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ディストピアと化した世界で戦うアイドルたち|あにまん掲示板
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ディストピアと化した世界で戦うアイドルたち

  • 1SF好きP25/10/14(火) 23:33:52

    学マス x ディストピア世界の二次創作です!
    SF的な世界観強めで、ことねを主人公として書きます。

  • 2SF好きP25/10/14(火) 23:34:55

    >>1

    ことね妹「お姉……喉……乾いた」


    ことね「……がんばれ、もう少し耐えるんだ……お姉ちゃんが、ついてるからな」


    荒野に吹き抜ける風に、消え入りそうな妹の声。


    なんとか力を振り絞って、返答する。

    もう何日この土地を彷徨っているんだろう。考えるのさえ辛くなった。


    私たちはいつものように楽しい日々を過ごしていたはずだった。


    突如地球に降り注いだ隕石群によって、世界中のあらゆる都市が壊滅。


    日本も例外ではなく、あんなに緑豊かで、たくさんの人で活気にあふれていた景色が、今では見るも無惨な荒野へと変わった。


    両親とはついぞ会うこともできず、生死すら不明。


    たまたま実家に来ていた私は、妹たちを連れて、あの日から2年ほど。

    この荒野を彷徨っている。

  • 3SF好きP25/10/14(火) 23:37:03

    >>2

    最初は自衛隊の支援やなんやらがあったり、難民キャンプを転々として何とか生き抜いてきた。でもだんだんそれも立ち行かなくなり、さらには、得体のしれない怪物に襲われる、なんて嫌な噂まで耳にするようになった。ついには暴動が起きて難民キャンプは崩壊。いまや私たちは行くアテもない放浪者となってしまった。


    3人の妹の中で、一番末っ子は特に衰弱している。生きてはいるけど、私が背負ってなんとか同行できる状態。


    他の二人も、自力で歩いてこそいるが、フラフラで今にも倒れそう。


    そんな3人をなんとか支えつつ、私は歩いていた。


    (本当はしんどいし、苦しいけど……私が弱音を吐いたらダメだ……チビどものためにも……)


    そうやって自分を鼓舞するけれど、内心不安でいっぱいだった。

    昨日奇跡的に見つかった野生の木苺で、かろうじて飢えを防いだものの、時間が経って、もう空腹も限界に来ている。


    大事に大事に、保存していた水も、ついに底を尽きた。


    三女「お……ねぇ……」


    ついに三女がその場に崩れ落ちる。


    ことね「……っ!おい!……倒れるな……大丈夫、きっと大丈夫だからさ……!」


    声をかけながら妹の肩を支える。

    そう言いながらも、私もほとんど力が入らない。

  • 4SF好きP25/10/14(火) 23:38:06

    >>3

    ことね(流石に、もう……)


    その時だった。


    次女「お姉……お姉!水だ……水だよ!」


    次女が消え入りそうな声をなんとか振り絞るように、何かを指差して私たちに叫ぶ。


    ことね(え……水……?)


    霞かけた視界が、徐々に色と形を取り戻す。

    妹が指差すその先。少し遠くの開けた大地に。


    小さな小川が流れていた。


    ことね「……水だ……水だぁ!」


    私がそう口に出すより先に、妹は川まで走ってたどり着いていた。

  • 5SF好きP25/10/14(火) 23:40:29

    >>1

    ちなみに初めてスレ立てました。

    至らない点は勉強させていただきます・・・!

  • 6二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 03:18:52

    がんばえー!
    とりあえず、10までレスしておくとスレを10時間持たせられるのでひとまずなんか埋めておくと一安心だぞ。深夜~朝は特に保守制限時間がズレやすいから注意だ

  • 7二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 03:28:52

    ディストピアとかポストアポカリプスもの好きだから楽しみ

  • 8二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 04:10:20

    保守支援

  • 9SF好きP25/10/15(水) 06:54:52

    >>4


    次女「ごくっごくっ」


    妹は小川に着くなり、犬のように川に顔をつけて、水を飲み始めた。

    よかった、見たところとても綺麗な水。変なゴミや異物が混じっている様子はない。


    ことね「ほら、チビども、水だぞ」


    わたしは空のボトルに水を汲み、まずは末っ子に、それから三女に、水を飲ませてやった。心なしか二人とも、少し元気が出たようだ。


    それから私も、ボトルの水を飲み干す。


    ああ……生き返る……!


    ただの水がこんなに有り難いと思うなんて。


    こんなことなら、あの頃。ただ夢中でアイドルとしてレッスンをしていた頃、学園で配られてた初星水を、安易な気持ちで捨てるべきじゃなかったな。


    もはや遠い記憶のようになった、平和だった時のことを思い出す。


    ことね(けど今は……)


    もはやどうしようもない。過去には戻れないのだから。

    そんな思いで、今はただ、目の前にもたらされた至福を、のどを鳴らして飲み込んだ。

  • 10SF好きP25/10/15(水) 06:56:24

    >>9

    午後のじりじりと照り付ける日差し。


    昨日までは地獄だったが、大量の水を手にした今、そんなものはなんとも感じない。


    ことね「はあ……ものすごい久々……幸せ……」


    ひとしきり水を飲み、ボトルにも補充してから、私たちは順番に水浴びして体を洗っていた。妹たちを先に洗ってあげてから、最後に自分が全身で水に浸かる。


    水は冷たすぎず、ぬるくもない、そこそこな温度。体中に水が行き渡る感覚を楽しみながら、全身を洗って心までさっぱりした。


    次女「お姉、これからどうする?」


    ことね「そうだな、この川をたどってみようか。うちらみたく、水場を確保した他の人に、会えるかもだし」


    すっかり元気になった次女と三女を歩かせ、まだ弱ってはいる末っ子を背負って、四人で川上に向かってみることにした。


    源流を目指せば、誰かがいる。そんな気がした。

  • 11SF好きP25/10/15(水) 07:03:32

    >>10

    2時間ほど、歩いただろうか。


    相変わらず景色はほとんど変わらない。


    川の流れが少し早くなったから、多分上流には来ているはず。でもそれ以外に何も手掛かりはなかった。


    ことね(大丈夫か、これ……誰かいてくれよ、頼む)


