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JP7853624B2 - ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置 - Google Patents
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JP7853624B2 - ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置 - Google Patents

ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置

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Description

本開示は、ロータリ圧縮機及びそれを備える冷凍サイクル装置に関する。ロータリ圧縮機は、シリンダ内でローラを偏心回転させることで、シリンダ内に形成されるシリンダ室のガスを圧縮する圧縮機である。ロータリ圧縮機は、一般にシリンダ室を仕切るためのベーンを有する。ロータリ圧縮機は、ローラとは別体のベーンがローラに当接しながらローラが偏心回転する所謂ローリングピストン式、ローラと一体に形成されたベーンがローラの偏心回転に伴って揺動する所謂スイング式、ローラの外周面の凹部にベーンの先端が回転可能に嵌合した状態でローラが偏心回転する所謂ヒンジベーン式等を含む。
従来、円筒状のシリンダと該シリンダの上下端を閉塞する端板とにより形成されたシリンダ室内において、円筒状のローラが偏心回転することにより、冷媒が圧縮されるロータリ圧縮機が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。上記ロータリ圧縮機では、圧縮された冷媒は、端板を貫通するポートを通って、ケーシング内に吐出される。そのため、シリンダとローラと端板とを有する圧縮機構の外周は、高圧空間となっている。
ところで、上記ロータリ圧縮機では、ローラの内周面と上端面との間に形成される上角部及びローラの内周面と下端面との間に形成される下角部のそれぞれに面取りを設けることで、上下の面取り部分に高圧の潤滑油が供給されるようにしている。さらに、上記ロータリ圧縮機では、高圧の潤滑油によってローラに及ぼされる力の鉛直方向成分が上角部の面取り部分よりも下角部の面取り部分の方が大きくなるように、下角部の面取り面の水平方向の投影面積を上角部の面取り面の水平方向の投影面積以上にすることととしている。上記ロータリ圧縮機では、上記構成により、駆動軸の偏心部とローラの嵌合部が高圧の潤滑油で満たされる運転時に、上下の面取り部分に供給される高圧の潤滑油によってローラに及ぼされる鉛直上向きの力が鉛直下向きの力より大きくなるようにすることで、ローラを下から上へ押し上げ、ローラの上端面及び下端面とこれに対向する端板との間の隙間の均一化を図り、ローラ端面の漏れ損失の低減を図ることとしている。
特開2010-31733号公報
しかしながら、上記ロータリ圧縮機において、原理的には、高圧の潤滑油による力は、ローラの上下の面取り部分のみに作用するのではなく、ローラの上端面及び下端面の面全体に作用すると考えられる。そのため、上記ロータリ圧縮機では、上角部と下角部とに面取りを設けたとしても、面取り部分を含めたローラの上端面及び下端面の投影面積が略等しいため、高圧の潤滑油によってローラを浮上させる鉛直上向きの力が発生しないと考えられる。そのため、上記ロータリ圧縮機では、ローラの上端面及び下端面とこれに対向する端板との間の隙間の均一化を図れず、漏れ損失の低減を十分に図れないという問題があった。
本開示の目的は、運転時にローラを適切な高さまで浮上させることができるロータリ圧縮機を提供することにある。
本開示の第1の態様は、
ケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に設けられ、上下方向に延びる駆動軸(70)と、
上記ケーシング(10)内に設けられ、上記駆動軸(70)を駆動するモータ(20)と、
上記ケーシング(10)内に設けられ、上記駆動軸(70)に連結されて上記モータ(20)によって回転駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機構(30)とを備え、
上記圧縮機構(30)は、
円筒状のシリンダ(34)と、
上記シリンダ(34)の上下の開口端面を閉塞する上端板(41)及び下端板(42)と、
上記駆動軸(70)に取り付けられて上記シリンダ(34)内で偏心回転する円筒状のローラ(36)と、
上記シリンダ(34)と上記ローラ(36)との間の空間を吸入側の第1室(51)と吐出側の第2室(52)とに区画するベーン(37)とを有し、
上記ローラ(36)の下端面は、上記下端板(42)の上面に平行な第1面(36a)と、該第1面(36a)の外周側に連続して上記ローラ(36)の外周面(36o)まで延びる第2面(36b)とを有し、
上記第2面(36b)は、径方向の外側に向かう程、上方に位置するように傾斜している
ロータリ圧縮機である。
第1の態様では、ローラ(36)の下端面の外周側の一部を、径方向の外側に向かう程、上方に位置するように傾斜する第2面(36b)とすることにより、ローラ(36)の下端面と下端板(42)との間には外周側にくさび状の隙間(90)が形成される。このような構成により、運転時には、圧縮機構(30)の各摺動部にケーシング(10)内の圧力同等の高圧の潤滑油が供給され、一部はシリンダ(34)とローラ(36)との間の空間に至るが、この空間に至った潤滑油は、ローラ(36)がシリンダ(34)内で偏心回転することにより、上記くさび状の隙間(90)において外周側の入口から奥側(ローラ(36)の中心側)に押し込まれる。このようにして押し込まれた高圧の潤滑油により、ローラ(36)には上向きの力が作用し、ローラ(36)が浮き上がる(くさび効果)。従って、第1の態様によれば、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得るロータリ圧縮機(1)を提供することができる。
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
上記第2面(36b)は、
上記ローラ(36)の重量と上記ベーン(37)の重量の和をm、
上記第2面(36b)の外側端と上記第1面(36a)との上記駆動軸(70)の軸方向に沿った距離をX、
上記シリンダ(34)の高さと上記ローラ(36)の高さの差をΔHとしたときに、
下記の数式(1)を満たすものである。
(ΔH÷2×0.75)÷(0.0055×m-0.893)≦X≦(ΔH÷2×1.25)÷(0.00006m-1.118)…(1)
本願の発明者等は、大きさの異なる種々のロータリ圧縮機について、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得るくさび状の隙間(90)の高さ(第2面(36b)の外側端と第1面(36a)との駆動軸(70)の軸方向の沿った距離)の範囲を試算し、ローラ(36)の重量とベーン(37)の重量の和と、シリンダ(34)とローラ(36)の高さの差とを用いて示される上記数式(1)を導出した。
第2の態様では、種々の大きさのロータリ圧縮機について、上記数式(1)を満たすように第2面(36b)を形成することにより、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得る種々の大きさのロータリ圧縮機を容易に構成することができる。
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、
上記ロータリ圧縮機は、上記ローラ(36)と上記ベーン(37)とが一体に形成されたピストン(35)を備えるスイング式の圧縮機であり、
上記ローラ(36)の周方向における上記ローラ(36)の中心に対する上記ベーン(37)の中心線(M)の角度位置を0°とし、上記ローラ(36)の周方向における角度位置が上記駆動軸(70)の回転方向に進むにつれて増加するとしたときに、
上記第2面(36b)は、上記ローラ(36)の周方向における少なくとも上記ベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から180°までの範囲に亘って形成されている
ロータリ圧縮機である。
第3の態様は、ローラ(36)とベーン(37)とが一体に形成されたピストン(35)を備えるスイング式の圧縮機である。スイング式の圧縮機では、図6Cに示すように、駆動軸(70)の回転角が0°(360°)のときに、ローラ(36)の上下の隙間からシリンダ室への潤滑油の漏れ量が特に多くなる。
ところで、ローラ(36)の周方向においてαからα+180°の角度範囲に第2面(36b)を形成すると、駆動軸(70)の回転角がαのときに上述のくさび効果が効果的に得られ、ローラ(36)が効果的に浮上する。
