概要
——今宵、あなたも妖と酒を酌み交わしませんか?
妖の声なんて、誰にでも聞こえるものじゃないの。
宮殿を逃げ出した元王女・蘅音(こういん)は、妖の願いを「酒」で酌む、不思議な力を持っていた。
恨み、約束、祈り、さみしさ——百の妖に、百の味がある。
酒は飲めない。けれど、酒を造ることが、彼女にとっての「祈り」だった。
目指すは、百妖百酒の帳をたずさえ、旅の果てに開く「願いの酒館」。
だがある日、彼女の前に一人の青年が現れる。
剣を振るう男。妖を討つ者。本来なら相容れないふたり。
それでも、彼は言う。
「お前の酒には、まだ知らない味がある気がしてな。」
妖を討つために育てられた青年と、妖の願いを聴く少女。
ふたりの旅路が交わるとき、世界は静かに、その裏側をほどき始める——
百の声を、香りに変えて。世界の片隅に灯る祈りをたどる、百妖百酒の幻想
宮殿を逃げ出した元王女・蘅音(こういん)は、妖の願いを「酒」で酌む、不思議な力を持っていた。
恨み、約束、祈り、さみしさ——百の妖に、百の味がある。
酒は飲めない。けれど、酒を造ることが、彼女にとっての「祈り」だった。
目指すは、百妖百酒の帳をたずさえ、旅の果てに開く「願いの酒館」。
だがある日、彼女の前に一人の青年が現れる。
剣を振るう男。妖を討つ者。本来なら相容れないふたり。
それでも、彼は言う。
「お前の酒には、まだ知らない味がある気がしてな。」
妖を討つために育てられた青年と、妖の願いを聴く少女。
ふたりの旅路が交わるとき、世界は静かに、その裏側をほどき始める——
百の声を、香りに変えて。世界の片隅に灯る祈りをたどる、百妖百酒の幻想
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- ★★★ Excellent!!!「聲」を抱きしめた少女と妖の、静かで強い逃避行
主人公・蘅音コウインは、人ならざる聲を聴くことができる少女。
その力ゆえに孤立しながらも、彼女の行動と想いが、封印された妖「讙カン」の心をほぐし、
やがて癒しの酒へと昇華されていく様が、丁寧かつ詩的に描かれます。
何より印象的だったのは、お酒が単なる嗜好品としてではなく、「願い」や「記憶」を媒介する神聖なものとして描かれていた点。
酒とは、誰かに飲ませたいと願った瞬間から、ただの液体ではなくなる——そんな信念が静かに物語全体に流れていました。
ファンタジーでありながら、言葉の選び方や文体には古典文学のような品格があります。
静かに、しかし深く心に響く上質なお酒のような一作です。