    徐々に不安な表情を見せる妹たちの手をキュッとつかみ、祈るしかなかった。


    末っ子「おねえ、あれなに?」


    不意に、背負った末っ子が言葉を発した。


    ことね「どしたん?チビ。何か見えた……」


    妹が指さす方向に目をやって、私は絶句する。


    はるか地平線。荒涼とした茶色の大地で、何か黒いものがうごめいている。

  • 12二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 07:16:30

    楽しみ、期待

  • 13SF好きP25/10/15(水) 07:28:26

    >>11


    ことね「な……っ!?」


    急いで懐に入れていたメガネをかけて、遠くに目を凝らす。


    ことね(何だよ、アレ……)


    得体のしれない、小さな影。人形のような、ロボットのような何かが、数十か、100体を超える大群でこちらに向かっていた。

  • 14SF好きP25/10/15(水) 07:29:50

    >>13


    三女「お、お姉……!」


    妹が不安そうに私の袖を握る。


    ことね「に、逃げろ!」


    そう叫ぶと、私は妹たちを連れて逆方向へ走り出す。あれが何なのか分からないけど、私のセンサーが告げている。「危険だ」と。


    しばらく走ると、コンクリの小さな建物を発見した。

    幸いにも、梯子がある。


    ことね「あれ、あれに上れ!」


    梯子に着くと、妹たちを順に上らせる。末っ子は手助けしながら一緒に上り、最後に梯子をつかんで引き上げた。

    高さ3mくらいはある建物の、屋根の上。そうやすやすと来れないはず。そう、思いたい。

  • 15SF好きP25/10/15(水) 10:17:36

    >>14


    ものの10分ほどで、あの群れの足音が、かなり近づいた。


    ガチャガチャと、大量のカトラリーをたらいでかき回すかのような、不気味に響く金属音。


    ことね(このまま、どうかこのまま、通り過ぎて……!)


    おびえて震える妹たちに覆いかぶさるように、三人を抱きかかえて体を縮こませる。

    やがて耳元に大音量で響くかのように、その音はすぐ近くに迫った。


    しばらく後。

    徐々に音が遠のいて、再び静かになった。


    ことね(……た、助かった?)


    良ーく耳を澄ましても、あの音は聞こえない。


    どうやら、通り過ぎて行ったらしい。


    次女「た、助かったの…….?」


    ことね「多分……」

  • 16SF好きP25/10/15(水) 13:05:35

    >>15


    そっと妹達から離れ、周りを見渡す。


    まだ僅かに立ち込める砂埃が、ついさっきまで危機が迫っていたことを伝えている。

    しかし他に異常は見当たらない。


    ことね(良かった……私たち無事に……)


    その矢先。


    次女「きゃあ!!」


    妹の悲鳴が、耳に響く。


    ことね「な、何!?」


    次女「お姉、あれ……!」


    妹が小屋の下を指さし震えている。嫌な予感が心を蝕む中、恐る恐るその方向を見下ろす。


    (……っ!)


    私の嫌な予感が、的中した。

    私たちが逃げてきた、あの大群。小型の、メカメカしい見た目をしたやつらが、小屋を取り囲んでじっと屋根を見つめていた。


    その顔はまるで一眼レフのようで、大きなレンズ越しに、間違いなく私たちをとらえている。


    ことね「あ……あ……」

  • 17SF好きP25/10/15(水) 20:21:11

    狼狽える私たちに追い討ちをかけるように。

    奴らは一斉に小屋に向かって走り出した。

    刃物のようになった手先を使って、コンクリの壁を削ってくる。

    そのうち何体かは、一箇所に集まって山のようになり、徐々に屋根の高さに迫ってくる。

    一同「きゃーーー!!!」

    あのガチャガチャした金属音、そして大地震のような振動が、私たちを襲う。

  • 18二次元好きの匿名さん25/10/15(水) 21:50:56

    保守

  • 19SF好きP25/10/15(水) 23:12:03

    >>17


    次女「おねぇー……」


    妹たちは皆顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。私もいよいよか、と最期を確信した。


    ことね「大丈夫。私が、ついてるからな」


    静かにそう言うと、妹たちの頭を撫でてぎゅっと抱きしめる。


    こんな時なのに、いや、こんな時だからこそかな。

    妙に落ち着いている。


    けれど、涙だけは、どうしたって止めようがなかった。


    ことね(私、死ぬのかな……痛いのかな……ああ、こんなことなら、もっとお金ケチらず美味しいもの食べればよかった。妹たちとも、もっと遊んでやればよかった。……それに)


    信じられないほど美しく、青々とした空を仰いで呟く。


    ことね「プロデューサーに、ちゃんと、もっともーっと真剣に、愛を伝えればよかったナー……」

  • 20SF好きP25/10/15(水) 23:57:04

    >>19

    そうこうしているうちに、一体、また一体と、奴らは屋根に登ってきた。


    大きさはチワワくらいなのに、恐怖でしかない。カメラのような頭、サバイバルナイフのように刃渡りが長い刃物の手。体中に巻き付いたコードのようなものから、変なドス黒い汁がポタポタ落ちている。金属製の足は、歩くたびにあの嫌な金属音を響かせる。