そこで、第3の態様では、少なくともローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から180°までの範囲に亘って第2面(36b)を形成することとしている。上記の構成によると、駆動軸(70)の回転角が0°のときにくさび効果が効果的に生じ、シリンダ室への潤滑油の漏れ量が特に多い駆動軸(70)の回転角が0°のときに、ローラ(36)を確実に浮上させることができる。従って、第3の態様によれば、シリンダ室への潤滑油の漏れ量を低減することができ、漏れ損失を低減することができる。
本開示の第4の態様は、第3の態様において、
上記第2面(36b)は、上記ローラ(36)の周方向における上記ベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から上記ベーン(37)の吐出側の側面の角度位置までの範囲に亘って形成されている
ものである。
第4の態様では、第2面(36b)が、ローラ(36)の周方向のベーン(37)がある角度範囲を除き、ローラ(36)の周方向のほぼ全周に形成されている。駆動軸(70)の回転角がいずれの角度であっても、ローラ(36)を浮上させることができるため、シリンダ(34)とローラ(36)との間の空間(シリンダ室)への潤滑油の漏れ量を低減することができ、漏れ損失を低減することができる。
本開示の第5の態様は、第4の態様において、
上記第2面(36b)は、上記ローラ(36)の周方向における上記ベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から180°以上270°以下の所定の角度位置までの範囲に亘って形成されている
ものである。
ところで、ローラ(36)を適切な高さまで浮上させることでローラ(36)の上下に形成される隙間からシリンダ室への潤滑油の漏れ量を低減する観点からは、第2面(36b)の形成範囲(ローラ(36)の周方向における第2面(36b)が形成される角度範囲)を可能な限り広くするのが好ましい。一方、ローラ(36)の下端部の外周角部を面取りして第2面(36b)を形成し、第2面(36b)と下端板(42)の上面との間にくさび状の隙間(90)を形成すると、ローラ(36)を浮上させることでローラ(36)の上下の隙間からシリンダ室への潤滑油の漏れ量は低減できるが、第2室(52)で圧縮された冷媒が上記隙間(90)を介して第1室(51)へ漏れて性能低下に繋がる虞がある。第2面(36b)の形成範囲が広くなればなる程、上記隙間(90)を介した冷媒漏れは生じ易くなり、性能低下を招く虞が高くなる。そのため、上記隙間(90)を介する第2室(52)から第1室(51)への冷媒漏れを低減する観点からは、第2面(36b)の形成範囲を可能な限り狭くするのが好ましい。
そこで、第5の態様では、ローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から所定の角度位置(180°以上270°以下)までの範囲に限って第2面(36b)を形成し、ローラ(36)の周方向における上記所定の角度位置からベーン(37)の吐出側の側面の角度位置までの範囲には、第2面(36b)を形成しないようにしている。このように構成することにより、第5の態様によれば、第2面(36b)を形成することによって生じるくさび状の隙間(90)を介した第2室(52)から第1室(51)への冷媒漏れを低減することができる。
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つのロータリ圧縮機を備えた冷凍サイクル装置である。
図1は、実施形態1に係る冷凍サイクル装置の配管系統図である。 図2は、実施形態1に係るロータリ圧縮機の縦断面図である。 図3は、ロータリ圧縮機の圧縮機構の横断面図である。 図4は、ロータリ圧縮機の一部を拡大した縦断面図である。 図5は、圧縮機構の動作を示す図である。 図6Aは、駆動軸が1回転する間におけるロータ上下の隙間から第1室への潤滑油の漏れ量の変化を示すグラフであり、破線はロータの下面に傾斜面を形成しない場合を示し、実線は傾斜面を形成した場合を示す。 図6Bは、駆動軸が1回転する間におけるロータ上下の隙間から第2室への潤滑油の漏れ量の変化を示すグラフであり、破線はロータの下面に傾斜面を形成しない場合を示し、実線は傾斜面を形成した場合を示す。 図6Cは、駆動軸が1回転する間におけるロータ上下の隙間からシリンダ室への潤滑油の漏れ量の変化を示すグラフであり、破線はロータの下面に傾斜面を形成しない場合を示し、実線は傾斜面を形成した場合を示す。 図7Aは、ピストンの質量が0.01kgのロータリ圧縮機について、切り込み高さと浮遊量との関係を切り込み角度毎に試算し、その結果を示すグラフである。 図7Bは、ピストンの質量が0.1kgのロータリ圧縮機について、切り込み角度と切り込み高さと浮遊量の関係を試算した結果を示すグラフである。 図8Aは、切り込み角度10°の場合の浮遊量を切り込み高さの関数として示したときの傾きとピストンの重量との関係を示すグラフである。 図8Bは、切り込み角度45°の場合の浮遊量を切り込み高さの関数として示したときの傾きとピストンの重量との関係を示すグラフである。 図9は、切り込み角度が10°と45°の場合の切り込み高さと浮遊量との関係と適切な浮遊量の範囲とを示すグラフである。 図10は、実施形態2に係るロータリ圧縮機の圧縮機構の横断面図である。
《実施形態1》
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。なお、「上」及び「下」は、ロータリ圧縮機(1)を正面から見たとき(図2参照)の方向を指す。また、図において、説明の理解を容易にするためにハッチングを省略している場合がある。
(1)冷凍サイクル装置
図1に示すように、本例のロータリ圧縮機(1)は冷凍サイクル装置(100)に適用される。以下では、ロータリ圧縮機(1)を単に圧縮機(1)と呼ぶ場合がある。冷凍サイクル装置(100)は、例えば室内を空調する空気調和装置である。
冷凍サイクル装置(100)は、室外に配置される室外ユニット(7)と、室内に配置される室内ユニット(8)とを有する。室外ユニット(7)には、圧縮機(1)、アキュームレータ(2)、四方切換弁(3)、室外熱交換器(4)、及び膨張弁(5)が配置される。室内ユニット(8)には、室内熱交換器(6)が配置される。
冷凍サイクル装置(100)は、冷媒回路(9)を備える。冷媒回路(9)には、圧縮機(1)、四方切換弁(3)、室外熱交換器(4)、膨張弁(5)、及び室内熱交換器(6)が接続される。冷媒回路(9)に冷媒が流れることで冷凍サイクルが行われる。
冷凍サイクル装置(100)は、四方切換弁(3)を切り換えることで暖房運転と冷房運転とを行う。冷房運転では、第1冷凍サイクルが行われる。具体的に、四方切換弁(3)の第1ポート(p1)と第3ポート(p3)とが連通し、かつ、第2ポート(p2)と第4ポート(p4)とが連通することで(図1の実線)、室内熱交換器(6)が蒸発器として機能し、室外熱交換器(4)が放熱器として機能する。暖房運転では、第2冷凍サイクルが行われる。具体的に、四方切換弁(3)の第1ポート(p1)と第4ポート(p4)とが連通し、かつ、第2ポート(p2)と第3ポート(p3)とが連通することで(図1の破線)、室内熱交換器(6)が放熱器として機能し、室外熱交換器(4)が蒸発器として機能する。
(2)ロータリ圧縮機
図2に示すように、ロータリ圧縮機(1)は、ケーシング(10)、駆動軸(70)、モータ(20)、及び圧縮機構(30)を備える。駆動軸(70)、モータ(20)及び圧縮機構(30)は、ケーシング(10)内に収納されている。ロータリ圧縮機(1)は、圧縮機構(30)において圧縮された冷媒がケーシング(10)の内部空間(60)に吐出され、内部空間(60)が高圧となる所謂高圧ドーム型に構成される。
(2-1)ケーシング
ケーシング(10)は、縦長に形成される。具体的に、ケーシング(10)は、上下方向に延びる円筒状の胴部(11)と、該胴部(11)の上端を閉塞する上部鏡板(12)と、該胴部(11)の下端を閉塞する下部鏡板(13)とを備えている。上部鏡板(12)及び下部鏡板(13)は、比較的肉厚に形成されている。胴部(11)の下部には、吸入管(14)が設けられ、上部鏡板(12)の上部には吐出管(15)が挿通されている。ケーシング(10)の底部(下部)には、潤滑油が貯留されて油溜まりとなっている。
(2-2)駆動軸
駆動軸(70)は、ケーシング(10)内において、上下方向に延びるように配置されている。駆動軸(70)の上部は、モータ(20)の後述するロータ(22)に連結されている。駆動軸(70)の下部は、上から下に向かって順に、上側主軸部(71)、偏心部(72)、及び下側主軸部(73)を有している。上側主軸部(71)及び下側主軸部(73)は、互いの軸心が一致している。偏心部(72)は、上側主軸部(71)、及び下側主軸部(73)よりも大径に形成され、上側主軸部(71)及び下側主軸部(73)の軸心に対して偏心している。偏心部(72)には、圧縮機構(30)の後述するピストン(35)が連結されている。駆動軸(70)は、モータ(20)に駆動され、ピストン(35)を偏心回転させる。
