JP3547488B2 - プロトプラストの安定化方法と、 人工細胞壁被覆プロトプラスト - Google Patents
プロトプラストの安定化方法と、 人工細胞壁被覆プロトプラスト Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、プロトプラストの安定化方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、細胞工学やバイオテクノロジー等の分野において広く有用なプロトプラストを安定化するための新しい方法と、この方法により安定化した人工細胞壁被覆プロトプラストに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
プロトプラスト( Protoplast )は、細菌、菌類、植物細胞などの細胞壁を酵素処理等によって取り除いた原形質体であり、適当な浸透圧条件下では細胞としての諸活性を維持するとともに、高分子物質や粒子の導入、あるいは細胞融合等の操作が可能であるという優れた特性を有している。
【0003】
このため、プロトプラストは、例えば外来性DNAの導入による形質転換体の作成や特定の遺伝形質を有する細胞の選別等に広く用いられている。また植物細胞のプロトプラストの場合には、優良植物株の大量繁殖を目的とした固体細分化の材料としてもその有用性が認識されている。
しかしながら、プロトプラストは、そのままの状態では細胞安定性が低いという問題を有しており、実際の使用ではプロトプラストの調製やその培養に細心の注意を必要とするため、上記のような目的に利用することは必ずしも容易ではなかった。
【0004】
この発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、プロトプラストの特性に影響を及ぼすことなくその安定性を増加させるための方法と、この方法によって安定化させたプロトプラストを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、プロトプラストを疎水化多糖含有培地で培養し、その細胞膜を疎水化多糖で被覆し、人工的な細胞壁をに形成させることを特徴とするプロトプラストの安定化方法を提供する。
またこの発明は、細胞膜が疎水化多糖で被覆された人工細胞壁被覆プロトプラストを提供する。
【0006】
さらに、この発明においては、疎水化多糖が部分疎水化されたプルランまたはキシログルカンリン酸であり、プロトプラストが植物細胞のプロトプラストであることを好ましい態様の一つとしており、その具体例として、細胞膜が部分疎水化されたプルランまたはキシログルカンリン酸で被覆されたニンジンプロトプラストをも提供する。
【0007】
以下、この発明についてさらに詳しく説明する。
この発明が対象とするプロトプラストは、細菌や菌類(酵母、糸状菌等)、あるいは植物細胞のプロトプラストであり、その調製は公知の方法に従って行うことができる。例えば植物細胞のプロトプラストを調製する場合には、まず細胞壁接着物質(ヘミセルロース、ペクチン多糖など)を酵素分解して単細胞化し、次いでセルロースを主成分とする細胞壁をセルラーゼ等の酵素処理によって分解する。これら2段階の酵素処理は同時に行うこともできる。
【0008】
このようにして単離、調製したプロトプラストは同じく公知の方法で培養するが、この発明においては、その培地中に疎水化多糖を添加する。この疎水化多糖は、例えばプルラン、アミロース、マンナン、アミロペクチン、デキストラン、およびキシログルカンリン酸等の天然多糖類に、コレステロールまたはパルミトイル等の疎水基を修飾したものであり、そのような疎水化処理は、上記の天然多糖類と疎水基とを水溶液中で自己集合させることによって行うことができる(Macromolecules, 25, 5665-5670, 1992; Physicochemical Characterization of Cholesterol-Bearing Polysaccharides in Solution: Organized Solutions edited by Friberg, S.E. and Lindman, B., Marcel Dekker. Inc., 290-304, 1992)。なお、このような疎水化多糖の例として、コレステロール基で修飾したプルランの化学式を以下に示す。
【0009】
【化1】
【0010】
以上の通りの方法によって、プロトプラストの細胞膜を疎水化多糖で被覆することができ(図1参照)、これによって本来不安定なプロトプラストを極めて安定な状態で操作することが可能となる。例えば、通常のプロトプラストはカルシウム・イオノフォアA23187存在下で死滅するが(Plant Science, 69, 135-138, 1990)、この発明の方法によって安定化させた人工細胞壁被覆プロトプラストは、下記実施例にも示したようにA23187に対して高い耐性を示す。
【0011】
以下、実施例を示してこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【0012】
【実施例】
実施例1(ニンジンプロトプラストの調製と、その安定化)
まず、ニンジン細胞から以下の手順でプロトプラストを調製した。
