以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の説明において、いずれの研磨段階に用いられる研磨用組成物であるかを問わず、ここに開示される研磨方法において使用される研磨用組成物一般を指す用語として「研磨用組成物」の語を用いることがある。また、以下において、研磨定盤を「定盤」と略記することがある。
ここに開示される研磨方法は、砥粒A1を含む研磨用組成物S1と、砥粒A2を含む研磨用組成物S2と、をこの順に供給して研磨対象物を研磨する研磨工程を含む。以下、研磨用組成物S1を供給して研磨する段階を第1段階といい、研磨用組成物S2を供給して研磨する段階を第2段階ということがある。上記研磨工程において、第1段階と第2段階とは、途中で研磨対象物を別の研磨装置または別の定盤上に移動させることなく行われる。すなわち、第1段階と第2段階とは同一定盤上で行われる。第1段階および第2段階は、同一の研磨対象物に対して、逐次的に、すなわち段階を追って行われる。ただし、各研磨段階において複数の研磨対象物を同時に(並行して)研磨することは妨げられない。また、第1段階と第2段階とを逐次的に行うとは、これらの段階の開始時点が逐次的であることをいい、第1段階の終了前に第2段階を開始することは妨げられない。すなわち、第1段階と第2段階とは部分的には重複し得る。
ここに開示される研磨方法は、第1段階で供給される研磨用組成物S1に含まれる砥粒A1と、第2段階で供給される研磨用組成物S2に含まれる砥粒A2は、以下の特徴を有する。すなわち、上記砥粒A1は、BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(D1A1)に対する動的光散乱法で測定される平均粒子径(D2A1)の比(D2A1/D1A1)が1.5以上である。また、上記砥粒A2は、BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(D1A2)に対する動的光散乱法で測定される平均粒子径(D2A2)の比(D2A2/D1A2)が1.5未満である。このような砥粒を含む研磨用組成物を用いて上述したような段階的な研磨を行うことにより、優れた欠陥低減性が示される。
上記の構成とすることにより、ここに開示される技術による効果が達成される理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、以下が考えられる。すなわち、一般に、研磨用組成物に含まれる砥粒のBET法により測定される比表面積から換算される粒子径(D1)に対する動的光散乱法で測定される平均粒子径(D2)の比(D2/D1)は、砥粒粒子の会合度合いを表している。具体的には、上記(D2/D1)が大きいことは、砥粒粒子の会合度合いが大きいことを示す傾向にあり、上記(D2/D1)が小さいことは、砥粒粒子の会合度合いが小さいことを示す傾向にある。上記(D2/D1)が1.5以上である相対的に会合度合いが大きい砥粒A1を第1段階の研磨に用いることにより、良好な欠陥解消性が発揮され、上記(D2/D1)が1.5未満である相対的に会合度合いが小さい砥粒A2を第2段階の研磨に用いることにより、加工によるダメージを抑制して研磨表面を好適に整えることができる。その結果として、ここに開示される研磨方法によると、高精度に欠陥が低減された研磨表面が実現される。
なお、ここに開示される技術において、砥粒の粒子径(D1)とは、BET法により測定される比表面積(BET値)から、粒子径(D1)(nm)=6000/(真密度(g/cm3)×BET値(m2/g))の式により算出される粒子径(BET粒子径)をいう。上記比表面積は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定することができる。上記真密度は、例えば比重瓶を用いて測定することができる。後述の実施例についても同様である。なお、砥粒の粒子径(D1)は、上記と同様の方法で測定される砥粒の「平均一次粒子径」と同視することができる。したがって本明細書において、砥粒の粒子径(D1)は「平均一次粒子径(D1)」ともいう。
また、ここに開示される技術において、砥粒の平均粒子径(D2)とは、動的光散乱法で測定される平均粒子径を指す。この平均粒子径(D2)の値は、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA-UT151」を用いて測定することができる。後述の実施例についても同様である。なお、砥粒の平均粒子径(D2)は、上記と同様の方法で測定される砥粒の「平均二次粒子径」と同視することができる。したがって、本明細書において、砥粒の平均粒子径(D2)は「平均二次粒子径(D2)」ともいう。
いくつかの好ましい態様において、上記(D2A1/D1A1)は1.55以上であり、より好ましくは1.60以上であり、さらに好ましくは1.65以上である。上記(D2A1/D1A1)の上限値は特に限定されない。加工によるダメージを抑制する観点から、好ましい一態様において、上記(D2A1/D1A1)は3.0以下であり、より好ましくは2.8以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。
いくつかの好ましい態様において、上記(D2A2/D1A2)は1.45以下であり、より好ましくは1.40以下であり、さらに好ましくは1.35以下である。上記(D2A2/D1A2)の下限値は特に限定されない。入手容易性等の観点から、上記(D2A2/D1A2)は1.0より大きくてもよく、1.1以上であってもよく、1.2以上でもよい。
<研磨用組成物S1>
(砥粒A1)
ここに開示される技術において、第1段階の研磨に用いられる研磨用組成物S1は、砥粒A1を含む。砥粒A1としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも利用可能である。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子を構成するアルミナの例としては、α-アルミナ、α-アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。上記中間アルミナとは、α-アルミナ以外のアルミナの総称であり、具体例としてはγ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ、κ-アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリ(メタ)アクリル酸粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される技術は、砥粒A1が少なくともシリカ粒子を含む態様で好ましく実施することができる。ここで、本明細書においてシリカ粒子とは、シリカを主成分とする粒子をいう。上記シリカ粒子は、典型的には、該粒子の90~100重量%、好ましくは95~100重量%、例えば98~100重量%がシリカである粒子である。後述するシリコンウェーハ等のようにシリコンからなる表面を有する研磨対象物の研磨(例えば仕上げ研磨)に用いられ得る研磨用組成物では、砥粒としてシリカ粒子を採用することが特に有意義である。ここに開示される技術は、例えば、砥粒A1が実質的にシリカ粒子からなる態様で好ましく実施され得る。ここで「実質的に」とは、砥粒を構成する粒子の95重量%以上(好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上であり、100重量%であってもよい。)がシリカ粒子であることをいう。
シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。シリカ粒子は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。研磨後において表面品位に優れた研磨面が得られやすいことから、コロイダルシリカの使用が特に好ましい。コロイダルシリカとしては、例えば、イオン交換法により水ガラス(珪酸Na)を原料として作製されたコロイダルシリカや、アルコキシド法コロイダルシリカ(アルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されたコロイダルシリカ)のように、水相での粒子成長を経て合成されたコロイダルシリカを好ましく採用することができる。砥粒A1は、このようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。
砥粒構成材料(例えば、シリカ粒子を構成するシリカ)の真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。砥粒構成材料(例えばシリカ)の真比重の上限は特に限定されないが、典型的には2.3以下、例えば2.2以下である。砥粒構成材料(例えばシリカ)の真比重としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
ここに開示される技術は、砥粒A1がシリカ粒子以外の粒子(非シリカ粒子)を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。ここで、砥粒A1が非シリカ粒子を実質的に含まないとは、砥粒A1全体のうち非シリカ粒子の割合が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、典型的には0.1重量%以下であることをいい、非シリカ粒子の割合が0重量%である場合を包含する。このような態様において、本発明の適用効果が好適に発揮され得る。
砥粒A1(典型的にはシリカ粒子)の平均一次粒子径(D1A1)は、上述する平均二次粒子径(D2A1)との関係を満たす限りにおいて特に限定されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果(例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果)を得る観点から、砥粒A1の平均一次粒子径(D1A1)は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒A1の平均一次粒子径(D1A1)は、好ましくは100nm以下、より好ましくは75nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。ここに開示される技術は、高品位の表面(例えば、高精度な評価方法により検出される欠陥の数が少ない表面)が得られやすいことから、研磨後に高品位の表面が求められる研磨に適用されることが好ましい。かかる研磨方法に用いる砥粒A1としては、例えば、平均一次粒子径(D1A1)を35nm以下、35nm未満、32nm以下または30nm未満とすることができる。砥粒A1の平均一次粒子径(D1A1)は、砥粒A1として用いる砥粒粒子の選択、砥粒A1として複数種類の砥粒粒子を用いる場合にはそれらの砥粒粒子の組合せや使用量比、等により調節することができる。
