JP7791503B2 - 鋼板、それを含む部品及び鋼板の製造方法 - Google Patents
鋼板、それを含む部品及び鋼板の製造方法Info
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Description
(1)質量%で、
C:0.030~0.150%、
Si:0.01~1.00%、
Mn:0.50~3.00%、
Ti:0.05~0.20%、
Al:0.01~0.40%、
P:0.100%以下、
S:0.010%以下、
N:0.0100%以下、
O:0.010%以下、
Nb:0~0.15%、
V:0~1.00%、
Cr:0~2.00%、
Ni:0~2.00%、
Cu:0~2.00%、
Mo:0~1.00%、
B:0~0.0100%、
Sn:0~1.00%、
Sb:0~1.00%、
Ca:0~0.0100%、
Mg:0~0.0100%、
Hf:0~0.0100%、
Bi:0~0.010%、
REM:0~0.0100%、
As:0~0.010%、
Zr:0~0.010%、
Co:0~2.00%、
Zn:0~0.010%、
W:0~1.00%、並びに
残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有し、
面積%で、
フェライト:20~50%、
ベイナイト:40~70%、及び
マルテンサイト:5~20%を含み、
直径10.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1014個/cm3以上であり、かつ直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1010~1.0×1014個/cm3であり、
フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比が0.80~1.20である金属組織を有することを特徴とする、鋼板。
(2)前記化学組成が、質量%で、Al:0.20~0.40%を含むことを特徴とする、上記(1)に記載の鋼板。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.001~0.15%、
V:0.001~1.00%、
Cr:0.001~2.00%、
Ni:0.001~2.00%、
Cu:0.001~2.00%、
Mo:0.001~1.00%、
B:0.0001~0.0100%、
Sn:0.001~1.00%、
Sb:0.001~1.00%、
Ca:0.0001~0.0100%、
Mg:0.0001~0.0100%、
Hf:0.0001~0.0100%、
Bi:0.001~0.010%、
REM:0.0001~0.0100%、
As:0.001~0.010%、
Zr:0.001~0.010%、
Co:0.001~2.00%、
Zn:0.001~0.010%、及び
W:0.001~1.00%
のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の鋼板。
(4)直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの面積率がフェライト全体の10~50%未満であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の鋼板。
(5)780MPa以上の引張強度を有することを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の鋼板。
(6)1.0~8.0mmの板厚を有することを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の鋼板。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の鋼板を含むことを特徴とする、部品。
(8)上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを加熱し、次いで仕上げ圧延することを含み、下記(a)~(c)の条件を満足する熱間圧延工程、
(a)スラブの加熱温度が1150~1300℃であること、
(b)1150~1300℃の温度域における保持時間が1000~4000秒であること、及び
(c)仕上げ圧延の終了温度が850~950℃であること
仕上げ圧延された鋼板を30~200℃/秒の平均冷却速度で600~750℃の中間空冷温度まで1次冷却し、次いで15℃/秒以下の平均冷却速度で3~15秒間にわたり中間空冷する中間空冷工程、並びに
中間空冷された鋼板を50~200℃/秒の平均冷却速度で2次冷却し、次いで20~290℃の巻取温度で巻き取る冷却工程
を含むことを特徴とする、鋼板の製造方法。
本発明の実施形態に係る鋼板、特に熱延鋼板は、質量%で、
C:0.030~0.150%、
Si:0.01~1.00%、
Mn:0.50~3.00%、
Ti:0.05~0.20%、
Al:0.01~0.40%、
P:0.100%以下、
S:0.010%以下、
N:0.0100%以下、
O:0.010%以下、
Nb:0~0.15%、
V:0~1.00%、
Cr:0~2.00%、
Ni:0~2.00%、
Cu:0~2.00%、
Mo:0~1.00%、
B:0~0.0100%、
Sn:0~1.00%、
Sb:0~1.00%、
Ca:0~0.0100%、
Mg:0~0.0100%、
Hf:0~0.0100%、
Bi:0~0.010%、
REM:0~0.0100%、
As:0~0.010%、
Zr:0~0.010%、
Co:0~2.00%、
Zn:0~0.010%、
W:0~1.00%、並びに
残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有し、
面積%で、
フェライト:20~50%、
ベイナイト:40~70%、及び
マルテンサイト:5~20%を含み、
直径10.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1014個/cm3以上であり、かつ直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1010~1.0×1014個/cm3であり、
フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比が0.80~1.20である金属組織を有することを特徴としている。
Cは、鋼板の強度を高めるのに有効な元素である。また、Cは、鋼中でTi及びNbと炭化物及び/又は炭窒化物を形成し、形成した析出物に基づく析出強化にも寄与する。これらの効果を十分に得るために、C含有量は0.030%以上とする。C含有量は0.040%以上、0.050%以上、0.060%以上又は0.070%以上であってもよい。一方で、Cを過度に含有すると、セメンタイトの形成に起因して穴広げ性が低下する場合がある。したがって、C含有量は0.150%以下とする。C含有量は0.140%以下、0.120%以下、0.100%以下又は0.080%以下であってもよい。
