以下、車両制御システムの制動制御装置に具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両制御システム10は、物体検出装置110及び制動制御装置に相当する制動制御ECU200を備えている。
物体検出装置110は、ミリ波を送信し、送信したミリ波が物体(以下、「物標」とも呼ぶ)に反射することで生じる反射波から、自車周囲の物標の位置、及び自車に対する物標の相対速度を検出する。物体検出装置110は、ミリ波レーダセンサ111と、レーダECU112とを備えている。
ミリ波レーダセンサ111は、例えば、自車の前部及び後部にそれぞれ取り付けられており、ミリ波を自車周囲に出射し、その反射波を受信する。ミリ波レーダセンサ111は、受信した反射波に関する反射波信号をレーダECU112に出力する。
レーダECU112は、ミリ波レーダセンサ111から出力される反射波信号から、自車周囲の物標の位置、及び自車に対する物標の相対速度を算出する。レーダECU112は、算出した物標の位置、及び自車に対する物標の相対速度を制動制御ECU200に出力する。レーダECU112は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を備えるコンピュータにより構成されている。なお、ECUは、Electronic Control Unit(電子制御装置)の略である。
制動制御ECU200には、ヨーレートセンサ120、操舵角センサ130、車輪速センサ140、及び衝突抑制装置300が接続されている。ヨーレートセンサ120は、例えば自車の中央位置に設けられており、自車の操舵量の変化速度に応じたヨーレート信号を制動制御ECU200に出力する。操舵角センサ130は、例えば車両のステアリングロッドに取り付けられており、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化に応じた操舵角信号を制動制御ECU200に出力する。車輪速センサ140は、例えば車両のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度に応じた、車輪速度信号を制動制御ECU200に出力する。
衝突抑制装置300は、自車に対する物標の衝突を抑制する装置であり、本実施形態では、制動装置310、及びシートベルトアクチュエータ320、を備えている。
制動装置310は、ブレーキアクチュエータによる制動を制御する。具体的には、制動制御ECU200から出力される減速信号に従って、ブレーキアクチュエータの制動力を制御する。ブレーキアクチュエータの制動力が制御されることにより自車の減速量が調整される。シートベルトアクチュエータ320は、制動制御ECU200から出力される起動信号に従って、シートベルトの巻取装置を作動させ、シートベルトを巻き取って緊張させる。
制動制御ECU200は、物体検出装置110から出力される物標の位置及び自車に対する物標の相対速度に従って、自車に対する物標の衝突の有無を判定する。そして、自車に対して物標が衝突する場合に、その衝突点を含む衝突範囲から、制動装置310による制動動作を実行させるか否か判定する。具体的には、制動制御ECU200は、仮想的に形成される3次元座標系において、自車の推定経路上での自車存在領域の推移を示す立体である自車立体を算出する。また、制動制御ECU200は、3次元座標系において、物体検出装置110から出力される物標の位置及び自車に対する物標の相対速度に基づく物標の推定経路上での物標の存在領域の推移を示す立体である物標立体を算出する。そして、自車立体と物標立体との交わりの有無から、自車と物標との衝突の有無を判定する。また、制動制御ECU200は、自車と物標とが衝突する衝突タイミングにおいて、自車存在領域の周囲を囲む衝突判断範囲に入っている物標存在領域の位置から、衝突範囲を算出する。そして、衝突範囲に応じて制動動作を実行するか否かの制御を行う。なお、物体検出装置110から出力される物標の位置及び自車に対する物標の相対速度が、「物標の情報」すなわち「物体の情報」に相当する。
制動制御ECU200は、自車に対して物標が衝突すると判定し、制動動作を実行させる場合には、衝突抑制装置300を作動させることにより、自車に対する衝突抑制制御を実行させる。例えば、制動制御ECU200は、制動装置310に出力する減速信号及びシートベルトアクチュエータ320に出力する起動信号を生成して出力することにより衝突抑制制御を実行させる。
上記制動制御ECU200による衝突判定及び制動制御の機能は、自車推移算出部210、物標推移算出部220、衝突判定部230、衝突範囲算出部240、自車停止後発進判定部245、及び制動判定部250等の各機能構成部によって実現される。また、自車推移算出部210は、自車経路推定部211、自車領域算出部212、及び自車情報算出部213によって実現される。物標推移算出部220は、物標経路推定部221、物標領域算出部222、及び物標情報算出部223によって実現される。制動制御ECU200は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等を備えるコンピュータにより構成されており、上記各機能構成部は、CPUがそれぞれの機能に対応するアプリケーション(プログラム)を実行することにより実現される。
自車推移算出部210は、以下で説明するように、仮想的に形成される3次元座標系において、自車の推定経路上での自車存在領域の推移を示す立体である自車立体を算出する。また、物標推移算出部220も、以下で説明するように、3次元座標系において、物体検出装置110から出力される物標の位置及び自車に対する物標の相対速度から求められる物標の推定経路上での物標の存在領域の推移を示す立体である物標立体を算出する。
