本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
〔情報処理システム100の概要〕
まず、図1を用いて本発明に係る情報処理システム100の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム100の構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、情報処理システム100は、対象の匂いに対応する匂い物質に基づく検出信号を出力可能な匂い測定装置20と、当該検出信号に基づき対象情報を推定可能な推定装置10、10aを備える。ここで、「対象の匂いに対応する匂い物質」は、「対象の匂いを構成する匂い物質」であり、「対象の匂いを特徴付ける匂い物質」を含んでいてもよい。情報処理システム100は、推定の対象の匂いに対応する匂い物質に基づく検出信号を取得し、当該検出信号から当該対象の匂いの特徴を示す特徴情報を抽出し、当該特徴情報から、当該対象に関する対象情報を推定するシステムである。
ここで、特徴情報とは、例えば、匂い物質に関係する検出信号の強度および該強度の時間変化パターン等である。対象情報とは、対象に関する情報であり、例えば匂い物質を放出する対象の匂いについての評価情報、当該対象の匂いを所定の基準に基づいて分類した分類情報、および、当該対象の状態を示す状態情報等であってもよい。「所定の基準」とは、例えば基準となる匂いとの類似度、および、所定の匂い物質の含有量(あるいは含有比率)などであってもよい。情報処理システム100は、対象の匂い物質に基づく検出信号を利用することで、当該対象の状態等を推定することができる。
例えば、対象が食品である場合、対象情報は、食品の新鮮さ、保存状態、発酵の進行度、加熱具合、等であってもよい。対象が所定の目的に使用される空間(例えば、浴室、トイレ、食堂、調理場等)である場合、対象情報は、該空間の清潔度、換気の必要性、等であってもよい。対象が廃液および下水等である場合、対象情報は、排出前に必要な浄化処理の種類、およびその必要度、等であってもよい。
本明細書中、「匂い物質」とは、広義において匂い物質受容層に吸着可能な物質を意味する。従って、一般的に匂いの原因物質とされていない物質も含まれる。「匂い」には原因となる匂い物質が複数含まれることが多く、また、匂い物質として認知されていない物質または未知の匂い物質も存在する。本発明の一実施形態は、匂い物質受容層への匂い物質の吸着量が匂い物質の種類によって異なることに着目するものである。
なお、本明細書中、単に「匂い物質」と記載した場合であっても、個々の匂い物質ではなく、複数の匂い物質が含まれ得る「匂い物質の集合体」を意味する場合がある。
情報処理システム100において、匂い測定装置20は、匂い物質に応じた検出信号を出力可能な匂いセンサ30を備えており、匂いセンサ30は、匂い物質に反応する樹脂組成物を有する複数のセンサ素子31Aを備えている。以下では、まず、匂いセンサ30の各センサ素子31が有する樹脂組成物に関して説明する。その後、樹脂組成物を有するセンサ素子31、センサ素子31を適用した匂いセンサ30、および匂いセンサ30を備える匂い測定装置20を含む情報処理システム100の詳細について説明する。
〔1.樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、匂い物質受容層315を形成するための樹脂組成物であって、樹脂(A)および導電性炭素材料(C)を含む。なお、樹脂組成物は、さらに界面活性剤(B)を含んでいてもよい。樹脂(A)、界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)については後に具体例を挙げて説明する。
本明細書中、「匂い物質受容層」とは、識別対象となる匂い物質を吸着する層を意味する。匂い物質受容層315は上述の樹脂組成物から形成される。匂い物質受容層315は、後述のセンサ素子31の一部として設けられ得る。この匂い物質受容層315は、匂い物質の吸着等に応じて電気抵抗値が変化する。すなわち、センサ素子31は、このような匂い物質受容層315を備える匂い検知デバイスであり、センサ素子31の匂い測定方式はケミレジスター型である。
<樹脂(A)>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物に含まれる樹脂(A)は、特に限定されないが、ウレタン樹脂、ポリアルキレンオキサイド、アクリル樹脂、フッ素基含有樹脂、ビニル重合樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、パラフィンワックスおよびポリエステル樹脂等であってもよい。
<界面活性剤(B)>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、以下で説明するような界面活性剤(B)を含んでいてもよい。界面活性剤(B)は、後述する導電性炭素材料(C)の分散剤としての作用を呈する。界面活性剤(B)は、上記の作用を発現する範囲において、公知の界面活性剤から適宜に選ぶことが可能である。
界面活性剤(B)としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、炭素数10~24のカルボン酸のアルカリ金属塩、炭素数14~24のアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩、およびポリエーテル酸エステルのアミン塩等が挙げられる。
前記炭素数10~24のカルボン酸としては、例えば、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ペンタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸およびテトラコサン酸等が挙げられる。
前記炭素数14~24のアルキルスルホン酸が有するアルキル基としては、例えば、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基およびテトラコシル基等が挙げられる。
前記アルカリ金属塩が含むアルカリ金属としては、例えば、ナトリウムおよびカリウム等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、炭素数12~24のアルキル基を有する第4級アンモニウムのハロゲン化物塩等が挙げられる。
前記炭素数12~24のアルキル基を有する第4級アンモニウムとしては、例えばテトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ノナデシルトリメチルアンモニウム、イコシルトリメチルアンモニウム、ヘンイコシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムおよびペンタデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
前記ハロゲン化物塩としては、例えばフッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩およびヨウ化物塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、炭素数10~22のアルキル基を有するジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム分子内塩、炭素数10~22のアルキル基を有するN-アルキル-N,N-ジメチルグリシン等が挙げられる。
炭素数10~22のアルキル基を有するジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩としては、例えばデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ウンデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、トリデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、テトラデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ペンタデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ヘキサデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ヘプタデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、オクタデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ノナデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、イコシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ヘンイコシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩およびドコシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩等が挙げられる。
炭素数10~22のアルキル基を有するN-アルキル-N,N-ジメチルグリシンとしては、N-ドデシル-N,N-ジメチルグリシンおよびN-オクタデシル-N,N-ジメチルグリシン等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
高級アルコールとしては、1-ヘキシルアルコール、1-ヘプチルアルコール、1-オクチルアルコール、1-ノニルアルコール、1-デシルアルコール、1-ウンデシルアルコール、1-ドデシルアルコール、1-トリデシルアルコール、1-テトラデシルアルコール、1-ペンタデシルアルコール、1-ヘキサデシルアルコール、1-ヘプタデシルアルコール、1-オクタデシルアルコール等が挙げられる。
エチレンオキサイド付加モル数は、匂い識別性能の観点から5~50が好ましく、より好ましくは5~40が好ましく、さらに好ましくは5~30である。
前記樹脂(A)と前記界面活性剤(B)との重量比[(A)/(B)]は、匂い識別性能の観点により、好ましくは1.0~50.0である。
前記樹脂(A)と前記界面活性剤(B)とは相溶していても相溶していなくても良い。
