あのひとを追う僕は

夕暮れの涼しい風みたいに、静かでやさしい時間が流れる短編でした。
「追いかける／呼び止められる」という二人の関係が、場面をまたいで少しずつ重なっていく過程が丁寧で、読んでいるこちらまで胸がそわそわする。

そして反則級の一文――

「煙は消えるけれど、その匂いはしばらく留まっている」

気持ちの余韻をはっきり感情に出さずに、線香の残り香に例えるのが良いですね。青春の“かゆいところ”をきゅっとかいてくれます。

丁寧な描写で青春の繊細な心情を表現しており、読者が共感しやすい作品です。主人公の内面と過ぎ去った時間の対比が効果的で、淡い切なさをまとったストーリー展開が魅力的です。文章も自然で読みやすく、感情の機微を繊細に捉えています。

青春の思い出とは甘く切なく儚い物・・・色んな思いだけを残して過ぎ去って行く・・・・・・

読了したので書きます。

追いかけていた。その文言で始まる本作の描写は一度は経験があるかもしれません。

胸にあった感情は最初から恋慕だったのかは分からないことです。

時間は当人に関係なく進んでいってしまう。いつか対等にと思っても待ってくれるほど慈悲深くはない。

伝えることは難しい。それまでの全てをガラリと変えることになるのだから当然でしょう。

かつてあったかもしれない人生の区切り。それを短い文字数で見事に書き終えた本作。

是非とも一読していただきたいです！

夏を意識させる「蚊取り線香」は、幼い頃からの純粋な愛を弔う「線香」だったのでしょう。

頻繁にSNSで繋がりを求めていた割には、夏実さんの結婚に気付けなかったのは、年上の女性のあしらいが上手かったのか？
それとも不都合な事実から目を背けたかったからでしょうか。

短い文章に、一途な想いを綺麗に収めて弔い切った切なさをまとった作品です。

読了後、しばらく余韻で動けなくなりました。あまりにもリアルで、あまりにも切ない。

この作品は、ただの初恋の物語ではなく、追いかけることしかできなかった少年の成長と、追いついたはずの瞬間に突きつけられる現実の残酷さを、淡々とした筆致で描き切っています。

この作品は、ただ「好き」と言うことの難しさを描いているのではなく、
言えなかった想いが、言えなかったままに終わるからこそ、こんなにも胸を締めつけます。

これほどまでに美しく、切なく、余韻の残る作品に出会えたことに感謝します！

次回作も期待しています！

やっぱり小説は情緒でしょう。

きっとこのお話は、たくさんの人が経験している切ないお話。

胸が少し苦しくなる、そんな切ないお話です。

切ない……なんだけど甘い、けど胃が痛い。
どっかで似たような経験があったかのように心苦しくもなり、けれどこれがまた良い。
夏蜜柑食べてるみたいでした！

ご馳走様でした♪