駆動軸(70)の下部の内部には、潤滑油を圧縮機構(30)の各摺動部に導く給油通路(80)が形成されている。給油通路(80)は、上下方向に延びる1つの主通路(81)と、主通路(81)から駆動軸(70)の外周面まで径方向に延びる複数の分岐通路(82)とを有している。本実施形態1では、分岐通路(82)は、上側主軸部(71)の上下方向の中程で圧縮機構(30)の上側の位置と、偏心部(72)の上下方向の中程の位置とに1つずつ設けられている。駆動軸(70)の下端には、ケーシング(10)の底部に貯留された潤滑油を給油通路(80)に汲み上げるオイルチューブ(図示省略)が設けられている。
(2-3)モータ
モータ(20)は、ケーシング(10)に収容される。モータ(20)は、圧縮機構(30)を駆動する。ケーシング(10)内において、圧縮機構(30)の上側に配置される。モータ(20)は、胴部(11)の内周面に沿った筒状のステータ(21)と、該ステータ(21)の内側に配置されたロータ(22)とを有する。ステータ(21)は、胴部(11)の内面に溶接によって固定されている。なお、ステータ(21)の胴部(11)への固定方法は、溶接に限られず、焼き嵌めや圧入してもよい。
(2-4)圧縮機構
図2~図4に示すように、圧縮機構(30)は、ケーシング(10)内に収容される。圧縮機構(30)は、吸入した冷媒を圧縮してケーシング(10)の内部空間(60)へ吐出する。圧縮機構(30)は、シリンダ(34)、フロントヘッド(41)、リアヘッド(42)及びピストン(35)を備える。圧縮機構(30)は、胴部(11)内面に溶接によって固定されている。
(2-4-1)シリンダ
シリンダ(34)は、厚肉円板状の部材である。図3に示すように、シリンダ(34)には、シリンダボア(31)と、ベーン収容孔(32)と、吸入ポート(55)とが形成される。
シリンダボア(31)は、シリンダ(34)を厚さ方向に貫通する円形孔である。シリンダボア(31)は、シリンダ(34)の中央部に形成される。シリンダボア(31)には、ピストン(35)の主にローラ(36)が収容される。
シリンダ(34)は、内部にシリンダ室(S)を有する。具体的に、シリンダ室(S)は、シリンダボア(31)の外縁を区画するシリンダ(34)の内周面と、ピストン(35)との間に形成される。
ベーン収容孔(32)は、シリンダ(34)の内周面(即ち、シリンダボア(31)の外縁)からシリンダ(34)の径方向の外側へ向かって延びる孔である。このベーン収容孔(32)は、シリンダ(34)を厚さ方向に貫通する。ベーン収容孔(32)には、ピストン(35)のベーン(37)が収容される。
(2-4-2)フロントヘッド
図2及び図4に示すように、フロントヘッド(41)は、シリンダ(34)の軸方向の上端部(上側の開口端面)を閉塞する上端板である。具体的に、フロントヘッド(41)は、シリンダ(34)のモータ(20)側の軸方向端部(図1におけるシリンダ(34)の上側の開口端面)を閉塞する。フロントヘッド(41)は、本開示の上端板(41)の一例である。フロントヘッド(41)は、第1本体部(41a)と、上側軸受部(41b)とを備えている。第1本体部(41a)と、上側軸受部(41b)とは一体に成形されている。
第1本体部(41a)は、概ね円形の厚板状に形成され、外周部が内周部よりも上下方向の厚さが分厚くなるように形成されている。第1本体部(41a)の下面は、シリンダ(34)の上端面に密着している。上側軸受部(41b)は、第1本体部(41a)からモータ(20)側(図1における上側)へ延びる円筒状に形成されている。上側軸受部(41b)は、第1本体部(41a)の中央部に配置される。上側軸受部(41b)は、駆動軸(70)の上側主軸部(71)を回転可能に支持する。
フロントヘッド(41)には、吐出ポート(24)が形成されている。吐出ポート(24)は、フロントヘッド(41)の第1本体部(41a)を上下方向に貫通し、上面において開口する。吐出ポート(24)は、シリンダ室(S)における後述の第2室(52)に連通する。吐出ポート(24)には、リード弁(図示省略)が設けられる。リード弁は、第2室(52)の冷媒の圧力が所定値以上になったときに、吐出ポート(24)の開口端面を閉塞する部分が開口端面から離れることで、冷媒が吐出されるように構成される。
フロントヘッド(41)には、第1本体部(41a)の上方且つ上側軸受部(41b)の周囲を取り囲むように椀状の吐出マフラ(25)が設けられている。吐出マフラ(25)は、吐出ポート(24)及びリード弁(図示省略)を覆うように設けられている。吐出マフラ(25)には、内部のマフラ空間(26)に吐出された冷媒を外部へ流出させる流出口(図示省略)が形成されている。吐出ポート(24)から吐出マフラ(25)内のマフラ空間(26)に吐出された吐出冷媒は、流出口を通ってケーシング(10)の内部空間(60)に流出する。
(2-4-3)リアヘッド
リアヘッド(42)は、シリンダ(34)の軸方向の下端部(下側の開口端面)を閉塞する下端板である。具体的に、リアヘッド(42)は、シリンダ(34)の軸方向においてモータ(20)とは逆側の端部(図1におけるシリンダ(34)の下側の開口端面)を閉塞する。リアヘッド(42)は、第2本体部(42a)と、下側軸受部(42b)とを備えている。
第2本体部(42a)は、概ね円形の厚板状に形成されている。第2本体部(42a)の上面は、シリンダ(34)の下端面に密着している。下側軸受部(42b)は、第2本体部(42a)からシリンダ(34)とは逆側(図2における下側)へ延びる円筒状に形成されている。下側軸受部(42b)は、第2本体部(42a)の中央部に配置される。下側軸受部(42b)は、駆動軸(70)の下側主軸部(73)を回動可能に支持する。
(2-4-4)ピストン
図3に示すように、ピストン(35)は、シリンダ(34)内(シリンダボア(31))に収容され、シリンダ(34)内で偏心回転する。ピストン(35)は、フロントヘッド(41)とリアヘッド(42)との双方に摺動するように構成されている。ピストン(35)は、ローラ(36)とベーン(37)とを有している。
ローラ(36)は、環状に形成される。具体的に、ローラ(36)は、やや厚肉の円筒状に形成されている。駆動軸(70)の偏心部(72)が摺動可能に挿入されている。ローラ(36)は、駆動軸(70)が回転すると、シリンダ(34)の内周面に沿って公転するように構成されている。ローラ(36)は、シリンダ(34)内で摺動できるように、高さhpがシリンダ(34)の高さhcよりも低くなるように形成されている。
詳細については後述するが、図4に示すように、ローラ(36)の下端部には、外周角部を面取りすることにより傾斜面(36b)が形成されている。つまり、ローラ(36)の下端面は、リアヘッド(42)の上面に平行な水平面(第1面)(36a)と、該水平面(36a)の外周側に連続してローラ(36)の外周面(36o)まで延びる傾斜面(第2面)(36b)とを有するように構成されている。一方、ローラ(36)の上端部には、傾斜面は形成されず、ローラ(36)の上端面は、フロントヘッド(41)の上面に平行な水平面のみを有している。
図3に示すように、ベーン(37)は、ローラ(36)と一体に形成される。ベーン(37)は、ローラ(36)の外周面から径方向外方へ突出している。ベーン(37)は、ベーン収容孔(32)に嵌まる。ベーン(37)は、シリンダ(34)の内周面から径方向外方へ延びるブッシュ溝(53)に設けられた一対の揺動ブッシュ(54a,54b)に挟み込まれている。ベーン(37)は、ローラ(36)の公転時に、ローラ(36)の自転を規制するように構成されている。ベーン(37)は、シリンダ室(S)を吸入側の第1室(51)と吐出側の第2室(52)とに区画している。
(3)運転動作
圧縮機(1)では、モータ(20)を起動してロータ(22)を回転させると、図5に示すように、駆動軸(70)が回転し、偏心部(72)がシリンダ(34)内(シリンダ室(S))において偏心回転する。そして、偏心部(72)の偏心回転に伴って、ピストン(35)のローラ(36)が自転を規制しながらシリンダ(34)の内周面に沿って公転する。
ローラ(36)とシリンダ(34)との接触点(CP)の位置について説明する。図3に示すように、ローラ(36)の周方向におけるローラ(36)の中心に対するベーン(37)の中心線(M)の角度位置を0°とし、ローラ(36)の周方向における角度位置が駆動軸(70)の回転方向に進むにつれて増加すると仮定すると、図5に示すように、ローラ(36)は、駆動軸(70)の回転角に等しい角度位置においてシリンダ(34)と接触する。つまり、ローラ(36)とシリンダ(34)との接触点(CP)のローラ(36)の周方向における角度位置は、駆動軸(70)の回転角に等しいものとなる。
