概要
人間の欲望と煩悩を抱え堕ちた存在である御神木に村人はあるものを捧げ、その狂気たる欲望を長きにわたり封じ込んできた。御神木から授かる御霊験(ごれいげん)の代わりに授けた者の左眼に宿らせる秘密。押し寄せる恐怖と胸打つ感情の渦に飲み込まれていく。その先に待ち構える運命とは……
【登場人物】
・楠珠鈴(くすのき・みれい):主人公。聖隷樹恵病院の部長。心療内科医。慢性骨髄性白血病(CML)を患う。先天性の樹霊眼をもつオッドアイ。
・榊鈴央(さかき・れお):主人公の夫。聖隷樹恵病院の副部長。循環器内科医。慢性骨髄性白血病(CML)を
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!医学ホラーの新境地!呪われた村の血と願いを描く傑作
現代医療と古代の呪術が交錯する、一風変わったホラー作品。医師である主人公夫婦の日常に潜む不穏さから始まり、徐々に明かされる村の禁忌と血にまつわる秘密に引き込まれる。
特筆すべきは、リアルな医学描写と超自然的要素の絶妙なバランス。慢性骨髄性白血病という実在の疾患を軸に展開される物語は、科学と迷信の境界線を曖昧にし、独特の不気味さを演出している。
複数の時代と視点を織り交ぜた構成も秀逸で、断片的に明かされる真実が徐々に一つの大きな恐怖へと収束していく過程は圧巻。大人向けの重厚なホラーを求める読者には強く勧められる。
血と願い、そして代償をテーマにした、読み応えのある本格派ホラー小説。 - ★★★ Excellent!!!ページを閉じても心がざわめく一冊
読み終わった後しばらく放心しました……。こんな体験させてくれる作品、そうそうないと思います!
最初は、雰囲気のあるホラーかな? って軽い気持ちで手を伸ばしたんですが、気づけばページをめくる手が止まらなくて!
怖さだけじゃなく、人間模様や情感がしっかり織り込まれているから、ただの怪談に収まらない奥深さがあるんです。
とにかく描写が鮮烈で!
静けさの中で鳴る音や、ふとした匂い、誰かの視線……五感を侵食してくるような描き方に何度も鳥肌が立ちました。
そして人物たちがとにかく生々しい。
弱さも葛藤も含めて、こういう人、いるよねと思わせるリアルさがあるから、彼らの選択や感情に共感してしまうん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!血と緑の調べに酔いしれて
この作品を読み終えて、まず感じたのは作者の圧倒的な構築力への敬服です。
古代から現代へと時を紡ぐ壮大な物語の設計図に、思わず息を呑みました。
特に心を打たれたのは、御神木という存在の描き方です。
単純な恐怖の対象ではなく、長い年月を経て変貌を遂げた複雑な存在として描かれている点に深い共感を覚えます。
人間の行いが自然に与える影響を、これほど詩的に表現した作品は珍しいのではないでしょうか。
登場人物たちの描写も実に丁寧で、特に現代パートの若者たちの心情描写には胸を締め付けられました。
YouTuberという現代的な職業の人物を配置したことで、古典的な怪談に新しい息吹を吹き込んでいる点も見事…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これぞ怪木小説!
江戸時代、炎に包まれる御神木から物語は始まる。
がらりと変わって現代。「行ってはいけない」とされる禁忌の山に、冷やかしに足を踏み入れる若者たち。
ご想像の通り、若い男女4人の行く先は壮絶な道を辿ることとなる————
しかし、ただの王道や植物パニックホラーにとどまらないのが本作の魅力。
彼岸花に囲われた、夫婦の部屋。
紅い左眼を合わせ、妖艶に交わる女たち。
画面越しの、美醜の悲劇。
徐々に明かされる真実……
愛と嫉妬、欲望と狂気が、蔦のように絡みつく。
そんな恐ろしくも艶かしい、人と御神木のドラマが、作者様の圧倒的な文章力によって描かれる————唯一無二の「怪木小説」。
どうで…続きを読む