【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第6R】

生まれも育ちもロクなもんじゃない

幸い小賢しい程度には頭は悪くなかった

だから勉強してトレーナーになった

金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲った

それでも経験も実力も実績もあるわけじゃない

だから口八丁でだまくらかすように担当契約を結んだ

特に優しく 時に寄り添うように 時に一生添い遂げるかの如く

実績つんで金になればそれでいい

そのために他人を騙すことに心が痛む？ 良心？

そんなものは親の腹のなかに置いてきた

いや……俺が腹の中にできる前からそんなものありゃしない

こいつらを利用して俺はのしあがる

【前スレ】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第5R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【注意点】
四人の担当チームなのでオムニバス要素あり、投稿順序会話によるSS内時間の前後があります
史実・ウマ娘アプリと出走レースおよびシナリオの齟齬間違いがあります
色々キャラ崩壊などありますがご理解頂ける方のみ閲覧ください
※ナリタブライアン・メジロアルダンは一時預かりで正式加入のメンバーではございません※
素人なので誤字脱字文脈の乱れなどありますがそうだねプロテインでご容赦下さい

今後、レース開催日のズレ、前後があると思います
矛盾についてはそうだねドアインザメジロだねでご容赦ください

ようやく解放される
おばあさまはラモーヌとアルダンに俺をトレーナー寮のアパートまで送り届けるように指示
先に準備にいく二人を見送ってから俺もおばあさまに頭を下げて部屋をでていこうとドアに手をかけた

――待って頂けるかしら
――アルダンとラモーヌのいる所ではこれは話せませんから

……なんだってんだ
俺はもう一度おばあさまに振り返る
椅子に座ったままメジロの御大――「おばあさま」は俺をまっすぐに見つめる

――私もメジロという名家を預かる身です
――貴方の素性も過去も一応は知っています
――過去にとても悲しい事件があって……貴方がなにをしたかも

俺の呼吸がとまった
くそ――そんなの当たり前だろう
簡単に調べられる、簡単に行き着く話だ
メジロっていう名門が調べないはずがない

――ごめんなさいね、トレーナーさん
――貴方にはもう触れられたくない過去かもしれないわね
――でも、だからこそ言わせて頂戴
――メジロ一門はレースにすべてを注ぐのを是とする一門
――名家とはいえ、財閥のようなしがらみはとても薄いの
――貴方を受け入れることは十分可能ですよ。 貴方も、その過去も
――そもそもが貴方に非はないもの、貴方は被害者だわ。 トレーナーさん

メジロの御大は俺に気を使ってくれてる
俺の何が気に入ったのかはわからないが、専属だかおかかえだかにしたいのかもしれない
だが――それの前に――流石に言いたくなってきた

俺をメジロの専属か、おかかえにしたいのは光栄だ
俺はおばあさまにまっすぐに近づく
光栄だしチーム:ブロッサムが無ければ真面目に考えてたかも知れない
俺の過去を知ったうえで、それでも受け入れられると言ってくれたことも感謝してる

だけど

メジロアルダンを利用するな


アルダンはようやく希望の光が見えたばかりで前を向けたんだ
そんなメジロアルダンをメジロのために俺の気を引く道具にしないでくれ
あの子は優しくて純朴でいい子だろう？
そんな子を利用してメジロお抱えのために使わないでくれ
そんな事をするのがメジロなら――俺は死んでもメジロにはつかない

さっきの3ヶ月がどうこうをアルダンにいうのは違うだろう
アルダンはこれからのウマ娘で
あんなに努力してそれで奇跡を掴めて
これからようやく走ることが出来るんだ
メジロが走ることを是とするならそんな事はしないでくれ
頼むから

俺はテーブルに両手をバンとつき、そして頭を下げてからドアに向かう
おばあさまは少し笑って――

――そうね、そうね――ごめんなさいトレーナーさん

と俺の背に声をかけていた

その日はもう日が暮れて
メジロの黒塗りの車に送られ俺はいつもの寮に戻った
急いでレーンでチーム:ブロッサムの皆にメッセージを送ったら全員から電話を飛ばされ
めちゃくちゃなのでグループ会話で盛り上がった

――翌日

――おはよう御座いますトレーナー様
――あら、遅いのね

おれんちのドアの前にアルダンとラモーヌがいた
……なんでいるの？ お屋敷遠いよね？

――学園へのお迎えに参りました
――昨日ここに送ったのだから……家を知っているのは当然でしょう？


俺の背に嫌な汗が落ちた

――通勤通学でお話をしながらというのはお互いの絆を深める良い方法と思いまして

……ああ、そうか
彼女はまだメジロに利用されてるままなのか
もういいんだ、と俺はアルダンの頭をぽんぽんと撫でる
つい――いつものブロッサムのメンバーへするような手に、アルダンは顔を真っ赤にして俯いてしまった
あ、ああすまない。 つい――ともか
俺からおばさまにもお願いした。 自由にこの学園生活を走りに集中させてあげてくれと
メジロアルダンは顔をあげ――
ラモーヌは何かを取り出す――オルゴール？

――昨日おばあ様から頂いたの。 アルダンへのプレゼントなのだけど

ラモーヌはオルゴールの蓋を開けスイッチを押す

――メジロアルダンを利用するな

――メジロアルダンをメジロのために俺の気を引く道具にしないでくれ
――あの子は優しくて純朴でいい子だろう？
――そんな子を利用してメジロお抱えのために使わないでくれ
――そんな事をするのがメジロなら――俺は死んでもメジロにはつかない


――俺には何が起きているか全くわからなかった
――多分、多分俺の声であろう声が昨日言った記憶のある言葉を並べている
――オルゴールではなく記憶媒体と再生装置のオルゴールといったそれを、ラモーヌは楽しそうに閉じ、アルダンに渡しながら


―――情熱的なのね、トレーナーさん


うわあああああああああああああああ！！！！！？

俺は朝っぱらから大声を上げ庶民の小さな玄関で転がってる
羞恥と色々ななにかに耐えきれない哀れな男はごろんごろんと転がることしかできない
そんな俺にメジロラモーヌはしゃがみ込んで

――俺は死んでもメジロにならない
――もういいんだ、メジロアルダン
――感動的ね、だが無意味ね
――アルダン、まんざらではないもの

やめて！？ あの時ドアの前に立ってたのちょっと気になってるけど無かったことにしてたの！
だからほら世間知らずのお嬢様が照れてるってだけにしとこ？ね？ね？

これがメジロの卑劣な術…

ネーサン⁉︎

しかしアルダンは顔を真っ赤にしながら――うつむきつつもまんざらでもない顔でオルゴールを大事そうに胸に抱いていた。
まってくれ――違うんだ、いや違わないけど違うんだ
これはほら、これからレースを走るアルダンにレースに集中してもらいたいって意味で
ここにそんなやましいだとかそういう気持ちは欠片もなくって

――本当に馬鹿ね、貴方
――そんなのわかってるからアルダンは喜んでるんじゃない

アルダンはゆっくりと俺に近づいて、頭をさげる
深窓の令嬢――おしとやかなお嬢様はふわりと笑いながら

――三ヶ月で、トレーナー様に気に入って頂けるよう……一生懸命に頑張りますので
――どうぞよろしくお願い致します

おまけ

――アルダンはこれからのウマ娘で
――あんなに努力してそれで奇跡を掴めて
――これからようやく走ることが出来るんだ
――メジロが走ることを是とするならそんな事はしないでくれ
――頼むから
――そんな事をするのがメジロなら――俺は死んでもメジロにはつかない
――――メジロアルダンを利用するな

「うわ、うわっ、うわあああっ♪」

テーブルの上、オルゴール型のレコーダから響く声に集まったメジロの少女たちは沸いていた
少女漫画が大好きなメジロライアンは目を輝かせ尻尾をブンブンと振って聞き入っている
メジロドーベルもマックイーンも手を口に当てこのオルゴールのセリフに驚愕しつつも尻尾がブンブンしている

「すごいねこの人――私もこのぐらい一途に思ってくれる人が……でも私なんかじゃ、ね」

メジロパーマーも大喜びではあるがどこか湿度が高い
興奮にまじってないのはそれをのんびりと効いているメジロブライトぐらいのものだ

そんな中心に、メジロ総帥――おばあ様が座り

「皆さん、よく聞きなさい――これはアルダンと一生を刻んでるトレーナーではなく
――いきずりでアルダンを預かったただのチームトレーナーが私に言った言葉よ」

『ぅえええええええええ！？』

「突然現れたトレーナーが自分の身体を真剣に想い、そして奇跡的に見つけた糸口――この方はアルダンの体質を改善する糸口をみつけたわ
そしてメジロにしようとした際にアルダンの美貌と身体を利用しようとしてると勘違いをして
私に言った言葉よ
―― 春の題材は決まりましたか？ドーベルさん」

ピコピココピコと耳を動かしすごい速度でスマホをいじるドーベル
マックイーンはおばあさまの前で優雅さを見失い
あらあ、素敵ですわあ♪ とブライトもようやく話にまじってきて
きゃいきゃいと盛り上がっている

メジロシティの存在を総帥が知らぬはずもなく
そのメジロ割の予算は総帥が捻出しているのだということを世の中は知らない

>あの子は優しくて純朴でいい子だろう？

おっそうだな

QKします

個人的には闇トレ5分割よりメジロVSちーむぶろっさむの構図が見てみたい

まぁこの闇トレ、自身が「年上の強者に使われる側」だったから人をモノみたいに扱うのは人一倍忌み嫌ってそうだし、そらおばあさまにも啖呵切れるわな
皮肉なことに、いい意味でそれがメジロにブッ刺さってしまったわけですがw

おばあさまはアルダン応援しただけなのに盛大に勘違いしてる闇トレかわいい

おかしい
限界で精神も肉体も追い詰められてるトレーナーが理不尽だという話だったのにもうメジロがガールズトークしてる

こんなにどうしようもない「感動的だな、だが無意味だ」を初めて見た

>>21

>メジロシティの存在を総帥が知らぬはずもなく

この世界ではメジロシティが実在してて草

>>28

>――なんとしても心を掴むのですよ？ 貴方にはその恵まれた肢体もあるのですから

>――なんならラモーヌさんを使いなさい

前スレで闇トレに聞こえるようにこんなこと言ってるのもメジロの作戦かぁ

「嘘です！ トレーナーさんがそんな事するわけありません！」

バン！
勢いよくテーブルを叩く音がトレーナー室に響く
サクラローレルは憤慨しメジロラモーヌに食って掛かっている

「あら、嫉妬なのね。
でもごめんなさい。 ――事実よ。
トレーナーさんは自分の意思でアルダンをはずかしめたのよ」

しれっとした表情でメジロラモーヌはサクラローレルに微笑む
一方でジェンティルドンナは疑惑の表情だ

「アルダンさんが見目麗しいのは認めるけれども――それは無理が無いかしら？
だってトレーナーさんが女を押し倒したり欲望のまま女性をはずかしめたりとか想像できませんわ
――だってあの方、マゾでしょう？」

トレーナーの権威やプライドなどチームブロッサムには存在しないのだ
その証拠にジェンティルの言葉にうんうんとブーケどころかクリークすら同意して頷いている
チームブロッサムにとってトレーナーは尊敬し、認め、愛おしく愛する対象である
と、同時に自分たちが愛で優しくし虐める側だという認識だ。別に本当にいじめたり尊厳を壊す気は毛頭ない
トレーナーが喜ぶのはどちらかというなら絶対マゾだろみたいな感じである


「あら？ 本当にそうかしら？」

ラモーヌは魔性の微笑みを浮かべてスマホを取り出す
テーブルに置かれたスマホから流れる音声にチームブロッサムに激震が走った

鮮明なトレーナーの声がトレーナー室に流れる

――ちょっとその体操服まくって
――はよそれまくれアルダン

漏れるアルダンの「ひゃあうんっ♡」という色っぽい声
――耐えてくれとアルダンに命令するトレーナーの声
――アルダンの……すごく熱いな


「え、あっ、トレーナーさん！？」
「そ、そんな――トレーナーさんは甘マゾのはずじゃ――」
「――アルダンさん……これは本当かしら？」

鋭い視線をアルダンに向けるジェンティル
アルダンはあまりにも恥ずかしいのか、それともトレーナーの手でお腹や腰をマッサージされたことを思い出したのか顔を茹でダコのように真っ赤にして恐縮して縮こまってしまう
その悪意のかけらもない恥じらいぶりが――これが真実だと伝えている

「ありえませんよ！ ありません！
トレーナーさんはよわよわマゾオスなんです！ だって私たちの攻めに負けてたんですから！
絶対に嘘です！ こんな事はありえません！」

バンバンバンバンとテーブルを悔しそうに叩くサクラローレル
カレンブーケドールは余りの事に言葉を失いつつも尻尾がブンブンされててちょっとうれしそう
スーパークリークはあらあらまあまあ♪といったようにほっぺに手を当てている

「うふふ、やっぱりトレーナーさんも男の子なんですね♪ でも甘えん坊ちゃんのほうがわたしは好きです♪」
「確かにそうね、事実としてわたくし達はトレーナーさんに迫ってトレーナーさんをとろとろにしているわ。
あれが演技だとかはありえないしトレーナーさんは我慢し耐えているけど負けてしまっているの
つまりトレーナーさんは甘マゾよ、ラモーヌさんアルダンさん」

完全論破――ジェンティルドンナはそう確信していた
しかし――ラモーヌは妖艶な微笑をうかべつつ

「あらそう？ ――そもそも、甘マゾ気質もあるけどおせいそを攻め立てる性癖もあるとしたらどうかしら？」

本当にショックを受けると頭を殴られてたような錯覚を起こす
ジェンティルドンナは強者とてそのような経験は一度たりともなかった
強者というのは肉体のみならず精神もそう
そうあるべきだと信じ自らを鍛え上げてきた
しかしジェンティルドンナは今――その言葉が真実だと知ってしまったのだ