砥粒A1(典型的にはシリカ粒子)の平均二次粒子径(D2A1)は、上述する平均一次粒子径(D1A1)との関係を満たす限りにおいて特に限定されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より研磨レートを大きくする観点から、砥粒A1の平均二次粒子径(D2A1)は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、保存安定性(例えば分散安定性)の観点から、砥粒A1の平均二次粒子径(D2A1)は、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。ここに開示される技術は、高品位の表面が得られやすいことから、研磨後に高品位の表面が求められる研磨に適用されることが好ましい。かかる研磨方法に用いる砥粒A1としては、例えば、平均二次粒子径(D2A1)を75nm以下、65nm以下、60nm以下または50nm未満とすることができる。砥粒A1の平均二次粒子径(D2A1)は、砥粒A1として用いる砥粒粒子の選択、砥粒A1として複数種類の砥粒粒子を用いる場合にはそれらの砥粒粒子の組合せや使用量比、等により調節することができる。
砥粒A1の形状(外形)は、平均一次粒子径(D1A1)と平均二次粒子径(D2A1)とが上述する関係を満たす限りにおいて特に限定されず、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす粒子の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。このなかで、平均一次粒子径(D1A1)と平均二次粒子径(D2A1)とが上述する砥粒A1に関する関係を満たしやすい形状として、非球形の粒子が挙げられる。例えば、砥粒A1として、粒子の多くがピーナッツ形状または繭型形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
研磨用組成物S1における砥粒A1の含有量は特に制限されず、例えば0.005重量%以上であり、0.01重量%以上であってもよい。砥粒含有量の増大によって、より高い研磨能率が実現され得る。上記含有量は、5重量%以下が適当であり、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下でもよい。これにより、より欠陥低減された研磨表面を実現することができる。
(水溶性高分子)
ここに開示される研磨用組成物S1は、好ましい一態様において、水溶性高分子を含む。水溶性高分子は、研磨対象表面の保護や、研磨後の研磨対象表面の濡れ性向上等に役立ち得る。水溶性高分子としては、分子中に、水酸基、カルボキシ基、アシルオキシ基、スルホ基、アミド構造、イミド構造、第四級アンモニウム構造、複素環構造、ビニル構造等を含む化合物が挙げられる。水溶性高分子としては、例えばセルロース誘導体、デンプン誘導体、オキシアルキレン単位を含むポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、窒素原子を含有するポリマー等が用いられ、窒素原子を含有するポリマーの一態様として、N-ビニル型ポリマー、N-(メタ)アクリロイル型ポリマー等が用いられ得る。水溶性高分子は、天然物由来のポリマーであってもよく、合成ポリマーであってもよい。水溶性高分子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
いくつかの態様では、水溶性高分子として天然物由来のポリマーが用いられる。天然物由来のポリマーとしては、セルロース誘導体やデンプン誘導体が挙げられる。天然物由来のポリマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
いくつかの好ましい態様では、水溶性高分子としてセルロース誘導体が用いられる。ここで、セルロース誘導体は、主たる繰返し単位としてβ-グルコース単位を含むポリマーである。セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なかでもHECが好ましい。セルロース誘導体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のいくつかの態様では、水溶性高分子としてデンプン誘導体が用いられる。デンプン誘導体は、主繰返し単位としてα-グルコース単位を含むポリマーであり、例えばアルファ化デンプン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、シクロデキストリン等が挙げられる。デンプン誘導体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のいくつかの態様では、水溶性高分子として合成ポリマーが用いられる。ここに開示されるヘイズ改善効果は、水溶性高分子として合成ポリマーを用いる態様において好ましく発揮される。合成ポリマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
いくつかの好ましい態様では、水溶性高分子としてオキシアルキレン単位を含むポリマーが用いられる。オキシアルキレン単位を含むポリマーとしては、ポリエチレンオキシド(PEO)や、エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)またはブチレンオキシド(BO)とのブロック共重合体、EOとPOまたはBOとのランダム共重合体等が例示される。そのなかでも、EOとPOのブロック共重合体またはEOとPOのランダム共重合体が好ましい。EOとPOとのブロック共重合体は、PEOブロックとポリプロピレンオキシド(PPO)ブロックとを含むジブロック共重合体、またはトリブロック共重合体等であり得る。上記トリブロック共重合体の例には、PEO-PPO-PEO型トリブロック共重合体およびPPO-PEO-PPO型トリブロック共重合体が含まれる。通常は、PEO-PPO-PEO型トリブロック共重合体がより好ましい。
なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
いくつかの好ましい態様では、水溶性高分子としてポリビニルアルコール系ポリマーが用いられる。ポリビニルアルコール系ポリマーとは、その繰返し単位としてビニルアルコール単位(以下「VA単位」ともいう。)を含むポリマーを指す。ポリビニルアルコール系ポリマーは、繰返し単位としてVA単位のみを含んでいてもよく、VA単位に加えてVA単位以外の繰返し単位(以下「非VA単位」ともいう。)を含んでいてもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位と非VA単位とを含むランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、交互共重合体やグラフト共重合体であってもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーは、一種類の非VA単位のみを含んでもよく、二種類以上の非VA単位を含んでもよい。
上記ポリビニルアルコール系ポリマーは、変性されていないポリビニルアルコール(非変性PVA)であってもよく、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)であってもよい。ここで非変性PVAとは、ポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより生成し、酢酸ビニルがビニル重合した構造の繰返し単位(-CH2-CH(OCOCH3)-)およびVA単位以外の繰返し単位を実質的に含まないポリビニルアルコール系ポリマーをいう。上記非変性PVAのけん化度は、例えば60%以上であってよく、水溶性の観点から70%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上でもよい。
ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位と、オキシアルキレン基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、水酸基、アミド基、イミド基、ニトリル基、エーテル基、エステル基、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1つの構造を有する非VA単位とを含む変性PVAであってもよい。また、変性PVAに含まれ得る非VA単位としては、例えば後述するN-ビニル型のモノマーやN-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位、エチレンに由来する繰返し単位、アルキルビニルエーテルに由来する繰返し単位、炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステルに由来する繰返し単位、等であってもよいが、これらに限定されない。上記N-ビニル型のモノマーの一好適例として、N-ビニルピロリドンが挙げられる。上記N-(メタ)アクリロイル型のモノマーの一好適例として、N-(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。上記アルキルビニルエーテルは、例えばプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等の、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を有するビニルエーテルであり得る。上記炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステルは、例えばプロパン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル等の、炭素原子数3以上7以下のモノカルボン酸のビニルエステルであり得る。また、ポリビニルアルコール系ポリマーは、ポリビニルアルコール系ポリマーに含まれるVA単位の一部がアルデヒドでアセタール化された変性PVAであってもよい。上記アルデヒドとしては、例えばアルキルアルデヒドを好ましく用いることができ、炭素原子数1以上7以下のアルキル基を有するアルキルアルデヒドが好ましく、なかでもアセトアルデヒド、n-プロピルアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-ペンチルアルデヒドが好ましい。ポリビニルアルコール系ポリマーとして、第四級アンモニウム構造等のカチオン性基が導入されたカチオン変性ポリビニルアルコールを使用してもよい。上記カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、N-(メタ)アクリロイルアミノアルキル-N,N,N-トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性基を有するモノマーに由来するカチオン性基が導入されたものが挙げられる。