    まさに、SF映画に出てくる敵のロボットそのもの。


    ことね(……)


    もはや逃れられないと悟り、わたしは妹たちを抱く力を強め、静かに、目を閉じた……



    ギューーーーン



    次の瞬間。

    空間を貫くような、聞いたこともない音が響く。


    ことね「……?」


    恐る恐る、目を開けてみる。


    ことね「……えっ」


    目の前の状況に固まった。


    私たちに迫っていたロボット。

    それが、すぐ目の前で立ち止まっている。


    あのカメラのような頭には、まるで銃か何かで撃たれたような、大穴が空いていた。

  • 21二次元好きの匿名さん25/10/16(木) 00:00:04

    これディストピアっていうかポストアポカリプスだな

  • 22SF好きP25/10/16(木) 00:14:04

    >>21

    おっしゃるとおりでした…!

    誤解を与えてしまったらすみません。


    ポストアポカリプスのほうが近いので、そう解釈して読んでいただけたらありがたいです。

  • 23SF好きP25/10/16(木) 07:05:05

    >>20

    ことね(一体何が……?)


    慌てる私の視界に、もう一つ、影が飛び込んできた。


    ひらりと屋根の上に登り、私たちに背を向けてロボットに向き合うその姿。


    紺色のピチッとしたライダースーツ。


    女性らしい、美しいボディラインの腰には、銃のホルスターが二つ。


    右手には内一丁を構えている。SF映画にありがちな、角ばったメカメカしい銃。


    頭に被ったフルフェイスのヘルメットからは、うっすら青みがかった長髪がはみ出している。


    久々に、本当に久々に他の人を見た。けれど、この感覚の理由は、きっとそれだけじゃない。

  • 24SF好きP25/10/16(木) 10:28:30

    >>23

    ほんの一時、沈黙していたロボットたちが、再び動き出した。


    今度は一斉に、目の前の女性に襲いかかる。


    ??「……っ!」


    瞬時に身構えた女性。


    もう一丁、銃を取り出し両手で構える。


    間髪入れず、向かってくるロボットたちに次々銃撃を浴びせた。


    先ほどの空間を貫く発射音が幾重にも重なって聞こえる。


    その銃撃は見事で、一発も外さず全て的確に相手の頭部を撃ち抜いていく。



    ものの数分で。


    あれほど群がっていたロボットたちは、全て沈黙した。


    ことね「た、助かった……?」


    次女「お姉、あの人……」


    ことね「……私、多分、知ってる」

  • 25SF好きP25/10/16(木) 14:11:25

    >>24

    女性は周りを見渡し、ロボットが動かなくなったことを確認してから、私たちの方に振り返る。


    ツカツカとブーツの音を響かせながら近づきつつ、ヘルメットを外した。


    ことね(ああ……やっぱり……!)


    「ことね、無事だったんだね」


    何度も何度も聞いた、その声。


    こんなだったっけ?

