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【AI注意】【SS注意】メカクレデカパイモブウマ娘を置いていくのであとはみんなの好きにしてくれ3|あにまん掲示板
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【AI注意】【SS注意】メカクレデカパイモブウマ娘を置いていくのであとはみんなの好きにしてくれ3

  • 1二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:00:43

    「好きなだけ好きにしてくれ」と言うスレ主の言葉と供に送り出された一人のウマ娘。
    彼女の名前は、チャンドラポメロ。
    このスレは、彼女や彼女の友人達を好きに形作っていくスレです。

    やりすぎたら天罰もとい削除します

    画像は本編と1ミリも関係ないステラーブレイド風味のポメ

  • 2二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:01:58
  • 3二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:03:06

    ここまでのチャンドラポメロと愉快なDKPI仲間たち

    名前:チャンドラポメロ
    学年:中等部(ダイワスカーレットと同じ)
    容姿:烏の濡れ羽色の艶のある黒髪ロングで前髪目隠れ、瞳は明るいマリンブルー、他が地味な為かリップは色付き艶ありのを塗ってオシャレするタイプ
    性格:恥ずかしがり屋の引っ込み思案で、恥ずかしがったり照れたりしたら頬がすぐに紅潮する
    身長:179cm  体重:秘密
    スリーサイズ:B123 W62 H91
    備考①:適性は芝のみ、距離はマイル~中距離の2200Mまでで脚質は「差し」
    備考②:憧れのウマ娘は同期のダイワスカーレット。彼女の緋色の影を追い続ける頑張り屋
    一人称:私 二人称:「名前+さん」、同室及び親しい人は「略称(愛称)+ちゃん」

    名前:ダブルマシュマロ
    学年:中等部(ダイワスカーレットと同じ)
    容姿:栗毛のツーサイドアップでやや前髪目隠れ(ポメちゃん程ではない)、瞳は明るいルビー色、ギザ歯
    性格:明るく社交的でお喋り。またノリが良く、芝居がかった口調で話す事もしばしば
    身長:136cm  体重:秘密
    スリーサイズ:B102 W設定なし H設定なし
    備考①:適性は芝ダートの両刀、距離は短距離のみで脚質は「先行」
    備考②:ポメちゃんの友人枠、実家が地元じゃ一番の果物専門店
    一人称:ボク 二人称:「愛称+ちゃん」または「略称+さん」

  • 4二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:04:52

    名前:カベルネソラリス
    学年:中等部(ダイワスカーレットと同じ)
    容姿:芦毛のポニーテール、青色ハーフリム眼鏡、瞳の色はエメラルドグリーン
    性格:竹を割ったようにさっぱりして表裏のない正直者
    身長:160cm  体重:秘密
    スリーサイズ:B110 W設定なし H設定なし
    備考①:適性は芝のみ、距離はマイル~中距離の脚質は「逃げ」
    備考②:ポメちゃんのライバル枠
    一人称:オレ 二人称:アンタまたは「略称」


    DKPI仲間

    ダイワスカーレット → DKPI世代のモブウマ娘が生えてきたせいで結果として登場人物の中では下の方になってしまったが、圧巻のB90

    ネーロディセッピア → チャンドラポメロの同室。身長や髪色が似通っている為にバストサイズもポメちゃんと同じぐらいと予想される

    オーニソガラム → 1スレ目の元スレ主の空目によってB90オーバーになった子。身長不明

    ミリオンゴールド → 1スレ目の元スレ主の空目によってB90オーバーになった子。身長不明


    その他のお仲間

    ウオッカ → ダイワスカーレットの終身名誉ライバル。今後出番があるかは不明

    ミスディレクション → ダブルマシュマロとコース及び距離適性が同じらしい。DKPIかどうかは不明

    チャンドラポメロのトレーナー → 一人称:ボク ポメちゃんに対して:チャンドラポメロ君→ポメロ君→ポメロ 二人称:ウマ娘に対しては「名前」+君 身長はポメちゃんとほぼ同じの新人トレーナー

  • 5二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:09:36

    チャンドラポメロ プロンプト
    solo,long hair,black hair,(black-horse tail),no ears,(blush:1.5),lips,(bangs over eyes:1.3),long bangs,black bangs,
    BREAK,masterpiece, high quality, huge breasts,(horse ears),(kemono ears),

    本人の情報のみ

  • 6二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:10:40

    ダブルマシュマロ プロンプト
    ((masterpiece)), ((best quality)), (ultra-detailed), (high resolution), amazing quality, absurdres, beautiful face, high detailed face, (perfect anatomy), very aesthetic, 8K, vibrant colors, depth of field, sharp focus, detailed fingers, detailed body, perfect hands, cinematic light, ray tracing, detailed illustration,
    (umamusume, horse girl, long horse ears, horse tail:1.2),
    1girl, solo, break,
    16 years old, (light brown hair, dark orange hair, multicolored hair, medium hair, twintails:1.5), (hair over eyes:1.6), red eyes, high detailed eyes, shining eyes, beautiful eyes, slit pupils, sharp teeth,
    (oppai loli, short height:1.2), (huge breast:1.3), breasts apart, wide hips, curvy,

    本人の情報のみ

  • 7二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:14:35

    10レスまで伸ばさなきゃ、と思ったけど、5レス付けば取り合えず朝までは持つ感じになっているのね

    スレが伸びる毎に増えるDKPI世代

  • 8二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 07:52:14

    スレ立て乙

  • 9二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 08:55:09

    今のところBサイズ不明はミスディレクションだけかな?

