笠原一輝のユビキタス情報局

気軽に遊べて時間が溶けていく……。Ryzen Z2 A搭載ゲーミングPC「ROG Xbox Ally」を試す

ROG Xbox Ally(2025)

 ASUSのROG Allyは、人気のハンドヘルドゲーミングPCシリーズ。9月に正式発表された新モデル「ROG Xbox Ally X(2025)」と「ROG Xbox Ally(2025)」は、MicrosoftのXboxチームと共同開発され、ユーザーインターフェイスなどが大幅に改良されている。また、CPUがRyzen Z1シリーズからRyzen Z2シリーズへ変わり、性能が向上していることも大きな強化点となる。

 今回筆者は10月16日の発売に先駆けて、Microsoftより下位モデルにあたる「ROG Xbox Ally(2025)」の貸出機の提供を受けたので、PCユーザーとしての視点で実際に製品を利用した使用感などについてお伝えしていきたい。

ヘビーゲーマーではなく、どちらかと言えばカジュアルゲーマーの筆者

ゲーミングデバイスと言われても、ついついPCとして使いたくなる……。出張先のホテルで「ワイヤレスディスプレイ」(Wi-Fi Miracast機能)を利用してメインPCのセカンダリモニターにしたところ

 本連載を普段お読みいただいている方には今更筆者は誰かという紹介は必要がないと思うが、今回の記事は普段筆者が取り扱っている半導体やPCの話題とは若干趣が異なる「ゲーミングデバイス」に関する話題であるため、筆者がどういうゲーマーなのか若干の説明が必要になるだろう。

 自分自身としては、AAAタイトルをバリバリにプレイするといったいわゆるヘビーゲーマーではない。どちらかと言うとカジュアルゲーマーだと認識している。そもそも、コンソールゲーム機(PlayStation 5とXbox)を持ってはいるが、ほとんど使っていない。ではゲームは何で遊んでいるのかと言われると、PCだ。

 PCでゲームをする理由はシンプルで、筆者の場合は昔からPCユーザーであり、自宅には人の数よりもPCがあるという状況だったので、自然にPCでゲームをするようになったからだ。また、筆者の場合、プレイするゲームのほとんどが自動車やモータースポーツのタイトルと、非常に片寄っていることもある。

 というのも、筆者の趣味は週末のレース観戦で、F1やインディカー、WECなどのグローバルなレース、SUPER GTやスーパーフォーミュラなどのドメスティックなレースをTVで観戦して楽しんでいる。そうしたこともあり、ゲームは以前からレース関連のタイトルをプレイすることが多いというか、ほとんどレースゲームしかしていない、という片寄ったゲーマーだ。

 そうしたゲームは、どちらかと言えばコンソールよりもPCゲームの方が種類が多く、ほとんどのゲームをPC上でプレイする理由の1つになっている。それ以外のゲームと言えば、仕事の都合上飛行機で移動することが多いので、ネットがつながらない環境でも暇つぶしになるようなタイトルをタブレットでプレイする程度だ。

 PCゲームの環境はというと、メインのPCは、コロナ禍のときに自宅の49型モニター(解像度は5,120×1,440ドット)でゲームをするために整えた自作ゲーミングPC。Zen 2世代のRyzenにGeForce RTX 2080という構成で、決して最新鋭ではないが、レースゲームをプレイするには十分な性能を持っている。

 何で更新していないの?という声が聞こえてきそうだが、シンプルに言うとコロナ禍が明けて出張が増えたことで、自宅でゲームをする機会が減ったためだ。今は主に出先などでビジネス用のPC(Core Ultra 200Vを搭載したノートPC)を使ってプレイする場合が多い。

UMPCとXboxコントローラをニコイチにしたようなゲーミングハンドヘルド

ROG Xbox AllyはOS起動時にASUSの「ROG(Republic of Gamers)」と「Xbox」の2つのロゴが表示される。初代にはなかったXboxボタンも追加されている