「優しく甘やかされるのが好き――そうね、あると思うわ
でも同時に羞恥に震える女に服を脱げと命じるのが好きなちょっとサディズムを感じさせる性癖を持ち合わせてる
男だもの――どっちも好き――というのもあるのではなくって？」

――おっぱいが大きい方が好きな男だって慎ましいのはそれはそれで好き
――どちらかにしか興奮しない男なんかいない

――つまり、トレーナーさんは女性を屈服支配したい側でありながら
――それはそれで女性にちょっと攻められたい甘マゾも好きだったに過ぎないというの？

過去にトレーナー本人が言っていた言葉がフラッシュバックされる
ジェンティルは力なく崩れ落ちるように椅子にぺたん、と座り込んだ
テーブルを見つめ、うつむき――初めて味わう敗北感に、唇をきゅっと噛んでいた

「そんな――トレーナーさんの性癖を正しく理解していなかったとでもいうの……？」

貴婦人ジェンティルドンナ
気高く強い彼女が初めて気弱な表情と言葉を吐いている
勿論これはガールズトークであり会話はただの猥談だ、強者とかレースとか勝利とかそんなものは存在しない
あるとしたらトレーナーは敗者だというただ一点しかないのだ

「わ、私はどっちでもいけますっ！ 受け攻めリバどれだって全部まとめてブーケにしてトレーナーさんにプレゼントできるんです！ ぎゅってしてあげるのもされるのも大好きですし――あっでもトレーナーさんのマゾ顔ちょっとみたいかも」

おせいそおひんば枠カレンブーケドールがそんな頭ブロッサムに主張
サクラローレルはブンブンと首を振って

「トレーナーさんはマゾです！ 私にじーって見られるだけで一切触ってないのにゴールインしちゃうようなマゾさんなんです！絶対そうですよ！ そういうのを最初ははずかしがるけど段々私に見られてるだけで日常でもトロっとした顔しちゃうようになっちゃうんです！

――きゃー、ローレルさんえっちすぎます！とはしゃぐカレンブーケドール
クリークもまあまあまあ♪と尻尾をフリフリと楽しそう
メジロアルダンはあまりの恥ずかしさに両手で顔を覆ってはいるが時々耳がピコピコしている

「おい――そもそもトレーナーが攻めの方がサクラローレルやジェンティルドンナにもいいだろ
だってこう、情熱的に抱きしめてくれてベッドに優しく押し倒してくれるんだろ……？」

ブライアンは清純派らしい、正統派に優しく抱いてくれるタイプが好きなのだろう

ッキャー♪ブライアンちゃん乙女！ 応援してるよブライアンちゃん！
とサクラローレルはどこからか取り出したブライアンメガホンをふりふりしてる

「あら――乙女なのね」

メジロラモーヌは薄く笑いつつそんなやり取りを眺めているがナリタブライアンに呼ばれる

「そういうお前はどうなんだ――純情路線か――攻め路線か――家元か」
「どれも良い――と言うところかしら？ はしたない完全三冠と笑っても良くってよ」
「ふん、自在脚質か――じゃあ好みは？」
「面白い男――かしらね。 ブロッサムのトレーナーさんはとても面白いわ」

バンバンバンバン！ また机を叩き出すサクラローレル。同じように机をバンバンするカレンブーケドール

「いい加減にして下さい！ そうやっておっぱいでトレーナーさんを誘惑するウマミミばかり！」
「そうですよ、私たちの立場はどうなるんですか！サクラローレルさんの言うとおりです！
おっぱいが大きいことでこの世界を大きく圧迫してる自覚を持って下さい！」
「あら、ごめんなさいね 」

「こうなってしまっては仕方ありませんわ――
一刻も早くトレーナーさんを左耳堕ちさせて右耳な事を考えないようにしないと」
「あらあら駄目でよジェンティルちゃん。 あくまで幸せで気持ちよくて左耳堕ちのほうがいいってしないと
うふふ♪トレーナーさんをトレーナーちゃんにしちゃいましょうね♪」

チームブロッサムは今日も平和で
これはなんだと独自のカットをされていたスマホの録音の事を担当達に詰め寄られたトレーナーがブチ切れ散らかしてタモ―ヌを探し回る事になるのだ

最後誤字ありますがそうだね頭プロテインかよでご容赦ください
QKします

待って家元ってこの世界にもガル◯ンや夜の◯住流あるの？
しかもブライアンが知ってるレベルで！？

メジロシティ実在してる時点でもうそのぐらい普通にありそう

◯住流がもしかしたらウマ娘の名門なのかもしれない
ニシズミとかいう冠名ありそうだし

いい話なのに、いい話なのに頭ぶろっさむ

メジロラモーヌから封筒を渡された
よくある茶封筒ではなくもっと高級な――エアメールが入ってそうでそれをもっと高級にしたような大きな封筒
背には封蝋とメジロの刻印までされてる上に合わせに割り印――えっなんでこんな厳重なの？

――小切手だと思うわ、名義は母だけれど連盟でおばあさまの名前もあるでしょう？
――アルダンを治してくれた正式な謝礼よ。 公式の契約ではないから私が手渡しをしてるけれど

いや別に金の約束なんかしてないのでわざわざ良いのだが
とはいえ俺は闇のトレーナー、そして相手はメジロのしかも超良家、さらに総帥まで関わってる
これを固辞するのは失礼だろうしそもそも金なんて要らんというような男ではない
ローレルたちを焼肉にでもつれてってあげよう、皆喜ぶかな
俺はペーパーナイフで封蝋をえっちらおっちら開こうとして――開かない

あっれー？なんかバッチリくっつきすぎじゃない？
シーリングワックスという名目で一応出回ってるそれはこうしてペーパーナイフでこじるとぺろっと取れるのだが
これはなんというかしっかりみっちり接着されてて開かない

――無理よ、ペーパーナイフで直接封筒を開きなさいな

言われるまま俺は封筒を開く
中には二枚の感謝の意を綴られた手紙と小切手

――え
俺の見たこと無い数字が並んでる。ゼロがいっぱい
いやいやいや絶対これ桁間違ってるって発注ミス起こしてますって

俺は慌ててラモーヌに小切手を見せる
小切手を覗くラモーヌは少しだけ眉を寄せるが――すぐにいつもの薄い微笑にもどって

――確かに多少多いとは思うけれど、アルダンを救ったという気持ちと考えたら妥当だと思うわよ
――安心してトレーナー、それがちゃんと正当な報酬

いやいやいやいや――
俺は小切手をじっと見つめる
俺の想像すらしない金額が書かれた小切手
これを銀行に持っていって身分を証明して手続きしたらこの額が手元におりる
最初は小切手ってもうすぐ廃止だっけいや良い経験できるなーとか
担当たちに美味しい焼肉奢れるな、よしビワハヤヒデやマヤノトップガンもさそっちゃうぞー
そのぐらいの感覚でしかなかったのだ
しかし
目の前の額面は驚きや喜び通り越してビビるような額だった

俺は小切手をじっと見つめる
俺は闇のトレーナー
金のためにトレーナーになった男
世の中は金だ――金があれば幸せだなんていわない
でも金がないのは不幸なのだ 金があればそれは回避できる
金があると産まれる苦労や不幸もあるのかもしれないが――金が無いと本当に不幸なんだ
金で買える幸せはなくても、金で買える満足はそこら中にある
満足ができないと――人間は幸せじゃないんだ
だから今でも、俺は世の中は金だと思ってる

だからこの報酬は驚くしビビるが、とてもありがたい
…………
でも――ラモーヌ
すまん、これは受け取れないからちょっとおばあさまとお母さまに謝罪のために会わせてもらえないか？

こんなにすぐにまたメジロ家にくるなんて夢にも思ってなかった
屋敷に入るとアルダンが嬉しそうに出迎えてくれて
俺はアルダンと握手とちょっとの会話をしてからおばあさまの書斎に招かれる
そこにはラモーヌとアルダンラモーヌのお母さまであろう女性
そしてあの椅子に座ったおばあさまが座っていた

俺は謝罪に来たことを伝えた
頂いた小切手は受け取れないと
それがメジロの顔を汚すことは重々承知だと
だけどどうしても受け取れない事を謝罪させて欲しいと頭を下げた
お母さまもおばあ様もとても意外な顔をしていた
不満だとか恥をかかされたとか気に入らないとかではなく驚いた顔
おばあさまは静かに、ゆっくりと

――理由を聞かせてくださる？ トレーナーさん

と切り出した

――お金に貴賤も悪も善もない
――金額の大小はあれど正しく使えばいいだけ
――トレーナーさんにはそのように使える分別があると思うわ
――どうして受け取れないと思ったのかしら？

責めるだとかこちらを説得しようだとか
そういう雰囲気ではなく、ただただ知りたいと
メジロの総帥はそう俺に訪ねてきた
ラモーヌはいつもの俺を試すような微笑を
お母さまは少し心配そうな、物憂げな表情をしている
どのように伝えたらいいのか――俺はまだうまくアウトプットできなくて
どうしようもないので
俺は全部――正直に喋ることにした

自分がトレーナーになった理由
彼女たちと契約をした理由
俺が彼女たちを騙そうとしていたこと
金のためにトレーナーをして自分は意地汚く金のために生きようとしたこと
だから俺は金に執着した――要は金が大好きな人間だということ
彼女たちを利用して重賞やあわよくばGⅠを勝てればそれでいいと思っていたこと
それもこれも全部――金のためだったと

お母さまはとても驚いたような顔をして
ラモーヌはすこし微笑を消して
おばあさまは静かに静かに――俺の話を聞いていた


だから、この金は正直めちゃ欲しいです
今でも心のどこかで勿体ないだろ人生で一番のチャンスだとおもってるとこがあります
宝くじをビリビリに破いてすてるようなものだって思ってるとこもあるんです
俺、金好きですから
庶民とか貧乏人がしたいこと、ほしいことって――大体は金で買えちゃうんですよ
それで、きっと俺等は金があればそれなりに満足ですから

――ならば良いではないですか
――その謝礼はメジロアルダンというウマ娘を救ったもの
――1人のウマ娘の人生を救っただけでなくその姉も家族もメジロ家を救った
――貴方が受け取るにふさわしい、堂々と受け取って良いお金なんですよ？
――庶民が一度で受け取るには大きな額なのは分かるけれども
――貴方はそれを受け取る資格がある

おばあさまは穏やかに言う
俺を諭すだとか、試すだとか、説得だとかじゃなく
「それなのにどうして断るのか」を尋ねるように

俺は息を吸い込んで
正直に言う

――きっと俺、この金もったらどんどん駄目になっちゃう気がするんです

メジロだとか正当だとか謝礼だとか
宝くじだとかそういうんじゃなく
ものすごい額の金をもった自分はもしかしたら――今みたいに世界を見れなくなるんじゃないかなって
俺は確かに不幸だったんだと思います
昔のことは凄く不幸で――世の中は不公平で、理不尽で
色々世の中はクソだって今でも思うんです
だから金はほしいし、世の中金だよって思うんです

でも、俺いまそれなりに幸せなんですよ
担当の子も全部知ってるんです
俺がだまくらかして契約して――金のために利用しようとしたって
全部知ったうえで俺のことを慕ってくれて
皆と一緒に居たら俺すごく幸せなんですよ
だから金なんて要らないとかそういうんじゃなくて
今いっきにそれだけの金を手にして
金金金ってなって
どんどん自分が本当にクズでクソで金ばっか見るようになるような
本当にあいつらを成績とかだけでみるような
そんな風になるかもしれないって思って――
俺庶民で貧乏人なんで
その金で自分が狂っちゃう気がしたんです

だからすいません――小切手は受け取れません
貴方がたの誠意と気持ちを踏みにじって本当に申し訳ありません

別の意味で既にダメにされてる気もするが、締めるところはきっちり締める闇トレーナー

――怖いのね――狂ってしまうのが

ラモーヌが口を開いた
その表情がこの上なく楽しそうに笑っている
ラモーヌはおばあ様に向いて

――だそうよ、怖いんですって。
――だからコレだけのお金が要らないそうよ
――面白い人でしょう？ お金よりウマ娘なの

おばあさまは目を細く細く細めていた
笑っているのだろうか……しばらくおばあさまはそんな顔をしてから
わかりました、と俺から小切手の入った封筒を受け取って

――貴方は本当に変わっているわ
――本当に変わってる
――でも、覚えておいてください
――私はメジロ総帥として貴方に感謝しています
――アルダンも、ラモーヌも……そこのヒリュウもね

お母さま――メジロヒリュウさんは俺にひらひらと手を振ってニッコリと笑っていた

――確かに金の魔力は恐ろしいもの
――狂ったように人が変わり破滅していく者は数多くいます
――ですが何かを成し得るために必要なのも――また金銭です
――ですから、なにかあれば必ずメジロを頼りなさい
――メジロの名において貴方を必ず助けますから
――それがメジロアルダンを救った貴方への謝礼という事にしましょう
――それでいいですか？ トレーナーさん

俺はがばっと大きく頭を下げて
ありがとうございます！
と大声でおばあさまに礼をいった
ちょっと声が大きすぎて、お母さまは目を丸くして、ラモーヌは可笑しそうに笑っていた

――ラモーヌさんが気に入ったと言ったのがわかるわ
――貴方はとても面白い
――ねえトレーナさん、何度でも言うのだけれど
――本当にメジロになる気はないかしら？
――アルダンさんは比較的――殿方ウケする容姿と性格だと思うのだけど

そんな事を聞いてくるおばあさま
あ
思い出した
おばあ様、なんでこの前の話録音してたんですかね？
ちょっとこれは聞いておきたいんですよ
なんでオルゴールにしてアルダンに渡してるんですかね