    ただのその一言だけで、圧倒的な歌唱力と存在感を匂わせるほどすごいんだな、こいつの声。



    ことね「て、手毬ぃ……!!」



    それは間違いなく、月村手毬。

    手毬、その人だった。

  • 26SF好きP25/10/16(木) 22:26:11

    >>25

    ことね「手毬、てまりぃ……!」


    手毬「ことね……!」


    私は手毬に駆け寄る。

    手毬もまた早足で近づいて、手をぎゅっと握ってくれた。


    ことね「よりにもよって、お前に、お前なんかにぃ……助けられるなんて……」


    いつものように軽口を叩きたいのに、涙が溢れて声も上擦って、うまく喋れない。


    手毬「バカじゃないの?……もっと素直に喜びなよ」


    ことね「うるせー!お前だって……泣いてんじゃんかよ」


    手毬もまた、頬を赤らめ、目に涙を浮かべて、私の手を強く握って放さない。


    余裕ぶってるつもりでも、全く感情を隠せてないのは、変わらないなぁ。

    でもそれが、死ぬほど嬉しかった。

  • 27SF好きP25/10/16(木) 23:07:17

    >>26

    手毬「妹ちゃんたちも、無事みたいでよかった」


    妹一同「て、手毬お姉ちゃん……!」


    妹たちも、感動と共に、手毬のカッコ良さに惚れたのだろうか。

    言葉がうまく出てこない様子だ。


    私たちの様子を見た手毬は、程なくして、切り替えるかのように涙を拭い、キリッと険しい表情になる。


    手毬「とにかく、感動の再会はここまで。すぐにこの場を離れよう。追手が迫ってくる」

  • 28二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 00:53:01

    こういうときの手毬は強い

  • 29二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 02:02:55

    かつてのサラダスレしかり、手毬って極限状態で覚醒するイメージあるよね。

  • 30SF好きP25/10/17(金) 08:58:12

    >>27

    ことね「え、追手?まだ奴らみたいなのが?」


    手毬「あるいはもっとヤバい奴が……」


    言いかけた彼女の、その背後。


    さっきのロボットが一体、突然飛びかかってきた。


    ことね「……っ!手毬!」


    手毬「はっ!?しまっ……」


    完全に不意を突かれた。

  • 31SF好きP25/10/17(金) 14:45:41

    >>30

    けれどその刃は、手毬にも私にも届かなかった。


    間一髪のところで、ロボットが落下する。


    その体は、真っ二つに切られていた。


    「月村ぁ!油断するな、残党がまだいたぞ!」


    またしても聞き覚えのある声。


    思わず屋根の縁に駆け寄る。



    スチャ


    腰に日本刀のような武器を納め、一人の女性がこちらを見上げた。


    美しい大和撫子を思わせる黒髪ポニーテール。

    アクアマリンのような瞳は強く光り、黒のロングコートがよく映える。

  • 32二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 18:28:28

    さすが副会長

  • 33SF好きP25/10/17(金) 21:03:25

    >>31

    ことね「ふ、副会長!?」


    それは生徒会副会長の、雨夜先輩だった。


    燕「月村、小屋の中にも何体か潜んでいたぞ。油断は禁物だ。私が全て斬り捨てておいた」


    そう言うと雨夜先輩は、掴んでいたロボットの切れ端を地面に打ち捨てた。


    手毬「ありがとうございます!助かりました」


    ほっと胸を撫で下ろし、手毬は私たちに向き直った。


    手毬「よし、みんな行くよ!」


    ことね「行くって、どこに?」


    手毬「私たちの、基地」

  • 34二次元好きの匿名さん25/10/17(金) 22:26:42

    わくわくすっぞ

  • 35SF好きP25/10/17(金) 23:18:51

    >>33

    燕「地上クリア!藤田とその家族も無事だ。搬送を頼む、紫雲!」


    雨夜先輩が、耳につけたワイヤレスイヤホンのような装置を使って無線で指示を出す。


    「了解しました!降下しまーす!」


    今度は空から声が降り注ぐ。


    ことね「す、清夏の声が!?」


    驚いて見上げると……


    雲を割るように上空から、四角い形状の輸送機が、プロペラの音を響かせ降下してきた。


    着陸した機体のコックピットを見ると……

    清夏が私たちに逆ピースを送っていた。


    ことね「……清夏ぁ……!」

  • 36SF好きP25/10/18(土) 01:30:29

    >>35

    燕「輸送機現着、異常なし!基地の方は受け入れの準備を頼むぞ!」


    雨夜先輩は無線指示を出すと、私たちを輸送機格納庫のタラップに誘導する。

    すると開いた格納庫から、駆け寄ってきた人がいた。


    莉波「……っ!ことねちゃん!みんな、大丈夫?けがはない!?」


    莉波先輩だった。


    ことね「莉波先輩......!はい、体はみんな弱ってるけど、大怪我とかはしてないです!」


    莉波「よかった......!」


    そういいながら、先輩は私を抱きしめた。莉波先輩のハグはすごい。こんな状況下でも、一瞬で癒されてしまう。

  • 37SF好きP25/10/18(土) 06:04:57

    >>36

    莉波「中に救急キットはあるから、念のため様子を見させてね!」


    案内され、私たちは輸送機に乗り込んだ。


    ことね「?手毬と副会長は?」


    手毬「私たちはビークルで地上から向かう。その輸送機には物資も積んでるから、私たちが乗るには重力オーバーだし」


    そこまで言って、ハッとした顔で頬を赤らめ、手毬は続ける。


    手毬「べっ、別に!太ったとかじゃないけど!?……そ、それに残党がいたら倒さなきゃだから。また基地で、落ち合おう」


    かと思えばすぐに、凛々しく強い笑顔に戻る。手毬はどこにいても、手毬だ。

    私も微笑み返し、彼女の手を取ってにっこりうなずいた。

  • 38SF好きP25/10/18(土) 09:43:08

    >>37

    清夏「ことねっち、みんな、シートベルトOK?」


    一同「OK!!」


    清夏「よーし、いくよ!」


    コックピットからの清夏の音声案内に応えると、続いてエンジンからくる振動が座席から身体に伝わる。


    輸送機が離陸した。

    窓から見下ろすと、手毬と雨夜先輩が走っている姿が目に入る。

    向かった先には、一台のサイドカー付きの大型バイク。あれが話していたビークルらしい。

    確かに頑丈そうだが、あれで二人は無事なのか……


    不安な私の気持ちを察してか、隣に座った莉波先輩が私の手を握ってくれた。


    莉波「二人なら大丈夫だよ。今まで何度も、ああやって私たちを守ってくれたんだ。だから今度もきっと」

  • 39SF好きP25/10/18(土) 16:08:18

    >>38

    莉波先輩を見つめ返してから、もう一度外に目をやる。


    徐々に高度を上げ、飛び去ろうとする輸送機から見た二人の姿はもう、ちびぬいかと思うほどの大きさになっていた。



    次の瞬間。



    ガコンッ!!!



    一同「きゃあっ!」


    突如機体が大きく揺れる。


    輸送機の動きが、止まってしまったように感じた。


    ことね「一体、何が……?」


    清夏「みんな、大変!アイツに捕まった……」


    莉波「まさか、そんな……!」


    口に手を当て顔を引きつらせる先輩。私は恐る恐る外を見た。ほぼ同時に、得体のしれない黒い触手……いや、チューブ、が窓の外で激しく蠢き始めた。

  • 40SF好きP25/10/18(土) 22:07:48

    >>39

    フロントガラス越しに、見えた影。


    先ほどの相手とは比にならない、20mはありそうな巨大なロボット。まるでステージ証明のライトのような二つの目がギラギラ光り、真っ黒なチューブでできた巨大な腕で、輸送機をがっちりつかんでいた。