 そうした筆者にとって、以前からROG Allyシリーズは気になる「PC」だった。というのも、ゲーミングハンドヘルドPCと謳ってはいても、OSはWindowsで、デスクトップを開けば普通のPCとして使えるからだ。

外箱
開封したところ
USB Type-CのACアダプタ
紙製のスタンドも付属する
紙製のスタンドはジャストサイズで、このように使える

 さてこのROG Allyシリーズだが、非常にざっくりしたコンセプトを説明すると、7型1080p(1,920×1,080ドット)/120Hzのパネルを持つUMPC(Ultra Mobile PC)に、Xboxコントローラを統合したような製品だ。

 PCでゲームをプレイする場合、何らかのコントローラを接続することが少なくないが、ROG Allyではそれが本体に統合されている。ROG AllyだけあればPCゲームをプレイでき、かつ小型軽量であるため、ベッドやソファに寝っ転がって遊んだり、外に持ち出してPCゲームをプレイしたりできるのだ。

左側のコントローラ部
右側のコントローラ部。Xboxコントローラなどと同じような配置、機能になっている
上部の左右ボタン、底面のボタン
iPhone 17 Pro(純正ケース装着)との比較。持ち運ぶには大きなバッグに入れる必要があるだろう

 こうした製品が実現した背景には、CPU内蔵GPUの性能向上がある。今やCPU内蔵GPUは、AAAタイトルのゲームを1080p解像度で十分にプレイできるだけの性能を持っている(無論、より高い解像度やリフレッシュレートなどでプレイするには単体GPUがあった方がベターなのは変わらない)。

 ASUS、Lenovo、MSIといったPCメーカーは、こういったCPUを使ったゲーミングハンドヘルドと呼ばれる製品を開発しており、市場でも人気の製品になりつつある。ASUSのROG Allyシリーズはその代表的な製品だ。初代となった「ROG Ally(2023)」、2代目となった「ROG Ally X(2024)」に次いで、今回取り上げるROG Xbox Ally(2025)、およびその上位モデルとなるROG Xbox Ally X(2025)は3代目の製品となる。

【表1】ROG Allyシリーズの各世代の仕様
ROG Xbox Ally X(2025)ROG Xbox Ally (2025)ROG Ally X(2024)ROG Ally(2023)
CPURyzen AI Z2 ExtremeRyzen Z2 ARyzen Z1 ExtremeRyzen Z1 ExtremeRyzen Z1
CPU8コア(Zen 5)4コア(Zen 2)8コア(Zen 4)8コア(Zen 4)6コア(Zen 4)
GPU16コア(RDNA 3.5)8コア(RDNA 2)12コア(RDNA 3)12コア(RDNA 3)4コア(RDNA 3)
NPU50TOPS----
メモリ24GB(LPDDR5x-7500)16GB(LPDDR5x-6400)24GB(LPDDR5x-7500)16GB(LPDDR5x-6400)16GB(LPDDR5x-6400)
ストレージ1TB512GB1TB512GB512GB
ディスプレイ7型 1080p/120Hz7型 1080p/120Hz7型 1080p/120Hz7型 1080p/120Hz7型 1080p/120Hz
バッテリ容量80Wh60Wh80Wh40Wh40Wh
重量715g670g678g608g608g
OSWindows 11 HomeWindows 11 HomeWindows 11 HomeWindows 11 HomeWindows 11 Home
直販価格(発売時点)13万9,800円8万9,800円13万9,800円10万9,800円8万9,800円

 どの世代の製品も7型1080p(1,920×1,080ドット)/120Hzのパネルを備えており、Xboxコントローラ相当のゲームコントローラが本体に統合されているという大枠は同じだ。一方で、CPU、メモリ容量とデータレート、ストレージ容量などは大きく異なっている。

ROG Ally(2023)

