【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第7R】

生まれも育ちもロクなもんじゃない

幸い小賢しい程度には頭は悪くなかった

だから勉強してトレーナーになった

金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲った

それでも経験も実力も実績もあるわけじゃない

だから口八丁でだまくらかすように担当契約を結んだ

特に優しく 時に寄り添うように 時に一生添い遂げるかの如く

実績つんで金になればそれでいい

そのために他人を騙すことに心が痛む？ 良心？

そんなものは親の腹のなかに置いてきた

いや……俺が腹の中にできる前からそんなものありゃしない

こいつらを利用して俺はのしあがる

【前スレ】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第6R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【過去スレ】

【1R】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【2R】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第2R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【3R】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第3R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【4R】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第4R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【5R】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第5R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【6R】

【閲覧注意】俺は闇のトレーナー【第6R】｜あにまん掲示板生まれも育ちもロクなもんじゃない幸い小賢しい程度には頭は悪くなかっただから勉強してトレーナーになった金なんてなかったから大検とって大学なんか行けなかったから独学でトレーナー免状を獲ったそれでも経験も実…bbs.animanch.com

【注意点】
四人の担当チームなのでオムニバス要素あり、投稿順序会話によるSS内時間の前後があります
史実・ウマ娘アプリと出走レースおよびシナリオの齟齬間違いがあります
色々キャラ崩壊などありますがご理解頂ける方のみ閲覧ください
※ナリタブライアン・メジロアルダンは一時預かりで正式加入のメンバーではございません※
素人なので誤字脱字文脈の乱れなどありますがそうだねプロテインでご容赦下さい

今後、レース開催日のズレ、前後があると思います
矛盾についてはそうだねそうだね女装趣味だねでご容赦ください

やみのまトレーナーは今日も行く

そこに集中するんじゃなくて、絆創膏のビーズを意識するだけでいい
前を見ながら絆創膏を意識するための補助輪だからな
並走はスーパークリークとカレンブーケドール
ブライアンの後ろにサクラローレルとジェンティルドンナがつくマーク体勢

この二人の先行力とポジショニングは今のブライアンにはかなり嫌なはずだ
スタートからトレーニングではなかなかない鍔迫り合いを開始する
特にスーパークリークとカレンブーケドールの先行争いが激しいがブライアンを牽制するサクラローレルのマークがブライアンにはしっかりとプレッシャーになっている
まだクラシック上がりたての三人ではローレルとブライアンの相手は厳しいかとおもったが道中はかなり戦えてる気がする

俺は道中の動きとその理由をアルダンに指導しつつ、このミニレースを進める
三コーナーを回ってサクラローレルがスパートした、しかしブライアンの視線は前に向かっている
全員のスパートで横一線に競り合うが、ここはサクラローレルが1着、2着はナリタブライアン……まあ予想通りだがそれ以上に三人はしっかり食らいついて大差にならない着差でゴールインする

どうだ、ブライアン
と聞こうとしたら向こうからこっちに来た
鼻先の絆創膏をすこし掻きながら

――悪くない、ここを意識すると前がよく見える

よし、そりゃいい！ こっちから見ててもしっかり前を見てたぞ
それに――たまには良いものだろ、姉にそうやって張ってもらうのも
――まだ憧れなんだろ？

ふん、と鼻をならしてクールダウンに戻ってしまう
いじりすぎたかなーとストレッチをしてる全員の様子を見ながら、しっかり柔軟は手を抜くなよと声をかけつつ
ローレルは尻尾をぶんぶかしながらブライアンにべったりだ
離れろ、と言いつつブライアンはローレルに背中を押され開脚前屈をして

――ん？
まって？ ブライアンなんか固くない？

――何言ってるんだ、ほら見ろぺたっとできるぞ
――そうだよブライアンちゃんは身体がすっごく柔らかいんだよ
――ブライアンちゃんは全身が柔らかくて膝もすっごい柔らかくてその膝でたーんって飛ぶとすっごいジャンプして

わかったわかったわかった……じゃあ聞くけどさ
その開脚もっと開いてみて？ 股関節だって柔らかいだろ
ブライアンは、ふいっと俺から顔をそむけた――おい？
サクラローレルさん？ ブライアンちゃんが大好きなサクラローレルさん？
ブライアンちゃんは股関節はガチガチだったりしますか？

――そんなわけないよ
――ブライアンちゃんは全身がやわらかいの
――腕も肩も背中も股関節も首も尻尾も足首も手首もびっくりするぐらいやわらかいの
――そんなやわらかい身体はバネになってブライアンをはるか高みに跳ね上げるの
――ねえ？ ブライアンちゃんそうだよね？ そうだと言ってブライアンちゃん――言え

俺とローレルから必死に顔を背けるブライアン
股関節、自分でも固いなって自覚はあったんだな？ブライアン
――それは勿論違和感があるってトレーナーには伝えたな？ トレーナーは知ってるんだな？

ブライアンはふるふると震え、怯えた小動物みたいに耳をぺったんこにして
ねえブライアンちゃん……？とハイライトの消えた瞳でじっと見るサクラローレルから顔をそらしながら

――だって、ココがとか股のことを言うとか……できなくて……それにちょっと固いなぐらいで痛くないし……


ばっかやろおおおおおおおおお！！！

俺の怒声がトレーニング場に響く。 びくっとナリタブライアンがビビるぐらいに
あまりの大声にサクラローレルもびっくりしてるし遠くから人がこっちを覗き込んだりしてる
だがそんなのはどうでもいい、俺はギャンギャンと吠えるようにナリタブライアンを怒鳴りつけた

お前言ったよなあ？ トレーナーが好きで一緒にいたいって
自分の走りをなんとかしたいって！言ったよなあ？
それなのに？
あ？ そーれーなーのーにー？
股関節固くてうーん？って思ったことは言ってないんだと？ はーんふーんほーんへーん？？
このだめだめ怪物チワワが！ お前なんて怪物じゃねえチワワだ！ ちくわでも喰ってろ！！

暴言すら交じる俺の怒声にアルダンは涙目でオロオロし
ローレルは呆然としジェンティルはなんか面白そうだという目で見ている
俺はスマホで動画撮影してるラモーヌにそれ消されたくなかったら今すぐメジロ病院につないでくれと頼んで
ナリタブライアンを引っ張るように病院に向かった

――うーん、確かにすこし関節の空間ぎちっとしてますね

ほらここ見てくださいよとレントゲンとCTの内容を見せられる
健康や異常という部分では健康
しかし医者から見てもそれは健康で問題のない範囲で「これだと固いだろうな」という感じだそうだ
元々は柔らかったんですよという話にメジロの医者はすぐに「ああ、ありますよそういうの」と答える

疲労とか怪我でここらの関節を支える筋肉がぎゅって縮こまるんですよ
でもほら身体は異常とか炎症とかないでしょ？ そうすると身体がこれでいいかって落ち着いちゃうんですよね
でもそういうのは電気治療やあん摩で治りますよ、これ怪我とかじゃないんでね、安心してくださいね
――アホらしい
様々な要因があったのだろうが
菊花賞前のハードなトレーニング
そしてあの菊花賞の激走
たしかに身体への負担もはげしかっただろう。 今結果論で考えればあの極端な前屈みの走法は膝は勿論股関節の可動域も必要だし重要だろう――本当にこれで初めて気づいた結果論だが
菊花賞をゴールした時ナリタブライアンに極度のダメージがあったのだろう

確かにブライアンのトレーナーは一歩道を踏み外した
それでブライアンに負担をかけてしまった事は間違いない
だが
このブライアンは股関節の異常をおまただからトレーナーにいわなくてええやろ
みたいに言わずにずっと、ちょっと股関節固いなぐらいの感覚で走っていた
実際怪我や異常とは言えない――しかしその違和感を抱えたまま走り続ければ股関節炎や他の事故に繋がってた事もありえる――それは走法を取り戻す以前の話だ

ブライアン、恥ずかしいからって違和感を言わないとどうなるかわかったか？ あ？
俺の言葉にブライアンはびくりとし――しかし次の瞬間顔を上げる

――治るのか……まさか私の走り――もう一度、トレーナーに見せれるのか？

わからんが確率は高い、結構高い。アルダンのときのような当てずっぽうではない
サクラローレルから見ても股関節の硬さは「ブライアンちゃんの」ものではなく
ナリタブライアンの走法は全身の柔らかさと下半身の強いバネだから出来る走法だ
理屈理論では分かるがそれを真似できないというナリタブライアン自身のフィジカルがなせるもの
ならば股関節を含めて身体が万全ならあの走法は自然に戻る――と、思う

なにがあってもほんのちょっとの違和感でも絶対にトレーナーに言えよこのチワワ
俺は嬉しさで泣きそうになってるナリタブライアンの頭をぽんぽんと撫でて言ってやった

間違ったのはブラトレ
しかしこの一件間違いなく悪いのはナリタブライアンの方だ
しかしまあ電気治療やあん摩で治って
そうしてあの走法が戻ればまた――最強の『怪物』が見られる

――トレーナーさん♪

俺は後ろからサクラローレルに抱きつかれて前のめりにつんのめる
ローレルは俺の背中にすりすりと頭を擦り付けていている

――すごいです♪ ブライアンちゃんまで治しちゃうなんて♪
――これでブライアンちゃんは最強になって――
――私に倒されてくれますか？

うーわ、怖
ブライアン推しなのにブライアンを倒せるから嬉しいときた
サクラローレルにも今回のナリタブライアンとのトレーニングはかなり良い刺激だった
こちらが一方的な損やリソースを払ったというわけでもない
実際クラシック組にとっても良い刺激で並走をしたことであの走法抜きでもブライアンのすごさとシニアの強さは肌で感じられたと思う

――ようやくチワワが怪物に戻ってくれる
――あいつを倒して凱旋門賞いくぞ

最終調整は――お前がやれ

その言葉に答えるようにブラトレさんは回復をし
ナリタブライアンを迎えに来た
ビワハヤヒデに連れられてやってきたブラトレさんは痩せては居たが以前のようにやつれきった感じではなく
ナリタブライアンを見るとゆっくりとゆっくりと歩み寄って
――ぎゅっとナリタブライアンを抱擁していた

――ごめん、本当にごめん
――もう僕に君を教える資格はないけど
――それでも嫌なんだ、僕は君と絶対に離れたくない
――だからお願いだブライアン――僕とずっと一緒にいてくれ
――君のことを、愛してるんだ

俺達の存在なんかどうでもよく
ただただブライアンの事しかもう見えてないブラトレはブライアンを抱きしめて

――ああ、私のトレーナーはアンタだけだよ
――ごめん、ごめんなさいトレーナー

ブライアンもぎゅっとブラトレを抱きしめていた

――情熱的、でしたね。 ブライアンさんもブラトレさんも

メジロアルダンがうっとりと頬に手をあててご満悦
チームブロッサムもあの感動の抱擁シーンに盛り上がり
ビワハヤヒデは俺に握手を求めてきた

――本当に感謝してる。ありがとうトレーナー

やめてくれ、元々俺が治したってよりブライアンが隠してただけじゃねえか
あほらし、ほんとにあほらし
とはいえ――あのまま隠していたら本当にブライアンは走りが取り戻せなかったと思う
違和感も小さなもの、怪我や故障ですらないから気づくこともなかった
小さな歯車の欠けがあって軋みがあっても動くけど――いつしかそれは確実にこわれるように

――ブライアンは、本当に治ったのですか？

ブラトレの不安そうな声に俺はスタートラインを指さして
――はよいけハヤヒデ、お前も間近で見るんだろ？ 『怪物』を

完全三冠メジロラモーヌ・芦毛の怪物、勝利の探求者ビワハヤヒデ
そして最強の怪物ナリタブライアン、レースの魔術師サクラローレル
クラシックに入ったばかりとは言えスーパークリーク・ジェンティルドンナ・カレンブーケドールも走る
スーパーGⅡなどすら生ぬるい、金すら取れるスーパー模擬レースだ

――期待！ 君を呼びにきたらなにやらとんでもないことをやっているではないか！

え、理事長？
帽子を被った小柄な少女、そして脇には緑の帽子の女性
この小柄な少女こそこの学園の理事長秋川やよい
そんな御方がどうしてこちらへ？

――うむ、君に少々話があって呼びに来たのだがすごいことが起こっているじゃないか！これからかね？

あ、はい。 これから出走です。 もう人呼んでもまにあわないっすよ
俺は右手をあげて、全員を立たせる
枠順はナリタブライアンを最優先させ希望は2枠目
ビワハヤヒデは1枠を選んだ
メジロラモーヌは外枠を選ぶ、サクラローレルはその間の4枠
クラシック組はそれぞれ自分で残りの枠を決める

――各自の思惑がそれぞれあって面白い決め方だ
特にクラシック組が枠ではなくトレーニングコースを見ながらレースをイメージしつつ枠を選んでいる
成長を感じられて嬉しい

スタートの合図に向かおうとすると、秋川理事長が跳んできた
――わたしに！このドリームマッチのスターターをやらせてくれないか！？
と目をキラキラさせている。 子供みたいな人だ
光栄なことにこの模擬レースのスターターはトレセン学園秋川理事長だ
理事長の手が上がり1000mの模擬レース一周がはじまる

――ゆくぞ、よーい――スタート！

一斉に飛び出す――特に良いスタートを切ったのはスーパークリークだ
大跳びの大きなストライドで前に、前に出る。加速もスピードもかなり良い
正直1000mという短い距離はスーパークリークやサクラローレルにはやや厳しいかも知れない
それでもかつ気満々のスタートからの位置取り争いに俺は興奮して手を握りしめていた

――ブライアンがあれだけ囲まれてすごい集中してる……素晴らしい走りだよ
ブライアンが周囲を気にしすぎる性格なのがやはり気にかかったのだろう
ビワハヤヒデがいないときは今後ブラトレさんに絆創膏を張ってもらうと良いかも知れない
先行力のあるスーパークリークとカレンブーケドールが前をいく
かつためにはブライアンより前に位置を取りたい。小回りの1000mトレーニングコースでは外枠は不利でも多少ロスをしはらっても1角の優先権をとりたいのだろう
逆にジェンティルドンナは譲るようにやや控えるむしろビワハヤヒデを意識するように後ろを見ながらのレース
ビワハヤヒデとナリタブライアンが横に並ぶ形でコーナーを回る

屈腱炎で退いたとは思えない力強い走りだな……さすがシニア最強ウマ娘
その後ろにつくのはメジロラモーヌとサクラローレル――サクラローレルの末脚はシニアにも絶対に通じる
しかしそこにいるのは完全三冠――レジェンドのメジロラモーヌだ

――1000m 完全に平坦コース
――周囲はバテてくれない、切れ味で勝負
――インは突かせない、絶対に譲らない
――最後にこの流れを蹴散らして

各自が様々な事を考えているだろう
それをアルダンに伝える、彼女たちが走りながら何を見てなにを意識してるのか
コースという戦場ではなにがおきているのか
アルダンは真剣にそれを聞き、憧憬もまじる瞳でレースをみている