界面活性剤(B)は、導電性炭素材料(C)に対する分散性の観点から、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。また、界面活性剤(B)は、導電性炭素材料(C)に対する分散性の観点から、アミド基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のうち少なくとも1つを有することが好ましい。また、界面活性剤(B)は、導電性炭素材料(C)に対する分散性の観点から、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、および、オキシエチレン・オキシプロピレンのランダム構造もしくはブロック構造、の少なくとも1つを有することが好ましい。なお、オキシエチレン・オキシプロピレンのランダム構造は、オキシエチレンとオキシプロピレンとの両方が不規則に連結してなる鎖状構造である。また、オキシエチレン・オキシプロピレンのブロック構造は、オキシエチレンが連結してなるオキシエチレンブロックと、オキシプロピレンが連結してなるオキシプロピレンブロックとが連結してなる鎖状構造である。
<導電性炭素材料(C)>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、導電性炭素材料(C)を含んでいる。本明細書において、導電性炭素材料(C)とは、体積固有抵抗が0.1Ω・cm以下の炭素材料のことである。上述の樹脂組成物は、樹脂(A)中に導電性炭素材料(C)が分散している状態である。導電性炭素材料(C)同士が互いに接触して導電経路を形成することで樹脂組成物が導電性を有する。
導電性炭素材料(C)としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェン等が挙げられる。
カーボンブラックの市販品としては、ケッチェンブラックEC(オランダ・アクゾ社製商品名)、ケッチェンブラックEC-300J(ライオンスペシャリティケミカルズ(株)製商品名)、ケッチェンブラックEC-600JD(ライオンスペシャリティケミカルズ(株)製商品名)、シーストG116、116(東海カーボン社製商品名)、ニテロン#10(新日鉄化学(株)社製商品名)、デンカブラック(デンカ(株)社製商品名)、トーカブラック(東海カーボン(株)製商品名)およびSUPER C-65(米国・MTI Corporation社製商品名)等がある。
カーボンナノチューブの市販品としては、VGCF-H(昭和電工(株)社製商品名)等がある。
グラフェンの市販品としては、シグマアルドリッチ社製がある。
前記導電性炭素材料(C)の形状は、好ましくは繊維状または球状である。
繊維状である場合、繊維径は好ましくは0.1~10μmであり、更に好ましくは0.1~5μmである。繊維長は好ましくは0.1~10μmであり、更に好ましくは1~10μmである。
球状である場合、1次粒子径が好ましくは10nm~200nmであり、更に好ましくは20nm~150nmである。
また、導電性炭素材料は、樹脂組成物中での導電性及びセンサ感度の観点から、一次粒子径が100nm以下であることが好ましい。導電性炭素材料の粒子径は、公知の方法で求めることが可能である。例えば導電性炭素材料の粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、画像処理装置(例えばキーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-700F)を用いて画像解析することにより測定することができる。導電性炭素材料が公知の物または市販品である場合には、粒子径は、文献値またはカタログ値であってもよい。
導電性炭素材料(C)の含有量は、樹脂組成物から形成されるセンサ素子が匂いセンサとして十分な導電性を発現する観点、および当該匂いセンサとして十分な感度を発現する観点から、樹脂(A)、導電性炭素材料(C)との合計量を100重量%とした場合に、好ましくは10~60重量%である。匂い物質受容層315におけるカーボンブラックの含有量は、樹脂(A)、導電性炭素材料(C)との合計量を100重量%とした場合に、より好ましくは10~55重量%であってもよい。
樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、前述した樹脂(A)、界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分の例には、溶媒(D)が含まれる。当該他の成分は、本発明の効果および当該他の成分による効果の両方が得られる範囲で好適に使用され得る。
溶媒(D)は、樹脂(A)と導電性炭素材料(C)との相溶性を高める観点、樹脂組成物中における界面活性剤(B)の分散性を高める観点、または樹脂組成物の塗布性を高める観点から樹脂組成物に配合することが可能である。溶媒(D)の例には、N-メチルピロリドン(以下、NMPとも称する)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酪酸エチル、酪酸ブチル、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエンおよびキシレンが含まれる。
樹脂組成物における溶媒(D)の含有量は、上記の観点の観点から適宜に決定し得る。たとえば、樹脂組成物における溶媒(D)の含有量は、塗工性の観点から、樹脂(A)、界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)の合計100重量部に対して、100~10000重量部であることが好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法の具体的な一例を示せば、下記の通りである。
前記樹脂組成物は、樹脂(A)および導電性炭素材料(C)を混合して、撹拌機で均一に混練することでスラリーとして得られる。樹脂(A)および導電性炭素材料(C)の混合時に、必要に応じて界面活性剤(B)および溶媒(D)が添加されてもよい。攪拌機としては、例えば自転・公転ミキサーが用いられる。自転・公転ミキサーとして、例えばARE-310((株)シンキー社製商品名)、またはHR003-04A/V(三星工業株式会社製商品名)が挙げられる。樹脂組成物は、樹脂(A)、および導電性炭素材料(C)を混合して、例えば回転数を2000回転/分とし、回転時間を10~60分程度として撹拌機で混練することで、所望の空隙率を有するスラリーとして得られる。溶媒(D)を添加する場合では、溶媒(D)は樹脂組成物から留去される。溶媒(D)は、均一に混合して生成した樹脂組成物から留去してもよいし、後述のセンサ素子の製造時に生成した塗膜から留去してもよい。
〔2.センサ素子31〕
上述した樹脂組成物は、樹脂組成物に匂い物質Aが吸着した場合と、匂い物質Aとは異なる匂い物質Bが吸着した場合とで、電気伝導性の経時的な変化が異なる。この性質を利用すれば、匂い物質を検出・識別可能なセンサ素子31を実現することができる。
以下では、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を適用したセンサ素子31の概要および効果について説明する。
センサ素子31は、上述の樹脂組成物を含む匂い物質受容層315、第1金属配線313A、および第2金属配線313Bを備えている。なお、以下では、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bを区別しない場合、金属配線313と記す場合がある。
ここで、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bについて、図2および図3を用いて説明する。図2は、センサ素子31の構成の一例を示す上面図であり、図3は、図2に示すセンサ素子31の構成の一例を示す断面図である。
第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bはそれぞれ、匂い物質受容層315(すなわち、樹脂組成物)の電気伝導性の変化を計測するための電極として機能する金属配線である。すなわち、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとは互いに離間しており、匂い物質受容層315は、第1金属配線の少なくとも一部と第2金属配線の少なくとも一部とに接している。一例において、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bは、互いに直接接していない金属配線であり、図2に示すように、互いに略平行な金属配線であってもよい。
図2に示すように第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bを含む金属配線313は、基板311上に配置されていてもよい。基板311は、電子回路に一般的に用いられるガラスエポキシ等の基板であり得る。基板311は、ガラスエポキシに限られず、紙フェノール、ガラスコンポジット、ポリイミド、PET、ガラスセラミック、アルミナ、またはアルミニウムの基板であってもよい。金属配線313は、銅、または金等の金属配線であり得る。基板の面に対して垂直な方向から見た第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bそれぞれの太さは10μm~2mmが好ましく、更に好ましくは10μm~1mmである。基板の面に対して平行な方向から見た第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bそれぞれの高さ、すなわち厚さは1μm~100μmが好ましく、更に好ましくは10μm~50μmである。第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bの間隔は1μm~3mmが好ましく、更に好ましくは1μm~1.5mmである。金属配線313の長さは100μm~50mmが好ましく、更に好ましくは500μm~30mmである。
図3は、図2のA-A断面を示している。匂い物質受容層315は、第1金属配線313Aの少なくとも一部と第2金属配線313Bの少なくとも一部とに接していてもよい。匂い物質受容層315は、例えば、図2および図3に示すように、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとに挟まれた領域を埋めるように配されていてもよい。
匂い物質受容層315の電気伝導性(すなわち、センサ素子31の電気伝導性)が低い場合、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとの間隔は所定の距離(例えば、500μm)以下であることが望ましい。
