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JP7827766B2 - 電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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JP7827766B2 - 電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法

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Description

本発明は電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法に関する。
電解コンデンサは、誘電体層としての酸化皮膜が形成された陽極箔と、陰極箔との間に、セパレータが配設されたコンデンサ素子内に電解質が導入(含浸)された構成を基本とする蓄電デバイスである。電解コンデンサには、コンデンサ素子内に、非固体電解質としての電解液が導入されるタイプと、導電性高分子等の固体電解質が導入されるタイプとが存在する。さらに、電解コンデンサには、コンデンサ素子内に、固体電解質と共に電解液が導入され、固体電解質および非固体電解質双方の利点を期待した所謂「ハイブリッドタイプ」も存在する。
電解コンデンサにおける電解液は、少なくとも、電解質である溶質と、溶質を溶解または分散させる溶媒とを有する。そして、電解コンデンサにおける電解液組成に関して、電解コンデンサの低ESR化および低インピーダンス化等を目的として、溶媒中の水の含有率を高めて、電解液の低抵抗化を図ることがある。しかしながら、電解液中で、化学反応を起こし易い水の含有率が高まると、特に高温状態において、溶出した電極箔の金属元素(例えば、Al3+)と水(すなわち、OH)とが水和反応を起こし、これにより生じた水酸化物(例えば、Al(OH))が電極箔表面に析出し、当該箔を劣化させる結果、漏れ電流が増大する。また、水和反応や水の電気分解によって生じた水素ガスが、内圧を上昇させ、比較的短時間で防爆弁の開弁に至らしめる結果、寿命が短縮する。
そこで、従来、所定量の水を含有する水系溶媒を有する電解液に対しては、リン酸を配合して電極箔の水和劣化を抑制することが行われている(特許文献1:特開2004-186239号公報)。
特開2004-186239号公報
リン酸による電極箔の水和劣化抑制効果はよく知られているが、電解液に対するリン酸の配合量が制限されることから、リン酸による電極箔の水和劣化抑制効果もまた不十分な効果しか得られないという問題があった。すなわち、電解液中に遊離したリン酸イオンは、溶出した電極箔の金属元素(例えば、Al3+)と反応し、これにより生じた無機リン酸塩(例えば、AlPO)が電極箔表面に耐水性皮膜を形成し、電極箔の水和劣化を抑制するものの、電解液中から次第にリン酸(リン酸イオン)が消失していく。したがって、リン酸の配合量が比較的少量では、電極箔の水和劣化が十分に抑制されず、且つ抑制効果も持続し難い。そこで、電極箔の水和劣化抑制効果を高めるために比較的多量のリン酸を配合すると、リン酸は、酸である性質上、それ自体が電極箔を劣化させる性質をも有していることから、かえって電極箔の劣化が進行して漏れ電流が増大し、水和反応も進行して寿命が短縮するという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、所定量の水を含有する水系電解液に所定量のリン酸イオン源が配合された電解液組成において、当該リン酸イオン源を比較的多量に含有しながら、漏れ電流を抑制できて、且つ長寿命化を図ることができる電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
本発明に係る電解コンデンサは、低圧用電解コンデンサであって、誘電体層が形成された陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に配設されたセパレータと、を有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子内に含浸された電解液と、を備え、前記電解液は、55wt%以上の水を含有する水系溶媒と、リン酸イオン源と、ホスホン酸基を有 し、キレート能を有する化合物であるホスホン酸系キレート剤(但し、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、およびエチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンホスホン酸)、ならびにこれらと同一の化学構造を有する物質を除く。)とを含有することを特徴とする電解コンデンサ。
本発明によれば、ホスホン酸系キレート剤が、電極箔表面に吸着して保護膜様に作用し、過剰なリン酸イオンの作用から電極箔を保護する。また、当該保護膜が、Al3+等の電極箔の金属元素とリン酸イオンとの反応の過剰な進行を適度に緩慢にし、リン酸イオンの逸失を抑制する。その結果、本発明は、電解液中にリン酸イオン源を例えば120.0~500.0mmol/kgの比較的多量に含有しながら、漏れ電流を抑制できて、且つ長寿命化を図ることができる。
前記電解液は、有機酸アンモニウム塩を含有することを特徴とする。前記有機酸アンモ ニウム塩は、アジピン酸アンモニウムを主体として、ギ酸アンモニウムが添加されている ことが好ましい。
前記リン酸イオン源は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、これらの3種の酸それぞれの塩、前記3種の酸それぞれのエステルおよび該エステルの塩、ならびに、前記3種の酸それぞれの縮合体および該縮合体の塩、からなる群から選択される1種以上の物質とすることができる。さらに、前記リン酸イオン源は、リン酸、リン酸塩、リン酸エステル、およびリン酸エステルの塩からなる群から選択される1種以上の物質とすることが好ましい。
前記ホスホン酸系キレート剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸を含む群から選択される1種以上の物質とすることができる。
本発明に係る電解コンデンサの製造方法は、電解液に、少なくとも、55wt%以上の 水を含有する水系溶媒と、リン酸イオン源と、ホスホン酸基を有し、キレート能を有する 化合物であるホスホン酸系キレート剤(但し、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホ ン酸)(EDTMP)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTP O)、およびエチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンホスホン酸)、ならびにこれ らと同一の化学構造を有する物質を除く。)とを配合することを特徴とする。