具体的には、駆動軸(70)の回転角が0°,360°の状態(図5(A)の状態)では、ローラ(36)は、0°の角度位置にあるベーン(37)の根元部分においてシリンダ(34)と接触する。駆動軸(70)の回転角が45°の状態(図5(B))では、ローラ(36)は、45°の角度位置においてシリンダ(34)と接触する。駆動軸(70)の回転角が90°の状態(図5(C))では、ローラ(36)は、90°の角度位置においてシリンダ(34)と接触する。駆動軸(70)の回転角が135°の状態(図5(D))では、ローラ(36)は、135°の角度位置においてシリンダ(34)と接触する。駆動軸(70)の回転角が180°の状態(図5(E))では、ローラ(36)は、180°の角度位置においてシリンダ(34)と接触する。駆動軸(70)の回転角が225°の状態(図5(F))では、ローラ(36)は、225°の角度位置においてシリンダ(34)と接触する。駆動軸(70)の回転角が270°の状態(図5(G))では、ローラ(36)は、270°の角度位置においてシリンダ(34)と接触する。駆動軸(70)の回転角が315°の状態(図5(H))では、ローラ(36)は、315°の角度位置においてシリンダ(34)と接触する。
シリンダ室(S)へ冷媒を吸入する吸入行程について説明する。駆動軸(70)の回転角が0°の状態(図5(A)の状態)から僅かに回転し、吸入開始角を超えると、吸入ポート(55)と第1室(51)とが連通し、第1室(51)への冷媒の吸入が開始される。なお、吸入開始角は、ローラ(36)が吸入ポート(55)の内周端の角度が最小の第1位置(P1)でシリンダ(34)と接触するとき(ローラ(36)とシリンダ(34)の接触点(CP)が第1位置(P1)にあるとき)の駆動軸(70)の回転角である。
冷媒の吸入は、吸入管(14)から吸入ポート(55)を介して行われる。そして、駆動軸(70)の回転角が大きくなると、次第に、第1室(51)の容積が増大し、第1室(51)へ吸入される冷媒量が増加する(図5(B)~(H)の状態)。そして、駆動軸(70)の回転角が360°を超え、さらに吸入終了角を超えると、第1室(51)は第2室(52)となる。第1室(51)は、駆動軸(70)の回転角が吸入終了角になるまで吸入ポート(55)と連通する。そのため、吸入行程は、駆動軸(70)の回転角が吸入終了角になるまで続く。なお、吸入終了角は、ローラ(36)とシリンダ(34)の接触点(CP)が、吸入ポート(55)の内周端において角度が最大の第2位置(P2)にあるときの駆動軸(70)の回転角である。
シリンダ室(S)で冷媒を圧縮する圧縮行程について説明する。駆動軸(70)の回転角が吸入終了角を超えると、吸入行程から圧縮行程へと移行する。第2室(52)が吸入ポート(55)から遮断され、第2室(52)における冷媒の圧縮が開始される。駆動軸(70)の回転角がさらに大きくなると、第2室(52)の容積が減少し、第2室(52)の圧力が上昇する。第2室(52)の圧力が所定圧力を上回ると、圧縮行程が終了し、吐出行程に移行する。
シリンダ室(S)で冷媒を吐出する吐出行程について説明する。第2室(52)の圧力が所定圧力を上回ると、リード弁(図示省略)が開き、第2室(52)と吐出ポート(24)とが連通する。リード弁が開くと、第2室(52)の冷媒が、吐出ポート(24)から吐出マフラ(25)内のマフラ空間(26)に吐出される。マフラ空間(26)の吐出冷媒は、吐出マフラ(25)の流出口(図示省略)からケーシング(10)内の内部空間(60)に流入した後、吐出管(15)を介して圧縮機(1)の外部へと吐出される。この冷媒の吐出行程は、駆動軸(70)の回転角が360°になるまで続く。
以上のように、圧縮機(1)では、シリンダ室(S)において、吸入行程と圧縮行程と吐出行程とが繰り返されることによって、冷媒の圧縮動作が連続的に行われる。
(4)ローラとシリンダとの隙間について
上述のように、ローラ(36)は、シリンダ(34)内で摺動できるように、高さhpがシリンダ(34)の高さhcよりも低くなるように形成されている。そのため、ローラ(36)の上端面とフロントヘッド(41)の下端面との間、及びローラ(36)の下端面とリアヘッド(42)の上端面との間には、隙間が形成される。このローラ(36)の上下に形成される隙間には、給油通路(80)を介してケーシング(10)の底部に貯留された高圧の潤滑油(油溜まりの潤滑油)が供給されてシールされる。具体的には、駆動軸(70)の回転に伴い、駆動軸(70)の下端部に設けられたオイルチューブ(図示省略)によって主通路(81)に汲み上げられた潤滑油が、駆動軸(70)の偏心部(72)の上下方向の中程において開口する分岐通路(82)から流出し、上記隙間に供給される。
ローラ(36)の摺動性を考慮すると、ローラ(36)の上下の隙間はある程度大きく形成する必要があるが、隙間が大きすぎると、隙間に供給された高圧の潤滑油がローラ(36)とシリンダ(34)との間のシリンダ室(S)(第1室(51)及び第2室(52))へ漏れ易くなる。高圧の潤滑油には多量の冷媒が溶解している。そのような多量の冷媒が溶解した高圧の潤滑油が比較的圧力の低いシリンダ室(S)に大量に漏れると、漏れた高圧の潤滑油から冷媒が大量に分離されることとなる。つまり、比較的圧力の低いシリンダ室(S)に高圧の冷媒が大量に流入する(所謂、冷媒漏れが生じる)こととなり、圧縮機効率の著しい低下を招くこととなる。摺動性の確保と漏れ損失の抑制との両立を図るには、ローラ(36)の上下の隙間を必要最小限にした上で、ローラ(36)の上下の隙間の高さが均一になるように、圧縮機(1)の運転時にローラ(36)が適切な高さまで浮上するように構成することが好ましい。
そこで、本開示のロータリ圧縮機(1)では、運転時にローラ(36)が適切な高さ(ローラ(36)の上下の隙間の高さが同程度になる高さ)まで浮上するように、ローラ(36)の下端部に傾斜面(36b)を形成している。以下、傾斜面(36b)について詳細に説明する。
(5)傾斜面
図4の拡大図に示すように、ローラ(36)の下端部に、外周角部を面取りすることにより傾斜面(36b)を形成している。この傾斜面(36b)は、径方向の外側に向かう程、上方に位置するように傾斜している。ローラ(36)の下端面の傾斜面(36b)以外の部分は、リアヘッド(42)の上面に平行な水平面(36a)に構成されている。
図3に示すように、傾斜面(36b)は、ベーン(37)を跨がないようにローラ(36)の周方向のベーン(37)がある角度範囲を除く全周、より具体的には、ローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置(図3における吸入側の側面の根元側端部とローラ(36)の中心とを結んだ線上)からベーン(37)の吐出側の側面の角度位置(図3における吐出側の側面の根元側端部とローラ(36)の中心とを結んだ線上)までの範囲に亘って形成されている。
図4の拡大図に示すように、傾斜面(36b)は、水平面(36a)の外周側に連続してローラ(36)の外周面(36o)まで延びている。傾斜面(36b)の切り込み角度φ(傾斜面(36b)の水平面(36a)に対する角度)は、10°以上45°以下の角度である。また、傾斜面(36b)の切り込み高さX(傾斜面(36b)の外側端と水平面(36a)との駆動軸(70)の軸方向に沿った距離)は、0.01mm以上5mm以下の高さである。なお、傾斜面(36b)の切り込み高さXは、ローラ(36)の厚さt(径方向の幅)の2分の1以下とするのが好ましい。
(6)くさび効果
上記傾斜面(36b)を形成することにより、ローラ(36)の下端面とリアヘッド(42)の上端面との間には、外周側にくさび状(縦断面において三角形状)の隙間(90)が形成される。このような構成により、運転時には、圧縮機構(30)の各摺動部に高圧の潤滑油が供給され、一部はシリンダ(34)とローラ(36)との間のシリンダ室(S)に至るが、このシリンダ室(S)に至った潤滑油が、ローラ(36)の偏心回転によって上記くさび状の隙間(90)の外周側の入口から奥側(ローラ(36)の中心側)に押し込まれる。このようにして奥側へ押し込まれた高圧の潤滑油により、ローラ(36)には上向きの力が作用し、ローラ(36)が浮き上がる。つまり、くさび状の隙間(90)の奥側へ押し込まれた高圧の潤滑油がくさびのように作用することにより、ローラ(36)が浮き上がる(くさび効果)。
また、傾斜面(36b)をローラ(36)の外周側に形成することにより、くさび状の隙間(90)には、回転しないシリンダ(34)と偏心回転するローラ(36)との間にある潤滑油が流入することとなり、上記隙間(90)に流入する潤滑油と潤滑油による作用面となる傾斜面(36b)の相対速度が、傾斜面をローラ(36)の内周側に形成した場合に比べて大きくなる。そのため、上述のくさび効果によってローラ(36)に作用する上向きの力が大きくなり、ローラ(36)を十分に浮き上がらせることができる。
