概要
青年会の一員であるスズ(硯徳)の妹愛は度を越していて、25歳になっても恋人がいません。そんなスズも婚活パーティーに参加者として加わっていましたが、そのパーティーで一人の女性に惹かれます。そしてその女性と意気投合する中、妹の鋭い視線が突き刺さってくるのでした…。
一方猿上町ではここ数年、連続放火事件が相次いで起き、犯人は捕まらないままに町民を不安にさせています。一体、犯人は誰なのか?物語はそんなミステリー要素も含みながら進み、やがて町民たちは町の存続に関わる大きな陰謀に巻き込まれていくのでした───。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!読み進める程に面白くなってゆく、まるで『スルメ』のような作品。
シャッター街化が進む猿上町の『リバーウエスト商店街』を活性化させるために、若い世代が青年会を組織し、婚活パーティーを企画します。 ここまで読んだあなたはきっと、この作品を現代ドラマのラブコメ作品かな……と思うかもしれません。僕も最初そう思いました。しかし、読み進めていくうちにそれが大きな間違いだった事に気付きます。
この作品のジャンルはラブコメではなく『現代ファンタジー』なのです。読み進めていくうちに不思議な出来事や謎が次々と出てきて、ミステリー要素やファンタジー要素も相まってどんどん面白くなっていきます。
三十万文字を超える大作ですが、ちゃんと完結しているので最後まで読めます。是非読んでみ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!風が導く運命の恋
古き良き町・猿上町を舞台にしたファンタジー群像劇です。婚活パーティーから始まる物語は、スズ(硯徳)とその妹・杏夏、商店街の仲間たちが織りなす日常のやりとりを通じて、町の温もりを描きながら、次第に不穏な影を帯びていきます。
本作の魅力は、伝承がただの昔話ではなく、登場人物の運命を大きく左右するルールとして機能している点にあります。「猿上町の風になる」「鬼になる」——この町に根付く伝説は、町の歴史そのものであり、スズや秋穂、杏夏たちの人生に深く関わっていきます。伝承が物語の舞台装置にとどまらず、登場人物たちがどうそれを受け入れ、あるいは抗うのかが、物語の鍵となってきます。
本作は町その…続きを読む - ★★★ Excellent!!!想像を絶するラストが待ち受ける新感覚エンタメ巨編
ほのぼのとした婚活パーティーから始まる本作の序盤は、恋の駆け引きやカップリングを描いたロマンス系群像劇の様相です。しかし読者は間もなく、きな臭い背景や不穏な事件に触れ、印象を改めるでしょう。
物語には巧妙な仕掛けが散りばめられ、登場人物の大半が抗い難い運命に引き摺られて、予期しない結末へと導かれます。
「鬼に引かれて死んだ者は鬼になるという言い伝えもある」(第一章三話より)
舞台は、とある地方都市。当初は因習村の亜種のようにも思えましたが、リアティたっぷりで、衰退する商店街など社会問題とリンクし、隣り合わせの犬猿の町について活写した部分は、ルポルタージュさながらの迫力と説得力があります…続きを読む - ★★★ Excellent!!!1章時点で期待感があり過ぎる現代ファンタジー
作品の舞台はシャッター街化しつつある商店街で、その活性化のために企画された婚活パーティから物語は始まります。
このレビューは1章を拝読した時点のものとなります。1章では婚活パーティに関係する人物による骨太な人間ドラマが見ものであり、その空気感は古き良き時代を存分に感じさせるものでした。
1章の終盤に婚活パーティの指南役として、輝冥(コウメイ先生)が登場するのですが、これによって空気が一変します。主人公たちの心の隙間に入り込み、場をかき乱すトリックスター的存在に見えて、ワクワクが止まりませんでした。
ここまでの雰囲気は完全に現代ドラマなのですが、ジャンルは現代ファンタジーです。夏目漱石の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!風が運ぶ物語の欠片、心をつなぐ青春群像劇
大杉巨樹様の作品『ロールプレイング・ラヴァー』を読み進めていると、どこか懐かしくも切ない風が心に吹き抜けていくような感覚に包まれました。硯徳の抱える静かな喪失感や、町の伝承が潜む不思議な空気感。そのすべてが、忘れかけていた記憶をそっと呼び覚ますようです。
田舎町に漂う停滞と、少しずつ広がる希望の芽吹き。妹の杏夏が少しずつ立ち直る姿には、日常の中で紡がれる優しい物語の温もりがありました。謎めいた輝冥の登場が、まるで人生という物語に新たな幕を開ける導入のようで、不思議と胸が高鳴ります。
人々が互いに支え合い、ゆっくりと未来を切り拓いていく様子に、読む者としても「一緒に歩いている」感覚が芽生え…続きを読む