材料とするニンジン懸濁培養細胞は、ニンジン品種Kuroda-gosunに由来し、Murasige-Skoog培地〔サッカロース3%、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)1mg/L、キネチン0.1 mg/L含有:pHはオートクレーブ前に5.8に調整)で継代培養した。植え継ぎは2週間周期で行い、毎分120往復、振幅5〜6cm、24℃で培養した。植え継いでから6日目の細胞をクリーンベンチ内で濾過して集め、Murasige-Skoog培地(0.25Mマンニトール、0.25Mソルビトール含有:pH5.6)で一度洗浄ののち、滅菌した三角フラスコに濾集した。酵素溶液(Cellulase Onozuka R 10:1.8 %とDriselase:0.2 %を含有)を先端に滅菌フィルターを取付けた注射器に充填し、濾過滅菌しながら酵素溶液を三角フラスコ内に添加した。フラスコを密封したのち、回転式の浸透機に置き、暗所下、24℃で18時間浸透した。40μm孔径のナイロンフィルターで試料分散液を濾過し、濾液を50gで5分間遠心分離し、次いで上澄液を除去し、洗液で再分散させたのち、6%Ficoll蔗糖液(0.5 M)上に静かに添加して200×gで5分間遠心した。プロトプラストは二相界面に集塊した。さらに上澄液を除去し、プロトプラストを10ml容量の遠心管に入れ、洗液を用いて分散させて50×gで5分間遠心する操作を3回繰り返した。最後に、少量のプロトプラスト培養液(上記の細胞培養液に0.4Mマンニトール添加)で分散させ、ニンジン細胞のプロトプラストを調製した。
【0013】
次に、このプロトプラスト分散液にコレステロール基で修飾したプルラン(CHP)またはキシログルカン燐酸(CHX−P)をそれぞれ0.3 mg/mlの割合で添加し、24℃で1〜3時間暗所培養した。また、対照として、CHPおよびCHX−Pを含有しない培養液中でも同様にしてプロトプラストを培養した。
【0014】
以上の通りに培養した各プロトプラストについて、Fluorescein diacetate法により蛍光顕微鏡で個数を計測し、それぞれの生存率を求めた。結果は表1に示したとおりであり、CHPまたはCHX−P含有培地中で培養したプロトプラストは、対照に比べいづれも高い生存率を示した。
【0015】
【表1】
【0016】
さらに、CHP被覆の状態をFluorescein isothiocyanateで修飾したCHP(CHP−FITC)を用いて共焦点蛍光顕微鏡(Bio−Rad社製)で観察した。すなわち、CHP−FITCを0.6mg/mlの割合で添加したプロトプラスト培養液中で、プロトプラストを24℃で3時間暗所培養した。結果は図2の顕微鏡写真図に示した通りであり、細胞膜がCHP−FITCによって被覆されていることが明白に確認された。
実施例2(A23187に対する安定化試験)
実施例1で作成したCHP被覆プロトプラストおよびCHX−P被覆プロトプラストについて、カルシウム・イオノフォアA23187に対する耐性を試験した。
【0017】
結果は、図3および図4に示した通りである。なお、図3はA23187を20μMの濃度で含有する培地中での被覆化プロトプラスト(CHP、CHX−P)と対照(未被覆プロトプラスト)の非溶解率を経時に示し、図4はA23187の各濃度における2時間培養後の非溶解率を示した。
これらの結果から明らかなように、この発明方法によって細胞膜を疎水化多糖で被覆した人工細胞壁被覆プロトプラストは、未被覆の対照群に比べはるかに高い安定性を示した。
実施例3(細胞外カルシウムの細胞内流入に対する耐性試験)
実施例1で作成したCHX−P被覆プロトプラストについて、A23187存在下におけるカルシウム流入に対する耐性を試験した。
【0018】
結果は図5および図6に示した通りである。なお、図5はA23187(20μM)とカルシウムイオン(0〜10mM)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示し、図6はA23187(20μM)と多糖(0.0〜1.2/mg/ml)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示す。
【0019】
これらの結果から明らかなように、この発明の人工細胞壁被覆プロトプラストは、未被覆の対照群に比べ細胞外からのカルシウムの流入に対して優れた耐性を示した。
実施例4(培養液中のセルラーゼに対する耐性試験)
実施例1で作成したCHP被覆プロトプラストについて、セルロース分解酵素であるセルラーゼに対する耐性を試験した。
【0020】
実施例1と同様のプロトプラスト培養液(CHP0.3 mg/ml含有)でニンジン・プロトプラストを、3時間、24℃で暗所培養したのち、セルラーゼ(ONOZUKA R-10)を0.3 mg/mlの割合で培養液中に添加した。この状態で一定時間培養を続けたのち、Fluorescein diacetate法によりプロトプラストの生存率を蛍光顕微鏡で計測した。対照として、CHP非含有培養液で培養したプロトプラストについても、セルラーゼ含有培養液での生存率を計測した。
【0021】
結果は表2に示した通りであり、この発明の人工細胞壁被覆プロトプラストはセルロース分解酵素セルラーゼの共存下でも高い安定性を有することが確認された。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、本来はカルシウムの流入や細胞壁分解酵素に対して極めて不安定なプロトプラストを安定化することが可能になり、このような安定化によって例えば細胞工学やバイオテクノロジー分野におけるプロトプラストの応用範囲が大幅に拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のプロトプラスト安定化方法を例示した模式図である。