上記ポリビニルアルコール系ポリマーに含まれるVA単位の一部がアルデヒドでアセタール化された変性PVA(アセタール化PVA(ac-PVA))は、ポリビニルアルコール系ポリマーのヒドロキシ基の一部をアルデヒド化合物またはケトン化合物と反応させ、アセタール化することにより得ることができる。典型的には、アセタール化ポリビニルアルコール系ポリマーはポリビニルアルコール系ポリマーとアルデヒド化合物とのアセタール化反応により得られる。好ましい一態様において、上記アルデヒド化合物の炭素数は1~7であり、より好ましくは2~7である。
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、t-ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド等の直鎖または分岐アルキルアルデヒド類;シクロヘキサンカルバルデヒド、ベンズアルデヒド等の脂環式または芳香族アルデヒド類;が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。また、ホルムアルデヒドを除き、1以上の水素原子がハロゲン等により置換されたものであってもよい。なかでも、水に対する溶解性が高くアセタール化反応が容易である点から、直鎖または分岐アルキルアルデヒド類であることが好ましく、その中でもアセトアルデヒド、n-プロピルアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-ペンチルアルデヒドであることがより好ましい。
アルデヒド化合物としては、上記の他にも、2-エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド等の炭素数8以上のアルデヒド化合物を用いてもよい。
アセタール化ポリビニルアルコール系ポリマーは、次の化学式:-CH2-CH(OH)-;により表される構造部分であるVA単位と、次の一般式(1)により表されるアセタール化された構造単位(以下、「VAC単位」ともいう。)とを含む。
(式(1)中、Rは水素原子、または、直鎖または分枝アルキル基であり、該アルキル基は官能基によって置換されていてもよい。)
好ましい一態様において、上記式(1)中のRは水素原子または炭素数1~6の直鎖または分枝アルキル基である。Rは、これらのうち一種でもよく、二種以上が組み合わさっていてもよい。ヘイズ低減性能向上の観点から、Rは炭素数1~6の直鎖または分枝アルキル鎖であることが好ましい。
ヘイズ低減性能の向上の観点から、アセタール化ポリビニルアルコール系ポリマーのアセタール化度は1モル%以上とすることができ、5モル%以上でもよく、10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、特に好ましくは25モル%以上(例えば27モル%以上)である。親水性向上の観点から、アセタール化ポリビニルアルコール系ポリマーのアセタール化度は60モル%未満とすることが好ましく、さらには50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下(例えば33モル%以下)である。
ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する全繰返し単位のモル数に占めるVA単位のモル数の割合は、例えば5%以上であってよく、10%以上でもよく、20%以上でもよく、30%以上でもよい。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記VA単位のモル数の割合は、50%以上であってよく、65%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上(例えば95%以上、または98%以上)でもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する繰返し単位の実質的に100%がVA単位であってもよい。ここで「実質的に100%」とは、少なくとも意図的にはポリビニルアルコール系ポリマーに非VA単位を含有させないことをいい、典型的には全繰返し単位のモル数に占める非VA単位のモル数の割合が2%未満(例えば1%未満)であり、0%である場合を包含する。他のいくつかの態様において、ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する全繰返し単位のモル数に占めるVA単位のモル数の割合は、例えば95%以下であってよく、90%以下でもよく、80%以下でもよく、70%以下でもよい。
ポリビニルアルコール系ポリマーにおけるVA単位の含有量(重量基準の含有量)は、例えば5重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、30重量%以上でもよい。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記VA単位の含有量は、50重量%以上(例えば50重量%超)であってよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上(例えば90重量%以上、または95重量%以上、または98重量%以上)でもよい。ポリビニルアルコール系ポリマーを構成する繰返し単位の実質的に100重量%がVA単位であってもよい。ここで「実質的に100重量%」とは、少なくとも意図的にはポリビニルアルコール系ポリマーを構成する繰返し単位として非VA単位を含有させないことをいい、典型的にはポリビニルアルコール系ポリマーにおける非VA単位の含有量が2重量%未満(例えば1重量%未満)であることをいう。他のいくつかの態様において、ポリビニルアルコール系ポリマーにおけるVA単位の含有量は、例えば95重量%以下であってよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよい。
ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位の含有量の異なる複数のポリマー鎖を同一分子内に含んでいてもよい。ここでポリマー鎖とは、一分子のポリマーの一部を構成する部分(セグメント)を指す。例えば、ポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位の含有量が50重量%より高いポリマー鎖Aと、VA単位の含有量が50重量%より低い(すなわち、非VA単位の含有量が50重量%より多い)ポリマー鎖Bとを、同一分子内に含んでいてもよい。
ポリマー鎖Aは、繰返し単位としてVA単位のみを含んでいてもよく、VA単位に加えて非VA単位を含んでいてもよい。ポリマー鎖AにおけるVA単位の含有量は、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。いくつかの態様において、ポリマー鎖AにおけるVA単位の含有量は、95重量%以上でもよく、98重量%以上でもよい。ポリマー鎖Aを構成する繰返し単位の実質的に100重量%がVA単位であってもよい。
ポリマー鎖Bは、繰返し単位として非VA単位のみを含んでいてもよく、非VA単位に加えてVA単位を含んでいてもよい。ポリマー鎖Bにおける非VA単位の含有量は、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。いくつかの態様において、ポリマー鎖Bにおける非VA単位の含有量は、95重量%以上でもよく、98重量%以上でもよい。ポリマー鎖Bを構成する繰返し単位の実質的に100重量%が非VA単位であってもよい。
ポリマー鎖Aとポリマー鎖Bとを同一分子中に含むポリビニルアルコール系ポリマーの例として、これらのポリマー鎖を含むブロック共重合体やグラフト共重合体が挙げられる。上記グラフト共重合体は、ポリマー鎖A(主鎖)にポリマー鎖B(側鎖)がグラフトした構造のグラフト共重合体であってもよく、ポリマー鎖B(主鎖)にポリマー鎖A(側鎖)がグラフトした構造のグラフト共重合体であってもよい。一態様において、ポリマー鎖Aにポリマー鎖Bがグラフトした構造のポリビニルアルコール系ポリマーを用いることができる。
ポリマー鎖Bの例としては、N-ビニル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、N-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、オキシアルキレン単位を主繰返し単位とするポリマー鎖等が挙げられる。なお、本明細書において主繰返し単位とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる繰返し単位をいう。
ポリマー鎖Bの一好適例として、N-ビニル型のモノマーを主繰返し単位とするポリマー鎖、すなわちN-ビニル系ポリマー鎖が挙げられる。N-ビニル系ポリマー鎖におけるN-ビニル型モノマーに由来する繰返し単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bの実質的に全部がN-ビニル型モノマーに由来する繰返し単位であってもよい。
この明細書において、N-ビニル型のモノマーの例には、窒素を含有する複素環(例えばラクタム環)を有するモノマーおよびN-ビニル鎖状アミドが含まれる。N-ビニルラクタム型モノマーの具体例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルモルホリノン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。N-ビニル鎖状アミドの具体例としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオン酸アミド、N-ビニル酪酸アミド等が挙げられる。ポリマー鎖Bは、例えば、その繰返し単位の50重量%超(例えば70重量%以上、または85重量%以上、または95重量%以上)がN-ビニルピロリドン単位であるN-ビニル系ポリマー鎖であり得る。ポリマー鎖Bを構成する繰返し単位の実質的に全部がN-ビニルピロリドン単位であってもよい。
ポリマー鎖Bの他の例として、N-(メタ)アクリロイル型のモノマーに由来する繰返し単位を主繰返し単位とするポリマー鎖、すなわち、N-(メタ)アクリロイル系ポリマー鎖が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル系ポリマー鎖におけるN-(メタ)アクリロイル型モノマーに由来する繰返し単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bの実質的に全部がN-(メタ)アクリロイル型モノマーに由来する繰返し単位であってもよい。