自車推移算出部210において、自車経路推定部211は、自車の操舵量の変化速度及び自車速度から、自車の推定経路を示す自車推定経路PA1を算出する。本実施形態では、自車経路推定部211は、ヨーレートセンサ120からのヨーレート信号を用いて算出される自車のヨーレート、及び車輪速センサ140からの車輪速度信号を用いて算出される自車速度から、自車の推定カーブ半径を算出する。そして、算出した推定カーブ半径に沿って自車が走行する場合の経路を自車推定経路PA1として算出する。なお、自車の操舵量の変化速度を、操舵角センサ130からの操舵角信号から算出してもよい。
自車領域算出部212は、現在の自車進行方向での距離Y、及び車幅方向での距離Xで規定される2次元座標系のXY平面上に、自車推定経路PA1上での一定時間毎の自車が存在する領域を示す自車存在領域EA1を算出する。本実施形態では、自車領域算出部212は、現在時間T0(以下、「現在T0」とも呼ぶ)から推定終了時間TNまでの期間において、自車推定経路PA1上の各位置における自車存在領域EA1を算出する。
図2の上段には、現在T0すなわち経過時間Tが0での自車VMに対して算出される自車存在領域EA1が示されている。本実施形態では、自車存在領域EA1を、自車VMを上方から見た場合の自車VMの外周を全て含む矩形領域として定めている。自車領域算出部212は、自車の大きさを示す車両諸元に従って、自車存在領域EA1を形成する矩形領域を定めている。例えば、現在T0での自車存在領域EA1は、X軸とY軸との交点(0,0)が、自車VMの基準位置P0となるように定められている。また、自車VMの基準位置P0は、自車前方において車幅方向の中心となるように設定されている。
図2の下段には、図2の上段に示した現在T0の自車存在領域EA1に対して、現在T0から経過時間TがT1だけ将来の自車存在領域EA1が、比較された状態で示されている。なお、下段の図では、説明を容易にするため、現在T0での自車存在領域EA1と、現在T0から経過時間TがT2だけ将来(T2>T1)での自車存在領域EA1と、を破線により示している。
現在T0から経過時間T1だけ将来の自車存在領域EA1は、自車VMが自車推定経路PA1に沿って移動する場合における、現在T0の自車位置から経過時間T1だけ経過後での自車の存在領域を示している。例えば、自車領域算出部212は、現在T0の自車位置で算出される自車推定経路PA1、及び自車速度から、自車推定経路PA1上において、現在T0での自車VMの基準位置P0から経過時間Tn(nは、0以上、N以下の整数)だけ経過した後の通過位置を算出する。そして、各通過位置を基準位置Pnとする矩形領域を、現在T0から経過時間Tnだけ将来の自車存在領域EA1として算出する。本実施形態では、各経過時間Tnでの自車存在領域EA1の向きを、各基準位置Pnでの自車推定経路PA1の接線の向きに定めている。
自車情報算出部213は、自車進行方向での距離Y、車幅方向での距離X、及び現在T0からの経過時間Tにより規定される3次元座標系において、複数の自車存在領域EA1を補完することにより、自車存在領域EA1の推移を示す自車立体D1を算出する。図4に示す3次元座標系において、点(0,0,0)が、現在T0の自車の基準位置P0を示している。自車立体D1は、3次元座標系において、経過時間Tに伴う自車存在領域EA1の移動推移を示している。図4では、現在T0から、推定終了時間TNまでの予測時間幅において、自車立体D1が算出されている。
本実施形態では、自車情報算出部213は、算出した複数の自車存在領域EA1を3次元座標系の情報に変換する。そして、3次元座標系において、経過時間を定めるT軸が延びる方向で隣り合う自車存在領域EA1間の四隅を直線補完することにより、自車立体D1を算出する。
物標推移算出部220において、物標経路推定部221は、物体検出装置110により検出された物標の位置、及び自車に対する物標の相対速度から、物標の推定経路を示す物標推定経路PA2を算出する。例えば、物標経路推定部221は、物体検出装置110により検出された物標位置の変化から、物標の移動軌跡を算出し、この移動軌跡を物標推定経路PA2とする。なお、物標推定経路PA2が「物体の推定経路」に相当する。
物標領域算出部222は、現在の自車位置を基準として規定された2次元座標系のXY平面上において、物標推定経路PA2上での一定時間毎の物標が存在する領域を示す物標存在領域EA2を算出する。物標存在領域EA2は、物標が、物標推定経路PA2に沿って移動する場合の、一定時間毎の物標の存在領域を示す。物標存在領域EA2が「物体存在領域」に相当する。
図3の上段には、現在T0で物標TGに対して算出される物標存在領域EA2が示されている。現在T0でのXY平面上における物標存在領域EA2は、現在の自車位置において、物体検出装置110により検出されている物標TGの存在領域を示している。なお、本実施形態では、物標TGとして他の車両を例として示している。物標領域算出部222は、物標存在領域EA2を、物標TGを上方から見た場合の物標の外周を全て含む矩形領域として設定している。例えば、物標存在領域EA2を形成する矩形領域は、物体検出装置110により算出された物標の大きさに従って設定される。
図3の下段には、図3の上段に示した現在T0の物標存在領域EA2に対して、現在T0から経過時間T1だけ将来の物標存在領域EA2が、比較された状態で示されている。例えば、物標領域算出部222は、物標推定経路PA2と、自車を基準とする物標の相対速度とに従って、物標推定経路PA2上において、現在T0での物標TGの基準位置B0から経過時間Tnだけ経過した後の通過位置を算出する。そして、各通過位置を基準位置Bnとする矩形領域を、現在T0から経過時間Tnだけ将来の物標存在領域EA2として算出する。
物標情報算出部223は、現在T0の自車位置を基準として規定された3次元座標系において、複数の物標存在領域EA2を補完することにより、物標存在領域EA2の推移を示す立体である物標立体D2を算出する。図4に示す物標立体D2は、3次元座標系において、経過時間Tに伴う物標存在領域EA2の移動推移を示している。本実施形態では、物標情報算出部223は、算出した複数の物標存在領域EA2を3次元座標系の情報に変換する。そして、3次元座標系において、経過時間を定めるT軸の延びる方向で隣り合う物標存在領域EA2間の四隅を直線補完することにより、物標立体D2を算出する。なお、物標存在領域EA2が「物体存在領域」に相当し、物標立体D2が「物体立体」に相当する。