【図2】この発明の人工細胞壁被覆プロトプラストの細胞膜を被覆するCHPの蛍光顕微鏡写真図である。
【図3】A23187を20μMの濃度で含有する培地中での人工細胞壁被覆プロトプラスト(CHP、CHX−P)と対照(未被覆プロトプラスト)の非溶解率(%)の経時的変化を示す。
【図4】A23187の各濃度における2時間培養後のプロトプラスト非溶解率を示す。
【図5】A23187(20μM)とカルシウムイオン(0〜10mM)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示す。
【図6】A23187(20μM)と多糖(0.0〜1.2/mg/ml)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示す。
【産業上の利用分野】
この発明は、プロトプラストの安定化方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、細胞工学やバイオテクノロジー等の分野において広く有用なプロトプラストを安定化するための新しい方法と、この方法により安定化した人工細胞壁被覆プロトプラストに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
プロトプラスト( Protoplast )は、細菌、菌類、植物細胞などの細胞壁を酵素処理等によって取り除いた原形質体であり、適当な浸透圧条件下では細胞としての諸活性を維持するとともに、高分子物質や粒子の導入、あるいは細胞融合等の操作が可能であるという優れた特性を有している。
【0003】
このため、プロトプラストは、例えば外来性DNAの導入による形質転換体の作成や特定の遺伝形質を有する細胞の選別等に広く用いられている。また植物細胞のプロトプラストの場合には、優良植物株の大量繁殖を目的とした固体細分化の材料としてもその有用性が認識されている。
しかしながら、プロトプラストは、そのままの状態では細胞安定性が低いという問題を有しており、実際の使用ではプロトプラストの調製やその培養に細心の注意を必要とするため、上記のような目的に利用することは必ずしも容易ではなかった。
【0004】
この発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、プロトプラストの特性に影響を及ぼすことなくその安定性を増加させるための方法と、この方法によって安定化させたプロトプラストを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、プロトプラストを疎水化多糖含有培地で培養し、その細胞膜を疎水化多糖で被覆し、人工的な細胞壁をに形成させることを特徴とするプロトプラストの安定化方法を提供する。
またこの発明は、細胞膜が疎水化多糖で被覆された人工細胞壁被覆プロトプラストを提供する。
【0006】
さらに、この発明においては、疎水化多糖が部分疎水化されたプルランまたはキシログルカンリン酸であり、プロトプラストが植物細胞のプロトプラストであることを好ましい態様の一つとしており、その具体例として、細胞膜が部分疎水化されたプルランまたはキシログルカンリン酸で被覆されたニンジンプロトプラストをも提供する。
【0007】
以下、この発明についてさらに詳しく説明する。
この発明が対象とするプロトプラストは、細菌や菌類(酵母、糸状菌等)、あるいは植物細胞のプロトプラストであり、その調製は公知の方法に従って行うことができる。例えば植物細胞のプロトプラストを調製する場合には、まず細胞壁接着物質(ヘミセルロース、ペクチン多糖など)を酵素分解して単細胞化し、次いでセルロースを主成分とする細胞壁をセルラーゼ等の酵素処理によって分解する。これら2段階の酵素処理は同時に行うこともできる。
【0008】
このようにして単離、調製したプロトプラストは同じく公知の方法で培養するが、この発明においては、その培地中に疎水化多糖を添加する。この疎水化多糖は、例えばプルラン、アミロース、マンナン、アミロペクチン、デキストラン、およびキシログルカンリン酸等の天然多糖類に、コレステロールまたはパルミトイル等の疎水基を修飾したものであり、そのような疎水化処理は、上記の天然多糖類と疎水基とを水溶液中で自己集合させることによって行うことができる(Macromolecules, 25, 5665-5670, 1992; Physicochemical Characterization of Cholesterol-Bearing Polysaccharides in Solution: Organized Solutions edited by Friberg, S.E. and Lindman, B., Marcel Dekker. Inc., 290-304, 1992)。なお、このような疎水化多糖の例として、コレステロール基で修飾したプルランの化学式を以下に示す。
【0009】
【化1】
【0010】
以上の通りの方法によって、プロトプラストの細胞膜を疎水化多糖で被覆することができ(図1参照)、これによって本来不安定なプロトプラストを極めて安定な状態で操作することが可能となる。例えば、通常のプロトプラストはカルシウム・イオノフォアA23187存在下で死滅するが(Plant Science, 69, 135-138, 1990)、この発明の方法によって安定化させた人工細胞壁被覆プロトプラストは、下記実施例にも示したようにA23187に対して高い耐性を示す。