レースが動く
三コーナー前に最初にスパートをしたのはビワハヤヒデだった
同時にナリタブライアンが外から被せるようにスパートする、外に余裕をなくしインで窮屈にさせるようにぴったりと横についたままスパート
勿論それに呼応してサクラローレルとラモーヌも前に出る。ラモーヌは小さな呼吸と共に鋭く前に出て――ローレルは動くがまだ全力ではない、短い直線に集中するようについていく
あまりに早いペース、速い仕掛け勝負にクリークもブーケも踏ん張る
俺の予測よりかなり頑張っていたが限界にさしかかるところでジェンティルドンナが二人の外から抜き出ていく
ジェンティルドンナが先頭
しかしその後ろにはもうナリタブライアンとビワハヤヒデが迫っていた

――ブライアンは立派に私の跡を継いだ
――それでも――それでもね――私は尊敬される、強い「姉貴」でいたいんだ！

ビワハヤヒデで更に加速をする
ナリタブライアンを置き去りにしようとした時――
ぐっと――ナリタブライアンの身体がまるで倒れたように沈んだ
極端な前傾姿勢――それは
――怪物が、獲物に飛びかかるような

――姉貴――私は、強くなったんだ
――天皇賞秋で姉貴から最強を受け継いで――菊花賞を勝ったあの日より


――あれより強くないと――サクラローレルに、勝てないんだ！

弾けたように、弾丸が発射されたように――最高速になったビワハヤヒデを抜く。
その加速は引き絞られた弓が放たれるように
前傾姿勢のその走りは――

――ブライアン……！ブライアンだ――ブライアン！！いけ！ブライアン！！！

悔しい――あの走りは、凄くて――菊花賞の時よりも、力強い。
怪物は過去の走りを取り戻し、くらい尽くして、更に強く進化してる
それが、その強さが、強さが――悔しいけど俺を震わせる。 すげえって――
だけど――凄いのはお前だけじゃないだ

――サクラローレル！！抜け！！！

ビワハヤヒデを抜いたナリタブライアンの外――サクラローレルがナリタブライアンに並んだ

いけサクラローレル！ 模擬レースだろうが1000mだろうが勝ってみせろ！！！

――サクラ……ローレル……!！
――ブライアンちゃん……！！

――負けて、たまるか！！！！

サクラローレルの地面をまっすぐに踏み抜く走法
そしてナリタブライアンの超前傾姿勢
両極端なその走りは互いに一歩も譲らない
直線はたった300m ジェンティルドンナも食い下がるがスパート勝負でまだ二人には及ばずゆっくりと引き剥がされる

もはや二人はただただ真っ直ぐ前しか見てない
完全に二人のマッチレース
俺はサクラローレルの名を何度も叫び
ブラトレさんはナリタブライアンの名を何度も叫んだ

そして――その後ろからさらに迫るメジロラモーヌ
この二人のスパートに並びかけるほどのスパートを見せてきている

――良いわ、あなた達――面白い敵ね

ラモーヌはまだ余裕のある表情、一気に並んで、追い抜こうとし
しかしその差が生まれない。ラモーヌも表情を変え……しかし

そのままの体勢で三人はゴールした

ナリタブライアンは、過去の走りどころか更に一段階進化をした
深く深く沈み込む菊花賞のような走法、その加速だけを利用しスパートを過去の走法で速度も加速も続ける
その弓が放たれるように一気に最高速に到達するスパート
しかしそれを外から捉えたサクラローレルの走りは全く譲らず
――それらを後ろから捉えたメジロラモーヌ

――なんだこいつら……化物どもが
三人の走りに圧倒され呆気にとられた。しかしゴールは横一線
誰が勝ちましたか！？と俺とブラトレは秋川理事長に詰め寄り

――うむ……同着！3人同着だ！

はあ！？そんなのありえないでしょ理事長！
――ナリタブライアンですよ！ブライアンがほんの少しハナ出てましたって！
はあ何いってんだローレルが胸一つ出てたね、絶対出てました
――サクラローレルの胸で勝てるならブライアンの胸のほうがでかいんだから勝ちでしょう！？
おめえ言っちゃいけねえこと言ったな表出ろ俺が1000mでも2000mでもギタギタにしてやる！
――やってやらあベテランなめんじゃねえぞ！

と
大人げない争いも少々あって
結局目視では判別不能だし模擬レースでシャッターなどなく当然判定用のビデオカメラもなく
結局同着にはちがいない
1000mの模擬レースは三人の同着であった

3月末
阪神大賞典 3000m
元々1番人気であったナリタブライアンがパドックに立つ

……うわ、なんだクソ……遠くから見てもわかる強者のオーラ出しやがって
パドックを見る観客が息を呑むような、そんな雰囲気
そのナリタブライアンのパドックの姿だけで当日のネット投票値は「1.0」を記録
1に近いほど支持率があがるそれは彼女の支持率が80%以上であることを示す数字だ

スタートしてナリタブライアンは後方集団の内側
阪神大賞典の一周目は抑えるレースだ
前に出るウマ娘が激しく牽制をしても動じる様子がない

――トレーナーさんが教えた「コレ」聞いてますね……

ブラトレさんが自分の鼻をつつく
もうビーズは取ってるらしいが絆創膏を意識させ前に集中させるというのは通用するようだ
一周目のスタンド前ですこしだけ前につけようとブライアンが動くと――第二コーナー付近で外のウマ娘が激しく右手を振る――あいつ手振りやがった！！
ナリタブライアンの前方目の前を遮るように――もっとハッキリ言えばブライアンの顔をはたくように手を動かしたのだ。ブラトレが悲鳴のような声を上げている
しかし
ブライアンはその手をおでこだけで払い除けてしまう。視線をそのウマ娘にも向けない

――もう恐怖に驚いたりしない。 姉貴は私に託してくれたんだ

灯る審議ランプ
間違いなくさっきの外のウマ娘の手だろう。 同じやるにしてもあれは下手が過ぎるし危険すぎだ
しかしブライアンはこれ以上なく集中出来てる。いまので一つもスピードが堕ちてない
三コーナーに差し掛かる時にはもうナリタブライアンは三番手
やはりナリタブライアンの強さはあの前傾姿勢のスパートではなくこのレース運びだろう
有馬記念でもあの走りが出来ないまま全員から徹底マークを受けても3着だったのだ
気がつけば三コーナーで射程圏、外も内もいける――これがナリタブライアンの強さだ

四コーナーを回るときにはもう先頭
それでも追いすがるウマ娘がせり掛かり横に並び―――
グンと大きくその体が前にかがむ、深く、深く、深く――京都の菊花賞のように
そして一気に身体が前に弾けた。その勢いのまま最初よりは浅いがそれで前屈みのあの走法で直線をひたはしる

――強い、ナリタブライアン直線にはいって引き離す
――四バ身、五バ身、いや止まらない――どんどんどんどん引き離す！
――2着争いは団子状態、しかしセーフティリードでも差はどんどん離れていく
――これは10バ身を超えた、ナリタブライアン強い、強い、強い！
――圧勝！ナリタブライアン圧倒的！ 阪神大賞典に怪物が降り立った！！！

――ブライアン！ ぼ、僕いってきますね！うおおおおお、ブライアーン！！！

すごい大喜びでブラトレさんはブライアンの元へ走っていく
まああんな走りを見せつけられたらトレーナーは脳が焼けちゃうわなあ
――すっげ、15バ身差？
サクラローレルはまだレース場を見つめている
圧倒的な強さのナリタブライアンは明らかに菊花賞以上に強くなっている
不調でもトレーニングを怠らなかったのが結果的に自力の向上に繋がっていたのか
最初の爆発だけ大きく大きく身をかがめるあの走り――菊花賞の走りと今までの前傾姿勢を混ぜたような、勝利のために生き物が進化したような走り
怪物が進化して――本当に最強になったのだ

――すごいよ、ブライアンちゃん
――すごい、本当にすごいね――私、嬉しいよ
――ようやく、本当に――最強のブライアンちゃんを倒せるんだね

ゾクゾクとした表情でレース場を見つめるサクラローレル
うーんこいつもこいつで大丈夫かなーと思うのだが、あの走りに気圧されずに倒せるというのは良いことだ
しかし――天皇賞春、宝塚記念
ナリタブライアンどちらに出るのか――サクラローレルの事を考えたら天皇賞春で激突が望ましいが

――ナリタブライアンさんの次のレース予定はどうでしょうか？
――阪神大賞典ということはやはり天皇賞を視野に入れてますか？

ブライアンのトレーナーが立ち上がり、ナリタブライアンを促す
ブライアンのトレーナーがマイクを取った

――今回の会見は主にそこをお話するためにお願いしました。
――今後の予定は天皇賞春を国内ではしり

――以降、フランス――凱旋門賞への出走を予定しています

ざわ

記者たちがざわめく
――今、なんといった？
天皇賞春から――凱旋門賞？ 最強のナリタブライアンが？
サクラローレルも驚きに目を開き――口を両手で塞いでる
一瞬遅れて会場が歓声に包まれる

――すげえ！ナリタブライアンが凱旋門賞出走だ！
――おい今すぐ本社に連絡いれろ！ 大ニュースだぞこれ！！
――ブライアン！凱旋門賞勝ってくれ！

――今回の遠征は日本の悲願である凱旋門賞の勝利を目標にしてます
――だからこそ我々は日本最強であるナリタブライアンを国をあげてサポートすべきだ
――この先は――トレセン学園学園長である秋川理事長にお願いしたい

――諸君、私がトレセン学園理事長秋川やよいだ
――突然の発表に驚いてるであろうが今回の凱旋門賞遠征は今までの遠征とは違う

壇上に立つ秋川理事長は大きく扇子を広げる

――日本レース界の悲願である凱旋門賞！ その勝利に我々が必要なものはなにか
――今まで多くの最強、レジェンドとされるウマ娘が凱旋門賞に挑み――そして敗れていった――なぜか
――それはレースの根幹、競技場や気候、芝、そのようなものではなくレースそのものの根幹が違う事にある！
――重要！ 勝利に必要なものは――組織！ 組織的な遠征こそが最強のウマ娘を支え、そして凱旋門賞に勝利をする！
――我々はナリタブライアンくんを学園、関係者全てで凱旋門賞へ最高の状態でレースをはしる手助けをする必要がある！

――これはナリタブライアンだけではない――URAの凱旋門賞挑戦である！

……そうだ
強いウマ娘にただ任せて勝利を祈るみたいな他人任せの遠征には限界がある
本当に勝ちたいんだろ？ 本当に日本の――URAの悲願なんだろ？
だったらなんでお前らがそこに立たないんだ、ウマ娘一人に背負わせるなよ
そう思っていた答えが目の前にある
ナリタブライアン――最強のウマ娘を中心にURAが凱旋門賞へ向かう
そしてようやく世界と戦えるのだ
目の前にそれが確かにあって

――ごめん、ローレル
――あそこに立っているのは――お前のはずなのに
――ごめん――

俺にはなんにも力がなくて
無力感に、涙を流して――ローレルに謝って、ローレルの手をぎゅっと握っていた

会場が歓声に沸く
日本がついに世界に挑戦する
ナリタブライアンなら――最強の怪物なら
その期待に湧く会場を、俺達は跡にした

――凱旋門賞だってさ
サクラローレルは俺の言葉にも返事ができなくて
俺達は互いに黙ったまま帰途についていた
菊花賞に敗れた時このルートは崩壊していた。
ローレルを菊花賞に勝たせられれば、最もわかりやすい最強の称号の三冠が崩れる
あとはどちらが本当に最強なのか、有馬――シニアで決着
ナリタブライアンを倒した実績を背景にURAを巻き込む――その青図面は菊花賞でナリタブライアンが勝った時から消えたのだ
だからこれはしょうがない

だけど――どうしても思ってしまう

――今は、サクラローレルの方が速いんだ、強いんだ
――なのにどうして――ナリタブライアンなんだ

お前なんて怪物じゃねえチワワだ！ ちくわでも喰ってろ！！
意味は全くわからないけどありえないほど怒ってるだけはわかる

街はナリタブライアン凱旋門賞一色
勿論ローレルの凱旋門賞遠征は行う
だが俺達が感じる空気とこの世界はあまりにも温度差が高い
ローレルも多少は思うところもあったが――ナリタブライアンという最強が凱旋門賞に挑むというのは歓迎していた

――しゃんとしなさい

俺のケツをぱあんと叩くビンタ。 ジェンティルドンナが俺にカツをいれるように
流石にウマ娘の平手打ちはズボン越しでも痛いのだ、おしりを抑えつつお嫁に行けなかったらどうすんだと抗議する

――私が貰ってあげるからなにも問題はありませんわね、もう一発いきましょうか

と、そんな言葉に俺は即謝罪した。ヒトミミはウマミミには勝てないのだ
それよりジェンティルさんや
なぜ俺の髪の毛のセットや服にブラシをかけてるんだい？

――理事長がお呼びよ。大事な話ですって

そんなんでジェンティルが俺の身だしなみを整えてくれるものか
トレーナーを学園長が呼ぶって大体いい話じゃないんだよなあ……
俺はそんなどんよりした気持ちを引きずりつつ理事長室に向かう

理事長室には学園長とたづなさん、そして何故かメジロアルダンとメジロラモーヌ
そしてさらにさらになぜかナリタブライアンとブラトレがいる
……いや、ほんとなんですか接点ないだろこの組み合わせ

――歓迎！ よくきてくれたトレーナー君
――おや？ サクラローレル君は一緒じゃないのか？

秋川理事長はいつも通り元気よく扇子をぱたぱたと仰ぎながら俺を出迎える
サクラローレル？ いやそもそも話を伺ってないので、と俺は更に内心で首を傾げた
秋川理事長はナリタブライアンの方に向いて

――待機っ！ ナリタブライアン君とブラトレ君、申し訳ないが一度隣の部屋で待っていて欲しい！
――サクラローレル君がこないと話が進まないんでな、申し訳ない！

その言葉に頷いて、二人は応接室に行ってしまう
ますますわからんと思っていると――秋川理事長が俺の前に立つ
背の低い幼j――もとい少女のような秋川理事長はニッコリと笑い、俺に手を伸ばした

――これは学園理事長ではなく、秋川やよいという人間からのお礼と思ってくれ
――メジロアルダン君の話を聞いている。ありがとう、心から感謝しているぞ！

メジロアルダンの身体の事を学園長が知っていてもおかしくはない
結構マメというか色んなところに顔をだしては生徒と交流しトレーニング場をポケットマネーであれこれしたり
時に自分でブルドーザーを運転し土をならしたりローラー車で固めたりしてる御方だ
すべてのウマ娘の幸福をモットーとしてるというのは本当のことなんだろうし俺も尊敬している人物だ
しかし
それならむしろ学園長としてお礼をいうはずだ
学園長ではなく秋川やよい一個人を名乗る必要もない

――ふむ、深くは詮索してほしくはないが一応は彼女たちとはそれなりに縁がある！
――なので全くの他人ではないからこそ深く感謝していると思ってくれれば良い！

ふむ……
まあどうでもいい、光栄な事だ。
俺は秋川理事長をかなり尊敬している、有限実行であり今のURAにおいて最も現実的に世界を改革している人物だ
トレーナーという職が暇なら彼女のやることには全力で手を貸してもいいと思っている
固く握手をし、では言わせていただきますが秋川理事長、いつも尊敬してます！と挨拶をする