    清夏「まさか地中に潜んでたなんて……!緊急事態!ジャイアントに捕まった!手毬っち、副隊長、応援を!」


    清夏が無線機で呼びかける中、返ってきたのは苦し紛れな返事。


    手毬「ごめん……清夏……っ!」


    燕「こちらも敵に囲まれている!近づけない……!」


    わずかに隙間から見える地上の様子。


    二人はビークルに乗ったものの、あの小型ロボットに囲まれていた。さっきよりも断然多く、数倍の数がうじゃうじゃいる。


    ことね「そんな……!」


    つぶやく私の声も、引きつっていた。

  • 41SF好きP25/10/19(日) 00:16:46

    >>40

    清夏「くそ!動け!動けー!」


    必死にエンジンを全開にする清夏。何とか脱出を試みるも、びくともしない。救いを求める私たちの思い虚しく、機体はミシミシと嫌な音を立て始めた。


    巨大ロボットは機体の両翼をしっかり掴み、真っ二つに引き裂こうとしているらしい。


    絶体絶命。せっかく助かったはずなのに、また……

    私と莉波先輩はただ、泣き叫ぶ妹たちを抱きしめることしかできなかった。



    「清夏ちゃーん!!!!」



    その時。


    突如無線に入った叫び声。透き通るような、可憐な声。


    清夏「!?」


    清夏がはっとして空を見上げる。

    つられて私たちもその方向に目を向けた。

  • 42SF好きP25/10/19(日) 08:21:36

    >>41

    はるか上空、真っ青な空のど真ん中に、一筋の白い飛行機雲を描いて。


    何かが、飛んできた。


    清夏「……!」



    「清夏ちゃんは、私が守る!」



    再び聞こえた、決意の叫び。


    次の瞬間、巨大ロボットの片腕が、何かに射抜かれた。


    関節部をちぎられ腕を失い、態勢を崩すロボット。伴って輸送機も大きく揺れた。


    清夏「っ!今だーーー!!!!」


    好機を逃すまいと、清夏が全速力で脱出を図る。


    片腕しか使えないロボットの力は弱く、見事に脱出。上空へ飛び立つことに成功した。

  • 43二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 17:18:45

    白線

  • 44二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 18:31:48

    かっこいい…

  • 45二次元好きの匿名さん25/10/19(日) 23:31:21

    保守

  • 46SF好きP25/10/20(月) 07:43:42

    >>42

    慌てて私は窓の外を見る。

    そこには。


    巨大ロボットと対峙する、もう一つのロボット。


    やや小柄ながら、華奢でかっこいいフォルムを持った、純白のロボットがいた。


    ことね「あれって……!」



    清夏「バカ、なんで来たの……リーリヤ!」



    間違いない。

    あれは、あれはリーリヤちゃんが好きだと話していた、ロボットアニメに登場する機体。

    清夏の言葉からしても、確信した。あれを操縦しているのは……


    ことね「リーリヤちゃん!?」

  • 47SF好きP25/10/20(月) 09:20:00

    >>46

    リーリヤ「清夏ちゃん、みんな!助けに来たよ!」


    清夏「何やってんの!機体の整備、まだ終わってないんでしょ!?」


    鬼気迫る清夏の声。


    確かに、リーリヤちゃんの声の後ろで、アラート音のようなものがしきりに鳴っている。


    リーリヤ「うん……でも、みんなが危ない気がして。いてもたっても、いられなかったの!」


    清夏「リーリヤ……もう、バカ……どうしていつもそう無茶するの」


    そうつぶやく清夏の表情は、涙にぬれた、笑顔だった。

  • 48SF好きP25/10/20(月) 11:52:28

    >>47

    リーリヤ「ここは私が引き受ける!清夏ちゃん、みんなをお願い!」


    清夏「わかった……!気を付けて、リーリヤ!」


    一言叫び、清夏は輸送機を動かした。

    徐々に戦地を離れる中、私たちは窓の外に釘付けになる。


    戦況は、リーリヤちゃんに託された。



    リーリヤ「あなたはここで倒す!……うおぉぉぉぉー!」


    叫び声と共にリーリヤちゃんの操る機体は、敵に向かっていった。

  • 49SF好きP25/10/20(月) 15:14:50

    >>48

    残った片腕で押しつぶそうとしてくる敵の攻撃をひらりとかわし、装備したレーザー銃を放射するリーリヤちゃん。


    あっという間に、巨大ロボットからもう片方の腕も奪ってしまった。



    しかし、敵もやられっぱなしではない。

    まるで口のように大きく開いた頭部の穴から、次々砲弾を吐き出して応戦してくる。


    その攻撃も巧みにかわすと、リーリヤちゃんは敵を誘導するかのように動く。


    彼女につられて向きを変えた巨大ロボットは、再び砲弾を吐き出した。

    リーリヤちゃんは当たる直前で急上昇。見事に攻撃をまたかわす。


    それだけじゃない。

    当たらなかった砲弾の雨は、まっすぐに、その背後にいた小型ロボットの群れに降り注いだ。



    ドカーン!!