Siは、固溶強化元素として強度上昇に有効な元素である。また、Siは、セメンタイトの析出を抑制する作用も有する。このため、Siを含有することで鋼中のCがセメンタイトを形成するのに消費されることを抑制することができ、それによって熱間圧延後の冷却時にTiC析出物の形成を促進させることが可能となる。これらの効果を十分に得るために、Si含有量は0.01%以上とする。Si含有量は0.02%以上、0.03%以上、0.04%以上又は0.06%以上であってもよい。一方で、Siを過度に含有すると、Siスケールと呼ばれる表面品質不良が発生したり、マルテンサイトが過度に生成したりする場合がある。マルテンサイトが過度に生成すると、フェライトと硬質相であるベイナイト及びマルテンサイトとの硬度差が大きくなり、穴広げ性が低下する場合がある。したがって、Si含有量は1.00%以下とする。Si含有量は0.90%以下、0.80%以下、0.60%以下、0.40%以下、0.20%以下、0.10%以下又は0.08%以下であってもよい。
Mnは、焼入れ性及び固溶強化元素として強度上昇に有効な元素である。これらの効果を十分に得るために、Mn含有量は0.50%以上とする。Mn含有量は0.70%以上、1.00%以上、1.20%以上又は1.50%以上であってもよい。一方で、Mnを過度に含有すると、MnSが多く生成して靭性を低下させる場合がある。したがって、Mn含有量は3.00%以下とする。Mn含有量は2.80%以下、2.50%以下、2.20%以下又は2.00%以下であってもよい。
Tiは、炭化物(TiC)として鋼中に微細に析出し、析出強化により鋼の強度を向上させるとともに、フェライトの硬度を高める元素である。また、Tiは、炭化物を形成することでCを固定し、穴広げ性にとって有害なセメンタイトの生成を抑制する元素でもある。さらに、Tiは、再結晶の抑制にも寄与する元素である。これらの効果を十分に得るために、Ti含有量は0.05%以上とする。Ti含有量は0.08%以上、0.10%以上、0.11%以上、0.12%以上、0.13%以上又は0.14%以上であってもよい。一方で、Tiを過度に含有すると、炭化物が粗大となり、フェライトにおける所望の析出強化を得ることができない場合がある。加えて、TiC析出物の粗大化に伴い、TiC析出物の個数密度も低下することから、この場合には析出強化によってフェライトの硬度を十分に高めることができなくなる。したがって、Ti含有量は0.20%以下とする。Ti含有量は0.18%以下、0.17%以下、0.16%以下又は0.15%以下であってもよい。
Alは、溶鋼の脱酸剤として作用する元素である。このような効果を十分に得るために、Al含有量は0.01%以上とする。Al含有量は0.05%以上、0.06%以上、0.07%以上、0.08%以上、0.09%以上、0.10%以上又は0.15%以上であってもよい。また、Alは、フェライト変態及びベイナイト変態を促進させる作用も有する。このような効果を十分に得るためには、Al含有量は0.20%以上とすることが好ましい。Al含有量は0.22%以上、0.25%以上又は0.28%以上であってもよい。一方で、Alを過度に含有すると、粗大な酸化物が形成し、靭性や延性が低下する場合がある。したがって、Al含有量は0.40%以下とする。Al含有量は0.38%以下、0.35%以下又は0.32%以下であってもよい。本発明の実施形態においては、TiとAlの含有量の比すなわちTi/Al比は、特に限定されないが、例えば0.13~18.00であってもよい。とりわけ、Alの含有に起因するフェライト変態の促進及びTiC析出物に基づく析出強化による当該フェライトの硬度向上等を考慮して、Ti/Al比を適切に決定することができる。例えば、Ti/Al比は、0.14以上、0.15以上、0.16以上、0.18以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.40以上、又は0.50以上であってもよい。同様に、Ti/Al比は、16.00以下、14.00以下、12.00以下、10.00以下、8.00以下、6.00以下、5.00以下、又は3.33以下であってもよい。
Pは、過度に含有すると溶接性などに不利に影響する場合がある。したがって、P含有量は0.100%以下とする。P含有量は0.080%以下、0.050%以下、0.030%以下又は0.020%以下であってもよい。P含有量の下限は特に限定されず0%であってもよいが、過度な低減はコストの上昇を招く。したがって、P含有量は0.0001%以上、0.001%以上又は0.005%以上であってもよい。
Sは、過度に含有するとMnSが多く生成して靭性を低下させる場合がある。したがって、Si含有量は0.010%以下とする。S含有量は0.005%以下、0.003%以下又は0.002%以下であってもよい。S含有量の下限は特に限定されず0%であってもよいが、過度な低減はコストの上昇を招く。したがって、S含有量は0.0001%以上、0.0005%以上又は0.001%以上であってもよい。
Nは、過度に含有すると粗大な窒化物を形成し、靭性を低下させる場合がある。したがって、N含有量は0.0100%以下とする。N含有量は0.0080%以下、0.0050%以下又は0.0030%以であってもよい。N含有量の下限は特に限定されず0%であってもよいが、過度な低減はコストの上昇を招く。したがって、N含有量は0.0001%以上、0.0005%以上又は0.0010%以上であってもよい。
Oは、製造工程で混入する元素である。Oを過度に含有すると、粗大な介在物が形成して鋼板の靭性を低下させる場合がある。したがって、O含有量は0.010%以下とする。O含有量は0.008%以下、0.006%以下又は0.004%以下であってもよい。O含有量の下限は特に限定されず0%であってもよいが、0.0001%未満に低減するためには精錬に時間を要し、生産性の低下を招く。したがって、O含有量は0.0001%以上、0.0005%以上又は0.001%以上であってもよい。
Nbは、鋼中に炭化物、窒化物及び/又は炭窒化物を形成してピン止め効果により組織の微細化、ひいては鋼板の高強度化に寄与する元素である。また、Nbは、再結晶の抑制にも寄与する元素である。Nb含有量は0%であってもよいが、これらの効果を得るためには、Nb含有量は0.001%以上であることが好ましい。Nb含有量は0.005%以上、0.01%以上、0.02%以上、0.03%以上又は0.04%以上であってもよい。一方で、Nbを過度に含有すると、鋼中に粗大な炭化物等が生成して鋼板の延性が低下する場合がある。したがって、Nb含有量は0.15%以下であることが好ましい。Nb含有量は0.12%以下、0.10%以下、0.08%以下又は0.05%以下であってもよい。