この明細書において、N-(メタ)アクリロイル型モノマーの例には、N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドおよびN-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドが含まれる。N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドの例としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドの例としては、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等が挙げられる。
ポリマー鎖Bの他の例として、オキシアルキレン単位を主繰返し単位として含むポリマー鎖、すなわちオキシアルキレン系ポリマー鎖が挙げられる。オキシアルキレン系ポリマー鎖におけるオキシアルキレン単位の含有量は、典型的には50重量%超であり、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。ポリマー鎖Bに含まれる繰返し単位の実質的に全部がオキシアルキレン単位であってもよい。
オキシアルキレン単位の例としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位等が挙げられる。このようなオキシアルキレン単位は、それぞれ、対応するアルキレンオキシドに由来する繰返し単位であり得る。オキシアルキレン系ポリマー鎖に含まれるオキシアルキレン単位は、一種類であってもよく、二種類以上であってもよい。例えば、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを組合せで含むオキシアルキレン系ポリマー鎖であってもよい。二種類以上のオキシアルキレン単位を含むオキシアルキレン系ポリマー鎖において、それらのオキシアルキレン単位は、対応するアルキレンオキシドのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、交互共重合体やグラフト共重合体であってもよい。
ポリマー鎖Bのさらに他の例として、アルキルビニルエーテル(例えば、炭素原子数1以上10以下のアルキル基を有するビニルエーテル)に由来する繰返し単位を含むポリマー鎖、モノカルボン酸ビニルエステル(例えば、炭素原子数3以上のモノカルボン酸のビニルエステル)に由来する繰返し単位を含むポリマー鎖、カチオン性基(例えば、第四級アンモニウム構造を有するカチオン性基)が導入されたポリマー鎖、等が挙げられる。
ヘイズ低減性能向上の観点から、ここに開示される技術における水溶性高分子としてのポリビニルアルコール系ポリマーは、VA単位および非VA単位を含む共重合体である変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。また、水溶性高分子としてのポリビニルアルコール系ポリマーのけん化度は、通常は50モル%以上であり、好ましくは65モル%以上、より好ましくは70モル%以上、例えば75モル%以上である。なお、ポリビニルアルコール系ポリマーのけん化度は、原理上、100モル%以下である。
他のいくつかの態様においては、水溶性高分子としてN-ビニル型ポリマーが用いられ得る。N-ビニル型ポリマーの例には、窒素を含有する複素環(例えばラクタム環)を有するモノマーに由来する繰返し単位を含むポリマーが含まれる。このようなポリマーの例には、N-ビニルラクタム型モノマーの単独重合体および共重合体(例えば、N-ビニルラクタム型モノマーの共重合割合が50重量%を超える共重合体)、N-ビニル鎖状アミドの単独重合体および共重合体(例えば、N-ビニル鎖状アミドの共重合割合が50重量%を超える共重合体)等が含まれる。
N-ビニルラクタム型モノマー(すなわち、一分子内にラクタム構造とN-ビニル基とを有する化合物)の具体例としては、N-ビニルピロリドン(VP)、N-ビニルピペリドン、N-ビニルモルホリノン、N-ビニルカプロラクタム(VC)、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が挙げられる。N-ビニルラクタム型のモノマー単位を含むポリマーの具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、VPとVCとのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方と他のビニルモノマー(例えば、アクリル系モノマー、ビニルエステル系モノマー等)とのランダム共重合体、VPおよびVCの一方または両方を含むポリマー鎖を含むブロック共重合体、交互共重合体やグラフト共重合体等が挙げられる。
N-ビニル鎖状アミドの具体例としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオン酸アミド、N-ビニル酪酸アミド等が挙げられる。
他のいくつかの態様においては、水溶性高分子としてN-(メタ)アクリロイル型ポリマーが用いられ得る。N-(メタ)アクリロイル型ポリマーの例には、N-(メタ)アクリロイル型モノマーの単独重合体および共重合体(典型的には、N-(メタ)アクリロイル型モノマーの共重合割合が50重量%を超える共重合体)が含まれる。N-(メタ)アクリロイル型モノマーの例には、N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドおよびN-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドが含まれる。
N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドの例としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル基を有する鎖状アミドをモノマー単位として含むポリマーの例として、N-イソプロピルアクリルアミドの単独重合体およびN-イソプロピルアクリルアミドの共重合体(例えば、N-イソプロピルアクリルアミドの共重合割合が50重量%を超える共重合体)が挙げられる。
N-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドの例としては、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルチオモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピロリジン等が挙げられる。N-(メタ)アクリロイル基を有する環状アミドをモノマー単位として含むポリマーの例として、アクリロイルモルホリン系ポリマー(PACMO)が挙げられる。アクリロイルモルホリン系ポリマーの典型例として、N-アクリロイルモルホリン(ACMO)の単独重合体およびACMOの共重合体(例えば、ACMOの共重合割合が50重量%を超える共重合体)が挙げられる。アクリロイルモルホリン系ポリマーにおいて、全繰返し単位のモル数に占めるACMO単位のモル数の割合は、通常は50%以上であり、80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)であることが適当である。水溶性高分子の全繰返し単位が実質的にACMO単位から構成されていてもよい。
ここに開示される技術において、水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。水溶性高分子のMwは、例えば凡そ200×104以下であってよく、凡そ150×104以下が適当であり、洗浄性等の観点から、好ましくは凡そ100×104以下であり、凡そ50×104以下であってもよい。また、研磨表面の保護性の観点から、水溶性高分子のMwは、0.5×104以上であることが好ましい。いくつかの態様において、上記Mwは1.0×104以上が適当であり、2×104以上であってもよく、例えば5×104以上でもよい。
ここに開示される技術において、好ましい水溶性高分子化合物の分子量の範囲は、使用するポリマーの種類によって異なり得る。例えば、セルロース誘導体およびデンプン誘導体のMwは、それぞれ凡そ200×104以下とすることができ、150×104以下が適当である。上記Mwは、凡そ100×104以下であってもよく、凡そ50×104以下(例えば凡そ30×104以下)でもよい。また、研磨表面の保護性の観点から、上記Mwは、例えば凡そ0.5×104以上であることが適当であり、好ましくは凡そ1.0×104以上、より好ましくは凡そ3.0×104以上、さらに好ましくは凡そ10×104以上であり、凡そ20×104以上であってもよい。
また例えば、ポリビニルアルコール系ポリマー(アセタール化されたポリビニルアルコール系ポリマーを含む)および窒素原子を含有するポリマーのMwは、それぞれ、100×104以下とすることができ、60×104以下が適当である。濃縮効率等の観点から、上記Mwは、30×104以下であってもよく、好ましくは20×104以下、例えば10×104以下、典型的には8×104以下であってもよい。また、研磨表面を好適に保護してヘイズを低減するという観点から、Mwは例えば0.5×104以上であることが好ましい。いくつかの態様において、Mwは1.0×104以上が適当であり、好ましくは1.5×104以上、より好ましくは2×104以上、さらに好ましくは3×104以上であり、例えば4×104以上であってもよく、5×104以上でもよい。
水溶性高分子のMwとしては、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)から算出される分子量を採用することができる。GPC測定装置としては、東ソー株式会社製の機種名「HLC-8320GPC」を用いるとよい。測定は、例えば下記の条件で行うことができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
[GPC測定条件]
サンプル濃度:0.1重量%
カラム:TSKgel GMPWXL
検出器:示差屈折計
溶離液:100mM 硝酸ナトリウム水溶液
流速:1mL/分
測定温度:40℃
サンプル注入量:200μL
凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、水溶性高分子としてはノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。また、化学構造や純度の制御容易性の観点から、水溶性高分子として合成ポリマーを好ましく採用し得る。例えば、ここに開示される技術が、水溶性高分子として合成ポリマーを含む態様で実施される場合、研磨用組成物は、水溶性高分子として天然物由来のポリマーを実質的に使用しないものであり得る。ここで、実質的に使用しないとは、水溶性高分子の合計含有量100重量部に対する天然物由来のポリマーの使用量が、典型的には3重量部以下、好ましくは1重量部以下であることをいい、0重量部または検出限界以下であることを包含する。