俺の言葉にメジロの御大――おばあさまは横を向き
へにゃっと耳を垂らし

――イヤね、この歳になるとすぐに疲れてしまいます
――休ませてちょうだい。ヒリュウさんラモーヌさん、あとは任せますよ

お母さま
メジロヒリュウさんはなんというか超絶美人だ
アルダンとラモーヌがこんなすっごい美人になったのも頷ける
それなのにちょっとだけほわっとした空気があって近寄りがたいわけでもない
なんとうか万能おっとり超絶美女おねえさんなお母さまだ

――うふふ、すごいわね貴方
――ねえ本当にアルダンと永遠を刻まない？
――その時は私をおかあさまって呼んでほしいわ

俺は応接室で紅茶をだされながらニコニコとするヒリュウさんと談笑をしていた
正直言ってビビっただけだ
それを過大に評価されても困るんだ

俺はこまったような顔をして頬をぽりぽりとかく
背中がどうにもむず痒い
ありがたいし光栄だが実際そんな大層な理由じゃないので褒められても恥ずかしい

――うーん
――大層な理由がないならもっとすごいんじゃないかしら

と、ちょっとまっていてねとウインクをしてヒリュウさんは部屋からでていく
戻ってきたヒリュウさんはなにやら大きめのバッグをもってきていた

――ちょっとした心理テストというか心理実験よ

テーブルに突然置かれる札束
え、えっ！？ 無造作に置かれる新札の札束である

――はい、ワン！って鳴いたら差し上げるわ、これ

い、いやワンだけで100万って何言い出してるのこの人
まあこれは心理実験なのだし
しかしヒリュウさんは当たり前のようにもう一個札束を出す
200，300，400――
いやいやいやまってこわいこわいこわいこわいって！！
テーブルに積まれた札束は10――目の前に1000万が積まれてる

――変な気持ちになるでしょ、これ
――お金はね、数字や理屈じゃないのよ
――黄金は鼻で嗅ぐんじゃなく魂で嗅いでしまうもの、なんて言葉もあるらしいわ

他人に報酬をエサになにかを頼み込む場合
500万差し上げるのでこうしてください！
と頼み込むより
目の前に300万をドンと置いて頼む方が効果がある
思考実験とかである話だ
まあ理屈は聞いたことがある――あるのだが

――実際に見ると心がなんか揺らぐでしょう？
――ただの思考実験でも変な気分になる、それがお金なの
――そして貴方はそのお金を集中にしていた
――小切手というのはあるとしても――とても奇妙な気持ちになったはずよ

ああ、わかる
あれを手放すのにものすごく後ろ髪をひかれる嫌な気持ちがあった
ためらいがあった、その金を手放したくないと思った

――あの決断をすればそのお金は自分のものではなくなる
――人間って一度手にしたお金を失うのがもっとも嫌なのよ
――今こうして積まれたお金に手を伸ばすより、その手元のお金を握りしめるのを最優先するの
――ここの1000万を我慢するより、あの小切手を手放すほうが辛いはずだわ
――額も多いし

――それを大層な理由じゃないそれで手放せる人なんかいやしないわよ
――貴方はね、きっと今がとても幸せで
――なによりその担当の子たちを凄く凄くこころからちゃんと愛してるわ
――愛していたって普通はしないしできないわ
――その選択が正しいかどうかはちょっとわからないけれど
――私はちょっとキュンってしちゃったし――カッコよかったゾ♪

札束をバッグにしまったヒリュウさんはウインクをしてくる
いやほんとそんな立派なあれじゃないんですって……
ただただ――あんなにしてくれたウマ娘たちを絶対に裏切れないっておもって
その可能性を感じたら怖かっただけなんですよ

っきゃーもう、わたしが現役なら絶対契約してるー♪
とかちょっと軽いノリでラモーヌにきゃいきゃい言ってる
やめなよおお母さま俺の評価勝手に都合いい解釈であげないで

ねえねえねえねえ♪とおっとりとした人懐っこい雰囲気で俺に声をかけるヒリュウさん
どんな娘がこのみなの？ アルダンさんはすごく男の人にうける王道だしラモーヌさんだって美人だし実は情が深いのよ？
なんてお見合いをアピールする人みたいになってる

――他にもマックイーンさんとかメジロドーベルさんとか
――のんびり屋さんがすきならブライトさんなんかすっごいおっとりのんびしてるわよ？
――それにライアンさんはああ見えて結構おっきいしぷるぷるってしてるわ？ どう？

どう？じゃねえよメジロのご令嬢たちを勝手にあてがわないで下さい
彼女たちの意思を尊重しろ頭メジロかよ
――お前まで花嫁候補に勝手にされてるんだし助けろメジロラモーヌ

――そういえばトレーナーさん、大事なことを聞き忘れていたわ
――トレーナーさんって、マゾなの？それともサド？
――アルダンさんを押し倒して屈服させ服を脱げと羞恥に震えるアルダンを眺めていたい方？
――それともボンテージで鞭をもったアルダンになじられたい方なのかしら？

お前はお前で母親の目の前でそんなドギつい話しだすんじゃねえよ

――それ！ やっぱみ趣味嗜好の相性って大事よねトレーナーさん♪
やっぱりお好きなのはメイド服？ それともチャイナかしら？ セーラー服？
きゃーきゃー☆お母さんこの歳で学生服は無理よ、きゃっ♪

ぱんぱんと俺の肩を叩き盛り上がるヒリュウさん
ああこういう話が好きなんだろうなあってなーんとなく思いつつ
なんというか子供っぽさもあり、人懐っこくもあり
――お母さんというのが信じられないほど美しく可愛いのだ
ウマ娘ってずるくない？ だってそれなりの歳のはずなのに絶対今トレセンやレースにまじってたってバレないじゃん

――トレーナーさん
――別にいいのよ？ おかあ様でも

やめろ良い訳ねえだろうが！
生々しいのをやめろって言ってんだ！

もーラモーヌさん、 ワタシじゃ無理よ、だってもうおばさんだもの♪
と鈴のなる声でメジロヒリュウさんは笑ってるが
正直いえばラモーヌとヒリュウさんならんでたら100人中100人がラモーヌが姉か母でヒリュウさんが娘か妹って判断する。 高等部にまじっても本当にバレないのではないだろうか

――でもおかあ様も好きでしょう？ 可愛い男の子
――21歳だそうよ、特進でトレーナー試験を合格したそうだわ

えー？っへー？ ふーん！そうなのそうなの
ヒリュウさんは俺をあっちこっちから色々見回す
え、なんですかヒリュウさん人妻だし母親だし娘が目の前にいますが
まあとはいえ相手は姉妹の母親、キャピキャピしてようとそこらはしっかりしてるだろう

――ふうん……おかあさんがゲットしてもメジロよね？
――わかいツバメって良いわよね―♪ちょっと憧れてたの

――なんてね？ きゃーきゃーっ☆ちょっとお肌若返っちゃったかしら☆
――ごめんねこんなおばさんがからかっちゃって☆きゃーっ☆

ほんとにテンション高いなこのママさん……ラモーヌともアルダンとも全然似つかん

――世間話はこのぐらいにして
――トレーナーさん……さっきの話はお世辞とか社交辞令じゃないわ

ママさん……いやメジロヒリュウさんがまっすぐ俺を見る
おっとりめで柔らかくてちょっとだけ人懐っこそうな雰囲気ではあるが
それでも俺が自然に背筋を伸ばし直すぐらいには

――アルダンを救ってくれてありがとう
――本当に貴方が望むならこの脚一本だって千切って差し上げてもいいほどよ？
――おばあさまだってメジロの総帥として心から感謝してるの
――だから貴方が本当に困った時があったらなんでも相談しにきてね
――なにがあっても力になるわ

ありがとうございます
と俺は心から頭を深く下げて
黒いセンチュリーでラモーヌとアルダンと一緒に送られる

なんというか人懐っこいというか明るい方だったな、メジロヒリュウさん
俺はなんとはなしに口にすると
なんかアルダンがすこし驚いた顔で口に手を当てていた

――良かったわねアルダン、おかあ様もいたく気に入ってくれたわ
――おかあ様は普段はあんなのじゃないわよ？
――すくなくとも学園で思わてる私より10倍は厳しい方だと思ったほうが良いわ
――おばあ様のほうがメジロ家以外には基本優しいと思うわ

ラモーヌがなんすごく怖いことをいう
しかしアルダンもこくんと頷いて

――おばあ様は家柄と格式に厳しい方なので家族には厳しいんです
――ですが基本的にそれ以外にはとても優しいと思いますよ

いやまって、おばあさまはともかくヒリュウさんそんな雰囲気全然なかったけど？

――あれは素よ。 社交――対外的には柔らさはあっても基本とても厳しいわ
――すくなくともああなるって事は貴方をとても気に入ったってこと

……いや、まあ、良いことだからいいけど

――それで、どうなの？ トレーナーさん
――例えばここでアルダンの太腿を触りたいの？それともわたしの？
――それとも私たちに触って欲しい側かしら？ 答えを聞いてなかったわ

やめなよ、ほんと
アルダン困っちゃうからほんとやめなさい。 いやアルダンいなくてもだめだけどさ

――あ、あの私どちらでも頑張ります！
――なので……ちょっとだけ好きな方を教えて頂けませんか？

言える！わけが！ないんだよ！
アルダン絆されるな！ ラモーヌの言葉に耳をかしちゃいけないんだ！
俺はじとーとラモーヌを睨みつけ
ラモーヌは妖艶に面白そうに笑う

――そうね、こういうのは試してみるのが一番いいのではなくって？

ラモーヌは俺によりかかり太腿をそっと撫でてくる
うわ、高級そうな降水のいい匂い――
ジェンティルとは全然違う大人の香りに声がうわずってしまう

ｳｨｲｲﾝ
後部座席と前座席の間が鉄板のような黒いガードで区切られていく
よくよく見ると左右の窓もスモークガードが張られて

――失礼します、道が混んでおりまして回り道をいたします。20分ほどで着きますのでお許し下さい

そんな運転手の声がスピーカから聞こえ、プツと切れた
なんだよその手際の良さ！？ これ監禁だよね？
ラモーヌはシャツの上から人差し指だけでゆっくりと俺の肌をなぞる
俺がびく、ビクッとするそれを楽しんでいるかのようだ
アルダンは顔を真っ赤にして両手で顔を隠してるが、指の間からその様をちょっと見てしまっていて

……ん、ぁ、ひっ、っく、だめだ、アルダン――見ないで……

――アルダンもちょっと、触ってご覧なさいな

ラモーヌの言葉に、ゆっくり、ゆっくり……アルダンはそっと俺の太腿の付け根を、つま先でカリっとさわり
その瞬間俺に電気が走ったみたいに跳ねてしまうとビクンっとその手を引っ込めてします
ごめんなさい、あ、ごめんなさいっと真っ赤な顔で俯いてもじもじしてしまってるアルダン
ラモーヌは少し目を細めてそれでも俺の身体を玩具にして撫で回し

俺は20分間みっちりラモーヌのおもちゃになってしまった
家につくころにはアルダンはぷしゅーとオーバーヒートしてる
おれは今日もしくしくしくしくと泣きながらベッドと枕をぬらすのだ

ここは府中トレセン学園
ヒトミミはウマミミは勝てない

おかあ様は穏やかではあるが一番自己にも他者にも厳しい方
トレーナーさんの話にとても心配そうで
それが逆にトレーナーさんに厳しくなってしまうのではないかと不安だった
トレーナーさんはいつもノートPCを見つめてて
お忙しいから私は本当に申し訳なくて
でも――私も走りたいのは一緒で
だからタブレットのデータを共有してそれを全部真剣に見るトレーナーさんに私はときめきを感じた
真剣に私のデータを見て、悩み
睡眠不足であろう顔つきでも、それは変わることがなくて
私にデータの細かいことを聞いてきた時は私がびっくりするぐらい細かいところもみてくれてて
なんて真剣に見てくださるのだろうと嬉しかった

長い期間ではないけどチームブロッサムの皆様がトレーナーさんを愛してる理由もすぐにわかった
あの方は本当にひたむきに毎日を生きてて
それは全部ウマ娘に向けられてて
手腕だとか実力だとかじゃなく――それは凄くウマ娘の私にとっては魅力的に思えた
きっと彼女たちもそんな所が良いのだろうと
私はあの人に救われ
今後はメジロのスタッフの皆様とお医者様に任せることになって
トレーナーからは膨大なデータをメジロとして頂いた
それはサクラローレルさんのクラシック内容すべてのトレーニング内容
脚の弱かったサクラローレルさんへ行った事やその理由
そのトレーニング結果の所感
どのように考え、結果どのように思ったか
全部をメジロに共有していただいた――私の脚の弱さに、少しでも役立てばいいと
あんなに優しい方がひたむきで、一生懸命で――それが自分に向けられるのは嬉しい事
それを好ましい相手だと思うのは不思議なことではなくて
私はあの方と3月までではなく――チームブロッサムの皆様同様に
一生を刻みたいと

おかあ様にも認めて頂き
帰途につくトレーナー様となんとかとりとめのないお話ができて
私はとても幸せです――明日もトレーナー様をお迎えして
勇気が出たら、食事に誘えたらいいな……なんて思ってしまいます
ですが姉さまはトレーナー様にひどいいたずらをして
はしたないですと私も叱ろうとしたのに
トレーナー様の熱い吐息と、甲高い少女のような声
そしてあのお顔を見た時――私が知らない気持ちが胸を駆け巡りました
トレーナー様は21歳、私と3つしか違わなくて――でも姉様に翻弄されるトレーナー様は

