概要
夏の夜のちょっとライトなラブストーリーです。
ある夏の雨の夜、主人公の裕也は、かつての恋人、美紀のことを思い出しつつ、車を走らせています。そして、信号待ちで車を停めたとき、隣に見えたのは……。
蘇る苦い記憶。しかし、美紀から伸ばされた手を、裕也は握り返すのでしょうか。
約2400字で、ササっと読めると思いますから、移動時間やお昼休みにどうぞ!
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!あの夏の別れが、渋滞の夜に蘇る
雨が降りしきる渋滞の夜、静かに心に浮かぶのは、ふと胸に蘇る『あの人』の記憶。
水色の浴衣、夏の夜空に咲いた花火、そして「さよなら」の声さえ聞けなかった別れ。
その『あの人』が、偶然という名の奇跡で、もう一度現れる。
再会はほんの一瞬。
触れられそうで届かなかった手。
言葉にできなかった想い。
それでも、あの日の残光は確かにまだ胸に瞬いていた。
人は過去に別れを告げるとき、必ずしも涙を流すわけじゃない。
ただ静かに、「もう、いいんだ」と呟くこともある。
これは、心にしまった愛に、そっと蓋をする物語。
胸の奥で、消えゆく光にそっと触れた夜の記録。
『花火の残光』は、今もどこかで静かに瞬…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心の渋滞は解消されるのか
別れた彼女と偶然出逢った主人公の心情が濃密に描かれていて切なさが胸にしみた。
雨の中の花火大会、家路を急ぐ浴衣姿のカップルたち、おんぼろクラウンの横に並んだベンツ。助手席の窓から彼女が窓から手を伸ばす、あと10センチ、あと5センチ。これらの描写が巧みで、まるで動画を見ているように情景が浮かんでくる。
美しい花火と土砂降りの雨、これは過去と現在の主人公の心情を象徴的に対比しているようにも感じる。詩的なタイトルも秀逸だ。
渋滞からは抜け出したが、彼のこころの渋滞はこの先解消されるのか。余韻を残したまま、物語は終わっている。
優れた心理描写に定評のある作者渾身の新作ラブストーリー、おススメ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あと、ほんの数秒の違いがあれば、もっと違った未来が得られたかもしれない
この恋は、とってもビターな味わいでした。
それは、もしかしたら「チャンス」になっていたのかもしれない。
主人公は道路で信号待ちをする途中、隣に停車した車に「美紀」が乗っているのに気づく。彼女は三年間付き合った元恋人で、ある時に彼女の方から別れを告げられることになった。
運転席の男は現在の恋人なのか。そう思おうとするが、彼女は「違う」と示そうとしてくる。
では、どういう状況なのか。
せっかくの再会。「何か」が動き出したっていいのではないか、と思える。
けれど、その後の展開がまた切ない。
笑顔になれる未来もあったかもしれない。これまでのわだかまり全部が溶けることだってあっ…続きを読む