じょ‐きょく【序曲】
じょきょく【序曲】
序曲
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ニーチェ:序曲 | Die Einleitung | |
シューベルト:序曲 ト短調 | Ouverture D 668 Op.34 | 作曲年: 1819年 出版年: 1897年 |
シューベルト:序曲 ヘ長調 | Ouverture D 675 Op.34 | 作曲年: 1819年 出版年: 1825年 |
諸井 三郎:序曲 | 作曲年: 1919年 |
バッハ:序曲 ト短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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バッハ:序曲 ト短調 | Ouverture g-Moll BWV 822 | 出版年: 1904年 初版出版地/出版社: Peters |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 |
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1 | 序曲 Overture | 3分30秒 | No Image |
2 | アリア Aria | 3分00秒 | No Image |
3 | ガヴォットとロンドー Gavotte en Rondeau | 1分00秒 | No Image |
4 | ブレー Bourree | 1分00秒 | No Image |
5 | メヌエット I Menuet I | 0分30秒 | No Image |
6 | メヌエット II Menuet II | 1分00秒 | No Image |
7 | メヌエット III Menuet III | 1分00秒 | No Image |
8 | ジーグ Gigue | 1分30秒 | No Image |
作品解説
旧バッハ全集には拾遺されず、新全集においても「他者作品の編曲」と注釈された作品。唯一の資料はバッハ存命中の1743年という日付を持つとはいえ、筆写者不明のものである。が、様式の上からはバッハの初期作品としての特徴をよく備えており、真作である可能性は高い。
最初の楽章はフランス式序曲、すなわち緩急緩の3つのセクションに分かれている。第1セクションは山形の動き、すなわち直線的で華麗な上行音型と付点による緩やかな下行が繰り返される。第2セクションは逆に谷型の軽快な動機をいくつも連ねてフーガ主題としている。最後の緩徐部分は10小節と短いが、第1セクションの直線上行の装飾を排除して落ち着きのある締めくくりとしている。
この楽章のおもしろさは、調の推移にある。中間のフーガ部分では、g-Mollから始まってB-Dur(第38小節)、F-Dur(第46小節)、d-Moll(第57小節)、Es-Dur(第68小節)を通り、ここからなんとフラット6つのGes-Dur(第76小節)へ進む。転調の勢いはなお収まらず、遂にはフラット7つのas-Moll(第84小節)に到達する。ただし、このあたりの調は長く保持されず、まもなくEs-Durへ戻り(第90小節)、やがてg-Moll(第104小節)へと回帰して安定する。これらの転調はV度圏を利用して推移するものである。フーガ部分は下行の摸続進行一辺倒で動機労作はやや退屈であるが、それだけに一層、こうした調の色合いの豊かさと変化が楽しめるだろう。
第2楽章は堂々たるアリア。装飾音がすべて書き出されている。前半はあくまで穏やかに進むが、反復記号の後で急に下属短調c-Mollへ転じる。ここから主調へ戻る際、第13小節第1拍のフェルマータ付き和音、および第14小節での偽終止は、このアリアの表出的な効果をさらに高めている。
第3楽章は〈ロンドによるガヴォット〉というタイトルを持つ。この曲の中で扱われるのは、第2小節第2拍までの山形の舞曲リズムによる動機と、いわゆる「溜息」動機による順次的な下行、および最初のクプレで登場した四分音符と八分休符を含む動機である。短く単純な形式のロンドだが、動機の転回をよくこなしている。
続くブレでは、ガヴォットの各動機が再び用いられる。溜息動機は反復記号以降にようやく現れるが、全体にこの2曲の関連は明確である。
3つのメヌエットのうち、最初の2曲は転回関係にある。つまり、メヌエットIで右手にあったものがメヌエットIIで左手に、また左にあったものは右へ移される。メヌエットIIIは対位法からは自由になるが、関連する動機が扱われている。メヌエットIIとIIIはメヌエットIをダ・カーポするよう指示があり、これを守るとロンドによるメヌエットが完成する。
終楽章はジーグで、フーガになっている。ただし主題はわずか半小節の差で模倣されるため、緊密なテクスチュアが生まれる。また、付点と同音反復を組み合わせた8分の6の主題は、鍵盤楽器で演奏するとではややしつこい印象を与えるが、おそらく落ち着きのあるテンポを選ぶことで解決されるだろう。なお、ジーグに付点リズムを用いるのはフランスの様式である。
序曲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/25 18:20 UTC 版)
序曲(じょきょく)は、本来フランス語で開始を意味する ouverture の訳語。オペラや劇付随音楽、古典組曲などの最初に演奏される音楽である。オペラや劇付随音楽などの劇音楽の序曲と、組曲などの序曲では多少性格を異にするが、前座の音楽という位置づけではなく、全体の開始にふさわしい規模と内容を持つのが一般的である。
各国語表記
- フランス語:ouverture [u.vɛʁ.tyʁ]
- 英語:overture [ˈouvətjuə]
- ドイツ語:Ouvertüre [uveʀˈtyːʀə]
- イタリア語:overtura [overtuːra][注釈 1]
- ロシア語:увертюра [uvertjúra]
日本では作品名などとして、英語に基づくオーヴァーチュア、イタリア語に基づくオウヴェルトゥーラという語も用いられることがある。オーヴェルテュールなどの表記も見られるが、標準フランス語では"ou" の綴りは u と発音するため、ウヴェルテュールが近い。