――とてもとても美しく、可愛らしく――まるで妹のよう

はしたないとは分かっていました
姉様を止めるべきだと分かっていました
あの時渋滞なんかしていませんでした
トレーナー様は涙を浮かべて――見ないでと懇願していました
なのに――私は目が離せなくて――ドキドキもして
それ以上になかすごいものが背にも胸にも駆け巡っていて
私は思わずトレーナー様に触れようとして

――あんなトレーナー様を見てしまって私は私でいられない気がしました
――あんな顔をされてしまって――私は私ではないような感情がぐるぐると回っているのです

なんなのでしょうか、これは
夜もまともに寝れないのです。 恋心とも違う甘い甘い感情
はしたないんです
あんなのは駄目なのです
それなのに――だめなのに、私は

――トレーナー様のあの顔がまたみたいって思ってしまうんです

ごめんなさいトレーナーさん、私ははしたない悪い女です
ごめんなさい

QKします

証明は大事なのでお借りしました

《ウマ娘》メジロライアンの勝利ポーズ！【ウイニングランあり】 #ウマ娘 #ウマ娘プリティーダービー #メジロライアン #umamusume

アルダンが目覚めそうで草

乙
闇トレほんといい奴だし真人間ってレベルじゃないんだよな
でもなぜかいじられとか似合うんだよな

トレーナー様は21歳、私と3つしか違わなくて――

おい待てェ
お前まだ21だったのかよ

金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲った

21でこれか…？そりゃメジロも囲いに来るよこんな逸材

たとえ1000万だとしても1000万の宝くじ貰って返せる奴なんざいねえよ
闇トレそりゃメジロに気に入られるわ

ちょっとまってほしい
アルダンは弟ではなく妹と言ってるのがアルダン一番やばいという証拠ではないだろうか

>>86

それより上のラモさんとだと完全に合法すっぴんうまぴょいできるんだよな…

>>88

闇トレは本質的に左ミミなのよね…

ちなみに今は法が更新されてヒトミミ基準の法でも16歳以上
一応18歳ってのもあるがそもそも2022だか24で「成人」が18以上に定められて学生とか身分に左右されないので高校3年生で合法ぴょい
ちな本当は16歳でも今はほぼ合法なはず

カレンチャンのお兄ちゃんとちがって法も倫理も社会的にも同意的にも全部クリアしてるけど我慢してるのが闇トレだからなあしかも本人は滅茶苦茶したいしスケベな自覚あるしww
単純に行為や快楽に溺れて今のトレーナー業疎かになるかもしれないから一回もしませんよって最初の麻薬理論で耐えてるのがめちゃ真人間


なのに絶倫だ変態だいじられ系なんだ可哀想は可愛いんだ

可愛い反応しちゃう闇トレが悪いよー
むしろ闇トレが麻薬だろ、あんな可愛い反応されたらもうやめられねえよ

チーム唯一の清涼剤になるはずのアルダンまで捕食者になっちゃった
闇トレはただアルダンのために心身を削って長年苦しめられきた体の問題を解決する方法を奇跡的に見つけて
メジロ家のためにアルダンみたいな純粋な少女を利用するなってメジロ総帥のおばあ様に啖呵を切って
ウマ娘に全身全霊で向き合って愛するためにとんでもない額の謝礼を断って
いじめられるとゾクゾクするような反応を見せただけなのに…

>メジロ家のためにアルダンみたいな純粋な少女を利用するなってメジロ総帥のおばあ様に啖呵を切って

しかもこれがアルダン側の要望でお婆様は応援しただけだけどトレーナーは勘違いをしただけなのに

だけどまだなってないから…アルダンならきっとはしたないって耐えてくれるね

>>94

捕食者かどうかはともかくそりゃ脳焼かれますわ

メジロヒリュウにもほのかに狙われてない？

おひんばって毎年とっかえひっかえ色んな牡馬とするもんな！(偏見)

メジロラモーヌまで玩具にされ
なぜか担当には浮気だNTRだ言われ
なぜだろう俺はこんなに必死に一生懸命なのになんで俺が悪者になるんだろう
心がささくれてしまう

はーーーもー
メジロアルダンの事が一段落し俺の睡眠時間もかなり取り戻せた
メジロから毎週届けられる栄養ドリンクのケース
ノンラベルのそれに手を合わせ一本ありがたく頂く
味はなんというか辛い生薬を苦く煮詰めたようななにかだが確実に効いてるという実感はある
そしてトントンとノックをする音
どーぞーという声にメジロアルダンが入ってきた
それにナリタブライアンとスーパークリーク

――トレーナー様そろそろ病院のお時間です

アルダンの事が一段落したとはいえ急にメンバーが二人増え
メジロのご厚意で俺の検査と栄養剤の注射
そして一緒に剥離骨折のスーパークリークの検査とナリタブライアンの検査をしてもらえることになっている

スーパークリークは完治したといって良さそうだがやはり医者にみてもらって万が一や他の部位も診ておいてもらいたい
ナリタブライアンも走法の不調の原因がどこにあるかつかめていない、競争に強いメジロなら信用信頼できる故に頼んでおいたのだ
俺達は病院でそれぞれ手続きをして俺は簡単な問診と血液検査をしてもらう

――では針刺していきますね

……うい
…………なんですか皆さん

――アンタ、ひょっとして
――あらあら……トレーナーさんお注射苦手ですか？

うっさいなあ針刺されるの見るのが苦手なだけで注射拒否とかじゃないもん
注射針から目を逸らしてる俺を見つめる三人に顔が赤くなる
クリークが俺の手をぎゅーっと握って、はいリラックスですよーとニコニコしていた
このあと栄養剤の注射らしいが個室に呼び出される
まあたかが注射なので三人にはちょっとそこで待ってもらおうとしたら当たり前のように着いてこられた
なんだよお俺が注射されて、んーって目を逸らしてるのがそんなに見たいのかお前ら

――はいトレーナーさん脱いでくださいね
――ああ上は大丈夫です下ぬいでお尻出してくださいね

はい！？
――って、ああ……そういや入院した時もケツにぶっさされた気がする

流石に二十歳を超えた男が医療行為で恥ずかしがるわけもない
俺はいそいそとズボンのベルトを外し
――三人と目があった
いや出てけよ……出てってよお！

アルダンは顔を真っ赤にしつつ両手をパタパタふってごめんなさいすぐ出ていきますと出ていこうとする
しかしそれをナリタブライアンががしっと腕を掴んで

――いいのかメジロアルダン……アンタだって尻尾がぶんぶんじゃないか
――そうですよアルダンちゃん♪ 私たちは引率なんですから♪
――こんなサービスシーンを合法的に見れるのは今だけだ、ちょっとここで座ってたらいいだけなんだぞ

ブライアンさん！あなたのトレーナーさんに今の君を見せれるっていうのかい？
君恋人のようにトレーナーさんを慕ってたよね！？
ブライアンのまさかの裏切りに俺は抗議する。 お前そっちがわじゃないだろ

――うるさい、私のトレーナーが好きでも……それはそれで興味はあるだろ
――アンタだって好きな女の子はいたってグラビアとかモデルとかみるだろ？

ちょっとだけ顔の赤いナリタブライアン
いやそれはそれはたしかにあるけど見られるのはグラビアモデルじゃなくて俺の尻なんだよ！

ええいクソ、ブライアンはそういうの絶対興味ないとおもってたのに
愛しのトレーナー以外は眼中無いと思ってたのに！
まあ確かにね、男だって愛する愛しい恋人がいたとして、それはそれとして美人だったりスタイルいい女の水着や裸に興味なくなるわけじゃないからね？ わからんでもないけどさ！

――はいもういいですかー？ そこ四つん這いになってくださいねー

看護師さんは慣れたこと日常茶飯事のように俺達の会話をスルーし「はよしろ」と言った顔
うーんこれがプロか
取り出したるは巨大な注射器――え、でかっ、太っ？
なんというか押し出す部分が片手じゃなく両手で掴んで押すみたいなやつだ
正直言う――漫画でしかあんな大きさの注射って無いと思ってた
ちょっとまってデカすぎない？ え、えっ？

――ああこれにんにく注射とかにも使うやつなんで安心していいですよー
――押し込む面積広くして圧力下げるために大きいんです。 量も多いですしねー
――針ちょっと太いんで痛いですけどがまんしてくださいー

三人が三者三様に尻尾をぶんぶんしながら俺を見てる
クリークは目をキラキラさせてうわあ、あんなのが入っちゃうんですねえとか言ってるし
ナリタブライアンも腕を組んでいつも通りはっぱを咥えてるが尻尾はぶんぶんしてる
メジロアルダンは見ないように見ないように俯いて顔を紅く染めてもじもじしてるけどチラチラ見てくる

そんな三人の前で俺はズボンだけずり降ろしトランクスにタオルを巻いて寝台の上に四つん這い
くそ、引率なんかさせるんじゃなかった――させるんじゃなかった
俺はこんなにも必死に一生懸命にやってるのに
――どうして俺が、こんな目にあうんだ、俺ささくれちまうよ


――あ、すいません一応ルールなんでスマホ撮影はちょっとご遠慮くださーい
――はいすいませんねーはいじゃあ注射しますねー、ちくっとしまーす

いだ、いいい！？
俺の声に、なぜか向こうできゃっ♪などと声が聞こえた気がする

注射したあとそれなりにじっくりじっくり時間をかけてメジロの特製栄養剤をぶちこまれ
俺はとぼとぼと待合室に戻ってる
ナリタブライアンとスーパークリークは検査とかレントゲンとかのため別行動
メジロアルダンは俺に静かについてきてくれる

――あの、あのごめんなさい。 その悪気とか下心はなかったんです！

俺の痴態をばっちりきっちりチラ見していたアルダンは俺にずっとずっと謝っていて
しかし尻尾をブンブンさせチラチラみていたのも事実で
――まあ箱入りって感じだったしそういうのに興味のあるお年頃だろう
それにこうして恥ずかしそうに謝っているのもちゃんとしててやはりご令嬢なのだなとは思う
うーん
うちのメンバーは全員とてもアグレッシブだ
まあそれは嫌いどころか良いのだがあまりにオープンすぎて俺の感覚がおかしくなる
ちょっとここらで常識人枠のアルダンに聞いてみてもいいだろうどうせ暇だし

じゃあ、お詫びと言ってはなんだが
と相談にのってもらう事にする。 やはり男が女を色々エスコートするのが普通なんじゃないのかなと
いや俺はそっちの常識がないしエスコートをして欲しいなと思うし正直攻め受けで言えば受けだとは思う
でも女性にそんなのを求めたら恥ずかしい事だとか女性は情けないとドン引きするんじゃないかとか
勿論アルダンにそんな露骨な表現をするわけはなく、デートのエスコートや積極性の話として聞いてみる

――えっと、ううん……そ、そうですね……

とこんな話でも恥ずかしそうにちょっともじもじしてるアルダン
ああ、新鮮な反応。なんか乙女な正統派美少女っていうのが一般男性の多数に人気があるのがとても分かる気がする

――ヒトミミの女性はそういうのが多い、とは伺うのですが
――ウマミミに限ると男性女性どっちがエスコートするかは……半々かなって思います
――ウマミミの方が積極的だとは言われますよ？
――ですのでやはりそういう積極的な女性と相性のいい男性は変だとか引かれる事は無いと思います

ああ、そんな風なのか……男性女性というよりウマミミヒトミミでも少しだけ傾向ちがうのか
まあ明らかヒトミミよりウマミミの方が強いもんな……いわゆる無理やり服をビリビリとかいう暴行にしたって男がウマミミにやったら100%返り討ちだ
そうなると自然に男女の関係もウマミミの方が積極的になるのもなんかわかるヒトミミオスがヒトミミメスより身体能力強いから積極的になるのかも、みたいな

――やはりトレーナーさんは女性が積極的なのはちょっとはしたないなとか思うのでしょうか？
――さっきのあれも出ていかないと、出ていかないととは思ったんです

ああ、うん――プリケツ注射ショー見られるのはめちゃくちゃ恥ずかしかったけどね
とはいえ俺自身積極的な女性は苦手どころか好きなのではしたないとかはない気がする
頭ブロッサムな連中の会話も男がいる前でするなとは思うけどはしたないとかドン引きとか汚いとかはないし
チラチラ――というよりこっそり見てたアルダンの気持ちがわからんでもないのだ
とはいえ男のプリケツなんて女がみて嬉しいものなのだろうか？

いやいつも思うのだ
男は女の身体みてむらむらっとかある。 おっぱいだ太腿だお尻だうなじだetetcある
当然グラビア雑誌はそういうので作られてるしえっちな動画だってそういうものだ
女にもそういうのはあるのだろうかと思ってしまう

――えっと……その、…それはその――はい

ネギと一緒に鍋で出汁浴してツヤツヤしてきた🦆が「お肉はお好きですか？」って聞いてるようなもんでは？

顔を真赤にして恐縮して物凄く恥ずかしそうに縮こまってしまう
ありゃまずい、話が過激すぎただろうか申し訳ない
俺はパンフレットでアルダンの顔を仰いであげつつごめんごめんと謝って

しかたないだろう俺が寝台でプリケツさらして注射をぶっ刺されてる
男からしたらただのギャグでしかない、ガハハと指さして笑うような光景でしかないのだ
そんなのを見て女が喜ぶなんて想像もできんわ。 正直俺のとこが女でも俺は性的に見れるか危うい
……うーん
アルダンも、外をいっぱい見たら魅力的な男性がいっぱい見れるんじゃないんだろうか
俺にちょっとした好位を向けてくれてるのはわかるのだけど
それはちょっとアルダンが勿体ない気がするのだ

――そ、それはそんな事ありません
――私もっとトレーナーさんのああいうのちょっとみたいです

……うん落ち着けアルダン
アルダンは今まで以上に顔を真赤にして俯いて泣くように両手で顔を覆ってしまっていた

実際……男は好きな部位ってのがある
おっぱいだとか太腿だとかお尻
一般で言うチチシリフトモモ……まあ他にもあるが女性の魅力を感じる場所や見たい場所といっていい
女性っていうのは男性のどういうのがいいのだろう？