本発明によれば、ホスホン酸系キレート剤が、電極箔表面に吸着して保護膜様に作用し、過剰なリン酸イオンの作用から電極箔を保護する。また、当該保護膜が、Al3+等の電極箔の金属元素とリン酸イオンとの反応の過剰な進行を適度に緩慢にし、リン酸イオンの逸失を抑制する。その結果、本発明は、電解液中にリン酸イオン源を例えば120.0~500.0mmol/kgの比較的多量に含有しながら、漏れ電流を抑制できて、且つ長寿命化を図ることができる。
前記電解液は、有機酸アンモニウム塩を配合dddddすることを特徴とする。前記有 機酸アンモニウム塩は、アジピン酸アンモニウムを主体として、ギ酸アンモニウムが添加 されていることが好ましい。
前記リン酸イオン源は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、これらの3種の酸それぞれの塩、前記3種の酸それぞれのエステルおよび該エステルの塩、ならびに、前記3種の酸それぞれの縮合体および該縮合体の塩、からなる群から選択される1種以上の物質とすることができる。さらに、前記リン酸イオン源は、リン酸、リン酸塩、リン酸エステル、およびリン酸エステルの塩からなる群から選択される1種以上の物質とすることが好ましい。
前記ホスホン酸系キレート剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸を含む群から選択される1種以上の物質とすることができる。
本発明によれば、所定量の水を含有する水系電解液に所定量のリン酸イオン源が配合された電解液組成において、当該リン酸イオン源を比較的多量に含有しながら、漏れ電流を抑制できて、且つ長寿命化を図ることができる。
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの例を示す概略図(正面断面図)である。 図2は、本実施形態に係る電解コンデンサにおけるコンデンサ素子の例を説明する説明図である。 図3は、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の例を示すフローチャートである。 図4は、図3に示す方法におけるコンデンサ素子形成工程の例を説明する説明図である。 図5Aおよび図5Bは、試験1の結果を示すグラフである。 図6は、試験3の結果を示すグラフである。 図7は、試験4の結果を示すグラフである。
本発明は、電解液の組成に構造的特徴を有する電解コンデンサの発明およびその製造方法の発明である。以下、本発明を実施するための形態として、コンデンサ素子内に、非固体電解質としての電解液が導入されるタイプ(固体電解質が導入されないタイプ)の電解コンデンサの例で説明する。但し、本発明に係る電解コンデンサは、本発明の性質上、ここで説明するタイプの電解コンデンサに限定されず、例えば、コンデンサ素子内に、導電性高分子等の固体電解質と共に電解液が導入される所謂「ハイブリッドタイプ」の電解コンデンサも包含する。
以下、本明細書は、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る電解コンデンサ1の例を示す概略図(正面断面図)である。但し、分かり易くするために、コンデンサ素子2は断面構造を示さない。図2は、本実施形態に係る電解コンデンサ1におけるコンデンサ素子2の例を説明する説明図で、コンデンサ素子2の基本構成例を模式的に示している。以下、本明細書は、一実施形態として、巻回型のコンデンサ素子2を有する電解コンデンサ1を例にして説明するが、この素子形態に限定されず、例えば、積層型、コイン型等でもよい。また、本明細書は、一実施形態として、リード端子4を有するリード線形の電解コンデンサ1を例にして説明するが、この端子形態に限定されず、例えば、ネジ端子形、基板自立形等でもよい。また、本明細書は、一実施形態として、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主材料とする電極箔8、9を有するアルミニウム電解コンデンサ1を例にして説明するが、この箔形態に限定されず、例えば、アルミニウム以外の弁金属または弁金属合金を主材料とした電極箔であってもよい。
本実施形態に係る電解コンデンサ1は、図1に示すように、電解液3が含浸されたコンデンサ素子2が有底筒状のケース6内に収容されている。ケース6の開口部が封止材5で封止されている。コンデンサ素子2に接合されたリード端子4(陽極端子4aおよび陰極端子4b)が封止材5に設けられた貫通穴に嵌合し、貫通穴から電解コンデンサ1外へ引き出されている。ケース6の開口縁6aが封止材5を加締めることによって、ケース6内が密封されている。ケース6には圧力弁である防爆弁7が設けられ、電解コンデンサ1の内圧が一定以上に達した際に開弁し、電解コンデンサ1内のガスを放出して防爆されるようになっている。防爆弁7の数および位置は限定されず、例えば、封止材5に設けられてもよく、ケース6および封止材5の両方に設けられてもよい。さらに、実装品は、通常、外装材(不図示)によってケース6が包装されている。
続いて、本実施形態に係るコンデンサ素子2は、図2に示すように、陽極箔8と、陰極箔9と、これらの陽極箔8と陰極箔9の間に配設されたセパレータ10と、を備えている。陽極箔8には陽極端子4aが接合されている。陰極箔9には陰極端子4bが接合されている。
電極箔(陽極箔8および陰極箔9)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主材料にして構成されている。ここでいう主材料とは、例えば1.0質量%に満たないような(例えば0.5質量%、0.1質量%、0.05質量%、または0.01質量%等に満たないような)微量の意図しない他の元素の含有を許容することを意味する。一方、アルミニウム合金として、意図して含有させる他の元素としては、例えば、Ta、Nb、Ti、Cr、Hf、Zr、Zn、W、Ni、V、Fe、Cu、Mn、Mg、Ga、Si、B等の元素のうち1種または2種以上を用いることができる。アルミニウム合金を構成する他金属は、弁金属に限らず、弁金属以外の金属元素その他非金属元素でもよい。これらの他の元素は、アルミニウム電解コンデンサ1における電極箔8、9としての機能を果たし得る範囲で任意量を含有させることができる。意図した添加物の含有量(質量%)が比較的微量である場合、意図しない不純物の含有量(質量)を上回る組成もあり得る。なお、本実施形態以外の本発明に適用可能な箔形態としては、上記のアルミニウムを他の弁金属に置換した箔形態が挙げられる。
電極箔8、9は、芯部の基材と、基材を被覆する被覆材との二層で形成されていてもよい。この場合、少なくとも外層である被覆材がアルミニウムまたはアルミニウム合金を主材料にして構成されていればよい。すなわち、基材の組成と被覆材の組成とは、同一でもよく、または相違していてもよい。