 初代のROG Ally(2023)は、Ryzen Z1シリーズ(上位モデルがRyzen Z1 Extreme、下位モデルがRyzen Z1)を搭載し、メモリが16GB、ストレージが512GB、バッテリ容量が40Whとなっていた。中でもバッテリ容量が少なかったため、駆動時間がやや短めというのが弱点になっていた。

 そこで改良版として登場したのがROG Ally X(2024)だ。重量が70gほど増加したもののバッテリ容量が2倍の80Whに強化され、駆動時間が大幅に延びた。

ROG Xbox Allyは低電力なエントリー向けCPU「Ryzen Z2 A」を搭載

ROG Xbox Ally X(2025)。ROG Xbox Ally(2025)との違いは、黒色の筐体やジョイスティック、Ryzen AI Z2 Extremeを搭載する点などだ

 今回登場したROG Xbox Ally X/Ally(2025)は、CPUをRyzen Z2シリーズに強化し、性能が向上したことが大きな特徴となる。ただ、一口にRyzen Z2シリーズと言っても、CPUやGPUのアーキテクチャ、NPUの有無などのバリエーションが存在するユニークな製品になっている。

【表2】Ryzen Z2/Z1シリーズのスペック
Ryzen AI Z2 ExtremeRyzen Z2 ExtremeRyzen Z2Ryzen Z2 GoRyzen Z2 ARyzen Z1 ExtremeRyzen Z1
CPU8コア
(Zen 5×3、Zen 5c×5)
8コア
(Zen 5×3、Zen 5c×5)
8コア
(Zen 4)
4コア
(Zen 3+)
4コア
(Zen 2)
8コア
(Zen 4)
6コア
(Zen 4×2、Zen 4c×4)
GPU16コア(RDNA 3.5)16コア(RDNA 3.5)12コア(RDNA 3)12コア(RDNA 2)8コア(RDNA 2)12コア(RDNA 3)4コア(RDNA 3)
NPU50TOPS------
TDP28W28W28W28W15W28W28W
cTDP15~30W15~30W15~30W15~30W6~20W9~30W9~30W

 Ryzen Z2シリーズのうち、最上位モデルとなるRyzen AI Z2 Extremeは、Ryzen AI 300シリーズの上位グレードに採用されているStrix Pointそのものだ。8コアのZen 5 CPU、16コアのRDNA 3.5 GPUなどの特徴を引き継いでいる。こちらは、上位モデルのROG Xbox Ally X(2025)に採用されている。

Ryzen AI Z2 Extremeと同じStrix Pointのダイを採用しているRyzen AI 300
従来モデルに採用されていたRyzen Z1 Extreme

 それに対して、ROG Xbox Ally(2025)で採用されているのは、Ryzen Z2シリーズのローエンドモデルになるのがRyzen Z2 Aだ。こちらはかつてSteam Deckに搭載されていたAMDのカスタムプロセッサが正式な製品となったものになる。

 CPUはZen 2が4コア、GPUはRDNA 2が8コアとなっており、Ryzen Z1世代の下位モデルであるRyzen Z1(CPUがZen 4/4cで6コア、GPUがRDNA 3で4コア)と比べると、GPUの世代は1つ古いがコア数は2倍というスペックになる。残念ながら今回は比較対象(Ryzen Z1シリーズを搭載したモデル)が用意できなかったため、ベンチマークなどは行なっていないが、1世代前のアーキテクチャ(RDNA 3からRDNA 2)へ戻っているとはいえ、GPUコアが2倍になっているため、3Dグラフィックスの処理性能はRyzen Z1よりも高いと考えられる。

 もう1つ特徴的なのは、ほかのRyzen Z2/Z1シリーズの製品が、いずれもTDP 28WでcTDPが15~30Wないしは9~30Wに設定されているのに対して、Ryzen Z2 AはTDPが15W、cTDPが6~20Wに設定されている点だ。もちろんTDP = 消費電力ではないが、TDPを低く設定すれば、それだけCPUの消費電力を抑えられる。そのため、ほかのRyzen Z2/Z1シリーズに比べると、同じバッテリ容量でより長時間の駆動が可能になる。