――それは女の子によってすごい違うので
――例えば鎖骨だとか腹筋、だとか――ううん、引き締まってすこし筋のある二の腕だとか
――筋肉もボディビルダーさんのようなのより細いのがいいとか、お相撲さんが好きだとか

ああ、それなんか聞いたことがある
鍛え抜かれた力士は俺達から見て脂肪の塊であっても女性からしたらセクシーだとか
正直脂肪の下は筋肉の塊であるのはわかるが脂肪でくるまれてるのにセクシーなのか
ちなみにアルダンは見たい部分はあるのかちょっとだけ意地悪してみたくなる

――あ、わ、私はその……細身であまり筋肉は立派ではないほうが
――あとちょっとその……そのシチュ萌えみたいなもので

むっつりというのはちょっと悪い響きだが
やはりアルダンも年頃の女の子、流石に女の子への幻想はとっくに除去されてる俺はアルダンのそれがはしたないとかは思わない。
シチュ萌……うーんコスプレだとかだろうか？ それともクリークのでちゅねのような？
俺もなかなかに耐性が着いてきた気がする。 すごいぞチームブロッサム、恥じろアルダンを見習え

――その、あの、男の方に衣装を着ていただいたり
――ごめんなさいはしたないですよね？ ごめんなさい

健全がすぎる
コスプレなんて健全だろう別に……そういう雑誌もきっとあるのだろう
男だってグラビア雑誌ぐらいは見るしもっと過激な本や動画配信だって一応ある
よくよく考えればウマミミやヒトミミ女性のためのそういう色んなジャンルがあってもおかしくない
あーごめんごめんごめん恥ずかしいよな
お詫びに今度アルダンの好きな衣装俺が着よっか？ なーんて

がばっ
アルダンは俺の手を両手でぎゅっと握っていた
尻尾がこれ以上なくブンブンブンブン振られてる
お、お、お、おねがいしまひゅっ！！
と噛んでしまうほどにアルダンは俺にお願いしてきた

あーあ、これでトレーナーはおしまいです

おいおいトレーナー死んだわあいつ

>――とてもとても美しく、可愛らしく――まるで妹のよう

ふ～～～～ん

メジロ家といっても別に全員が一つの屋敷に住んでるわけじゃないらしい
それはそれで逆にとんでもないのではないだろうか？
おばあさま達と色々お話をした本邸はどこかのアミューズですか？みたいな広さだった
そこに並ぶ建物も立派で庭園も凄かった
むしろあそこに全員が住んでないのにあの広さを利用してるのはとんでもない気がする

アルダンとラモーヌが済む邸宅にお邪魔した
荘厳な本邸はクラシックと重厚感があるがこちらは白を基調とした建物
本邸より近代的なのだろうか？ 建物の作りも材質も本邸とは少し違う気がする
ラモーヌやヒリュウさんに挨拶をしようとしたが明日までかえってこれないらしい
まああとでレーンで挨拶しとこう、ヒリュウさんのも頂いてるし
俺が来たのがわかると、アルダンはいつもより急ぐようにパタパタと階段を駆け下りてきた

――トレーナー様、いらっしゃいませ。 お待ちしておりました
――あ、ごめんさない……走ってなんてはしたないところを

さすが本物のお嬢様はあれぐらいがノーマナーなのか
俺は両手をふってそんな事はないとアルダンをフォローしつつ
趣味の衣装を集めた衣装部屋――ドレッシングルームがあるとのことなのでそっちでお話をすることにした
俺は闇のトレーナー、ウマミミを騙し利用するクズな男
まあともかくとして彼女達の尻尾や耳はとても正直だ
今日のアルダンはとてもとてもゴキゲンなのだろう、尻尾の根本から立ってぶんぶんとリズムよくふられている
レースであれば絶好調のマークがつきそうだし足取りも軽い
正直いうとこのようにはしゃぐという意味で嬉しそうなアルダンをみるのは初めてかもしれない
こんな程度で喜んでくれるなら、いくらでも、喜んで

部屋の中はエアコンもないのに凄く暖かい
ストーブや暖炉っぽさを感じる暖かさだ、足の裏がほのかに温かいので床暖房かもしれない
ドレッシングルームは小さなステージのようなスペースもあるプロの撮影会にも使えそうな部屋だった
カバーで覆われた衣装がずらりと並び、恐らくアルダン自身が着るのであろうドレスや衣装が掛けられてる

まあよくよく考えたら男物の衣装を持っていたとしてもそれを着る男がいないのでは意味がない
準備はすると言ってはいたが――当然この部屋は普段そうは使われてないのだろう
きょろきょろと部屋を物色するように眺める俺にアルダンは黒いレールポールから衣装を取り出す

――おお、燕尾服
色によって黒服だったりモーニングだとか言われるアレ
ややぴっちり目の細いライン
安心しろアルダン、自慢じゃないが俺はかなり細身だからな任せろ
一応燕尾服の知識もある。 そこそこにアイテムが多くカフスやチーフ、手袋など全部一式すべて揃えるのが基本
靴もなんでもいいわけじゃなくエナメルのパンプスが鉄板
俺は蝶ネクタイを結び、試着室からドレッサールームに入場する

はわわわわ～♪
という表情で両手を頬に当て尻尾ブンブン振り回すアルダン
お、好感触――ここはやはり王道のサービスをすべきだろうか

――お待たせ致しましたアルダンお嬢様
――本日はなんなりとご命令を

執事のようにうやうやしく頭をさげ礼をする
アルダンの口からっきゃー♪という黄色い声。 まあ見様見真似なのだがアルダンが喜ぶのは嬉しい
どう？ どう？ 上手く行ってる？
と少し時間をおいて俺もくるくるその場を回ってみる
壁に大きな鏡が張られててくるくる回る自分もまあ、マ子にも衣装というやつだろう

――素敵です、素敵ですトレーナーさん
――あの、あの今日は色んな衣装を、あの、いいでしょうか？

珍しくアルダンが積極的に俺にお願いをしてくれるのが嬉しい
俺は今日アルダンのコスプレ用ドールになることにする

羽織に袴？
この模様どこかでみたような

――あ、新選組かこれ
浅葱色のだんだら模様――先がギザギザになった二色の模様のそれと細いストライプの袴
それにプラスチックにしては少し重いかなり本格的な鞘
さすがに袴と羽織とかは着たことがないなと思っていると失礼しますとウマミミのお姉さんが二人
――その一人はめちゃ長身のアルダンたちのSPなのかホームキーパーなのか使用人なのか、俺を拉致したお姉さんだ

その二人にあれやこれや着付けをされ、たすきを縛り上げる
うお、たすきって縛り上げると背中がひきあげられて背筋まっすぐになるのか
そんなこんなで新選組のコスプレ
ハチマキをつけちょっとキリっと唇を引き結び登場

新選組4番隊組長ブロッサムトレーナー、いざ、参る

そんな演技をしつつ刀を抜き顔の前で構える
アルダンもきゃ、きゃー♪トレーナー様！こっちに、もうちょっとこちらに視線だけください！
と手を振っている。
アルダンが子供のようにはしゃいでるのをみると凄く嬉しい


これは――大昔の真っ黒な学生服か
真っ黒の軍隊帽子のような帽子、昔の学徒的な学生服
これは？ アニメかなにかのコスプレ？
ふんふん、こっちは、あれは

こういうのもなかなかに楽しいものだ
アルダンも心から楽しそうで俺は本当にあの時着ようか？と言ったことを良かったと思った

かなり色々なコスプレをして、演技をしたりこれはどんなセリフを言うのか聞いてみたり
時にそれを一緒にスマホで見てみたり
アルダンもやはり年頃の少女で漫画も見るしこういうのも好きなのかと思いながら
俺たちはドレッシングルームではなく、アルダンの私室でお茶を飲んでいた
アルダンは縦フリルのブラウス、紫のスカート、グレーのストッキング
……それをぼんやりみてると、不思議そうにアルダンが首を傾げた

いや、その――ちょっとアルダン立ってみてもらっても良い？

首を傾げつつアルダンは立ち上がる。まっすぐ立つだけで姿勢もよく上品さがよくわかる
アルダンってすっごい腰が高いなあと思って
身長はクリークやジェンティルより少し低い、それでも平均よりは少しあるのだろうか？
清楚な令嬢、美女ではなく美少女――ではあるのだがほんのり大人びた雰囲気があるのはやはり腰が高くスタイルが抜群にいいからだろうか。
腰がたかく頭身が高いと大人びて見えるのだ

――まあ、その――トレーナーさんは小柄な子の方がお好みでしょうか？
――それとも、ラモーヌ姉様のような大人な女性のほうが？

うーんラモーヌは超絶美人で背も高く――プロポーションもすごい
だがこう、その――美しすぎてそのビビるってとこがあって、妹のアルダンにはいえないがガッツリ好みです！おっぱいでっかいし！とも言えない、まあそうであってもアルダンにいうのは憚られるが
どっちかというと柔らかい雰囲気を持った女性の方が好きだ――物凄く正直にいえばメジロヒリュウさんのような
だがこれはもっと言ったらだめなやつだ

なので大人っぽいほうが好きだけど柔らかい雰囲気もった女性の方が良いなあとだけ
実際アルダンも深窓の令嬢でいい子で柔らかい雰囲気もある
腰が高くてっていうのはむしろ物凄く好きな女性だ

――え、あの……その、あくまで！あくまで見た目だけの話なのですが！
――わたくしはその……私のような女性はどうなのでしょうか
――私はラモーヌ姉様ほど、その美人でもスタイルがいいわけでもない、ですが

あー
うーん……アルダンは物凄く勘違いをしてるんだろうなあ
しかしそれを言うのはセクハラなのではないだろうか
しかし少し凹んでるようにも見えるアルダンを見てるとちょっとあれなので
これちょっとセクハラっぽいんだけど、そういうつもりないからね？と前置きしつつ

そもそもがスタイルや身長というのは絶対値ではないのだ
例えば胸囲とかでスタイルがきまらないしアンダートップでカップ数が一緒だとしても身長や肩幅で見た目の雰囲気は変わる
同じように大人びたとか小柄だとか可愛らしいだとかあってもやはりそれぞれの魅力があってそれらは一括りにはできない、例えば細身のサクラローレルとカレンブーケドールだって別々の魅力があってどっちも凄く魅力的だ
メジロラモーヌとスーパークリークとジェンティルドンナだって全員高身長で大人でナイスバディと言われるタイプだろうが全員が同じ魅力の質ではない

なのでアルダンがラモーヌのに劣るとかそんなのは絶対になくて
アルダンはラモーヌにはアルダンの魅力があってラモーヌにはアルダンにはない魅力があるだけだ
競うな、持ち味を活かせという格言もある
小柄で可愛い妹タイプだってトウカイテイオーとマヤノトップガンとハルウララではそれぞれ別の妹だろう

アルダンはむしろお姉さんタイプな部分も多いと言うか
――うーん、メジロラモーヌよりお姉さんっぽさはあるんじゃないだろうか？

そう、なのですか？ とちょっと不安げに俺を見るアルダンにうんうんと頷く
ラモーヌには悪いが俺がもしお姉ちゃんが一人いるってなったらラモーヌじゃなくアルダンがいいかなあ
雰囲気柔らかいしすごく面倒見てもらえそうだし
と
アルダンがそこにくいついて来た
え？ なにがあった？

――わたし、本当は妹がほしいんです！

あー、うん。 あの完璧超人な姉がいるとなんとなくわからんでもない
すごすぎる姉がいると妹はコンプレックスを抱くそうだし、その反動で姉ではなく妹――お姉ちゃんになってみたいと思うのもなんとなくわかるのだ

アルダンはどんな妹がほしいのかとか、妹がいたら一緒に何をしたいかとか
そんな話をちょっとする

――そうですね、一緒にお茶を楽しむのも良いんですが……その
――こうやって私室ではこう……わしゃわしゃといっぱい撫でて可愛がりたいんです
――子犬ちゃんとかみたいな、でも可愛い妹で、みたいな

あー、わかる。すごいわかる
じゃあペットでいいじゃん、ってなると「それは違うんだ」ってなるやつ

――そうなんですよ！ そうじゃなくて妹を可愛がりたいんです
――一緒にお風呂にも入って、一緒に寝たいんです
――こう、手をきゅっと握って

それとは知らずに自分の調理方法を聞いてる🦆

アルダンが喜んでくれるのも、こうしてテンション高く会話するのも微笑ましいし嬉しい
今まで色々とあってここまでなかなか感情を明るくさらせる日はすくなかっただろう
メジロにはいっぱい女子もいるので今後はこういう話もできたら良いなと心から思う
さて、まだ衣装はあったはずだ
軽食のサンドイッチも頂いたしもう少しコスプレで遊ぶ？とアルダンに問う
今日はめいっぱいアルダンに付き合おう、なんでも着ちゃうぞー

そう尋ねるとアルダンはすこし迷うような、悩むような表情を見せる
あれ、もうコスプレはいいのか？ と思ってるとアルダンは

――あの、私トレーナーさんにお願いがあるんです
――その、あの、そのえっと……あの、言うだけなら、言うだけなら良いでしょうか？
――でもその、引かないで下さい、その、嫌いになったりしないでくださいね？

お願い言われるだけで嫌いになるわけがないだろう
……しかしどうしたんだろうか？ もしかしてそんな深刻な悩みだろうか？
メジロラモーヌに勝ちたいとかならお手上げだ、さすがに3月までにそれは不可能
そもそもまだトレーニングを重ねてないアルダンはクラシック期のオープンや重賞レベルとも言い難い