衝突判定部230は、自車立体D1と物標立体D2との交わりの有無から、自車に対する物標の衝突の有無を判定する。本実施形態では、衝突判定部230は、設定した経過時間Tの自車存在領域EA1を示す第1判定用領域DA1を、自車立体D1を用いて算出する。また、第1判定用領域DA1と同一経過時間Tでの物標存在領域EA2を示す第2判定用領域DA2を、物標立体D2を用いて算出する。そして、算出した同一経過時間Tでの第1,第2判定用領域DA1,DA2間に重複する領域が存在する場合に、自車立体D1と物標立体D2とが交わると判定する。
自車立体D1と物標立体D2とが交わる場合、図5に示すように、同一の経過時間TaでのXY平面において、第1判定用領域DA1と第2判定用領域DA2とに重複する領域CPAが存在している。そのため、衝突判定部230は、同一経過時間Tでの第1判定用領域DA1と第2判定用領域DA2とに重複する領域CPAが存在する場合に、自車と物標とが衝突すると判定する。
一方、自車立体D1と物標立体D2とが交わらない場合、全ての経過時間TでのXY平面において、第1判定用領域DA1と第2判定用領域DA2とに重複する領域CPAが存在しない。そのため、衝突判定部230は、同一経過時間Tでの第1判定用領域DA1と第2判定用領域DA2とに重複する領域CPAが存在しない場合に、自車と物標とが衝突しないと判定する。
本実施形態では、衝突判定部230は、現在T0から推定終了時間TNまでの間で、予め定められた経過時間間隔ΔT毎に、同一経過時間Tでの第1,第2判定用領域DA1,DA2を算出する。そして、算出した同一経過時間Tでの第1,第2判定用領域DA1,DA2を用いて重複する領域CPAの有無を判定する。
衝突範囲算出部240は、以下で説明するように、衝突が予測される経過時間Ta(以下、「衝突タイミングTa」とも呼ぶ)における自車存在領域EA1と物標存在領域EA2との位置関係から、自車VMに対して物標TGが衝突する衝突位置として、衝突点CPを含む衝突範囲CAを算出する。なお、衝突点CP及び衝突範囲CAは、自車における衝突点及び衝突範囲である。そして、制動判定部250は、後述するように、衝突範囲CAと、予め定めた自車における制動不要範囲NBAとの位置関係に応じて、自車の制動動作を実行するか否か制御する。
衝突範囲算出部240は、衝突タイミングTaでの自車存在領域EA1及び物標存在領域EA2の位置を特定するために、図6に示すように、自車進行方向での距離Y、及び車幅方向での距離Xにより規定される二次元座標系のXY平面上の座標を用いる。図6に示すXY平面は、衝突タイミングTaでの自車VMの基準位置PaがX軸とY軸との交点(0,0)となるように規定されたものであり、衝突タイミングTaでの自車存在領域EA1および物標存在領域EA2は、規定されたXY平面における位置の座標で表すことができる。自車存在領域EA1の位置は、規定されたXY平面上における、左前点Vfl、右前点Vfr、左後点Vrl、及び右後点Vrrの4隅の点の座標で表すことができる。物標存在領域EA2も、同様に、規定されたXY平面上における、左前点Tfl、右前点Tfr、左後点Trl、及び右後点Trrの4隅の点の座標で表すことができる。なお、現在T0において規定されたXY平面(図2参照)を用いて、衝突タイミングTaにおける自車存在領域EA1及び物標存在領域EA2の位置を表すようにしても良い。但し、衝突タイミングTaにおける自車VMの基準位置PaをX軸とY軸との交点(0,0)とする方が、衝突範囲の算出のために扱うデータ量を小さすることができるので、衝突範囲算出部240の演算処理の負荷を低減することができる。
衝突範囲CAは、衝突タイミングTaにおける自車存在領域EA1と物標存在領域EA2との位置関係、具体的には、例えば図7~図10に示すように、自車VMの自車存在領域EA1の外周に設定された衝突判断範囲CJと物標存在領域EA2との位置関係によって規定される。
自車存在領域EA1の外周に設定される衝突判断範囲CJは、自車存在領域EA1の左側の衝突判断範囲CJl、右側の衝突判断範囲CJr、前側の衝突判断範囲CJf及び後側の衝突判断範囲CJrを有している。自車VMの左側の衝突判断範囲CJlは、自車存在領域EA1の左側の2隅の点Vfl,VrlをX方向で内側に向けて予め設定のマージンだけずらした2点の座標と、2隅の点Vfl,VrlをX方向で外側に向けて予め設定の幅だけずらした2点の座標と、で特定される矩形領域に設定される。自車VMの右側の衝突判断範囲CJrも、左側の衝突判断範囲CJlと同様に、自車存在領域EA1の右側の2隅の点Vfr,Vrrを基準とする4点の座標で特定される矩形領域に設定される。自車VMの前側の衝突判断範囲CJfは、自車存在領域EA1の前側の2隅の点Vfl,VfrをY方向で内側に向けて予め設定のマージンだけずらした2点の座標と、2隅の点Vfl,VfrをY方向で外側に向けて予め設定の幅だけずらした2点の座標と、で特定される矩形領域に設定される。自車VMの後側の衝突判断範囲CJbも、前側の衝突判断範囲CJfと同様に、自車存在領域EA1の後側の2隅の点Vrl,Vrrを基準とする4点の座標で特定される矩形領域に設定される。
図7に示すように、自車VMの左側面に物標TGが衝突する場合には、左側の衝突判断範囲CJl内に入っている物標存在領域EA2の端点である2つの物標端点CJPr,CJPlのY方向に沿った間隔が衝突範囲CAとされる。一方の物標端点CJPrは、自車VM側から向かって右側の端点であり、CJPlは向かって左側の端点である。2つの物標端点CJPr,CJPlのY方向に沿った間隔は、衝突判断範囲CJlに入っている物標存在領域EA2の2つの物標端点CJPr,CJPlを、衝突判断範囲CJlの外側の辺に平行な自車存在領域EA1の辺に射影した2つの位置CAr,CAlの間隔で表される範囲に相当する。