 ROG Xbox Ally(2025)のバッテリ容量は、ROG Xbox Ally X(2025)の80Whに比べると、60Whと少なくなっているが、それでも同じような駆動時間が実現できると考えられる。また、バッテリ容量が少ない分軽量で、従来モデルとほぼ同じ670gを実現している。

Xboxアプリの改良が大きな目玉。SteamやEAなどのゲームも直接起動可能に

新しいXboxアプリ

 今回のROG Xbox Ally X/Ally(2025)の最大の特徴は、ASUSとMicrosoftが協業して実現した、より進化した「新しいXbox体験」という点にある。特に大きく変わったのは、ROG Allyシリーズのユーザー体験を実現する肝である「Xboxアプリ」だ。

 ROG Xbox Ally X/Ally(2025)では、2つの動作モードが用意されている。それは「Xbox全画面表示エクスペリエンス」と「Windowsデスクトップ」だ。

起動時はXbox全画面表示エクスペリエンスになっている。下から上にスライドすると切り替えメニューが出現して、Windowsデスクトップに切り替えられる
Windowsデスクトップに切り替えたところ。こうなると普通のWindowsデバイスで、タッチパネルで操作できる

 Xbox全画面表示エクスペリエンスは、要するに全画面固定のモードだ。標準のUXがXboxアプリとなり、ゲームをインストールしたり、起動したりすることにフォーカスしたものになる。このモードでは、Xboxアプリやゲーム、さらにはSteamやEAアプリといったサードパーティゲームプロバイダのアプリなどを呼び出せる。

BluetoothキーボードやUSBキーボード、マウスなどを接続して普通のWindowsデバイスとして利用することももちろん可能

 それに対してWindowsデスクトップモードは、タッチパネルやコントローラに最適化されたWindowsデスクトップが使えるモードだ。普通のWindowsデバイスとして使えるので、OfficeアプリやAdobeのCreative Cloudアプリを入れたり、Webブラウザで調べ物をしたりできるようになる。Bluetoothキーボードなどを接続して、普通のPCのように操作することも可能だ。

 なお、ROG Xbox Ally X/Ally(2025)では、起動時のモードとしてXbox全画面表示エクスペリエンスを設定できる。この場合はWindowsデスクトップ関連のモジュールを呼び出す必要がなくなるため、メモリやCPUのリソース消費をできるだけ抑えられ、ゲームプレイ時のマシンパフォーマンスを引き上げられる。ゲーミングハンドヘルドとして使う際には、できるだけこのXbox全画面表示エクスペリエンスで起動するといいだろう。

Microsoft Storeで購入したゲームだけでなく、SteamやEAストア、Xbox Game PassのライブラリにあるゲームもXboxアプリから呼び出せる。どのプラットフォームで所有しているか判別できるマークも表示される

 また、新しいXboxアプリでは、SteamやEAなどのサードパーティゲームストアのアカウントと、XboxのMicrosoftアカウントが連携できるようになっており、SteamやEAのストアで購入してインストールしたゲームをXboxアプリのリストにまとめて表示可能だ。

 今回、Steamで購入した「F1 2025」をROG Xbox Ally(2025)にインストールしてみたが、Xboxアプリのリストから直接起動することができた。一度インストールしてしまえば、その後はXboxアプリから起動できるので、より優れたゲーム体験に進化していると感じた。

 ただし、ゲームのインストールはSteamのアプリから行なう必要がある。将来的にはぜひとも、Steamのアカウントを連携したら、インストールや購入もXboxアプリからできるようになってほしい。

発売後に予定されているアップデートで、ハンドヘルドに最適化されているかを示すアイコンがストアの表示に用意される

 また、今回は発売前ということで体験はできなかったが、今後Microsoft Storeのゲームには、ゲーミングハンドヘルドで快適にプレイできるかどうかを示すアイコン表示が追加される計画だ。これにより、難しいことを考えなくても、ROG Xbox Allyですぐに遊べるゲームはどれなのか、一目瞭然で分かるようになる。