なるほど――アルダンとラモーヌがいたのはそういうことなのか
なら今日言ってくれればいいのに、と俺が二人に言うと

――それはついでなのよ、トレーナーさん
――もうすぐいらっしゃると思いますし、お話は理事長からされると思います

なんだ
本当になんだ

コンコン、とノックをする音――理事長室にやってきたのはサクラローレルとジェンティルドンナ
歓迎！よくきたなと二人を歓迎する秋川理事長
流石に理事長室だと手狭になると思ったか、応接室に集まる事にする

――うむ！まだ全員はあつまっていないしな

これでもまだってほんとあと誰がくるんだよ
もう皇帝シンボリルドルフがこようが女帝エアグルーヴが来ようが驚かんぞ俺は
しかし応接室にくるや否や秋川理事長は扇子を開き

――会議っ！ローレル君もきたし話をはじめようじゃないか

いや全員はどうした

――トレーナー君――ナリタブライアン君の凱旋門賞遠征計画は知っているな？

勿論知ってる
凱旋門賞に向かうためにウマ娘ではなくURAと提携してる企業、日本そのものがウマ娘と共に戦わなければ組織的レースを是とする凱旋門賞に勝つことはできない
過去の栄光あるウマ娘も本人たちだけではなく組織的にその体調や食事栄養水、時差などのケア
長距離移動となるその飛行機や待ち時間チャーターなどなど
その膨大な金と時間と人を個人で賄うことはできなかった
それを動かせるのはURAでありURAが日本を、日本の企業を動かし日本の企業に「利」を示さなければいけない
逆に言えば――過去の成績からしてもそれらが実現さえすれば日本のウマ娘は勝てる可能性は十分ある

まあそんな感じの計画
知らんはずがない――俺がトレーナーとしてここに入る時に出した論文じゃないか

――そうだ、この計画の原案は君のレポートを元に組織だった遠征計画を開始している
――君の出した論文は理想論やデータではなく「どうすれば」を細かく書かれていて非常に動きやすかった

――トレーナーさん、私の凱旋門賞遠征をそんな時期から考えていたんですか！？

そんなわけないよねー君と出会った時にはこれもう出してたんだよね―当たり前だろ
サクラローレルがびっくりしたように俺に聞くのでからかってやる、そんなわけねえだろ
偶然なんだよ。 俺がトレーナーとしてここに来た時に出す論文が凱旋門賞で
――俺の目の前の飛べない鳥が凱旋門賞で羽ばたきたかったとか
しかも本当にこいつは凱旋門賞には飛び立とうとしていて――
しかし俺の論文からなる遠征計画はライバルのナリタブライアンに託す形
俺達は個人遠征でナリタブライアンと欧州の猛者たちと戦わなければならない

――それだが――ナリタブライアン陣営から強く要望があった！
――いわゆる『帯同ウマ娘』というものだが……ここはナリタブライアン君から話してもらおう

理事長から水を向けられ……ナリタブライアンがソファから立ち上がる
俺達の方にまっすぐ向かい立ち

――今回の遠征でトレーニングや精神的なストレスの緩和、互いの補助を目的に数名の帯同するウマ娘を同伴できることになってる。
――もちろんそのウマ娘もレースに出る権利はある。 GⅡであっても
――凱旋門賞にも

――俺とサクラローレルは顔を見合わせ――ナリタブライアンに向き直る
つまり――それは

ナリタブライアンは拳を握って、まっすぐ見つめてきた

――私は最強を目指している
――姉貴から貰った最強……更に高い高みを見たい
――だから今、一番のライバルのサクラローレルと戦いたいんだ
――世界最高のレース、凱旋門賞で
――サクラローレル、これはお前への情とか義理だとかじゃない
――私の挑戦を受けろサクラローレル、凱旋門賞で勝負だ
――私の帯同ウマ娘としていっしょにきてくれ

俺はサクラローレルの方を見る
サクラローレルはまっすぐにナリタブライアンの方を見て
その細く少し小さな手を伸ばし、拳を作る

――私、ブライアンちゃんを倒しちゃうよ？凱旋門賞で
――ふん、望むところだ

その拳がこつんとぶつかる

凱旋門賞遠征計画
確かに論はある。 すべきことも大体は書いた
穴のある部分は学園がなんとかするし出来るとは思う
だが――俺の論はかなり大きく致命的な穴があるのだ

協賛する企業、URAだけではなく日本が一丸となる組織的な遠征
これは規模を大きくしたい、という話ではない
大規模な遠征には莫大な費用がかかる
日本と欧州の大きな輸送は人数が多いほど莫大な費用がかかり
それを埋めるには日本企業の協賛が必須だ
遠征先の欧州でのホテルや向こうでの生活を支援するスタッフ、施設の確保は金銭だけでは不可能
現地の信頼でき優秀な人員を確保するには元からそこに基盤のある組織の協力が必要だ
日本の企業であれば海外に基盤があったり太いパイプがあるだろう
そして勿論その協賛する企業にも大きな旨味――利益の還元がないといけない
凱旋門賞の遠征ツアーだったり日本内のブームにのったグッズやアイテムの販売
それらをすべてまとめて
――凱旋門賞はきちんと利益になる
それを証明しなければ一回限りのお祭り――いや次回から協力は得られない

それでは意味がない
だとしたら今回協賛にかかわる組織、企業はかなり大きなギャンブルになるはずだ
夢や浪漫だけで人は動いてはくれない
――メジロヒリュウさんの話ではないが理屈ではなく目の前に札束をドンと詰んで語らねば本当に人はうごかない
俺の論文はそれらの抜けた机上の空論だ
URAが大きな組織と言っても全く足りない
費用や協賛企業ってどうなってます？ 今メディアがこの計画を流してないってことはまだなんじゃ

――動いてますわよ、水面下で

俺の問いに答えたのはジェンティルドンナだった。 すぐにトントンと少し大きなノック音がする
入ってくるのはかなり大柄の男性――グレーのスーツに身を固めた肩幅の広い男
――なにしてんスかジェンパパさん
ジェンティルドンナの父――ジェンティルの総帥は俺に手を軽く上げて

――おう、元気にしとるとは聞いとるぞ！ちょっと待ってくれ
――こういうのはレディファーストだろう？ささ、入ってくれ

ジェンティルの父がドアを大きく開き、そこに入ってくるのは杖を着いた老婆だった
メジロアルダン、ラモーヌがうやうやしく頭を下げ、老婆――メジロの御大を支える

――お久しぶり、というには少し早いかしらね。 トレーナーさん
――貴方への約束――こんなに早く果たせるとは思いませんでしたよ

まさか、とは思うけど
俺が口をパクパクしてるのを見て、「おばあさま」はニッコリと笑い

――今回の遠征計画聞きました。 メジロ家はこの遠征計画に全面的に協力しますよ

――おいおいそりゃ無いぞメジロの御大
――ジェンティル財閥も全面的に協賛する、宿泊施設や航空、現地でのスタッフの確保はフランスの傘下を使えるしな
――私が勝手にメジロとジェンティルが、なんて言えないでしょう？
――メジロの悲願は天皇賞……ですが日本の悲願は凱旋門賞
――私達も何度も挑戦し敗れても……その悲願は変わってませんよ
――賛同ッ！ ここには居ないがシンボリ家も谷岡家も今回の遠征計画に参加すると受けている
――勿論我……おっと、失礼。 Northernグループもだ
――これだけの組織の協賛となれば尻兎マにのる組織や企業も多くいる

いやいやいやいや
まって、日本のレース名家と大財閥と……え？
本当に日本が凱旋門賞のために集まってるじゃん――あんなの夢物語みたいな机上の空論だろう

――いっやー、トレーナー君！ よくやったよくやった！

バンバンと俺の背中を叩くジェンティルのお父さん
俺の肩を組んでぐっと抱き寄せて――豪快なアメリカ人のようにニカっと笑っていた

――今回の一件、君の手柄だぞ！ 凱旋門賞遠征計画に真っ先にあのメジロ家が手を上げてな
――面白そうだから事情を聞いたら恩人への恩返しだというじゃないか！
――いやあ泣かせるなあと思って俺はメジロの御大にホットラインを送ったら、その男はとんでもなく面白いというんだ！
――そしてよくよく聞いてみたらなんか君に似てるなあって、啖呵をきったと聞いてピンと来たね！それはブロッサムのトレーナーか！？ってな！

バンバンバンバンと俺の背中を何度も叩く
ジェンティルが御父上に話したのかと思ったら――たしかに財閥と俺には仕方のない溝がある
ブライアンの遠征計画にサクラローレルを同伴したい
このあたりをメジロが掴んだということか。 しかしなぜナリタブライアン主導の計画なのにサクラローレルはともかく俺の名が

――すまないッ！私がおばあさまに伝えたのだ！
――……詳しくは言えないが私は多少メジロと因縁があってな
――今回サクラローレルの帯同の話が出た時に、この計画で今足りないのは手を挙げる組織なのだと
――君が担当だとラモーヌやアルダンから聞いたおばあさまからすぐに全面的に支援をするとね

ジェンティルの父上殿がアメリカ人のお父さんみたいに白い歯を光らせて笑ってる

――うちは損得を重視する財閥だ、損をすると分かってるところに膨大な金を流せない
――だがメジロが動くとなれば業界も動く、人も動く、他も釣られて動くだろう
――今の状況なら十分に動けるし後々にも良い影響がある
――誇れトレーナー君、過去にこれだけの人と金が動くプロジェクトをした男など財閥にも殆どいないぞ？

――貴方の愛バ、サクラローレルさんのためだけではありません
――ですがこの状況を利用してあなた達が最高のコンディションで凱旋門賞を戦い、勝つだけの用意はメジロも他も確実にお約束しますよ


あ
いやその――なんと言えば
なんと言えばいいんだろう
ありがとうでいいのか？ これはなんだろう、いやこれはナリタブライアンの遠征計画だろう
でもそれは確かに俺が描いた図面で――日本中が凱旋門賞に挑むためのそれで
それを喜ぶと、なんかナリタブライアンの凱旋門賞挑戦をかすめとった気がして

――おい

ナリタブライアンが背中から声をかける

――私は感謝してる。 走りを取り戻せた上に更に強くなった……アンタのおかげだ
――だから最高の舞台で最高のコンディションで戦える。 凱旋門賞もサクラローレルとも
――お前は……戦いたくはないのか？――『最強』と『凱旋門賞』と

――戦いたいに決まってる
――俺、お前に勝ちたいよ……

――私、勝ちます。 ブライアンちゃんにも――凱旋門賞にも
――だからみなさん、ありがとうございます

俺も、頭を思い切り下げてお礼を言った
何度も、何度も、お礼を言って――なんか込み上げるものがあって少しだけ涙をこぼして
少しだけ皆で談笑をした

――なあなあトレーナー君！ 今日は明日までオフなんだ
――あれだよあれ、前に行ってたアレ、いかないか？

……あれ？ はて
俺がジェンティルの御父上殿と約束なんか絶対してないと思うし、してたら絶対忘れてないと思うが
御父上殿はウインクをしつつ

――ほらあれだよ、譲バ倶楽部とムチ馬居酒屋！
――君、そういうのいけるクチかい？ ちょっとは息抜きも必要だろう
――私って妻子もちだろ？ そうすると妻がうるさいんだよ！
――でも君という若い男と一緒なら君を楽しませるため！ってなるんだ、世の中うまくできてるだろ？

お・と・う・さ・ま？
御父上殿はあっさりとジェンティルに捕まり窓から放り投げられた
おい！？ ここ三階だけど！？

――大丈夫ですわ、御父様はゴリラより頑丈ですの。 多分普通に階段から戻ってきますわよ

い、いやなんかすっごくわかるけどヒトミミですよね？
しかし、あとで御父上殿はジェンティルの言う通り何事もなかったようにドアから戻ってきた
あの人はゴリラの因子でもはいってるのか？

――全く……日本の大財閥の総帥の姿かしら？ あれが

ため息をつくメジロのおばあさまに、俺はもう一度頭を下げようとして
それを手で留められる。 杖をついたまま立つおばあさまは小さいのにとても立派だ

――私は貴方を助けるために手をあげただけ
――ソレ以外は他が勝手に動いたこと――とはいえ
――貴方が動かしたのよ？ メジロも、ジェンティルも、それをてこに――この業界を

自覚……ないですね
と、正直に呟く。 それにおばあさまは目を細めて笑い

――でしょうね、でも大丈夫。 あとは老人とたぬきと商人に任せなさい
――貴方はチームのことと……メジロの誰が好みかなってだけ教えてくれればいいわ
…………いや、俺はその
――いいのよ、この婆に言えなければアルダンかラモーヌに言っても
――もし小柄で小さい子が好きならメジロの初等部か中等部の倶楽部でも見学にいらしたらどう？

おばあさま！と今度はアルダンがかけよってきて、はしたないことはおやめください！と言い
おばあさまはあらアルダンさん？ トレーナーさんと永遠を刻みたくないのかしら？
奪い取りなさい、今はメジロが微笑む時代なのよ？と言い合いっていた

――なあ、ローレル
と俺はローレルに声を掛ける。なんかすっごいことになっちゃったんだけど、と
ローレルも少しあはは、と笑いつつも」

――でも、やることは一緒です。一歩一歩頑張って――ブライアンちゃんと凱旋門賞！
――レースをがんばって、勝つだけです

そうだな――ここまでお膳立てされたんだし――勝たなきゃな

QKします
ちなみにジェンパパのイメージはこの人です
FATE イスカンダルでも出ます。あくまでイメージです雰囲気です
あと多分ゴリラの因子はインブリードです

ジェンティルが頭ぶろっさむなのはジェンパパがアプリと比べて緩いオヤジだからなのでは…

>>1です

大体の凱旋門賞導入はこの辺りで終了です

ナリタブライアンとサクラローレルは天皇賞春後凱旋門賞でぶつかることになります

クラシック戦線では3月のナリタブライアンの阪神大賞典より前のレースもありますが時系列のズレということでご容赦、ご理解下さい

>>50

？？→アンバーシャダイ→メジロライアン→ブライト・ドーベル

しまったアルダン自身の方をコピペしてなかった
？？→アスワン→ラモーヌ・アルダン

>>50

秋川理事長のモデルがアルダンラモーヌのおばあちゃん

(ただし公式はぼかしてる、当時のサイゲのポカとか許可の問題)

あと社台とメジロはかなり深い関係でマックイーンは晩年社台に引き取られてる

メジロが牧場畳む時尽力したのが社台

メイショウさんの「人がいて、馬がいて、そしてまた人がいる」を思い出しちゃったなぁ…
闇トレが大規模遠征計画に拘ってたのは、自分の理論が既にあったからか（本人の評価的にやや荒削りっぽそうだが）

これ読んで思い出したんだけどメジロもシンボリもサクラも組んで欧州やアメリカに勝とうって組んでた時代ってあったんだよな

メジロはまともなふりして初等部や中等部のロリすらあてがおうとしてて草

物凄く気になっていることがある
トレーナー室にはいつものブロッサムのメンバーとメジロアルダン
そしてなぜかメジロラモーヌが各々本を読んだり紅茶を口につけたり、スマホを覗いていたり
メジロラモーヌはおいておくとして、メジロアルダンはうまく溶け込んでいて
アルダンの性格からしていい子でしかも内向的でもなく自分から走りの相談や声掛けにチームのみんなも雑談やちょっとしたガールズトークをしてるのを見ている