――トレーナーさん、女の子の服を着て頂けませんか！？

ｼｬﾜﾜﾜﾜ
俺はシャワー室で身体を流してる
別に如何わしい話ではなく身体中に除毛クリームを塗ったり体毛のケアをするためだ
元々毛は殆ど無い方だが女子の服というのは脚とかの露出が多い
腕だってそんな毛が見えたら夢から一気に覚めるではないか
断ろうとはした
断ろうとはしたのだ、でもアルダンが

――そう、ですよね、気持ち悪いですよね――嫌いになりますよね

みたいに凹んでしまってるし――そもそもそこまではない
シンプルに死ぬほど恥ずかしいだけだ
嫌だというのは気持ち悪いのではなく恥ずかしい
むしろ気持ち悪いのは女装をした男のおれのほうじゃないのかこういうのは

シャワーで除毛クリームを流し身体を拭いて軽い肌着に着替える
待っているのは先程のウマ娘のお姉さん二人組
いやほんと、ほんと申し訳ないです、お手数掛けます

あっ…(察し)

いやだ、正直はずかしいからやりたくない
というよりアルダンに引かれたら俺はショックで寝込むかもしれない
でも演るからには――全力で
除毛クリームを使おうと剃ろうとどーしても男だと黒い痕が出てしまうはずだ
それに俺にはよくよく見ればわかる昔の痣が残ってる
そういうのを全部なんとかするにはシーラやファウンデーションなどで脚も腕も最初にケアしてしまえば良い
ということで化粧品などもってない俺はそれをお願いし
手が届きにくい所や薄く塗るのはお化粧のプロというか当然くわしい使用人のお姉さんたちにしてもらうことにしたのだ

――あの……ずるくないですか？

俺の脚に、腕に、お腹にファウンデーションを塗ってくれてたお姉さんがぽろっとこぼす
さすがお化粧なれしてるだけあって色合わせから色々してくれた。 色合わせとかいう発想はなかったのだ
ずるい、とは？ いや庶民が大量にメジロの化粧品使うのはずるいとは思いますが

――あ、いえそうではなく。男性なのになんでこんな肌がツルンツルンなんですか？

――わかりますそれ
今まで一言も喋ってなかったもう1人のお姉さんも同意している
いや本当に何が？

――肌綺麗だなって話です、お若いのは存じてましたがちょっとこのキメとか美しさとか
――これウマミミの女性でも嫉妬されるレベルですよトレーナー様

嘘つけウマミミってずっと綺麗で肌だってピチピチじゃねえか
ふるふると首を振るお姉さんはため息混じりに

――たしかにそうですが正直これはウマミミの我々がちょっと男性でこれずるくない？と思う肌です
――これだと化粧とか要らなかったかも知れませんね

褒められてるのかも知れないが
残念ながら男でそれがアドになることはない
むしろ俺はもうちょっと背丈ほしかったし肩幅も欲しかったしたくましくなりたかった

――殿方のお気持ちは察する程度ですが、でもアルダン様のご要望にそうなら
――きっとご満足頂けると思いますよ。あとでウィッグの止め方や女性用の小物の留め方もお教えします

(絶倫)←たぶんこの部分に男性ホルモンを全振りしてる

うーん
女性は化粧でバケるとはいうがあのお二人もすっげえ美人ださすがにないだろう
あれがメジロ流のリップサービスというものだろうか？

――俺は二人にあれこれ押し着せられ
ああでもない、こうでもない
いやアルダン様の好みは――と二人は俺を着せかえ人形のようにあれこれ着せる
こいつら尻尾振っててちょっと楽しんでやがるな？とちょっとジト目で見つつも
うーん、長身のめちゃスタイルいいお姉さんたちにあれこれされるってのは決して嫌なシチュではない
このお二人はスタイルが良いし背がすごい高い。多分護衛も兼ねてるのだろうが180超えてんじゃないだろうか
そのくせばんえいの方のようにちょっとたくましい感じではなくめちゃ細い
――ずるい、と言ってたが普通にこの二人のほうがずるいと世の中は思うのではないか？ 美人でスタイル抜群で高身長

まあそんな事を考えてると着替えが終わった

――あ、あ、は、はああああっ♡

………ドレッシングルームには壁一面かのような鏡がある
メジロの超高級な鏡などでどれだけ大きくともそして遠くとも歪むことは皆無
しっかりくっきり見えるのだ
フリルのヘッドドレスにピンクのワンピースドレス
お人形さんをそのまま洋服にしたようできちんとリアルの服になってるそれ
それを着てる自分というのを想像してほしい
似合うにあわないではなく恥ずかしくて死にそうになる
アルダンは素早くスマホを取り出し俺に向け

撮影禁止っていったよね！？ それはアウト！だめ！しけえ！

と俺はガチの涙目でアルダンを叱っていた
はい、もう満足したよねアルダン。 こんな感じですよ男がね、こういうのきたらこんな感じなの
くるくると俺が回ってみせるとスカートの裾がひらっと浮かぶ、軽いし柔らかい高級な素材なのは分かる
なによりそのせいで中がスースーするのだ、なんだよおこれ落ち着かないよお

はいはいしゅーりょー、おしまいです、男の女装おしまーい、おしまいでーす
俺は更衣室ににげようとするが更衣室のドアの前には使用人のお姉さんたちがすっと立ちふさがってた
優雅すぎて全然きづかなかったよさすがメジロの使用人だあ

――あの、あの次はこういうキャンディなメイドさんでお願いします！
――あとこれと、これでその……私のへやからクマさんのぬいぐるみをとってきていただけませんか

使用人はアルダンから衣装をうけとり俺を更衣室に引っ張っていく
やーーーだーーーよーーー
恥ずかしいよーなんで俺はこんな事をしてるんだよー

とはいえ
まあ羞恥心というのは時間で多少は緩和される
なのでまあ多少は落ち着いて俺は結局のところ

――アルダンの私室で大きなクマさんのぬいぐるみを抱いて
――アルダンにわしゃわしゃと撫でられていた

そもそもこんなのを見て何が面白いのか
お前らウマ娘は容姿端麗の超絶美女の集団だろうに
男に女装させるぐらいならそれこそ学園にその完全上位互換の妹みたいな可愛いウマ娘なんてゴロゴロ転がってるだろう
ぶっすーとふくれっ面
不満なのではなく恥ずかしい、こうして撫でられるのも恥ずかしい
だが、まあ――アルダンはこうして妹をわしゃわしゃしたいというのは夢だったみたいだし
流石に学園の生徒にアルダンの私室で妹になってくださいは犯罪だろう

嬉しそうだし幸せそうだし――まあいいのかな
俺はアルダンにずっとずっと撫でられてるのが気持ちよくてちょっとトロンとした目をしてしまう
アルダンは俺を見て……そっと俺を抱え上げた
ひゃっ！？と変な声をあげる俺をアルダンはびっくりした顔で見る

――ごめんて、びっくりしたんだって、だからそんなみないでよお

俺は両手で顔を隠してしまって
アルダンは「も、申し訳ありません！」と言いつつ俺をベッドに運んで
そっとベッドに寝かし、その横に腰掛け……俺の頭を撫でていた
優しく、そっと――慈しむ手で撫でられるとなんかもうどうでもいいや、みたいに
そのぐらいには心地よくなる

――すいませんトレーナーさん
――こんなはしたない事をお願いしてしまって

いやいいんですよ、アルダン楽しそうだし
ただね、やっぱ死ぬほど恥ずかしいから嫌がってるだけなんでね
嫌悪感だとかアルダンの趣味だとか妹がどうとかに引いてはいないから勘違いしないでね
あくまで俺が女装してる俺にね、恥ずかしいの
それにほら、男の女装なんて余程のプロとかアイドルじゃないと似合わんってわかるでしょ？

ぴたぴらとスカートのすそをつまんでみる
しかも背が高くないとは言えアルダンよりちょっと背の高い俺がフリフリのゴスロリだとかう幼女ちっくな服をきてるのはちょっとあれだろう、ヒトミミのおばさんがトレセンの学生服を着てるような――うわきつがあるだろう

――トレーナーさん、あの
――ご自分のお顔って好きじゃないですか？

ん？ ……いやそんな事考えたことすら無い
毎日鏡で見て毎日なにかに反射する自分の顔が好きか嫌いかなどうーん……
いやわかるよ少々ガキぽいしかっこよくはないと思う
もうちょっとこう、頼りがいのある大人になりたかったなーとかイケメンになりたかったな―はある

――……あの、そのですね
――トレーナーさんは確かに童顔でその、……
――凄く可愛いし、その、女装だって似合ってて
――もっと色んなのを着て欲しいなって
――ワンピースも今度はおそろいのとか……あの、だめでしょうか？

闇トレは完全に左耳化したな

その
なんだ……可愛いというのは男にとっての褒め言葉じゃないぞ
女装が似合うってその、そんな可愛い顔立ちまではしてないだろ

――え、あ、その……えっと、えっとですね
――多分なんですがもうちょっとしっかりお化粧をして
――色々陰影で顎とかをこう上手く誤魔化せば
――多分知らない人バレないですよ？

顔が女の子、ではないらしいが上手いことアレコレすれば……ってこと？
うそだー！？ ぜったいそれメジロ流サービストークじゃん
もうしょうがないな、大丈夫だ
そんなお世辞なんか言わなくてもアルダンがどーしても妹をわしゃわしゃしたくなったら恥ずかしいけどこうしてお人形になってやるぞ、いつでも言え

まあほら、こういうのは満足しただろうし一回見ればアルダンも十分だろう


――それはその……週何回まで大丈夫でしょうか？
――サブスクはおいくらですか？

……まってなんでそんなガチな話してんのアルダンさん

――オプションで庭でお茶はできますでしょうか？
――あの頑張ってお支払いするので街を一緒にお散歩とかだめでしょうか？
――月一ぐらいで撮影サービスなどは

あの、アルダンさんちょっとキャラ崩壊してるキャラ崩壊してる
まって、まって、そこはそんなのはしたないっていうところでしょ？ 内なるメジロを解放しないで？
君は深窓の令嬢のメジロアルダン。だからほら

――でも、トレーナー様は今私のトレーナーちゃんで
――その、今だけはごめんなさい。 今だけはちょっとだけ許して下さい
――そのあの……本当にまた着てくれるんですか？

……えー
うーん……うーん
いや、着るのが嫌なわけじゃない
ただ恥ずかしいのと――俺なんかが女装しても気持ち悪いだけだろみたいな

俺だって自分の顔ぐらい鏡でいつも見てる
童顔だし男らしい顔だとは思ってないが逆に女の子！可愛い！みたいな顔だとも到底思ってないのだ
そんな俺が女装をしてもアルダンも楽しくないでしょ？みたいなさ

そんな俺の言葉にブンブンブンブンとアルダンは首を何度も横に振る
いやすごくわかった、アルダンは見たいってのはよく分かった
まあさ、なんか自分の考えてるソレと周囲の評価が違うとすごい戸惑うんだ
だから今でも俺ブロッサムのメンバーが好きっていってくれることにすごい戸惑いがあってさ
なんで俺なんだろうとか本気で思うんだ
だって俺背も低いしカッコいいわけでもないし
そうするとやっぱり不安なんだよ、不安で戸惑うの。え、ほんとにみたいな

だからそんな感じなだけだから……俺で良ければ妹ごっこはするよ
死ぬほど恥ずかしいけどね……うん
あと

あと絶対内緒ね？ ラモーヌにもヒリュウさんにもメンバーにも絶対だよ？
これは流石に破ったらもうしないからね？

堕ちたな（確信）
闇トレが周りの評価より見た目に自信がないのは、幼少期のトラウマ故だろうなぁ…

アルダンは凄く嬉しそうに、俺に手を伸ばして撫でてる
すこしくすぐるように頬を撫でられ、ちょっと声が漏れた
アルダンはすぐに指を引っ込めてごめんなさい、ごめんなさいと謝ってくる

うーん……アルダンお姉様？ それともお姉ちゃん？
その俺の言葉にアルダンは電流が走ったように

――あの――それは有料オプションでしょうか？

違うよ？ アルダンもやっぱお嬢様なとこあるななんでもお金じゃないんだ

――では、その――あの、お姉ちゃんでお願いします

そういうアルダンに、俺は口を開いて

……いやだめだこれ滅茶苦茶恥ずかしい。 よくよく考えたら俺今女装してしかも妹のフリしてアルダンをお姉ちゃんって呼ぼうとしてるんだ
俺はそれでも必死に言葉をだそうと、おれの羞恥心と必死にゴール前で競り合う

――……お、おねえちゃん……
顔を真赤にして絞り出した言葉にアルダンは幸せそうに昇天した
おいアルダン？ うわすげえ熱！？
オーバーヒート！ アルダン熱出てるからちょっと人呼んでくれ！！

永遠はここにありました
確かに永遠はあったのです

トレーナー様は今日様々な衣装を着てくださり
私の妹が欲しいという話を楽しそうに聞いてくださりました

――わかる、じゃあ犬とか飼えよは違うんだよな

自分のそのような気持ちを分かると言ってくださるのが凄く嬉しくて
私はつい――トレーナー様にふしだらな欲望を頼んでしまいました。どうかふしだらな女と笑ってください
でもトレーナーさんは快く快諾してくださり
可愛らしいフリフリのスカートを履いて恥ずかしそうに前を抑えるトレーナー様に
私は感動をおぼえると共にますますみだらな気持ちが抑えられなくて
つい、ついあれこれとリクエストをしてしまったのです