  • 10二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 10:00:22

    勝手にダイス振って決めてもいいのかしらね…

    >>9

  • 11二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 10:07:10

    ダイスでポメちゃん以上になったとしても、SS内だとちゃっかりポメちゃん以上のサイズは5人ぐらいしかいない、と予防線張られていて芝生えるわよ

    これで身長ダブルマシュマロぐらいでバストポメちゃん級とかになったら芝超えて森生えるわよ

  • 12二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 10:18:24

    ミスディレクションは「注意を意図していない別の所に向かせるテクニックのこと」なので、ノットDKPIだけとデカケツムチ腿で視線をそちらに誘導させる体形かもしれない

  • 13二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 17:48:55

    ミスディレクションを黒子のバスケで学んで育った人間だけどレースでその技術を使えるタイミングはあるのだろうか?
    みんな基本的にゴールだけを見てるわけだから、こっちへの視線、視点を惑わせるミスディレクションは全く効果がないように思えてしまうな

  • 14二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 18:03:06

    競馬のミスディレクションで似たようなパターン且つ分かりやすいのは2001年天皇賞(秋)のアグネスデジタルかな
    テイエムオペラオーは競り合うと絶対に抜かさないぐらいに強いのだけれども、逆を言えば競らなければ抜かす事が出来る
    それを利用して大外の死角から抜いて1馬身差で勝利を収めている
    アグネスデジタル側からはテイエムオペラオーを視覚内に収められているから抜かせるけれども、テイエムオペラオー側は馬も騎手も完全に意識の外からしてやられている

    そういう意味ではDKPIかどうかは分からないけれども、ミスディレクションは大外から一気に来るタイプの子なのかも知れない
    そして、それで勝てるかどうかはともかく、毎回それで先頭を抜き去ろうとするスタイルなら見てて絶対に面白いだろうから、一定数のファンが付くタイプ
    DKPIかどうかは分からないけれども

  • 15二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 18:16:52

    因みに因むとミスディレクションはダブルマシュマロと同じ芝ダートの単距離専門という形になっているけれども

    ↑の外側最後方からぶち抜くスタイルのダートの競走馬は実は既にいて…


    ダート単距離1400Mの根岸ステークスのブロードアピールが正に先頭の視覚外から強襲且つ一気にぶち抜いて差し切り勝ちしている

    実際の競馬に興味が無くとも、一度は見てみると良いかも知れない

    多分、初見時は変な笑いが出る事請け合い

    「届くか、届くか、届くか、届いた!」伝説の追い込みブロードアピール【根岸ステークス2000】


  • 16二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 18:56:46

    >>15

    んほおすごい

    デジたんのマイチャンの動画みた時くらい笑った

    そりゃあ外側からこんなぶっ飛ばされてきたらどうにもならんでなぁ

    独走してて勝ち確やと思てたらこれやもん

  • 17二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:22:22

    >>15

    初見だとスパート開始時にカメラの視野外にいたから、まさにどこから来た?だった

  • 18二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:38:56

    前スレ191から


    ※※※


     ダブルマシュマロの勇姿を、チャンドラポメロはスタンド最前列の関係者特別席で拍手で讃えた。
     彼女自身にはダートの適性はないものの、ダブルマシュマロが強い走り方、強い勝ち方をしたのは十二分に理解出来る。
     そこまで急ではないとはいえ、坂を駆けあがって前へと迫り、そのまま差し切るどころか更に着差を伸ばしてのゴールイン。短距離戦のスピードレースならではの速度勝負に、真っ向から挑んで勝利を掴み取るダブルマシュマロの姿は、普段の明るくお喋りな彼女とは全くの別物だった。
     クーリングダウンを終え、ダブルマシュマロは自身の勝利を誇示するかのように右手の拳を天に向かって上げつつ、スタンド前へと戻ってくる。
     メイクデビューレース故か、拍手こそ疎らだったものの、それでも彼女は満足げにスタンドを見上げた後で軽く一礼をする。
     それから顔を上げたダブルマシュマロとチャンドラポメロは目が合った。一瞬だけ意外そうな顔をした彼女だったが、すぐに満面の笑みを見せてチャンドラポメロのところまで小走りでやってくる。