物凄く気になっていることがあって、しかし自分からこんな話を聞くのもうーんと考えていると
ラモーヌと目があった

――あら、今夜のお誘いからしら。 よろしくてよ

よろしくねえよ夜の誘いなんかしたこと無いわ
俺達の会話にローレルががばっとこっちを向き

――トレーナーさん浮気ですか？ やっぱりおっぱいなんですか？
――トレーナーさんもあのおっぱいに夜の新潟うまぴょいステークスですか？

これだ
正直これが物凄く気になってる
藪蛇にならないように心のなかで神様にぱんぱんとお祈りをしつつ

――なあなあ、一応聞くけどさ
――先に言っとくと本当に、本当にそういうコトをする気はないけど
――皆って俺がチーム内で自分以外の女性とえっちすることをなんとも思わないの？

――え？
――あら、気になる？
――うーん？
――はい、気にならないですね…

そこがまずどうしてもわからんのだが
普通そこで浮気だNTRだ不倫だっておこるんじゃないの？
例えばクリークは俺を他の娘が甘やかしたら嫌だったりむっとしたりしないの

――ローレルちゃんやブーケちゃんがトレーナーさんを甘やかすなんてやっぱりいい子ですねって思っちゃいますね

じゃあブーケは俺がジェンティルとエッチしたりするのは嫌じゃないの？
俺の質問にカレンブーケドールは少し考えてからふわりと微笑む

――いえ、おっぱいおっきい事にちょっと思うことはありますが……ジェンティルさんの喜ばせかたと私の喜ばせ方はちがいますし、あまり気になったことはないですね

うん、まあどうあれ俺が原因でケンカはしないわけでしょ？
――でもアルダンには結構敵愾心だすけどなんで？
理由はわからんが俺を共有財産みたいに扱うってのはうん。 しかしなぜアルダンはだめなのだろうか？
いや先に言っとくがアルダンやラモーヌともしないよ？もちろん

あー
んー
みたいな表情でそういえばと考え出す頭ブロッサムの面々
アルダンはオロオロと俺とチームブロッサムの面々を見て最後にメジロラモーヌ姉様にたすけて……という顔で助けを乞うている。 なんというか一人ぼっちにされた子犬みたいな顔だ

――私はトレーナーさんがメジロにされなければそれで良いのだけれど
――アルダンさん……貴方はトレーナーさんが好きでぴょいしたいと言うことでいいのかしら

――ええ、ぴょいしたいし逆ぴょいしたいし結婚したいと思ってるわ
――ねえアルダン？ そうなのでしょう？

お前が！回答を！するんじゃない！
ラモーヌに俺がバンバンと机を叩いて突っ込みつつ――でもアルダンはこういうの言えないだろう
自惚れとかする気もないがアルダンがどっちの思いでもこんな場でそんな事を言えないと思う

――私は……トレーナー様が好きです！ 永遠を刻みたいと思ってます！
――トレーナー様がサドでもマゾでもちょっと変態さんでも頑張ります！

――その意気やよし
――貴方が独り占めを考えなければわたくしは歓迎でしてよ
――あとトレーナーさんは愛でられたり可愛がられるのが好きな甘マゾ
――覚えておきなさい

――はい！ 先輩！

――『おおおお！？せ、先輩？！！？』
――はい！ 皆さんはトレーナーさんを愛する先輩がたです！

もう俺はツッコミがおいつかねえよ……
頼むよアルダンまでそっちの世界にいかないでくれ俺はもうツッコミが足りないんだ
姉様！はしたないです！ だけで俺がどれだけ救われたと思ってるんだ

――あら、じゃあやはりおっぱいが大きい方が良いのかしら？

ぽよぽよと自分の胸を触ってるラモーヌは俺は無視する。くそ、残念な美人め

――大丈夫です！ トレーナーさんはおっぱい星人だけどおっぱいよりえっちなのが好きです！
――そうです！ トレーナーさんはぎゅっとされて匂いで包まれたり身体をすりすりーとかが好きなんです

ねえほんとやめなよ本人がいる前で俺の性癖を勝手に語らないでよお

――そうなんですね
――先輩！ じゃ、じゃあ私も――ちょっとつよつよ気分でせめたほうがいいんでしょうか？

かえっておいで、頭ブロッサムにそめられないでよーたのむよー
今までみたいにこういう会話に顔真っ赤にしてうつむいてるアルダンが好きだな俺はー
クリークは指をたて、ニコニコしながら

――しょうがないですね～♪教えちゃいます、いっぱい甘やかすのがいいですよ♪
――赤ちゃんだとか弟くんだとか♪ すっごい甘えてくれて可愛いんです～♪

クリークさんや、クリークさんや、それは人としてバラされると最悪自殺モノなんですよやめましょうね
アルダンはニコニコしてなんどもなんども頷きながら

――わかります！ この前の妹ちゃんのトレーナーさんもすっごくすっごく可愛くて
――でも恥ずかしがって震えながら私のことをお姉ちゃんって


あ
おい
アルダンさん
アルダンさん！？

がたたたっ！？
あまりに楽しかったせいでぽろっとこぼれた言葉
故意にバラそうとしたのではないのはわかる
きっと話しが弾む事がたのしくてついつい口からでてしまった
しかし
頭ブロッサムたちはそんな餌の匂いを逃さない
サメは1km離れた場所の血の匂いを感じることが出来るという
それと同様にチームブロッサムはガールズトークのネタを聞き逃すことはないのだ
そこに俺の人権などない
ラモーヌはす、っとスマホをテーブルに置く。スマホには録音のマークが点滅していた

――アルダンさん！それ詳しく、詳しく！
――そ、それはちゃんと女装をしたということですか！？
――あらあらまあまあまあまあ、恥ずかしいことを二人きりでいっぱいさせちゃうのもいいですよねえ♪
――これがメジロ……さすが名門ね、さ、話を聞かせてくださる？

紅茶を差し出しお茶菓子を準備、話の中心は完全にメジロアルダン
もーやめよーよーこの話おしまい、おしまいですおしまーい

――コスプレで慣れさせてから――女装
――これがフット・イン・ザ・ドア
――さしずめメジロ・インザ・ドア……といったところかしら
――あらあらあら、アルダンちゃんはお上手なんですね♪

あーあ……おわったわ俺
ぜーんぶおわった、そうです俺は女装して年下の女性にお姉ちゃんと言って甘えた変態ですよー
と俺はとぼとぼと立ち上がりふらっふらになりながらドアに向かって歩いていく

――あら、どうしたのかしら？

ラモーヌの言葉に皆も俺に気づく
おれはひらりひらりと手を振って皆に挨拶する

――俺ちょっと警察に自首してくるね、女装変態妹罪だって
――ごめんな、俺もう皆といられないわ……ああ嫌だなあ……

俺もちょっと何言ってるか自分でわからん
でももう俺は終わりなんだ

――落ち着いてトレーナーさん
――例えば学園のリーニュ・ドロワットを思い出して頂戴

新年度に行われるダンスイベントだ
ペアダンスがメインで、ウマ娘たちがデート相手とペアを組んで参加しベストデート賞を目指すのが目的
とはいえベストデート賞だけが目的ではなくそのダンス、ペアの親睦を深める目的そのものを楽しむ生徒も多い
毎年行われるが毎年好評だ

――ドロワットでは全てではないけれどそれなりのペアが男装にもなるわ
――トレーナーさんはそれを見てどう思うかしら

え？ そりゃめっちゃああいうの好きだけど――男装の麗人とかでしょ？
――俺はこの時あまりにすべてをさらされて心神耗弱状態だったのだ
正しい判断ができずそのまま口走っただけなのだ
ガタっと立ち上がる音。チームブロッサム全員が立ち上がって俺を見てる
勿論アルダンも尻尾をブンブンしてる

――あれを見て気持ち悪いとはおもわないわよね？
――それと一緒でトレーナーさんが女装をしても別に気持ち悪いとは思われないの

うそだーーー絶対ないわーーー

――……あの、トレーナー様、ひ、一つだけお聞きしたいのですが
――トレーナー様は男装の王子様と、女装のお姫様(トレーナー様)って……どうですか？

どうって……どうって……
俺はアルダンのそのスタイルの良い容姿を見て
少し考え――顔を真っ赤にしてしまう。 両手で顔を隠して

ねええええもうやめようよこの話いいい

――『おおおおっ！？』
――ジェンティルさん！ありです、ありですよ！コレはぜったいありです！
――やはりトレーナーさんはわたくしの嫁だったようですね
――まあまあまあ、ちょっとママも王子様になっちゃいましょうかー

やめて、ねえやめてよお
しかし顔を真っ赤にして転がる俺をアルダンがすっごい顔で見つめてた
え、アルダンさんこわ……こわい！

――決めました
――私はトレーナー様の王子様になります！
――アレはこの運命を刻むためにあったのです

――きゃーっ！ きゃーっ♪
――アルダンさん大胆！ トレーナーさんがお姫様にされちゃう♪
――でもトレーナーの左耳堕ちちょっと見てみたいかも！

メジロアルダンは入学してすぐに休学をしていた
だから去年のリーニュ・ドロワットには参加もできなかったろう
去年のドロワットのために仕立ててたのか――それとも今年のドロワットのために仕立てたのか
それはちょっとわからないがドロワットのアルダンの衣装
編み上げサイハイブーツと黒のレース手袋、白の燕尾服は男装のモノ
トレーナー室にそんなドロワ衣装で入ってくるアルダンにチームブロッサムメンバー全員が感嘆の声を上げる
キャーッ、キャーッアルダンさまー♪
ノリノリの頭ブロッサムの声
ジェンティルもこういう時は悪ノリに乗ってしまう、アルダンさまこちらに目線下さいませとかスマホ持っちゃってるし
完全にあそんでいる

かつん、かつん
わざと靴の音を鳴らすように俺の前に立ち、うやうやしく頭をたれる
手を軽く曲げて礼をする紳士的な礼
そしてそっと右手を俺に伸ばす

――お手を頂いてもよろしいですか？ お姫様

アルダンは穏やかに優しい表情だが、その身は白いドロワに包まれていて
おもわず手を伸ばすと、アルダンはすぐに腕を引いて自分の身に俺を引き寄せる
ダンスで女性を引き寄せる男性役のようなアルダンの微笑みに
とくん、とくんと鼓動が跳ねる
え、これなんだ
あまりにも現実離れしすぎて頭がまともに動かない
アルダンはゆっくりと足を動かす。ステップを踏む
俺はダンスなんかしたことがなく――簡単に足がもつれそうになると

――大丈夫、私に抱きついたままで、良いですから

手を取ったままアルダンは腰に手を当て、ぐいっと身体をくっつけて
俺も左手でぎゅっとアルダンに抱きつくと、アルダンは薄く微笑んでからゆっくりと回る
くるりと一周すると、アルダンは俺の頬に手を当て――そっと額にキスする

しかしアルダンの方も少々――いやかなり顔は赤くて
――トレーナー様にキス……トレーナー様にキス
とおめめがぐるぐる

そんなアルダンを抱きとめるラモーヌは薄く笑いつ、俺にスマホをひらひら見せ


――安心なさい、きちんと動画は撮れてるわ

見とれていた頭ブロッサムどもを安心させるようにスマホをチームに見せていた

お前らは俺をどうしたいの？
俺をいつもいつもいつもいつも玩具にしてさ
俺が怒ったり襲わないと思ってるの？

――え？あ、はい。
――あは、っ♡ でも私のほうが、つよいですよ？
――そもそも貴方逆転無しな受けじゃない、襲う趣味がおあり？
――も～、トレーナーさん、怒ったらめーですよ♪

あ"あ"あ"あ" ！ こいつらはああああ！！
アルダンは自分のやったことや色々でオーバーヒート、隅でラモーヌに顔をパタパタ仰がれてる
俺はテーブルをバンバン叩いて
必死に俺を玩具にするなとお願いする
俺も一人の男で大人で恥ずかしいのだと
確かに男としてあんなこんなを思ったり溜まったり欲望だってあるが
恥ずかしいのだと、尊厳はあるのだと
だからこういうのは辞めてくれと――ね？

――え、いやです

声は唱和され、俺はもうキューンと沈みながら
今日はもう帰る――とちょっとだけ商店街で買い物をしつつ
……たまにはお酒でものもうかな
そんなにお酒は好きではない、だが飲めないわけでもなく
酒があれでもどうせ晩飯くわなきゃだし――と居酒屋にふらっとはいっていった

商店街の居酒屋は店からして古く
お品書きも色褪せてて――でも料金もお酒も料理も庶民向け
俺はテーブル席に一人で座り
うーんいじけて帰るのはなんか違う
違うのはわかるんだけどさあ……とやるせない気持ちになる
いや、ブロッサムの皆は好きだしアルダンだって美人だし嫌いなわけじゃない
今日だってドロワ姿のアルダンにときめいて
それで見惚れて――正直お姫様になってしまいたいと思ったのも事実だ
そうではなく――でもそれ見られてるのはなんかちがくない？
絶対ちがうだろ俺の恥ずかしい様全部別の奴らにみられてるの！
アルダンにそういうのをみられるのはわかる
ジェンティルにそうされてるときにジェンティルにみられるのも
ブーケにだきつかれてるときにブーケにみられるのも
そうではなく今日だってアルダンに抱かれてるのを他に見られるのは違うじゃん！！
そんな事を考えながらビールをぐいっと飲む

――うーんやっぱいいやすいませーん、烏龍茶ください。
はい烏龍ハイじゃなくてソフトドリンクの烏龍茶で

おれはヤケ食いのように唐揚げをバクバク食いながら色々考えてしまう
いちいち怒るおれが狭量なのかなー
おれも四人に共有財産にされてんだしそういうのを全員でみられるのは普通なのかな
でも俺羞恥プレイ苦手なんだよなあ、どうせならこう――二人きりとかのほうがいいよなー
そもそも玩具にされても我慢しなきゃいけないのかなー

……でも好きだよなあ四人もそうだしアルダンもそうだし
正直ラモーヌとアルダンはメジロだったりあの姉妹であるだけであまり他の生徒に気軽に話してもらえないのではないか
今日のアルダンは本当に楽しそうだったし
俺が屋敷に行った時もこう――他愛のない会話にすごくはしゃいでたんだよな
だからポロッと話してしまったのを本気で責める気はない

――それにしても奥の席、ずーっと女性の頭ふらっふらだけど大丈夫なのか？
二人組だったけど一人は帰ったのだろうか？一人でずっと呑んでたのはなんとなーくわかってるのだが

