「灯油代を送ってくれませんか」…突然届いた父からのLINE
「最初、冗談かと思ったんです。でも、LINEを読み直して、背筋がゾッとしました」
そう語るのは、東京都内で働く会社員の村上明美さん(仮名・42歳)。ある日届いた実家の父からのLINEには、こう書かれていました。
「灯油代を送ってくれませんか。朝も夜も寒くて、ストーブがつけられません」
父・浩一さん(仮名・76歳)は、東北地方の小都市で一人暮らしをしている元地方公務員。定年後も慎ましく生活を続け、月18万円の年金で「それなりにやっている」と言っていたはずでした。
「まさか灯油代に困っているなんて、思ってもいなかった。実家は田舎で物価も安いし、退職金もそれなりにあったはずだと、勝手に思い込んでいたんです」
LINEのあと、すぐに電話をかけた明美さん。受話器の向こうから聞こえたのは、いつものように飄々とした父の声でしたが、その内容は深刻でした。
「去年まではなんとか灯油を買えていた。でも、今年は貯金を取り崩すしかない。年金だけじゃ足りないよ」
年末に帰省した際、明美さんが見た実家の光景は、思っていた以上に厳しいものでした。冷蔵庫には水と少しの味噌、そして冷凍庫には割引品の冷凍野菜が少し。ストーブは消されたままで、部屋の中は肌寒く、父は分厚いセーターと毛布を重ねて凌いでいたのです。
「灯油が高いから、なるべく使わないようにしている。最近は1缶2,000円近くするからね」
父の言葉に、明美さんは何も言えませんでした。
東北地方など寒冷地では、冬季だけで10万円を超える暖房費が発生するケースもあり、年金だけでは賄いきれない状況です。とくに一人暮らしの高齢男性は、生活コストの管理や助けを求めることに慣れていない場合もあり、問題が表面化しづらい傾向にあります。