なお、図示は省略するが、自車VMの右側面に物標TGが衝突する場合にも、同様に、右側の衝突判断範囲CJr内に入っている物標存在領域EA2の2つの物標端点CJPr,CJPlのY方向に沿った間隔が衝突範囲CAとされる。
また、図8に示すように、自車VMの前側面に物標TGが衝突する場合には、前側の衝突判断範囲CJf内に入っている物標存在領域EA2の端点である2つの物標端点CJPr,CJPlのX方向に沿った間隔が衝突範囲CAとされる。2つの物標端点CJPr,CJPlのX方向に沿った間隔は、衝突判断範囲CJfに入っている物標存在領域EA2の2つの物標端点CJPr,CJPlを、衝突判断範囲CJfの外側の辺に平行な自車存在領域EA1の辺に射影した2つの位置CAr,CAlの間隔で表される範囲に相当する。
なお、図示は省略するが、自車VMの後側面に物標TGが衝突する場合にも、同様に、後側の衝突判断範囲CJb内に入っている物標存在領域EA2の2つの物標端点CJPr,CJPlのX方向に沿った間隔が衝突範囲CAとされる。
また、図9に示すように、自車VMの左前隅の点Vflに物標TGが衝突するような場合には、物標存在領域EA2が左側の衝突判断範囲CJl内及び前側の衝突判断範囲CJf内の両方にまたがって入る可能性がある。この場合には、左側の衝突判断範囲CJl内に入っている物標存在領域EA2の衝突点CPから最も遠い物標端点CJPlから、前側の衝突判断範囲CJf内に入っている物標存在領域EA2の衝突点CPから最も遠い物標端点CJPrまでの領域が、衝突範囲CAとされる。具体的には、一方の物標端点CJPlから左側の衝突判断範囲CJlの上端までのY方向に沿った間隔、及び、前側の衝突判断範囲CJfの左端から他方の物標端点CJPrまでのX方向に沿った間隔の両方が、衝突範囲CAとされる。なお、一方の物標端点CJPlから左側の衝突判断範囲CJlの上端までのY方向に沿った間隔は、左側の衝突判断範囲CJlに入っている物標端点CJPl及び衝突判断範囲CJlの外側の辺の上端点を、衝突判断範囲CJlの外側の辺に平行な自車存在領域EA1の辺に射影した位置CAl,Vflの間隔で表される範囲に相当する。また、前側の衝突判断範囲CJfの左端から他方の物標端点CJPrまでのX方向に沿った間隔は、前側の衝突判断範囲CJfに入っている物標端点CJPr及び衝突判断範囲CJfの外側の辺の左端点を、衝突判断範囲CJfの外側の辺に平行な自車存在領域EA1の辺に射影した位置CAr,Vflの間隔で表される範囲に相当する。
なお、図示は省略するが、自車VMの他隅に物標TGが衝突し、物標存在領域EA2が2つの衝突判断範囲の両方にまたがって入るような場合にも、同様に、一方の衝突判断範囲内に入っている物標存在領域EA2の衝突点CPから最も遠い物標端点から、他方の衝突判断範囲内に入っている物標存在領域EA2の衝突点CPから最も遠い物標端点までの範囲が衝突範囲CAとされる。
また、図7~図9は、自車VMに物標TGが衝突する場合における衝突範囲CAを例に示したが、図10に示すように、物標TGに自車VMが衝突する場合における衝突範囲CAも同様に、自車の衝突判断範囲内に入っている物標存在領域EA2の2つの物標端点CJPr,CJPlの間隔で表される範囲を衝突範囲CAとすることができる。図10は、物標TGの右側面に自車VMが衝突する場合の衝突範囲CAの例を示している。この場合、前側の衝突判断範囲CJfの左端から右端に亘って物標存在領域EA2が入っているので、衝突判断範囲CJfの外側の辺の両端の点が、衝突判断範囲CJf内に入っている物標存在領域EA2の2つの物標端点CJPr,CJPlとなる。そして、2つの物標端点CJPr,CJPlのX方向に沿った間隔は、衝突判断範囲CJlに入っている物標存在領域EA2の2つの物標端点CJPr,CJPlを、衝突判断範囲CJfの外側の辺に平行な自車存在領域EA1の辺に射影した2つの位置CAr,CAlの間隔で表される範囲に相当する。なお、2つの位置CAr,CAlの間隔で表される範囲は、衝突判断範囲CJfのX方向に沿った全体の範囲に相当する。
なお、図示は省略するが、物標TGの他の面に自車VMが衝突する場合の衝突範囲CAも、同様に、自車の衝突判断範囲に入っている物標存在領域EA2の一方の物標端点CJPlから他方のCJPrまでの範囲が衝突範囲CAとされる。
ここで、上記のように、算出される衝突範囲CAの端の位置CAl,CArは、XY平面における座標で表されており、自車VMの左側の衝突判断範囲CJl及び右側の衝突判断範囲CJrにおいては、Y方向の座標値が変化し、前側の衝突判断範囲CJf及び後側の衝突判断範囲CJbにおいては、X方向の座標値が変化するものである。制動判定部250が、このままのXY平面における座標で表された衝突範囲CAを用いて、後述する自車の制動動作に関する判定を行う場合、X方向及びY方向の2次元方向の変化を考慮する必要があり、処理が複雑である。そこで、衝突範囲算出部240は、2次元座標系で表される衝突範囲CAの端の位置CAl,CArを、1次元座標系の座標に変換する。
1次元座標系としては、衝突範囲CAの位置CAl,CArに対応する2つの物標端点CJPl,CJPr(図7~図10参照)が射影される自車存在領域EA1の外周の辺を展開する座標系が用いられる。本実施形態では、図11に示すように、自車存在領域EA1の前端辺Sf、左端辺Sl、後端辺Sb及び右端辺Srのそれぞれの長さを「1(100%)」とし、前端辺Sfの中心位置を原点「0」、後端辺Sbの中心位置を半時計回りで「-2(-200%)」、時計回りで「2(200%)」とする座標系とする。但し、これに限定されるものではなく、種々の設定が可能である。
例えば、図9に示した衝突状態において、左前点Vflと左後点VrlとのY座標の差に対する、左前点Vflと衝突範囲CAの左端位置CAlとのY座標の差が、10%であるとする。この場合、図11に示すように、左端位置CAlの座標は、-0.6に変換される。また、図9に示した衝突状態において、左前点Vflと右前点VfrとのX座標の差に対する、左前点Vflと衝突範囲CAの右端位置CArとのX座標の差が、20%であるとする。この場合、図11に示すように、右端位置CArの座標は、-0.3に変換される。