電極箔8、9は、拡面構造を有する。拡面構造は、典型的にはエッチング処理によって形成される。或いは、拡面構造は、主材料金属粉末の蒸着、焼結等によって形成されてもよい。この場合、例えば、芯部の基材に、アルミニウムまたはアルミニウム合金粉末を、蒸着または焼結によって被覆することによって、電極箔8、9そのものを形成すると共に拡面構造を形成することができる。電極箔8、9の拡面構造は、比表面積を大きくして静電容量を増大できる。
拡面化された陽極箔8の表面には、化成処理によって誘電体層としての酸化皮膜8aが形成されている。化成処理は、具体的には、対象金属(ここでは、陽極箔8)を陽極として、化成液との間に電圧を印加して、酸化皮膜8aを形成する陽極酸化処理である。
当該化成処理は、例えば、次のような手順で行うことができる。すなわち、当該化成処理は、例えば、コンデンサ素子2を化成液槽に浸漬すると共に、陽極端子4aを陽極として、化成液との間に所定の電圧を所定時間印加する(例えば、100Vの電圧を5分印加)。その後、化成液槽からコンデンサ素子2を引き上げて乾燥させる。化成液には、一例として、アジピン酸アンモニウム、ほう酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、グルタル酸アンモニウム、アゼライン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ピメリン酸アンモニウム、スベリン酸アンモニウム等の水溶液が挙げられる。
一方、拡面化された陰極箔9に対してはさらなる処理が行われず、陰極箔9の表面には、空気中の酸素によって自然酸化皮膜(不図示)が形成されている。但し、この構成に限定されず、拡面化された陰極箔9の表面には、例えば、さらにチタン等の弁金属または弁金属合金粉末が蒸着されてもよい。これにより、誘電率を上げて静電容量を向上させることができる。或いは、拡面化された陰極箔9の表面には、例えば、陽極箔8と同様に化成処理が行われて、無極性の電解コンデンサ1として構成されてもよい。
陽極箔8と陰極箔9とを仕切るセパレータ10は、マニラ麻パルプ等の天然のセルロース繊維からなる紙等、もしくは、ナイロン等の合成繊維からなる布、シート、フィルム等、または、これらの混抄品、混紡品等からなる。このうち、合成繊維は、特に耐熱性に優れる材料を選択できるという利点がある。そのような合成繊維は、一例として、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)等が挙げられる。なお、図2は、コンデンサ素子2の基本構成例を模式的に示す図であり、セパレータ10を1枚示しているが、その数は限定されず、例えば、図4に示すように、3枚設けられてもよい。
また、コンデンサ素子2内には電解液3が含浸されている。図2に模式的に示すように、電解液3は、陽極箔8と陰極箔9との間における空隙に存在し、陽極箔8に形成された誘電体層(酸化皮膜8a)と、陰極箔9とに接触することで、陰極箔9に代わって実質的に陽極箔8の対極をなす真の陰極として機能する。但し、電解液3は、当該機能が発揮できる限りにおいて、両電極箔8、9間を完全に充たしていなくてもよく、両電極箔8、9間に電解液3が充満していない領域が存在していてもよい。なお、セパレータ10は、電解液3の成分を陽極箔8側と陰極箔9側とに自由に通すが、セパレータ10の構成や材料によっては、電解液3はセパレータ10内にも含浸されている。
電解液3は、電解質である溶質と、溶質を溶解または分散させる溶媒とを有している。本実施形態に係る溶媒は、所定量の水を含有する水系溶媒である。水の含有量は限定されないが、電解液3中に水が40質量%以上含有していてよく、さらには、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、または85質量%以上含有していてもよい。このように、電解液3中の水分含有量を高くすることができるのは、後述のリン酸イオン源およびホスホン酸系キレート剤の含有による。当該水系溶媒は、水以外の成分(例えば、有機溶剤)をさらに含有していてよいが、水のみで組成されていてもよい。このような水系溶媒は、水の作用によって、電解質の溶解能およびイオンの移動度を大きくして、電解液3の比抵抗を低くすることができる。そして、電解液3の低抵抗化の結果、電解コンデンサ1の低ESR化および低インピーダンス化を図ることができる。
溶媒成分として適用し得る有機溶剤には、一例として、プロトン性溶媒として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコール、グリセリン等の三価アルコール等や、これらの誘導体等が挙げられる。また、非プロトン性溶媒として、γ-ブチロラクトン等のラクトン化合物、スルホラン、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ピロリジン、2-ピロリジノン、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン等や、これらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて用いられてもよい。例えば、プロトン性溶媒および非プロトン性溶媒が共に用いられてもよい。
また、電解質である溶質には、有機酸、無機酸、有機酸と無機酸との複合化合物、もしくはこれらの誘導体、またはこれらの塩を適用することができる。これらのうち、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて用いられてもよい。例えば、有機酸および無機酸が共に用いられてもよい。
有機酸およびその誘導体としては、一例として、モノカルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、カプリル酸等や、これらの誘導体が挙げられる。また、ジカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸等や、これらの誘導体が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸として、クエン酸、サリチル酸等や、これらの誘導体が挙げられる。また、無機酸およびその誘導体としては、一例として、ホウ酸、スルファミン酸等や、これらの誘導体が挙げられる。また、有機酸と無機酸との複合化合物およびその誘導体としては、ジカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸のホウ素錯体等に例示され、一例として、ボロジシュウ酸、ボロジマロン酸、ボロジコハク酸、ボロジアジピン酸、ボロジマレイン酸、ボロジフタル酸、ボロジグリコール酸、ボロジクエン酸、ボロジサリチル酸等や、これらの誘導体が挙げられる。
また、有機酸、無機酸、有機酸と無機酸との複合化合物、およびこれらの誘導体の塩としては、一例として、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アミン塩、アミジン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アミン塩としては、一例として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、メタノールアミン、エタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、オキサゾリジン、チオモルホリン、チアゾリジン等の塩が挙げられる。
