JP7825802B2 - ステンレス熱延鋼材及びその製造方法 - Google Patents
ステンレス熱延鋼材及びその製造方法Info
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Description
塩乾湿繰り返し試験において、前記ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30未満の場合は前記ステンレス熱延鋼材の設置角度(表面の傾斜角)を鉛直方向に対して20°、前記ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30以上の場合は前記ステンレス熱延鋼材の設置角度(表面の傾斜角)を鉛直方向に対して水平(0°)とし、5%のNaCl水溶液の噴霧(35℃で15分)、乾燥(相対湿度30%、温度60℃で1時間)及び湿潤(相対湿度95%、温度50℃で3時間)を1サイクルとして10サイクル行った後の発銹面積率が1%以下であり、前記耐孔食指数(PREN)は以下の式(2)によって算出される、ステンレス熱延鋼材である。
耐孔食指数(PREN)=Cr+3.3Mo+16N ・・・(2)
式(2)中、各元素記号は、各元素記号の含有量(質量%)を表す。
ステンレス鋼片を熱間圧延する熱延工程と、
前記熱間圧延された鋼材を焼鈍する焼鈍工程と、
前記焼鈍された鋼材の表面に形成されたスケールを除去するデスケール工程と
を含み、
前記デスケール工程は、パルスレーザ光の照射を行うレーザデスケール工程と、前記レーザデスケール工程後に研削を行う研削工程とを含み、
前記パルスレーザ光は、フルエンスをF[J/cm2]、パルス幅をτ[ns](ただし、τは10~1000nsである)とした場合に、以下の式(1)を満たす方法である。
5.0×(τ/100)1/2≦F≦13.0×(τ/100)1/2 ・・・(1)
なお、本明細書において成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。また、「熱延鋼材」とは、熱間圧延(熱延)及び焼鈍が行われた鋼材のことを意味し、材形や板厚は特に限定されない。材形の例としては、板状(帯状を含む)、棒状、管状などが挙げられる。また、断面形状がT形、I形などの各種形鋼であってもよい。
なお、Sqは、小さいほど表面欠陥が少なくなるため、その下限値は特に限定されないが、製造コストの観点から、その下限値は例えば1.0μmである。
Sqは、ISO 25178-2:2012に準拠して測定することができる。
なお、Sdrは、小さいほど表面欠陥が少なくなるため、その下限値は特に限定されないが、製造コストの観点から、その下限値は例えば10.0%である。
Sdrは、ISO 25178-2:2012に準拠して測定することができる。
また、ステンレス熱延鋼材の耐食性は、ステンレス熱延鋼材の表面性状以外にステンレス熱延鋼材の組成とも関係する。そのため、複合サイクル試験は、ステンレス熱延鋼材の組成を考慮して行う。具体的には、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN:Pitting Resistance Equivalent Number)が30未満の場合は、JIS H8502:1999に規定する中性塩水噴霧サイクル試験を参考に試験条件を設定した。このとき、複合サイクル試験機に設置するステンレス熱延鋼材の設置角度(ステンレス熱延鋼材の表面の傾斜角)は、試験片の試験面の角度を鉛直方向に対して20°(試験片の試験面を垂直方向から20°傾斜させて保持するよう)に設定した。また、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数が30以上の場合は、複合サイクル試験機に設置するステンレス熱延鋼材の設置角度として、試験片の試験面を水平(0°)に設置し、その他の条件はステンレス熱延鋼材の耐孔食指数が30未満の場合と同様とした。この耐孔食指数が30以上の場合の設置角度は、JIS G0597:2017に規定される方法を参考にした。また、耐孔食指数は、以下の式(2)によって算出することができる。
耐孔食指数(PREN)=Cr+3.3Mo+16N ・・・(2)
式(2)中、各元素記号は、各元素記号の含有量(%)を表す。
なお、ΔHVの下限値は、特に限定されないが、例えば20である。
表面及び厚み方向中心部のビッカース硬さは、JIS Z2244:2009に準拠して測定することができる。また、厚み方向中心部のビッカース硬さを測定するための試験片は、ステンレス熱延鋼材を厚み方向に切断したものを用いればよい。
Gs(45°)は、JIS Z8741:1997に準拠して測定することができる。