Vは、析出強化等により強度の向上に寄与する元素である。V含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、V含有量は0.001%以上であることが好ましい。V含有量は0.01%以上、0.03%以上又は0.05%以上であってもよい。一方で、Vを過度に含有しても効果が飽和し、製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、V含有量は1.00%以下であることが好ましい。V含有量は0.50%以下、0.20%以下、0.10%以下又は0.08%以下であってもよい。
Crは、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。Cr含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Cr含有量は0.001%以上であることが好ましい。Cr含有量は0.01%以上、0.03%以上又は0.05%以上であってもよい。一方で、Crを過度に含有しても効果が飽和し、製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、Cr含有量は2.00%以下であることが好ましい。Cr含有量は1.50%以下、1.00%以下、0.50%以下、0.30%以下、0.15%以下又は0.10%以下であってもよい。
[Cu:0~2.00%]
Ni及びCuは、析出強化又は固溶強化により強度の向上に寄与する元素である。Ni及びCu含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、これらの元素の含有量はそれぞれ0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上、0.03%以上又は0.05%以上であってもよい。一方で、これらの元素を過度に含有しても効果が飽和し、製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、Ni及びCu含有量はそれぞれ2.00%以下であることが好ましく、1.50%以下、1.00%以下、0.50%以下、0.30%以下、0.15%以下又は0.10%以下であってもよい。
Moは、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。Mo含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Mo含有量は0.001%以上であることが好ましい。Mo含有量は0.01%以上、0.02%以上又は0.05%以上であってもよい。一方で、Moを過度に含有すると、熱間加工時の変形抵抗が増大し、設備負荷が大きくなる場合がある。したがって、Mo含有量は1.00%以下であることが好ましい。Mo含有量は0.80%以下、0.50%以下、0.20%以下、0.10%以下又は0.08%以下であってもよい。
Bは、粒界に偏析して粒界強度を高めることで低温靭性を向上させる。B含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、B含有量は0.0001%以上であることが好ましい。B含有量は0.0002%以上、0.0003%以上又は0.0005%以上であってもよい。一方で、Bを過度に含有しても効果が飽和し、製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、B含有量は0.0100%以下であることが好ましい。B含有量は0.0050%以下、0.0030%以下、0.0015%以下又は0.0010%以下であってもよい。
[Sb:0~1.00%]
Sn及びSbは、耐食性の向上に有効な元素である。Sn及びSb含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、これら元素の含有量はそれぞれ0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上、0.02%以上又は0.05%以上であってもよい。一方で、これらの元素を過度に含有すると、靭性の低下を招く場合がある。したがって、Sn及びSb含有量は1.00%以下であることが好ましく、0.80%以下、0.50%以下、0.30%以下、0.10%以下又は0.08%以下であってもよい。
[Mg:0~0.0100%]
[Hf:0~0.0100%]
Ca、Mg及びHfは、非金属介在物の形態を制御することができる元素である。Ca、Mg及びHf含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、これら元素の含有量はそれぞれ0.0001%以上であることが好ましく、0.0005%以上又は0.0010%以上であってもよい。一方で、これらの元素を過度に含有しても効果が飽和し、必要以上に鋼板中に含有させることは製造コストの上昇を招く。したがって、Ca、Mg及びHf含有量はそれぞれ0.0100%以下であることが好ましく、0.0050%以下、0.0030%以下又は0.0020%以下であってもよい。
Biは、耐食性の向上に有効な元素である。Bi含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Bi含有量は0.001%以上であることが好ましい。Bi含有量は0.002%以上であってもよい。一方で、Biを過度に含有しても効果が飽和し、必要以上に鋼板中に含有させることは製造コストの上昇を招く。したがって、Bi含有量は0.010%以下であることが好ましい。Bi含有量は0.005%以下又は0.003%以下であってもよい。
REMは、非金属介在物の形態を制御することができる元素である。REM含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、REM含有量は0.0001%以上であることが好ましい。REM含有量は0.0005%以上又は0.0010%以上であってもよい。一方で、REMを過度に含有しても効果が飽和し、必要以上に鋼板中に含有させることは製造コストの上昇を招く。したがって、REM含有量は0.0100%以下であることが好ましい。REM含有量は0.0050%以下、0.0030%以下又は0.0020%以下であってもよい。本明細書におけるREMとは、原子番号21番のスカンジウム(Sc)、原子番号39番のイットリウム(Y)、及びランタノイドである原子番号57番のランタン(La)~原子番号71番のルテチウム(Lu)の17元素の総称であり、REM含有量はこれら元素の合計含有量である。
Asは、耐食性の向上に有効な元素である。As含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、As含有量は0.001%以上であることが好ましい。As含有量は0.002%以上又は0.003%以上であってもよい。一方で、Asを過度に含有しても効果が飽和し、必要以上に鋼板中に含有させることは製造コストの上昇を招く。したがって、As含有量は0.010%以下であることが好ましい。As含有量は0.008%以下又は0.005%以下であってもよい。