    「見ててくれたんスね、ポメちゃん」
    「はい。マーシュちゃん、凄く格好良かったです」

     レース直後で上気していたダブルマシュマロの頬は、チャンドラポメロの心からの賛辞によって更に赤くなり、彼女は照れくさそうにはにかんだ。
     そして、照れ隠しなのかすぐにわざとらしく右手の人差し指で鼻の下をこする仕草をし、その後、右手を広げて上げたかと思うとサムズアップの仕草を取った。

    「芝ダートの両刀使い、ダブルマシュマロ伝説はここから始まるスよ!」
    「うん! 頑張って!」
    「……ポメちゃんはちょっと素直過ぎスね。あ、いや、ボクのネタが流石に古かったスか」
    「え? え?」

     真上に向かって立てた親指を、ゆっくり沈めるような動作をしながら宣言するダブルマシュマロを応援したつもりだったが、何故かチャンドラポメロはその彼女から小首を傾げられてしまう。
     その意味が分からずに困惑していると、二人のやり取りを邪魔しないように配慮していたのか、チャンドラポメロの隣で黙っていたトレーナーが声を上げる。

  • 19二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:40:23

    >>18


    「メイクデビュー勝利、おめでとう。ダブルマシュマロ君」

    「あっ、えっ。……へへっ、ありがとうございまさぁ、ポメちゃんトレーナーの旦那ァ」

    「……うぅん。ポメロと"あいつ"から話には聞いていたけれども、随分と個性的だね」


     声を掛けられるどころか、まさか勝利を祝って貰えるとは思っていなかったのか、ダブルマシュマロは急にごまを摺るような揉み手をしながら上目遣いで腰を低くする。

     そんな彼女に少しの間を置いてから、トレーナーは言葉を選ぶかのような発言の後、右手にある腕時計を確認する。


    「ポメロ。そろそろ準備をしよう」

    「あ、はい。それじゃあ、マーシュちゃん。私たち、行くね。本当におめでとう」

    「うっス。応援感謝っス。ポメちゃんもレース、頑張って欲しいス」

    「うん」


     トレーナーに声を掛けられて、チャンドラポメロとダブルマシュマロは互いに挨拶をし、それぞれがそれぞれの向かう場所へと足を向ける。

     先導するトレーナーの背中についていきながら、次は自身のレースだという事を実感し、チャンドラポメロは緊張を始めた。

     レース直前には収まるものとはいえ、この心がざわついて神経が張り詰める感覚は、何時になっても慣れないと思いつつ、彼女は自身が出走するレース、第5レースの準備へと向かうのだった。

  • 20二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:41:30

    >>19



    ※※※



     東京レース場。第1レースはダート1600Mクラシック級未勝利レース。勝者はパドック時に「このレースに勝てなければ引退をします」と決死の覚悟で宣言し、見事初勝利を収めたディフィキリス。

     第2レースはダート1200Mメイクデビューレース。勝者は後にアングラなウマ娘記事で「小さな身体に大きなお餅。夢は更にデカくGⅠか?」と書かれる羽目になるダブルマシュマロ。

     第3レースは芝1800M1勝クラスレース。勝者はメイクデビューレースを華々しく勝利で飾った後に勝ち切れず、それでもレースに挑み続けて5度目にして2勝目を得る事になったクイントオネスト。

     第4レースはダート1400Mメイクデビューレース。勝者はダブルマシュマロとコース及び距離適性が被っている同じクラスのミスディレクション。ダートレースは「差し」や「追込」が不利と言われる中、最後方から大外一気の追い込みを魅せ、観客を沸かせた。

     そして、続く第5レース。芝1600Mメイクデビューレース。

     チャンドラポメロと、それから奇しくも同じレース出走となったカベルネソラリスが挑むレース開始を告げる演奏が、東京レース場に響くのであった。

  • 21二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 23:43:08

    ちょっと駆け足気味かも知れませぬが、第一章、既に14000文字に到達しかねない勢いなのでポメちゃんのレースまで大幅にスキップじゃい!
    ほーなーまーたー!

  • 22二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 06:47:30

    >>21

    毎日楽しみにしてる

    ここ最近暑いので無理せずに

  • 23二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 10:41:02

    ミスディレクションは、言動勘違いされ系なのかもしれない

    何故かオカルトに明るいと周囲に思われており、占いや相談を持ち掛けられることもしばしば
    本人は至って論理とデータの人なのだが静かに考えながら話すので歯切れが悪くなる傾向があり、ミステリアスな外見も相まってそれが却って彼女の『神秘性』を高める結果になってしまっている
    当然、占い相談をされても当たり障りのない回答しか出来ないのだが、どうとでも取れるが故に「当たり」判定も極大であり良く当たるという評判は本人を困惑の渦に突き落としている

    と言うのが浮かんだ

  • 24二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 11:41:27

    デッッッッッッッッッッ

  • 25二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:34:05

    乳タプしたい

  • 26二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 13:00:25

    ミスディレクションがここに来て人気になっててダート生えるわよ

    意図しないところに、という視覚情報的に

    見た目神秘的、オカルト好きそう → オバケ怖い…
    落ち着いていて大人しそう → 併走前にマーシュちゃん引きずるぐらいには活発ですけど!?
    おっぱいデカいね → 尻の方がデカいとは言えない…

    みたいな?