典型的なオーステナイト系ステンレス熱延鋼材は、C:0.001~0.100%、Si:5.00%以下、Mn:3.00%以下、Cr:15.0~26.0%、Ni:6.0~26.0%、Mo:0~8.0%、N:0.350%以下、Cu:0~4.0%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。オーステナイト系ステンレス熱延鋼材は、好ましくは、C:0.005~0.080%、Si:4.00%以下、Mn:2.00%以下、Cr:16.0~23.0%、Ni:6.5~22.0%、Mo:0.1~7.0%、N:0.250%以下、Cu:0~2.0%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。
また、典型的なフェライト系ステンレス熱延鋼材は、C:0.001~0.100%、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、Cr:11.0~30.0%、Ni:0~2.0%未満、Mo:0~2.5%、N:0.050%以下、Cu:0~0.6%、Nb:0~1.0%、Ti:0~1.0%、Sn:0~0.5%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。フェライト系ステンレス熱延鋼材は、好ましくは、C:0.002~0.020%、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:13.5~23.0%、Ni:0~0.6%、Mo:0~2.0%、N:0.020%以下、Cu:0~0.5%、Nb:0~0.6%、Ti:0~0.3%、Sn:0~0.2%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。
また、典型的なマルテンサイト系ステンレス熱延鋼材は、C:0.020~0.400%、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:10.5~14.0%、Ni:0~0.6%、Mo:0~1.0%、N:0.060%以下、Cu:0~1.0%、Nb:0~1.0%、Ti:0~1.0%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。マルテンサイト系ステンレス熱延鋼材は、好ましくは、C:0.100~0.300%、Si:0.50%以下、Mn:0.50%以下、Cr:12.0~13.5%、Ni:0~0.5%、Mo:0~0.5%、N:0.030%以下、Cu:0~0.5%、Nb:0~0.5%、Ti:0~0.5%であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有する。
なお、本明細書において「不純物」とは、ステンレス熱延鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップなどの原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。例えば、ステンレス熱延鋼材は、不純物として、P:0.050%以下、S:0.0300%以下を含有してもよい。
なお、熱間圧延の条件は、ステンレス鋼片の組成などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。また、ステンレス鋼片は、所定の組成となるように溶製し、鍛造又は鋳造によって得ることができる。
なお、焼鈍条件は、ステンレス鋼片の組成などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
5.0×(τ/100)1/2≦F≦13.0×(τ/100)1/2 ・・・(1)
パルスレーザ光のフルエンスを式(1)の範囲とすることにより、表面の平滑性を確保しつつ十分なデスケール効果を得ることができる。パルスレーザ光のフルエンスが式(1)の下限値未満であると、デスケール効果が不十分となる。一方、パルスレーザ光のフルエンスが式(1)の上限値を超えると、表面が粗くなってしまい、研磨性が低下してしまう。なお、式(1)の下限値は、好ましくは6.0×(τ/100)1/2である。また、式(1)の上限値は、好ましくは12.0×(τ/100)1/2である。
なお、パルス幅は10~1000nsの範囲で設定される。パルス幅は、好ましくは30~500ns、より好ましくは50~300nsの範囲で設定するのがよい。
レーザ発振器は、レーザ光をパルス発振可能なものであれば、その種類は特に限定されない。レーザ発振器は、デスケールの時間短縮の観点から、単位面積当りのレーザ出力が大きい固体レーザであることが好ましい。
レーザヘッドは、レーザ発振器からパルス発振されたパルスレーザ光を集光し、焼鈍後の鋼材の表面に形成されたスケールに照射する。