研磨用組成物における水溶性高分子の含有量(重量基準の含有量)は、特に限定されない。例えば1.0×10-4重量%以上とすることができる。ヘイズ低減等の観点から、好ましい含有量は5.0×10-4重量%以上であり、より好ましくは1.0×10-3重量%以上、さらに好ましくは2.0×10-3重量%以上、例えば5.0×10-3重量%以上である。また、研磨除去速度等の観点から、上記含有量を0.2重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%以下とすることがより好ましく、0.05重量%以下(例えば0.02重量%以下)とすることがさらに好ましい。なお、上記研磨用組成物が二種以上の水溶性高分子を含む場合、上記含有量とは該研磨用組成物に含まれる全ての水溶性高分子の合計含有量(重量基準の含有量)のことをいう。
水溶性高分子の含有量(二種以上の水溶性高分子を含む場合にはそれらの合計量)は、砥粒との相対的関係によっても特定され得る。特に限定するものではないが、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対する水溶性高分子の含有量は、例えば0.001重量部以上とすることができ、ヘイズ低減等の観点から0.01重量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.05重量部以上あってもよい。また、砥粒100重量部に対する水溶性高分子の含有量は、例えば50重量部以下であってもよく、40重量部以下でもよい。研磨用組成物の分散安定性等の観点から、いくつかの態様において、砥粒100重量部に対する水溶性高分子の含有量は、30重量部以下とすることが適当であり、好ましくは20重量部以下であり、15重量部以下としてもよい。
<塩基性化合物>
ここに開示される研磨用組成物は、塩基性化合物を含有する。本明細書において塩基性化合物とは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、リンを含む塩基性化合物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。窒素を含む塩基性化合物の例としては、第四級アンモニウム化合物、アンモニア、アミン(好ましくは水溶性アミン)等が挙げられる。リンを含む塩基性化合物の例としては、第四級ホスホニウム化合物が挙げられる。このような塩基性化合物は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。第四級ホスホニウム化合物の具体例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム等の水酸化第四級ホスホニウムが挙げられる。
第四級アンモニウム化合物としては、テトラアルキルアンモニウム塩、ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩(典型的には強塩基)を用いることができる。かかる第四級アンモニウム塩におけるアニオン成分は、例えば、OH-、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、BH4
-等であり得る。上記第四級アンモニウム化合物の例として、アニオンがOH-である第四級アンモニウム塩、すなわち水酸
化第四級アンモニウムが挙げられる。水酸化第四級アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウムおよび水酸化テトラヘキシルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム;水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリンともいう。)等の水酸化ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム;等が挙げられる。
これらの塩基性化合物のうち、例えば、アルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウムおよびアンモニアから選択される少なくとも一種の塩基性化合物を好ましく使用し得る。なかでも水酸化テトラアルキルアンモニウム(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム)およびアンモニアがより好ましく、アンモニアが特に好ましい。
研磨用組成物全量に対する塩基性化合物の含有量は、特に制限されない。研磨レート向上等の観点から、通常は、上記含有量を0.0001重量%以上とすることが適当であり、0.001重量%以上とすることが好ましく、0.003重量%以上とすることがさらに好ましい。また、ヘイズ低減等の観点から、上記含有量は、1重量%未満とすることが適当であり、0.05重量%未満とすることが好ましく、0.03重量%未満(例えば0.025重量%未満)とすることがより好ましい。なお、二種以上を組み合わせて用いる場合は、上記含有量は二種以上の塩基性化合物の合計含有量を指す。
<水>
ここに開示される研磨用組成物に含まれる水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。なお、ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(例えば99~100体積%)が水であることがより好ましい。
<その他の成分>
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、例えば界面活性剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えばシリコンウェーハの仕上げポリシング工程に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
ここに開示される研磨用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として界面活性剤を含有させることができる。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のいずれのものも使用可能である。アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が採用され得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤が用いられ得る。また、界面活性剤としては、例えば、Mwが0.5×104未満の有機化合物が用いられる。研磨液の濾過性や研磨対象物の洗浄性等の観点から界面活性剤のMwは0.1×104未満であることが好ましい。また、ここに開示される技術の好ましい一態様において、界面活性剤のMwは、100以上であり、より好ましくは200以上であり、さらに好ましくは250以上である。界面活性剤のMwの増大によって研磨速度が向上する傾向がある。ここで、界面活性剤のMwは、化学式から算出される分子量を採用してもよいし、上述の水溶性高分子と同様に、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(ポリエチレンオキサイド換算)から算出される分子量を採用してもよい。
界面活性剤としては例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン誘導体(例えば、ポリオキシアルキレン付加物);複数種のオキシアルキレンの共重合体(例えば、ジブロック型共重合体、トリブロック型共重合体、ランダム型共重合体、交互共重合体);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン構造を含有する界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲であれば特に制限はない。砥粒100重量部に対する界面活性剤の含有量は、例えば20重量部以下であり、10重量部未満であってもよく、3重量部未満でもよく、2重量部未満(例えば1.8重量部未満)でもよい。ここに開示される研磨用組成物は、上記界面活性剤を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
有機酸およびその塩、ならびに無機酸およびその塩は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、イタコン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グリコール酸、マロン酸、グルコン酸、アラニン、グリシン、乳酸、ヒドロキシエチリデン二リン酸(HEDP)、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸、ニトリロトリス(メチレンリン酸)(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)等の有機ホスホン酸等が挙げられる。有機酸塩の例としては、有機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、リン酸、硫酸、ホスホン酸、硝酸、ホスフィン酸、ホウ酸、炭酸等が挙げられる。無機酸塩の例としては、無機酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)やアンモニウム塩が挙げられる。
上記キレート剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。キレート剤の好適例としては、例えばエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる。上記防腐剤および防カビ剤の例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。研磨用組成物中に酸化剤が含まれていると、当該研磨用組成物が基板(例えばシリコンウェーハ)に供給されることで該基板の表面が酸化されて酸化膜が生じ、これにより研磨レートが低下してしまうことがあり得るためである。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H2O2)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、研磨用組成物が酸化剤を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。したがって、原料や製法等に由来して微量(例えば、研磨用組成物中における酸化剤のモル濃度が0.0005モル/L以下、好ましくは0.0001モル/L以下、より好ましくは0.00001モル/L以下、特に好ましくは0.000001モル/L以下)の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含され得る。