センサ素子31は、匂い物質Aが吸着した場合と、匂い物質Aとは異なる匂い物質Bが吸着した場合とで、電気伝導性の経時的な変化が異なる樹脂組成物を適用することにより、さまざまな匂い物質を検出したり、識別したりすることが可能である。なお、後述する匂いセンサ30では、匂い物質を検出するための構成(金属配線313および匂い物質受容層315)が設けられた基板311を備えるセンサ素子31が複数配設されていてもよい。それぞれの基板311には、同じ組成の匂い物質受容層315を含む複数のセットが配設されていてもよい。複数のセンサ素子31が配設される場合、センサ素子31ごとに定電圧電源および電圧計を備える。匂いセンサ30において、各基板311上に匂い物質を検出するための構成(金属配線313および匂い物質受容層315)が1つ配設されていてもよい。あるいは、匂いセンサ30において、1つの基板311上に匂い物質を検出するための構成(金属配線313および匂い物質受容層315)のセットが複数配設されていてもよい。後者の場合、基板311上に設けられるセットの各々に定電圧電源および電圧計が接続される。
匂いセンサ30が備える複数の匂い物質受容層315それぞれの組成は、同じであってもよいし異なっていてもよい。匂いセンサ30が同じ組成の匂い物質受容層315を含む場合、複数の匂い物質受容層315それぞれにおいて同じ匂い物質を検出することができる。また、匂いセンサ30がそれぞれ異なる組成の匂い物質受容層315を含む場合、複数の匂い物質受容層315のそれぞれは、匂い物質に対して異なる応答をする。このように、匂い物質を検出するための構成のセットを複数備えることで、匂いセンサ30における匂い物質の識別精度を向上させることができる。
〔3.匂いセンサ30〕
以下では、センサ素子31を適用した匂いセンサ30の概要および効果について、図4を用いて説明する。図4は、センサ素子31を適用した匂いセンサ30の構成の一例を示すブロック図である。
匂いセンサ30は、匂い物質を検出するセンサ素子31、定電圧電源32(電源)、および電圧計33(測定機器)を備えている。
センサ素子31の第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとはリード線Wで接続されている。図4には、リード線Wに定電圧電源32および電圧計33が配された例を示している。
定電圧電源32は、センサ素子31に給電するための電源である。定電圧電源32は、センサ素子31にリード線を介して定電圧を供給する。定電圧電源32が供給する電圧値は、0.5V~10Vであり、例えば2.5Vである。
電圧計33は、定電圧電源32から供給された定電圧を匂い物質受容層315に供給した場合に、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとの間に生じる電位差を測定する。
なお、匂いセンサ30は、匂い物質測定用の回路において、電圧計33の前段にアンプ(不図示)を備えており、当該アンプは取得した信号を増幅し電圧計33に供給する。
また、匂いセンサ30は、匂い物質測定用の回路のほかにリファレンス回路を備えており、電圧計33は、匂い物質測定用の回路において取得された値とリファレンス回路において取得された値との差(電位差)を電圧値として取得する。
なお、匂いセンサ30は、定電圧電源32の代替として不図示の定電流源(電源)、電圧計33の代替として不図示の電流計(測定機器)を備えていてもよい。この場合、定電流源は、センサ素子31に給電するための電源として機能し、センサ素子31にリード線を介して定電流を印加する。一方、電流計は、匂い物質受容層315に定電流が印加された場合に、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとの間を流れる電流値を測定する。第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bはいずれも電極として機能し得る。以下、金属配線313が電極として機能する場合には、「電極313」と記載する場合もある。
匂いセンサ30は、センサ素子31に匂い物質が吸着する前後における、該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を示す測定値を出力する。これにより、さまざまな匂い物質を検出したり、識別したりすることが可能である。すなわち、センサ素子31は、ケミレジスター型センサである。
〔4.情報処理システム100〕
上述した匂いセンサ30は、センサ素子31にさまざまな匂い物質が吸着した場合、該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を匂い物質毎に出力することができる。この匂いセンサ30を適用すれば、匂い物質Aがセンサ素子31に吸着した場合の該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化と、匂い物質Bがセンサ素子31に吸着した場合の該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化と比較することができる。このような比較結果に基づいて、センサ素子31に吸着した匂い物質に関わる対象に関する対象情報を推定可能な情報処理システム100を実現することができる。
さらに、情報処理システム100は、機械学習によって生成した推定モデル22を用いれば、高精度な匂い物質の推定を行うことができる。推定モデル22は、複数の匂い物質のそれぞれを少なくとも1つのセンサ素子31に吸着させた場合に測定される測定値と、該測定値を与えた匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含む学習用データを用いて生成され得る。
以下では、匂いセンサ30を適用した匂い測定装置20と情報処理装置10、10aと、を備える情報処理システム100の概要および効果について説明する。匂い測定装置20は、上述した樹脂組成物を適用したセンサ素子31に生じた電気伝導性の変化から、センサ素子31に吸着した匂い物質に基づく検出信号を出力可能な装置である。情報処理装置10、10aは、当該検出信号に基づき対象の匂いの特徴を示す特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報に基づいて対象に関する対象情報を推定する装置である。
本実施形態の匂い測定装置20は、複数のセンサ素子31A(以下、「センサ素子群31A」とも称する)を備えるセンサチャンバ60と、匂い物質を含む対象試料が導入され、対象試料から発生した匂い物質を含む気体が内包される対象試料受入部50(試料受入部)とを別々に備える。本実施形態では、センサ素子群31Aに含まれる個々のセンサ素子31を単に「センサ素子31」と記す。
本実施形態の匂い測定装置20は、対象試料受入部50の内部の、匂い物質を含む気体を、匂い物質を含む気体とは別の気体を用いてセンサチャンバ60の方へ押し出す構成を採用している。本実施形態において、対象試料受入部50内に対象試料が導入された場合の該対象試料受入部50内の気体(すなわち、検出対象の匂い物質を含む気体)を第1気体と称す。一方、第1気体をセンサチャンバ60の方へ押し出すための気体のことを第2気体と称す。
図1に示すように、匂い測定装置20は、匂いセンサ30、供給機構40、対象試料受入部50、センサチャンバ60、および気体供給部80を備える。また、匂い測定装置20は、調節部51をさらに備えてもよい。情報処理システム100において、匂い測定装置20は、推定装置10と通信可能に接続される。また、情報処理システム100は、推定装置10aをさらに備えてもよい。
供給機構40は、センサチャンバ60内の第1気体を、0.01秒間以上10秒間以下で第2気体に置換し、センサチャンバ60内の第2気体を、0.01秒間以上10秒間以下で第1気体に置換してもよい。供給機構40が、第1気体および第2気体をセンサチャンバ60に供給するときの流量は、センサチャンバ60内の気体を置換するために要する時間およびセンサチャンバ60の体積に基づき設定されてよい。例えば、供給機構40が第1気体および第2気体をセンサチャンバ60に供給するときの流量は、(時間)=(センサチャンバ60の体積)/(流量)を満たす式に基づき設定されてよい。これにより、センサチャンバ60内に配されたセンサ素子31に生じ得る振動を抑制しつつ第1気体に含まれる匂い物質を安定的に測定することができる。
気体供給部80は、例えばポンプであり、供給制御部41の制御に従って動作し、対象試料受入部50の収容空間またはセンサチャンバ60に第2気体を供給する。例えば、気体供給部80は、対象試料受入部50の第1口501と接続されており、対象試料受入部50の内部へ第2気体を送ることによって、第1気体を対象試料受入部50内からセンサチャンバ60の方へ送り出す。
気体供給部80は、供給制御部41を兼ねていてもよい。図1は、一例として、気体供給部80、対象試料受入部50、センサチャンバ60の順に気体が流れる例を示している。気体供給部80、対象試料受入部50、およびセンサチャンバ60は、それぞれ管体91~管体95で接続されている。
センサチャンバ60は1本の流路を備えており、複数のセンサ素子31のすべてが該流路上に配されていてもよい。あるいは、センサチャンバ60は複数の流路を備えており、複数のセンサ素子31の一部が該複数の流路のそれぞれに配されていてもよい。センサチャンバ60が複数の流路を備える場合、該複数の流路のそれぞれは1つの流路から分岐した流路であってもよい。
[供給機構40]
供給機構40は、供給制御部41、リレー42、およびバルブ81~バルブ83を備え、第2気体を対象試料受入部50の収容空間に供給することによって、該収容空間内の第1気体を、所望の流速で収容空間からセンサチャンバ60の方へ押し出す。供給制御部41は、例えば対象試料受入部50の第1口501側、さらに具体的にはバルブ81と、気体供給部80との間に設けられるマスフローコントローラであり、気体供給部80から収容空間およびセンサチャンバ60への気体の供給を制御する。第2気体を対象試料受入部50の収容空間に供給することによって、該収容空間内の第1気体を、所望の流速で収容空間からセンサチャンバ60の方へ押し出す。リレー42は、匂い測定装置20に設けられるバルブ81~83の開閉を制御し、匂い測定装置20における気体の供給開始および停止を調節する。
バルブ81~バルブ83は、例えば電磁弁であり、リレー42の制御に従って開閉し、気体供給部80からのガス供給の開始および停止を調節するなど、匂い測定装置20における気体の流れを制御する。図1に示すように、バルブ81は、気体供給部80と、対象試料受入部50との間を接続する管体91および92の間に設けられている。バルブ82は、気体供給部80と、センサチャンバ60との間を接続する管体95に設けられている。また、バルブ83は、気体供給部80および対象試料受入部50と、センサチャンバ60と、の間を接続する管体93に設けられている。
