月色の瞳の乙女

　四神に慈しまれてきた大陸・アンスルでは近年、争いが絶え間なく起こり、度重なる災害に人々はあえいでいた。
　不穏な動きをするカタピエ公国の闇に現れたのは月色の瞳を持つ騎士。真の正体は、教区に身を寄せる幼い記憶を失くした乙女。彼女は幼馴染みと共に、アンスルのため、神のため、四神の珠を探す旅へと出る。


　世界の運命もさることながら、両片想いの幼馴染みとか、ね、いやはや始終じだもだしながら読んでいたのですが、あまりにも踏ん切りがつかないので最後にはクルサートル（ヒーロー）を叱るような心地になりました。
　しかし、焦れにじれたクルサートルのたがが外れてからは甘々なので、ぜひそこも楽しんでいただき…続きを読む

主人公のセレンのかっこよさに惚れました。
自分が正しいと思うことを信じて行動する、その芯の強さは本当に立派です。
彼女を取り巻く多彩なキャラクター達も魅力的でした。

緻密な語り口による物語は重厚です。セレンが大陸を駆け回る中で展開するストーリーは、ハラハラあり、ビックリありで見どころ満載。
始終、セレンを応援せずにはいられませんでした。

　緻密な世界観と深いテーマ性が際立つ壮大なハイ・ファンタジー冒険譚。主人公セレンが四神の珠を巡る試練に挑み、大陸全土を救う使命を果たしていく中で、読者は幻想的な世界に引き込まれます。

　主人公セレンは、自分自身への迷いや使命感に葛藤しながらも成長していく少女。彼女を支える幼馴染のクルサートルは冷静沈着で知略に長けた参謀役。彼はセレンへの深い愛情を心に秘めており、二人のロマンス要素も読者を惹きつけます。一方謎めいた青年メリーノは軽妙な振る舞いの裏に影を抱え、その行動が物語に深みと緊張感を与えています。

　物語の舞台となるアンスル大陸は、水・火・風・地の四神によって守護される広大な土地。それ…続きを読む

人々は、争い合う。まるでその怒りを体現するかのように、天災が襲う。
神を信じていると口で言いながら、真実それを信じている人が、一体どれほどいるのだろう。
そんな中、真っ直ぐに神を信じる少女が、ひとりいた。
これは少女と、彼女を取り巻く人々の、愛と信仰の物語――。

人間というのは、美しい面ばかりあるわけではなく、時には目を背けたくなるようなことも孕んでいる。それは醜い部分であったり、弱い部分であったり、様々だ。
けれど、それもまた人間であるというのは事実。そしてその「人間」というものを、この作品は見事に謳いあげているように思えてならない。
彼女の信じた神の愛の果ては。
神とは心の内にありて、…続きを読む

人々はあらそい、天変地異は襲う。
神はお怒りである。
無辜の民はとばっちりです、神よ。

心を痛める少女がいます。セレンです。
本当には心を痛めていないだろって青年がいます。クルサートルです。
腐敗した宗教組織の要職で、一応頑張っているみたい。
いくじなしですけれど。
なんとなれば、セレンと幼馴染で惚れているくせに
なんやかや理屈をつけて煮え切らない態度をつづけているからですよ。
けつを蹴り上げてやりたくなります。
さあ、シューズを履いて、準備はいいか？　では読みはじめよ。

　四方を海に囲まれた大陸アンスルの覇権を握らんと、強国カタピエのメリーノ公は、その武を用い他の公国公女を娶り、さらなる権力を求めんとしていた。
　しかし。その娶った公女たちがカタピエからいなくなるという事件が続く。それは「月色の瞳を持つ乙女」の仕業であることがわかる。
　彼女の名はセレン。神を信じる彼女は、果たしてメリーノ公の野望を阻止できるのか──。

　信じる心とそして愛、それらを余すことなく描いた傑作です！



　と、あらすじはこんな感じなのですが、ここでご紹介できないほどに深い物語です。
　敵役のメリーノの魅力もさることながら、セレンの味方である幼馴染のクルサートル、親友のフィロや…続きを読む

世界は危機に瀕していた。

絶えぬ戦と天変地異。
疲弊した人々の心の拠り所となる教会さえ腐敗するなか、大陸全土の支配を目論む領主の魔の手を阻もうと、一人の乙女が立ち上がった。

いかなる窮地に陥ろうとも、乙女は果敢に戦い続ける。
一途に神の愛を信じて。

　　　　　　＊

──という感じの西洋風シリアスファンタジーです。

大陸に伝わる神話や四神の力を秘めた珠なんて、読者の中二心を大いにくすぐることでしょう。

そ・れ・に、乙女セレンと幼なじみでもある教会総帥直属秘書官クルサートルのじれじれする関係や、セレンに一目惚れした公国領主メリーノの変貌ぶりに、ときめいちゃうかもしれません。

特に私…続きを読む

　大国が覇権を求め、自然災害がうち続くアンスル大陸。
　その世界を救うべく、古くから伝わる教えを手がかりに、自分自身もその素性を知らない「月色の瞳の乙女」が冒険へと旅立つ。
　どこから見ても、王道を行く西洋風ファンタジーです。

　その一人の乙女に対して、世間的には聖界・俗界の超エリートの地位にあるはずの男どもが…もう、何と言うか、「男ってこんなのだからかわいいよね」と言うか…という行いを繰り広げ…。
　その昔、といってもそれほど昔ではない昔、「セカイ系」ということばがあって、それは「個人的な幸不幸と世界の危機が無媒介に結びつけられているような作品」を意味していました。「いまどきの若いやつら…続きを読む

　つくりこまれた世界観と人間味あふれるキャラクターが魅力的なシリアス恋愛ファンタジー。
　ヒロインのセレンをはじめとした女性陣が非常にカッコいい本作ですが、反比例するように『がんばれ男子！』と、うっかり青春恋愛もののキャラに対するような気持ちになったりもします。
　いや、相手は教会総帥の直属秘書官だったり、大陸中央にあるカタピエの領主だったり、まあ立派な大人の男性たちなんですけどね。
　ちょっとー！　おまえらしっかりせんかーい！　とね。いいたくなっちゃうんですよ、この人たち。それがまた魅力的だったりするんですけども。

　物語の鍵は、いまや伝説となっている四神の珠。
　本人もその素性を知らな…続きを読む

女性の現地主人公セレンが奔走するシリアスファンタジー。
派手な強さは持っていませんが、機転と強い意志で目的に向かって突き進みます。
丁寧に描写される文物が物語に彩を添え、読書をしているという満足感を与えてくれます。

公務では手堅い手腕を見せるが、プライベートでは堅物で不器用な面もある幼馴染のクルサートルとの関係がどうなるのかも気になるところ。
神の残した秘宝を巡って対立するメリーノもセレンには特別な関心を寄せてきて……。

果たして秘宝をすべてそろえることが出来るのか？
それによって世界を安定に導けるのか？
結末が気になります。