ルーブルから盗まれた宝飾品、回収の可能性は「皆無」 美術館は休館続く
(CNN) フランス・パリのルーブル美術館で19日に起きた強盗事件で捜査が続く中、美術館は20日も休館が続いた。専門家は、盗まれた宝飾品を取り戻せる見込みはほとんどないと話している。
盗まれたのはナポレオン時代にさかのぼるティアラやネックレスなどの宝飾品8点。犯行グループはトラックに取り付けたはしごを使い、窓から「アポロン・ギャラリー」に侵入していた。
検察によると、犯行グループがギャラリーに侵入して厳重な警備に守られた二つの展示ケースから宝飾品を持ち去るまでに要した時間はわずか4分だった。
検察は20日、「開館から30分後の午前9時34分、黄色いベストを着けた男2人が窓を破った」と発表。犯行グループは同9時38分に立ち去り、スクーター2台でセーヌ川沿いに逃走したとしている。
犯行に要した時間はわずか7分。展示ケースから持ち去られた宝飾品9点のうち、8点は今も見つかっていない。
フランスのジェラルド・ダルマナン司法相は、今回の事件がルーブル美術館の警備の不備を露呈させたことを認め、「例えば窓の防犯が不十分だった事実や、公道に作業用リフトがあったという事実は疑問に思われるかもしれない」「確かなのは、我々に失態があったことだ」と地元ラジオ局に語り、「フランスの全国民が、自分が強盗被害に遭ったように感じている」と述べた。
既に国外でバラバラにされた可能性
フランス上院のナタリー・グレ議員は20日、CNNの取材に対し、盗まれた宝飾品は恐らく既に国外へ持ち出されているとの見方を示し、「永久に失われてしまったと思う」と語った。
BBCラジオに出演したグレ上院議員は、宝飾品を取り戻せる可能性は「皆無」だと言い切り、「宝石は解体して売られ、マネーロンダリング(資金洗浄)に利用される」「汚れた金の洗浄にはそれが最も手っ取り早い」と指摘した。
犯行グループについては、恐らく犯罪組織とつながっているとグレ議員は述べ、「彼らに道徳心など一切ない」「あの宝飾品を歴史の一部としてではなく、汚れた金を洗浄する手段としか見ていない」と指摘。回収できる可能性については「非常に悲観的」と付け加えた。
ルーブル美術館について解説した著書がある専門家のエレーヌ・シオリーノ氏も、盗まれた宝飾品について「解体されたり、カットされたり、闇市場で売られたりする可能性がある」「今のままの状態で全てが戻ってくることはあり得ないだろう」とBBCラジオに語った。
盗難美術品の追跡団体「アート・リカバリー・インターナショナル」創設者のクリストファー・マリネロ氏は、犯行グループが盗品を手っ取り早く現金化しようとした場合、原形をとどめることなど考えずに貴金属を溶かしたり宝石をカットしたりするだろうと推測する。
「こうしたギャングを壊滅させ、別の対策を見つける必要がある。さもなければ、二度と見ることのできないものを失ってしまいかねない」とマリネロ氏はCNNに語った。