    豪快な爆発音とともに、手毬たちを囲んでいた群れが次々爆発四散していく。


    手毬「リーリヤ!ありがとう」


    燕「助かった、恩に着るぞ、葛城!」


    リーリヤ「二人とも今です!離脱を!」


    手毬「う……さっさと行けよ雑魚がって……?分かってる!」

  • 50二次元好きの匿名さん25/10/20(月) 22:37:33

    手毬、ここでも手毬してて良い。

  • 51二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 06:23:50

    保守

  • 52SF好きP25/10/21(火) 09:29:42

    >>49

    雨夜先輩、手毬の二人は、無事にビークルに乗り込む。

    手毬がバイク部分に座り、アクセル全開。砂埃を上げて走り出した。


    飛びかかってくる小型ロボットの残党も、サイドカーの雨夜先輩が斬り捨てる。



    見届けると同時に、リーリヤちゃんはもう一つ携えたシールドを展開。

    三度吐き出された巨大ロボットの砲弾を防いだ。



    リーリヤ「これで、終わりよ!」



    機体が再びレーザー銃を構えると、その発射口に、徐々に光が集まってゆく。

    追撃しようと巨大ロボットが口を開けた瞬間。


    リーリヤ「発射!」


    掛け声とともに、これまでよりも太く、強く輝く、ビームが放たれた。

  • 53SF好きP25/10/21(火) 10:35:09

    >>52

    ビームは巨大ロボットの頭部に命中。


    大爆発を起こし、ついに巨大ロボットは沈黙した。



    一同「やったー!!!!!」



    リーリヤちゃんの活躍で、戦いに勝利した。


    彼女の白い機体が、いつの間にか訪れた夕暮れに映え、輝いていた。



    私たちを追ってゆっくりと前進するリーリヤちゃん。手毬と雨夜先輩もついてきていた。


    勝利の歓喜に、心が包まれていく。


    ことね「よかっ……たぁ……」


    安心しきったのか、私は突然の眠気に襲われ、そのまま気を失ってしまった。

  • 54SF好きP25/10/21(火) 12:45:16

    第一章「終末世界」

    お読みいただいたり、コメントいただいた方、ありがとうございました!
    ここまでで一区切りです!

    殴り書きしたネタを整理して小出ししてますが、多分全部で6章くらいは書けそうです。
    このまま続けるか、章ごとに区切って新しくスレ立てるか悩み中…!

  • 55二次元好きの匿名さん25/10/21(火) 13:29:37

    面白い。
    とりあえずまだレス数残ってるしこのまま行ってみたら?

  • 56SF好きP25/10/21(火) 21:59:51

    >>55

    ありがとうございます!

    何よりうれしい言葉です!


