概要
これは、表現することができないであろう
ある脇役(モブ)侍女の日々の記録。
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物語の世界には、主役と脇役がいる。
現実世界でもそうだろう。
ほんの少しだけ魔力が使える侍女ノエルは、そんな脇役の特性を活かし、王宮のありとあらゆるネタを参考にして書き始めた物語が一躍ご令嬢たちの間で話題となっていることを知る。
昼間はシルヴィアーナ姫の侍女として働き、夜はペンを握る。
新月の夜にだけ現れる男、ロジオンの力を借りながら、ノエルは『レディ・カモミール』として物語の世界を紡いでいく。
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※ レディ・カモミールの作品については『16話目』にあります。
※ ネタバ
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!恋を記す者は、物語の脇で
物語には、主役と脇役がいる。
王宮の侍女・ノエルは、自らを後者だと知っていた。
だからこそ、脇役なりに生きようと決めた。
描かれない物語を紡ぐ書き手――レディ・カモミールとして。
日々書き綴るのは、誰も知らない王宮の裏側。
光に包まれた王子たちの奔放な日常。
鳥籠の姫と呼ばれる少女の沈黙。
そして、美しき魔術師の完璧な微笑み。
誰かの恋に翻弄されながらも、
自分がその舞台に立つことは決してない。
けれど一瞬、王子の指先が自分に触れたとき――
ノエルは悟る。
記録者に過ぎない自分の心も、確かに震えていると。
これは、物語に愛された脇役が、
誰にも知られず、ただ真実を記し続ける恋の断章。 - ★★★ Excellent!!!「モブ」の物書き様へ。夢と希望は、ここにあります。
当初軽い気持ちで読み始めて、実際サクサクと進んでいくストーリーだったのですが、
読み手に感情移入させるのが、とても巧みな作家様です。
主人公・ノエルが、影では人気作家、けれど表では自らを「モブ」以外の何者でもないと、自分に対して狭量になっていることにも、(レビュアーである私自身は、ノエルのような人気作家ではありませんが)親近感を覚えます。
単純に卑屈なキャラが自信を得ていくというサクセスストーリー(そして、まさかの伏線回収!)に収まらず、
人と人との接点や思い、そしてストーリーというもの自体が成すことのできる力。
これはもちろん、皆様の作品の中にも、その萌芽が宿っているのです。
この…続きを読む - ★★★ Excellent!!!Good!!!
文学作品における語りの視点の選択は、作品の全体的な構造と読者の受け止め方に大きな影響を与える重要な要素です。一般的には、主人公を中心とした一人称視点や全知全能の作者視点が好まれます。これは読者が主人公に直接感情移入しやすくなり、作品への没入度を高める効果があります。
しかし、文学的な実験性と新しい物語技法の探求という観点から、脇役や観察者の視点を通じて物語を展開する方法が注目されています。このアプローチは、主人公に対する客観的な視点を提供し、多層的な解釈の可能性を開くことで作品に深みを与えます。
この小説は、後者の語りの戦略を重点的に活用している作品だと思います。
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