本実施形態1のロータリ圧縮機(1)は、ローラ(36)とベーン(37)とが一体に形成されたピストン(35)を備えるスイング式の圧縮機(1)である。スイング式の圧縮機(1)では、ローラ(36)は、駆動軸(70)の回転に伴ってシリンダ(34)内で偏心回転(公転)はするが、自転はしない。そのため、上述のように、ローラ(36)の周方向におけるローラ(36)の中心に対するベーン(37)の中心線(M)の角度位置を0°とし、ローラ(36)の周方向における角度位置が駆動軸(70)の回転方向に進むにつれて増加すると仮定すると、ローラ(36)は、駆動軸(70)の回転角に等しい角度位置においてシリンダ(34)と接触する。つまり、ローラ(36)とシリンダ(34)との接触点(CP)のローラ(36)の周方向における角度位置は、駆動軸(70)の回転角に等しいものとなる。
ところで、上述したように、運転時に、ローラ(36)の上下に形成される隙間が大きすぎると、隙間に供給された高圧の潤滑油がシリンダ室(S)へ漏れ易くなる。シリンダ室(S)に潤滑油が漏れることにより、3種類の冷媒の漏れ損失(CR(cylinder roller)漏れ損失)が生じる。
1つ目の漏れ損失は、高圧の潤滑油がローラ(36)の上下の隙間を介して第1室(51)へ漏れることによって生じる吸入室側隙間漏れによる損失である。具体的には、低圧圧力状態の第1室(51)に漏れた潤滑油から冷媒が分離して第1室(51)に流入することにより、吸入容積が減少して圧縮機効率が低下する。
2つ目の漏れ損失は、高圧の潤滑油がローラ(36)の上下の隙間を介して比較的圧力の低い第2室(52)へ漏れることによって生じる圧縮室側隙間漏れによる損失である。具体的には、比較的圧力の低い第2室(52)に漏れた潤滑油から冷媒が分離して第2室(52)に流入することにより、圧縮負荷が増大して圧縮機効率が低下する。
3つ目の漏れ損失は、ローラ(36)がシリンダ(34)の内周面に沿って公転するために、第2室(52)に漏れた潤滑油が第1室(52)に流入する(シリンダ室(S)内において冷媒が漏れた箇所が第2室(52)から第1室(51)へ変わる)ことにより生じるローラ軌跡漏れによる損失である。3つ目のローラ軌跡漏れによる損失は、1つ目の吸入室側隙間漏れによる損失と同様に、吸入容積が減少して圧縮機効率が低下する。
図6A~図6Cは、駆動軸(70)が1回転する間における潤滑油の漏れ量の変化を示すグラフである。図6Aの破線は、第1室(51)への潤滑油の漏れ量(吸入室側隙間漏れによる漏れ量とローラ軌跡漏れによる漏れ量の合計)の変化を示している。図6Bの破線は、第2室(52)への潤滑油の漏れ量(圧縮室側隙間漏れによる漏れ量)の変化を示している。図6Cの破線は、図6Aと図6Bにおいて破線で示す漏れ量を足し合わせたもの、即ち、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量の変化を示している。
上述した1つ目の漏れ損失に繋がる吸入室側隙間漏れの漏れ量は、ケーシング(10)の内部空間(60)の圧力(潤滑油の圧力)と第1室(51)の内圧との差と、ローラ(36)の外周面の第1室(51)に面する部分の円弧長さとにより決まり、第1室(51)の容積が大きくなる程(回転角が増える程)多くなる。また、上述した3つ目の漏れ損失に繋がるローラ軌跡漏れの漏れ量も、第1室(51)の容積が大きくなる程(回転角が増える程)多くなる。そのため、図6Aに破線で示す第1室(51)への潤滑油の漏れ量(吸入室側隙間漏れによる漏れ量とローラ軌跡漏れによる漏れ量の合計)は、第1室(51)の容積が大きくなる程(回転角が増える程)大きくなる。具体的には、駆動軸(70)の回転角が0°付近のときに最も小さく、回転角が増える程増加し、駆動軸(70)の回転角が360°のときに最大となる。
一方、上述した2つ目の漏れ損失に繋がる図6Bに破線で示す圧縮室側隙間漏れの漏れ量は、ケーシング(10)の内部空間(60)の圧力(潤滑油の圧力)と第2室(52)の内圧との差と、ローラ(36)の外周面の第2室(52)に面する部分の円弧長さとにより決まり、第2室(52)の容積が小さくなる程(回転角が増える程)少なくなる。具体的には、駆動軸(70)の回転角が0°付近のときに最も大きく、回転角が増える程減少し、吐出行程が開始される駆動軸(70)の回転角が180°付近のときに0となる。
よって、図6Cに破線で示すシリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量は、駆動軸(70)の回転角が0°から180°に至るまでは、図6Bに破線で示す圧縮室側隙間漏れの影響が大きく、駆動軸(70)の回転角が0°付近で最も大きく、回転角が増える程減少し、吐出行程が開始される駆動軸(70)の回転角が180°付近のときに最低となる。一方、吐出行程が開始される駆動軸(70)の回転角が180°付近から360°に至るまでは、図6Bに破線で示す圧縮室側隙間漏れは0となるため、図6Aに破線で示す第1室(51)への潤滑油の漏れ量がそのまま反映される。具体的には、駆動軸(70)の回転角が180°付近のときに最も小さく、回転角が増える程増加し、駆動軸(70)の回転角が360°のときに最大となる。このように、スイング式の圧縮機(ロータリ圧縮機)(1)では、ローラ(36)の上下の隙間からシリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量は、駆動軸(70)が1回転する間に増減し、駆動軸(70)の回転角が0°(360°)のときに、特に多くなる。
また、図6Cに破線で示すように、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量は、駆動軸(70)が1回転する間に増減するものの、駆動軸(70)の回転角が0°から360°に亘り、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れは生じ、漏れ損失も生じる。そのため、本実施形態1では、駆動軸(70)の回転角がいずれの角度でも、ローラ(36)が適切な高さ(ローラ(36)の上下の隙間の高さが同程度になる高さ)まで浮上するように、傾斜面(36b)をローラ(36)の周方向のほぼ全周(ローラ(36)の周方向のベーン(37)がある角度範囲は除く)に形成している。
ところで、ローラ(36)の周方向においてαからα+180°の角度範囲に傾斜面(36b)を形成すると、駆動軸(70)の回転角がαのときに上述のくさび効果が効果的に得られ、ローラ(36)が効果的に浮上する。本実施形態1では、傾斜面(36b)をローラ(36)の周方向のほぼ全周に亘り形成しているため、駆動軸(70)の回転角がいずれの角度であっても、ローラ(36)が浮上することとなる。
なお、図6A~図6Cに実線で示すグラフは、傾斜面(36b)をローラ(36)の周方向のほぼ全周に亘り形成した本実施形態1のロータリ圧縮機(1)における、駆動軸(70)が1回転する間における潤滑油の漏れ量の変化を示すものである。図6Aの実線は、第1室(51)への潤滑油の漏れ量(吸入室側隙間漏れによる漏れ量とローラ軌跡漏れによる漏れ量の合計)の変化を示している。図6Bの実線は、第2室(52)への潤滑油の漏れ量(圧縮室側隙間漏れによる漏れ量)の変化を示している。図6Cの実線は、図6Aと図6Bにおいて実線で示す漏れ量を足し合わせたもの、即ち、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量の変化を示している。
上述のように、傾斜面(36b)をローラ(36)の周方向のほぼ全周に亘り形成することにより、図6Aに示すように、第1室(51)への潤滑油の漏れ量(吸入室側隙間漏れによる漏れ量とローラ軌跡漏れによる漏れ量の合計)は、破線のグラフから実線のグラフに変化し、大幅に低減されることとなる。また、図6Bに示すように、第2室(51)への潤滑油の漏れ量(圧縮室側隙間漏れによる漏れ量)も、破線のグラフから実線のグラフに変化し、大幅に低減されることとなる。よって、図6Cに示すように、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量も、破線のグラフから実線のグラフに変化し、大幅に低減されることとなる。
(7)傾斜面形成手法1
本願の発明者等は、大きさの異なる種々のロータリ圧縮機(1)について、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得る傾斜面(36b)を容易に形成するための手法について検討し、以下の傾斜面形成手法1を導き出した。
傾斜面形成手法1は、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得る傾斜面(36b)の切り込み高さX(傾斜面(36b)の外側端と水平面(36a)との駆動軸(70)の軸方向に沿った距離)の範囲を、ピストン(35)の重量m(ローラ(36)の重量とベーン(37)の重量の和)と、シリンダ(34)とローラ(36)の高さの差ΔHとを用いて示す下記の数式(1)を導出し、これを用いて傾斜面(36b)を形成(設計)するものである。
(ΔH÷2×0.75)÷(0.0055×m-0.893)≦X≦(ΔH÷2×1.25)÷(0.00006m-1.118)…(1)