あ、柱に頭ぶつけてる
ほんと大丈夫なのか……？とちょっと立って
大丈夫ですか？と声をかける

――えへへえ♡だいじょぶでしゅよお♡
――おしゃけ♡ おしゃけ♡
――ちょーっとおといれいって、またのみましゅねえ♡

だめだ、これだめなやつだ。俺はその人をトイレまで肩を貸して
そしてその間に居酒屋の店員さんに聞くと

――あーいつもあんなんだから大丈夫だよその人のんべだから
――おにいさんありがとね

テーブルにもすっげえ量のジョッキやグラスならんでたけど……まあ楽しそうだったし自由かあ
店員さんからお水をもらい、女性を迎えに行って
……ん？
ふらふらだが多少は楽になったのか

――ごめんなさいねえ♡ じゃあお詫びに一緒にのみましょうかあ♡
――えへへかんぱーい♡かんぱいしましょー♡

おっとりとした雰囲気
ふわふわのロング、なんやかんやゆるーっとした笑顔
……まさかと思うけど――ライトハローさん？

寝ます、おやすみなさい

あーあ、出会っちまったか

ここで初恋のお姉さんはヤバイ
頭ブロッサムな5人+ラモーヌはどう対処するのか…

傷心のトレーナーを優しく包む初恋のお姉さん
しかもレース無関係

>>85

東京芝2400で勝負です！(机バンバンバンバン)

どしたんはなしききましょうか～♡
うんうんうんうんそうだねうんうんうんうん♡それはその娘が悪いですよお♡
ふふふ～♡
じゃあカンパイしましょ♡かんぱーーいっ♡

ひゃっほー♡
なんか一人で凄く盛り上がってる、ふにゃふにゃではしゃぎながらジョッキを煽って
こきゅこきゅ――んくんくんくんっく――こきゅこきゅこきゅこきゅこきゅ♡

いやいやいやいやその給油みたいな速度で流し込まれるの絶対おかしいじゃん
もう傾けた水が全部落ちてくみたいな速度で全部飲まれるの絶対おかしいじゃん

ぷっはー☆ きゃーっ☆ もういっぱい行きましょもういっぱい！

頼むから俺が烏龍茶を二口ぐらい飲む間にグラスカラにする速度に合わせさせるのはやめろ
ライトハローさんすっげーハッピーアルコールさんなのか
おしゃけ♡おしゃけ♡とウキウキで踊りながら次のお酒を注文してる

これ本当に本当に大丈夫か？
俺から見てもかなりえげつない量をがぶがぶ呑んでいる
よっぱらいすぎて普通のハイボールやハイサワーの1/3未満のうっすいのでも飲まされてんじゃないかとか
実はもうソフトドリンクなのではないかと思ったが、一口貰ったらむしろ濃い目だった
大丈夫かよ急アルとか

――えへへ～トレくんおトイレ♡ おトイレ～♡

……俺はトイレじゃありません
はいはい、ほらちょっとだけお水飲みましょうねハローさん
支えてあげますからはい、はいおトイレいきましょね
居酒屋で初恋だったライトハローさんと再開して、俺は今彼女のトイレ行くのをてつだってる
もうちょっとほら、なんかあるでしょなんか
何が悲しくてへべれけ酔っ払いの初恋の娘のおトイレいくのを手伝ってるのだ

――ありがとお♡ 優しいね、やさしいねやさしいねえ♡
――じゃあお礼にもっかいかんぱいしよっか♡あははは♡かんぱーいっ♡

ふわふわでべろんべろんによっぱらったライトハローさんは心から幸せそうに酒を煽ってる
多分俺がいてもいなくても幸せそうにここでハッピーアルコールでカンパイしてるんだろうなと思う
えっへっへー♡おしゃけ♡おしゃけ♡
と酒をながしこんでるライトハローさんを、俺は烏龍茶をちびちび飲みながら見てる

全然変わってないな、勿論見た目だけだが
多分中等部か高等部でURA走って未勝利で引退して
――その後慰安ライブのボランティア活動して俺はその時出会って
それから…年なのだから、それなりの時間が経っている
すくなくとも「あそこ」で過ごした俺が大人になってトレーナーになるぐらいの時間
その時と殆どどころか全然変わってないのではないだろうか
メジロヒリュウさんもだがやっぱりウマ娘ってすごいと思う

――ほらほらほらあ♡トレくんもカンパイしよ♡ かんぱーーいっ♡

なんでこんなアル中おねえさんになったんだ
ごきゅごきゅとハイボールを流し込んでぷっはー♡と幸せそうなライトハローさん

――えへへ、トレくんがトレーナーになったんだあ♡
――トレくんおべんきょすっごいできたもんねえ♡ あの頃から天才児だなーって思ってたもん♡
――えへへ♡すごいね♡すごいねえ♡
――じゃあトレくんのトレーナー就任を祝ってかんぱーい♡

――あははは☆かんぱいかんぱいかんぱーいっ♡

一応は覚えてたんだな
俺は烏龍茶でハローさんの乾杯に付き合いながら烏龍茶を飲む

――すごいねトレくん。 お勉強こんなにできるんだ
――トレくん、トレくんはきっとすっごい天才な子だと思うの
――だからお勉強とか本とか、遊びも人の話でもなんでもいっぱいしましょうね
――絶対貴方は天才児だよ、トレくん。 末は博士か総理大臣だよ

すごいね、頑張ったね、きみは天才だね
俺はそんな言葉がすごく嬉しくて調子に乗って
こんなに頑張ったよ、こんなのもできたよ――ってハローさんに見せたくて
いっぱいいっぱい寝る間も惜しんで勉強したこともあった
真面目にハローさんがいたから今の俺ってあるんじゃないのかなと思うこともある


――お礼が言いたかった、ありがとうって、俺に道を示してくれてって
――でも、こうして目の前にいるとそれはちょっと言えなくて
――だってそうじゃん、ハローさんもう酔っ払いすぎててさ――真面目な話きけないじゃん


――あははは☆ かんぱーいっ♡ っきゃー☆

ふらふらべろんべろんのハローさんを家までおくる
おくったらお礼に家で呑みましょう☆とか言っていたが当然却下だ
朝まで飲むつもりかこのうわばみは
俺は世の中を知らなかった
うわばみとかザルと言われる人種はここまでなのかと
とはいえ、ライトハローさんはずっとずっと心底幸せそうで
愚痴の一つや何かに怒ることもいっさいなく楽しそうにお酒を呑んでいた
まあ何一つまともな会話ができないのもそうなのだが


――翌日
……やだなあ出勤するの
ぼんやりとそんな事を考えながらシャツを着てスーツを羽織って
はあ、とため息をついて肩を落とす
昨日はあれこれあって俺もちょっと不機嫌を周囲に見せて帰ってきてしまった
正直いっていじけて出てったと思われてもしょうがない
実際いじけて出ていったのだろう
いやだなあ……

――ぴんぽーん

――トレーナー様、トレーナー様っ

アルダンとラモーヌが迎えに来た
最初は車で送迎しようと黒塗りのセンチュリーで来てたが流石に大仰がすぎる
ここまで車できて、ここからは徒歩でトレセン学園へと一緒に登校
アパートからトレセン学園は徒歩で余裕といえる範囲
むしろお屋敷からアパートまでが結構遠い
迎えに来てくれるのは嬉しいのだが大変ではないのだろうか

――昨日はちょっと調子に乗りすぎたわ

え？ 俺は思わず空を見上げる
空は綺麗な快晴――よかった人工衛星はおちてこないようだ
ラモーヌが俺に謝ったというのが信じられないがラモーヌは俺にスマホを差し出し

――お詫びといってはなんだけれど、昨日のアルダンのドロワ衣装の写真と動画をまとめたの

ほんとうに、ほんとうに、なんだけど、ってお詫びだなそれ……まあ頂くけど
とファイルをドロップして頂き……やっぱ凛々しいなこれ、なのに可愛いとか美人とかはあって
それを見る俺にラモーヌは目を細めて

――御覧なさいアルダン、貴方のアレやっぱり好評のようよ

おまえ本当にやめろよ？ まあ滅茶苦茶いいしこれは全部クラウドとUSBにも保存するけどさ

――昨日はすいません、調子に乗りましたどうか嫌いにならないでください！

いや怒ってるわけでも幻滅したわけでもない
ただ辱められて玩具にされてるのがとても馬鹿にされてるんじゃないかと思っただけだ
ああやって見世物はちょっといやだなって
ドロワのアルダンはこう――すごく良かったし
俺も最後を言うのは照れてしまうが、アルダンはその言葉にうつむきつつも尻尾がすごくブンブンゆれてる

――ところでちょっとよろしくて？
――男装の麗人、王子様、スーツタキシード……トレーナーさんは
――中性的に胸元を絞ったのがお好み？ そこは強調されてる方がお好み？

言えるわけがねえんだよな……お前魔性の美女完全三冠ウマ娘の座降りろ
ところが食いつくのはアルダンの方、がばっと俺に詰め寄って
――気になります！ どっちでもオーダーできますので！
と俺を掴んで離さない

……そりゃ強調されてるのがいっすよ、俺おっぱい星人だし
俺がうつむいて絞りだすよにそう言うと、アルダンはちょっとうれしそう
衣装の方少し手直ししますね♪と頑張ります！ってポーズをしてる

――いやあれめちゃ強調されてなかったっけか

――愚問ね、アルダンの実力はあのようなものではないと言う事
――もっというとトップは私と同じ、アンダーは私より細くてよ

……
俺は思わずラモーヌのおっぱいや腰を見てしまった
腰はくびれ胸はデカく……美しさという意味でもドスケベという意味でもラモーヌの肢体ってやばいと思う
もちろんおっぱいでっけえなという意味でも正直にそう思う
しかしアルダンは……そんなラモーヌより少し背も低くて戦闘能力が上という事になる
……
いかん流石によこしまな想像をしてしまいそうになり――アルダンと目が合う

すまんアルダン！
――ごめんなさいトレーナーさん！

お互いに謝りながら顔を逸らし合ってる

クラシック、皐月賞ダービー菊花賞
ティアラ、桜花賞オークス秋華賞
ティアラはジェンティル一人だけなので集中し全力であたるだけ
最後の秋華賞だけカレンブーケドールが出るのかなという予想をしている
ブーケは中距離型で長距離特性が高いとは言えない――得意距離の秋華賞にいくのかあえて菊花賞を望むのか
今後のトレーニング方針もあるので確認を取っておきたい

トレーニングをこなしたブーケをちょっとトレーナー室に呼び
今日は俺が紅茶を注ぐ。 ブーケやジェンティルに淹れ方や茶葉ごとの温度を習ってるのでまあ酷いことにはならないだろう。
ブーケがくるまでに熱湯で淹れたハーブティをテーブルに置き部屋をハーブティの香りで満たして
入室したブーケは、香るハーブの香りに鼻をすこしだけ動かし、にっこりと微笑んでくれる

――素敵ですね、部屋に入るとハーブの香りで出迎えてくれるの

うんうん、よかった喜んでくれた。
先の話なので確定事項ではない――が秋の方針を一応聞いておきたいのだと
中距離の秋華賞エリザベス女王杯ならスピード、菊花賞に挑戦するなら心肺とレースメイク
これは春の内からある程度きめてやるべきだ

――まだ少し、いえ……とても迷ってます
――ですがどちらにしても中距離路線です、菊花賞は出る気がありません

うんうん、なんというか――と目を細める俺
不思議そうに首を傾げるブーケに俺は微笑む。 作り物の笑顔じゃなく本当に嬉しい笑顔がこぼれてしまってる
やっぱ、すごい成長したなあと思ってしまうのだ
優しいが気が弱い――自己主張があまりできないブーケが今後の質問にハッキリと中距離だ菊花賞は出ないと即答できる
自分の立ち位置を把握して自分で二本足で立ってるんだなと
どうしても頼りなく弱い印象はあったがとても成長したんだなって――それが嬉しい

そういうと恥ずかしそうに、でも嬉しそうな表情で微笑むブーケ
俺の手を握って

――貴方に喜んでほしいんです。 ブーケを沢山とどけたいんです

そっか――なんかしっかり芯がはいったって感じで嬉しいなあ
ブーケが俺に抱きつくと甘い甘い花の香りが鼻腔に、頭に、脳に絡みつく
甘くてどこか妖艶な……美しい花畑で誘い込む魔性の美少女のような
しかしそれがとてつもなく気持ちいい

――とろケ堕ちテしまいたくナる

――トントンとノックがされる

ブーケが「ち」と舌打ちをした気がするが絶対にそんな事はない
ブーケは優しすぎる故にレースで譲ってしまうほどに優しいウマ娘
「ち」とか舌打ちなんてしないのだ。女に幻想持ち過ぎと言われても俺は譲らない

――トレーナーさんお客様ですよ

と、サクラローレル達ブロッサムメンバーが入ってきて。それに案内されてついてきたのは


――あの……すいません先日はとてもとてもご迷惑をかけまして
――こちらにいらっしゃるとお聞きして失礼ながら挨拶と謝罪に参りました

あ、ライトハローさん
そういえば元々ボランティアで慰安ライブとかしてたし、本人もURAに携わりたいとは言っていた
ひょっとしてお仕事はURAのスタッフなのだろうか

――とても素敵な方ですけれどお知り合い？ トレーナーさんも隅におけないものね
――はい、すっごい美人さんです♪ いいなあ私もこんな大人になりたいです
――うわ、すっごいおっぱいでっか……
――まあまあ♪トレーナーさんのお知り合いにこんな素敵な方がいらっしゃったなんて

――ん？ なんか空気おかしくないか？
なんだろう
一酸化炭素は猛毒だが無味無臭で気付けない
そんな言葉が何故か今頭に浮かんだ――なんでだ？
4人はこう穏やかで微笑ましくニコニコしてるのだが……何故かここが戦場に感じるのだ

――トレくん、あ、ごめんなさいトレーナーさん

とちゃんとした社会人らしく頭を下げ両手で名刺をくれる。
いや良いですよ、トレくんで――改めておひさしぶりですライトハローさん
昔みたいに喋ってほしいと思ってます

――トレくんがほんとにあのチーム:ブロッサムのトレーナーだなんて思わなかったなあ……
――じゃあもう24ぐらい？でも凄く若いよね？

21です、大検と試験は特例で年齢制限パスしたんで
と俺は社会人らしいジャブなやり取りから親交を深める

――幼馴染のお姉さん、だと伺ってますが再開おめでとうございますわライトハローさん
――まあまあ、小さい時のトレーナーさんのお姉ちゃんだったんですね。小さい時の、ね？

あれ
なんだろ、スーパークリークすらなんかレースに立ってるような……いやもっとこう
うーん、しかし表情も穏やかだし、うーん？
しかし俺には違和感を拭えない

――ごめんなさい、チームの皆さんにもご迷惑かけちゃって……その、今日大丈夫でしたか？
――昨日ずっとトレーナーさんを突き合わせちゃってまして

がたっ！がたたっ！！
一斉に椅子の音が鳴る、ひっ、皆なんでそんな笑顔なのに怖いの？
ねえ俺そんな皆の顔しらない、マヤ知らないよ

――いえいえ、私たちのトレーナーさんはとても優しいので
――まあまあ、どうしたんですか？ 昨日の夜なにかあったのでしょうか？
――私達のトレーナーさんがそちらに迷惑をかけてはいなかったかしら