  • 27二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 15:03:55

    ミスディレクションのパイが!
    小さい訳ないだろうがっ!
    デカパイポメちゃんの名前候補に挙がったパイが!

  • 28二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 15:12:54

    蛍の季節

    指示してないのに透けさせるので、これはAIさんのフェチポイント

  • 29二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 17:38:38

    >>23で言動的なミスディレクションもあるかなと思ったけども、よく考えたらSS内での動き的にそっちの可能性はなさそうだわな

    ミスディレクションは名前が名前だけに、考える余地があって面白そうなのよね

  • 30二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 17:55:37

    >>29

    とはいえ、みんなで好きにしてくれなスレだし、色々アイディアすり合わせてもいいと思うスよ

    現状、SS内で出た情報もダブルマシュマロとコース及び距離適性が被っているらしいって事と、ダブルマシュマロを引き摺れる胆力(?)があるってところと、ダブルマシュマロと仲が良いのか放課後にダンスレッスン一緒にやっているぐらいしか出してませんし…


    と思って書いたSS見返したら「鹿毛のショートカット」って情報があって芝生えるわよ

  • 31二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:40:26

    好きにしたらいいけどどうせならみんなで好きにしたいもんだ
    貴様ひとりで好きにして楽しんでんじゃねぇーっ!俺たちにも好きにさせろーっ!

  • 32二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:44:55

    だったらデカパイなのかチッパイなのか!
    ケツがデケぇのかちいせえのかの安価出しまくって!
    振ればいいだろ! ダイスをよぉ!

    実はポメちゃん以外はスリーサイズもまだ出ていないというお話

  • 33二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:53:19

    (スンッ)


    後は単純に文章書く側としては最低限の情報出しておかないと読み手に想像丸投げや行間読めをさせるのはちょっと…ってのがあります

  • 34二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:03:34

    >>20


    『週明けに吹き飛ばされた梅雨前線が戻って来る事を予感させるような曇り空になってきました、東京レース場。第5レースは芝1600Mメイクデビューレース、9人のウマ娘によって行われます』


     演奏が終わり、実況のアナウンスが響く中、出走ウマ娘たちがそれぞれ名前を呼ばれた順に、係員の誘導に従う形で各ゲートへと入っていく。

     一人、また一人と各自ゲートに収まる中、未だその名を呼ばれないチャンドラポメロは、例によって緊張の最中にあった。


    『今、偶数枠の最後の子がゲートに……おっと、8番エクレールノアがゲート手前で脚を止めた。緊張しているのでしょうか?』


     その緊張が伝播したのか、はたまた彼女もチャンドラポメロと同じく緊張しいな性格なのか、アナウンスの声のままに8番ゲートを見ると、エクレールノアと呼ばれたウマ娘がゲート前で頭を垂れて立ち止まっている。

     チャンドラポメロは、その名前と顔に見覚えはない。少なくとも、同じクラスの子ではないと思った。しかしながら、パドックでの彼女の姿は覚えている。その時から自身と同じように俯き気味で、そのせいかは分からないが人気も最下位だった。

     とはいえ、何時までも人の緊張を見ている訳にもいかないと、チャンドラポメロは視線を8番ゲートから逸らす。ここはもう、模擬レースや選抜レースの場ではない。れっきとした本番の場なのだ。


    「んっ」


     釣られて俯き気味にならないように、チャンドラポメロは背筋を伸ばして前を見る。パドックではエクレールノアのように緊張のあまり俯いてしまい、アピールも何もなかった。

     メイクデビュー戦という事で、まだ情報が出回っていなかったのと、自身の体格の良さから堂々の2番人気に推されたのだ。せめて、それに恥じないような振る舞いをしなければ、とゆっくり息を吐いて緊張を遠ざけようとする。


    「よう。ついに本番だな」

    「ひゃっ!?」


     すると、急に右側から声を掛けられ、チャンドラポメロは思わず変な声を上げてしまう。恐る恐る声のした方を見ると、そこには同じレースに出走する1番人気のカベルネソラリスが不敵な笑みを浮かべていた。

  • 35二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:04:58

    >>34


    「あれはしばらくもたつきそうだったからな。つい声を掛けさせてもらった」

    「は、はあ」

    「調子の方はどうだ?」

    「……問題、ありません」


     カベルネソラリスが言うように、今一度8番ゲートへと目を向けると、踏ん張るエクレールノアを係員が複数人で何とかゲートに入れようとしているのが見えた。

     その様子をさして気にも留めていない様子で、カベルネソラリスはチャンドラポメロとの会話を続けようとする。彼女の調子が悪くないと聞いたカベルネソラリスはメガネの奥のエメラルドグリーンの瞳を光らせ、笑みを更に深くした。