    ひとまず、行けるところまで

    続きを書こうとおもいます

  • 57SF好きP25/10/21(火) 22:03:58

    >>53

    「ちゃん……ねちゃん……!ことねちゃん!!」


    頭の上から、降り注ぐ声。誰かが、私を呼んでいる。


    ことね「ん……あれ……ここは?」


    呼び声に応じて目を開ける。じんわりと明るくなっていく視界に入ってきたのは、莉波先輩の顔だった。


    ことね「り……なみ、先輩?」


    莉波「ことねちゃん!あぁ、よかった……!」


    先輩は涙を浮かべながらも、笑顔で私の手をぎゅっと握ってくれた。

    安堵してそのまま椅子に腰掛ける先輩から視線を外し、周りを見渡す。

    ここは……どこだろう。

    一見するとどこかの病院のよう。だけど、見覚えがある天井だった。


    ことね「ここは……?」


    莉波「ここはね、私たちの基地。ことねちゃんにとっても、懐かしい場所だよ」


    そう告げた莉波先輩は、徐に立ち上がると、カーテンを引いて窓の外を見せてくれた。


    ことね「あ……」


    その景色は、忘れもしない。

    中庭の大きな木。赤茶色の建物。

    アイドルとして青春の一ページを綴った、思い出の場所。

    初星学園だった。

  • 58SF好きP25/10/22(水) 06:13:14

    >>57

    ことね「ここは……学園?」


    莉波「そうだよ。奇跡的に建物がほとんど壊れなくて、こうして基地として使っているの。学園が、あの頃も、今も、私たちを守ってくれてるんだね」


    先輩は、優しく微笑んだ。


    そうか、この見覚えある天井。


    あの日。

    まだユニットを組む前のこと。

    咲季とダンス勝負をするために、プロデューサーに言われて寝た、保健室のベッドの風景だった。


    ことね「そっか……またここに、戻ってこれたんだ……」


    安心し切ったせいか、思いがけず、涙がまた一筋こぼれ落ちた。

  • 59SF好きP25/10/22(水) 08:32:09

    >>58

    ーーことね「なるほど……ここに避難してきた人たちで役割分担して、支え合ってるんですね」


    莉波「そうだよ。あの日……隕石被害で世界中が酷い目にあってから、最初は学園にいたみんな、次第に集まってきた人たちが結託して、生き延びるために頑張ってるの」


    病室で保存食と水をもらい回復した私は、莉波先輩に連れられて基地内を案内してもらっていた。

    そういえば夕暮の中運ばれたはずが、いつの間にか時間帯は昼下がり。

    どうも、丸一日ほど眠っていたようだ。


    チビどもも、どこかで食料を受け取り面倒を見てもらっているらしいし、まずはここのことを知っておかないと。


    保健室を後にし廊下を二人で歩く。

    昔は教室やレッスン室だった部屋は、資材置き場や食料庫、武器庫などに使われていた。


    懐かしい教室が、こんな姿になるなんて。


    そして行き交う人々。

    資材を整理したり、どこかに運んだり、忙しそうだ。

  • 60SF好きP25/10/22(水) 10:42:06

    >>59

    今ここにいるのは、老若男女合わせて300人ほどだそう。


    ……たった300人。


    無理もないか。

    あの日、ちょうど学園も長期休みで、遠くから来ている生徒たちは大体帰省していた。


    これが普通の日だったなら。

    もっと多くの人が助かったはずなのに。

    そんな、もうどうしようもない思いが込み上げてきて、心を圧迫する。

    俯く私の気持ちを察してか、莉波先輩が声を掛けてくれた。


    莉波「……ここに集まった人たちはね、初めはみんな怯えてた。けど、ある人が言ったの。こんな時だからこそ、みんなで力を合わせて乗り越えよう、てね」


    ことね「ある人……?」


    莉波「ふふ、ことねちゃんも、よく知ってる人」


    意味ありげに、微笑む先輩。

    このときの私はきっと、不思議そうな表情をしていたはずだ。


    莉波「あ、噂をすれば」


    そう言って、廊下の先を指さす莉波先輩。

    つられてその方向を見る。


    ことね「あ……」


    そこには、懐かしい面々がいた。

  • 61SF好きP25/10/22(水) 17:37:56

    >>60

    「うん、当面の配給も問題ない。今日新しく資材が入ってきたし、大丈夫だね」


    「おかげさまで、医療品も整っています。お怪我をされた方も、すぐに回復するでしょう」


    「ありがとう、ここが成り立つのもみんなのおかげよ。引き続きよろしくお願いね」


    廊下で資料を手に協議する三人。


    その懐かしさに、心が震えた。


    莉波「みんな!」


    莉波先輩の言葉に、三人が振り返る。


    麻央「莉波、どうしたんだ……い……」


    美鈴「……藤田、さん……!」


    星南「……ああ、ああ……!」


    資料を手にしたまま、目を見開いて固まった麻央先輩。

    口に両手を当て、驚きを隠せない美鈴ちゃん。

    そして、手に持ったペンを思わず落としてしまう、星南先輩。


    莉波先輩が微笑んで見守る中、しばしの静寂の後に、二人が駆け寄ってきた。

  • 62二次元好きの匿名さん25/10/22(水) 23:44:54

    保守

  • 63二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 01:26:52

    保守

  • 64SF好きP25/10/23(木) 07:27:51

    >>61

    麻央「ことね……ことねじゃないか!」


    美鈴「藤田さん、ご無事で何よりです……!」


    麻央先輩と、美鈴ちゃんは、私の手を取り涙を浮かべて笑いかけた。


    ことね「ふたりこそ……無事で何よr……!」


    言葉を返そうとした矢先、やや遅れて、星南先輩が私に駆け寄り、ぎゅっと抱きしめてくれた。


    星南「ことね……!ああ、私のことね!よかった、よかった、よかった……!」


    一番星とはとても思えないような、涙でぐしゃぐしゃにした顔で私に抱き着く先輩。


    ことね「会長……」


    静かに応え、星南先輩を抱き返す。


    ああ、なんて心地いいんだろう。


    あれほど嫌がっていた会長からのアプローチ。

    それがこんなに、心安らぐものだったなんて。

  • 65SF好きP25/10/23(木) 08:37:27

    >>64

    ーーことね「そうだったんですね、会長が。さすが、一番星」


    星南「ふふ、ことねにそんな風に言ってもらえるなんて……!ええ、そうよ。こんな時だからこそ、誰かが立ち上がらなきゃ、てね。覚悟決めたの」


    莉波先輩が言っていた、みんなの士気を高めた人物。それは、星南先輩だった。


    美鈴「おかげで私も、お昼寝の癖が、すっかり抜けてしまいました」


    麻央「ほんと、すごいよね。大人も子供も、みんな一つにまとめ上げちゃってさ。あ、ちなみに星南はここじゃ”隊長”だよ!」


    話によると、当時この基地、学園内は、命からがら逃れてきた人ばかりで、とても重苦しい雰囲気だったそうだ。

    たまたまあの日、レッスンのため学園に来ていた三年生の先輩方四人、リーリヤちゃん、清夏、手毬、昼寝に来ていた美鈴ちゃんも、偶然居合わせたことで巻き込まれたらしい。


    誰もが不安を募らせる中、星南先輩の鶴の一声で、まずはアイドル科のみんなが結託。徐々に、助けを求めて集まった弱気な人々は、勇気を奮い立たせ、生き抜くための同志へと変わっていったそうだ。


    ことね「星南先輩は全体指揮と武器の管理。麻央先輩は食料と備品の管理調達、莉波先輩と美鈴ちゃんはセラピスト兼医療補助として医療チームに所属、か」


    星南「いまではアイドル科の生徒だけじゃなく、皆と協力体制が築けているわ。手探りから始まったなりに、各々が持ち味を生かして、最高のパフォーマンスを発揮してくれているの」