なお、後述の実施例では、電解質である溶質には、アジピン酸アンモニウムとギ酸アンモニウムとの2種の混合物を適用している。
さらに、本実施形態に係る電解液3は、リン酸イオン源を含有する。リン酸イオン源は、電解液3中でリン酸イオンを生じる化合物の総称である。リン酸イオン源から生じたリン酸イオン(PO 3-)は、水系溶媒中の水(OH)とアルミニウムイオン(Al3+)との水和反応物(Al(OH))によって引き起こされる電極箔8、9の水和劣化を抑制する。リン酸イオン(PO 3-)は、電極箔8、9表面に対する吸着性乃至付着性が水酸化物イオン(OH)よりも著しく強く、電極箔8、9と水酸化物イオン(OH)との接触を抑制して耐水性を向上させる。また、リン酸イオン(PO 3-)は、電極箔8、9から溶出したアルミニウムイオン(Al3+)と反応し、これにより生じたリン酸アルミニウム(AlPO)が耐水性皮膜となって電極箔8、9表面を保護する。さらに、リン酸イオン(PO 3-)とアルミニウムイオン(Al3+)とによる反応が水和反応に競合することで、水和反応を抑制する。こうして、リン酸イオン源を含有する電解液3を有する電解コンデンサ1は、電極箔8、9の水和劣化が抑制される結果、漏れ電流を抑制できる。また、当該電解コンデンサ1は、水和反応や水の電気分解による水素ガスの発生も抑制される結果、電解コンデンサ1の内圧上昇を抑制でき、電解コンデンサ1を長寿命化できる。
一方、従来の電解液3組成においては、リン酸イオンが比較的少量である場合、電極箔8、9の水和劣化が十分に抑制されず、且つ抑制効果も持続し難く、リン酸イオンの含有量を高めると、リン酸イオン自体が電極箔8、9の劣化を進行させる副反応によって、かえって漏れ電流を増大させ、電解コンデンサ1の寿命も短縮してしまうため、電解液3中のリン酸イオンの含有量を高くすることができなかった。
これに対して、本実施形態に係る電解液3は、リン酸イオン源と共にホスホン酸系キレート剤を含有する。ホスホン酸系キレート剤は、電極箔8、9表面に吸着して保護膜様に作用し、過剰なリン酸イオンの作用から電極箔8、9を保護する。したがって、比較的多量のリン酸イオンを有していても副反応による弊害を生ずることなく、期待される電極箔8、9の水和劣化抑制効果を十分に発揮させることができる。また、ホスホン酸系キレート剤による当該保護膜が、Al3+とリン酸イオンとの反応の過剰な進行を適度に緩慢にすることで、リン酸イオンの逸失を抑制する。したがって、比較的多量のリン酸イオンを有することによって期待される電極箔8、9の水和劣化抑制効果を長期に亘って発揮させることができる。その結果、本実施形態に係る電解コンデンサ1は、電解液3中に比較的多量の水と比較的多量のリン酸イオン源とを含有して、水による電解液3の低抵抗化ひいては電解コンデンサ1の低ESR化および低インピーダンス化が実現できると共に、リン酸イオン源による漏れ電流の十分な抑制および電解コンデンサ1の長寿命化が実現できる。
具体的に、本実施形態に係る電解液3は、当該電解液3中にリン酸イオン源を、120.0~500.0mmol/kg、120.0~400.0mmol/kg、120.0~300.0mmol/kg、120.0~200.0mmol/kg、120.0~170.0mmol/kg、120.0~160.0mmol/kg、125.0~155.0mmol/kg等の比較的多量に含有しながら、漏れ電流を抑制できて、且つ長寿命化を図ることができる。当該含有量(120.0~500.0mmol/kg)は、例えば、リン酸イオン源がリン酸(HPO)である場合、電解液3中、約1.2~5.0質量%の配合に相当し、ホスホン酸系キレート剤を添加しない電解液3組成におけるリン酸の標準的配合(妥当な配合)である約1.0質量%乃至約100.0mmol/kg~105.0mmol/kgと比較して高濃度である。但し、別の観点では、ホスホン酸系キレート剤によれば、配合したリン酸イオンをより効率的に利用できるようになることから、リン酸イオン源を必ずしも極多量(例えば、500.0mmol/kg)にせずとも、適度に多量(例えば、120.0mmol/kg)にして、漏れ電流を十分に抑制できて、且つ長寿命化を十分に図ることもできる。
リン酸イオン源には、リン酸(オルトリン酸)、亜リン酸、次亜リン酸、これらの3種の酸それぞれの塩、前記3種の酸それぞれのエステルおよび該エステルの塩、ならびに、前記3種の酸それぞれの縮合体および該縮合体の塩を適用することができる。これらのうち、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて用いられてもよい。
リン酸、亜リン酸、および次亜リン酸それぞれの塩としては、一例として、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等が挙げられる。リン酸、亜リン酸、および次亜リン酸それぞれのエステルとしては、一例として、リン酸エチル、リン酸ジエチル、リン酸ブチル、リン酸ジブチル等のアルキルリン酸エステル等が挙げられる。これらのエステルの塩としては、一例として、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
リン酸、亜リン酸、および次亜リン酸それぞれの縮合体としては、一例として、リン酸の縮合体である縮合リン酸等が挙げられる。この縮合リン酸としては、一例として、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸、また、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等の環状の縮合リン酸、さらに、このような鎖状の縮合リン酸と環状の縮合リン酸とが結合したもの等が挙げられる。リン酸、亜リン酸、および次亜リン酸それぞれの縮合体の塩としては、一例として、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
リン酸およびリン酸化合物は、電解液3中で分解してリン酸イオンを生ずる。亜リン酸および亜リン酸化合物は、電解液3中で分解して亜リン酸イオンを生じ、その後酸化してリン酸イオンを生ずる。次亜リン酸および次亜リン酸化合物は、電解液3中で分解して次亜リン酸を生じ、その後酸化してリン酸イオンを生ずる。縮合体は常温中性域の電解液3中では比較的安定であるが、温度条件もしくはpH条件に応じて、または経時的に徐々に分解し、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン等を生じ得る。したがって、リン酸イオン源には、リン酸イオンを直接的に生じ得るリン酸、リン酸塩、リン酸エステル、およびリン酸エステルの塩が好適に適用でき、さらにリン酸およびリン酸塩がより好適に適用できる。