制御部は、レーザ発振器及びレーザヘッドと接続されており、パルスレーザ光の照射条件を制御する。パルスレーザ光の照射条件としては、例えば、フルエンス、パルス幅、発振周期、レーザ出力、照射速度、照射幅及びビーム径が挙げられる。
研削方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の研削用具(例えば、研削ブラシなど)を用いて行うことができる。
研削用具は、番手#80又はそれよりも粗い砥粒を有することが好ましい。研削をより強める場合には、研削用具は、番手#60又はそれよりも粗い砥粒を有することが望ましい。このような番手の砥粒を有する研削工具を用いることにより、表面欠陥の発生を抑制しつつ、焼き付きやCr欠乏層の除去を容易にすることができる。
なお、一般に、ショットブラストを用いた予備デスケール工程(S3c)を行うと、鋼材の表面に大きな凹凸が形成されるため、例えば、研削ブラシで研削を行っても、凹部に研削ブラシが接触せずに研削できない部分が生じることがある。しかしながら、研削ブラシによる研削の前にレーザデスケール工程(S3a)を行うと、ショットブラストによる大きな凹凸が低減されるため、研削ブラシによる研削が可能となり、焼き付きやCr欠乏層の除去を行うことができる。
予備デスケール工程(S3c)の種類及びその条件は、鋼種や使用する装置などに応じて適宜選択、調整すればよい。また、必要に応じ、予備デスケール工程(S3c)として、酸性水溶液を用いた酸洗工程を行ってもよい。なお、酸洗工程は、研削工程(S3b)後に行ってもよい。
なお、No.A、C及びFの鋼種はオーステナイト系、No.B及びGの鋼種はフェライト・オーステナイト二相系、No.D及びEの鋼種はフェライト系である。
<予備デスケールa>
ベンダー及び/又はレベラーの代用としてラボ冷間圧延機による予備デスケールを行った。具体的には、このラボ冷間圧延機を用い、焼鈍された鋼板を圧延した。冷間圧延条件は、板厚の伸び率を2%とした。
ショットブラストによる予備デスケールを行った。具体的には、直径が約0.3mmの鉄球を、焼鈍された鋼板の表面に向けてインペラーから投射した。投射時間は10秒とした。
パルスレーザ光を照射することによってレーザデスケールを行った。パルスレーザ光の照射条件(フルエンスを除く)は以下の通りとした。
波長:1085nm
パルス幅:100ns
発振周期:120kHz
照射速度:100Hz
レーザのビーム径:90μm
番手#80の砥粒をナイロンに織り込んだホイール状の研削ブラシを用いて研削を行った。研削は、回転速度が約800rpm、押しつけ量2mm、通板速度20m/分の条件で行った。
<デスケール判定>
ステンレス熱延鋼板の表面におけるスケールの有無を50倍でルーペ観察することによって評価した。この評価において、スケールが観察されず、スケールを十分に除去できたものを「〇」(デスケール性が良好)、スケールが観察され、スケールを十分に除去できなかったものを「×」(デスケール性が不良)と表す。
ステンレス熱延鋼板の表面について、オリンパス株式会社製のレーザ顕微鏡(LEXT OLS410)を用いて画像撮影を行った。撮影した画像の解析は、オリンパス株式会社製のレーザ顕微鏡(LEXT OLS410)の解析ソフトを用いて行った。Sq及びSdrの測定はISO 25178-2:2012にそれぞれ準拠して行った。測定時の温度は23~25℃とした。また、これらの測定結果は、端部から5mmまでの範囲を除く任意の5箇所で測定した値の平均値を測定結果とした。なお、各測定位置の間は5mm以上離した。レーザ顕微鏡及び解析ソフトにおける主要な設定条件は下記の通りである。
光学ズーム倍率:200倍
ビーム径:0.2μm
取込み画像サイズ:4669μm×4720μm
ステンレス熱延鋼板から試験片を切り出し、ビッカース硬さ試験機を用い、JIS Z2244:2009に準拠して表面及び厚み方向中心部(板厚中心部)のビッカース硬さを求めた。試験力は0.05Nとした。ビッカース硬さは、任意の5箇所で求め、その平均値を結果とした。
なお、厚み方向中心部の測定面は、圧延方向に対して平行な断面とした。
耐食性は、塩水噴霧、乾燥及び湿潤を繰り返す塩乾湿繰り返し試験(複合サイクル試験)によって評価した。複合サイクル試験は、複合サイクル試験機(スガ試験機株式会社製CYP-90)にステンレス熱延鋼材を設置した。サイクル条件はJIS H8502:1999に規定する中性塩水噴霧サイクル試験に準拠し、5%のNaCl水溶液の噴霧(35℃で15分)、乾燥(相対湿度30%、温度60℃で1時間)、及び湿潤(相対湿度95%、温度50℃で3時間)を1サイクルとして10サイクル行った。複合サイクル試験機におけるステンレス熱延鋼材の設置角度は、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30未満の場合(鋼No.A~E)に鉛直方向に対して20°とし、ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30以上の場合(鋼No.F及びG)に水平(0°)とした。その後、ステンレス熱延鋼板を水洗して乾燥させ、ステンレス熱延鋼板の発銹面積率を算出した。
