タリバン政府、パキスタン軍に「報復」攻撃と発表 国境で緊張激化

荒野の中の舗装道路を、迷彩柄の軍事車両が複数台走っている。手前の車両の荷台には兵器らしきものが積まれ、黒い布で覆われている。その隣には、迷彩服を着て黒いマスクで顔を覆った人物が、自動小銃を構えて立っている

画像提供, AFP via Getty Images

画像説明, アフガニスタンとパキスタンの国境近くをパトロールする部隊(12日)

キャリー・デイヴィース・パキスタン特派員、スチュアート・ラウ記者、エティハジャン・アンバラサン記者

アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンによる政府は12日、北部国境の複数の山岳地帯で、パキスタン軍を攻撃したことを認めた。タリバンの報道官は、攻撃は「報復行為」だと説明。58人のパキスタン兵が死亡したと述べた。タリバンは、パキスタンが9日にアフガニスタンの領空を侵犯し、領内の市場を爆撃したと主張している。

パキスタンは死者数に異議を唱え、自国の軍関係者23人が死亡したと発表した。また、「タリバンおよび関連するテロリスト200人を無力化した」と主張している。

パキスタンのモーシン・ナクヴィ内相は、タリバンの攻撃は「一方的」だと非難。民間人が銃撃を受けたと述べた上で、パキスタン部隊は「一つのレンガに対して一つの石で応じる」と警告した。

乾燥した山岳地帯の道路で10台以上のトラックが立ち居往生している。写真の手前側では、男性が道の脇に座り、トラックの列を眺めている。道にはヤギが1匹いる

画像提供, Reuters

画像説明, パキスタンはアフガニスタンとの国境を閉鎖した

パキスタン政府は、国内を標的とするテロリストをタリバン政府がかくまっていると非難している。タリバン政府はこの主張を否定している。

BBCの取材によると、アフガニスタン側とパキスタン側の双方が、クナル・クラム地域で小火器および砲兵を使用したとされている。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は12日、パキスタン軍兵士58人が死亡し、約30人が負傷したと述べた。

また、タリバン戦闘員9人が死亡し、16~18人が負傷したと付け加えた。

一方、パキスタン軍は自国の兵士29人が負傷したと発表。タリバンおよび「関連する」戦闘員の負傷者数は数百人に上ると主張している。

タリバン政府のアミール・カーン・ムッタキ外相はこの日、訪問中のインド・ニューデリーでの記者会見で、「パキスタンの国民および指導部とは何の問題もない」と述べた一方で、「パキスタン国内には状況を悪化させようとする一部の集団が存在する。アフガニスタンには自国の領土と国境を守る権利があり、侵害に対して報復した」と語った。

パキスタンのモーシン・ナクヴィ内相は、タリバンによる攻撃を「強く非難する」と述べ、「アフガン軍による民間人への発砲は、国際法の明白な違反だ」と主張した。

ナクヴィ内相は、Xへの投稿で、「アフガニスタンは火と血のゲームをしている」と述べた。

パキスタンとアフガニスタンの国境では、北部のトルカムおよび南部のチャマンの2カ所の主要な検問所が閉鎖され、物資を積んだ数百台のトラックが立ち往生している。

パキスタン軍の報道官は、パキスタン国民の生命と財産を守るために必要な措置を講じると述べた。

パキスタン軍は公式コメントを出していないが、BBCの取材に応じた治安当局の情報筋は、国境の複数の地点で銃撃があったと証言している。

また、パキスタンの警察当局者はBBCに対し、現地時間の12日午後10時ごろ、アフガニスタン側から重火器による砲撃が始まったと語った。

この警察当局者は、国境沿いの複数の地点から激しい銃撃があったとの報告を受けたと述べている。

タリバンとパキスタンの確執

アフガニスタンのタリバン政権は、9日深夜にカブール市内で大きな爆発音が2回聞こえたことを受け、パキスタンがカブールの「主権領域」を侵害したと非難した。

また10日には、アフガニスタン南東部パクティカ州にある民間市場をパキスタンが爆撃したと発表した。住民はBBCアフガンサービスに対し、複数の店舗が破壊されたと語った。

一方、パキスタンの高官の一人は、アフガニスタンが「パキスタンに対するテロ活動の拠点として利用されている」と主張した。

パキスタンは長年にわたり、アフガニスタンのタリバンが、「パキスタンのタリバン運動」(TTP)として知られる武装組織に自国領内での活動を許し、パキスタン政府に厳格なイスラム主義体制の導入を求めて戦うことを許していると非難してきた。

タリバン政権は、一貫してこの主張を否定している。

サウジアラビアは声明を発表し、パキスタン・アフガニスタン間の緊張の激化を避け、自制するよう呼びかけた。サウジアラビアは先月、パキスタンと相互防衛協定を締結したばかり。

カタールもパキスタン・アフガニスタン国境の緊張に懸念を示し、双方に対して「対話、外交、自制を優先するよう」求めた。

インド、カブールの大使館を再開へ

今回の緊張の激化は、タリバンのムッタキ外相の歴史的なインド訪問中に発生した。

インド政府は、外交関係の雪解けの兆しとして、タリバンがアフガニスタンを掌握した4年前に閉鎖していた、カブールの大使館を再開する方針を示した。

パキスタンのナクヴィ内相は、「アフガニスタンにもインドと同様、しかるべき報復を行う。パキスタンに対して悪意のある目を向けることがないようにする」と警告した。