このように、対象試料受入部50の第1口501側から気体供給部80が気体を押すことによりセンサチャンバ60に第1気体を送り込むため、センサチャンバ60内の圧力は陽圧である。このため、匂い測定装置20は、安定した測定結果を得ることができる。また、匂い測定装置20は、バルブ81の開閉によって、収容空間内に第2気体を送ることができる。また、匂い測定装置20は、バルブ83の開閉によって、任意のタイミングで第1気体を対象試料受入部50内からセンサチャンバ60の方へ送り出すことができる。これによれば、匂い測定装置20は、センサ素子群31Aを用いて第1気体に含まれる匂い物質を繰り返し測定する場合、各センサ素子31が出力する波形の形の再現性を向上させることができる。さらに、匂い測定装置20は、バルブ82の開閉によって、センサチャンバ60に直接第2気体を供給することができる。これにより、センサチャンバ60内から速やかに第1気体を除去し、次の測定の準備を行うことができる。
第2気体は、不活性ガスまたは空気であってよい。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、窒素などが挙げられる。第2気体が不活性ガスである場合、気体供給部80はガスボンベであってよい。
また、第2気体が空気である場合、気体供給部80はポンプであってよい。この場合、対象試料受入部50に内包される第1気体と反応する成分を除去するために、匂い測定装置20は、対象試料受入部50の第1口501側に、例えば、活性炭フィルタ、除湿剤、シリカゲルカラム、または防塵フィルタを備えていてもよい。
なお、図1では、対象試料受入部50の内部から出た第1気体および第2気体が管体93およびセンサチャンバ60を通る構成を示したが、この構成に限定されない。匂い測定装置20の対象試料受入部50は、センサチャンバ60に対して大きい容積を持つため、測定時に対象試料受入部50の内部の第1気体の全量をセンサチャンバ60に送り出す必要はない。また、測定後に、対象試料受入部50の内部を、第2気体を用いてパージする場合、対象試料受入部50とセンサチャンバ60とが接続されている必要はない。そこで、匂い測定装置20は、管体93にバルブ(不図示)を配置して、対象試料受入部50の内部から出た第1気体および第2気体がセンサチャンバ60を通さずに排気可能な構成であってもよい。
[対象試料受入部50]
対象試料受入部50は、匂い物質を含む対象試料を内部に受け入れて第1気体を保持可能である。対象試料受入部50は、内部に進入する第2気体が通過する第1口501と、内部から出る第1気体および第2気体が通過可能な第2口502とを備えている。図1では、第1口501は、対象試料受入部50の紙面上部に設置され、第2口502は、対象試料受入部50の紙面下部に設置される態様を示すが、これに限定されない。例えば、第1口501および第2口502の位置は、第1気体に含まれる匂い成分の種類および組み合わせなどに応じて適宜設定し得る。例えば、第1気体に含まれる匂い成分の単位体積当たりの重量(すなわち、比重)が第2気体より重い場合と、軽い場合とで、第1口501の位置および第2口502の位置を変更してもよい。また、対象試料受入部50は、図4と同じく、気流生成用ファン35を内部に備えていてもよい。
対象試料受入部50は、液体または固体の対象試料を受け入れるための試料導入口503を備える。対象試料受入部50は、対象試料を設置するための設置部(不図示)を備えていてもよい。対象試料が液体である場合、設置部は、液体を保持するためのコップであってもよいし、対象試料が固体である場合、設置部は、固体が静置されるシャーレであってもよい。対象試料受入部50には、対象試料が試料導入口503から第1気体として気体状態で導入されてもよい。このように、対象試料受入部50が、液体または固体の対象試料を受け入れ可能であることにより、第1気体中の匂い物質の濃度を調節することが可能である。例えば、同一の匂い物質であっても、第1気体中の匂い物質の濃度の高低を調節することが容易である。
対象試料受入部50の内側面には、匂い物質に対して不活性な素材が配されていてよい。匂い物質に対して不活性な素材は、センサチャンバ60に送り出される気体に含まれる匂い物質の各々の濃度を大きく変化させない素材である。例えば、匂い物質に対して不活性な素材は、匂い物質が吸着したり、溶け込んだりしにくい素材である。匂い物質に対して不活性な素材としては、例えば、ガラス、金属、樹脂が挙げられる。金属を採用する場合、ステンレス鋼(SUS)が好ましく、樹脂を採用する場合、フッ素系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
対象試料受入部50の内側面が第1気体に含まれる匂い物質を吸着する素材である場合、各部に匂い物質が吸着して、後の測定に影響を及ぼす虞がある。
このように対象試料受入部50の内側面が匂い物質に対して不活性な素材であることにより、内側面の素材と、第1気体に含まれる匂い物質とが反応する、または内側面に匂い物質が吸着するなどの虞が低減される。従って、センサチャンバ60に供給された第1気体に含まれる匂い物質が、対象試料受入部50に内包されている間に変化する、または匂い物質の濃度が薄まるなどの虞が低減する。
匂い測定装置20は、対象試料が液体または固体であっても、対象試料受入部50を備えることにより、第1気体をセンサチャンバ60に送り込む前に対象試料受入部50内で第1気体の濃度を均一にすることができる。また、匂い測定装置20は、対象試料受入部50を備えることにより、第1気体をセンサチャンバ60へ一定の流量で押し出すことができる。これにより、匂い測定装置20は、測定を繰り返し行う場合であっても、毎回同じ条件でセンサチャンバ60へ第1気体を送ることができるため、繰り返し安定した測定を行うことができる。
対象試料受入部50内の容積は、センサチャンバ60内の容積の1倍以上200倍以下であることが好ましい。特に、対象試料受入部50内の容積は、センサチャンバ60内の容積よりも大きいことが好ましい。対象試料受入部50内の容積は、センサチャンバ60内の容積の2倍以上がより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。また、対象試料受入部50内の容積は、センサチャンバ60内の容積の100倍以下であることが好ましく、60倍以下であることがさらに好ましい。対象試料受入部50内の容積が、センサチャンバ60内の容積に対して1倍以上の大きさであることにより、センサチャンバ60における匂い物質の濃度が適切に調整され、センサチャンバ60が備えるセンサによる測定結果が安定して出力される。また、対象試料受入部50内の容積が、センサチャンバ60内の容積に対して200倍以下であることにより、対象試料受入部50内の温湿度調整がしやすくなるため、センサによる測定結果が安定して出力されると共に、匂い測定装置20のサイズをコンパクトに収めることができる。
対象試料受入部50内の容積が、センサチャンバ60内の容積の1倍未満である場合は、対象試料受入部50で発生した匂い物質がセンサチャンバ60内で希釈され、センサにおける測定感度が低下する虞がある。また、対象試料受入部50内の容積が、センサチャンバ60内の容積の200倍よりも大きい場合は、対象試料受入部50の容積が大き過ぎるため、第1気体の濃度、温度、湿度の均一性が低下し、測定を繰り返し行う場合に、同じ条件でセンサチャンバ60に第1気体を送ることができない虞がある。さらに匂い測定装置20全体のサイズが大きくなる虞がある。
図1では、一例として、対象試料受入部50内の容積が、センサチャンバ60内の容積の8倍の例を示している。
例えば、管体93の内側面が、第1気体に含まれる匂い物質を吸着する素材である場合、各部に匂い物質が吸着して、後の測定に影響を及ぼす虞がある。そこで、第1気体を対象試料受入部50からセンサチャンバ60へと導く管体93の内側面に、対象試料受入部50の内側面と同様に、匂い物質に対して不活性な素材が配されることが好ましい。匂い物質に対して不活性な素材としては、例えば、ガラス、金属、樹脂が挙げられる。金属を採用する場合、ステンレス鋼(SUS)が好ましく、樹脂を採用する場合、フッ素系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
対象試料受入部50は、管体92および管体93から着脱可能な構成であってもよい。このように、対象試料受入部50が着脱可能であることにより、前の測定が終了し、次の測定を行う場合に、対象試料受入部50内をパージせずとも新しい対象試料受入部50を付け替えることができる。これによれば、匂い測定装置20は、複数の測定を短時間で行うことができる。
また、対象試料受入部50が着脱可能であることにより、匂い測定装置20とは別体の保温室を用いて、対象試料を導入した対象試料受入部50を所望の温度に保持することができる。これによれば、例えば、後述する調節部51を匂い測定装置20に設けることが出来ない場合であっても、匂い測定装置20は、対象試料受入部50の温度を調節することができる。保温室としては、例えばウォーターバス、ドライバス、ヒートジャケット、シリコンヒーター、順風乾燥機、恒温恒湿機、噴霧器等を用いられてもよい。
[調節部51]
調節部51は、収容空間の温度を調節可能な温度調節機構である。調節部51は、対象試料受入部50内に内包されている第1気体の温度および湿度の少なくとも一方を調節する。調節部51が温度を調節する場合、調節部51は、例えば、ヒータまたは冷却器である。この場合、調節部51は、対象試料受入部50全体を覆うような構成であってもよい。また、調節部51が湿度を調節する場合、調節部51は、例えば、加湿器または除湿器である。調節部51は、第1気体の種類ごとに温度および湿度の少なくとも一方を調節してもよいし、同じ第1気体の測定中において所定時間毎に温度および湿度の少なくとも一方を変化させてもよい。調節部51としては、例えば温度および湿度の少なくとも一方を変化させることが可能なウォーターバス、ドライバス、ヒートジャケット、シリコンヒーター、順風乾燥機、恒温恒湿機、噴霧器等が用いられてもよい。
調節部51が、対象試料受入部50内の第1気体の温度および湿度の少なくとも一方を調節することにより、匂い測定装置20は、例えば、第1気体の種類(気体の重さ、揮発性など)に応じた条件を用いてセンサチャンバ60へ第1気体を送ることができる。
また、これによれば、匂い測定装置20は、安定した濃度の第1気体をセンサチャンバ60へ送ることができ、測定の精度が向上する。
[センサチャンバ60]