Zrは、非金属介在物の形態を制御することができる元素である。Zr含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Zr含有量は0.001%以上であることが好ましい。Zr含有量は0.002%以上又は0.003%以上であってもよい。一方で、Zrを過度に含有しても効果が飽和し、必要以上に鋼板中に含有させることは製造コストの上昇を招く。したがって、Zr含有量は0.010%以下であることが好ましい。Zr含有量は0.008%以下又は0.005%以下であってもよい。
Coは、焼入れ性及び/又は耐熱性の向上に寄与する元素である。Co含有量は0%であってもよいが、これらの効果を得るためには、Co含有量は0.001%以上であることが好ましい。Co含有量は0.01%以上、0.05%以上又は0.10%以上であってもよい。一方で、Coを過度に含有すると、熱間加工性が低下する場合があり、原料コストの増加にも繋がる。したがって、Co含有量は2.00%以下であることが好ましい。Co含有量は1.00%以下、0.50%以下、0.30%以下又は0.20%以下であってもよい。
Znは、鋼原料としてスクラップ等を用いた場合に鋼板に含有し得る元素である。したがって、Zn含有量は0.010%以下であることが好ましく、0.008%以下又は0.005%以下であってもよい。Zn含有量は0%であってもよいが、0.001%未満に低減するには精錬に時間を要し、生産性の低下を招く。したがって、Zn含有量は0.001%以上、0.002%以上又は0.003%以上であってもよい。
Wは、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。W含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、W含有量は0.001%以上であることが好ましい。W含有量は0.01%以上、0.05%以上又は0.10%以上であってもよい。一方で、Wを過度に含有すると、溶接性が低下する場合がある。したがって、W含有量は1.00%以下であることが好ましい。W含有量は0.80%以下、0.50%以下、0.30%以下又は0.20%以下であってもよい。
本発明の実施形態に係る鋼板の金属組織は、面積%で、フェライト:20~50%、ベイナイト:40~70%、及びマルテンサイト:5~20%を含む。鋼板の金属組織を、このようにフェライト及びベイナイトを主体とする組織により構成しつつ、マルテンサイトを所定量含めることで、鋼板の高強度化を図りつつ、伸びを高めることが可能となる。これら3つの組織を上記のような特定の面積率で含むことに加えて、後で詳しく説明するTiC析出物による析出強化を利用することで、鋼板の強度及び伸びをさらに高めることができるとともに、フェライトと硬質相であるベイナイト及びマルテンサイトとの硬度差を低減して穴広げ性を顕著に改善することが可能となる。例えば、フェライトの面積率が小さいと、硬質相であるベイナイト及びマルテンサイトの割合、特にベイナイトの割合が高くなり、それゆえ伸びが低下する場合がある。あるいはまた、フェライトの面積率が小さいと、TiC析出物に基づく析出強化によってもフェライトとベイナイト及びマルテンサイトの硬度差を適切に低減することができない場合がある。このような場合には、所望の穴広げ性を達成することができなくなる。したがって、フェライトの面積率は20%以上とする必要があり、例えば25%以上、30%以上又は35%以上であってもよい。一方で、フェライトの面積率が高くなると、硬質相であるベイナイト及びマルテンサイトの割合が低くなり、その結果として所望の強度、例えば780MPa以上の引張強度を達成することができない場合がある。したがって、フェライトの面積率は50%以下とし、例えば49%以下、48%以下、47%以下、46%以下、45%以下、44%以下、42%以下、40%以下又は38%以下であってもよい。
本発明の実施形態に係る鋼板の金属組織は、上記のとおり、フェライト、ベイナイト及びマルテンサイトを含み、それら以外の残部組織を含んでもよいが、残部組織の面積率は小さいことが好ましく、0%であってもよい。残部組織の面積率は、特に限定されないが、例えば0~5%、0~4%又は0~3%であってもよい。言い換えると、フェライト、ベイナイト及びマルテンサイトの合計面積率は、例えば95~100%、96~100%又は97~100%であってもよい。残部組織の下限値は1%又は2%であってもよい。残部組織が存在する場合には、当該残部組織はパーライト及び残留オーステナイトの少なくとも1種を含むか又はそれらの少なくとも1種であり、好ましくはパーライトである。例えば、残部組織が残留オーステナイトを含む場合には、当該残オーステナイトの面積率は2%以下又は1%以下、好ましくは0.5%以下である。
組織観察は、走査型電子顕微鏡で行う。観察に先立ち、組織観察用のサンプルを、エメリー紙による湿式研磨及び1μmの平均粒子サイズをもつダイヤモンド砥粒により研磨し、観察面を鏡面に仕上げた後、3%硝酸アルコール溶液にて組織をエッチングしておく。観察の倍率を2000倍とし、表面から板厚の1/4位置における30μm×40μmの視野をランダムに10枚撮影する。組織の比率は、ポイントカウント法で求める。得られた組織画像に対して、縦3μmかつ横4μmの間隔で並ぶ格子点を計225点定め、格子点の下に存在する組織を判別し、10枚の平均値から鋼材に含まれる組織比率を求める。フェライトは、塊状の結晶粒であって、内部に、長径100nm以上の鉄系炭化物を含まないものである。ベイナイトは、ラス状の結晶粒の集合であり、内部に長径20nm以上の鉄系炭化物を含まないもの、又は、内部に長径20nm以上の鉄系炭化物を含み、その炭化物が、単一のバリアント、即ち、同一方向に伸張した鉄系炭化物群に属するものである。ここで、同一方向に伸長した鉄系炭化物群とは、鉄系炭化物群の伸長方向の差異が5°以内であるものをいう。ベイナイトは、方位差15°以上の粒界によって囲まれたベイナイトを1個のベイナイト粒として数える。また、多量の固溶炭素を含むマルテンサイトは他の組織と比べて輝度が高く見えることから、他の組織と区別することができる。フェライト、ベイナイト及びマルテンサイト以外の組織が存在する場合には、100%からフェライト、ベイナイト及びマルテンサイトの合計面積率を差し引くことによって残部組織の面積率を決定する。残部組織を具体的に同定する必要はないが、残部組織がパーライト及び残留オーステナイト等を含む場合には、パーライトはセメンタイトがラメラ状に析出した特有の組織を有するため、走査型電子顕微鏡により識別可能である。また、残留オーステナイトは、X線回折測定によりその体積率を算出することができ、残留オーステナイトの体積率は面積率と同等であるため、これを残留オーステナイトの面積率とすることができる。
[直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度:1.0×1010~1.0×1014個/cm3]