制動判定部250(実行判断部)は、図12に示すように、衝突範囲算出部240で算出された自車における衝突範囲CAと、自車における制動不要範囲NBAとの位置関係に応じて、制動装置310による自車の制動動作を実行するか否か判定し、自車の制動動作を制御する。自車における制動不要範囲NBAは、自車存在領域EA1に対して予め定められる範囲であり、制動不要範囲NBAを除く範囲は、制動可能範囲BAとして予め定められている。制動不要範囲NBAは、自車が減速するとかえって自車内に乗員がいる範囲に衝突する可能性が高まるため、ドライバーの加速意思に任せて、自動的な制動動作を行わない方が好ましいと考えられる領域、例えば、車両後方のトランク位置に対応する領域に設定されている。制動可能範囲BAは、衝突する可能性を低減するために自車を減速させるほうが好ましい領域である。
図12の左側欄に示すように、制動判定部250は、衝突範囲CAが制動不要範囲NBAのみに含まれている場合には、物標TGが自車VMの制動不要範囲NBAのみに衝突するので、制動装置310による制動を非作動として、自車の制動動作を実行しない。
また、図12の右側欄に示すように、制動判定部250は、衝突範囲CAが制動可能範囲BAのみに含まれている場合には、物標TGが自車VMの制動可能範囲BAのみに衝突するので、制動装置310による制動動作を作動させて、自車の制動動作を実行する。
また、図12の中央欄に示すように、制動判定部250は、衝突範囲CAが制動不要範囲NBAと制動可能範囲BAの両方に含まれている場合には、物標TGが制動不要範囲NBAだけでなく制動可能範囲BAにも衝突するので、制動動作の作動を優先させて制動装置310による制動動作を作動させて、自車の制動動作を実行する。
以上が自車の制動動作を実行するか否か判断する基本的な考え方である。さらに、本実施形態では、自車の通常走行時と自車停止後の発進時とで、自車の制動動作を実行するか否かの判断方法を変更している。
まず、自車の通常走行時において、制動制御ECU200が自車の制動動作を実行するか否かを判断する方法について説明する。自車の通常走行時は、自車が略定速で走行している時、自車が走行している状態から加速する時、自車が走行している状態から減速する時等を含む。なお、自車の通常走行時は、後述する自車停止後の発進時でない場合に相当する。
自車の通常走行時において、衝突範囲算出部240は、自車における衝突範囲CAを算出した後、算出した衝突範囲CAを予め定めた記憶領域に記憶する。続いて、蓄積した一定数(複数)の衝突範囲CAの平均値CAm及び標準偏差σを算出する。具体的には、衝突範囲CAの左端位置CAlの平均値CAlm及び標準偏差σlと、右端位置CArの平均値CArm及び標準偏差σrと、を算出する。
自車の通常走行時において、制動判定部250は、平均値CAmに標準偏差σを加味した衝突範囲CAdが制動不要範囲NBAのみに含まれるか否か判定する。衝突範囲CAd(第1衝突範囲)は、平均値CAmと標準偏差σから算出される分布を有する範囲であり、例えば、衝突範囲CAの平均値CAmに±3σの分布を加算した範囲である。具体的には、衝突範囲CAdは、図13に示すように、左端位置CAlの平均値CAlmよりも分布3σlだけ外側に広げた左端位置(CAlm-3σl)と、右端位置CArの平均値CArmよりも分布3σrだけ外側に広げた右端位置(CArm+3σr)との間隔である。
そして、衝突範囲CAdが、制動不要範囲NBAにのみ含まれる場合には、制動判定部250は、制動装置310による自車の制動動作を非作動とする。これに対して、衝突範囲CAdが制動不要範囲NBAにのみ含まれるものでない場合、すなわち、制動可能範囲BAのみに含まれる場合(図13参照)、及び、制動可能範囲BA及び制動不要範囲NBAの両方に含まれる場合(図14参照)には、制動判定部250は、制動装置310による自車の制動動作を実行する。なお、衝突範囲CAdが制動可能範囲BAのみに含まれる場合と、衝突範囲CAdが制動可能範囲BA及び制動不要範囲NBAの両方に含まれる場合とは、衝突範囲CAdが制動可能範囲BAに入っている場合に相当する。
このように自車の通常走行時には、分布を有する衝突範囲CAdが制動不要範囲NBAのみに含まれており、物標TGが自車VMの制動不要範囲NBAのみに衝突することが予測される場合に、自車VMの制動動作を非作動として、自車VMの制動動作を実行しないようにしている。これにより、衝突範囲の予測精度を向上させることができ、制動動作を実行するか否かを適切に判断することができる。
図15に示すように、道路の交差点において、自車VMが前方へ直進しており、物標TGが自車の左方から右方へ直進しているとする。この場合、自車VMと物標TGとが衝突するまでに、ある程度の時間を確保することができる。このため、複数の衝突範囲CAの平均値CAm及び標準偏差σを精度よく算出するために十分な時系列データが存在し、分布を有する衝突範囲CAdの算出精度を向上させることができる。
また、通常走行時は、加減速が緩やかであることが多い。このため、複数の衝突範囲CAの平均値CAmが安定しやすく、標準偏差σが小さくなりやすい。したがって、複数の衝突範囲CAの平均値CAmに±3σの分布を加算した範囲である分布を有する衝突範囲CAdは、図16に示すように時間が経過しても変動が小さい。
これに対して、自車停止後の発進時には、以下の問題が生じる点に本願発明者は着目した。図17に示すように、道路の交差点において、自車VMが交差点の直前で停止した後に発進し、物標TGが交差点に近い位置で自車の左方から右方へ直進しているとする。この場合、自車停止後の出会い頭衝突が起こりやすく、自車が加速を開始してからすぐに衝突が生じるため、自車が発進してから自車VMと物標TGとが衝突するまでの時間が短くなる。したがって、複数の衝突範囲CAの平均値CAm及び標準偏差σを精度よく算出するために十分な時系列データが存在せず、分布を有する衝突範囲CAdの算出精度が低下する。