センサチャンバ60は、匂い物質を測定するためのセンサ素子31を格納する空間である。センサチャンバ60には、対象試料受入部50の第2口502と接続されている。具体的には、センサチャンバ60は、気体供給口601と、気体排出口602とを備え、対象試料受入部50の第2口502と、気体供給口601とが接続されている。
センサチャンバ60は、第1気体に含まれる匂い物質に応じた測定結果を出力可能な複数のセンサ素子31Aを備える。複数のセンサ素子31Aは、それぞれ異なる樹脂組成物を物質受容層として備えるセンサ素子31であってよい。すなわち、複数のセンサ素子31Aは、それぞれのセンサ素子31の匂い物質に対する感度および特異性が異なっていてよい。図1のセンサチャンバ60は、一例として、センサ素子31と、センサ素子31bとを含むが、これに限定されない。また、図1のセンサチャンバ60は、センサ素子31、31bとは異なる樹脂組成物を物質受容層として備えるセンサ素子31cを備えている。センサ素子31と、センサ素子31bとは、第1気体に含まれる同じ匂い物質に応じた測定結果を出力可能であるが、それぞれが出力する測定結果は異なる。匂い物質に応じた測定結果は、例えば、匂い物質の濃度に応じた測定結果である。なお、以下の説明において特にセンサ素子31、31b、31cおよび後述するセンサ素子31dを区別しない場合、「センサ素子31」と総称する。
センサチャンバ60には、それぞれ異なる樹脂組成物を物質受容層として備えるセンサ素子31がどのような組み合わせで、どのような配置で設置されてもよい。また、センサチャンバ60には、同じ樹脂組成物を物質受容層として備えるセンサ素子31が複数設置されていてもよい。
ここで、センサ素子31と、センサ素子31bとは、それぞれが異なる匂い物質に応じた測定結果を出力可能なセンサ素子であってもよい。例えば、センサチャンバ60には、第1気体に含まれる匂い物質に応じた測定結果を出力可能なセンサ素子31と、第1気体に含まれる匂い物質とは異なる第2匂い物質に応じた測定結果を出力可能なセンサ素子31bとが配置されていてもよい。例えば、匂いセンサ30は、匂い物質受容層315に用いた樹脂組成物が互いに異なるセンサ素子31、31bを備えていてもよい。
匂い物質を吸着する特性が異なる樹脂組成物を匂い物質受容層315に用いたセンサ素子31を複数備えることにより、情報処理システム100は、複数の匂い物質についての推定を同時に実行することができる。なお、本発明の一実施形態に係るセンサ素子31として、匂い物質受容層315に界面活性剤(B)を含まないセンサ素子31と匂い物質受容層315に界面活性剤(B)を含むセンサ素子31とを併用してもよい。
また、匂い測定装置20を用いれば、既知の匂い物質のそれぞれについて、センサ素子31の電気伝導性の変化を示す第1変化パターンと、センサ素子31bの電気伝導性の変化を示す第2変化パターンとを得ることが可能である。推定モデル22は、第1変化パターンおよび第2変化パターンの両方を用いた機械学習によって生成されてもよい。情報処理システム100は、このように生成された推定モデル22を用いて匂い物質を推定するため、各匂い物質をより精密に識別することが可能である。
図1のセンサチャンバ60は、一例として、4個×4列の配置で複数のセンサ素子31Aを備えている。センサ素子31Aの数、ならびにセンサ素子31Aの配列の仕方は限定されない。センサチャンバ60が備えるセンサ素子31Aの合計の数も特に限定されないが、例えば、2個、8個、16個、64個であってよい。センサ素子31Aの合計の数は、8個以上16個以下であってもよい。
センサチャンバ60の内側面の素材は、対象試料受入部50と同様に、匂い物質に対して不活性な素材であることが好ましい。匂い物質に対して不活性な素材としては、例えば、ガラス、金属、樹脂が挙げられる。金属を採用する場合、ステンレス鋼(SUS)が好ましく、樹脂を再送する場合、フッ素系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。センサチャンバ60の内側面の素材が、第1気体に含まれる匂い物質を吸着する素材の場合、センサチャンバに匂い物質が吸着することにより、後の測定におけるセンサ素子31からの出力の変化量が小さくなり、匂い測定装置20が正確な測定を行えない虞がある。
センサチャンバ60は、匂い測定装置20に着脱自在に取り付けられる。ここで、匂い測定装置20は、供給機構40の少なくとも一部を覆う第1筐体70を備えていてもよい。ここで、供給機構40の少なくとも一部は、例えば、対象試料受入部50を含んでいてもよい。対象試料受入部50が第1筐体70によって覆われることによって、収容空間の温度調節が容易となり得る。
図5は、匂い測定装置20の概観の一例を示す概略図である。あるいは、図5に示すように、匂い測定装置20は、供給機構40の少なくとも一部、およびセンサチャンバ60を覆う第2筐体71を備えていてもよい。図5では、簡単化のために供給機構40の図示は省略されている。例えば、センサチャンバ60が第2筐体72によって覆われることによって、センサチャンバ60内の空間の温度が安定し、測定結果の信頼性が向上し得る。第2筐体71は、開閉可能な蓋72を備えていてもよい。第2筐体71を開状態にした場合、センサチャンバ60を匂い測定装置20に着脱自在に取り付けられるように構成されていてもよい。これにより、匂い測定装置20を取り外したり移動させたりすることなく、センサチャンバ60を交換することができる。
[複数のセンサ素子31A(センサ素子群31A)]
複数のセンサ素子31Aは薄膜を備えてもよい。一例として、図2および図3の匂い物質受容層315が薄膜である。
センサチャンバ60内に匂い物質を含む第1気体を送り込む態様として、例えば、センサチャンバ60の気体排出口602側に真空ポンプを設置し、真空ポンプを用いて気体を引くことにより、センサチャンバ60の気体供給口601側から匂い物質をセンサチャンバ60へ送り込む態様が採用されてもよい。ただし、センサ素子31、31bが薄膜を備える場合、センサチャンバ60内が陰圧であると、薄膜が膨張して、センサ素子31、31bが安定した測定結果を出力できない虞がある。これに対して、センサチャンバ60および対象試料受入部50の第1口501側から気体供給部80が気体を押すことによりセンサチャンバ60に第1気体を送り込む構成であれば、センサチャンバ60内の圧力は陽圧である。そこで、本実施形態に係る匂い測定装置20は、センサチャンバ60および対象試料受入部50の第1口501側から気体供給部80が気体を押すことによりセンサチャンバ60に第1気体を送り込む構成を採用することが好ましい。これにより、匂い測定装置20は、複数のセンサ素子31Aが薄膜を備えていても安定した測定結果を得ることができる。
また、複数のセンサ素子31Aの薄膜は、導電性炭素材料、樹脂組成物、および界面活性剤を含んでもよい。
また、複数のセンサ素子31Aの各々は、樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物を含む匂い物質受容層315を備え、複数のセンサ素子31Aの各々の匂い物質受容層315に含まれる樹脂組成物は互いに異なっていてもよい。
<センサ素子31cの構成例>
以下、図6~図8を用いて、センサ素子群31Aに含まれる1つのセンサ素子31cの構成の例について説明する。なお、図6~図8において、点描部分および斜線部分が匂い物質受容層315c~315dを示す。センサ素子群31Aに含まれる1つのセンサ素子31cでは、対向する電極間において、匂い物質受容層315c~jの表面粗さ(Sa)が0.5μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。図6~図8において、斜線部分は、匂い物質受容層315c~315dのうち表面粗さが測定される領域である。なお、以下の説明において特に匂い物質受容層315cと315dとを区別しない場合、「匂い物質受容層315」と総称する。
図6は、センサ素子群31Aに含まれる1つのセンサ素子31cの構成の一例を示す上面図である。センサ素子31cは、基板311上に配置された電極313(第1金属配線313C、第2金属配線313D)と、電極313上に形成された円状の匂い物質受容層315cと、を備える。図6に示すように、第1金属配線313Cと第2金属配線313Dとは、平行直線状に配置される。具体的には、第1金属配線313Cは、互いに垂直になるようT字状に配された金属配線313aおよび金属配線313bを備える。また、第2金属配線313Dは、互いに垂直になるようT字状に配された金属配線313cおよび金属配線313dを備える。さらに、金属配線313aと金属配線313cとは互いに平行線上に位置するように配される。匂い物質受容層315cの直径Rは、0.2mm以上、5mm以下である。図6において、センサ素子31cが備える匂い物質受容層315cの形状は一例として楕円状であるが、これに限定されない。匂い物質受容層315cの形状が楕円である場合は、短径と、長径との平均が0.2mm以上、5mm以下であってよい。また、匂い物質受容層315cの形状は真円であってもよい。
図7は、センサ素子群31Aに含まれる1つのセンサ素子31dの構成の一例を示す上面図である。センサ素子31dは、基板311上に配置された電極313(第1金属配線313C、第2金属配線313D)と、電極313上に形成された帯状の匂い物質受容層315dと、を備える。匂い物質受容層315dの短方向の幅の長さは、0.2mm以上、5mm以下である。
図8は、センサ素子群31Aに含まれる1つのセンサ素子31cの構成の一例を示す斜視図である。図8に示すように、センサ素子31cにおいて、第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dは、第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dが互いに対向しない方の端部において、それぞれピン316と接続されている。ピン316は第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dと、匂いセンサ30の他の部材とを電気的に接続するための導電部材である。なお、図示されていないが、図6および図7に示すセンサ素子31cおよびセンサ素子31dも、図8に示すピン316を備えている。