    「ハハッ。そうこなくっちゃな。選抜レースでは先着を許したが、オレだってあれから研鑽を積んだ。今日はアンタの胸を借りるつもりで挑ませてもらうぜ」

    「……トレーニングを積んだのは、私も、同じです」


     挑発的な目から逃れるように一度は目を伏せたチャンドラポメロだったが、ここはターフの上で、今から始まるのは厳しい勝負の世界。

     今日というレースは二度とない。それこそ「もしも」が許されないところに立っているからこそ、今一度目を開いたチャンドラポメロは目の前のライバル、カベルネソラリスを捉える。

     前髪でほとんど見えないだろうに、その隙間から彼女の視線を感じたのか、カベルネソラリスはますます嬉しそうに笑い、その目を細めた。


    「おっ、嬉しいね。今回はちゃんとアンタの眼中にオレが映っているようだ」

    「9番、カベルネソラリス」

    「っと、呼ばれたようだ。じゃあまた、ゴール板の先で」

    「はい」

  • 36二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:06:25

    >>35


     挑発的とすら思える言葉の後、係員に呼ばれたカベルネソラリスは右手を軽く上げながら自身のゲートへと向かっていく。

     その背中を見送りながら、チャンドラポメロは自身の緊張が薄れている事に気付く。彼女との会話がそうさせたのか、代わりに身体の奥底から闘争心と思える熱が湧いてくる。

     勝つか負けるかは分からない。けれども、今この場に立っている以上、最善を尽くす。

     負けるつもりでこの場にいるウマ娘など、それこそ一人もいないのだから。


    「5番、チャンドラポメロ」

    「は、はいっ」


     一度大きく深呼吸をしながら自分に言い聞かせたところで名前を呼ばれ、チャンドラポメロは自身のゲートへと向かう。

     係員の誘導の元、ゲートの中へと入って、もう一度深呼吸をした。

     緊張は完全に抜けている。今回は、出走前にレースの条件を再確認する必要がなさそうだと彼女は思った。


    『少しトラブルがありましたが、最後に1番のトリプルエスケイプがゲートに収まって、全ウマ娘態勢完了──』

    「……」


     そして、アナウンスの声と共に先程まで湧きたっていた闘争心も一時的にかき消える。

     チャンドラポメロにあるのは、凪のような静かな精神と、目の前にあるゲートが開く瞬間を待つ心だけになった。


    「ふっ!」

    『──スタートしました!』


     そのゲートが開き、短く息を吐くと同時に彼女は、これから始まる長く、過酷なレースの道への第一歩を踏み出したのだった。

  • 37二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:08:10

    ついに始まったポメちゃんのメイクデビュー
    このレースでポメちゃんは勝てるのかどうか!?
    カベルネソラリスとの3度目の勝負の行方は…!?
    勝利の女神は一体誰に微笑むのか!?

    というところで、ほなまた…

  • 38二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 00:09:33

    ギスらない程度に対戦相手との緊張感のある会話が良いねぇ

  • 39二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 07:26:41

    >>38

    その感想といいねが暑さでバテた心身に沁みますぜ…



    後、「好きなだけ好きにしてくれ」って事だから私のSS…SS?に気後れせずにバンバン好きにして欲しいんスよ

    私は可能な限りそれらを拾い上げて「好きなだけ好きにする」っスー!(ダブルマシュマロをチビデカパイにしながら)

  • 40二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 12:35:42

    シングレコラボでトレセン学園メイド喫茶か…なるほど…

  • 41二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 12:44:09

    >>40

    だがちょっと冷静になって考えてみて欲しい

    デカパイ世代がメイド服になったらそれはもうデカパイセンシティブなのでは?

    いや、クラシカルメイドならギリイケる…のかな?

  • 42二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 15:42:35

    >>41

    クラシックメイドかぁ

  • 43二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 16:57:59

    >>42

    急に新しいDKPI世代が来たわね…

    オヌシナニモノ?