また、ホスホン酸系キレート剤は、ホスホン酸(HPO)すなわちホスホン酸基(-P(=O)(OH))を有し、キレート能(金属イオンと錯体を形成する機能)を有する化合物である。ホスホン酸系キレート剤としては、一例として、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(略称:HEDP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(略称:NTMP)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(略称:PBTC)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(略称:EDTMP)等を挙げることができる。これらのうち、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて用いられてもよい。ホスホン酸系キレート剤は、電解コンデンサ1の仕様(例えば、耐熱温度等)に応じて適切な種類を選択すればよい。後述の各試験(各実施例)を総合すると、全体としては、上記列挙した4種のホスホン酸系キレート剤のうち、EDTMP、HEDPおよびNTMPの3種がより好ましく、HEDPおよびNTMPの2種がさらに好ましい。
ホスホン酸系キレート剤は、キレート剤中のホスホン酸基が、前述の電極箔8、9表面への吸着および保護膜形成に有効に作用するものと考えられ、ホスホン酸基を有しないキレート剤と区別される。実際、後述の実施例によれば、ホスホン酸基を有するキレート剤が電解液3中に含有する組成によって、漏れ電流の特別顕著な抑制効果および高温条件下での電解コンデンサ1の特別顕著な長寿命効果がみられた。電解液3中のホスホン酸系キレート剤の含有量は、0.1~5.0質量%、0.1~4.0質量%、0.1~3.5質量%、0.1~3.0質量%、0.1~2.5質量%、0.1~2.0質量%、0.1~1.6質量%等の範囲で設定できる。
さらに、電解液3は、電解コンデンサ1の電解液3中に配合し得る公知の機能性物質を含有していてもよい。ここでいう機能性物質は、酸化皮膜8a修復機能、耐高温機能、耐低温機能、水素ガス吸収機能等の電解コンデンサ1において何らかの有用機能を有する物質をいう。機能性物質の中には、電解質(溶質)として機能し得るものもあるが、そのような物質が機能性物質として配合される場合は、電解質(溶質)としての機能以外の有用機能による作用効果を主目的として配合される。
[電解コンデンサの製造方法]
続いて、本明細書は、本実施形態に係る電解コンデンサ1の製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る電解コンデンサ1の製造方法の例を示すフローチャートである。図4は、図3に示す方法におけるコンデンサ素子形成工程S01の例を説明する説明図(概略斜視図)である。
本実施形態に係る電解コンデンサ1は、図3に示すように、一例として、コンデンサ素子形成工程S01、電解液導入工程S02、封止工程S03、およびエージング工程S04を実施することによって製造される。このうち、特定の組成の電解液3を導入する電解液導入工程S02には、本発明に係る全ての電解コンデンサに共通する新規で有利な特徴が含まれる。一方、工程S01、S03、S04には、本実施形態以外のタイプ(例えば、ハイブリッドタイプ、巻回型以外の素子形態、リード線形以外の端子形態等)に対しては、不要であったり異なっていたりする操作が含まれる。このような操作は、本実施形態以外のタイプに対しては、適宜不実施としたり変更したりしてよい。
コンデンサ素子形成工程S01は、一例として、陽極箔8に対しては、予めエッチング処理等の前述の拡面処理および前述の化成処理を行い、陽極端子4aを接合する。陰極箔9に対しては、予めエッチング処理等の前述の拡面処理を行い、陰極端子4bを接合する。そして、図4に示すように、陽極箔8と陰極箔9との間にセパレータ10を挟んで陽極箔8と陰極箔9とを隔離した状態とし、これら陽極箔8、陰極箔9およびセパレータ10を巻回して円柱形状を形成する。そして、当該円柱形状の外周の所定部位にテープまたはフィルム等の保持材(不図示)を貼り付けて巻回状態を保持する。なお、本実施形態に係る電解コンデンサ1では通常は行わないが、ハイブリッドタイプでは、通常は円柱形状に形成したコンデンサ素子2に、欠損した酸化皮膜8a修復のための化成処理を行う。ここでの化成処理は、既に陽極箔8に対して行った陽極酸化処理を再度行い、欠損した酸化皮膜8aを修復する再化成処理である。この再化成処理は任意の処理であって、例えば、本実施形態のタイプの電解コンデンサ1に対して再化成処理を行うことが禁止されないし、逆にハイブリッドタイプに対して再化成処理を行わないことも禁止されない。
次に、電解液導入工程S02は、コンデンサ素子2内に特定の組成の電解液3を導入する。電解液3の組成については、本実施形態に係る電解液3として既に説明した通りである。すなわち、溶媒は、少なくとも水を配合して水系溶媒とする。水の含有量は限定されないが、電解液3中に40質量%以上配合してよく、さらには、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、または85質量%以上配合してもよい。当該水系溶媒は、水以外の成分(例えば、有機溶剤)をさらに配合してもよいが、水のみで組成してもよい。水以外の溶媒成分、および溶質成分については、前述の成分を適宜用いればよい。
また、電解液3に、当該溶媒および当該溶質に加えて、リン酸イオン源と、ホスホン酸系キレート剤とを配合する。配合量は、リン酸イオン源を、電解液3中120.0~500.0mmol/kg、120.0~400.0mmol/kg、120.0~300.0mmol/kg、120.0~200.0mmol/kg、120.0~170.0mmol/kg、120.0~160.0mmol/kg、125.0~155.0mmol/kg等の濃度になるように配合する。また、ホスホン酸系キレート剤を、電解液3中0.1~5.0質量%、0.1~4.0質量%、0.1~3.5質量%、0.1~3.0質量%、0.1~2.5質量%、0.1~2.0質量%、0.1~1.6質量%等の濃度になるように配合する。さらに、電解液3に、電解コンデンサ1の電解液3中に配合し得る公知の機能性物質を配合してもよい。
電解液3の導入については、一例として、調製した電解液3槽にコンデンサ素子2を浸漬する。所定時間経過後、電解液3槽からコンデンサ素子2を引き上げる。なお、上記のように、電解液3の調製段階において公知の機能性物質を配合してもよいが、コンデンサ素子2内への電解液3の導入前または後に、機能性物質を含有する液体の槽にコンデンサ素子2を浸漬することで、コンデンサ素子2内に機能性物質を導入してもよい。電解液3および機能性物質の導入は、必要に応じて制御された圧力下で行ってもよい。