センサ素子群31Aが含むセンサ素子31の電極313は、それぞれ第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dを有し、第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dは、平行線状、平行曲線状、櫛形状、または同心円状に配置されていてもよい。第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dは、前記のどの形状が採用される場合においても、互いに線対称、または点対称で配置されていることが好ましい。このように第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dが配置されることにより、匂い測定装置20は、気体に含まれる匂い物質を高精度に測定することができる。
図6のセンサ素子31cは、第1金属配線313Cと、第2金属配線313Dを有している。また、一例として、第1金属配線313Cは、金属配線313aと、金属配線313bとから構成されており、2本の金属配線は、互いに垂直になるようT字状に配されている。第2金属配線313Bも、第1金属配線313Cと同様に2本の金属配線313c、313dから構成され、2本の金属配線が互いに垂直になるようT字状に配されるよう構成されている。また、第1金属配線313Cと、第2金属配線313Dとは、金属配線313aと、金属配線313cとが向かい合うように平行線状に配置されている。
第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dは、特に、互いにT字状に配されていることにより、第1金属配線313Cと、第2金属配線313Dとを好適な距離に設置することができ、電極の抵抗値を安定化させることができる。例えば、電極が櫛形状に配置されている場合は、電極間の距離が短くなり、電極の抵抗値が小さくなり過ぎる虞がある。また、第1金属配線313Cおよび第2金属配線313Dが互いにT字状に配されていることにより、センサ素子を製造するとき、匂い物質受容層315を形成するために基板上にスラリーを塗布する工程において、スラリーが濡れ広がる領域に、濡れ広がりを妨げ得る電極の凹凸部分が存在しないため、スラリーが濡れ広がり易くなる。また、スラリーが濡れ広がり易くなることより、乾燥後の匂い物質受容層315の厚みが一定になるという効果がある。
[推定装置10]
推定装置10は、匂いセンサ30によって検出された匂い物質を推定する装置である。推定装置10は、例えばコンピュータであり、不図示のCPUおよびメモリを備えている。推定装置10は、匂い測定装置20と通信可能に接続されている。具体的には、推定装置10は、匂いセンサ30から取得した検出信号を解析することによって、対象の匂いに対応する匂い物質の推定を実行する。センサチャンバ60が、センサ素子31、センサ素子31bとは異なる樹脂組成物を物質受容層315に用いたセンサ素子31cをさらに備える場合、推定装置10は、センサ素子31cに定電圧を供給して電圧計によって測定される測定値をさらに取得し解析してもよい。また、推定装置10は、検出信号に基づく測定値そのもの、測定値をプロットした波形、および推定モデルに基づいた未知の匂い物質の推定結果を表示してもよい。また、推定装置10は、複数の匂い物質を含む気体に対して、それぞれの匂い物質の存在割合の変化を示す数値、およびグラフなどを表示してもよい。推定装置10は、匂い物質を推定するために用いる推定モデル22を生成する機能を備えていてもよいが、この構成に限定されない。例えば、推定装置10とは異なる他のコンピュータによって生成された推定モデル22を、推定装置10が用いる構成であってもよい。
<推定モデル22の生成>
次に、匂い物質を推定するために用いる推定モデル22を生成する処理を行う情報処理システム100の構成、および、推定モデル22を生成する処理について、図9および図10を用いて説明する。
推定モデル22は、複数の匂い物質のそれぞれを少なくとも1つのセンサ素子31に吸着させた場合に電圧計33によって測定される測定値と、該測定値を与えた匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含む学習用データを用いた機械学習によって生成される。ここで、匂い物質に固有の識別情報とは、例えば、匂い物質の名称、CAS番号、および化学式等であってもよい。
(推定装置10の構成(推定モデル22の生成))
図9は、情報処理システム100の構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、説明の便宜上、図1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図9に示すように、推定装置10は、入力部15、制御部1、記憶部2を備えている。
入力部15は、ユーザからの各種入力操作を受付けるためのものであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等であってもよい。
制御部1は、測定値取得部11(取得部)、抽出部12、学習制御部13、および推定モデル生成部14を備えている。
測定値取得部11は、複数のセンサ素子31Aの各々からの検出信号を取得する。具体的には、測定値取得部11は、電圧計33から測定値を取得する。また測定値取得部11は、取得した測定値を用いて、センサ素子31の電気伝導性を示す値(例えば、抵抗値、およびインピーダンスなど)を算出する。測定値取得部11は、電圧計33から所定の時間間隔(例えば0.1秒間隔)で測定値を取得してもよい。
抽出部12は、測定値取得部11が取得した検出信号から対象の匂いの特徴を示す特徴情報を抽出する。
特徴情報は、センサチャンバ60内に第1気体が供給される第1期間において複数のセンサ素子31Aの各々から出力される検出信号の強度および該強度の時間変化パターンの少なくともいずれかを含む。また、特徴情報は、さらに、センサチャンバ60内に供給された第1気体が第2気体によってセンサチャンバ60内から押し出される第2期間において複数のセンサ素子31Aの各々から出力される検出信号の強度および該強度の時間変化パターンの少なくともいずれか、を含む。時間の経過により、匂い物質がセンサ素子31に作用(吸着/脱離)すると、センサ素子31の電気的特性(抵抗)が変化する。抽出部12は、この電気的特性の時間的変化に基づく波形、または当該波形に含まれる特徴的な数値を特徴情報として抽出する。
抽出部12は、例えば、少なくとも1つのセンサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を抽出する。抽出部12は、測定値取得部11によって算出された抵抗値を用いて、匂い物質が吸着したことによるセンサ素子31の電気伝導性の変化量を示す値を算出する。抽出部12は、算出した電気伝導性の変化量の時間変化を示す変化パターンを示すデータを生成する。抽出部12は、生成した変化パターンが既知の匂い物質を検出した場合の変化パターンと同じである場合、生成した変化パターンを該既知の匂い物質に固有の識別情報と対応付けて、変化パターンデータベース21(学習用データ)に格納してもよい。
学習制御部13は、記憶部2から変化パターンデータベース21を読み出して、機械学習による推定モデル22の生成を制御する。ここで、変化パターンデータベース21は、複数の匂い物質をセンサ素子31に吸着させた場合に測定される測定値と、該測定値を与えた既知の匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含むデータベースである。学習制御部13は、変化パターンデータベース21から読み出した変化パターンを推定モデル生成部14に入力する。また、学習制御部13は、推定モデル生成部14に入力した変化パターンに対応する匂い物質と、推定モデル生成部14から出力される推定結果とを比較し、比較結果に応じた補正指示を推定モデル生成部14に出力する。
推定モデル生成部14は、変化パターンデータベース21に格納されている変化パターンを用いた機械学習アルゴリズムによって、推定モデル22を生成する。推定モデル生成部14は、公知の教師有り機械学習アルゴリズムを用いて推定モデル22を生成する構成であってもよい。推定モデル生成部14に適用可能な機械学習アルゴリズムとしては、例えば、k近似法(k-nearest neighbor method)、ロジスティック回帰、サポートベクトルマシン、ランダムフォレスト、およびニューラルネットワーク等が挙げられる。
・特徴量抽出方法
機械学習により推定モデルを生成する場合、基となるデータは、測定値そのものであってもよいし、測定値の統計量、微積分値、ピーク検出値、または自己相関値等、測定値の特徴量を抽出したデータであってもよい。統計量としては、例えば、平均値、分散値、最大値、最小値、最大値と最小値の差、標準偏差等が挙げられる。微積分としては、例えば、傾きや面積等が挙げられる。ピーク検出値としては、例えば、ビークの数、高さ等が挙げられる。自己相関値としては、例えば、階差等が挙げられる。
・前処理方法
機械学習により推定モデルを生成する場合、基となるデータは、そのまま機械学習に用いてもよいし、基となるデータに対して必要により前処理を行ってもよい。また前処理を行う場合、前処理は、特徴量抽出を行う前に行われてもよいし、特徴量抽出を行った後に行われてもよいし、特徴量抽出を行う前後の両方で行われてもよい。前処理は公知の方法で行ってよく、補正、ノイズ除去、標準化、データの変換、平滑化、データ拡張等の方法が挙げられる。補正は、複数の素子や市販のセンサ(例えば温度センサや湿度センサ等)、標準ガスの測定結果に基づいて行われてよい。例えば、補正は、出力比算出、独立成分分析(ICA)、統計量算出、積算、加算、減算、除算等の方法によって行われてよい。ノイズ除去としては、例えば、外れ値やホワイトノイズ等の除去が挙げられる。標準化としては、例えば、正規化、正則化等が挙げられる。データの変換としては、例えばトレンドの除去、周波数変換、対数変換等が挙げられる。平滑化としては、例えば、移動平均、階差等が挙げられる。データ拡張としては、例えば、同じサンプルデータの追加(例えば正規分布を仮定)、新しいサンプルデータの追加(例えば、ベクトルの混合比による追加)等が挙げられる。
・機械学習アルゴリズム
推定モデル生成部14に適用可能な機械学習アルゴリズムとしては、回帰分析、分類、木、時系列解析、ニューラルネットワーク、クラスタリング等が挙げられる。回帰分析としては、例えば、ロジスティック回帰、Lasso、エラスティックネット、サポートベクター回帰(SVR)、線形、Ridge、アンサンブル回帰等が挙げられる。分類としては、例えば、k近似法(k-nearest neighbor method)、サポートベクター分類(SVC)、単純ベイズ分類(Naibe Bayse classifier)、確率的勾配降下法(SGD)、カーネル近似等が挙げられる。木としては、例えば、決定木、回帰木、ランダムフォレスト、ブースティング(lightGBM、XGboost)、スタッキング等が挙げられる。時系列としては、例えば、AR、MA、ARIMA、状態空間等が挙げられる。ニューラルネットワークとしては、例えば、多層パーセプトロン(MLP)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、残渣ニューラルネットワーク(ResNet)、トランスフォーマー、グラフニューラルネットワーク(GNN)等が挙げられる。クラスタリングとしては、例えば、混合ガウスモデル(GMM)、k平均法(kmeas)、minikmeans、変分混合ガウスモデル(VBGMM)、カーネル近似等が挙げられる。
