概要
彼らが願い縋れるものなど、もはやソレしか残されていなかったのである。
彼らの抱く怨恨が産み出した怪異とその猟奇的な事件。
これはその事犯に纏わる人物たちの物語とその後についての記録である。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!果てしない怨恨と惨劇――読者の心胆を寒からしめる異色の暗黒学園ホラー!
キーパーソンである中学生、瀬良凛と相沢雫。この二人が受けるいじめの描写が、まず壮絶です。
「親に打ち明ければいい」「警察に訴えればいい」「学校に行かなければいい」……そんな安直なアドバイス、口が裂けてもできません。
これはもう逃げることも立ち向かうこともできない、超常的な力に頼るしかないと、読者も思ってしまいます。
そしてとうとう惨劇の幕が上がる。作者様は微に入り細に穿ち、目を覆いたくなるような人体破壊の様子を描写します。
もっとも、この物語の本当に恐るべきところは、事件が起こって終わりでも、事件が解決して終わりでもないということ。
凄惨な事件のあとに待ち受けるさらに凄惨な展開に、何度息を呑…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人ならざる〝何か〟が、そこにいた
『カ・エ・シ・オ・ニ』は、今から四半世紀前の地方都市で起きた惨劇を軸に、現実と異界が交錯する恐怖を描いた怪異譚です。
作者、奈知ふたろ氏の筆は、静かに確実に読者の心を侵食していきます。
エピソード2の体育館でのあまりにも酷い光景は、まるで現場に立ち会っているかのような臨場感に総毛立つことでしょう。巨大な足跡、粘液質の体液……それらが示す明らかに人ならざる〝何か〟の存在。何故、こんな凄惨なことが……。
そして、この事件に関わるいじめの被害者、瀬良凛と相沢雫の行方は?
興味と好奇心を刺激し続ける展開から終始目が離せません。
何と言っても圧巻は、奈知ふたろ氏の卓越した超絶的描写力です。これで…続きを読む - ★★★ Excellent!!!怨念は消えることなく。疫禍のように際限なく、糜爛と悶死を広げてゆく……
いかに悪質なものであろうと、保護されるべき“子供”が踏みにじられていようと。
犯人もまた“子供”であれば、法と社会正義そのものがそれを庇う、社会の矛盾。
それを嘲笑するかのように重ねられる悪行が、ついに犠牲者をも憎悪と狂気に満たしたとき、その怨念は、自分たちを救い護ってくれなかった正義と秩序を一顧だにせず、社会を闇から蝕んでゆく……。
生を棄てて、あるいは生きながら“鬼”と化した“子供”たちの、悲しくも凄惨な呪詛の物語。
そのおぞましい腥さに顔まで漬かったとしても、秩序と倫理の綺麗ごとを厭うあなたに。