性格
劇音楽の序曲
もともと、劇音楽の序曲は、聴衆がまだざわめいている中で、聴衆の注意を引く目的を持って演奏されるのが常であった。おおむね劇全体の性格や粗筋を予告するように作曲された。歌劇など声楽を伴う劇音楽でも、序曲は器楽(オーケストラ)のみで演奏され、従って器楽の形式で構成される。バロック期にはフランス風序曲形式、古典派期以降ソナタ形式が確立してからは、ソナタ形式またはその簡略な形式である序曲形式で書かれるのが普通である。こうして、序曲は交響曲の第1楽章同等の楽式と物語性とを兼ね備えるようになる。
組曲の序曲
バロック音楽において、古典組曲の各楽曲は舞曲を中心に構成されるが、第1曲は舞曲形式ではなく、フランス風序曲の形式で作曲されることがあった。フランス式序曲付きの組曲は、本来組曲全体が「序曲」(Ouverture)と名付けられていた。J.S.バッハの管弦楽組曲、クラヴィーア練習曲集第2巻の「フランス風序曲ロ短調」などがその代表的な作例である。
演奏用への変化
ベートーヴェン以降、歌劇や劇付随音楽の序曲では、劇全体の粗筋や雰囲気をまとめてあらかじめ伝えるように作られた。このことからストーリー性を持ち、のちに交響詩などの標題音楽に発展していく。また、序曲だけが演奏会で独立して演奏されるようになり、このことから序曲だけを演奏会用序曲として作曲することが起こった。
一方、それより以前に、17世紀イタリアで歌劇の序曲として用いられたシンフォニアが、交響曲へと発展した。
また遡れば、前述のようにフランス式序曲を中心にした管弦楽組曲(バッハの作品に代表される)は、フランスオペラに由来する序曲や舞曲が劇音楽から独立して演奏用の器楽曲へと変化したジャンルともいえる。
前奏曲へ
歌劇の序曲については、劇の開始自体とは関係のない冗長、且つ種明かし的な序曲が演奏されることに対し、劇の開始と一体化した短い、且つ種明かしのない曲がロマン派中期より作曲されるようになった。これは前奏曲(プレリュード)と名付けられた。
例えばワーグナーの場合、歌劇 Oper と称していた時期の作品である『さまよえるオランダ人』『タンホイザー』の場合はそれぞれ序曲がついており、曲が一旦区切りを入れてから歌劇本編が演奏開始するが、その次の歌劇『ローエングリン』や、楽劇 Musikdrama と改称してからの『トリスタンとイゾルデ』以降の作品は前奏曲としており、音楽が途切れることなく幕が開けて本編の音楽へと繋がる。『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のように演奏会として前奏曲だけを演奏するときにコーダがついているのは、演奏会用に楽劇の最後のコーダをくっつけているからである。
もっと後年のプッチーニやリヒャルト・シュトラウスらの歌劇になると、前奏曲としての独立性は失われ、短い前奏のあとすぐに幕が開けるようになる。
現在では序曲はもっぱら演奏用に作曲されているが、組曲などでは本来の目的で使われている。
現代
書かれることがないわけではない[1]。
音楽ライブでの使用
2010年代以降の日本のアイドルグループにおいて、単独の音楽ライブの最初の曲や出演イベントの登場の際の曲として使われる目的でouvertureという曲名で作曲されている。基本的にそのためだけに作曲されていることが多くほかの曲からの流用は珍しい。一度登場した曲は継続して使用されるかアルバムごとやツアーごとに新たに作曲する。 また、グループのアルバムにおいても収録されていることが多く、その場合は1番に収録されていることが多い。
女性アイドルグループにおいて、ouvertureが広まるきっかけとなったAKB48グループの場合は姉妹グループでもAKB48の曲を流用し歌詞を変更している。一方、AKB48に代わって台頭した坂道シリーズにおいてはグループごとに全く別の曲を作曲している。
脚注
注釈
- ^ イタリア語ではフランス語からの外来語としてouvertureをそのまま使うのが一般的である。イタリア語 apertura (アペルトゥーラ、開くこと)と同語源だが apertura が曲名として用いられることはほぼない。overtura はフランス語ouvertureの綴りをイタリア語化したもので稀に用いる。例えばブラームス『悲劇的序曲(独:Tragische Ouvertüre)』をイタリア語で表記する場合 Ouverture tragica とし、Ouvertureはフランス語由来の外来語をそのまま用い、tragicaの部分だけイタリア語化して表記するのが一般的である。
出典
関連項目
序曲(シンフォニア)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 14:48 UTC 版)
「シチリアの晩鐘 (ヴェルディ)」の記事における「序曲(シンフォニア)」の解説
シチリア舞曲風の序奏で始まり、戦いをあらわす激しい第1主題と、穏やかで抒情的な第2主題が奏される主部に入ったのち、コーダは激情的に結ばれる。演奏時間は約9分。
※この「序曲(シンフォニア)」の解説は、「シチリアの晩鐘 (ヴェルディ)」の解説の一部です。
「序曲(シンフォニア)」を含む「シチリアの晩鐘 (ヴェルディ)」の記事については、「シチリアの晩鐘 (ヴェルディ)」の概要を参照ください。
「序曲」の例文・使い方・用例・文例
- その国境紛争は戦争への序曲であった.
- その事件は第一次世界対戦の序曲だった.
- 11月12日,ニューヨークのマンハッタンでは,冷たい雨にもかかわらず,宮本亜(あ)門(もん)さん演出のミュージカル「太平洋序曲」のプレビューを見ようと,人々が長い列に並んで待った。
- 「太平洋序曲」は,1853年にマシュー・ペリー提督と彼の4隻の黒船が浦(うら)賀(が)へやって来た時に,日本が経験した混乱についてのものだ。
- 「太平洋序曲」の作詞・作曲者はスティーブン・ソンドハイムさんだ。
- 宮本さんは2000年に日本で「太平洋序曲」を初めて上演した。
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