(推定モデル22を生成する処理)
以下、匂い測定装置20を用いて推定モデル22を生成する処理について、図10を用いて説明する。図10は、匂い測定装置20の推定装置10が推定モデル22を生成する処理の流れの一例を示すフローチャートである。推定モデル22は、複数の匂い物質のそれぞれを少なくとも1つのセンサ素子31に吸着させた場合に電圧計33によって測定される測定値と、該測定値を与えた匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含む学習用データを用いた機械学習によって生成される。ここで、匂い物質に固有の識別情報とは、例えば、匂い物質の名称、CAS番号、および化学式等であってもよい。
まず、測定値取得部11は、匂い物質を対象試料受入部50へ導入する前の匂いセンサ30において測定された電圧値V0を取得し、抵抗値R0を算出する。抵抗値R0は、好ましくは500~3000Ωであり、さらに好ましくは800~2800Ωであり、最も好ましくは1000~2500Ωである。その後、匂い物質を対象試料受入部50に入れる(ステップS1)。
一方、入力部15は、対象試料受入部50内に導入した、既知の匂い物質の名称等の入力を受け付ける(ステップS2)。ステップS2の処理はステップS1の前に行ってもよい。
次に、測定値取得部11は、センサ素子31への匂い物質吸脱着前後の過程における複数のセンサ素子31Aの各々からの検出信号を取得する(ステップS3:取得ステップ)。
続いて、抽出部12は、測定値取得部11が取得した検出信号から、対象の匂いの特徴を示す特徴情報を抽出する(ステップS4:抽出ステップ)。例えば、抽出部12は、電圧値Vの変化量(ΔV)データ(波形または経時的変化パターン)を取得する。抽出部12は、匂い物質吸脱着前後の過程における電圧値Vの変化量(ΔV)データ(波形または経時的変化パターン)と入力された既知の対象情報とを対応付けて変化パターンデータベースに記憶する。
所定種類の既存の匂い物質について変化パターンが記憶されていない場合(ステップS5にてNO)、すなわち、機械学習に用いるデータがまだ不足している場合、ステップS1に戻る。
所定種類の既存の匂い物質について変化パターンが記憶された場合(ステップS5にてYES)、学習制御部13は、変化パターンデータベース21に記憶されている、既知の匂い物質についての変化パターンを読み出して、推定モデル生成部14に入力する。推定モデル生成部14は、変化パターンデータベース21に格納されている経時的変化パターン(または変化パターンから抽出した特徴量)に基づき、機械学習によって推定モデル22を生成する(ステップS6)。
推定モデル生成部14は、所定の機械学習によって生成した推定モデル22を記憶部2に格納する(ステップS7)。
図9および図10に示す例では、推定装置10が推定モデル22を生成しているが、これに限定されない。例えば、推定装置10とは異なる外部のコンピュータであって、学習制御部13および推定モデル生成部14と同じ機能を備えるコンピュータに変化パターンデータベース21と同じデータを提供して、推定モデル22を作成させてもよい。
<匂い物質の推定>
次に、推定モデル22を用いて対象情報を推定する情報処理システム100aの構成、および、推定処理について、図11および図12を用いて説明する。
(推定装置10aの構成(推定処理の実行))
図11は、情報処理システム100aの構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、説明の便宜上、図1および図9にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図11に示すように、推定装置10aは、制御部1a、記憶部2a、および出力部18を備えている。ここで、図11は、図9に示す推定装置10を、匂い物質の推定処理に利用した場合の構成例を示している。すなわち、図9に示す推定装置10と図11に示す推定装置10aとは、同じハードウェア構成を備えるコンピュータであってもよい。
出力部18は、ユーザに推定結果を提示するためのものであり、例えば、ディスプレイ、スピーカ、ランプ等であってもよい。
制御部1aは、測定値取得部11(取得部)、抽出部12、推定部16、および出力制御部17を備えている。
推定部16は、推定モデル22を用い、匂いセンサ30によって検出された匂い物質を推定する。また、推定部16は、抽出部12が抽出した特徴情報、および/または、匂い物質の推定結果に基づいて、対象に関する対象情報を推定する。
対象情報は、対象の匂いについての評価情報、対象の匂いを所定の基準に基づいて分類した分類情報、および、対象の状態を示す状態情報のうちの少なくともいずれかである。推定部16は、例えば、複数水準の対象から取得された波形データを基に特徴量を抽出し得られた学習モデルを用いて、入力された未知の対象の状態が、過去のデータのいずれの対象の状態に近いか等を判定する。
出力制御部17は、推定結果を出力するように出力部18を制御する。ここで、推定結果は、匂い物質を推定した推定結果および対象情報を推定した推定結果の少なくともいずれかであってもよい。
(推定処理)
以下、制御部1aの各部が行う具体的な処理については、図12を用いて説明する。図12は、推定装置10aが対象情報を推定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、測定値取得部11は、匂い物質を対象試料受入部50へ導入する前の匂いセンサ30において測定された電圧値V0を取得し、抵抗値R0を算出する。その後、未知の匂い物質(性状問わない)を対象試料受入部50に導入する(ステップS11)。
次に、測定値取得部11は、センサ素子31への未知の対象情報を有する対象から発せられた匂いに対応する匂い物質を複数のセンサ素子31の各々が検出した検出信号を取得する(ステップS12:取得ステップ)。
抽出部12は、測定値取得部11が取得した検出信号から、特徴情報を抽出する(ステップS13:抽出ステップ)。例えば、抽出部12は、特徴情報として、匂い物質吸脱着前後の過程における電圧値Vの変化量(ΔV)データ(波形または経時的変化パターン)を抽出する。
次に、推定部16は、推定モデル22を用い、抽出された特徴情報に基づき、対象の匂いに対応する匂い物質、および、抽出された特徴情報に基づき、対象情報を推定する(ステップS14:推定ステップ)。例えば、推定部16は、電圧値Vの経時的変化パターン(または変化パターンから抽出した特徴量)から、対象の状態を示す対象情報を推定する。
出力制御部17は、出力部を制御して、推定結果を出力する(ステップS15)。
上述の実施形態では、推定モデル22を生成する推定装置10および推定モデル22を用いて匂い物質を推定する推定装置10aについて説明した。なお、推定装置10と推定装置10aとは、別体の装置であってもよいし、1つの装置であってもよい。
(データ解析の例)
以下、情報処理システム100によって提供される、データの解析方法について説明する。本開示に係る情報処理システム100は、上述のような構成を備えることで、対象の特徴を示す波形の重ね合わせ、波形から抽出した特徴量についての主成分分析、線形判別分析、棒グラフ、およびレーダーチャートといった形式の解析結果を提供することができる。
情報処理システム100は、例えば製品の品質管理、製品PR、および対象のモニタリング等に用いることができる。
例えば、情報処理システム100は、品質管理として、食品素材の開発を支援することができる。一例として、情報処理システム100は、過去出荷した製品の特徴情報および対象情報を示すライブラリを作成し、新たに製造した製品の特徴情報および対象情報と、ライブラリに含まれる情報との照合を行うことができる。
また、情報処理システム100が行う推定の結果は、製品PRに用いることもできる。例えば、情報処理システム100を用いて推定された情報に基づき、製品と他社品との特徴を比較することができる。また、情報処理システム100の推定結果に基づき製品の特徴の傾向を特定し、顧客嗜好とのマッチングに用いることもできる。
また、情報処理システム100が行う推定の結果は、食品劣化度合いの経時変化の監視、食品の長寿命化、および食品の状態の見える化などといった対象のモニタリングに利用することができる。また、当該推定の結果を用いて、発酵状態の把握と条件最適化とを行うこともできる。
例えば、ある食品の劣化状態を示す対象情報と、当該食品を用いて得られた検出信号から抽出された特徴情報とを用いて学習モデルを生成し、状態が不明な食品を用いた測定を行うことで、該食品の劣化度合いを推定することができる。また、複数回測定を行うことで、当該食品の劣化度合いの経時的変化を監視することもできる。
さらに、ある食品の発酵状態および発酵条件を示す対象情報と、当該食品を用いて得られた検出信号から抽出された特徴情報とに基づき、状態が不明な食品の発酵度合いの推定および当該食品に最適な発酵条件の推定を行うことができる。
例えば、情報処理システム100を用いて、対象に含まれるウレタン樹脂の臭気を判定することができる。図13は、アミン類を含むフォーム(ウレタンフォーム)を対象として用いた測定における検出強度およびアミン類を含まないフォームを対象として測定における検出強度の経時的変化を示すグラフである。図14は、図13に示す測定時と同様の対象を用いて複数回の測定を行った場合における検出結果を示すグラフである。なお、図14では、それぞれの測定におけるピークトップの値をプロットしている。図13および図14において、符号Aはアミン類を含むフォームを用いた測定に基づく結果を示し、符号Bはアミン類を含まないフォームを用いた測定に基づく結果を示す。また、図14において、符号Cは、対象を用いずに行った測定に基づく結果を示す。
図13に示すように、アミン類を含むフォームを用いた場合の検出強度とアミン類を含まないフォームを用いた場合の検出強度を比較した結果、アミン類を含むフォームの方が、検出強度が高い傾向を示すことが確認された。この傾向は、鼻で嗅いだ際の感じ方と整合性があった。また、図14に示すように、同様の対象を用いて連続5回測定した場合でも、上記順列(アミン類有>無)に変わりはないことが確認された。