トレーナー様がご自身の可愛らしさを全然理解なんかしていなくて
ああは申し上げましたが思ってしまうのです

――このままトレーナー様が自身の魅力に気づかなければ
――トレーナーちゃんという妹はずっとずっと私だけのものだと

ごめんなさい――こんな卑怯でふしだらでごめんなさい

でもトレーナー様だって悪いのです
あんな恥ずかしそうに、俯いて、顔を真っ赤にして
そのお顔で、私の指が触れた時あんな声を上げて――

ふしだらで、はしたないのに――私の指でトレーナー様をあんなに鳴かせてしまうとおもうと
どうしてもその声をもう一度、もう一度だけ聞きたいのです
ごめんなさい――本当にごめんなさいトレーナーさん
このはしたない気持ちをどうか許して下さい

QKします
場合によっては寝るかもです

アルダンが思ったよりも開幕からフルスロットルぶろっさむでターフ生える
闇トレは全員娶れよ

で、でもアルダンはまだ健全でおせいそで逆ぴょいじみたことはなーんにもしてないし……
色々すごいのは他にえちえちなシーンあるけど全部表現はR15未満なのに作品はエロいんだよな、脱法エロじゃんこんなの

ちーむ♡ぶろっさむで共有されちゃうやつだ
もう終わりだネコノトレーナー

アルダンが撮影してなくてもメジロ家が撮影してチームに流失しそう

おかしい
アルダンは逆ぴょいも押し倒してもいないどころか誘惑だとかもしてないのにもうアルダンが闇堕ちしてるように見える

――オプションで庭でお茶はできますでしょうか？
――あの頑張ってお支払いするので街を一緒にお散歩とかだめでしょうか？
――月一ぐらいで撮影サービスなどは

一番はしたないのここだろ

でも実際俺等だって自分の顔や声やなにかが高評価されてもまずお世辞と社交辞令にしか思わないよな

でもトレーナーのそういうサービスがあまりに刺さりすぎておいくらですか？(おひねりご祝儀的な意味で)財布を出すアルダンは俺の性癖にあってますね

これ1番見たいの多分、ジェンティルだよなぁ。

わからんでもない
金に物言わせる嫌味じゃなくてこれが無料とかないですよね？ ってお金出す感じのアルダン

>>157

ジェンティルもトレを嫁にしたいって言ってたからな

でもジェンティルが見たらマジで逆ぴょいで捕まる可能性が

あとクリークも可愛いもの好きだし掛かりそう

どうみてもアウトなのに何故か実際はアルダンはまだ手は出してないというバグ

>>143

>でもトレーナーさんは快く快諾してくださり

嘘じゃねえかwww

>>144

でもトレーナー様だって悪いのです

あんな恥ずかしそうに、俯いて、顔を真っ赤にして

そのお顔で、私の指が触れた時あんな声を上げて――

ふしだらで、はしたないのに――私の指でトレーナー様をあんなに鳴かせてしまうとおもうと

どうしてもその声をもう一度、もう一度だけ聞きたいのです

ごめんなさい――本当にごめんなさいトレーナーさん

このはしたない気持ちをどうか許して下さい

ここからがヘイポーの謝罪文に見えて仕方ない

ジェンティルドンナさん、あなたのトレーナーはアルダンさんにあなたの望む形に攻略されましたよ

トレーナーさんが！ トレーナーさんが悪いんです！
って押し倒して逆ぴょいするのが一番似合うウマ娘

>永遠はここにありました

>確かに永遠はあったのです

感動した後にこういうギャグを容赦無く挟んでくるから感情が迷子なるわ

トレーナーにはヒトオスとしての攻めをそろそろ見せてほしいところではある

今現在、俺はメジロからかなりの援助を得ている
例えば病院なんかはメジロ系列の診療所だし何かあればすぐに大病院に直行できる
健康診断だって本来それなりの額が発生する
一応民間保険――民間というかトレセン学園の保険も併用できて一般の人より出費は少ない
とはいえ怪我、健康診断、その他色々で自費を出す部分は多い
勿論トレセン学園側も保険に加え「保健室」でウマ娘やトレーナーへの負担は小さくはしてくれてはいる
学園の保健室ではあれど常駐の保険医は医療的な資格を持つプロだ
設備も保健室の域を超えて零細診療所よりいいのではないかと思う

それでも病院にいけば金は必要だ
診療費やプレゼントデート代担当へおごるご飯の費用蹄鉄衣装の補修ダンスレッスン
トレセン学園のトレーナーをやってるとお裁縫が上手になるという信じられない現実の理由はここにある
なので色々迷ったが病院代を援助してくださるという話に迷いはしたがありがたく受けることにした
1年トレーナーをして、なぜトレーナー業が貧困っぽさあるのか少し分かってきた気がする
心の何処かであの小切手を受け取っておくべきだったかなあと思う事がある
はしたないというか未練がましいと言うか、情けない

――ならジェンティルを頼ればいいじゃない、貴方はわたくしのトレーナーなのよ？

ジェンティルドンナがちくりと刺すように俺に言う
小切手の一件はジェンティルだけには少し話した
愚かなんですか僕ぁと聞いたら「こんな愚か者見たことがないわ」と即答された
まあメジロヒリュウさんもこの選択が正しいかどうかわかんないって言ってたしなあオブラート覗いたら愚かなんだろうな
財閥は直接抱えてる病院はなくても医学会に大きな影響がある。病院にはそのグループというか医学会ごとの派閥があってその先は財閥に繋がっているとか。 だからジェンティルドンナが動けば特定グループの病院系列はすべて従うのだと
怖いって財閥ってマジで世の中を支配してんだなと思う

いやあ財閥にあれこれ頼るのってちがくない？
一応俺にはそれなりに事情があって財閥に近づいちゃいけない身だしさ
こればかりは誰も悪くない――悪いのがあるとしたら俺の過去だ
でもメジロは財閥系というよりレースに捧げてる一族で
それで俺を受け入れられる立場であってさ

そんな俺の言葉にジェンティルがガタンと立ち上がる
怒っている――という雰囲気ではないが俺の前に座る
優雅で上品で美しい――そんなジェンティルは確かに上流階級であろう佇まいがある
そんなジェンティルが真剣に俺を見つめてやや前かがみで俺に問い詰めてきた

――詳しく

いやもう話したじゃないか
アルダンの体質の問題が解決する糸口を偶然みつけて
それがまるでアルダンを俺が救ったみたいに扱われて
メジロからちょっと大げさに感謝をされて
謝礼頂いたけどちょっと俺がゼニゲバになりそうだしお断りして
謝罪を受け入れてもらったけど何かあったらメジロは全力で助けるって言われた
むしろ小切手の話はジェンティルにしか話してない。 他の3人は一応は裕福なのかもだが庶民側だ
――あれ？

――よく考えたらクリークの託児所に寄付したらよかったんじゃねえか！？
――痛い痛い痛い痛いまってジェンティルなんで痛い痛いなんで今グリグリされるの！？

今まで以上に俺のこめかみをうめぼし――こめかみをぐりぐりされ俺は苦悶の声をあげる
容赦がない、はしたないぞ財閥の時期総帥
そう言うとジェンティルはなら拳で行きましょうか？と拳を見せ俺は全力で土下座した

――それで？ メジロにされるってのとメジロが貴方を受け入れるって話

いやメジロにされそうになったってだけでだな――
それすらジェンティルは「いいから」と遮るので俺は頭を掻きつつ
別に正式になんか言われたわけじゃない
アルダンが良くなった事をいたく喜んだ。 「おばあさま」のあれはメジロ家の当主御大ではなく1人のおばあちゃんとしての表情を俺に見せてくれてたと思う
それで俺をいたく気に入ってくれて、素晴らしい提案をしよう――お前もメジロにならないか？ってだけだ
リップサービスだったのかもしれないし社交辞令も少しはあったと思う
それで俺の過去を調べられていて、それでもメジロなら受け入れられる
メジロになろうトレーナー――そうすれば永遠をメジロに刻める。 ウマ娘は強くなれる
まあそんな感じだ
向こうだってちょっとツバつけとこぐらいだって

バン！
ジェンティルがテーブルを両手で叩く――やっべめっちゃ怒ってる
耳を絞って俺を睨んでる――やめてやめて怖いって怖いって
バンバンバンバン！とまるでローレルみたいに机をバンバン叩いてる――机が粉々になってはいないので彼女なりにセーブができてるのだろう

――色々と……色々と迂闊でしたわ

はあああ……とジェンティルは大きな大きなため息を吐く
なんとか落ち着こうとしてるのだろう……頭痛に耐えるようにこめかみに指を当て、目を閉じすこし俯いている

――そうね、貴方は名家だとか財閥だとかに興味がない御方だものね……それにしたって……

いや待て、ないわけ無いだろ俺は闇のトレーナー。 金なら欲しいに決まってる俺だって名門名家財閥なりたいよ
ただ今は大金だ名誉だ地位だってのを得てしまうと色々人が変わってしまうなと思っただけで
ねえねえおかしくない？ 俺そんなだらしのない選択してないと思うけど
そんな俺をじとーっと見つめて――やっぱり大きなため息をつく

――貴方に悪意も下心もないのは分かってる――むしろ色々と立派だったと思いますわ
――メジロのそれを固辞していたり謝礼すら私達を優先するために断ったり
――そこはわたくしも嬉しいと思う事が多くて正直貴方に非のある話じゃありませんの
――でもコトの重大さを理解してないのは本当にマイナスでしてよ

え……俺なんかすごいやらかししたの？
俺は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた――嗚呼やはりメジロの御大に偉そうに啖呵切ったのがまずかったか
それとも謝礼を断ったことだろうか？ いやいや謝礼を断りつつ都合よくメジロの病院を利用したり栄養ドリンクを頂いてることだろうか――いやたしかにアレもコレも金銭ではあって常時たかってるようなものであって

――考えが小さいッ！！！

ひいっ！？ どうしたの今日のジェンティル怖いってー

だって……俺そんな名門だったり名家の機微なんかわかるわけないじゃん
庶民だよ？ いや庶民どころか孤児院みたいな出だぞ？ 普通の家庭の機微すらわかんねえよ……ごめんてば
しゅーんとしてる俺にジェンティルはこめかみに指を当てて

――俗物的に言えば栄養ドリンクも病院の費用もメジロが負担したとして「経費」ですわ。メジロ家の出費になりません
――ごめんなさいトレーナーさん……そうね、こういう話は少々難しいと思うわ
――まず、家に入れ。 これは名門や名家は絶対に軽い気持ちで言いません
――お前を入れたい、絶対に入れてやる。 そういう気持ちがないと言わないのよ
――一般的な俺の娘を嫁にとか私の子になりなさいみたいなのとは重さも本気度も違うの

ジェンティルは俺を睨む――だからなんで不機嫌なの

――更に言えば貴方の素性を知って受け入れられると言った
――貴方にも財閥として名門ではなくてもメジロが無傷、無痛で過去に傷のある人を受け入れられるとはおもっていないでしょう？ 確かに我々ジェンティルのような財閥、企業グループで成り立つ名門一族では貴方を受け入れられない
――でもレースの名門であり確かに一般的な家庭の一族も多いメジロ家ですがグループとして多くの企業や商売を抱えてはいる。 そこのしがらみだって、別の名門やグループとの競合だってある

分かってるよ
分かってるから俺は絶対メジロにならないよ――そんな事分かってるよ
メジロだって名門で俺を受け入れられるって言ってもなんの問題もないわけじゃない
今の体勢に不満のあるやつはいっぱいいるだろうし俺がそれのやり玉にもなるかもしれない
分かってるよ――分かってるって

俺はジェンティルにそう怒鳴りつけたくなるのを本当に、本当にすんでのところで我慢した
メジロだって悪くない。 ジェンティルだって悪くないんだ
誰も誰も悪くないんだ

――貴方の過去から貴方を責めたいわけじゃないですわ
――メジロはそれを呑んで貴方をメジロに入れようとした
――その過去も踏まえ受け入れられると言った
――望んでいる、というよりガチで引き入れようとしているの
――とりあえず唾つけとこ、ではなく「こいつをなんとしてでもメジロにしろ」なのよ

……いや――ああ、そうなのか
そうは言われても俺はメジロになる気は無いし
俺の過去であれこれどうこうではなくジェンティル達のトレーナーでいたいし
向こうが本気だとしてもそこはもうごめんなさいでしかないのではないだろうか
俺のそんな言葉にすこしジェンティルは目を丸くした

――ねえ、もう一度
――もう一度メジロにならない理由を聞かせてくださる？

いや、メジロになりたいかなりたくないかじゃなくさ
俺はジェンティル達のトレーナーで、ジェンティル達の方が大事さしさ
……ひょっとしてまた俺怒られるの？
と思ったりもしたがジェンティルの表情はこう――急にご機嫌だ
尻尾もゆらゆら揺れてて耳もさっきみたいに絞られてない
なんだよ俺がメジロになったらブロッサムやめるとでも思ったのかよ
その方が俺はなんか心外でプンスコしてしまう

確かに俺は闇のトレーナー、金が全て、金のため
そう思っていたけれど
――でも
こういうのはちゃんと言葉にしなきゃ伝わらないのだろう
ジェンティル――と声をかけ俺は椅子にしゃんと座り直して

今はジェンティル達に心から救われてここにいる
正直今が一番幸せなんだ、生きてて良かった。 トレーナーになって良かったって思ってる
俺がジェンティ達を手放すなんてあり得ない、死んでも嫌だ
メジロだろうがジェンティルだろうが――世界大統領の座だろうが
なにかと引き換えにブロッサムのトレーナーを降りろとか言われても死んでもいやだ

ジェンティルは口に両手を当て目を丸くしている
こんな事恥ずかしくて本当は言いたくない、なんか気障だしわざとらしいし
でも口にしないといけない事も多くて、何かこういう機会にちゃんと言ってないとだめなんだ

親が子供にきちんと――愛してる――というのが大事なように

ブロッサムを捨てない
じゃなく、俺が離れたくないんだ
と――俺はジェンティルに微笑む
――だからずっとよろしくな

俺が手を伸ばすと――ジェンティルは俺の手を思い切り引っ張った
ずるーーーと間抜けな格好でテーブルを腹ばいに滑る俺
そんな俺を両腕で受け止めるジェンティル
尻尾は立ってブンブンと振られ耳はピコピコとずっと動いてる