<pH>
ここに開示される研磨用組成物のpHは特に限定されず、基板や砥粒種等に応じて適当なpHが採用され得る。いくつかの態様において、研磨用組成物のpHは8.0以上が適当であり、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0以上である。研磨用組成物のpHが高くなると、研磨能率が向上する傾向にある。一方、砥粒(例えばシリカ粒子)の溶解を防いで機械的な研磨作用の低下を抑制する観点から、研磨用組成物のpHは、通常、12.0以下であることが適当であり、11.0以下であることが好ましい。
なお、ここに開示される技術において、研磨用組成物のpHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番F-72))を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液 pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することにより把握することができる。
<研磨用組成物S2>
ここに開示される技術において、第2段階の研磨に用いられる研磨用組成物S2は、砥粒A2を含む。砥粒A2としては、砥粒A1に使用し得る粒子として例示したものと同様の粒子から選択される1種または2種以上を使用し得る。砥粒A2は、少なくともシリカ粒子を含むことが好ましい。砥粒A2におけるシリカ粒子の含有量は、該砥粒A2全体の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、99重量%以上でもよく、100重量%でもよい。
砥粒A2に使用し得るシリカ粒子の例としては、砥粒A1に使用し得るシリカ粒子として例示したものと同様のものが挙げられる。なかでもコロイダルシリカが好ましい。砥粒A2としてコロイダルシリカを用いることにより、面精度の高い表面が好適に実現され得る。砥粒A2におけるコロイダルシリカの含有量は、砥粒A2全体の、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、99重量%以上でもよく、100重量%でもよい。いくつかの態様において、砥粒A2は、1種または2種以上のコロイダルシリカのみからなる構成であり得る。
砥粒A2(典型的にはシリカ粒子)の平均一次粒子径(D1A2)は、上述する平均二次粒子径(D2A2)との関係を満たす限りにおいて特に限定されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果(例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果)を得る観点から、砥粒A2の平均一次粒子径(D1A2)は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒A2の平均一次粒子径(D1A2)は、好ましくは100nm以下、より好ましくは75nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。ここに開示される技術は、高品位の表面が得られやすいことから、研磨後に高品位の表面が求められる研磨に適用されることが好ましい。かかる研磨方法に用いる砥粒A2としては、例えば、平均一次粒子径(D1A2)を35nm以下、35nm未満、32nm以下または30nm未満とすることができる。砥粒A2の平均一次粒子径(D1A2)は、砥粒A2として用いる砥粒粒子の選択、砥粒A2として複数種類の砥粒粒子を用いる場合にはそれらの砥粒粒子の組合せや使用量比、等により調節することができる。
砥粒A2(典型的にはシリカ粒子)の平均二次粒子径(D2A2)は、上述する平均一次粒子径(D1A2)との関係を満たす限りにおいて特に限定されないが、研磨効率等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より研磨レートを大きくする観点から、砥粒A2の平均二次粒子径(D2A2)は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、保存安定性(例えば分散安定性)の観点から、砥粒A2の平均二次粒子径(D2A2)は、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。ここに開示される技術は、高品位の表面が得られやすいことから、研磨後に高品位の表面が求められる研磨に適用されることが好ましい。かかる研磨方法に用いる砥粒A2としては、例えば、平均二次粒子径(D2A2)を75nm以下、65nm以下、60nm以下または50nm未満とすることができる。砥粒A2の平均二次粒子径(D2A2)は、砥粒A2として用いる砥粒粒子の選択、砥粒A2として複数種類の砥粒粒子を用いる場合にはそれらの砥粒粒子の組合せや使用量比、等により調節することができる。
砥粒A2の形状(外形)は、平均一次粒子径(D1A2)と平均二次粒子径(D2A2)とが上述する関係を満たす限りにおいて特に限定されず、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす粒子の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。このなかで、平均一次粒子径(D1A2)と平均二次粒子径(D2A2)とが上述する砥粒A2に関する関係を満たしやすい形状として、球形が挙げられる。例えば、砥粒A2として、粒子の多くが球形をした砥粒を好ましく採用し得る。
研磨用組成物S2における砥粒A2の含有量は特に制限されず、例えば0.005重量%以上であり、0.01重量%以上であってもよい。砥粒含有量の増大によって、より高い研磨能率が実現され得る。上記含有量は、5重量%以下が適当であり、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下でもよい。これにより、より欠陥低減された研磨表面を実現することができる。上記の砥粒含有量は、研磨用組成物が研磨液(ワーキングスラリー)の形態で用いられる態様において好ましく採用され得る。
研磨用組成物S2には、水溶性高分子、塩基性化合物、水、界面活性剤およびその他の成分を、必要に応じて含有させることができる。これらの成分として使用し得る材料や使用量の例示については、研磨用組成物S1と概ね同様であるので、重複する説明は省略する。
ここに開示される技術は、少なくとも1種類の水溶性高分子が研磨用組成物S1および研磨用組成物S2の両方に含まれる態様で好ましく実施することができる。すなわち、少なくとも1種類の水溶性高分子が研磨用組成物S1と研磨用組成物S2とに共通して含まれる態様で好ましく実施することができる。研磨用組成物S1,S2に含まれる水溶性高分子の全てが共通であってもよい。ここに開示される研磨方法では、第1段階と第2段階とが同一定盤上で行われるため、該定盤上において研磨用組成物S1と研磨用組成物S2とが少なくとも一時的に共存し得る。研磨用組成物S1と研磨用組成物S2とが共通する水溶性高分子を含むことは、これらの研磨用組成物が共存した状態における分散安定性向上や凝集物の発生抑制の観点から有利となり得る。上記共通する水溶性高分子の研磨用組成物S1における含有量と研磨用組成物S2における含有量とは、同程度であってもよく、異なってもよい。
同様の理由から、ここに開示される技術は、少なくとも1種類の塩基性化合物が研磨用組成物S1と研磨用組成物S2とに共通して含まれる態様で好ましく実施することができる。上記共通する塩基性化合物の研磨用組成物S1における含有量と研磨用組成物S2における含有量とは、同程度であってもよく、異なってもよい。
また、同様の理由から、ここに開示される技術は、少なくとも1種類の界面活性剤が研磨用組成物S1と研磨用組成物S2とに共通して含まれる態様で好ましく実施することができる。上記共通する界面活性剤の研磨用組成物S1における含有量と研磨用組成物S2における含有量とは、同程度であってもよく、異なってもよい。
<研磨対象物>
ここに開示される技術は、種々の材質および形状を有する基板の研磨に適用され得る。基板の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された基板であってもよい。基板の形状は特に制限されない。ここに開示される技術は、例えば、板状や多面体状等の、平面を有する基板の研磨、もしくは基板の端部の研磨(例えばウェーハエッジの研磨)に適用され得る。
ここに開示される研磨方法は、シリコンからなる表面の研磨(典型的にはシリコンウェーハの研磨)に特に好ましく使用され得る。ここでいうシリコンウェーハの典型例はシリコン単結晶ウェーハであり、例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハである。
<研磨方法>
ここに開示される研磨方法は、同一定盤上において、研磨対象物に対し、研磨用組成物S1および研磨用組成物S2をこの順に供給して該研磨対象物を研磨する研磨工程を含む。上記同一定盤上で行われる研磨工程は、例えば以下のようにして行うことができる。ただし、以下の説明は上記研磨工程の実施態様を制限するものではない。
すなわち、研磨対象物(典型的には基板)を研磨装置にセットする。そして、上記研磨対象物への研磨用組成物S1の供給を開始し、該研磨対象物を研磨する第1段階を行う。研磨用組成物S1は、例えば、上記研磨装置の定盤に固定された研磨パッドを通じて上記研磨対象物に供給される。上記第1段階の研磨は、典型的には、研磨用組成物S1を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動させることにより行われる。上記相対的な移動は、例えば回転移動であり得る。研磨用組成物S1の供給開始から所定時間t1が経過したら、研磨用組成物S1の供給を停止する。また、研磨用組成物S1の供給開始後の適切な時期に研磨用組成物S2の供給を開始し、上記研磨対象面に研磨用組成物S2を供給して研磨する第2段階を所定時間t2に亘って行う。このようにして行われる第1段階および第2段階を経て、上記研磨工程を終了する。
ここで、研磨用組成物S2の供給は、研磨用組成物S1の供給停止とほぼ同時に開始してもよく、研磨用組成物S1の供給停止から間隔をあけて開始してもよい。あるいは、研磨用組成物S1の供給停止前に研磨用組成物S2の供給を開始してもよい。すなわち、研磨用組成物S1の供給時期と研磨用組成物S2の供給時期とが部分的に重複していてもよい。各液の供給開始および供給終了にあたっては、供給量を徐々にまたは段階的に変化させてもよく、一度に変化させてもよい。このように、この明細書において、研磨用組成物S1,S2をこの順に供給するとは、研磨用組成物S1の供給開始時点よりも研磨用組成物S2の供給開始時点のほうが後であることをいう。研磨用組成物S1,S2をこの順に供給する態様の好適例として、研磨用組成物S1の供給開始より後に研磨用組成物S2の供給を開始し、かつ、研磨用組成物S2の供給停止より前に研磨用組成物S1の供給を停止する態様が挙げられる。かかる態様は、研磨用組成物S2を供給せずに研磨用組成物S1を供給して研磨する期間と、研磨用組成物S1を供給せずに研磨用組成物S2を供給する期間とを、この順に有する。研磨用組成物S2の供給開始時点は、研磨用組成物S1の供給停止時点とほぼ同時またはそれより前とすることが好ましい。