なんだ？ なんだこの穏やかな会話のはずなのにそこに潜む違和感
歯車が回っているのにオイルが実はメープルシロップだったかのような軋み
嫌味や皮肉は感じられないのになにかこう――まるでハローさんに敵対心をもつような
しかし口調も笑顔も穏やかで……
なんで俺はこんなにも恐怖しているのだろう

ライトハローさんは今はイベントプロデューサーだとかライブレッスンのアドバイザーをしてるらしい
未勝利でおわっちゃったけどウマ娘が輝けるように自分もURAに関わっていきたい
そう言っていたハローさんはその通りの仕事をしているようだ
今度また居酒屋かどこかで呑みましょう、と挨拶をするとハローさんはいたく喜んで

――いいの！？ いいのトレくん！ 今度絶対行こうね！

と俺の両手をぎゅっと握ってブンブン振ってた
まあわかる――正直あの飲み方だと一緒に飲む人は絶対いなくなる
絡み酒や愚痴やあれこれよりは100倍マシだし楽しそうだし見ていて微笑ましい
しかしあんなパカパカのんでべろべろでトイレすら支えてあげなきゃだめ
一緒に呑んでるのにもう完全に自分だけハッピーでキャイキャイ
あれだとまあ飲み仲間は減っていくんだろうなあとはわかる

――トレーナー様、寒いので中へ。 ストーブを炊いておきました

と俺をトレーナー室に誘うアルダン
ライトハローさんを見送った俺はトレーナー室に戻り

――かちゃん、ガチャ

内から鍵をかけられ自分のトレーナー室に監禁された
加害者はチームブロッサムの五人である

こわいよ
ねえ怖いってば
今日の君たちこわいよー！

にこやかなのだ、いつも通り
しかし明らかに何かゴゴゴゴと怒気をはらんでる
なんでアルダンも穏やかに微笑みながら背中に炎をまとっているのか

――アルダンさん、あれがライトハローさんです
――あのだらしのない太腿とお腹なのにあのおっぱいです
――そしてあの方がトレーナーさんの初恋のお姉さんよ
――あは♡ もうこれはここでわからせないとだめですよね♡

アルダンたすけて、アルダン！

――トレーナー様、申し訳ありません
――でも、だけどあんな初恋のお姉さんはだめです
――初恋は実らないっていうじゃないですか

こわい！？ ハイライト消えた爬虫類の目でなにいってるの？
ねえラモーヌ？ ねえなんでこういう時はいないんだよアイツ！くそ！！

待ってよ
なにもないって
昨日も居酒屋でちょっとやけ酒――まあヤケ唐揚げだけどさ
唐揚げ喰ってたらなんか危なっかしいのいるなーって
そしたらライトハローさんでさ、もうすっごいべろんべろんでさ
あの人すっごい飲むの。 もう漫画かよみたいな
昨日もそれでずっとほぼ面倒見てるような感じで家まで送って
家で飲もう☆とか言ってるから逃げてきたんだよ

――ガタタタッ！？

家呑みのお誘いという単語に全員が立ち上がる
俺は両手を振って恐らく家に連れ込んで夜の新潟記念とかこいつら想像したのだろう
だがあれはそんなのじゃない
絶対普通に家で無限に呑んで飲みつぶれるだけの本当の「家でのもう」なのだ
下心だ誠意だなんてチャチなもんじゃない
もっと純真な大酒飲みハッピーアル中の片鱗はもう見えてた、いや片鱗ではないあれはタダのウワバミお姉さんだ

……
チームブロッサム、いや頭ブロッサムどもは顔を見合わせ難しい顔で悩んでる
ふう、とジェンティルはため息をついて

――つまり、浮気じゃないのね？
――初恋のお姉さんと運命の再会！ ウマミミゆえ何も変わらないその容姿！
――そこに幼い初恋にライトハローに恋が燃え上がったりはないんですね！？

こいつらそういうのほんっと好きだよなあ
ないって、たしかにライトハローさんマジでなにも変わってないのすげーなって思ったけど
あとうーん……正直言えばあのおっぱいはすっげえなあとは思った
ほわほわしたでっかいお姉さんは初恋とか関係なく好みだし色々妄想はしてしまう
だがそれを言えばここが火の海になるのは重々承知してる、言えるわけがないのだ

――あは♡ 今ちょっと鼻の下伸びました。 ライトハローさんにデカπ感謝ですか？
――デカπならここにいくらでもいるじゃない

……ごめんて
でも俺だって年頃の男性ですよ？ そりゃすっごい身体つきの女性みたら何かしら思うって！
そもそもいつも言ってるじゃん俺はお前らにそういう如何わしい事思ったりはするけど我慢してるって
お前らにもそういう目を向けてる時あるんだから男ってそういうものだってわかるでしょ？ね？

――でもライトハローさんにおぎゃってバブってじゃんけんぽん☆はできませんよね？
――恥ずかしいですよね？ 男の子の尊厳ってありますもんね？

クリークは俺を後ろからぎゅーと抱きしめる。アルダンはクリークに詰め寄って

――待って下さいクリークさん！それ私にもちょっと詳しく教えて下さい！
――でちゅね師匠！ わたしにも赤ちゃんの極意を！

ああ、アルダンが遠いとこ行っちゃう……だめだよ君は深窓の令嬢お上品なウマ娘なんだ
俺は結局このあとわからせという名目で全員のおもちゃになり
抱き枕にされたり撫で撫でをされたり、さすがにキスやぴょいはアレだがとてつもなく辱められた

――なんで俺が玩具にされるんだ

QKします

>>115

いやこの空気感はノーぴょいだからこそ得られる、トレのDT仕草とか

どうしたんですか？トレーナーさん
元気ないようように見えますよ？
お話聞きましょうか？
…………
そうですね――それは彼女たちが悪いところもありますね
勿論私はそんな思いさせませんよ
じゃあ――呑みますね

――かんぱーーーいっ☆
――おしゃけ☆えへへ☆おしゃけ☆

ほら、先にサラダだけでも食べましょ？空きっ腹にお酒はダメですって
ポテトサラダだけでもね？
あーもう溢れてる溢れてる……すいません布巾かりてもいいですか？
もーほらケチャップついてますから
トイレですか？ ほら肩捕まって下さい
はいかんぱーい、と。
じゃあほら、タクシー来ましたよちゃんとタクシー代あります？

健全
とても健全だ
俺はライトハローさんと時々居酒屋に来る
俺は烏龍茶、ライトハローさんはお避け
唐揚げやフライドポテトを頂きつつハローさんの面倒を見る
下心も逆ぴょいもオモチャ扱いもない
健全だなと思いつつライトハローさんを載せたタクシーを見送る

――トレくうん♡ トレくんは優しいね、偉いね、優しいねえ♡

へべれけハッピーアル中のハローさんは座敷で俺に抱きつきながら猫みたいにスリスリしてる
正直こんなおっぱいおっぱいのやらしく柔らかいお姉さんに甘えられてスリスリされて思うことはある、ありますよ？
ちゃんとうおでっかとか柔らかそうとかちょっと妄想しちゃうよ
でもこの人はそういう下心なくとにかく酒が好きなのだ
そしてここまでのんべだと酒呑み同士はついていけない
酒を飲まないやつはこんなのの面倒は見たくない
そんなこんなで、酒は好き、でも一人さみしいというハローさんは俺をちょくちょく誘う
俺もまあ、面倒見ることはそんなに苦じゃないし、ハローさんは間違いなく俺の恩人だ

――いいないいなあ、こんな尽くしてくれる子が私の現役の時もいたらなあ♡
――もうちょっと若ければ私もちょーっと独占力スキル閃いちゃうのになあ♡
――あ、ウーロンハイおかわりいーい？ね？ ね？ もう一杯だけ☆

はいはい、ダブルですね
俺はくにゃくにゃのハローさんをまっすぐ座らせ両手にしっかりグラスをもたせる
もうすでに右手には布巾を持って溢れても良いように
あれこれデートとかじゃなくて介護じゃねえかな？

尽くしてくれる彼氏、というのは実は介護やサービス業ではないだろうか
まあ俺は彼氏でもないので別に良いのだが
しかしまあいつもいつも楽しく飲む事だ

――みんなこうなら良かったのにな――

あまり酒飲みは良いイメージを持てないがこうやって幸せそうならいいかなと思ってしまう
甘いのかも知れないが、まあダメになりそうなら俺もハローさんを叱ろう
――おばしゃんじゃだめ？ ねえねえ私のお嫁さんになってよトレくうん♡とハッピーだ
ああ、そうだ
俺は烏龍茶をハローさんに勧めつつちょっとたまには俺の相談も聞いて欲しいと
すると

――んぅ、いいよお♡ んく、っぷっはー☆
――んー、んー……なあに？

ライトハローさん、この人ハッピーアル中であっても一応しゃんとできる
お酒で気持ちよくなってる間はそうしたくないのだろう
なので本当にどうしようもなく財布を忘れたり店や道路で寝てしまったり、リバースというのはないのだ
とはいえアル中ではあるので今ならお世辞やオブラート無しで聞けるだろう

ウマミミって男を嫁にするもんなの？
俺の問いに、ハローさんは結婚の？ 旦那とか嫁とか？ と首をかしげ

――するよおー☆ ウマミミはヒトミミがかわいいものー☆
――だから皆がトレくんを可愛がったりちょっと意地悪するのわかるー☆
――あとヒトミミの言う嫁！ってのを男性を嫁にしたいってのはあるよおー☆

……あるんだ、あれって普通だったんだ
まあ普通の男女の純愛関係のほうが多いんだろうけど、こっちもハローさんの雰囲気的に変ではないらしい

――トレくんはねえ、絶対およめさんだよお♡

――面倒見が良いしい、優しいし？
――そんなの私だって嫁にして家に帰ったらお迎えしてほしいもん☆
――ねえねえトレくんお嫁さんになってよー☆結婚しよー☆
――じゃあじゃあ結婚式のお、はいかんぱーーーいっ☆

勝手に結婚式を挙げられ勝手に乾杯されてる
あはは♡あはは♡とゴキゲンなハローさんが酔いつぶれるまで面倒みて
今日もタクシーに放り込み、腕にポカリを抱かせて
タクシーをお見送りして家路に着く


――うふふ、とれーなーさん♡
――ちょっとここに、正座してくれますか？

トレーナー室で俺は正座をしてる
部屋にはスーパークリークだけ。俺は最初聞き間違いかと思ったらスーパークリークに正座させられていた
うふふ、うふふとは言ってるが目はちょっと怖い

――昨日もハローさんと居酒屋でいーっぱい呑んでたって聞きました♡
――やっぱりライトハローお姉ちゃんは素敵ですか？
――ああいう大人の余裕のあるお姉ちゃんが理想ですか？

あれ……ひょっとしてクリークがヤキモチ焼いてる？

――トレーナーさんはやっぱり弟くんになりたいですか？
――わたしのような年下ではなくちゃんと年上のお姉さんに甘えたいですか？
――もしライトハローさんがでちゅね遊びをしたらトレーナーさんはバブバブするんでしょうか？

クリークはかがみこんで
ぽふ
と俺の胸に頭を突っ込んで俯くクリーク
クリークは俺の背にぎゅっと手を回して

――わたし、トレーナーさんを喜ばせてあげてないです
――レースだってまだ1勝で、他の子たちは重賞だとかG1だとか
――でもわたしは全然トレーナーさんを喜ばせてあげられません

……むう
クリークのレースは嬉しい
勝つのも嬉しい、あの走りがすごいのも嬉しい
でもそれがないから女性としてクリークの魅力がないのは全然ちがくて

ライトハローさんだって今は走ってない
現役も一回も掲示板にすら載ったことがないまま全レース着外
ライブすらまともにステージに立ってないそうだ。 GⅠや重賞は出走者全員がライブに立つが未勝利は殆どが掲示板内のみのライブ
レースが凄いから、強いから――そこで俺はウマ娘に魅力を感じたことはない
クリークはじーと見上げて

――本当ですか？でもライトハローさんすっごいムチムチでほんわかで優しいお姉さんじゃないですか
――アルダンさんもおっぱい大きくてこの前のドロワなんて王子様って感じなのにちょっとエッチで

わかる、そこは何一つ否定しない。 俺もそう思う
だけどクリークはやっぱり一番母性があるなって思うし――ぶっちゃけ母性があるのにエッチな雰囲気あるし

――本当ですか？ 私の事もそういう目で見れますか？
――また――その、甘やかしながら――キスしたり、したいですか？

……したいか、したくないかで言えば――したいに決まってる
というかしたくない男なんかいるわけないだろクリークお前は自分の容姿を自覚しろ
と、クリークは少しうつむきながら、しかし俺にくっついて

――その、じゃあ、その、すみれ賞にかったら――また、お願いしていいですか？
――この前みたいなおうちデートで……一日中ぎゅーってして甘やかしたいんです

すみれ賞
オープン2200m

スーパークリークの復帰戦。 オープンとはいえ2200という距離もクリークの本来の実力を踏まえても鉄板レースだとは思う。
スーパークリークは落ち着いて気合も空気もいい
歩様も尻尾の揺れも調子の良い時のそれ――走りに不安が出る気配もない
控室はアルダンも含め5人揃っての談笑
レースが近くなるとクリークがメンバーにお願いして、俺と二人きりになりたいと

――トレーナーさん――わたし、ちゃんと必要ですか？
――ちゃんと甘やかして、トレーナーさんの支えになりたくて
――でもレースに出れなくてちょっと焦ってるんです
――こういう焦りとか不安って、正直全然経験してなくて

……しょうがない
本当に、本当にこんな事は言いたくないのだ
恥ずかしいし俺自身のタガが外れてしまう気がする
だけど――クリークをこんなに不安にさせてるのに我慢だ恥ずかしいだ言ってられない

俺はクリークに抱きついて――クリークの胸に顔を埋める
ぎゅっと背に手を回して自分よりいくぶん背の高いクリークにすがりつくように身体をくっつける

――驚きに目を丸くして言葉も失ったクリークに俺は顔をあげた

こんな事して嫌がられたり引かれたら俺一生立ち直れないんだ
だって男が抱きついて女の胸に顔うずめてるわけでさ
これを万が一求められてないとかだったら俺もうクリークに一生顔をまともにむけれない
恥ずかしいし、怖いからこういう事はできない
でも俺だって、いっぱい甘えたいし――変でも、おかしくても、気持ち悪くても
ホントはクリークに甘えたい
だってクリークふわふわしてるし、おっとりしてるし
ほんとはいっぱい甘えてそりゃあ男だから――そういう事もしたいよ
あまやかされながらそういう事なんて普通は絶対ありえないだろうし

はわ、はわわとクリークが声をあげつつ――俺をぎゅうっと抱き寄せる
本当はレースなんか関係なく甘えたいけど
今日レース終わったら勝っても万が一勝てなくても――俺がおうちデートしたい

復帰戦のすみれ賞
スーパークリークは三番人気
一番人気のウマ娘がパドックでスーパークリークに挨拶をする

――今日は私が勝つ！ 復帰戦で悪いが勝利は――ッ！

チュニカクイーンはクリークと目が合うと、ゾクリと背筋が凍った
クリークは慈母のように微笑み、しかしその瞳にはウマミミすらゾクリとするようなとろけた妖艶さがあり
ふわりとクリークからのぼるオーラがチュニカクイーンを一歩、下がらせる