    麻央「そして忘れちゃいけないのが……」


    そういいながら廊下の角を曲がり、校庭へとつながる扉をくぐる先輩。


    麻央「前線で戦ってくれている、みんなだね」

  • 66SF好きP25/10/23(木) 12:59:58

    >>65

    扉の先に待っていたのは、校庭。

    もっとも、私の知る、あの運動会をやった校庭とは大きくかけ離れていて、砲台や弾薬の箱が詰まれ、自衛隊にあるような深緑色のジープが何台も停まっていた。


    開けた場所では、屈強な男性たちが、銃の訓練をしたり、武器の扱いを学んだりしている最中。


    清夏「ことねっち!!良かった、目覚めたんだね」


    不意に声がかかる。


    振り向くと、そこには清夏とリーリヤちゃんがいた。

    私たちの集まりに気付いたのか、後方でビークルの手入れをしていた雨夜先輩もこちらに歩み寄ってくる。

  • 67二次元好きの匿名さん25/10/23(木) 22:01:35

    ほしゅ

  • 68SF好きP25/10/24(金) 00:00:07

    >>66

    ことね「清夏、みんな……うん、おかげさまで。改めて、助けてくれてありがとう!私のせいで、命の危険にもさらされたりしたのに、本当に、その……」


    歯切れの悪い礼を伝える私に対し、清夏が肩を叩いて笑顔で応える。


    清夏「何言ってるの!こんな時なんだもん、お互い様、でしょ」


    リーリヤ「そうだよ、ことねちゃん。私たちは、やるべきことをしただけだから」


    ことね「リーリヤちゃん……!」


    リーリヤちゃんがいつもの、物静かで落ち着いた声で話しかけてくれる。

    あのロボットに乗っていた人物が、同じ人かと疑いそうなほどだ。

  • 69SF好きP25/10/24(金) 00:01:55

    >>68

    燕「みんな来たんだな。藤田も、無事でよかったよ、本当に」


    雨夜先輩が優しく微笑む。


    輸送機で物資補給をしてくれる清夏、その護衛兼戦闘員として前線に繰り出すリーリヤちゃん、雨夜先輩、そして手毬。

    みんながいてくれたから、私たちは無事でいられるんだ。

  • 70二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 07:20:49

    保守

  • 71SF好きP25/10/24(金) 12:46:28

    >>69

    次女「手毬お姉ちゃん!」


    妹たち「わーい!!」


    不意に聞こえた声の方を振り向く。

    手毬が妹たち三人の相手をしてくれているのが見えた。


    手毬「ちょっ、わ、わかったから……そんなに引っ付かないで〜……あ、だめ、その無線機触るのはほんとにダメだから!!」


    あんな風に助けられたら、妹たちにとって手毬はまさしくヒーローだ。

    すっかり懐いてしまったらしい。


    てんやわんやする手毬を見て、みんな思わず笑ってしまった。



    ことね「あははは……わっ!」


    突然、何かが背中に抱きついてくる。

    びっくりして後ろを向くと……これもまた、懐かしい人がそこにはいた。

  • 72SF好きP25/10/24(金) 16:24:31

    >>71

    くるんとした毛先の、ホワイトブロンドの長髪。

    小さく細い身体で、ドクターのような少し丈の大きい白衣を着ている。

    その子は私の服に目一杯顔を埋めてから、やがてゆっくり、顔を上げた。


    広「ことね……!よかった。元気そうだ、ね」


    ことね「篠澤さん……」


    いつもはどこか掴みどころのない、ミステリアスな秀才、篠澤広。

    その彼女が、今は一人の子供のように、静かに泣きながら私に抱きついている。

    初めて見る光景だった。


    男性「お疲れ様です!篠澤部長!」


    通りかかった兵士風の男性が、篠澤さんに敬礼する。

    それに気付くと、私から離れ涙を拭い、応えるように篠澤さんも敬礼をし返した。

    男性のピシッとしたものとは似ても似つかない、弱々しい手の運び。

    でもその表情は、自信と笑顔に満ちていた。

  • 73SF好きP25/10/24(金) 23:02:04

    >>72

    星南「広は、ここでは最も要になる、武器設計開発を担当してくれてるの。手毬の銃やリーリヤのロボットも、彼女の設計よ」


    リーリヤ「篠澤さん、昨日は急にごめんね。あんなに突発で出撃をお願いするなんて、ずいぶん無茶させちゃって……」


    広「ふふ、本当に。シルヴェスタの負荷、酷かった。これから直すのだって一苦労。リーリヤも、私に無茶をさせる。鬼。悪魔。でも、好きだ、よ」


    リーリヤ「や、やめて、私そんなつもりじゃなかったのー!」


    篠澤さんの相変わらずな反応に、顔を赤らめて戸惑うリーリヤちゃん。


    みんなまたしても、笑った。


    こんなに笑ったのは本当に久々だった。

    心なしか、気持ちが晴れてくる。

  • 74二次元好きの匿名さん25/10/24(金) 23:09:56

    こういう平和パート、良い。

  • 75SF好きP25/10/25(土) 06:40:02

    >>73

    しかし、まだ私にはどうしても引っかかることがあった。

    雰囲気をぶち壊したくはなかったけど、やっぱり聞いておきたい。


    星南先輩に、恐る恐る尋ねてみた。


    ことね「あ、あの……私の勘違いだったら申し訳ないんですケド……みんながみんなこの基地にいる、て、わけじゃないんですよね……?」


    私の質問にハッとして、星南先輩の表情に少し影が落ちる。


    ことね「千奈ちゃんに、佑芽。それと……咲季が、いない気がして……」


    他のみんなも、どこか気まずそうな表情で目線を外した。

    私のセンサーが、嫌な予感を告げる。


    ややあって、手毬が近づいて来て言った。


    手毬「ことね、三人に会わせるよ」

  • 76SF好きP25/10/25(土) 12:33:32

    >>75

    手毬に案内され、私、そして莉波先輩と星南先輩も同行して、再び校舎の中へ。

    向かった先は、さっきの保健室の隣。


    ことね「あ……」


    手書きの看板には「集中治療室」と書かれていた。



    ちょうどその時、中から一人の白衣を着た女性が出てきた。黒髪を頭の後ろでお団子にまとめ、穏やかな目つき。

    私たちの姿を見ると軽く会釈したので、お辞儀して返す。


    「お見舞いですか?どうぞ、お話してあげてくださいね」


    笑顔で告げて、彼女はその場を後にした。


    手毬「あの人は、千奈お抱えのお医者さん。あの日千奈の付き添いで偶然学園に来てたんだ」

  • 77二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 17:45:26

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん25/10/25(土) 23:32:58

    保守

  • 79SF好きP25/10/26(日) 00:03:52

    >>76

    そう言うと、そっと戸を引いて入っていく手毬。

    胸のざわめきを必死で押し殺しながら、後に続く。

    そこにいたのは。


    部屋の真ん中で、ちょこんと椅子に座った、千奈ちゃんだった。


    ことね「千奈ちゃん!よかった、無事だったんだ……!」


    あのころと変わらない、普段着の千奈ちゃん。

    さらさらとした黒髪、つるつるもちもちの美しい肌。

    目立って外傷もなく、一見すると異常はないように見える。


    でも。


    千奈「……」


    ことね「……っ!」


    すぐにわかった。

    瞳に、光が宿っていない。

  • 80二次元好きの匿名さん25/10/26(日) 08:20:17

    保守

スレッドは10/26 18:20頃に落ちます

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