Buffer(Z Biotech)を200μl添加し、粘着フィルムでウェルを覆い、100rpmで60分間インキュベートした。インキュベート後、CLA溶液を取り除き、各ウェルに洗浄バッファー(50mMのトリス-塩酸、137mMのNaCl、0.05%のTween20、pH7.6)を200μl添加し、粘着フィルムでウェルを覆い、85rpmで5分間インキュベートした。インキュベート後、洗浄バッファーを取り除き、各ウェルに1μg/ml抗体(Alexa Flour 555標識抗His-tagマウス抗体)を含む1%のBSA含有Glycan Array Assay Bufferを200μl添加し、粘着フィルムでウェルを覆い、85rpmで60分間インキュベートした。これ以降の作業からアルミホイルでガラススライドを遮光した。インキュベート後、抗体溶液を取り除き、各ウェルに洗浄バッファーを200μl添加し、すぐに取り除いた。この操作をもう一度繰り返し、スライドからカセットを外し、洗浄バッファーで満たした容器(コプリン染色槽)にスライドを入れ、60rpmで10分間インキュベートした。インキュベート後、超純水で満たした容器にスライドを入れ、60rpmで2分間インキュベートした。インキュベート後、スライドを取り出し、十分乾燥させた。反応後スライドはGlycoLite 2200により蛍光画像を取得し、Image Studio Lite Ver 5.2(LI-COR)を用いて蛍光強度を定量し、糖鎖とCLA間の結合性を数値化した。100種のN-結合型糖鎖の結果を図10に示し、94種のO-結合型糖鎖の結果を図11に示し、58種のスフィンゴ糖脂質糖鎖の結果を図12に示す。
図10に示すように、CLAはN-結合型糖鎖におけるN004、N005、N014、N015、N024、N025、N034、N035、N044、N045、N054、N055、N114、N115、N124、N125、N134、N135、N144、N155、N214、N215、N224、N225、N234、N244、N255、N6144、N6244、N3004、N015G及びN025Gに対して、高い結合活性を示した。また、図11に示すように、CLAはO-結合型糖鎖におけるO19、O20、O32、O33、O44、O45、O46、O54、O60、O66、O67、O73、O76、O78、O85、O86及びO90に対して、高い結合活性を示した。また、図12に示すように、CLAはスフィンゴ糖脂質糖鎖における36、45及び46に対して、高い結合活性を示した。
図4~図9に示すように、CLAと高い結合活性を示す上記各糖鎖は、いずれもFucα1-3GlcNAcであった。すなわち、CLAは、Fucα1-3GlcNAcを含むすべての糖鎖に対して強い結合を示した。一方、Fucα1-3GlcNAcを含まない糖鎖に対してはほとんど結合活性を示さなかった。
以上より、CLAはFucα1-3GlcNAc構造に特異的に結合でき、従って、そのようなCLAレクチンを利用して試料中のFucα1-3GlcNAc構造を含む糖鎖を検出することができると考えられる。このため、Fucα1-3GlcNAc構造を含む糖鎖を細胞表面に発現するがん細胞を検出するのに応用できることが示唆される。

Claims (7)

  1. CLAレクチンを含むことを特徴とするFucα1-3GlcNAc構造を検出するための組成物。
  2. 前記CLAレクチンには、標識分子が結合されている請求項1に記載の組成物。
  3. 試料に対してCLAレクチンを接触させるステップと、
    Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンを定量するステップと、
    前記Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンの量が所定の閾値以上である場合に、試料中にFucα1-3GlcNAc構造が存在すると判定するステップとを含む、試料中のFucα1-3GlcNAc構造を検出する方法。
  4. 前記CLAレクチンには、標識分子が結合されている請求項3に記載の方法。
  5. 前記定量するステップは、前記CLAレクチンに結合する結合分子と、前記Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンとを接触するステップを含む請求項3に記載の方法。
  6. 前記定量するステップは、前記標識分子に結合する結合分子と、前記Fucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンとを接触するステップを含む請求項4に記載の方法。
  7. 前記定量するステップは、前記結合分子を定量することによりFucα1-3GlcNAc構造に結合したCLAレクチンを定量するステップを含む請求項5又は6に記載の方法。
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