――うふふ、ごめんなさい。
――でも今日は速く終わらせないといけないんです
――はやく帰って、弟のお世話をしないといけないんです

クリークはすみれ賞を圧勝
レースは逃げという表記だがあれはどう見てもメイクデビュー同様に周囲とのスピード差がちがいすぎるレースだ
その圧倒的な走りはチームブロッサムからも感嘆の声があがるほど
やはり脚が万全かつ気合乗りが良いクリークの実力はクラシックでも群をぬいている
皐月賞、ダービーに一躍期待の目を向けられるクリークはニコニコと観客に手をふり
俺達の祝福と賞賛をうけた
本来は菊花賞までしっかりトレーニングを積むべきかと思ったが本当に皐月賞に出したくなってくる
カレンブーケドールもジェンティルドンナも、その強さに武者震いをしていた
この三人はトレーニングもレースでも互いを高めあえる最高の三人組だろう
メジロアルダンはまだ初レース前でその様子を眩しそうに見ている

すぐにとは言わない。でもアルダンも秋冬には間違いなくそこに挑戦できるはずだ

全員が各自解散
各々トレーニングにいったり帰ったり
俺も次のレースに備えて帰ろうと控室を片付けていると
ぎゅうっとスーパークリークが俺に抱きついてきた
いや、俺を後ろから抱いたという表現が近いと思う

――うふふ♪トレーナーさんは恥ずかしがり屋さんだから……ずっと待ってたんですよ？
――二人きりになるの♪ トレーナーさん、今日の走りどうでしたか？

そりゃあ、凄かった。 天マというのにふさわしい大跳びのレース
周囲はスピードに着いてこれないし、なによりその走りは美しい
俺がそうクリークを絶賛すると満足そうにうふふ～と笑う
今日はクリークがびっくりするほど積極的だ

――私をこんなにすごいウマ娘にしてくれたトレーナーさんにも
――「ごほうび」あげなきゃですよね？
――ね、トレーナーさん

クリークは俺を抱き寄せ、正面をくるりと向かせる
崩れ落ちそうになる俺の腰を抱き、俺の足の間に右太腿を差し入れてぎゅっと抱き寄せる
クリークのふとももが根本までさしこまれるようになって

――トレーナーさん♡これはご褒美ですから♡
――だいじょうぶ、なあんにも考えないで♡
――わたしがいーっぱい……ごほうびしたいんです♡

よし、よし♡と俺を撫でるクリーク。 クリークもテンションが高いのかいつもより凄く妖艶に思える
まるで太腿を俺におしつけるように押し上げて、クリークは俺の唇に顔を近づけてぺろりと舐めた

――鍵もかかってますから誰もきません♡
――二人きりですよ♡ 誰も見てません、聞こえません……♡
――だからいっぱい甘えて、ごほうびうけちゃいましょうね♡

俺は焦らすように唇を舐め上げられ――酸素を求めるように口が開いた瞬間

～～っ♡

クリークの顔が重なった

――じゃあお着替えして、トレーナーさんのおうちに行きますね♪

クリークはとてもつやつやした表情でスキップをするように手を振っていってしまう
……俺はちょっとぼんやりしたまま見送って、ほっぺたに手を当てまるで風邪のように熱い頬を感じる
クリーク、あんな大胆に……すごいドキドキした
俺はまだ頭がぽーっとしたまま、それが覚めやらぬのを感じたまま家に先に帰っていた

Fin うそです
QKします

もうこれアルダン含めてブロッサムが牡馬で闇トレがおひんばな物語ってことでよくない？

ありがたいのだけど
ありがたいのだけど毎日とんでもない量の投稿にビビる
どうなってるん？

ほんとにこの人にはSS続けて欲しい
皆いなくなってしまうんや

ぴんぽーん

夕方 春に向かい少しづつ日が高くなって、でもまだすぐに暗くなってしまう時間
スーパークリークはいつもの普段着にベージュのコートを羽織っていた
春にさしかかるとはいえまだ寒い、俺はエアコンをかけたリビングへクリークを上がるよう促して
クリークはお料理つくりますよ～♪
とスーパーの袋
俺は大きなモッコモコの室内用スリッパを出す
クリークが来た時に使ってもらおうと思ったものだ

――わあ、わあ♪これわたしの為にですか？
――うふふ、嬉しいです♪
――はりきって、料理作っちゃいますね♪

俺は「手伝いたい」とクリークに申し出る
クリークはだめですよ、ママに任せてくださいね～♪と俺のおでこをツンとして
でも、俺はクリークに食い下がった

手伝いたいんだ
クリークと一緒に、料理したいんだ

SSの投稿速度が有り得んほど速すぎて全く追いつけなかった.....

俺はカチャカチャとお皿を準備する
一つ、一つ、お皿ならべたよとか
お砂糖、だしておくねとか――クリークの料理を手伝う
やらせるのが申し訳ないとか、そんなんじゃない

――手伝いは、怖くて出来なかったんだ
俺がおてつだいをすると、ずっとずっと嫌味を言われた
愚痴ばかり聞かされた、その先は俺をなじる言葉だった
だから手伝いをするのは嫌だった
でも、機嫌が悪いと今度は「手伝いもしない」となじられた
何をしても、どうしても、母親の機嫌次第で俺は怒られ、叱られ嫌味を言われ
俺はどうしていいかわからずどんどんおかしくなっていったんだ

クリークは、何も言わずに料理を続けてる
俺は下ごしらえに使った食器やスプーンを洗いながら続けた

だから、お母さんにお手伝いしたんだ
お手伝いをして
――ありがとう
ってちゃんと人の子らしく、言われてみたいんだ

ただの自己満足
ただのごっこ遊びだ
子供の頃出来なかった――ちゃんとお手伝いをするいい子
それで褒められたかったって……それだけなんだ

クリークが鍋に蓋をして
俺の頭を撫で、ぎゅっと包み込むように抱きしめる
親が子供にするような優しいハグ
俺は涙が溢れて、ぎゅっとクリークに抱きついて

――みんな、こうやってぎゅってされて
――頭を撫でられて、抱きしめられて
――こうして愛されて、育つのかな……みんなそうなのかな

クリークは悲しそうに唇を歪めて
それでも俺の頭を撫でることはやめなかった

――はい、きっと皆そうです。
――ちゃんと良いことをしたら褒められて
――悪いことをしたら叱られるんです
――皆いい子ばかりじゃなくておかあさんの言う事を聞かない子で
――それでもお母さんは、どんな子でも子供を愛して頭を撫でて、ギュッするんです

どうしてなんだろうな
いい子にしても、そうじゃなくても俺はうまくいかなかった
だけどクリークはそんな俺をぎゅうっと抱きしめて頭を撫でて
「いい子、いい子……いっぱいお手伝いをしてくれてありがとう」って言ってくれる

――そうやって、都合が悪くなるとご機嫌取りに来やがって
――手伝いじゃなくおべっかでそうしてるんだろう

あの時、どうすれば――なんといえばよかったんだろうか
俺には、ごめんなさいしか言えなかった……何を言っても、怖いことになるって思ってた

闇トレの過去おつらぁい…今は精子一杯でちゅねしていいんやで…

俺はクリークに、ありがとう、と言う
ん～？ という顔のまま、俺にあーんをさせる箸を止めるクリーク
……俺の我儘をきいてくれて、 俺に手伝いをさせてくれて
俺のお手伝いをちゃんとさせてくれて

クリークは、焼き魚を俺にあーん♪と差し出してくる
俺は口を開けその焼き魚をもぐもぐして、美味しい。 とクリークに微笑む
脂が乗ってふわふわの魚
でも――クリークにあーんをしてもらう一口はそれがほろっとほぐれるような気がする
ためしに、自分で箸をつかって魚を食べ――クリークにもう一回あーんしてもらっていいかなとお願いして
―――不思議だ、同じ魚をつついてるのに、絶対にクリークからあーんされる方が美味しい
……最高の調味料は愛情というのは本当になにかあるのかもしれない
サラダのトマトをぱくりと食べる
大根おろしも辛くなくて、クリークにひとくちあーんして貰った

後片付けは俺がやるよ
なんて事は言わない。 ただ――手伝いたい、と
クリークはちょっと気にした素振りだったが俺はクリークと一緒に、そういうことをしたかった
さっきみたいな「ごっこ遊び」だとかじゃなく、クリークと同じ空間でクリークとなにか作業をしたかったんだ
そう言うとクリークは嬉しそうに尻尾をふりながらお皿を洗って
俺はそのお皿を拭いていく

食洗機――買おうかな
と呟くと、クリークがぶんぶんぶんぶんと首を振った
私が全部お世話をしたいんです！というクリーク
しかし、食洗機に任せた時間を他でお世話されることができる
洗い物は手が濡れるので撫で撫でだとかハグはできないわけで

――クリークの脳裏に電流が走った
食洗機も、悪くないかも知れませんねと微笑むクリーク
俺はお皿拭きを終えちょっと手を流し

……クリーク……ん

とまだ濡れた手をクリークに出す。 本当に、本当になんとなく、手ぐらい自分で拭けというやつなのだけど
俺はなんとなくクリークにやってもらいたかった

――っぱ、あああアアアア☆

後光が差しそうなほど顔を輝かせるクリーク。 俺の手をニコニコと拭き拭きしてくれる
おれは逆にタオルを持って、クリークに両手出してとお願いする
良いんですよ、とニコニコするクリークだが
俺は迷わず最強のカードを切った

――だめだよママ、お手々ふきふきしよ？

……ぷはっ

ああっ！？ クリークが鼻血を拭いた！！？

食事とかを終え
……ふと、気付いた
今は19時
今日のすみれステークスが14時すぎ発走
クリークが来たのもレースとライブとその他もろもろで17時すぎだったか
そして今日はクリークが大きな旅行用のバックを持ってきたのだ

――あれ？ お泊り？

クリークは18を超えてて何一つ問題もなく恐らくは外泊届も出してるだろう
勿論トレーナーの部屋に外泊をしてはいけないなんてルールはない、あれよ
倫理的にまずい、とは思うのだがウマ娘の世界は完全に倫理が違う
多分だけど――これ男がウマミミの家に止まるほうが色々まずいのだと思う、力関係的な意味で

俺は素直にクリークに「そういえばお泊りですか？」と尋ねる
旅行用カバンはさすがに一泊には大きすぎるだろうとおもってたのだが

――これはお着替えとかお泊りセットというより、新しい衣装ですよ♪

勝負服？ と尋ねるとこくこくと頷いた

――え、それ服じゃなくて布じゃない？

マミー衣装ですよ～♪とお着替えをしたクリークのそれは包帯をイメージしたもの

胸元はかなり布面積は少ないし腰のスカート以外はあまりに衣装というより布だ

どうですか？ 男の子って布地面積少ない方が好きって聞くんですけど

とクリークはその場でくるっと回ったり「がおー」とモンスターごっこをしてる

うーん……いや、だめだろう

倫理的にもそうだが――いやえっちいし似合ってはいるのだが

という前提でクリークにはちゃんと前置きしたうえで

――俺だけの感想でいい？ という言葉に勿論です♪と頷いてる

――これ、トレーナーさんを意識してもってきたんです♪

――どうですか？ ちょっと頑張ってみたんですけど

――すまないクリーク。似合ってるしえっちだとはおもう

――でも俺はいつものクリークの衣装のほうが似合ってるしエッチだと思う

――あらら、だめですかあ

ちょっと残念そうなクリーク。だめではない、だがいつものの方が良い
レースでもそうだししょーーーじきにいうとぴょいしたいのどっち？ってなるといつもの青い方だ
もちろん勝負服ぴょいとか勝負服で抱き合い添い寝をしたいとは――したいとは――したいけどするわけもないが

――あらあら♡したいんですね、じゃあ持ってきてますよ♡

ちがうっ！そうでなくて俺の好みはいつもの勝負服だということだ！
しかしクリークは俺にくっつき、耳元で囁く

――でもこっちって、布のせいか胸元がいつものより揺れるんです♡

やめなさい、それは禁止カード。 えっちなのはだめ、しけえ！
くそ、クリークまで俺をからかう事覚えやがって

――うふふ～くの一さんですよ♪

――どうでしょうか？

…………ノーコメント

ちょっとこれは破壊力が大きすぎる

くの一とか悪の女幹部に並ぶ日本の全男子の脳を破壊する少年クラッシャーに決まってんだろ！

ええい！ノーコメントだノーコメント！

俺は前屈みにどうですか？と聞いてくるクリークから顔を横に背ける

あらあらまあまあ……ママは悲しいです――と俺にクリークは抱きつき

――ママにちゃーんと、感想言ってくださいね？♡

――トレーナーちゃんはママのいうこと……聞けますよね？

――いい子はちゃんとこういうのは好きか言えますよね？♡

あ、だめ耳溶けるって、溶けちゃうって

元々おっとりとした甘ったるい声をわざと囁くように俺の耳に流し込んでくるのだ

耳も脳もとろけてしまう

――そうなんですね♪ トレーナーちゃんってくの一さんとか好きなんですね♪

……くそ、負けた

くの一が好きというよりその衣装ってエロない？ という話だ

個人的にはハイブーツじゃなく網タイツのままのほうが良いがそもそも着物とか和服系好きだし

――あらあらまあまあ？そうなんですね♪

――じゃあいつものよりこっちの方が良いでしょうか

――うーん、うーん、迷う。 正直どっちもいい

――なんというかどっちも見たい。 ああそうです俺はムッツリスケベなトレーナーです

――ふーんそうなんですねへー、うふふ、へーふーん♪

楽しそうに笑うクリーク、まあうんもうこういう話の流れ出し正直にね、言いますよほぼバレてるんだし
なるほど、このための旅行カバンか。勝負服三着ならたしかに必要だ
もちろんぴょいとかは致しません、致しませんがやっぱクリークってどんな衣装来てもうおすっげエッロってなる
それに今日のクリークは積極的なせいかすっごい色気もあるような感じで
俺だって男だし性欲はあるしそりゃあクリークをそういう目で見てしまう

――あ、勿論今日はお泊りですよ♪ お風呂はどうしましょうか？ 一緒にとか……

残念だがうちはそんなに広くないのだ、二人は倫理より強い物理的に不可能
先に俺がシャワーを頂き、ほこほこと湯気をたてながら出てくると
クリークが大きなバスタオルをもってスタンバイしてた

わしゃわしゃわしゃと頭と首の後ろとか背中を拭かれる
わしゃわしゃしてるのに優しく、柔らかい手の動き
力任せのガシガシとは違って気持ちいいなあなんて思ってしまう
人に拭いてもらうだけでこんなに心地よいものなのか、ちょっと驚きだ

――はい、バンザイですよ～♪ばんざ～い♪

クリークの膝にのっかるような体勢
タオルで綺麗に拭かれ、両手をうえにバンザイしてシャツを着て
スウェットの上下を着る

シャワーの音がやけに耳に響く
俺はクリークがお風呂に入ってる間にソファに転がり悶々とした気持ちを全面に出す
教え子とはいえクリークみたいな大人っぽい美少女がシャワー浴びてて
意識するなは無理じゃない？ 皆他人にそんな修行僧みたいなことを求めるんか？
無理にきまってんだろ！ 今すぐ風呂行って襲わない俺をむしろ褒めろよ！
バンバンとクッションを叩きつつ
しかしクリークは美人で
今日多分「そういう事」を求めたらクリークは応じるだろう