また、自車停止後の発進時は、加速度が大きく、自車の速度が急激に上昇することが多い。このため、複数の衝突範囲CAの平均値CAmが変化しやすく、標準偏差σが大きくなりやすい。したがって、複数の衝突範囲CAの平均値CAmに±3σの分布を加算した範囲である分布を有する衝突範囲CAdは、図18に示すように時間が経過すると大きく変動する。さらに、複数の衝突範囲CAの平均値CAmの変動は、衝突範囲CAの変動よりも遅れることとなる。このため、分布を有する衝突範囲CAdが、制動可能範囲BAに入っている場合に自車の制動動作を実行し、衝突範囲CAdが制動不要範囲NBAにのみ含まれる場合(制動可能範囲BAに入っていない場合)に自車の制動動作を非作動とすると、制動動作が不要に実行されおそれがある。また、物標TGが自車VMに衝突する前に停止した場合も、衝突範囲CAdの応答遅れにより、制動動作が不要に実行されおそれがある。
そこで、自車停止後の発進時には、衝突範囲CA(第2衝突範囲)が制動不要範囲NBAにのみ含まれる場合に、制動判定部250は、制動装置310による自車の制動動作を非作動とする。これに対して、衝突範囲CAが制動不要範囲NBAにのみ含まれるものでない場合、すなわち、制動可能範囲BAのみに含まれる場合、及び、制動可能範囲BA及び制動不要範囲NBAの両方に含まれる場合には、制動判定部250は、制動装置310による自車の制動動作を実行する。
さらに、図18に示すように、自車停止後の発進時には、衝突範囲が自車の後端側へ変動しやすい。この場合、制動可能範囲BAが自車VMの前端から後端の方向に広く設定されていると、衝突範囲が制動可能範囲BAに入って自車VMの制動動作が実行され、かえって自車VMと物標TGとが衝突しやすくなるおそれがある。このため、自車の前後方向において、自車停止後の発進時における制動可能範囲BA(以下、「第2制動可能範囲BA2」という)を、自車の通常走行時における制動可能範囲BA(以下、「第1制動可能範囲BA1」という)よりも狭くする。具体的には、自車停止後の発進時における第2制動可能範囲BA2が自車VMの前端から後端の方向に設定された範囲を、自車VMの通常走行時における第1制動可能範囲BA1が自車VMの前端から後端の方向に設定された範囲よりも狭くする。すなわち、自車存在領域EA1(自車VM)の後部に設定される制動不要範囲NBAについて、自車停止後の発進時における制動不要範囲NBA(以下、「第2制動不要範囲NBA2」という)、を、自車VMの通常走行時における制動不要範囲NBA(以下、「第1制動不要範囲NBA1」という)よりも広くする。
以上説明した制動制御ECU200による衝突判定及び制動制御は、図19に示す手順に従って実施される。なお、この処理は、制動制御ECU200に対して処理の実行が指示された後、処理の終了が指示されるまで継続して実施される。
ステップS110では、前方の物標TGを物体検出装置110で検出する。ステップS120では、自車推移算出部210により、自車VMの現在位置を基準に規定される3次元座標系において、現在から一定時間経過後までの自車推定経路PA1上での自車存在領域EA1の推移を示す自車立体D1が算出される(図2,図4参照)。また、ステップS120では、物標推移算出部220により、上記3次元座標系において、物体検出装置110から出力される物標TGの位置及び自車VMに対する物標TGの相対速度から求められる物標推定経路PA2上での物標存在領域EA2の推移を示す物標立体D2が算出される(図3,図4参照)。なお、自車立体D1及び物標立体D2の算出の具体的な手順としては、例えば、特開2020-8288号公報に記載の手順を利用すれば良い。
ステップS130では、衝突判定部230により、ステップS120で算出した自車立体D1と物標立体D2との交わりの有無に応じて、自車VMに対して物標TGが衝突するか否か判定される。具体的には、図5を用いて説明したように、同一経過時間Tでの第1判定用領域DA1と、第2判定用領域DA2とに重なる領域CPAが存在する場合、自車立体D1と物標立体D2とに交わりがあると判定され、自車VMに対して物標TGが衝突すると判定される。自車VMに対して物標TGが衝突すると判定した場合、ステップS140に進み、自車立体D1と物標立体D2とに交わりがなく、自車VMに対して物標TGが衝突しないと判定された場合、処置がステップS110に戻る。
ステップS140では、衝突範囲算出部240により、衝突タイミングTaでの自車VMと物標TGの位置、具体的には、自車存在領域EA1と物標存在領域EA2の位置が算出され(図7参照)、ステップS150では、衝突範囲算出部240により、自車における衝突範囲CAが算出される(図7~図11参照)。
ステップS160では、自車停止後発進判定部245(発進判定部)により、自車VMが停止後発進中であるか否か判定される。具体的には、自車停止後発進判定部245は、自車VMの速度が0以下の状態から0よりも大きくなり、且つ自車VMの速度が0よりも大きくなってからの経過時間が所定時間よりも短く、且つ自車VMの速度が0よりも高い所定速度よりも低く、且つ自車VMに物標TGが近付いていることを条件として、自車VMが停止後発進中であると判定する。一方、自車停止後発進判定部245は、上記の条件要素の少なくとも1つが成立しない場合に、自車VMが停止後発進中でないと判定する。自車VMが停止後発進中でないと判定した場合、ステップS164に進み、自車VMが停止後発進中であると判定した場合、ステップS162に進む。
ステップS164では、衝突範囲算出部240により、蓄積された一定数(複数)の衝突範囲CAの平均値CAm及び標準偏差σが算出される。具体的には、衝突範囲CAの左端位置CAlの平均値CAlm及び標準偏差σlと、右端位置CArの平均値CArm及び標準偏差σrと、が算出される。