第1段階の研磨時間t1と、第2段階の研磨時間t2との関係は、特に限定されない。いくつかの態様において、第1段階の研磨時間t1を第2段階の研磨時間t2より長くすることができる。すなわち、ここに開示される研磨方法は、研磨対象物に研磨用組成物S2を供給して研磨する時間t2が、該研磨対象物に研磨用組成物S1を供給して研磨する時間t1よりも短い(すなわち、研磨時間t1に対する研磨時間t2の比(t2/t1)が1未満の)態様で実施することができる。このように、研磨用組成物S1および研磨用組成物S2のうち、研磨用組成物S1で研磨する時間を相対的に長くすることにより、上記研磨工程全体として欠陥低減性能を高めやすくなる。ここに開示される技術では、第2段階において面精度を効率よく高めることができる。これにより、研磨用組成物S2で研磨する時間を相対的に短くしても、加工後のダメージを好適に除去して表面品質を向上させることができる。研磨時間t1に対する研磨時間t2の比、すなわちt2/t1は、例えば0.5未満であってよく、0.4未満でもよく、0.3未満でもよい。また、面精度向上の観点から、t2/t1は、例えば0.01以上とすることが適当であり、0.02以上でもよい。
研磨時間t2は、面精度の向上や工程管理の容易性等の観点から、通常、5秒以上とすることが適当であり、10秒以上でもよく、20秒以上でもよい。また、研磨工程全体としての研磨レートの低下を抑制する観点から、研磨時間t2は、例えば5分以下とすることができ、3分以下としてもよく、1.5分以下としてもよい。いくつかの態様において、研磨時間t2は、1分以下としてもよく、0.75分以下としてもよく、0.6分以下としてもよい。
第1段階の研磨時間t1と第2段階との研磨時間t2との合計長さ、すなわちt1+t2は、特に限定されない。生産性向上の観点から、いくつかの態様において、t1+t2は、例えば30分以下であってよく、20分以下でもよく、10分以下でもよい。また、面精度向上の観点から、いくつかの態様において、t1+t2は、例えば0.25分以上とすることができ、0.5分以上としてもよく、1分以上としてもよい。
各研磨スラリーは、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態であってもよい。上記濃縮された形態は、研磨スラリーの濃縮液の形態であり、研磨スラリーの原液としても把握され得る。このような濃縮液は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。上記濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨スラリー(ワーキングスラリー)を調製し、該研磨スラリーを研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、例えば、上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。上記濃縮液における濃縮倍率は特に限定されない。上記濃縮倍率は、例えば、体積換算で2倍~100倍程度とすることができ、5倍~50倍程度としてもよく、例えば10倍~40倍程度としてもよい。
ここに開示される技術において使用される研磨スラリーまたはその濃縮液は、それぞれ、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、研磨スラリーの構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとを混合し、必要に応じて適切なタイミングで希釈することにより研磨スラリーが調製されるように構成されていてもよい。
研磨スラリーまたはその濃縮液の調製方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨スラリーまたはその濃縮液に含まれる各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
研磨スラリーは、いわゆる「かけ流し」の態様、すなわち、いったん研磨に使用したら使い捨てにする態様で使用することができる。あるいは、研磨スラリーは、循環して繰り返し使用してもよい。研磨スラリーを循環使用する態様の一例として、研磨装置から排出される使用済みの研磨スラリーをタンク内に回収し、回収した研磨スラリーを再度研磨装置に供給する態様が挙げられる。ここに開示される研磨方法は、研磨用組成物S1および研磨用組成物S2を、いずれも、かけ流しで使用する態様で好ましく実施することができる。
ここに開示される研磨方法において用いられる研磨パッドは、特に限定されない。例えば、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。各研磨パッドは、砥粒を含んでもよく、砥粒を含まなくてもよい。通常は、砥粒を含まない研磨パッドが好ましく用いられる。
ここに開示される研磨方法は、研磨物(例えば、シリコンウェーハ)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨方法を含むことを特徴とする、研磨物(例えば、シリコンウェーハ)の製造方法が提供される。この明細書によると、また、上記研磨方法または製造方法を適用して得られた研磨物(例えば、シリコンウェーハ)が提供される。
ここに開示される研磨方法のいくつかの好適な態様において、同一定盤上に研磨用組成物S1および研磨用組成物S2をこの順に供給して研磨する上述の研磨工程は、例えば、上流の工程によってRaが0.01nm~100nmの表面状態とされたシリコンウェーハを研磨(典型的には仕上げ研磨またはその直前の研磨)する工程であり得る。ここでRaは、例えばSchmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」等の装置により測定される算術平均粗さである。
ここに開示される研磨方法のいくつかの好適な態様において、同一定盤上に研磨用組成物S1および研磨用組成物S2をこの順に供給して研磨する上述の研磨工程は、基板(例えばシリコンウェーハ)の仕上げ工程またはその直前のポリシング工程に用いることが効果的であり、仕上げ研磨工程における使用が特に好ましい。ここで、仕上げ研磨工程とは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。ここに開示される研磨用組成物は、また、仕上げポリシングよりも上流のポリシング工程(粗研磨工程と最終研磨工程との間の予備研磨工程を指す。典型的には少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。)、例えば仕上げポリシングの直前に行われるポリシング工程に用いられてもよい。
あるいは、ここに開示される技術において、研磨用組成物S1を供給して研磨する第1段階は仕上げ研磨工程として把握され、研磨用組成物S2を供給して研磨する第2段階はリンス工程として把握されることもあり得る。すなわち、ここに開示される技術は、例えば、研磨用組成物S1を供給して研磨する第1段階を仕上げ研磨工程またはその一部として行い、研磨用組成物S2を供給して第2段階をリンス工程またはその一部として行う態様で実施することができる。また、ここに開示される技術は、例えば、研磨用組成物S1を供給して研磨する第1段階を予備研磨工程またはその一部として行い、研磨用組成物S2を供給して第2段階を仕上げ研磨工程またはその一部として行う態様で実施することができる。
ここに開示される研磨方法において、同一定盤上に研磨用組成物S1および研磨用組成物S2をこの順に供給して研磨する上述の研磨工程に使用する研磨装置は、研磨対象物の両面を同時に研磨する両面研磨装置であってもよく、研磨対象物の片面のみを研磨する片面研磨装置であってもよい。上記研磨工程が仕上げ研磨工程である場合、いくつかの態様において、該研磨工程を行う研磨装置として片面研磨装置を好ましく採用し得る。仕上げ研磨工程の前に予備研磨工程を行う場合、該予備研磨工程を行う研磨装置としては、両面研磨装置を好ましく採用し得る。これらの研磨装置において、各研磨装置の備える定盤の数は、1でもよく2以上でもよい。各研磨装置は、一度に一枚の研磨対象物を研磨するように構成された枚葉式の研磨装置でもよく、同一の定盤上で複数の研磨対象物を同時に研磨し得るように構成されたバッチ式の研磨装置でもよい。
ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨された基板は、典型的には洗浄される。洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC-1洗浄液(水酸化アンモニウム(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)と水(H2O)との混合液)、SC-2洗浄液(HClとH2O2とH2Oとの混合液)等を用いることができる。洗浄液の温度は、例えば室温(典型的には約15℃~25℃)以上、約90℃程度までの範囲とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃~85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。
<研磨用組成物セット>
この明細書によると、ここに開示される研磨方法に好ましく使用され得る研磨用組成物セットが提供される。その研磨用組成物セットは、互いに分けて保管される第1組成物と第2組成物とを少なくとも含む。第1組成物は、上記研磨用組成物S1またはその濃縮液であり得る。第2組成物は、上記研磨用組成物S2またはその濃縮液であり得る。ここに開示される研磨方法は、かかる研磨用組成物セットを用いて好適に実施することができる。したがって、上記研磨用組成物セットは、ここに開示される研磨方法や、該研磨方法を実施することを含む研磨物製造方法等に好ましく利用され得る。研磨用組成物セットを構成する第1組成物および第2組成物は、それぞれ、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。多剤型の組成物は、例えば、各組成物の構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとに分けて保管され、上記パートAと上記パートBとを混合して必要に応じて適切なタイミングで希釈することにより研磨スラリーが調製されるように構成され得る。
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1) 同一の研磨定盤上に、砥粒A1を含む研磨用組成物S1と、砥粒A2を含む研磨用組成物S2と、をこの順に供給して研磨対象物を研磨する研磨工程を含み、
