日本の大学に中国の若者が進学するケースが増えている。元警視庁公安部外事課の勝丸円覚さんは「過酷な中国の大学入試に比べ、門戸は広くコストも安いため人気が高まっている。それに伴ってカンニング支援や面接代行などをうたう悪質なSNS投稿が問題視されるようになったが、もっと重大な問題がある」という――。(第2回)
※本稿は、勝丸円覚『スパイは日本の「何を」狙っているのか』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
左上・下)写真=iStock.com/mizoula、右上)写真=iStock.com/y-studio、右下)写真=Hykw-a4/CC-BY-SA-3.0-migrated/Wikimedia Commons
日本の大学は中国よりも「難易度が低い」
ここ数年、中国人が日本の難関大学を受験するケースが増えています。学歴社会といわれる中国の激化する受験戦争という内情もありますが、あえて日本の大学を選ぶ理由は何か? ここでは中国側の戦略的な意図について述べます。
①「高考(ガオカオ)」の過酷さで“日本の大学”へ
中国の大学入試「高考」は、数百万から千数百万人が受験し、結果によって人生が決まる厳しい制度です。特に地方都市では競争が苛烈で、教育格差も顕著です。これに対し、日本の大学は「漢字文化」「比較的安全」「語学コストが安い」「入試が相対的にやさしい」といった魅力があり、かつてない規模の「日本受験ブーム」が起きています。
「中国で大学受験をするよりも、日本の大学のほうが難易度は低い」といっている受験生家族もいるようです。
偏差値が高い大学に人気が集中する傾向にはありますが、それでも中国での熾烈な受験戦争に比べると、日本のほうが門戸は広い、と中国の受験生たちには受け止められています。
2025年6月9日、湖南省長沙市第一中学で、試験を終え喜ぶ受験生。中国の一部の地域で9日、2025年の全国統一大学入学試験「高考」が終了した。(長沙=新華社記者/陳思汗)
中国SNSでは“カンニング支援”を謳う広告も
②不正な「学歴ブローカー」の台頭──金銭で東大合格保証
中国人留学生の間では、不正入学を取り次ぐ「学歴ブローカー」が問題視されています。SNSやWeb広告上では、「東大合格保証8000万円」「早慶上智600万円」というように、学力や日本語力を問わずに合格を約束する業者が実在しています。
現場では、試験中にスマホで問題を撮影し、外部の解答チームからリアルタイムで解を送り込む「カンニング支援」や、小論文や面接の代行、さらには履歴書の書類偽造まで行われています。こうした不正手段がSNSやWeiboで堂々と取引される現状は、日本の教育機関の危機を示しています。
こうして彼らは、「裏口入学」のように名門大学の学歴を金銭で買う構図を広めているのです。