次に、封止工程S03は、図1を参照して、その手順を説明する。一例として、コンデンサ素子2を有底筒状のケース6内に収納する。コンデンサ素子2に接合されたリード端子4(陽極端子4aおよび陰極端子4b)を封止材5の貫通穴に嵌合し、ケース6の開口部を封止材5で閉口する。これにより、リード端子4は、電解コンデンサ1外に引き出された状態となる。次に、ケース6の開口縁6aに加締め加工を施して、ケース6内を密封する。なお、ケース6および/または封止材5に、防爆弁7を設けてもよい。こうして、図1に示す電解コンデンサ1が製造される。さらに、外装材(不図示)によってケース6を包装してもよい。当該包装は、下記のエージング工程S04の前に行っても、後に行ってもよい。
最後に、エージング工程S04は、製造した電解コンデンサ1に対して、高温条件下で、所定時間、所定の電圧を印加するエージング処理を行う。これにより、電解液3中の所定の成分が有する酸化皮膜8a修復機能を作用させて、製造過程で酸化皮膜8aが剥離された部分や、酸化皮膜8aの比較的薄い部分等を修復して、漏れ電流の抑制と性能の安定化を図ることができる。また、エージング処理によれば、予期しない初期不良の除去といったデバッキング効果も得られる。
[試験1]
前記の本実施形態に沿って通常の方法により、定格電圧16Vのアルミニウム電解コンデンサを製造した。陽極箔および陰極箔にはエッチング処理を行ったアルミニウム箔を用い、陽極箔には化成処理を行って酸化皮膜を形成した。コンデンサ素子を組み立て、次いでコンデンサ素子に表1に示す組成の電解液を導入した。なお、表1中の機能性物質は、複数種の物質を含み、その組成比は各例同一である(以下、全試験の機能性物質について同じ)。電解コンデンサを組み立て、次いで所定のエージング処理を行った。製造した各例の電解コンデンサを、電圧無印加の115℃の温度環境に曝露し、所定時間経過ごとに、16V印加1分の漏れ電流を測定した。各例の供試数は5器とした。図5Aおよび図5Bに結果を示す。
リン酸およびホスホン酸系キレート剤としては以下の市販品を用いた(以下、全試験において同じ)。
リン酸(ラサ工業社製)
HEDP:1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(キレスト社製、キレスト PH-210 「キレスト」は登録商標。以下同じ)
NTMP:ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(キレスト社製、キレスト PH-320)
PBTC:2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(キレスト社製、キレスト PH-430)
EDTMP:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(キレスト社製、キレスト PH-540)
図5Aは、各例の平均値、ならびに最大値および最小値を表す誤差範囲を示すグラフである。但し、誤差範囲が小さ過ぎて視認できない箇所がある。また、図5Bは、図5Aのグラフの縦軸範囲を減縮して各実施例の結果を見易くしたグラフである。但し、見易いように、誤差範囲の表示は省略している。なお、図5Bには、比較例2は表れていない。
図5Aおよび図5Bに示すように、従来の標準的な電解液中リン酸量(104.9mmol/kg)である参考例1と比較して、リン酸量の多い比較例1(130.7mmol/kg)では顕著に漏れ電流が多くなった。また、比較例1よりもさらにリン酸量の多い比較例2(156.4mmol/kg)ではさらに顕著に漏れ電流が多くなった。これに対して、比較例1とほぼ同量のリン酸(128.4~129.6mmol/kg)に各種のホスホン酸系キレート剤を併用した実施例1~4では参考例1よりも漏れ電流が少なくなった。また、比較例2とほぼ同量のリン酸(153.6~155.0mmol/kg)に各種のホスホン酸系キレート剤を併用した実施例5~8でも参考例1よりも漏れ電流が少なくなった。
具体的に、参考例1では、試験開始から約3000時間経過後に漏れ電流の増加が目立ち始め、9469時間経過後には最大値である115.98μAに至った。また、比較例1では、試験開始から約500時間経過後に漏れ電流の増加が急峻に増加し始め、4060時間経過後には最大値である369.56μAに至った。また、比較例2では、試験開始から約500時間経過後に漏れ電流の増加が急峻に増加し始め、1000時間経過前には500μAを超えてレンジアウトした。
これに対して、実施例1~8の漏れ電流は、全試験期間を通して16.15μA(実施例6:508時間経過後)以下で、比較例1、2および参考例1と比較して顕著に少なかった。さらに、実施例1~5、7、8の漏れ電流は、全試験期間を通して12.62μA(実施例8:1084時間経過後)以下であった。
また、全実施例1~8の中では、相対的にリン酸量の多い実施例5~8と比較して、相対的にリン酸量の少ない実施例1~4の方が漏れ電流が少ない傾向を示した。ホスホン酸系キレート剤によってリン酸イオンをより効率的に利用できるようになったことで、リン酸イオン源を適度に増加させて漏れ電流を十分に抑制できたと考えられる。ホスホン酸系キレート剤の中では、相対的にリン酸量の多い実施例5~8において、NTMP(実施例6)およびEDTMP(実施例8)と比較して、HEDP(実施例5)およびPBTC(実施例7)の方が漏れ電流が少ない傾向を示して良好であった。さらに、リン酸量の多少に関わらず、PBTC(実施例3、7)では、特に漏れ電流が少ない傾向を示して良好であった。本試験条件を考慮すると、115℃程度までの使用が想定される電解コンデンサ(例えば、耐熱温度が110~120℃に設定される電解コンデンサ)等においては、ホスホン酸系キレート剤のうち、NTMPおよびEDTMPが好適であり、HEDPがより好適であり、PBTCがさらに好適である。
[試験2]
前記の本実施形態に沿って通常の方法により、定格電圧16Vのアルミニウム電解コンデンサを製造した。陽極箔および陰極箔にはエッチング処理を行ったアルミニウム箔を用い、陽極箔には化成処理を行って酸化皮膜を形成した。コンデンサ素子を組み立て、次いでコンデンサ素子に表2に示す組成の電解液を導入した。電解コンデンサを組み立て、次いで所定のエージング処理を行った。製造した各例の電解コンデンサを、表3に示す電気的条件および温度環境に曝露し、500時間経過ごとに故障(防爆弁の開弁または通電不能の使用不可能状態)の有無を調査した。各例の供試数は5器とした。表3に結果を示す。
表3に示すように、全体的には、従来の標準的な電解液中リン酸量(104.9mmol/kg)である参考例2と比較して、リン酸量の多い比較例3(130.7mmol/kg)では寿命が短縮した。また、比較例3よりもさらにリン酸量の多い比較例4(156.4mmol/kg)では、比較例3よりもさらに寿命が短縮するか比較例3と同程度であった。これに対して、比較例3とほぼ同量のリン酸(128.4~129.6mmol/kg)に各種のホスホン酸系キレート剤を併用した実施例9~12では参考例2よりも寿命が延長した。また、比較例4とほぼ同量のリン酸(153.6~155.0mmol/kg)に各種のホスホン酸系キレート剤を併用した実施例13~16でも参考例2よりも寿命が延長した。