Xbox Game Pass
Xbox Game Passの対象タイトルになるMinecraft: Java & Bedrock Edition for PC

 なお、今回はXbox Game Passの「Unlimited」プラン(月額2,750円)を契約して評価を行なったが、400本近いタイトルラインナップやクラウドゲーミングのXbox Cloud Gaming、さらにはEAのゲームサブスクリプションサービス「EA Play Pro」といった特典を利用して、さまざまなゲームを選べた。Microsoft Flight Simulator 2024のように、本機では重たいなと感じたゲームであっても、Xbox Cloud Gamingを使えば快適にプレイ可能だった。

 ちなみに、ROG Xbox Ally(2025)にはXbox Game Passの「Premium」プラン(月額1,300円)がバンドルされており、3カ月間はXbox Game Passを無料で体験できる。

720pなら十分ゲームをプレイ可能。最も高性能なTurbo設定がおすすめだが、バッテリの減りは早い

Microsoft Flight Simulator 2024をXbox Cloudでゲームしているところ。十分な帯域があるネットワークがあれば重たいゲームでも軽々プレイできる(©Xbox Game Studios)

 さて、肝心のゲームプレイだが、AAAタイトルの「Forza Motorsport」(Xbox Game Pass対象)、「F1 2025」(Steam版)を遊んでみた。いずれのタイトルも720p(1,280×720ドット)の表示では特に問題なくプレイできた。

性能設定、cTDPの設定を切り替えることが可能で、6W(サイレント)、15W(パフォーマンス)、20W(Turbo)の3つに加え、Windowsの標準設定(設定の電源とバッテリの設定)から選べる。

 性能の設定は標準ではバッテリ駆動時に「パフォーマンス」(cTDP設定15W)、ACアダプタ接続時に「Turbo」(cTDP設定 20W)になっている。パフォーマンス設定だとときどきもっさりとした動作と感じることがあるのに対して、Turbo設定だと快適にプレイできた。なお、cTDPを6Wに設定する「サイレント」も用意されている。

 ちなみに、Turboにしても特に大きなノイズはしなかったので、個人的にはサイレントにする必要性は感じなかったが、バッテリ駆動時間を延ばしたり、ファンの動作を抑えたりしたいときにはサイレントの設定は有効だ。

 F1 2025のベンチマーク機能(解像度は720p設定)を利用してみると、平均フレームレートはサイレント設定時が平均19fps(13~29fps)、パフォーマンス設定時が平均63fps(32~123fps)、Turbo設定時が平均72fps(33~158fps)だった。やはりTurbo設定にしておくと性能が向上するのが分かる。

F1 2025のベンチマーク結果(平均フレームレート)

 サイレント設定だと30fpsを切っており、パフォーマンスモードだと60fpsをギリギリ超える性能なので、AAAタイトルを本気でプレイするときは(バッテリ消費は早くなるが)Turbo設定に、それ以外のときはパフォーマンス設定にしておくのがいいだろう。パフォーマンス設定でもゲーム性能の1つの基準となる60fpsを達成できていることから、720p解像度であれば十分にゲームをプレイできる性能を実現している。

本体上部の右側にある電源スイッチ(指紋認証センサー内蔵)、ヘッドフォン端子、microSDカードスロット
本体上部の左側にあるボリュームボタンとUSB 3.2 Gen 2 Type-C 2基。USB PDに対応
microSDカードは完全にスロットに収まるので、持ち運び時に飛び出したりなどはない

 一方で、メモリとストレージ容量の少なさはやや気になった。16GBのメモリはWindows PCとしては今やベースラインで、もう少し多くてもいいのではないかと感じた。Xbox全画面表示エクスペリエンスで使っている限りは問題ないと思うが、たとえばWebブラウザを立ちあげてタブを増やしていくと、数GBはあっという間に消費してしまう。これはMicrosoft Edgeの効率モードやリソース制御を有効にしておくと回避できるので、活用をおすすめしておく。

