生と死、夢と現実、愛と暴力、個と集合、ありとあらゆる境界線を最初は美しく、しかし徐々に不穏に曖昧にしながら物語は進んでいきます。叔母と私の関係は血縁や倫理を超えて、魂を共有する情報的存在として存在、と、いま書きながら思いました。目眩がしそうです。物語は進んでいきます。不穏に。退屈、白々しさ、古さ、といった削除されないノイズは魂を共有する情報的存在の中に残存する、人間性の最後の残り滓的な何かとして機能していて、それを恐ろしくも愛おしく思う自分も確かにここにいました。難解、不穏、醜悪、けれど、愛に溢れる不思議な物語。やはり目眩がしそうです。
この物語は、明快な答えを与えるのではなく、読者自身に多くの問いを投げかけます。読み手は、「私」や叔母の存在、そして彼らの関係性について、様々な解釈を巡らせながら物語の世界に没入できるでしょう。静謐な文体の中に潜む、美しくも残酷な愛の物語。心に深く残り、何度も読み返したくなる作品でした。
複数の映像作家や映画監督に、映像作品を作らせたなら、同じ原作とは思えないような異なった世界観の作品が出来上がるはず。そんな幅広い様々な捉え方ができる、傑作ですね。それを集めた同一作品3編のオムニバス映画が見たい気分。
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