このように、情報処理システム100を用いることで、対象の臭気がアミン類を含むフォームと含まないフォームとのどちらに近いかを、人の鼻による感覚に頼らずに推定することができる。
また、情報処理システム100は測定された信号の検出強度と予め行われた官能評価試験の結果とを紐付ける学習が行われた学習モデルを生成し、当該学習モデルに基づく線形判別分析を行うことができる。図15は、ある対象における、該対象が製品として問題ないか否かを示す対象情報と、該対象を用いて行われた測定における検出信号の検出強度を示す特徴情報との対応を示す図である。図15において、「●」は製品として問題ないことを示す対象情報を有する対象についてプロットされたデータを示す。また、図15において、「×」は製品として問題があることを示す対象情報を有する対象についてプロットされたデータを示す。「●」および「×」によって示される対象の特徴情報は、予め行われた官能評価試験によって特定される。
例えば、情報処理システム100は、図15に示すような検出強度を示す特徴情報と、製品の状態を示す対象情報と、に基づく学習を行った学習モデルを生成する。当該学習モデルを用い、線形判別分析を行うことで、対象情報が不明の対象(図15において符号「★」で示す対象)が、製品として問題ないものであるか否かを、該対象の特徴情報に基づき判定することができる。
また、情報処理システム100は測定された信号の検出強度と予め行われた官能評価試験の結果とを紐付ける学習が行われた学習モデルを生成し、当該学習モデルに基づく主成分分析を行うことができる。
図16は、複数の対象における、官能評価試験および匂い測定装置20を用いて行われた測定に基づく特徴量を示す図である。例えば、情報処理システム100は、複数の対象について、特徴情報と、製品の状態を示す対象情報と、に基づく学習を行った学習モデルを生成する。情報処理システム100は、当該学習モデルを用い、主成分分析を行うことで、対象情報が不明の対象(図16において符号「★」で示す対象)が、予め評価が行われているいずれの対象の特徴に近いかを判定することができる。例えば、図16に示すように、判定対象のグラフ上の位置と近い位置にプロットされた対象とは、比較的近い対象情報を示すと考えることができる。
図17は、2つの対象と、それぞれの対象を用いて行われた測定によって得られた検出信号から特徴情報として抽出された特徴量を示す。図17に示すように、情報処理システム100を用いることで、複数の対象の状態がそれぞれ異なっていること、例えば符号Eに示す対象では、符号Dに示す対象と状態が異なっていることをユーザに把握させることができる。例えば、図17に示す特徴量が多いほど、匂いが強いことを示す場合、ユーザは、符号Dに示す対象よりも符号Eに示す対象の匂いが抑えられていることを把握することができる。
図18は、2つの対象について、複数のセンサ素子31Aを用いて測定を行った結果を示す。図18において、縦軸は、複数のセンサ素子31Aのそれぞれによって検出された検出信号の強度を示し、横軸の数字は、信号を検出した複数のセンサ素子31A(検出素子)のそれぞれの識別番号を示す。
図18に示すように、情報処理システム100を用いることで、複数の対象の状態を示す対象情報を比較し、対象ごとの傾向を特定することができる。例えば、図18における縦軸が、対象の対象情報として匂いの強さを示す場合、符号Fの対象と符号Gの対象とは類似の匂いであり、符号Fの対象よりも符号Gの対象の方が全般的に強い匂いを発していることが分かる。
また、情報処理システム100は、対象の劣化具合の傾向を特定することができる。図19は、対象として、食品添加物である添加物1および添加物2のそれぞれが劣化する前と劣化した後と、における測定の結果を示す二次元マップである。対象の劣化とは、例えば光の照射または時間経過等による味および風味等の劣化を示す。図19において、マップ上におけるプロット間の距離が遠いほど、対象の匂いの質的な違いが大きいことを意味する。また、劣化具合とは、ある対象における劣化前から劣化後までの変化の程度を意味する。
従来、添加物1の方が添加物2に比べて劣化具合が大きいことが分かっている。図19に示すように、情報処理システム100を用いて測定を行った場合、従来知られている傾向と同様に、添加物1の方が添加物2に比べて劣化具合が大きいことを示す結果が得られる。
図20は、複数のセンサ素子31Aを供える匂いセンサ30を用いて、特定の空間内の匂い物質を測定したときの検出信号の強度と時間との関係を示すグラフを示す。ここで、測定の対象となる空間は、衛生的な環境が保たれるべき場所、例えばトイレ室内であってよい。
図20に示す結果から、1つのグラフ(図20の符号X)が他のグラフと比べて異常な変動を示していることがわかる。このように、情報処理システム100を用いて経時的な測定値の変動を監視することで、測定に用いた複数のセンサ素子31Aのうち、正常に測定を行えないセンサ素子31を確認することができる。また、この結果から異常な変動を示す結果を除外して分析を行うことで、より正確な結果を得ることができる。より正確な測定結果を得ることで、衛生的な環境が保たれるべき場所における匂いの状況をより正確に把握することができる。
<ソフトウェアによる実現例>
推定装置10、10aの制御ブロック(特に制御部1)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、推定装置10、10aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路等を用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)等をさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る情報処理システムは、複数のセンサ素子が設けられたセンサチャンバと、対象の匂いに対応する匂い物質を含む第1気体および前記対象の匂いに対応する匂い物質を含まない第2気体を交互に前記センサチャンバ内に供給可能な供給機構と、を備える少なくとも1以上の匂い測定装置と、前記複数のセンサ素子の各々からの検出信号を取得する取得部と取得した前記検出信号から前記対象の匂いの特徴を示す特徴情報を抽出する抽出部と、抽出した前記特徴情報に基づいて前記対象に関する対象情報を推定する推定部と、を備える。
本開示の態様2に係る情報処理システムは、上記態様1において、前記対象を収容し、前記第1気体を保持可能な収容空間を有する試料受入部を備え、前記供給機構は、前記第2気体を前記収容空間に供給することによって、前記収容空間内の前記第1気体を前記収容空間から前記センサチャンバの方へ押し出してもよい。
本開示の態様3に係る情報処理システムは、上記態様2において、前記収容空間の温度を調節可能な温度調節機構をさらに備えてもよい。
本開示の態様4に係る情報処理システムは、上記態様2または3において、前記供給機構は、前記センサチャンバ内の前記第1気体を、0.01秒間以上10秒間以下で前記第2気体に置換し、前記センサチャンバ内の前記第2気体を、0.01秒間以上10秒間以下で前記第1気体に置換してもよい。
本開示の態様5に係る情報処理システムは、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記特徴情報は、(1)前記センサチャンバ内に前記第1気体が供給される第1期間において前記複数のセンサ素子の各々から出力される検出信号の強度および該強度の時間変化パターンの少なくともいずれか、および、(2)前記センサチャンバ内に供給された前記第1気体が前記第2気体によって前記センサチャンバ内から押し出される第2期間において前記複数のセンサ素子の各々から出力される検出信号の強度および該強度の時間変化パターンの少なくともいずれか、を含んでもよい。
本開示の態様6に係る情報処理システムは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記対象情報は、前記対象の匂いについての評価情報、前記対象の匂いを所定の基準に基づいて分類した分類情報、および、前記対象の状態を示す状態情報のうちの少なくともいずれかであってもよい。
本開示の態様6に係る情報処理システムは、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記センサチャンバは、前記匂い測定装置に着脱自在に取り付けられてもよい。
本開示の態様8に係る情報処理システムは、上記態様7において、前記匂い測定装置は、前記供給機構の少なくとも一部を覆う第1筐体を備えてもよい。
本開示の態様9に係る情報処理システムは、上記態様7または8において、前記匂い測定装置は、前記供給機構の少なくとも一部、および前記センサチャンバを覆う第2筐体を備え、前記第2筐体は開閉可能となっており、前記第2筐体を開状態にした場合、前記センサチャンバを前記匂い測定装置に着脱自在に取り付けられてもよい。
本開示の態様10に係る情報処理システムは、上記態様1から9のいずれかにおいて、前記複数のセンサ素子は、ケミレジスター型センサであってもよい。
本開示の態様11に係る情報処理システムは、上記態様1から10のいずれかにおいて、前記複数のセンサ素子の各々は、樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物を含む匂い物質受容層を備え、前記複数のセンサ素子の各々の前記匂い物質受容層に含まれる前記樹脂組成物は互いに異なっていてもよい。
本開示の態様12に係る情報処理システムは、上記態様1から11のいずれかにおいて、前記第2気体は、不活性ガスまたは空気であってもよい。
本開示の態様13に係る情報処理方法は、1または複数の情報処理装置により実行される制御方法であって、複数のセンサ素子が設けられたセンサチャンバと、対象の匂いに対応する匂い物質を含む第1気体および前記対象の匂いに対応する匂い物質を含まない第2気体を交互に前記センサチャンバ内に供給可能な供給機構と、を備える少なくとも1以上の匂い測定装置の前記複数のセンサ素子の各々からの検出信号を取得する取得ステップと、取得した前記検出信号から前記対象の匂いの特徴を示す特徴情報を抽出する抽出ステップと、抽出した前記特徴情報に基づいて前記対象に関する対象情報を推定する推定ステップと、を含む。
本開示の態様14に係るプログラムは、上記態様1から11のいずれかにの情報処理システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記取得部、前記抽出部、および前記推定部としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。