 また、512GBのストレージもWindows PCとしてはスタンダードな容量だが、AAAのゲームタイトルはインストールするだけで100GBを平気で超えてくる。ゲームを3、4本インストールしただけでストレージがいっぱいになるだろう。容量が大きいということは、インターネットからダウンロードするにもそれだけ時間がかかる。

 ただしストレージについては、別途microSDカードを用意して本体に差し込むことで、ゲームをそちらにインストール可能。今回は1TBのmicroSDカードを導入し、ゲームをインストールして利用したが、ロードに時間がかかることを除けば問題なく使えたので、内蔵SSDからデータを逃がしたい場合には検討してみると良い。なお、内蔵SSDはM.2 2280形状のものが入っており、保証が切れてもよく、自分で裏ぶたを外してSSDを交換できる人ならより大容量なものに交換も可能だ。

 この点、上位モデルのROG Xbox Ally X(2025)では、メモリ容量が24GB、ストレージ容量が1TBとなっている。さらにCPUも最上位のRyzen AI Z2 Extremeで、1080pでのゲームプレイが可能な性能を持っていることも考えると、予算に余裕があるなら最初から上位モデルを買っておくのが良いだろう。

 逆に言うと、720pでゲームができればいいし、メモリは節約しながら使うし、ストレージもmicroSDで拡張するからいいやというのであれば、8万9,800円と上位モデルから5万円も安価なROG Xbox Ally(2025)がおすすめだ。浮いた予算でゲームタイトルだって買えるし……。

寝っ転がったりしながらAAAタイトルをプレイできることが最大のメリット。時間があっという間に溶けていく……

ラウンジのワーキングスペース(個室)で仕事をしながらDOOMを起動してみた。いや仕事をしないといけないのだけれど……(©Bethesda Softworks)

 このように、今回のROG Xbox Allyを使ってみて感じたことは、特にXboxアプリの使い勝手が大幅に改良されたことだ。Microsoft Storeで購入したゲームタイトルだけでなく、EAストア、Steamストアなどで買ったゲームもシームレスに起動できるようになったのは大きな改善点だと言える。従来機と比べてそうしたユーザー体験も改善されつつある、それが今回のROG Xbox Allyの特徴だ。

 もちろん、これを子どもが手にして、単体でいろいろな用途に使えるか?と言われれば、将来的にその可能性はあるが、まだそうではないとは思う。あくまで、PCゲームをメインでプレイしているようなPCゲーマーが、2番目のデバイスやコンパニオンデバイスとして使うのがベストなユースケースだと考えられる。

 Microsoftは今後もXboxアプリのユーザー体験を拡張していく計画で、ROG Xbox Ally Xが持つNPUを利用した自動スーパー解像度(Auto SR)、複数のPC間でゲーム状態を同期するインジケータなどを実装する予定だ。ゲーム体験がさらに改善されるし、特に後者はゲーミングPC(デスクトップやノート)とROG Xbox Allyの両方を使っているユーザーにとって大きな意味があるだろう。

 今回筆者は数日ROG Xbox Allyを使ってみたが、F1 2025やForza Motorsportなどを真剣にプレイしてしまい、気付いたら4~5時間が過ぎていた。俗な言い方をすれば「時間が溶けた」というのが正直な感想だ。というのも、PCだと机の前に座る必要があると思うのだが、この製品はベッドやソファに寝転びながらAAAタイトルをプレイできる。これこそがゲーミングハンドヘルドの大きなメリットなのだ。

 しかし、時間と勝負で生活しているビジネスパーソンにとっては「危ない子」だと感じた。つまりそれぐらい楽しかったということだ。人間息抜きも大事だが、みなさんくれぐれもROG Xbox Allyで「ヌマ」にハマらないようにご注意を!