ステップS166では、制動判定部250により、平均値CAmに標準偏差σを加味した衝突範囲CAdが第1制動不要範囲NBA1のみに含まれるか否か判定される。衝突範囲CAdは、平均値CAmと標準偏差σから算出される分布を有する範囲であり、例えば、衝突範囲CAの平均値CAmに±3σの分布を加算した範囲である。具体的には、衝突範囲CAdは、図13に示すように、左端位置CAlの平均値CAlmよりも分布3σlだけ外側に広げた左端位置(CAlm-3σl)と、右端位置CArの平均値CArmよりも分布3σrだけ外側に広げた右端位置(CArm+3σr)との間隔である。
そして、衝突範囲CAdが、第1制動不要範囲NBA1にのみ含まれる場合には、制動装置310による自車の制動動作が非作動とされ、処理がステップS110に戻る。これに対して、衝突範囲CAdが第1制動不要範囲NBA1にのみ含まれるものでない場合、すなわち、第1制動可能範囲BA1のみに含まれる場合、及び、第1制動可能範囲BA1及び第1制動不要範囲NBA1の両方に含まれる場合には、ステップS170において、制動装置310による自車の制動動作が実行される。このように、自車VMが停止後発進中でないと判定され、且つ衝突範囲CAdが第1制動可能範囲BA1に入っている場合に、自車VMの制動動作を実行すると判断する。
一方、ステップS162では、制動判定部250により、衝突範囲CAが第2制動不要範囲NBA2のみに含まれるか否か判定される。そして、衝突範囲CAが、第2制動不要範囲NBA2にのみ含まれる場合には、制動装置310による自車の制動動作が非作動とされ、処理がステップS110に戻る。これに対して、衝突範囲CAが第2制動不要範囲NBA2にのみ含まれるものでない場合、すなわち、第2制動可能範囲BA2のみに含まれる場合、及び、第2制動可能範囲BA2及び第2制動不要範囲NBA2の両方に含まれる場合には、ステップS170において、制動装置310による自車の制動動作が実行される。このように、自車VMが停止後発進中であると判定され、且つ衝突範囲CAが第2制動可能範囲BA2に入っている場合に、自車VMの制動動作を実行すると判断する。
そして、処理の終了の指示があるまで、ステップS110に戻って図19の処理を繰りし、処理の終了の指示があった場合には、図19の処理を終了する。
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
・自車停止後発進判定部245は、自車VMが停止後発進中であるか否か判定する。そして、制動判定部250は、自車停止後発進判定部245により停止後発進中でないと判定された場合に、衝突範囲算出部240により算出された複数の衝突範囲CAの平均値CAm及び標準偏差σに基づき算出された衝突範囲CAdと、自車VMに設定された第1制動可能範囲BA1との位置関係に基づいて自車VMの制動動作を実行するか否か判断する。このため、自車VMが停止後発進中でないと判定され、複数の衝突範囲CAの平均値CAm及び標準偏差σを算出するために十分な時系列データが得られる場合は、衝突範囲CAdの予測精度を向上させることができる。そして、衝突範囲CAdと、自車VMに設定された第1制動可能範囲BA1との位置関係に基づいて、自車VMの制動動作を実行するか否かを適切に判断することができる。
・制動判定部250は、自車停止後発進判定部245により停止後発進中であると判定された場合に、衝突範囲算出部240により現在算出された衝突範囲CAと第2制動可能範囲BA2との位置関係に基づいて自車VMの制動動作を実行するか否か判断する。このため、自車VMが停止後発進中であると判定され、複数の衝突範囲CAの平均値CAm及び標準偏差σを算出するために十分な時系列データが得られない場合は、衝突範囲CAdを用いず、現在算出された衝突範囲CAを用いることができる。したがって、自車停止後の出会い頭衝突時において、衝突範囲の予測精度が低下することを抑制することができる。そして、衝突範囲CAと第2制動可能範囲BA2との位置関係に基づいて、自車VMの制動動作を実行するか否かを適切に判断することができる。
・制動判定部250は、自車停止後発進判定部245により停止後発進中でないと判定された場合に、制動可能範囲BAとして第1制動可能範囲BA1を設定し、自車停止後発進判定部245により停止後発進中であると判定された場合に、制動可能範囲BAとして第1制動可能範囲BA1と異なる第2制動可能範囲BA2を設定する。こうした構成によれば、停止後発進中であると判定された場合には、停止後発進中でないと判定された場合の第1制動可能範囲BA1と異なる第2制動可能範囲BA2に基づいて、自車VMの制動動作を実行するか否か適切に判断することができる。
・第2制動可能範囲BA2が自車VMの前端から後端の方向に設定された範囲は、第1制動可能範囲BA1が自車VMの前端から後端の方向に設定された範囲よりも狭い。このため、停止後発進中であると判定された場合は、自車VMの前端から後端の方向に設定された範囲が第1制動可能範囲BA1よりも狭い第2制動可能範囲BA2を自車VMに設定することができる。したがって、自車停止後の出会い頭衝突時において、自車VMの制動動作が不要に実行されることを抑制することができる。
・自車停止後発進判定部245は、自車VMの速度が0以下の状態から0よりも大きくなり、且つ自車VMの速度が0よりも大きくなってからの経過時間が所定時間よりも短く、且つ自車VMの速度が0よりも高い所定速度よりも低く、且つ自車VMに物体が近付いていることを条件として、自車VMが停止後発進中であると判定する。こうした構成によれば、自車VMの速度が0よりも大きくなってからの経過時間が所定時間よりも長くなった場合は、自車VMが停止後発進中でないと判定することができる。また、自車VMの速度が0よりも高い所定速度よりも高くなった場合は、自車VMが停止後発進中でないと判定することができる。また、自車VMに物体が近付いていない場合は、自車VMが停止後発進中でないと判定することができる。したがって、自車VMが停止後発進中であること、すなわち自車停止後の出会い頭衝突が起こり得る状況を適切に判定することができる。