上記砥粒A1は、BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(平均一次粒子径(D1A1))に対する動的光散乱法で測定される平均粒子径(平均二次粒子径(D2A1))の比(D2A1/D1A1)が1.5以上であり、
上記砥粒A2は、BET法により測定される比表面積から換算される粒子径(平均一次粒子径(D1A2))に対する動的光散乱法で測定される平均粒子径(平均二次粒子径(D2A2))の比(D2A2/D1A2)が1.5未満である、研磨方法。
(2) 上記砥粒A1の平均一次粒子径(D1A1)は、5nm以上100nm以下である、上記(1)に記載の研磨方法。
(3) 上記砥粒A1の平均二次粒子径(D2A1)は、10nm以上300nm以下である、上記(1)または(2)に記載の研磨方法。
(4) 上記砥粒A2の平均一次粒子径(D1A2)は、5nm以上100nm以下である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の研磨方法。
(5) 上記砥粒A2の平均二次粒子径(D2A2)は、10nm以上300nm以下である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の研磨方法。
(6) 上記研磨用組成物S1における上記砥粒A1の含有量は、0.01重量%以上1重量%以下である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の研磨方法。
(7) 上記研磨用組成物S2における上記砥粒A2の含有量は、0.01重量%以上1重量%以下である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の研磨方法。
(8) 上記研磨用組成物S1は、さらに水溶性高分子を含む、上記(1)~(7)のいずれかに記載の研磨方法。
(9) 上記研磨用組成物S2は、さらに水溶性高分子を含む、上記(1)~(8)のいずれかに記載の研磨方法。
(10) 上記砥粒A1は、シリカ粒子(好ましくはコロイダルシリカ)である、上記(1)~(9)のいずれかに記載の研磨方法。
(11) 上記砥粒A2は、シリカ粒子(好ましくはコロイダルシリカ)である、上記(1)~(10)のいずれかに記載の研磨方法。
(12) 上記研磨用組成物S1を供給して研磨する時間t1と、上記研磨用組成物S2を供給して研磨する時間t2との関係が、t2/t1<1を満たす、上記(1)~(11)のいずれかに記載の研磨方法。
(13) シリコンからなる表面(好ましくはシリコンウェーハ)の研磨に用いられる、上記(1)~(12)のいずれかに記載の研磨方法。
(14) 上記研磨工程の前に、上記研磨定盤とは異なる研磨定盤上で行われる予備研磨工程をさらに含む、上記(1)~(13)のいずれかに記載の研磨方法。
(15) 上記研磨工程が、上記研磨対象物の仕上げ研磨工程である、上記(1)~(14)のいずれかに記載の研磨方法。
(16) 上記研磨工程は研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)の仕上げ研磨工程であり、
上記仕上げ研磨工程の前に、記研磨定盤とは異なる研磨定盤上において、上記研磨対象物に予備研磨用組成物を供給して該研磨対象物を研磨する予備研磨工程をさらに含む、上記(1)~(15)のいずれかに記載の研磨方法。
(17) 上記(1)~(16)のいずれかに記載の研磨方法に用いられる研磨用組成物セットであって、
上記研磨用組成物S1またはその濃縮液である第1組成物と、
上記研磨用組成物S2またはその濃縮液である第2組成物と、
を含み、
上記第1組成物と上記第2組成物とは互いに分けて保管されている、研磨用組成物セット。
(18) 上記(1)~(16)のいずれかに記載の研磨方法で研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)を研磨することを含む、研磨対象物(例えばシリコンウェーハ)の製造方法。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<研磨用組成物の調製>
(スラリーa)
砥粒と、水溶性高分子としてポリアクリロイルモルホリン(以下「PACMO」と表記)およびポリビニルアルコールポリマー(以下「PVA」と表記)と、塩基性化合物と、界面活性剤とを含み、残部が水から成る研磨用組成物の濃縮液を調製した。砥粒としては、平均一次粒子径(D1)が29nm、平均二次粒子径(D2)が48nmのコロイダルシリカを使用した。PACMOとしては、Mwが35×104のものを使用した。PVAとしては、Mwが7.0×104、けん化度98%以上のものを使用した。塩基性化合物としてはアンモニアを使用した。界面活性剤としては、分子量が378のポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数5)デシルエーテル(以下、「C10EO5」と表記)を使用した。研磨用組成物の濃縮液を水で希釈したものをスラリーaとした。スラリーaにおける各成分の含有量は、砥粒が0.10%、PACMOが0.006%、PVAが0.003%、塩基性化合物が0.005%、界面活性剤が0.0006%であった。
(スラリーbおよびスラリーc)
砥粒として平均一次粒子径(D1)および平均二次粒子径(D2)がそれぞれ表1に示す値であるコロイダルシリカを使用し、さらに砥粒の含有量が表1に示す通りとなるようにしたこと以外は、スラリーaと同様の方法でスラリーbおよびスラリーcを調製した。スラリーbおよびスラリーcにおける砥粒以外の各成分の含有量は、いずれも、PACMOが0.006%、PVAが0.003%、塩基性化合物が0.005%、界面活性剤が0.0006%であった。
(スラリーd)
砥粒と、水溶性高分子としてPACMOおよびアセタール化したポリビニルアルコールポリマー(以下「ac-PVA」と表記)と、塩基性化合物と、界面活性剤とを含み、残部が水から成る研磨用組成物の濃縮液を調製した。砥粒としては、平均一次粒子径(D1)が40nm、平均二次粒子径(D2)が52nmのコロイダルシリカを使用した。PACMOとしては、Mwが35×104のものを使用した。ac-PVAとしては、Mwが1.3×104であり、アセタール化度が30モル%のものを使用した。塩基性化合物としてはアンモニアを使用した。界面活性剤としては、分子量が378のC10EO5を使用した。研磨用組成物の濃縮液を水で希釈したものをスラリーdとした。スラリーdにおける各成分の含有量は、砥粒が0.11%、PACMOが0.004%、ac-PVAが0.003%、塩基性化合物が0.005%、界面活性剤が0.001%であった。
(前研磨工程)
砥粒0.6%、塩基性化合物として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.08%、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース(HEC)0.0002%を含み、残部が水からなる前研磨用組成物の濃縮液を調製した。砥粒としては、BET径35nmのコロイダルシリカを使用した。
この前研磨用組成物を水で希釈した研磨液をワーキングスラリーとして使用して、シリコンウェーハを下記の前研磨条件で研磨した。シリコンウェーハとしては、直径300mmの市販シリコン単結晶ウェーハ(伝導型:P型、結晶方位:<100>、COPフリー)を使用した。
[前研磨条件]
研磨装置:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX-332B」
研磨荷重:20kPa
定盤回転数:20rpm
ヘッド(キャリア)回転数:20rpm
研磨パッド:フジボウ愛媛社製、製品名「FP55」
研磨液供給レート:1リットル/分
研磨液の温度:20℃
定盤冷却水の温度:20℃
研磨時間:240秒
(例1)
上記前研磨工程を終えたシリコンウェーハを、下記の研磨条件で研磨した。具体的には、下記研磨装置の同一定盤上において、一液目の研磨用組成物S1としてスラリーa、二液目の研磨用組成物S2としてスラリーbを供給して、上記前研磨工程を終えたシリコンウェーハの研磨を行った。
[研磨条件]
研磨装置:株式会社岡本工作機械製作所製の枚葉研磨機、型式「PNX-332B」
研磨荷重:20kPa
定盤回転数:52rpm
ヘッド(キャリア)回転数:50rpm
研磨パッド:フジボウ愛媛社製、製品名「POLYPAS275NX」
研磨液供給レート:1.5リットル/分
研磨液の温度:20℃
定盤冷却水の温度:20℃
より具体的には、上記研磨条件における研磨装置に、上記前研磨工程を終えたシリコンウェーハをセットし、スラリーaを供給して上記研磨条件で研磨を開始した。
スラリーaの供給開始から210秒経過後、スラリーaの供給を止め、同時にスラリーbの供給を開始して上記の研磨条件でシリコンウェーハをさらに研磨した。スラリーbの供給開始から30秒経過後、スラリーbの供給および研磨装置の作動を停止し、研磨を終了した。
研磨後のシリコンウェーハを研磨装置から取り外し、NH4OH(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=2:5.3:48(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC-1洗浄)。より具体的には、超音波発振器を取り付けた第1洗浄槽を用意し、該第1洗浄槽に上記洗浄液を収容して70℃に保持し、研磨後のシリコンウェーハを洗浄槽に6分浸漬した。その後超純水を入れた第2洗浄槽に15分浸漬したのち、再び第1洗浄槽に6分、第2洗浄槽に16分浸漬した後、シリコンウェーハを乾燥させた。
(例2~6)
一液目に使用する研磨用組成物S1および二液目に使用する研磨用組成物S2の種類を表1に示すとおりとした他は例1と同様にして、シリコンウェーハの研磨を行った。
<欠陥数測定>
洗浄後のシリコンウェーハ表面につき、ケーエルエー・テンコール社製のウェーハ検査装置、商品名「Surfscan SP5」を用いて、DCモードでシリコンウェーハ表面に存在する19nm以上の大きさの欠陥(パーティクル)の個数(LPDとLPD-Nの合計数)をカウントした。ここで、上記LPDはLight Point Defectsの略称であり、LPD-Nは、Light Point Defect Non-cleanableの略称である。得られた結果を、例4の上記欠陥数を100とする相対値に換算して表1に示した。
表1に示されるように、同一の定盤上に、(D2A1/D1A1)≧1.5を満たす研磨用組成物S1と、(D2A2/D1A2)<1.5を満たす研磨用組成物S2をこの順に供給して研磨を行った例1~3によると、19nm以上の欠陥の数が顕著に低減することが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。