発銹面積率の算出は、次のような手順で行った。複合サイクル試験後のステンレス熱延鋼板の表面を写真撮影し、端面を除いた中央の25mm×25mmの範囲における発銹部分の面積の割合を求めた。発銹部分の面積は、ステンレス熱延鋼板の表面の写真を画像解析により2値化し、1ピクセルあたりの面積を算出した後、発銹部分のピクセル数をカウントして求めた。発銹面積率は、以下の式によって算出した。
発銹面積率(%)=発銹部分の面積(mm2)/観察部全体の面積(625mm2)×100
この評価において、発銹面積率が1%以下であったものを「○」(耐食性が良好)、1%を超えたものを「×」(耐食性が不良)とした。
番手#400のアルミナを研磨剤として用い、ステンレス熱延鋼板の表面をバフ研磨することにより、約0.6μmの表層を除去した。研磨後のステンレス熱延鋼板の表面を、JIS Z8741:1997に準拠し、光沢度計(日本電色工業株式会社製PG-1M)を用いて45度鏡面光沢Gs(45°)を測定した。Gs(45°)は、端部から5mmまでの範囲を除く5箇所で測定を行い、その平均値を評価結果とした。なお、各測定位置の間は5mm以上離した。この評価において、Gs(45°)が500%以上であったものを「〇」、500%未満であったものを「×」と表す。
上記の各評価結果を表4及び5に示す。
これに対して比較例のいくつかのステンレス熱延鋼板は、スケールを十分に除去できなかったため、デスケール性が不十分であった(No.1-5、1-6、2-5、3-5及び4-5)。また、比較例のいくつかのステンレス熱延鋼板は、Sq及びSdrが上記範囲であったものの、耐食性が十分でなかった(No.1-7、1-9)。これら2つの比較例(No.1-7、1-9)は、オーステナイト系ステンレス鋼を用いたステンレス熱延鋼板であり、レーザデスケール後に研削を行っていないため、Cr欠乏層が残存して耐食性が劣る結果になったものと推測される。さらに、比較例の残りのステンレス熱延鋼板は、Sq又はSdrのいずれかが上記範囲から外れていたため、耐食性が十分でなかった。
Claims (5)
- 二乗平均平方根高さSqが5.0μm以下、展開界面面積率Sdrが25.0%以下の表面粗さを有するステンレス熱延鋼材であって、
塩乾湿繰り返し試験において、前記ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30未満の場合は前記ステンレス熱延鋼材の設置角度(表面の傾斜角)を鉛直方向に対して20°、前記ステンレス熱延鋼材の耐孔食指数(PREN)が30以上の場合は前記ステンレス熱延鋼材の設置角度(表面の傾斜角)を鉛直方向に対して水平(0°)とし、5%のNaCl水溶液の噴霧(35℃で15分)、乾燥(相対湿度30%、温度60℃で1時間)及び湿潤(相対湿度95%、温度50℃で3時間)を1サイクルとして10サイクル行った後の発銹面積率が1%以下であり、前記耐孔食指数(PREN)は以下の式(2)によって算出される、ステンレス熱延鋼材。
耐孔食指数(PREN)=Cr+3.3Mo+16N ・・・(2)
式(2)中、各元素記号は、各元素記号の含有量(質量%)を表す。 - 表面のビッカース硬さと厚み方向中心部のビッカース硬さとの差ΔHVが80以下である、請求項1に記載のステンレス熱延鋼材。
- 番手#400のアルミナを研磨剤として用い、0.6μmの表層を除去するバフ研磨後に表面の45度鏡面光沢Gsが500%以上である、請求項1又は2に記載のステンレス熱延鋼材。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のステンレス熱延鋼材を製造する方法であって、
ステンレス鋼片を熱間圧延する熱延工程と、
前記熱間圧延された鋼材を焼鈍する焼鈍工程と、
前記焼鈍された鋼材の表面に形成されたスケールを除去するデスケール工程と
を含み、
前記デスケール工程は、パルスレーザ光の照射を行うレーザデスケール工程と、前記レーザデスケール工程後に研削を行う研削工程とを含み、
前記パルスレーザ光は、フルエンスをF[J/cm2]、パルス幅をτ[ns](ただし、τは10~1000nsである)とした場合に、以下の式(1)を満たす方法。
5.0×(τ/100)1/2≦F≦13.0×(τ/100)1/2 ・・・(1) - 請求項1~3のいずれか一項に記載のステンレス熱延鋼材を含む耐食性部材。
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