具体的に、電圧無印加の115℃の温度条件においては、比較例4では5500時間経過後に5器全て故障し、比較例3では6500時間経過後に5器全て故障し、参考例2では9500時間経過後に5器全て故障した。これに対して、実施例9~16では、いずれの例も9500時間経過後も依然として全5器に故障はなく、比較例3、4および参考例2よりも寿命が延長した。
定格電圧16V印加の115℃の温度条件においては、比較例4では5500時間経過後に5器全て故障し、比較例3では6500時間経過後に5器全て故障し、参考例2では9500時間経過後に5器全て故障した。これに対して、実施例9~16では、いずれの例も9500時間経過後も依然として全5器に故障はなく、比較例3、4および参考例2よりも寿命が延長した。
電圧無印加の125℃の温度条件においては、比較例4および比較例3では3000時間経過後に5器全て故障し、参考例2では3500時間経過後に5器全て故障した。これに対して、実施例15、16では5000時間経過後に5器全て故障し、実施例11、14では7000時間経過後に5器全て故障し、実施例9、10、12、13では8000時間経過後に一部の機器が故障した。実施例間で差があったが、全実施例9~16で、比較例3、4および参考例2よりも寿命が延長した。
115℃においては実施例間で差がなかったが、125℃においては、相対的にリン酸量の多い実施例13~16と比較して、相対的にリン酸量の少ない実施例9~12の方が、寿命が延長する傾向を示した。ホスホン酸系キレート剤によってリン酸イオンをより効率的に利用できるようになったことで、リン酸イオン源を適度に増加させて漏れ電流を十分に抑制できたと考えられる。上記の通り、125℃においては、比較例3、4および参考例2がごく早期に故障に至ったことに対して、全実施例9~16が一定の寿命を保持し、特に実施例9~14は比較例3、4および参考例2の2倍以上の寿命を保持した機器があった。このように、リン酸とホスホン酸系キレート剤との併用は、特に、相対的に過酷な高温条件下においても非常に安定した長寿命化を図ることができるという特別顕著な効果を奏した。
ホスホン酸系キレート剤の中では、125℃においては、相対的にリン酸量の多い実施例13-16において、PBTC(実施例15)およびEDTMP(実施例16)と比較して、HEDP(実施例13)およびNTMP(実施例14)の方が、長寿命傾向を示して良好であった。本試験条件を考慮すると、125℃程度までの使用が想定される電解コンデンサ(例えば、耐熱温度が120~130℃に設定される電解コンデンサ)等においては、ホスホン酸系キレート剤のうち、PBTCおよびEDTMPが好適であり、HEDPおよびNTMPがより好適である。
[試験3]
さらに、リン酸イオン源の配合量(含有量)について調べる目的で、表4に示す組成の各例の電解液を調製した。2cm×5cmのアルミニウムプレーン箔からなるアルミニウム電極と、白金電極とを電流計(横河計測社製、ディジタルマルチメータ TY710)に接続した。両電極を、ガラスビーカー中の室温の電解液70gの中に入れて、試験装置とした。当該試験装置において、電解液の中に電極を入れてから5分後の電流値を測定した。表4に、電解液組成と共に電流値の測定結果を示す。また、図6に、当該測定結果をグラフで示す。
本試験装置における電極反応は、以下の通りである。
アルミニウム電極反応
Al ⇒ Al3+ + 3e (Al + 3OH⇒ Al(OH) + 3e
白金電極反応
3HO + 3e ⇒ 3OH + 3/2H
すなわち、ここで測定される電流値の大きさは、アルミニウム箔の水和劣化の進行度を表す。それと共に、各例において、電流値が低い程、電解液中のリン酸によって箔の水和劣化が良好に抑制されていることを表す。
表4および図6に示すように、リン酸と共にホスホン酸系キレート剤を配合しない電解液組成である比較例5と比較して、リン酸と共に各種のホスホン酸系キレート剤を配合した実施例17~20では、いずれのリン酸量においても、電流値が低く、箔の水和劣化が抑制された。より詳しくは、従来の標準的な電解液中リン酸量(約100mmol/kg)では、実施例17~20と比較例5との電流値の差は相対的に小さかった。しかしながら、リン酸量が2倍(約200mmol/kg)、3倍(約300mmol/kg)、4倍(約400mmol/kg)、5倍(約500mmol/kg)に増加すると、比較例5では電流値が比較的急峻に上昇したのに対して、実施例17~20では電流値の上昇が比較的緩慢であり、特に実施例17、18、20では電流値の上昇は顕著に緩慢であった。その結果、実施例17~20と比較例5との電流値の差は相対的に大きくなった。このことから、リン酸にホスホン酸系キレート剤を併用することで、電解液中に標準量の5倍程度までの極多量のリン酸(リン酸イオン源)を配合して、電極箔の劣化を十分に抑制することができ、ひいては試験1および試験2で確かめられた電解コンデンサにおける漏れ電流の低減および長寿命化を図ることができる。
これまでの試験結果から、本発明においては、ホスホン酸系キレート剤を併用することで、電解液中のリン酸イオン源の配合量(含有量)を、120.0~500.0mmol/kg、120.0~400.0mmol/kg、120.0~300.0mmol/kg、120.0~200.0mmol/kg、120.0~170.0mmol/kg、120.0~160.0mmol/kg、125.0~155.0mmol/kg、130.0~155.0mmol/kg、130.0~150.0mmol/kg等の範囲で設定できる。
ホスホン酸系キレート剤の中では、PBTC(実施例19)と比較して、HEDP(実施例17)、NTMP(実施例18)、およびEDTMP(実施例20)の方が、電流値がより低い傾向を示して良好であった。電解液中のリン酸量が約500mmol/kgの極多量であっても、PBTC(実施例19)では54.09μAの低値に抑えられ、HEDP(実施例17)では20.65μAのさらに低値に抑えられ、NTMP(実施例18)では14.87μA、EDTMP(実施例20)では15.53μAのさらに顕著に低値に抑えられた。本試験条件を考慮すると、室温での使用が想定される電解コンデンサ等においては、ホスホン酸系キレート剤のうち、PBTCが好適であり、HEDPがより好適であり、NTMPおよびEDTMPがさらに好適である。
[試験4]
さらに、ホスホン酸系キレート剤の配合量(含有量)について調べる目的で、表5に示す組成の各例の電解液を調製した。試験3と同じ構成の試験装置において、電解液の中に電極を入れてから5分後の電流値を測定した。表5に、電解液組成と共に電流値の測定結果を示す。また、図7に、当該測定結果をグラフで示す。