本発明の実施形態に係る鋼板の金属組織においては、直径10.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1014個/cm3以上であり、かつ直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1010~1.0×1014個/cm3である。ここで、TiC析出物とは、TiCだけでなく、TiとTi以外の他の元素、例えばVやNbとを含む複合炭化物すなわち(Ti,Nb,V)C、さらにはNbCをも包含するものである。本発明の実施形態に係る鋼板がNbを0.15%以下の範囲内で含有する場合、(Ti,Nb)Cに加えてNbCが析出し得るものの、NbC析出物は(Ti,Nb)C析出物に比べて析出量が極めて少ない。したがって、TiC析出物にNbC析出物を含めても、NbC析出物がTiC析出物の個数密度に与える影響は実質的に無視できるものである。上記のようにサイズの異なるTiC析出物をそれぞれ上記の個数密度において鋼板中に存在させることにより、強度及び硬度が局所的に異なる領域を鋼板中に形成することができ、これに関連して、フェライト及びベイナイトを主体とする組織であるにもかかわらず、フェライトからなる軟質相とマルテンサイトからなる硬質相が混在するいわゆるDP鋼のような作用機構により、強度と伸びを改善することが可能となり、さらにフェライトを上記のとおり面積%で20~50%含むことで、伸びが顕著に改善された鋼板を得ることができる。言い換えると、直径10.0nm未満のTiC析出物の個数密度と直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度の要件のうちいずれか一方でも満たさないと、強度及び/又は伸びを十分に改善することができない場合がある。
直径10.0nm未満及び直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物における個数密度は、抽出残渣法を利用して以下のようにして決定される。まず、供試材の表面を板厚の1/4位置まで機械研磨により研削し、次いで10%AA系電解液(10体積%アセチルアセトン(AA)-1質量%塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)-メタノール)に分散剤として0.05質量%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加したものを用いて、2段階のステップで定電流電解により電解抽出を行い、TiC析出物を試料表面に露出させる。より具体的には、1段階目の電解抽出(予備電解)では試料表面の汚れや酸化層を除去するために、0.05%SDS-10%AA系電解液で500mA、450C(クーロン)の条件で電解を行う。予備電解終了後の供試材を電解液から取り出し、表面をメタノールで洗浄し、次いで別途調製した0.05%SDS-10%AA系電解液に供試材を浸漬し、2段階目の電解抽出(本電解)を500mA、3600C(クーロン)の条件で行い、供試材を1g程度電解する。本電解後の供試材をHansen Solubility Parameter(HSP)分散液(50体積%エチレングリコール-50体積%ジメチルスルホキシド)に浸漬し、超音波処理を2~3分間施すことで、抽出した微細なTiC析出物を分散回収する。HSP分散液に回収した微細なTiC析出物を、フィールドフローフラクショネーション(FFF)法を利用した誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)(FFF-ICP-MS分析)により、0~500nmの範囲のサイズ分布を測定する。最後に、得られたFFF-ICP-MS分析のクロマトグラムをフローインジェクション(FI)法によりサイズ毎に定量し、球換算で直径が10.0nm未満及び10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度をそれぞれ決定する。ちなみに、TiNやNbN等の窒化物は優先して析出されることから、Nの分析値に基づいて析出物からこれらの窒化物を除外した上で、TiC析出物の個数密度を算出することが可能である。
本発明の実施形態に係る鋼板の金属組織においては、直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの面積率はフェライト全体の10~50%未満であることが好ましい。直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度を1.0×1014個/cm3以下に制限するだけでも、結果的に硬度向上効果のより高い直径10.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの割合を十分に高くすることができる。しかしながら、これに加えて、直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの面積率をフェライト全体の10~50%未満に制御することで、硬度向上効果のより高い直径10.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの割合を直接的かつ確実に高くすることができる。したがって、フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比をより確実に0.80~1.20の範囲内に制御することが可能になるか又は制御しやすくなり、これに関連して鋼板の穴広げ性を顕著に向上させることが可能になる。
直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの面積率は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて以下のようにして決定される。まず、鋼板から採取したサンプルを板厚1/4位置を含む厚さ0.1mmの薄片に加工し、次いで電解研磨法によってサンプル調製を行う。このサンプルを200kVの透過型電子顕微鏡を用いて、フェライトへの電子線入射方位を、[001]晶帯軸から10度以内の範囲で十分なコントラストが得られように調整してTiC析出物の観察を行う。次に、観察条件の調整として、フェライトとベイナイトを含む10000倍の観察視野で組織の明視野像を撮影する。この時の観察像(bmp形式の画像ファイル出力)の輝度は0~255の階調で表示し、その平均輝度が100以上、155以下となるように撮影条件を調整する。次に、観察倍率10万倍でフェライトの組織写真(明視野像)を10枚撮影し、各組織写真上にて、フェライト全体に対する円相当直径で10.0~30.0nm未満のTiC析出物が観察されたフェライトの面積率をポイントカウント法によって求める。ポイントカウント法においては、透過電子顕微鏡写真上で100nm×100nmの領域を格子状に設定する。