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
・自車停止後発進判定部245による自車VMが停止後発進中であるか否かの判定において、上記条件要素の一部を省略したり、新たな条件要素を加えたりしてもよい。例えば、自車VMが停止後発進中であると判定してからの経過時間が所定時間を超えていないことを、条件要素に加えてもよい。また、自車VMの加速度が所定加速度よりも大きいことを、条件要素に加えてもよい。
・制動判定部250は、自車VMが停止後発進中でないと判定され、且つ衝突範囲CAdが第1制動可能範囲BA1のみに入っている場合に、自車VMの制動動作を実行すると判断してもよい。また、制動判定部250は、自車VMが停止後発進中であると判定され、且つ衝突範囲CAが第2制動可能範囲BA2のみに入っている場合に、自車VMの制動動作を実行すると判断してもよい。
・制動判定部250は、自車VMが停止後発進中でないと判定され、且つ衝突範囲CAが第1制動可能範囲BA1に入っている場合にも、自車VMの制動動作を実行すると判断してもよい。すなわち、制動判定部250は、自車VMが停止後発進中でないと判定された場合に、衝突範囲CAd又は衝突範囲CAが第1制動可能範囲BA1に入っている場合に、自車VMの制動動作を実行すると判断してもよい。
・制動判定部250は、自車VMが停止後発進中であると判定され、且つ衝突範囲CAが第1制動可能範囲BA1に入っている場合に、自車VMの制動動作を実行すると判断してもよい。すなわち、自車VMが停止後発進中であると判定された場合と、自車VMが停止後発進中でないと判定された場合とで、制動可能範囲BAを同一にし、衝突範囲を異ならせてもよい。
・制動判定部250は、自車VMが停止後発進中であると判定され、且つ衝突範囲CAdが第2制動可能範囲BA2に入っている場合に、自車VMの制動動作を実行すると判断してもよい。すなわち、自車VMが停止後発進中であると判定された場合と、自車VMが停止後発進中でないと判定された場合とで、衝突範囲を同一にし、制動可能範囲BAを異ならせてもよい。
・上記実施形態では、物体検出装置110を、ミリ波レーダセンサ111と、レーダECU112とで構成される装置としたが、これに限定されるものではなく、撮像画像を用いて物標の位置を検出する画像センサや、レーザ光を用いて物標の位置を検出するレーザセンサを備える装置としても良い。また、自車が、自車周囲を走行する他車との間で車車間通信を実施可能な場合に、他車が備える物体検出装置により検出された物体の位置を、自車が車車間通信により取得するものであってもよい。また、これらの各種装置を組み合わせた装置としても良い。
・上記実施形態では、物標TGとして車両を例として説明したが、これに限定されるものではなく、車両、自転車、自動二輪車、歩行者、動物、構造物等の自車に対して衝突する可能性のある全ての物体を対象としても良い。
・上記実施形態では、物標TGの物標存在領域EA2を、物標TGを上方から見た場合の物標の外周を全て含む矩形領域として設定しているが、これに限定されるものではなく、物標の外周を全て含むように設定する任意の多角形としても良い。
・上記実施形態では、衝突範囲CAと制動不要範囲NBAとの位置関係を2次元座標系から変換した1次元座標系を用いて判定するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、2次元座標系を用いて判定するようにしても良い。2次元座標系を用いる場合は、処理が複雑となるが、同様に、衝突範囲CA,CAdと制動不要範囲NBAとの位置関係を判定することができる。
・上記実施形態では、3次元座標系において広がりを持った自車立体D1と物標立体D2との交わりの有無から衝突の有無を判定するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、2次元座標系において自車の線状の自車推定経路PA1と物標の線状の物標推定経路PA2との交わりの有無から衝突有無を判定するようにしても良い。この場合においても、衝突の判定精度は実施形態の場合に比べて低くなるものの、衝突有無を判定することは可能である。
・上記実施形態では、衝突位置として衝突範囲CAを用いて、衝突範囲CAと制動不要範囲NBAとの位置関係に応じて、自車の制動動作を実行するか否か制御するものとして説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、衝突位置として衝突点CPを用いて、衝突点CPと制動不要範囲NBAとの位置関係に応じて、自車の制動動作を実行するか否か制御するものとしても良い。すなわち、衝突範囲CAが衝突点CPのみで構成されていてもよい。
・上記実施形態においては、制動制御装置は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等を備えるコンピュータにより構成されて制動制御ECU200を例として、CPUがそれぞれの機能に対応するアプリケーションを実行することによりソフトウェア的に各機能が実現されるものとして説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、ディスクリート回路や集積回路によってハードウェア的に実現されても良い。すなわち、上記各実施形態における制御装置およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
以上、実施形態、変形例に基づき本開示について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定するものではない。本開示は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本開示にはその等価物が含まれる。たとえば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。