【0011】
以下、実施例を示してこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【0012】
【実施例】
実施例1(ニンジンプロトプラストの調製と、その安定化)
まず、ニンジン細胞から以下の手順でプロトプラストを調製した。
材料とするニンジン懸濁培養細胞は、ニンジン品種Kuroda-gosunに由来し、Murasige-Skoog培地〔サッカロース3%、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)1mg/L、キネチン0.1 mg/L含有:pHはオートクレーブ前に5.8に調整)で継代培養した。植え継ぎは2週間周期で行い、毎分120往復、振幅5〜6cm、24℃で培養した。植え継いでから6日目の細胞をクリーンベンチ内で濾過して集め、Murasige-Skoog培地(0.25Mマンニトール、0.25Mソルビトール含有:pH5.6)で一度洗浄ののち、滅菌した三角フラスコに濾集した。酵素溶液(Cellulase Onozuka R 10:1.8 %とDriselase:0.2 %を含有)を先端に滅菌フィルターを取付けた注射器に充填し、濾過滅菌しながら酵素溶液を三角フラスコ内に添加した。フラスコを密封したのち、回転式の浸透機に置き、暗所下、24℃で18時間浸透した。40μm孔径のナイロンフィルターで試料分散液を濾過し、濾液を50gで5分間遠心分離し、次いで上澄液を除去し、洗液で再分散させたのち、6%Ficoll蔗糖液(0.5 M)上に静かに添加して200×gで5分間遠心した。プロトプラストは二相界面に集塊した。さらに上澄液を除去し、プロトプラストを10ml容量の遠心管に入れ、洗液を用いて分散させて50×gで5分間遠心する操作を3回繰り返した。最後に、少量のプロトプラスト培養液(上記の細胞培養液に0.4Mマンニトール添加)で分散させ、ニンジン細胞のプロトプラストを調製した。
【0013】
次に、このプロトプラスト分散液にコレステロール基で修飾したプルラン(CHP)またはキシログルカン燐酸(CHX−P)をそれぞれ0.3 mg/mlの割合で添加し、24℃で1〜3時間暗所培養した。また、対照として、CHPおよびCHX−Pを含有しない培養液中でも同様にしてプロトプラストを培養した。
【0014】
以上の通りに培養した各プロトプラストについて、Fluorescein diacetate法により蛍光顕微鏡で個数を計測し、それぞれの生存率を求めた。結果は表1に示したとおりであり、CHPまたはCHX−P含有培地中で培養したプロトプラストは、対照に比べいづれも高い生存率を示した。
【0015】
【表1】
【0016】
さらに、CHP被覆の状態をFluorescein isothiocyanateで修飾したCHP(CHP−FITC)を用いて共焦点蛍光顕微鏡(Bio−Rad社製)で観察した。すなわち、CHP−FITCを0.6mg/mlの割合で添加したプロトプラスト培養液中で、プロトプラストを24℃で3時間暗所培養した。結果は図2の顕微鏡写真図に示した通りであり、細胞膜がCHP−FITCによって被覆されていることが明白に確認された。
実施例2(A23187に対する安定化試験)
実施例1で作成したCHP被覆プロトプラストおよびCHX−P被覆プロトプラストについて、カルシウム・イオノフォアA23187に対する耐性を試験した。
【0017】
結果は、図3および図4に示した通りである。なお、図3はA23187を20μMの濃度で含有する培地中での被覆化プロトプラスト(CHP、CHX−P)と対照(未被覆プロトプラスト)の非溶解率を経時に示し、図4はA23187の各濃度における2時間培養後の非溶解率を示した。
これらの結果から明らかなように、この発明方法によって細胞膜を疎水化多糖で被覆した人工細胞壁被覆プロトプラストは、未被覆の対照群に比べはるかに高い安定性を示した。
実施例3(細胞外カルシウムの細胞内流入に対する耐性試験)
実施例1で作成したCHX−P被覆プロトプラストについて、A23187存在下におけるカルシウム流入に対する耐性を試験した。
【0018】
結果は図5および図6に示した通りである。なお、図5はA23187(20μM)とカルシウムイオン(0〜10mM)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示し、図6はA23187(20μM)と多糖(0.0〜1.2/mg/ml)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示す。
【0019】
これらの結果から明らかなように、この発明の人工細胞壁被覆プロトプラストは、未被覆の対照群に比べ細胞外からのカルシウムの流入に対して優れた耐性を示した。
実施例4(培養液中のセルラーゼに対する耐性試験)
実施例1で作成したCHP被覆プロトプラストについて、セルロース分解酵素であるセルラーゼに対する耐性を試験した。
【0020】
実施例1と同様のプロトプラスト培養液(CHP0.3 mg/ml含有)でニンジン・プロトプラストを、3時間、24℃で暗所培養したのち、セルラーゼ(ONOZUKA R-10)を0.3 mg/mlの割合で培養液中に添加した。この状態で一定時間培養を続けたのち、Fluorescein diacetate法によりプロトプラストの生存率を蛍光顕微鏡で計測した。対照として、CHP非含有培養液で培養したプロトプラストについても、セルラーゼ含有培養液での生存率を計測した。