――ええい、布団を敷きなさい、 抱いてあげるわ！
――貴方に私の永遠を刻みつけてあげますわよトレーナーさん！

やめろおおおおおお
だからソッチ方面は禁止だっつってんだろ！エッチなのは駄目！死刑！

やめなよ
俺はチームブロッサムのトレーナーでいたいんだ
確かに合法なのかもしれないけどさ――凄く納得いかないけどさ
法だとか世間体とか社会的にオーケーであっても俺が今後そっちばっか求めるダメトレになったらどうすんの？
そんなエロい事ばっか考えてトレーナー業いい加減にするような男になったらどうすんの？
俺はいやだよ？
そうやってダメ人間になってみんなから呆れられたり幻滅されて離れられるとか絶対やだよ？

トレーナー室
会議用の安いテーブルの上には高級な敷布団
そしてその上に正座をする俺
ジェンティルは正座を崩したお姉さんずわりと言われる座り方
短めのスカートから覗く太腿がおねえさん座りだとさらに強調されて非常に危険だ
俺の正座でのお説教を聞き流すようなジェンティルの顔
聞き流すと言うよりきちんと聞いてるのだが何言ってんだろこいつ、みたいな顔

――貴方が？ 性欲にかまけて？ トレーナー業をいい加減に？
――ほほほ面白いわ？ トレーナーさんジョークがお上手になったのね、嬉しい

俺は本気で言ってるの！本気で危機感を強く強くもってるの！
バンバンバンバンと敷布団を叩く俺
そんなおこな俺をジェンティルは威嚇をするレッサーパンダを見るかのような楽しそうな顔で見つめてる
なんなんですかジェンティルさん！俺ほんきでおこなんですよ？
おこなの？ って聞かれたらおこチャッカファイアーだよって怒鳴れますよ？ ねえいいの？
ねー、ほんとさーわかってよ
あのさ、こういう場だからもう俺もセクハラ覚悟で言うよ？
ジェンティルは美人だし滅茶苦茶いい匂いするし正直スタイルもすごいじゃん？

うんうんと頷くジェンティル――いやいいんだけどさ

それでいてちょっと妖艶さもあるし自分の魅力をきちんと理解してるじゃん？
背も高めで……おっぱいだって大きいし積極的で、正直ほんとに怒らないでほしいけどエッチなんだよ
そんな俺の性癖にあったウマ娘ですねなジェンティルを好きにして良いってなったらそんなの狂うじゃん
一回とかたまにならと言いつつ思いつつ絶対最優先がレースじゃなくてジェンティルへの欲望になるって！
そしたらジェンティルの走りにも影響するし効率も落ちるじゃん！
俺はシたいの！正直ジェンティルにそういうことしたいの！
シたいしサれたいし正直言うよ？ほんとに最低だけどこの機会だから言うよ？
俺だってジェンティルの嫁になりたいよ？

っぱあああってそんな心からやったーみたいな顔すんなお前強者の貴婦人だろ
そもそもなるよって言ってねえんだよ

ジェンティルも他の娘ももうちょっと自覚を持つべきだ
自分たちがどれだけ魅力的でドスケベで一度ハマったら絶対依存する魔性の女性なのかを
だから我慢してるのだ
一度麻薬を打てば二度と帰れぬのだ
我慢ではなく脳がそれを強要して離さない――ドラッグなどは我慢ではなく脳との戦いであり地獄なのだ
ジェンティルたちとのえっちに溺れるというのはそういうことだ
だって絶対ドラッグなんかより気持ちよくて幸せに決まってるじゃん！

――嫁になってしまえばいいのに
――わたくしは別にローレルさんたちがいても大丈夫ですわ
――全員わたくしの嫁にしてもいいわけですし養う甲斐性もありましてよ？

そこじゃ！ねえって！言ってんだろ！！！
レースに集中できねえって言ってんだよ！！！
バンバンバンバンと布団を叩きうきゃーと叫ぶ俺。性欲で猿にならなくても人は猿になれたらしい

俺は布団の上であぐらをかき
そこにぴったりと寄り添うようにジェンティルがくっついてる
ちなみにここはトレーナー室で中央の会議用のテーブルの上になぜかある敷き布団がしかれてる
はたからみたらすごくシュールな光景だろう

――貴方、ほんとうにトレーナーになるべく生まれてきたのね
――やれトレーニング、やれレース
――貴方の目的ってそこじゃなくて、結果のお金だったり報酬だったのでしょう？

ジェンティルが俺の腕を撫でながら言う
まあそうなんだけどさ、確かに楽してレース勝ってもらって稼ごうって思ってた時もあったけどさ
どうせやるなら自分も全力出したほうが――ほら、よくない？
俺がそんな事をいうと、ジェンティルは目を細める
慈しむようなそんな優しくて穏やかな瞳で俺の手を見ていて

――それで、順序が逆になったの？
――一生懸命にできなくなるからお金も性欲もいりません、って？
――本当に愚直と言うか一方通行というか幼稚というか

そりゃ楽して稼ぎたいよ俺だってさ。うん、それはそう
でも――なんというか
楽しいんだよ、これ

――ふうん、じゃあもっと楽しく幸せにしましょう？
――安心なさい、貴方がダメ人間になりそうならちゃんと叱ってあげるから

と、ジェンティルは俺を押し倒そうとして
入ってきたローレルやブーケが「ああああ！！」と大声を上げる
アルダンなんかは何が起こってるか理解できずショートし
ラモーヌは素早く俺達をスマホで撮影していた

QKします

ラモっさんアンタほんま骨の髄まで愉快犯だな…
アルダン大丈夫？この姉の悪影響ホントに受けてない？

ラモンヌ「ウケる。撮っとこ」

メジロだろうがジェンティルだろうが――世界大統領の座だろうが
なにかと引き換えにブロッサムのトレーナーを降りろとか言われても死んでもいやだ

こんなのプロポーズじゃん

どんな立場も与えられても君達が一番
好意を抱く相手が自分のことドストライクなタイプで箍が外れたらもうそれしか考えられなくなりそうと言う
遮るは世間体や家のしがらみ
他の名家、チームメンバーからも狙われてる

これは燃え上がりますわ

世界全部の大統領より君たちがいい
これ言われたらもうダメだろ
トレーナーはもうおしまい
過去があんなのなのになんでここまで真人間なんだよ幸せになりなよ

ナリタブライアンに異常はない
一応以前にも検査はしていたらしいが万が一、とどこかで期待していた
しかし骨にも異常はない
しかし以前の走りができない――ふむ
並走でサクラローレルやジェンティルドンナ――果てはメジロラモーヌにすら並走を頼んでみた
ナリタブライアンも闘争心が高いウマ娘だと思っていたのだが
――うーん

――なんだ？

いや、闘争心高い方だと思ってたのだが――ひょっとしてだけど
ナリタブライアンって周囲が気になっちゃう方なのか？って

並走でも周囲をちゃんとみている素晴らしいレースセンスだと思った
チョウカイキャロルの産んだ隙間に一瞬で反応した。 隙間を縫ったとはいえ完全におくれてのスパートでは不可能
ウマ娘の時速は60kmを超える、スパートではもっともっと速い
0.1秒の遅れは致命的で、あれを見て確認して飛び出ていては明らかに遅い
視認と身体が同時に動くほどの反射のような動きが有馬記念でも輝いていた
なので周囲も見れる素晴らしいウマ娘なのだと思っていたのだが

実際の並走ではどうにも周囲を気にしすぎな気がする
ひょっとしてだけどサクラローレルが言っていた

――前だけを見て、誰も敵じゃないかのように、ゴールの先も見て――

そのナリタブライアン象というのは最も集中しているナリタブライアンで
本来のブライアンは違うのではないかと思ってしまったのだ
俺の問いにナリタブライアンは立ち上がり

――おい、こっちへこい

と俺をチームの皆から引き離してしまう
トレーニング場裏の花壇――エアグルーヴや生徒会、他にもニシノフラワーなどが花を世話してる場所だ
ナリタブライアンは周囲に人が居ないかを気にしている
これはあれか、他言無用なやつか

――アンタはサクラローレルのトレーナーだ、今後もライバルとして戦う相手だ
――だから先に約束しろ。これはサクラローレルや他のチームメンバーには言わないと

勿論だと俺は快諾する。 それがもしレースで有利不利を産む要素であっても
そこは作戦に入れないしローレルたちにも一切伝えない
今大事なのはナリタブライアンが復活することだ。 それは俺達にとっても重要なんだ


昔――小さなレース中に姉貴が大事故を起こしたんだ

ビワハヤヒデはナリタブライアンの憧れで
優しくて強い姉だった
いつも小さなレース場で走る姉貴を見るのが好きで、その日も姉貴が一番なのを期待して見ていた

――姉貴は小さな衝突からウチラチにぶつかった瞬間――あっけなく紙切れみたいに吹き飛んだんだ

本当に小さくぶつかっただけ
それでも小さくてもウマ娘のスピードとパワーで内ラチにぶつかった
大きな動物ではなく体重は俺達とそんなには変わらないウマ娘
それが固定された内ラチにぶつかってそのパワーとエネルギーが爆発して――自分の速度に吹き飛ばされた
……残念だがよくある話だ。 それでその後一生走れない――その事故でそれこそ命を落とす事だってある
自分たちがキックボードより小さな台車で50kmだとかで疾走しなにかにぶつかった時を考えればわかる
簡単にその体は宙高く吹き飛ぶだろう……そのエネルギーと勢いはそれでも消えず、地面や内ラチやなにかに叩きつけられる――当たりどころ次第では当然のように命を落とすことだってある

姉貴は脚にざっくりと割れた内ラチが突き刺さっていたんだ
痛みで狂乱してる姉貴と、止まらない血――私はそれを見て思ったんだ、姉貴は死んじゃうんだって
怪我だとか脚がとかじゃなく――死んじゃうんだって思うぐらい酷い光景だった

脚に刺さった木片は深くてあと数センチで筋膜と人体をざっくり切ってて――そうなってれば歩くのも絶望的だって
姉貴は奇跡的にそうならなかった――姉貴は言ったよ

――私は最高に運が強い、お前の姉は最高の運をもったウマ娘だぞナリタブライアン

私は姉貴が本当に強くて立派で尊敬できる
でも私にはあの事が心から離れなくて――だから後ろの音や横の音、影にすごく敏感なんだと思う

……周囲の気配に敏感なのは悪いことじゃない
今の話のような事故はURAだって多い、言い方は悪いが大事になってない事故や事故として扱われない接触はよくある
ブーケだって相手の斜行をタックルで受け止めたりもある
レースでそれらを捌くのにブライアンのそれは非常に優秀なスキルだともいえる
だが同時に、それのせいで走りに集中が全くできてない
並走で特に精細を欠いているとは思ってたがこれだと本来の走法だとか以前に今はかなり厳しいだろう
手はないわけではない……ないのだが
なあちょっとその絆創膏くれ
と俺が言うと

――嫌だ。これは姉貴からもらったんだ、やらんぞ

こいつ体躯も雰囲気もあれなのに子供っぽいんだよな―

――きびしいのか、私は

そんなの自分自身が一番分かってるだろうに
それでも走りたくてお前のトレーナーを喜ばせたいなら俺がなんとか頑張るよ

そもそも本来の走りが出来ないことと前に集中できないのは別問題だろう
聞く限りナリタブライアンのこれは事故を見てから生来のもの
それでもジュニアクラシックであの走りをこのトラウマと戦い続けてやっている
菊花賞でも厳しいチェックやマークはありそれでもナリタブライアンはあの走りを見せたのだ
とはいえ集中できない環境はそれこそ事故につながる

俺は病院に向かう――メジロのではなくブラトレさんが療養しているほうだ


――ああ、君か。 ブライアンの調子はどうだ？
甲斐甲斐しくビワハヤヒデがトレーナーの介護をしている
多少は落ち着き精神も安定してるとは言えなにか追い詰められたりメンタルが崩れればまた症状がでないとも限らない
しばらくはビワハヤヒデに面倒をみてもらうことにしている
俺はそのブライアンの件で相談がある、とビワハヤヒデに声をかけた

――姉貴

トレーニング場に戻るとナリタブライアンは汗をかきつつトレーニングを続けていた
ビワハヤヒデの姿に一瞬顔をほころばせ、しかしあまり動かない表情ながら尻尾はかるく揺れてご機嫌そうだ
ビワハヤヒデは手に小さなケースを持っていて

――ブライアン、絆創膏を取り替えてもいいか？

と小さな絆創膏を開く――その絆創膏には小さな突起がくっついていた
なんだ？と訝しむブライアンに簡単に説明する
集中できないなら別のものに集中するってことだ
このほんの数ミリのビーズを意識して走ってみてくれ、ダメなら他の事をする
鼻先に意識を集中すれば自然に前だけを向ける
ただ最初はちょっと理屈でこれを行うのはとても難しい――その絆創膏をうまく使おうということだ
ブライアンは少しぶすっとした表情で

――そんな事ならわざわざ姉貴を呼ばなくたっていいじゃないか

と漏らしたが、そうじゃないんだ――こういうのはそうじゃない
ビワハヤヒデがナリタブライアンの前に立って、ブライアンの鼻の絆創膏を剥がす
ちょっとくすぐったそうなナリタブライアン、ビワハヤヒデはふふっと笑って

――私を継いで、最強になってくれてありがとう
――お前は私の最高の妹だ、ナリタブライアン

絆創膏の真ん中のビーズを軽く押さえて、ビワハヤヒデはブライアンに頑張れとだけ言って帰ってしまった

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第7R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

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