格子状の領域のうち、フェライト粒の内部に10.0~30.0nm未満のTiC析出物が観察された領域(フェライト粒の内部に10.0~30.0nm未満のTiC析出物が1個でも観察されれば、当該TiC析出物が観察された領域と判断する)の数、および、格子状の領域のうちフェライト粒が位置する領域の数をカウントする。これらの比を、円相当直径で10.0~30.0nm未満のTiC析出物が観察されたフェライトの面積率とする。カウントの際、格子状の枠の線上に位置するTiC析出物は考慮せず、格子状の枠内に位置するTiC析出物のみを考慮することとする。最後に、得られた10個のフェライト面積率を算術平均することにより、直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの面積率を決定する。TEM観察におけるフェライトの同定は、輝度を利用して行われる。具体的には、画像全体の平均輝度を算出し、当該平均輝度よりも輝度が高い領域をフェライトとして決定する。また、TiC析出物の同定は、TEMの電子回折像から結晶構造を分析することにより行われる。具体的には、フェライト粒の中に存在する2又は3個の析出物の電子回折像からTiCの存在を確認できれば、当該フェライト粒中に観察される析出物はTiC析出物として決定する。
本発明の実施形態に係る鋼板の金属組織においては、フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比、すなわち(ベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度)/(フェライトの平均硬度)は0.80~1.20である。フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比をこのような範囲内に制御することで、金属組織中のフェライトと硬質相であるベイナイト及びマルテンサイトとの硬度差を十分に低減することができる。その結果として、鋼板の穴広げ性を顕著に高めることが可能となる。穴広げ率をより高める観点からは、フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比は1.00に近いほど好ましい。したがって、フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比は0.82以上、0.85以上、0.88以上又は0.90以上であってもよく、同様に1.15以下、1.10以下、1.05以下又は1.00以下であってもよい。
ベイナイトの平均ナノ硬度に対するフェライトの平均ナノ硬度の比は、以下のようにして決定される。まず、鋼板から表面に垂直な板厚断面が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルの断面をエメリー紙による湿式研磨及び1μmの平均粒子サイズをもつダイヤモンド砥粒により研磨して鏡面に仕上げる。鏡面に仕上げた断面に対し、表面から板厚の1/4深さ位置において、微小硬さ試験機を用いて、試験荷重1000μNで測定間隔を5μmあけて圧痕を打ち、ナノ硬度を測定し、合計で100点の測定値を得る。次に、走査型電子顕微鏡を用いて同じサンプルを測定し、得られた組織解析結果を参照して、フェライト内部並びにベイナイト及びマルテンサイト内部に圧痕がある測定点のみを抽出する。最後に、抽出された10個のフェライトに関するナノ硬度の算術平均をフェライトの平均硬度とし、同様に抽出された10個のベイナイト及びマルテンサイトに関するナノ硬度の算術平均をベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度として、それらの比(ベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度)/(フェライトの平均硬度)をフェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比として決定する。
本発明の実施形態に係る鋼板は、特に限定されないが、一般的には1.0~8.0mmの板厚を有する。例えば、板厚は1.2mm以上、1.6mm以上若しくは2.0mm以上であってもよく、及び/又は7.0mm以下、6.0mm以下、5.5mm以下、5.0mm以下、4.4mm以下、4.2mm以下若しくは4.0mm以下であってもよい。
[引張強度:TS]
上記の化学組成及び金属組織を有する鋼板によれば、高い引張強度、具体的には780MPa以上の引張強度を達成することができる。引張強度は、好ましくは800MPa以上、820MPa以上又は840MPa以上である。本発明の実施形態に係る鋼板によれば、このような非常に高い引張強度を有するにもかかわらず、上で説明した化学組成と金属組織の特定の組み合わせにより、伸び及び穴広げ性の向上を実現することができる。引張強度の上限は特に限定されないが、例えば、鋼板の引張強度は1180MPa以下、980MPa以下、940MPa以下、900MPa以下又は860MPa以下であってもよい。引張強度は、試験片の長手方向が好ましくは鋼板の圧延直角方向と平行になる向き(C方向)からJIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241:2022に準拠した引張試験を行うことで測定される。鋼板の圧延方向を特定できない場合には、鋼板の板面内における任意の方向からJIS5号試験片を採取してもよい。
上記の化学組成及びミクロ組織を有する鋼板によれば、高い引張強度に加えて、全伸びを改善することもでき、より具体的には14.0%以上の全伸びを達成することができる。全伸びは、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%以上、最も好ましくは18.0以上である。上限は特に限定されないが、例えば、全伸びは30.0%以下又は25.0%以下であってもよい。全伸びは、試験片の長手方向が好ましくは鋼板の圧延直角方向と平行になる向き(C方向)からJIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241:2022に準拠した引張試験を行うことで測定される。鋼板の圧延方向を特定できない場合には、鋼板の板面内における任意の方向からJIS5号試験片を採取してもよい。
上記の化学組成及び金属組織を有する鋼板によれば、高い穴広げ性、具体的には100%以上の穴広げ率を達成することができる。穴広げ率は、好ましくは105%以上、より好ましくは110%以上又は115%以上であってもよい。穴広げ率の上限は特に限定されないが、例えば、穴広げ率は150%以下、140%以下又は130%以下であってもよい。穴広げ率は以下のようにして決定される。まず、鋼板から幅100mm×長さ100mmの試験片を採取し、ポンチ径:10mm及びダイス径:10.25~11.5mm(クリアランス12.5%)の打ち抜き工具を用いて打ち抜き穴(初期穴:穴径d0=10mm)を作製する。次いで、かえり(バリ)がダイ側となるようにし、頂角60°の円錐ポンチにて板厚を貫通する割れが発生するまで初期穴を押し広げ、割れ発生時の穴径d1mmを測定して、下記式にて各試験片の穴広げ率HER(%)を求める。この穴広げ試験を3回実施し、それらの平均値を穴広げ率HERとして決定する。