【0021】
結果は表2に示した通りであり、この発明の人工細胞壁被覆プロトプラストはセルロース分解酵素セルラーゼの共存下でも高い安定性を有することが確認された。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、本来はカルシウムの流入や細胞壁分解酵素に対して極めて不安定なプロトプラストを安定化することが可能になり、このような安定化によって例えば細胞工学やバイオテクノロジー分野におけるプロトプラストの応用範囲が大幅に拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のプロトプラスト安定化方法を例示した模式図である。
【図2】この発明の人工細胞壁被覆プロトプラストの細胞膜を被覆するCHPの蛍光顕微鏡写真図である。
【図3】A23187を20μMの濃度で含有する培地中での人工細胞壁被覆プロトプラスト(CHP、CHX−P)と対照(未被覆プロトプラスト)の非溶解率(%)の経時的変化を示す。
【図4】A23187の各濃度における2時間培養後のプロトプラスト非溶解率を示す。
【図5】A23187(20μM)とカルシウムイオン(0〜10mM)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示す。
【図6】A23187(20μM)と多糖(0.0〜1.2/mg/ml)を含有する培地での2時間培養後の各プロトプラストの非溶解率を示す。
Claims (8)
- プロトプラストを疎水化多糖含有培地で培養し、その細胞膜を疎水化多糖で被覆することを特徴とするプロトプラストの安定化方法。
- 疎水化多糖が、部分疎水化されたプルラン、アミロース、マンナン、アミロペクチン、デキストランまたはキシログルカンリン酸である請求項1のプロトプラスト安定化方法。
- プロトプラストが、植物細胞のプロトプラストである請求項1または2のプロトプラスト安定化方法。
- 植物プロトプラストが、ニンジンプロトプラストである請求項3のプロトプラスト安定化方法。
- 細胞膜が疎水化多糖で被覆されている人工細胞壁被覆プロトプラスト。
- 疎水化多糖が、部分疎水化されたプルランアミロース、マンナン、アミロペクチン、デキストランまたはキシログルカンリン酸である請求項5の人工細胞壁プロトプラスト。
- プロトプラストが、植物細胞のプロトプラストである請求項5または6の人工細胞壁被覆プロトプラスト。
- 細胞膜が、部分疎水化されたプルランまたはキシログルカンリン酸で被覆されたニンジンプロトプラスト。
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| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP19883994A JP3547488B2 (ja) | 1994-08-23 | 1994-08-23 | プロトプラストの安定化方法と、 人工細胞壁被覆プロトプラスト |
Applications Claiming Priority (1)
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| JP19883994A JP3547488B2 (ja) | 1994-08-23 | 1994-08-23 | プロトプラストの安定化方法と、 人工細胞壁被覆プロトプラスト |
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| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH0856654A JPH0856654A (ja) | 1996-03-05 |
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| JP19883994A Expired - Fee Related JP3547488B2 (ja) | 1994-08-23 | 1994-08-23 | プロトプラストの安定化方法と、 人工細胞壁被覆プロトプラスト |
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| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3547488B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| KR100373104B1 (ko) * | 2000-04-06 | 2003-02-25 | 주식회사 바이오알앤즈 | 미생물 유래 다당류를 이용한 미생물 코팅방법 |
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1994
- 1994-08-23 JP JP19883994A patent/JP3547488B2/ja not_active Expired - Fee Related
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|---|---|
| JPH0856654A (ja) | 1996-03-05 |
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