傾斜面(36b)を形成するに際し、傾斜面(36b)の切り込み角度φを10°以上45°以下の角度とした上で、傾斜面(36b)の切り込み高さXを上記の数式(1)を満たすものとすれば、運転時にローラ(36)が適切な高さまで浮上し得るロータリ圧縮機(1)を容易に形成することができる。
<数式(1)の導出手法>
まず、大きさの異なる(ピストン(35)の質量mが異なる)下記の5タイプのロータリ圧縮機(1)について、傾斜面(36b)の切り込み角度φを10°、20°、30°、45°としたときの傾斜面(36b)の切り込み高さXとピストン(35)の浮遊量Yとの関係を試算した。図7Aは、ピストン(35)が最も軽いAタイプの試算結果を示し、図7Bは、ピストン(35)が最も重いEタイプの試算結果を示す。なお、5タイプのロータリ圧縮機(1)は、全て上述の構成を備えるもので、大きさ(重量)のみが異なるものである。
A:ピストン(35)の質量mが0.01kgのロータリ圧縮機
B:ピストン(35)の質量mが0.025kgのロータリ圧縮機
C:ピストン(35)の質量mが0.05kgのロータリ圧縮機
D:ピストン(35)の質量mが0.075kgのロータリ圧縮機
E:ピストン(35)の質量mが0.1kgのロータリ圧縮機
試算は、まず、ロータリ圧縮機(1)の運転中に、ピストン(35)の浮遊量が0である状態において、上述のくさび効果によってローラ(36)に作用する上向きの力pyを算出する(ステップ1)。くさび効果によってローラ(36)に作用する上向きの力pyは、下記の数式(2)~(5)を用いて算出する。なお、下記の数式(2)~(5)において、x、η、r、a、δ、θ、h、X、φについては以下の通りとする。
x:ローラ(36)の径方向における外周面からの距離(mm)
η:潤滑油の粘度(mPa・s)
r:偏心部(72)の偏心量(mm)
a:ローラ(36)の外周半径(mm)
δ:ピストン(35)の進行方向を0°としたときの傾斜面(36b)の角度(rad)
(-π/2<δ<π/2)
θ:駆動軸(70)の回転角(rad)
h:ローラ(36)の径方向の外周面からの距離xの位置における傾斜面(36b)の水平面(36a)に対する高さ(駆動軸(70)の軸方向の距離)(mm)
X:ローラ(36)の径方向の外周面における傾斜面(36b)の水平面(36a)に対する高さ(駆動軸(70)の軸方向の距離)(mm)
φ:傾斜面(36b)の切り込み角度(°)
そして、算出した上向きの力pyによるピストン(35)の浮遊量yを求める(ステップ2)。次に、浮遊量yだけピストン(35)が浮き上がった状態において、くさび効果によってローラ(36)に作用する上向きの力pyを算出し(ステップ3)、この上向きの力pyとピストン(35)の重量mとが釣り合うかを判断する(ステップ4)。
ステップ4において、上向きの力pyとピストン(35)の重量mとが釣り合う場合、上向きの力pyによるピストン(35)の浮遊量yを求め、求めた浮遊量yをピストン(35)の浮遊量Yとして決定する。
一方、ステップ4において、上向きの力pyとピストン(35)の重量mとが釣り合わない場合、ステップ2に戻り、上向きの力pyによるピストン(35)の浮遊量yを再度求める(ステップ2)。そして、浮遊量yだけピストン(35)が浮き上がった状態において、くさび効果によってローラ(36)に作用する上向きの力pyを再度算出し(ステップ3)、この上向きの力pyとピストン(35)の重量mとが釣り合うかを判断する(ステップ4)。
以上のステップを繰り返すことにより、ピストン(35)の浮遊量Yを決定する。そして、上記試算により求めた切り込み角度φ毎の浮遊量Yを切り込み高さXの関数とする関係式を求めたところ、以下のようになった。なお、図7Aにはピストン(35)が最も軽いAタイプの結果を示し、図7Eにはピストン(35)が最も重いEタイプの結果を示している。
(7-1)Aタイプ:m=0.01の場合
φ=10:Y=0.3313X …A10
φ=20:Y=0.0938X …A20
φ=30:Y=0.0366X …A30
φ=45:Y=0.0103X …A45
(7-2)Bタイプ:m=0.025の場合
φ=10:Y=0.1532X …B10
φ=20:Y=0.0395X …B20
φ=30:Y=0.0149X …B30
φ=45:Y=0.0041X …B45
(7-3)Cタイプ:m=0.05の場合
φ=10:Y=0.0817X …C10
φ=20:Y=0.0075X …C20
φ=30:Y=0.0202X …C30
φ=45:Y=0.002X …C45
(7-4)Dタイプ:m=0.075の場合
φ=10:Y=0.0559X …D10
φ=20:Y=0.0135X …D20
φ=30:Y=0.0049X …D30
φ=45:Y=0.0009X …D45
(7-5)Eタイプ:m=0.1の場合
φ=10:Y=0.0424X …E10
φ=20:Y=0.0101X …E20
φ=30:Y=0.0037X …E30
φ=45:Y=0.0009X …E45
上記のA~Eタイプの試算結果より、ピストン(35)の質量mが軽く、傾斜面(36b)の切り込み角度φが小さい程、傾斜面(36b)の切り込み高さXに対する浮遊量Yの関係を示す線分の傾き(関数の傾き)が大きく、逆に、ピストン(35)の質量mが重く、傾斜面(36b)の切り込み角度φが大きい程、傾斜面(36b)の切り込み高さXに対する浮遊量Yの関係を示す線分の傾き(関数の傾き)が小さいことが判る。
そこで、次に、A~Eタイプについて切り込み角度φ(10°、20°、30°、45°)毎に求めた上記関数A10~E45のうち、傾きIが最大となる切り込み角度φが10°の関数A10,B10,C10,D10,E10と、傾きIが最小となる切り込み角度φが45°の関数A45,B45,C45,D45,E45とのそれぞれについて、傾きIとピストン(35)の重量mとの関係を示す近似式を算出した。
具体的には、図8Aに示すように、切り込み角度φが10°の関数A10,B10,C10,D10,E10それぞれの傾きIとピストン(35)の重量mとの関係を示し、切り込み角度φが10°の関数A10,B10,C10,D10,E10の傾きIをピストン(35)の重量mの関数とする近似式を求めたところ、I=0.0055m-0.893となった。
同様に、図8Bに示すように、切り込み角度φが45°の関数A45,B45,C45,D45,E45それぞれの傾きIとピストン(35)の重量mとの関係を示し、切り込み角度φが45°の関数A45,B45,C45,D45,E45の傾きIをピストン(35)の重量mの関数とする近似式を求めたところ、I=0.00006m-1.118となった。
次に、切り込み角度φが10°の関数A10,B10,C10,D10,E10の傾きIの近似式I=0.0055m-0.893と、切り込み角度φが45°の関数A45,B45,C45,D45,E45の傾きIの近似式I=0.00006m-1.118とを用いて、浮遊量Yが適切な値となり得る切り込み高さXの範囲を求めた。
具体的には、浮遊量Yの適正範囲をΔH÷2×0.75≦Y≦ΔH÷2×1.25とし、図9に示すように、切り込み角度φが10°の浮遊量Yと切り込み高さXの関係を示す線分L1(Y=0.0055×m-0.893・X)と、切り込み角度φが45°の浮遊量Yと切り込み高さXの関係を示す線分L2(Y=0.00006m-1.118・X)と、浮遊量Yの適正範囲の下限値を示す線分L3(Y=ΔH÷2×0.75)と、浮遊量Yの適正範囲の上限値を示す線分L4(Y=ΔH÷2×1.25)とによって囲まれる範囲(図9において斜線を付した範囲)に入る得る切り込み高さXの範囲(上記数式(1)、図9では、X1≦X≦X2)を導出し、この範囲を浮遊量Yが適切な値となり得る切り込み高さXの範囲とした。
(8)傾斜面形成手法2
さらに、本願の発明者等は、上記傾斜面形成手法1とは異なる手法で、大きさの異なる種々のロータリ圧縮機(1)について、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得る傾斜面(36b)を容易に形成するための手法について検討し、以下の傾斜面形成手法2を導き出した。
傾斜面形成手法2は、運転時にローラ(36)の浮遊量Yが適正範囲(ΔH÷2×0.75≦Y≦ΔH÷2×1.25)内に入り得るピストン(35)の重量mと切り込み角度φと切り込み高さXとの関係式を導出し、これを用いて傾斜面(36b)を設計するものである。
まず、ピストン(35)の重量mが0.01kg、0.05kg、0.1kgである3種のロータリ圧縮機(1)(傾斜面形成手法1のAタイプ、Cタイプ、Eタイプ)について、浮遊量Yの適正範囲(ΔH÷2×0.75≦Y≦ΔH÷2×1.25)を求めたところ、以下の通りであった。なお、m=0.01kgの場合、ΔH=0.015であり、m=0.05kgの場合、ΔH=0.022であり、m=0.1kgの場合、ΔH=0.028であった。
(8-1)Aタイプ:m=0.01の場合
0.00563≦Y≦0.009375
(8-2)Cタイプ:m=0.05の場合
0.00825≦Y≦0.0138