――パーパパパーパパパー(ﾃﾞﾃﾞﾃﾞﾃﾞﾝ)パパパパー(ﾃﾞﾃﾞﾃﾞﾃﾞﾝ)パパパパー(ﾃﾞﾃﾞﾃﾞﾃﾞﾝ)
――パッパパーパーパーパーパーパー(ﾃﾞﾃﾞﾃﾞﾃﾞ)パーパーパーパーパーパー
――パパパパー！！(ワアアアア)

始まりました闇のトレーナーDT杯
一番人気 リセイクソボケオー
二番人気はヤミノトレウマオー

俺の中で光のトレと闇のトレがデットヒートを行う
無理だってば
だってクリークは俺のこと好きだし、そういう行為を求めても受け入れるだろうし――法には触れてない社会的にも死なない、あれここでうまぴょいしない要素なくない？
最終直線で俺の中のヤミノトレウマオーがリセイカチカチオーをぶっちぎってる
しかし大外から一つの黒い影
チュウドクダメダヨオが大外一気を敢行
そうだ――ぴょいとかしてぴょいばっか考えてトレーナー業おろそかにするのはちがくない？
おれは――
俺は――正気に、戻った
きっとこの時俺は集中しすぎて瞳のハイライトが消え何かが割れた音を聞いたと思う

チュウドクダメダヨオが大外一気の逆転勝利
こうして悪しきヤミノトレウマオーに勝利して俺はなんとかクリークを襲ったりえっちな事を求めるのを我慢することを心に誓うのであった、完！！ 第7R完！！！

――トレーナーさんお待たせしました～♪

ほこほことした湯気をたてて上がってくるクリーク
可愛らしい厚手のピンクのパジャマ
でも前のボタンが開けてる。 なんか黒い下着が見えてる
クリークさん！？ 前、前空いてる！

――あの、お、私汗っかきで……お風呂上がりはこう前あけてましてえ……
――もうちょっとだけ、いいでしょうか？

俺の頭の中に審議ランプがピカピカと光ってる

――あ、下着ですか？ 普段は白とかなんですけど
――くの一のあれにはこっちの方が合いそうかなって……トレーナーさんはお好きな色とかありますか？

あの
あの！クリークさん！？
俺がちょっと大きな声をあげることに「？」という顔をするクリーク
あのですね！その格好で俺をだっこするのはですね！ なんかダメだとおもうんです！

――あらあら、あらあらまあまあ♪トレーナーさんも男の子ですものね♡
――でもダメですよ？ トレーナーさんはトレーナーちゃんになってわたしに甘やかされるんです♡

いやそうじゃなくて、前！せめて前のボタンとめて！？
そうでなくてもお風呂上がりのクリークのいい匂いでね？さっきのDT杯にね！審議がですね！？

――？？？

まあ当然闇のトレーナーDT杯なんてクリークにはわかるわけもなく
ねえクリークこんな強気じゃないでしょ？ ねえクリークママ僕今日は健全に添い寝がいいな

ヤミノトレウマオーの先頭はここで終わり！
サムシングビッグ内から出てくるか！？
ドウテイヤジュウオはじっくり溜めて先の展開をうかがう！
リセイクソボケオーバタついてきた！
バブバブメモリーは馬群でもがいてる！

――トレーナーさんは、白と黒、どっちがいいですか？

……逃げられん
黒です、黒の上品なレース系です……
俺の絞り出すような回答にクリークは「まあ♪」と嬉しそうに両手を合わせる

――まあまあまあまあ♪じゃあボタンは留めませんね♪

やめてよお、俺の理性が予後不良になっちゃうよお
勿論やめては貰えない。クリークは俺をむぎゅむぎゅと抱き寄せる
シャンプーの匂いとクリーク自身の甘い匂いとクリークの下着の感触に正直脳がバグる
俺は抵抗も忘れ、クリークのハグに蕩けていると

――ふふふ♪ トレーナーさんとろってしちゃいました――ベッドでねんねしましょうか♡

ふわりと抱っこされながら俺はベッドに運ばれる
いっぱい、あまえてくださいね――♡

クリークのπってライブとかだと逆サバですよねもっと大きくすべき揺れるべき
QKします

俺が布団に入る前に、パジャマ姿のクリークがいそいそと嬉しそうに布団に入る
そしてクリークが布団をめくり「おいでおいで」というように布団をぽんぽんと叩いてる
添い寝にしたってまあちょっとためらいがあるのはしょうがない
クリークはパジャマの上部分だけはボタンが止まらずに空けてて黒い上品そうな下着が覗いてるし谷間も見えてる
そこにひゃっほーと入れるのはかの大怪盗ぐらいだ、あとそういう商売のお店
俺はそれでもクリークが待つ布団の中へ
布団に完全に入ると、クリークが早速ぎゅーって抱きしめてくれる
シャンプーのいい匂いと、クリークの甘いミルクみたいな匂い
それが脳を蕩かせそれなのに幸せという気持ちだけハッキリ頭を叩いてくる
もっと欲しい、やわかい肉の感触も抱擁も暖かさも全部欲しい
俺は自然にクリークを求めるように抱きついてしまう

――気持ちいいですか？ トレーナーさん

こくこくと頷きつつ、俺は幸せ……と呟く
クリークは満足そうに微笑みながら俺の頭におでこをくっつける

暖かい 柔らかい 気持ちいい いい匂い
幸せの要素全部をクリークの抱擁で味わい、俺は本当に赤ん坊みたいに何もできなくなる
クリーク、クリークと呼ぶと、クリークが微笑んで

――はい。 わたしはここに居ますよ♪

と穏やかに微笑んでくれる。それだけで安心して、しかし俺は何度もクリークの名を呼び
そして優しく返事をされるとやはり安心に目を閉じる
何度もクリークを呼び、繰り返す行為そのものが幸せのように

――トレーナーさん
――私、ずっとずっと考えたんです
――赤ちゃんも子供も、難しいことはなーんも考えなくて良い
――だからトレーナーさんも何も考えなくていい
――でもトレーナーさんは凄くつらそうで、苦しそうで


うまく出来なかったのはクリークのせいじゃない
俺はそう言いたくて顔をあげ――しかしクリークは俺の唇に指を当てた

――だから、私がいっぱいおねだりしちゃいます
――例えば……ママ♡って呼んでください
――わたし――トレーナーさんにママって呼ばれたいんです♪

クリークは俺に優しくおねだりをするみたいな声色で囁きかける
俺はクリークに望まれるまま、口を開いた
ママ……クリークママ……ママ……♡
口に出てしまえば、石が転げ落ちるように
俺は今まで以上にクリークに積極的に、ぎゅうっと抱きついてしまう
身体をくっつけ、クリークの胸の谷間に顔を埋めるように
一番温かくて柔らかくていい匂いのするクリークの母性に
頬をつけ、ママと言いながら甘えるように何度もクリークを呼ぶ

――ふふふ、ママにいっぱい甘えてくださいね
――トレーナーさん、もっと脚もママに、ぎゅーって抱きついて下さい
――ね？ トレーナーちゃん♪ もっともーっと、腕も足もぎゅーってしてください

クリークに言われるままに、俺は脚を開きクリークの脚に絡める
クリークは身を寄せて、脚が絡みやすいように俺にくっついて
まるで赤ん坊がだきつくみたいに脚も腕もぎゅっと、いわゆる大好きホールドみたいな格好でぎゅっとクリークに抱きつく。腰の当たりにクリークの太腿が当たるがむしろクリークはその太腿をぎゅっと押し付けるみたいにくっつけてくる
俺の後頭部を優しく撫でるクリーク――その慈母のような表情もほのかに朱が混じってるようにも見える

――よくできましたトレーナーちゃん♪いい子、いい子♪
――トレーナーちゃんはクリークママの言うことを聞けるとてもいい子ですよ♪
――ご褒美に、ママがいっぱいちゅーってしてあげます

額に、頬に、肩にも、首にも
赤ん坊にするには少々情熱的なキスをクリークは何度も落とす
ついばむような優しく、愛情をおとしこむようなキス
クリークは優しく笑いながら俺の頬をなでつつ

――トレーナーちゃんも、ママにいーっぱいキスしてくださいね♪
――トレーナーちゃんがみえるとこに……ママすき、すきって♪

頭が全然うまく働かない。 でも幸せすぎてとろけちゃって
俺はもうクリークの言葉しか聞こえない、クリークしか見えない
クリーク……ママ、好き、すき、ママすき――
そんな事をうわ言のように言いながら俺はクリークの胸元に、鎖骨のあたりに、頬に、俺を撫で抱く手首に、一生懸命キスを落とす

一度転げ落ちれば、それは羞恥心も考えることもなく
しかし、その底はどこまでも温かく、やわらかく、気持ちいい

――ねえトレーナーちゃん？
――ママに、トレーナーちゃんはどうしたいかされたいか教えてくれますか？
――いっぱいいっぱいキスしたいとか、ママのおっぱいにもっと埋もれたいとか
――それとももっともっとぎゅってしたいとか
――ぜんぶ教えて下さい、トレーナーさん♡

クリークは慈母のようで しかし、どこか妖艶で、ゾクゾクとした満足そうな、嬉しそうな表情をしている
でも、それがクリークは喜んでくれていると思えて――それが俺には凄く心地良い
甘えて良い。したいようにしていい―― そう思うと、自分からいっぱい求めたくなる
もっともっとクリークに溺れたいと思ってしまう

――クリークにこれ以上なく依存して甘えて全部全部クリークに捧げてしまいたくなる

クリークに、いっぱい、いっぱい好きって言われたい
好きって言われながらいっぱいぎゅってして
クリークが俺をいっぱい愛してるって、全部感じたい

俺にはもう尊厳もプライドも羞恥心もない
クリークに促されるまま甘えて、それでクリークがゾクゾクと興奮してる
その慈母に混じる妖艶さが俺をとろかし興奮させ、そして喜んでいるクリークをみて嬉しく、それが正しいことなんだと思ってしまう
クリークすき、ママすき、ママ、ママ――

クリークは、ああ、ああ……トレーナーさん……♡と自分の頬に両手をあて少し身震いしていた
母親が喜ぶような母性もありながら、しかし一人の女性として悦びに震えるような
――愛する男性の身も心も自分のものになったという至福感と恍惚感にみちた表情

――好きです、トレーナーちゃん大好きですよ
――トレーナーさんも、弟のトレーナーくんも、あかちゃんのトレーナーちゃんも全部好きです
――愛してます、だからもっともっと、もっと甘えてくださいね
――ふふっ♡ うふふふ……っ♡ ママですよ～、トレーナーちゃん♡

だめ、もっと――もっと言って、好きって、愛してるって
俺の我儘なおねだりに、クリークはちょっと目を見開き悦びに震える
クリークに甘えクリークの愛情をどこまでも求める事にゾクゾクと震えつつ、クリークは俺の腰にかかるぐらい脚をからめ抱きつき、腕もぎゅっと腰に回す

――はい♡愛してます、トレーナーちゃん愛してますよ
――好き、好きトレーナーちゃん……♡愛してる、愛してます――♡

クリークはこれ以上なく俺を優しく、甘やかす征服者として
俺はどこまでもクリークに甘える赤ん坊、弟として
どこまでもどこまでも転げ堕ちていく
俺は身体を、腰をクリークの全身にこすりつけてクリークの慈母のような愛情もそのクリークの豊満な肢体も貪ろうとする。
クリークはそれを受け入れ、俺の心も全部自分のものにするように太腿をこすりつけ、わざと俺の頬にその豊満な谷間を押し当て、こすりつける

――ふふ、トレーナーちゃん♡ じゃあいーっぱい
――一番気持ちいいキスもしましょうね♡

俺達は身体を絡ませ合い、夢中で熱い情熱的なキスをかわす
クリークのキスは強引ではないのに全身すらも蕩けそうで
脳がとろけ落ちて出ていってしまいそう
俺の頭を両手で抱いて深く深く長いキスをして

――んん、うふふ♡ トレーナーさん、食べちゃいました♡

ぺろりと唇を舐めるクリークはとても妖艶でいやらしくて
すっかり理性も羞恥心も考える力も無くなった俺は夢中で、ママ、もっと、ママ
とクリークにおねだりをしてしまう

クリークはうっとりと幸せそうに目を閉じながらぎゅうっと俺を包むように抱き
また俺の唇を奪う、舌をこすり合わせるような快楽を求めるキス
はしたなくいやらしいそれをクリークが俺に求めて俺を捕食するように
快楽で俺を狂わせるようにキスをやめない

互いに抱き合ってずっと、長い間キスをし、口を離し、そしてまたそれを繰り返す
ずっとずっと、互いを貪るようにそれは続いて

――
……
やっちゃったー……クリークとあんなことこんな事しちゃったよお……
まだ明け方まえ
とは言えずっと抱き合いクリークとあんな事こんな事をずっとして
俺はママにずっと甘えて――ああはしたない
俺はついに欲望に負け、クリークの母性とその魔性の魅力に敗北した


――あのお――レース出走はしてないですよね？

そうだけどあんなの絶対同罪だって
絶対詳細お出ししたら俺は絶対的な世界意思に存在を消されるような事してるって
確かに説明だけしたら互いに抱き合ってキスだけど！
でもあんなのずっとずっとしてたんだよ？

――確かにすっごく気持ちよくてし幸せでしたね♡
――うふふ、明日もお休みですしもっとしましょうか♡
――……ね？ トレーナーさん♡」

俺はクリークに抱きつかれぎゅっと包まれる
クリークは俺の耳にいっぱい、好き、好き、愛してると繰り返し
そして俺の理性をどろどろに溶かして捕食するようにまた身体をこすりつけ合う

表現的にはセーフだと思います！
寝ます

>>1です

いつも読んで頂きありがとうございます

基本直接的なR18にはなりません(明確なウマ娘ガイドライン違反)

表現的にはここらの単語と表現が限界だと思います

赤ちゃんプレイそのものが限界？ それはそう

作者は小説書きでも普段から渋笛にあげてる趣味人でもありません

精々たまになんとなくあにまんや匿名掲示板にさらっと書く程度です

なので拙い部分矛盾誤字脱字はありますがどうかご容赦ください

これらはその場その場で書いてるのでどうしても矛盾やご都合主義はうまれます

元々は1Rめの20か30ぐらいでよくある闇のトレーナー(笑)のネタスレの予定でした

そもそもSSとして並べるつもりもありませんでした

何も考えておりませんので話の整合性や合理性に疑問があってもそうだねプロテインだねでご容赦ください

そのような作品でよろしければ今後ともよろしくお願いします

たくさんのコメント、♡本当に励みになります

多くのコメント、♡のおかげでここまでかき続けてこれました

乙でした
これそういうプレイと同時に闇トレの幼少期の補完でもあるんだよね…

むしろこれだけ欠落だらけトラウマだらけ闇だらけなのになんでこんな真人間なの闇トレ