HER=100×{(d1-d0)/d0}
次に、本発明の実施形態に係る鋼板の好ましい製造方法について説明する。以下の説明は、本発明の実施形態に係る鋼板を製造するための特徴的な方法の例示を意図するものであって、当該鋼板を以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。より具体的には、以下では、熱延鋼板の製造について具体的に示されるが、本発明の実施形態に係る鋼板は、上で説明した化学組成及び金属組織を有する任意の鋼板、すなわち熱延鋼板だけでなく、冷延鋼板、めっき鋼板等をも包含するものである。したがって、以下の記載は、本発明の実施形態に係る鋼板が熱延鋼板である場合の好ましい製造方法を単に説明するものにすぎない。
鋼板に関連して上で説明した化学組成を有するスラブを加熱し、次いで仕上げ圧延することを含み、下記(a)~(c)の条件を満足する熱間圧延工程、
(a)スラブの加熱温度が1150~1300℃であること、
(b)1150~1300℃の温度域における保持時間が1000~4000秒であること、及び
(c)仕上げ圧延の終了温度が850~950℃であること
仕上げ圧延された鋼板を30~200℃/秒の平均冷却速度で600~750℃の中間空冷温度まで1次冷却し、次いで15℃/秒以下の平均冷却速度で3~15秒間にわたり中間空冷する中間空冷工程、並びに
中間空冷された鋼板を50~200℃/秒の平均冷却速度で2次冷却し、次いで20~290℃の巻取温度で巻き取る冷却工程
を含むことを特徴としている。
[(a)スラブの加熱温度:1150~1300℃]
[(b)1150~1300℃の温度域における保持時間:1000~4000秒]
まず、鋼板に関連して上で説明した化学組成を有するスラブが加熱される。使用するスラブは、生産性の観点から連続鋳造法において鋳造することが好ましいが、造塊法又は薄スラブ鋳造法によって製造してもよい。使用されるスラブは、高強度鋼板を得るために合金元素を比較的多く含有している。このため、スラブを熱間圧延に供する前に加熱して合金元素をスラブ中に固溶させる必要があり、特にTiを十分に溶体化させる必要がある。加熱温度が低いと、合金元素がスラブ中に十分に固溶せずに粗大な合金炭化物が残り、熱間圧延中に脆化割れを生じる場合がある。とりわけ、加熱温度が低いと、Tiが十分に溶体化しないために、Tiが粗大な炭化物(TiC)として最終組織に残ってしまう場合がある。この場合には、熱間圧延工程後の中間空冷工程によっても、TiC析出物を鋼中に微細析出させて析出強化により鋼板の強度を向上させることが困難となる。このため、加熱温度は1150℃以上であることが好ましい。加熱温度の上限は、特に限定されないが、加熱設備の能力や生産性の観点から1300℃以下であることが好ましい。また、1150~1300℃の温度域における保持時間を1000秒以上とすることで、合金元素をスラブ中に確実に固溶させ、特にはTiを十分に溶体化させることができる。保持時間が短いと、Tiが粗大な炭化物(TiC)として最終組織に残ってしまう場合がある。保持時間の上限は特に限定されないが、生産性等の観点から4000秒以下であることが好ましい。粗圧延を実施する場合には、1150~1300℃の温度域における保持は粗圧延後に行ってもよい。
本方法では、例えば、加熱されたスラブに対し、板厚調整等のために、仕上げ圧延の前に粗圧延を施してもよい。粗圧延は、所望のシートバー寸法が確保できればよく、その条件は特に限定されない。
本製造方法においては、仕上げ圧延の終了温度は鋼板の金属組織を制御する上で重要である。仕上げ圧延の終了温度が低いと、オーステナイトの加工度が高まり、フェライトの核生成が過度に促進されてフェライト変態が進行し、強度が低下する場合がある。また、フェライト変態の過度な進行に起因して、フェライトと硬質相であるベイナイト及びマルテンサイトとの硬度差が大きくなり、穴広げ性が低下する場合がある。このため、仕上げ圧延の終了温度は850℃以上とする。一方で、仕上げ圧延の終了温度が高いと、再結晶が促進されてしまい、その後の中間空冷工程においてフェライト変態が不十分となり、これに関連して最終的に得られる金属組織において所望の組織分率を達成することができなくなるか、並びに/又は所望の直径及び個数密度においてTiC析出物を生成させることができなくなる。
仕上げ圧延された鋼板は、次の中間空冷工程において、ランアウトテーブル(ROT)上で、30~200℃/秒の平均冷却速度で600~750℃の中間空冷温度まで1次冷却され、次いで15℃/秒以下の平均冷却速度で3~15秒間にわたり中間空冷される。30~200℃/秒の平均冷却速度で600~750℃の中間空冷温度まで1次冷却することで、フェライト変態を促進させることができる。次いで、この温度域、好ましくは650~720℃の温度域において15℃/秒以下の平均冷却速度で3~15秒間にわたり中間空冷することで、このような徐冷に起因してフェライト変態を速やかに進行させるとともに、700℃以上の高温側で直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物を主に生成することができ、同様に700℃未満の低温側で直径10.0nm未満のTiC析出物を主に生成することができる。これに関連して、直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの面積率も所望の範囲内に制御することが可能となる。その結果として、TiC析出物に基づく析出強化により強度等を改善するとともに、フェライトが十分に析出強化されることで、フェライトとベイナイト及びマルテンサイトとの硬度差を小さくして穴広げ性を高めることができる。より詳しく説明すると、中間空冷時におけるTiC析出物の生成及び粒成長を適切に制御するためには、中間空冷温度を比較的高い温度域、すなわち600~750℃の温度域に設定する必要がある。しかしながら、この場合には、フェライトが比較的多く生成する傾向がある。そこで、本製造方法では、仕上げ圧延後から中間空冷温度までの1次冷却における平均冷却速度を30℃/秒以上とすることで、1次冷却時のフェライトの過度な生成を抑制するとともに、次の高温下での中間空冷によってフェライト変態を促進させ、TiC析出物を適切に生成及び粒成長させるようにしている。当該平均冷却速度が30℃/秒未満であると、フェライトが過度に生成したり、粗大なTiC析出物が比較的多く生成したりして、伸び等の所望の特性が得られない場合がある。一方で、1次冷却の平均冷却速度が200℃を超えると、フェライトの生成が過度に抑制され、最終的な金属組織においてフェライトの面積率が20%未満となり、伸び等の特性が低下する。したがって、1次冷却の平均冷却速度は200℃/秒以下とし、好ましくは150℃/秒以下である。