(8-3)Eタイプ:m=0.1の場合
0.0105≦Y≦0.0175
次に、図7Aに示すAタイプの切り込み角度φ毎の浮遊量Yを切り込み高さXの関数とする関係式において、(8-1)の浮遊量Yの適正範囲に入り得る切り込み高さXと切り込み角度φの範囲、Cタイプの切り込み角度φ毎の浮遊量Yを切り込み高さXの関数とする関係式において(8-2)の浮遊量Yの適正範囲に入り得る切り込み高さXと切り込み角度φの範囲、及び図7Bに示すEタイプの切り込み角度φ毎の浮遊量Yを切り込み高さXの関数とする関係式において(8-3)の浮遊量Yの適正範囲に入り得る切り込み高さXと切り込み角度φの範囲をそれぞれ求めたところ、以下のようになった。
(8-4)m=0.01の場合
10°≦φ≦20°、且つ、0.017≦X≦0.10
20°<φ≦30°、且つ、0.060≦X≦0.26
30°<φ≦45°、且つ、0.15≦X≦0.91
(8-5)m=0.05の場合
10°<φ≦20°、且つ、0.10≦X≦0.68
20°<φ≦30°、且つ、0.41≦X≦1.84
30°<φ≦45°、且つ、1.10≦X≦5.00
(8-6)m=0.1の場合
10°<φ≦20°、且つ、0.25≦X≦1.73
20°<φ≦30°、且つ、1.04≦X≦4.70
30°<φ≦45°、且つ、2.84≦X≦5.00
以上の結果より、浮遊量Yが適正範囲に入り得るピストン(35)の重量mと切り込み角度φと切り込み高さXとの関係として、以下の(8-7)~(8-9)に示す関係式を導出した。そして、傾斜面(36b)を形成するに際し、(8-7)~(8-9)に示す関係式を満たすものとすれば、運転時にローラ(36)が適切な高さまで浮上し得るロータリ圧縮機(1)を形成することができる。
(8-7)m≦0.03の場合
10°≦φ≦45°、且つ、0.017≦X≦0.91
(8-8)0.03<m≦0.06の場合
10°≦φ≦45°、且つ、0.10≦X≦5.00
(8-9)m>0.06の場合
10°≦φ≦45°、且つ、0.25≦X≦5.00
また、上記の結果より、上記(8-7)~(8-9)に示す関係式よりもさらに詳細な以下の(8-10)~(8-12)に示す関係式を導出することもできる。そして、傾斜面(36b)を形成するに際し、(8-10)~(8-12)に示す関係式を満たすものとすれば、運転時にローラ(36)がより適切な高さまで浮上し得るロータリ圧縮機(1)を形成することができる。
(8-10)m≦0.03の場合
10°≦φ≦20°、且つ、0.017≦X≦0.10
20°<φ≦30°、且つ、0.060≦X≦0.26
30°<φ≦45°、且つ、0.15≦X≦0.9
(8-11)0.03<m≦0.06の場合
10°<φ≦20°、且つ、0.10≦X≦0.68
20°<φ≦30°、且つ、0.41≦X≦1.84
30°<φ≦45°、且つ、1.1≦X≦5.0
(8-12)m>0.06の場合
10°<φ≦20°、且つ、0.25≦X≦1.73
20°<φ≦30°、且つ、1.04≦X≦4.7
30°<φ≦45°、且つ、2.84≦X≦5.0
-実施形態1の効果-
本実施形態1のロータリ圧縮機(1)では、ローラ(36)の下端面の外周側の一部を、径方向の外側に向かう程、上方に位置するように傾斜する傾斜面(第2面)(36b)に構成している。このような構成により、ローラ(36)の下端面とリアヘッド(下端板)(42)との間には外周側にくさび状の隙間(90)が形成される。このような隙間(90)を形成することにより、運転時には、圧縮機構(30)の各摺動部にケーシング(10)内の圧力同等の高圧の潤滑油が供給され、一部はシリンダ(34)とローラ(36)との間の空間(シリンダ室(S))に至るが、このシリンダ室(S)に至った潤滑油は、ローラ(36)がシリンダ(34)内で偏心回転することにより、上記くさび状の隙間(90)において外周側の入口から奥側(ローラ(36)の中心側)に押し込まれる。このようにして押し込まれた高圧の潤滑油により、ローラ(36)には上向きの力が作用し、ローラ(36)が浮き上がる(くさび効果)。従って、本実施形態1によれば、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得るロータリ圧縮機(1)を提供することができる。また、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させることができると、ローラ(36)の上下に形成される隙間からシリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量を低減することができるため、漏れ損失を低減することができる。
また、本実施形態1のロータリ圧縮機(1)では、傾斜面(36b)をローラ(36)の外周側に形成することにより、くさび状の隙間(90)には、回転しないシリンダ(34)と偏心回転するローラ(36)との間にある潤滑油が流入することとなり、上記隙間(90)に流入する潤滑油と潤滑油による作用面(傾斜面)の相対速度が、傾斜面をローラ(36)の内周側に形成した場合に比べて大きくなる。そのため、上述のくさび効果によってローラ(36)に作用する上向きの力が大きくなり、ローラ(36)を十分に浮き上がらせることができる。従って、本実施形態1によれば、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得るロータリ圧縮機(1)を提供することができる。
また、本実施形態1では、大きさの異なる種々のロータリ圧縮機(1)について、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得るくさび状の隙間(90)の高さ(切り込み高さ)Xの範囲を試算し、ピストン(35)の重量(ローラ(36)の重量とベーン(37)の重量の和)mと、シリンダ(34)とローラ(36)の高さの差ΔHとを用いて示される上述の数式(1)を導出し、上記数式(1)を満たすように傾斜面(36b)を形成することとしている。このようにして傾斜面(36b)を形成(設計)することにより、運転時にローラ(36)を適切な高さまで浮上させ得る種々の大きさのロータリ圧縮機(1)を容易に構成することができる。
また、本実施形態1では、ロータリ圧縮機(1)を、ローラ(36)とベーン(37)とが一体に形成されたピストン(35)を備えるスイング式の圧縮機としている。スイング式の圧縮機では、図6Cに示すように、駆動軸(70)が1回転するうちの駆動軸(70)の回転角が0°(360°)のときに、ローラ(36)の上下の隙間からシリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量が特に多くなる。
ところで、上述のように、ローラ(36)の周方向においてαからα+180°の角度範囲に傾斜面(36b)を形成すると、駆動軸(70)の回転角がαのときに上述のくさび効果が効果的に得られ、ローラ(36)が効果的に浮上する。
そこで、本実施形態1では、少なくともローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から180°までの範囲に亘って傾斜面(36b)を形成することとしている。このような構成によると、駆動軸(70)の回転角が0°のときにくさび効果が効果的に生じ、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量が特に多い駆動軸(70)の回転角が0°のときに、ローラ(36)を確実に浮上させることができる。従って、本実施形態1によれば、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量を低減することができ、漏れ損失を低減することができる。
また、本実施形態1では、傾斜面(36b)が、ローラ(36)の周方向のベーン(37)がある角度範囲を除き、ローラ(36)の周方向のほぼ全周に形成されている。駆動軸(70)の回転角がいずれの角度であっても、ローラ(36)を浮上させることができるため、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量を低減することができ、漏れ損失を低減することができる。
《実施形態2》
実施形態2は、実施形態1のロータリ圧縮機(1)の傾斜面(36b)の構成を変更したものである。
具体的には、図10に示すように、実施形態2では、傾斜面(36b)は、実施形態1のように、ローラ(36)の周方向のほぼ全周(ローラ(36)の周方向のベーン(37)がある角度範囲は除く)に亘って形成するのではなく、ローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から270°までの範囲に亘って形成されている。そのため、実施形態2では、ローラ(36)の周方向における270°からベーン(37)の吐出側の側面の角度位置までの範囲には、傾斜面(36b)は形成されない。