  • 44二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 18:00:53

    あの…AIさん?
    私、ダブルマシュマロのクラシカルメイド服を注文したんスけど…この胸元全開は一体…
    えっ? 乳がデカいせい??? アッハイ

  • 45二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 19:34:45

    慎ましくある
    それがメイド道

  • 46二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:05:16

    お化け屋敷のお化け役を引き受けたダブルマシュマロ

  • 47二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:52:24

    >>36


    『各ウマ娘、綺麗なスタートを切りました。先行争いは8番エクレールノアと9番カベルネソラリス……おっと、エクレールノアが先頭に立ってそのまま──』

    「っ!?」

    『──そのまま2番手のカベルネソラリスを大きく引き離していきます! これは失策、はたまた何かの作戦か!?』


     外枠の二人が先陣を切り、そのままチャンドラポメロたちの前方へと内に寄せてきたかと思ったら、遠くから聞こえる実況の通り、エクレールノアが「大逃げ」と言わんばかりの先頭を取った。

     後方から見ても分かるぐらいに離れている彼女の後姿に、チャンドラポメロは一瞬、自身も前に行こうかと思ってしまう。


    『前を行くのは8番エクレールノア。そこから大きく離れて2番手には9番のカベルネソラリス』

    (……)


     しかし、すぐにそれは愚策と堪え、事前のトレーナーとの打ち合わせ通りに中団外側で先団を視野に入れつつも内に圧を掛ける方向へと動く。

     暴走か、もしくはそれを装った揺さぶりか。そのいずれにせよ、大きく逃げたエクレールノアに釣られれば、その分スパートのスタミナがなくなる。気持ち的には前に行きたいと思いつつも、チャンドラポメロはその誘惑に耐える。

     トレーナーは言った。

     チャンドラポメロの武器は、切れ味の鋭い末脚でも、序盤から中盤に掛けての他者への圧でもない。

     本来仕掛けるべき場所よりも前から仕掛けられるロングスパート。その例として引き合いに出されたのが他でもないダイワスカーレットだった。


    (ダイワスカーレットさんは息の長い、スタミナに物を言わせたロングスパート……それに対して私は)


     スタミナと根性を燃やして徐々に加速していくロングスパート。

     それがチャンドラポメロ最大の武器。故に、序盤も序盤で他の者の走りに惑わされてスタミナを消耗する訳にはいかない。

     トレーナーとの打ち合わせと、目の前の現状とを再認識し、彼女は落ち着いて走りに集中する。


    「~っ!」

    「えっ!? くっ!」

    「っ!?」

  • 48二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:53:27

    >>47


     けれども、それはあくまでもチャンドラポメロ自身の話。

     彼女の少し前の二人は、スタート直後よりも更に距離を稼ぐエクレールノアに痺れを切らしたのか、前へと出て行ってしまう。見れば、その二人よりも先行している二人が「逃げ」のカベルネソラリスの真後ろまで迫っている。

     結果として、チャンドラポメロの体格を利用した壁による圧を受けるのはすぐ内を走る一人のみとなってしまい、先頭、先団、中団ではなく後方という状況に陥ってしまった。


    『先頭からおさらいしましょう。先頭8番、エクレールノア。2番手には大きく離れて9番のカベルネソラリス。その左後方に続く3番手は1番のトリプルエスケイプ』

    「……」


     風を切る音と、ターフを踏み鳴らす音に混じって聞こえてくる実況と共に、チャンドラポメロは視界内から得られる情報と共に整理していく。


    『その右側には4番ダイオウミドリ。ここまでが先頭集団。続いて中団内内に7番のホールドシンボル。すぐに続いて2番のホワイトブッシュ。そこから少し離れて3番、アスターユユ』


     そして、チャンドラポメロ自身はそのアスターユユの左後方に位置している。となると、必然的に彼女の後方には一人しかいない事となる。


    『……そして最後方、6番のフルールドネイビー。かなり縦長の展開となりました!』


     情報は整理出来た。しかし、チャンドラポメロの視線の先では未だ大逃げのエクレールノアが第3コーナーへと向かっていく姿が見える。心なしか、続くカベルネソラリス以下三人も前に出ているように思えてきた。

     もしかすると、エクレールノアの先行を許すと、このまま押し切られるのではないかという不安が彼女の頭を過ぎる。


    (……だとしても!)


     それでもチャンドラポメロは自身を抑え続ける。

     東京レース場の芝左回りのコースは、向正面から第3コーナーへと入る手前から下りの傾斜がある。

     そのコース情報があるからこそ、先行している者たちが速度を出しているように見えるのは一時的なものに過ぎない。

     そう信じて、彼女もまた先頭、先団に続いて第3コーナーへと入る。


    『各ウマ娘、第3コーナーから第4コーナーへ! ここで先頭のエクレールノアがいっぱいになったのか、2番手のカベルネソラリスとの距離が縮んでいく!』

    (……仕掛けるは、今!)