表5および図7に示すように、リン酸と共にホスホン酸系キレート剤を配合しない電解液組成である比較例6と比較して、リン酸と共に各種のホスホン酸系キレート剤を配合した実施例21~24では、いずれのホスホン酸系キレート剤量においても、電流値が低く、箔の水和劣化が抑制された。すなわち、電流値は、比較例27.45μAに対して、ホスホン酸系キレート剤0.2質量%配合(実施例21-1、22-1、23-1、24-1)において既に13.5μA未満の顕著に低値に抑えられ、ホスホン酸系キレート剤0.6質量%以上の配合(実施例21-2~21-4、22-2~22-4、23-2~23-4、24-2~24-4)において9.0μA未満のさらに顕著に低値に抑えられた。このように、ホスホン酸系キレート剤0.2質量%配合において既に比較例に対して顕著な効果を奏し、ホスホン酸系キレート剤1.5配合まで安定的に顕著な効果が持続したことから、リン酸と共にホスホン酸系キレート剤を少なくとも0.1乃至0.2質量%配合することで、電極箔の劣化を十分に抑制することができ、ひいては試験1および試験2で確かめられた電解コンデンサにおける漏れ電流の低減および長寿命化を図ることができる。
これまでの試験結果から、本発明においては、電解液中のホスホン酸系キレート剤の配合量(含有量)を、0.1乃至0.2質量%以上に設定でき、例えば、本実施例の機能性物質の一部をホスホン酸系キレート剤に置き換えて上限を設定すると、0.1~5.0質量%、0.1~4.0質量%、0.1~3.5質量%、0.1~3.0質量%、0.1~2.5質量%、0.1~2.0質量%、0.1~1.6質量%、0.2~5.0質量%、0.2~4.0質量%、0.2~3.5質量%、0.2~3.0質量%、0.2~2.5質量%、0.2~2.0質量%、0.2~1.6質量%、0.2~1.5質量%等の範囲で設定できる。
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 電解液
4 リード端子
4a 陽極端子
4b 陰極端子
5 封止材
6 ケース
6a 開口縁
7 防爆弁
8 陽極箔
8a 酸化皮膜
9 陰極箔
10 セパレータ
S01 コンデンサ素子形成工程
S02 電解液導入工程
S03 封止工程
S04 エージング工程

Claims (14)

  1. 低圧用電解コンデンサであって、
    誘電体層が形成された陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に配設されたセパレータと、を有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子内に含浸された電解液と、を備え、
    前記電解液は、55wt%以上の水を含有する水系溶媒と、リン酸イオン源と、ホスホン酸基を有し、キレート能を有する化合物であるホスホン酸系キレート剤(但し、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、およびエチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンホスホン酸)、ならびにこれらと同一の化学構造を有する物質を除く。)とを含有すること
    を特徴とする電解コンデンサ。
  2. 前記電解液は、有機酸アンモニウム塩を含有すること
    を特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。
  3. 前記有機酸アンモニウム塩は、アジピン酸アンモニウムを主体として、ギ酸アンモニウムが添加されていること
    を特徴とする請求項記載の電解コンデンサ。
  4. 前記リン酸イオン源は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、これらの3種の酸それぞれの塩、前記3種の酸それぞれのエステルおよび該エステルの塩、ならびに、前記3種の酸それぞれの縮合体および該縮合体の塩、からなる群から選択される1種以上の物質であること
    を特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。
  5. 前記リン酸イオン源は、リン酸、リン酸塩、リン酸エステル、およびリン酸エステルの塩からなる群から選択される1種以上の物質であること
    を特徴とする請求項4記載の電解コンデンサ。
  6. 前記ホスホン酸系キレート剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸を含む群から選択される1種以上の物質であること
    を特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。
  7. 前記リン酸イオン源が、前記電解液中に120.0~500.0mmol/kg(但し、前記電解液中に0.75wt%以下を除く。)含有すること
    を特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。
  8. 低圧用電解コンデンサであって、
    電解液に、少なくとも、55wt%以上の水を含有する水系溶媒と、リン酸イオン源と、ホスホン酸基を有し、キレート能を有する化合物であるホスホン酸系キレート剤(但し、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、およびエチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンホスホン酸)、ならびにこれらと同一の化学構造を有する物質を除く。)とを配合すること
    を特徴とする電解コンデンサの製造方法。
  9. 前記電解液は、有機酸アンモニウム塩を配合すること
    を特徴とする請求項8記載の電解コンデンサの製造方法。
  10. 前記有機酸アンモニウム塩は、アジピン酸アンモニウムを主体として、ギ酸アンモニウムが添加されていること
    を特徴とする請求項記載の電解コンデンサの製造方法。
  11. 前記リン酸イオン源を、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、これらの3種の酸それぞれの塩、前記3種の酸それぞれのエステルおよび該エステルの塩、ならびに、前記3種の酸それぞれの縮合体および該縮合体の塩、からなる群から選択される1種以上の物質とすること
    を特徴とする請求項8記載の電解コンデンサの製造方法。
  12. 前記リン酸イオン源を、リン酸、リン酸塩、リン酸エステル、およびリン酸エステルの塩からなる群から選択される1種以上の物質とすること
    を特徴とする請求項11記載の電解コンデンサの製造方法。
  13. 前記ホスホン酸系キレート剤を、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸を含む群から選択される1種以上の物質とすること
    を特徴とする請求項8記載の電解コンデンサの製造方法。
  14. 前記リン酸イオン源を、前記電解液中に120.0~500.0mmol/kg(但し、前記電解液中に0.75wt%以下を除く。)配合すること
    を特徴とする請求項8記載の電解コンデンサの製造方法。
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