ところで、上述したように、ローラ(36)を適切な高さまで浮上させることでローラ(36)の上下に形成される隙間からシリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量を低減する観点からは、傾斜面(36b)の形成範囲(ローラ(36)の周方向における傾斜面(36b)が形成される角度範囲)を可能な限り広くする(実施形態1のようにほぼ全周に亘る)のが好ましい。一方、ローラ(36)の下端部の外周角部を面取りして傾斜面(36b)を形成し、傾斜面(36b)とリアヘッド(42)の上面との間にくさび状の隙間(90)を形成すると、ローラ(36)を浮上させることでローラ(36)の上下の隙間からシリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量は低減できるが、第2室(52)で圧縮された冷媒が上記隙間(90)を介して第1室(51)へ漏れて性能低下に繋がる虞がある。傾斜面(36b)の形成範囲が広くなればなる程、上記隙間(90)を介した冷媒漏れは生じ易くなり、性能低下を招く虞が高くなる。そのため、上記隙間(90)を介する第2室(52)から第1室(51)への冷媒漏れを低減する観点からは、傾斜面(36b)の形成範囲を可能な限り狭くするのが好ましい。
そこで、実施形態2では、上述のように、ローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から270°までの範囲に限って傾斜面(36b)を形成することとしている。このように傾斜面(36b)を形成することにより、シリンダ室(S)(主に、第2室(52))への潤滑油の漏れ量が多い駆動軸(70)の回転角が0°から180°までの間は、ローラ(36)を浮上させることができるため、シリンダ室(S)への潤滑油の漏れ量をより大幅に低減することができ、漏れ損失も大幅に低減することができる。一方、ローラ(36)の周方向における270°からベーン(37)の吐出側の側面の角度位置までの範囲には、傾斜面(36b)を形成しないようにすることにより、傾斜面(36b)を形成することによって生じるくさび状の隙間(90)を介した第2室(52)から第1室(51)への冷媒漏れを低減することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態1,2では、本開示のロータリ圧縮機(1)の一例として、ローラ(36)とベーン(37)とが一体に形成されたピストン(35)を備えるスイング式の圧縮機について説明したが、本開示のロータリ圧縮機(1)は、スイング式の圧縮機に限られない。本開示のロータリ圧縮機(1)は、ローラとは別体のベーンがローラに当接しながらローラが偏心回転する所謂ローリングピストン式のロータリ圧縮機や、ローラの外周面の凹部にベーンの先端が回転可能に嵌合した状態でローラが偏心回転する所謂ヒンジベーン式のロータリ圧縮機であってもよい。
また、上記実施形態1,2では、本開示のロータリ圧縮機(1)の一例として、1つのシリンダ(34)を備える所謂単気筒式(1シリンダ式)のロータリ圧縮機について説明したが、本開示のロータリ圧縮機(1)は、単気筒式に限られない。本開示のロータリ圧縮機(1)は、複数のシリンダ(34)を備える所謂多気筒式のロータリ圧縮機(1)であってもよい。多気筒式のロータリ圧縮機(1)とする場合、各シリンダ(34)内で偏心回転するローラ(36)のそれぞれの下端面が傾斜面(第2面)(36b)を有するように構成すればよい。このように構成することで、運転時に各シリンダ(34)内で各ローラ(36)が適切な高さまで浮上することとなる。
また、上記実施形態2では、傾斜面(36b)を、ローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から270°までの範囲に限って形成し、270°からベーン(37)の吐出側の側面の角度位置までの範囲には形成しないこととしていた。このように傾斜面(36b)をローラ(36)の周方向における一部の角度範囲のみに限って形成する場合、傾斜面(36b)の始端は、実施形態2と同様にローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置に設けるのが好ましいが、傾斜面(36b)の終端は、ローラ(36)の周方向における180°以上270°以下の所定の角度位置に設ければよく、270°の位置に限られない。傾斜面(36b)の始端をローラ(36)の周方向におけるベーン(37)の吸入側の側面の角度位置に設け、傾斜面(36b)の終端をローラ(36)の周方向における180°以上270°以下の所定の角度位置に設ければ、実施形態2と同様の効果を奏することができる。
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
以上説明したように、本開示は、ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置について有用である。
1 ロータリ圧縮機
9 冷媒回路
10 ケーシング
20 モータ
30 圧縮機構
34 シリンダ
35 ピストン
36 ローラ
36a 水平面(第1面)
36b 傾斜面(第2面)
36o 外周面
37 ベーン
41 フロントヘッド(上端板)
42 リアヘッド(下端板)
51 第1室
52 第2室
70 駆動軸
100 冷凍サイクル装置

Claims (6)

  1. ケーシング(10)と、
    上記ケーシング(10)内に設けられ、上下方向に延びる駆動軸(70)と、
    上記ケーシング(10)内に設けられ、上記駆動軸(70)を駆動するモータ(20)と、
    上記ケーシング(10)内に設けられ、上記駆動軸(70)に連結されて上記モータ(20)によって回転駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機構(30)とを備え、
    上記圧縮機構(30)は、
    円筒状のシリンダ(34)と、
    上記シリンダ(34)の上下の開口端面を閉塞する上端板(41)及び下端板(42)と、
    上記駆動軸(70)に取り付けられて上記シリンダ(34)内で偏心回転する円筒状のローラ(36)と、
    上記シリンダ(34)と上記ローラ(36)との間の空間を吸入側の第1室(51)と吐出側の第2室(52)とに区画するベーン(37)とを有し、
    上記ローラ(36)の下端面は、上記下端板(42)の上面に平行な第1面(36a)と、該第1面(36a)の外周側に連続して上記ローラ(36)の外周面(36o)まで延びる第2面(36b)とを有し、
    上記第2面(36b)は、径方向の外側に向かう程、上方に位置するように傾斜し、
    上記第2面(36b)は、
    上記ローラ(36)の重量と上記ベーン(37)の重量の和をm、
    上記第2面(36b)の外側端と上記第1面(36a)との上記駆動軸(70)の軸方向に沿った距離をX、
    上記シリンダ(34)の高さと上記ローラ(36)の高さの差をΔHとしたときに、
    下記の数式(1)を満たすものである
    (ΔH÷2×0.75)÷(0.0055×m-0.893)≦X≦(ΔH÷2×1.25)÷(0.00006m-1.118)…(1)
    ロータリ圧縮機。
  2. 上記ローラ(36)の上端面と下端面とは、形状が異なる
    請求項1に記載のロータリ圧縮機。
  3. 上記ロータリ圧縮機は、上記ローラ(36)と上記ベーン(37)とが一体に形成されたピストン(35)を備えるスイング式の圧縮機であり、
    上記ローラ(36)の周方向における上記ローラ(36)の中心に対する上記ベーン(37)の中心線(M)の角度位置を0°とし、上記ローラ(36)の周方向における角度位置が上記駆動軸(70)の回転方向に進むにつれて増加するとしたときに、
    上記第2面(36b)は、上記ローラ(36)の周方向における少なくとも上記ベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から180°までの範囲に亘って形成されている
    請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
  4. 上記第2面(36b)は、上記ローラ(36)の周方向における上記ベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から上記ベーン(37)の吐出側の側面の角度位置までの範囲に亘って形成されている
    請求項3に記載のロータリ圧縮機。
  5. 上記第2面(36b)は、上記ローラ(36)の周方向における上記ベーン(37)の吸入側の側面の角度位置から180°以上270°以下の所定の角度位置までの範囲に亘って形成されている
    請求項3に記載のロータリ圧縮機。
  6. 請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機を備えた冷凍サイクル装置。
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