  • 49二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:55:12

    >>48


     第3コーナーから第4コーナーへと入る手前の緩やかな曲線コースを見て、チャンドラポメロは脚の回転を速めるよう意識する。

     コーナーで速度を出し過ぎれば、そのコーナーの終わりで大きく外へと膨らんでしまう可能性がある。しかし、徐々に加速していくスタイルの彼女であれば、本格的な加速に乗るのはそのコーナーが終わった後になる。

     第4コーナーからの最終直線で先頭を抜かす気持ちで、チャンドラポメロは外から先頭集団を差しに掛かる。


    『残り600を通過! 先頭はエクレールノアに変わってカベルネソラリス! 続いて1番トリプルエスケイプと4番のダイオウミドリが食らいつく。8番エクレールノアは完全に沈んだか!』


     実況と共に第3コーナー終わりまでは先頭を走っていたエクレールノアが垂れ下がり、また彼女に釣られる形で序盤から脚を使ったホールドシンボルとホワイトブッシュも下がってくる。

     チャンドラポメロが彼女たちを交わして最終直線へと入った時、前方にはまだ三人の抜かすべきウマ娘たちの後ろ姿があった。


    「ふうぅっ!」


     十分に温まった脚を更に回転させて加速を継続し、チャンドラポメロは前三人を抜かしに掛かる。


    『残り400Mの標識が迫る中! カベルネソラリスが逃げる! 逃げる! トリプルエスケイプとダイオウミドリが食い下がるも離される! 外から! チャンドラポメロが上がってきたぞ! 凄い脚だ!』


     スタミナを削り、根性を燃やし、チャンドラポメロは更に加速する。彼女が400Mの標識を通り過ぎた時、前の二人は捉え、そのまま追い抜かす事が出来た。

     残るは、後一人。カベルネソラリスだけとなった。


    『チャンドラポメロがカベルネソラリスに迫る! 逃げ切れるか! カベルネソラリス! 捉えられるか! チャンドラポメロ!』


     そして、残り300Mというところで、ついに彼女はカベルネソラリスの横に並ぶ事となる。


    『並んだ! 並んだ! さあ交わせるか、チャンドラポメロ! それとも意地を見せるか、カベルネソラリス! 残り300を切りました!』

    「ぐぅうっ!」

    「~っ!」

  • 50二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:57:20

    >>49


     カベルネソラリスを交わし、1着になる為には、「一番」になる為には、更なる加速が必要だと、チャンドラポメロは力強く脚でターフの芝を蹴る。

     視界から視界の端へ。更には視界外へと、カベルネソラリスの姿が見えなくなった。


    「……えっ!?」


     その時であった。

     チャンドラポメロの視界内、その先に、彼女は影を見た。

     それはレース中の彼女の脳内物質が作り出した幻影か、はたまた一瞬の無呼吸によって脳が混乱して見せた幻覚か。

     チャンドラポメロには分からなかった。

     しかし、それでも彼女は確かにそれを見た。

     自身から今まさに逃げようとする、緋色の影を。

  • 51二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:58:36

    副題及びタイトル回収する作品は名作だってメジロのおばあ様が言っておりました
    このSS……SS?が名作かは分かりませんが、まずは書きたかったところが書けて満足しました
    ほなまた…

  • 52二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 09:02:25

    ついに脳を焼かれた?か
    この先も気になる

  • 53二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 09:21:21

    焼き付けられたからこその『影』か

    コンスタントに書き続けてる上に、レースシーンの高いクオリティ
    歴の長いSS書きとお見受けする

  • 54二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 10:05:02

    >>52 >>53

    あざます…あざます…

    へへっ、SS書いていてここまで褒められた事がないので照れちゃいますぜ、旦那ァ…(揉み手)



    ところで42ちゃんはDKPI世代の誰ちゃんになるんじゃろか…

  • 55二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 17:25:47

    >>42

    確かに名称不明ですね

    既に名前が付いてる子かな

  • 56二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 17:38:23

    「どうかされたスか?お夕飯までもうちょっとかかるスよ。あ、旦那様、つまみ食いはいけないス……」
    なメイドマーシュ

  • 57二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 20:32:17

    >>56

    ポメイドとメイドマーシュを雇いたいだけの人生じゃった…

    それはそれとして今日もポメちゃんの物語を書くぞい


    緋色の影を見たポメちゃんのシーンからBGMとして「Ⅺ」が挿入されます(脳内BGM感)

  • 58二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:53:31

    >>50



    ※※※



     チャンドラポメロは、瞬く間にその緋色の影に目を奪われた。

     緋色に輝き、誘うように揺らめき、それでいて蜃気楼のように自身から遠ざかっていくその影に。


    「っ!」


     彼女は舞い踊るように逃げる影を追う。その距離は目算にして10バ身。捉えられるかどうかも分からない。そもそも、何であの影が逃げるのかも、それを自身が追っているのかも、分からない。もしかすると、緋色の影に追いつけば、追い越せば、それらが分かるかも知れない。