中間空冷後の鋼板は、次の冷却工程において、50~200℃/秒の平均冷却速度で2次冷却され、次いで20~290℃の巻取温度で巻き取られる。中間空冷後の鋼板をこのような比較的速い平均冷却速度で2次冷却することにより、ベイナイト及びマルテンサイトを適切に析出させることができるので、最終的に得られる鋼板においてフェライト、ベイナイト及びマルテンサイトを特定の割合で含む金属組織を形成することが可能となる。これに対し、2次冷却の平均冷却速度が50℃/秒未満であると、オーステナイト中にCが濃化しつつ変態点まで冷却され、ベイナイト及び/又はマルテンサイト変態が生じることがあり、それゆえ最終的に得られる鋼板において所望の金属組織を得ることができなくなる。このような場合には、ベイナイト及び/又はマルテンサイトが比較的多く生成し、所望の伸びを達成することができなくなる。あるいはまた、ベイナイト及び/又はマルテンサイトの比較的多い生成に起因して、フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比が大きくなることがあり、このような場合には穴広げ性が低下する。一方で、2次冷却の平均冷却速度が200℃超であると、ベイナイトが十分に生成しないか及び/又はマルテンサイトが過度に生成してしまい、同様に最終的に得られる鋼板において所望の金属組織を得ることができなくなる。したがって、2次冷却の平均冷却速度は200℃/秒以下とし、好ましくは180℃/秒以下である。
引張強度(TS)及び全伸び(tEL)は、試験片の長手方向が鋼板の圧延直角方向と平行になる向き(C方向)から、長さ200mm及び厚さ2.5mmのJIS5号試験片を採取し、JIS Z 2241:2022に準拠した引張試験を行うことで測定した。より具体的には、試験は10~35℃の範囲内の室温で行い、試験片に引張試験力を加え、破断に至るまでひずみを与えた。
穴広げ率は以下のようにして決定した。まず、鋼板から厚さ2.5mm×幅100mm×長さ100mmの試験片を採取し、ポンチ径:10mm、ダイス径:10.25~11.5mm(クリアランス12.5%)の打ち抜き工具を用いて打ち抜き穴(初期穴:穴径d0=10mm)を作製した。次いで、かえり(バリ)がダイ側となるようにし、頂角60°の円錐ポンチにて板厚を貫通する割れが発生するまで初期穴を押し広げ、割れ発生時の穴径d1mmを測定して、下記式にて各試験片の穴広げ率HER(%)を求めた。この穴広げ試験を3回実施し、それらの平均値を穴広げ率λとして決定した。
λ=100×{(d1-d0)/d0}
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.030~0.150%、
Si:0.01~1.00%、
Mn:0.50~3.00%、
Ti:0.05~0.20%、
Al:0.01~0.40%、
P:0.100%以下、
S:0.010%以下、
N:0.0100%以下、
O:0.010%以下、
Nb:0~0.15%、
V:0~1.00%、
Cr:0~2.00%、
Ni:0~2.00%、
Cu:0~2.00%、
Mo:0~1.00%、
B:0~0.0100%、
Sn:0~1.00%、
Sb:0~1.00%、
Ca:0~0.0100%、
Mg:0~0.0100%、
Hf:0~0.0100%、
Bi:0~0.010%、
REM:0~0.0100%、
As:0~0.010%、
Zr:0~0.010%、
Co:0~2.00%、
Zn:0~0.010%、
W:0~1.00%、並びに
残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有し、
面積%で、
フェライト:20~50%、
ベイナイト:40~70%、及び
マルテンサイト:5~20%を含み、
直径10.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1014個/cm3以上であり、かつ直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物の個数密度が1.0×1010~1.0×1014個/cm3であり、
フェライトの平均硬度に対するベイナイト及びマルテンサイトの平均硬度の比が0.80~1.20である金属組織を有することを特徴とする、鋼板。 - 前記化学組成が、質量%で、Al:0.20~0.40%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.001~0.15%、
V:0.001~1.00%、
Cr:0.001~2.00%、
Ni:0.001~2.00%、
Cu:0.001~2.00%、
Mo:0.001~1.00%、
B:0.0001~0.0100%、
Sn:0.001~1.00%、
Sb:0.001~1.00%、
Ca:0.0001~0.0100%、
Mg:0.0001~0.0100%、
Hf:0.0001~0.0100%、
Bi:0.001~0.010%、
REM:0.0001~0.0100%、
As:0.001~0.010%、
Zr:0.001~0.010%、
Co:0.001~2.00%、
Zn:0.001~0.010%、及び
W:0.001~1.00%
のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。 - 直径10.0~30.0nm未満のTiC析出物が存在するフェライトの面積率がフェライト全体の10~50%未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼板。
- 780MPa以上の引張強度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼板。
- 1.0~8.0mmの板厚を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼板。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼板を含むことを特徴とする、部品。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを加熱し、次いで仕上げ圧延することを含み、下記(a)~(c)の条件を満足する熱間圧延工程、
(a)スラブの加熱温度が1150~1300℃であること、
(b)1150~1300℃の温度域における保持時間が1000~4000秒であること、及び
(c)仕上げ圧延の終了温度が850~950℃であること
仕上げ圧延された鋼板を30~200℃/秒の平均冷却速度で600~750℃の中間空冷温度まで1次冷却し、次いで15℃/秒以下の平均冷却速度で3~15秒間にわたり中間空冷する中間空冷工程、並びに
中間空冷された鋼板を50~200℃/秒の平均冷却速度で2次冷却し、次いで20~290℃の巻取温度で巻き取る冷却工程
を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼板の製造方法。
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