     だからこそ、チャンドラポメロは影に追いつく為に、加速する。


    『チャンドラポメロが交わした! 先頭はカベルネソラリスに変わってチャンドラポメロ!』


     遠くから聞こえてくる実況の声が。ターフに響く数多の走行音が。自身の呼吸音が。その呼吸によって得た酸素を、全身へと巡らせようと鼓動する心臓音が。

     その全てが、今のチャンドラポメロにとって煩わしく思えた。気が散ってしまう。邪魔をしないで欲しい。あの影を追いかけられなくなる。あの影に追いつけなくなる。


    『チャンドラポメロ、脚色は衰えない! 交わしても尚、カベルネソラリスを突き放さんばかりのその走りは、正しく太陽の光を受けて伸びる影のようです!』


     実況の声が更に遠ざかる中、チャンドラポメロは無我夢中で加速し続け、緋色の影に迫る。


    『1バ身差! 2バ身! 残り200を切ってもまだ加速する!』


     7バ身。煩わしい実況の声が消える。

     5バ身。ターフに響く数多の走行音が消える。

     3バ身。彼女の脚から聞こえてくる悲鳴が、自身の荒々しい呼吸音が、喉元まで迫るチャンドラポメロの心臓の音も、消えた。

  • 59二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:54:53

    >>58


    「……っ!?」


     そしていよいよ、緋色の影の輪郭がハッキリと見える位置まで近づいた時、影はより強く輝いた。

     まるであの日見た、ダイワスカーレットに見出した緋色の光のように。

     目も眩むような一瞬の閃光の後に、チャンドラポメロは目が見開く感覚を知った。


    「……えっ?」


     視線の先に、もう緋色の影はいなかった。

     代わりにいたのは、チャンドラポメロもよく知るウマ娘。

     遠目から見ても柔らかそうで、手入れの行き届いた栗毛のツインテールが風に靡いて、視線を奪う。

     腕を振り、ターフを蹴って走っているというのに、その体幹はまるでブレていない。全身を使っての走りであるのに、頭すら上下しない綺麗な走り。

     チャンドラポメロの事など一切気にも留めず、ただ「1番」を目指して走り続けるその後ろ姿は、あの日からずっと彼女の脳裏に焼き付いたダイワスカーレットそのものだった。


    「く、ぅっ!」


     何故彼女がここにいるのか、という疑問を抱く前に、ダイワスカーレットと思われる者が更に加速する。

     3バ身が4バ身に。4バ身が5バ身と引き離されるのを見て、チャンドラポメロはそれに追いすがろうと脚を回転させる。脚を前に出し続ける。

     消えた心臓の音が、全身から聞こえる。

     止まっていた呼吸が、悲鳴のような音を鳴り響かせる。

     自身の脚から、何かが壊れる音が発せられる。

     それでもチャンドラポメロは止まらない。もう、彼女自身にも止められない。

     ただひたすらに。ダイワスカーレットに追いつく為に。その隣に並ぶ為に。追い越す為に。その脚を回転させ続ける。


    『4バ身! 5バ身! チャンドラポメロ、まだ止まらない! まだ突き放す! 残り100M!』

  • 60二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:56:17

    >>59


     実況の声が遠くから響く。

     ターフを踏み抜く数多の走行音が聞こえてくる。

     決して多くはないものの、少なくもない観客からの歓声やどよめきすら、チャンドラポメロの耳に届いてしまう。


    「~っ!」


     雑多に聞こえてくる音を聞き、彼女は自身の限界を悟った。悟って、しまった。

     けれども、歯を食いしばり、前傾姿勢を維持し、チャンドラポメロは走る。

     5バ身が4バ身に。4バ身が3バ身に。

     後少し。後少しで彼女に、ダイワスカーレットに追いつける。

     そう思った瞬間であった。


    「……ぁ」


     前を走っていたダイワスカーレットの後ろ姿が、薄れている事に彼女は気付く。

     それに対して声を上げた瞬間、緋色の影を残して、ダイワスカーレットはチャンドラポメロの視界から完全に消え去った。


    『5番チャンドラポメロ、今、ゴールイン! まるで他の追随を許さない圧巻の走り! これは伝説の幕開けか! はたまた怪物の誕生か!』

    「……」


     実況の興奮する声や、観客席から贈られる歓声が、酷く他人事のように聞こえた。

     ダイワスカーレットの姿が見えなければ、これ以上走って追いかける意味もない。

     自然と足がクーリングダウンへと移行する中、チャンドラポメロがふと掲示板を見上げると、東京5Rのすぐ下に「Ⅰ5」という自身の勝利を告げる表示がされていた。

     彼女は立ち止まり、自身の体操服に付いているゼッケンの番号と、表示されている数字とを見比べる。

     何度見比べても、その数字は変わらない。

     その日、チャンドラポメロはレース人生で初めて、実感のない勝利を得る事となるのであった。

  • 61二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 23:00:33

    ターフを駆けるその目に、あるいは脳に、チャンドラポメロは緋色の影を見出した
    いたずらに誘い、瞬き、舞うその届かぬ光に、彼女は手を伸ばし追いかけた
    それは彼女を伝説へと導く光か、或いは奈落へと誘う破滅の光か…



    ほなまた…

  • 62二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 23:52:08

    それは呪いか憧れか

スレッドは6/27 09:52頃に落ちます

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