JP3559077B2 - ギヤ油組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ギヤ油組成物に関し、詳しくは、優れた耐摩耗性、酸化安定性およびシンクロ特性を有し、さらに耐ピッチング性を大幅に改善させるとともに、硫黄−リン系極圧剤を含む場合には、これらの優れた特性を維持しつつ優れた極圧性をも有する自動車用マニュアルトランスミッションならびにトランスアクスル用ギヤ油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来より使用されてきているギヤ油は、各種装置における金属と金属との間に油膜を形成し、摩耗、焼き付き、ピッチング、スコーリングなどの歯面損傷を抑制することを目的としている。
このギヤ油は、通常、基油として鉱油あるいは合成油を用い、これに目的に応じた各種の添加剤を配合したものである。
【0003】
ところで、近年、自動車用ギヤにおいては、エンジンの高トルク化に伴いギヤへの負荷も大きくなっており、種々のトラブルを引き起こすことがある。
なかでも、摩耗、スコーリングに比べて、金属における疲労、すなわちピッチングの発生によるギヤのトラブルが多い。
このため、自動車用ギヤ油においては、より高度な疲労防止性(耐ピッチング性)を有するものが要求されてきている。
【0004】
この要求に応えるべく、通常は、極圧剤、摩耗防止剤などの添加剤を配合する一方、基油として、高い粘度指数を有し、酸化安定性のより優れたパラフィン系鉱油を用いている。
しかし、この基油および添加剤を用いたギヤ油は、高い接触応力および高い滑り速度を伴う条件下において、耐ピッチング性が不充分であるという問題がある。
【0005】
また、ハイポイドギヤを装着したトランスアクスルに使用されるギヤ油は、高い極圧性を必要とするために、特に、硫黄−リン系極圧剤が配合されている。
しかし、この硫黄−リン系極圧剤は、金属腐食、スラッジ生成などの問題を生じ、トランスミッションのシンクロメッシュ機構におけるシンクロナイザーリングとギヤコーン部で、摩擦係数の低下、あるいは異常摩耗を生じ、同期が不良となり、シフト力の増加、延いては変速が不可能となるなどのトラブルを発生することがある。
【0006】
なお、最近、(1)特定の動粘度を有する基油に、(a)ジチオリン酸亜鉛、(b)塩基価200mgKOH/g未満のアルカリ土類金属系清浄分散剤、および(c)コハク酸イミドを、特定量配合したギヤ油組成物(特開平2−155988号公報参照)、(2)特定の動粘度を有する基油に、(a)ジチオリン酸亜鉛等の硫黄含有化合物、(b)塩基価200mgKOH/g以上のアルカリ土類金属系清浄分散剤、および(c)多価アルコールの部分エステルを、特定量配合した動力制御用潤滑油組成物(特開平2−155987号公報参照)が提案されている。
しかし、これら先提案のギヤ油は、従来より市場で問題となっているピッチングを防止するのに充分ではなかった。
【0007】
本発明は、以上のような実情を考慮し、従来のギヤ油が有している優れた極圧性、酸化安定性、シンクロ特性をそのまま保持しつつ、耐ピッチング性をも優れたものとして疲労寿命の延長を図るとともに、硫黄−リン系極圧剤を含む場合にあっては金属腐食,スラッジの生成を効果的に防止し得、しかも上記した先提案のものとは異なる組成を有するギヤ油組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、次のような知見を得た。
(i)上記先提案(2)の動力制御用潤滑油組成物中の(b)成分である塩基価が200mgKOH/g以上のアルカリ土類金属系清浄分散剤が、耐ピッチング性を優れたものとすること。
(ii)ただし、アルカリ土類金属系清浄分散剤の塩基価が200mgKOH/g以上の場合、(c)成分の選択が困難になること、すなわち、モノタイプのコハク酸イミドでは、耐ピッチング性を優れたものとするができないこと(因みに、(c)成分としてコハク酸イミドを使用している上記先提案(1)のギヤ油組成物では、(b)成分のアルカリ土類金属型清浄分散剤として塩基価が200mgKOH/g未満のものを使用しており、塩基価が200mgKOH/g以上のアルカリ土類金属系清浄分散剤を使用する上記先提案(2)の動力制御用潤滑油組成物では、(c)成分として多価アルコールの部分エステルを使用している)。
(iii)そこで、さらに検討を重ねた結果、(c)成分として特定の分子量のポリブテニル基を有するビスタイプのアルケニルこはく酸イミド、その誘導体を使用すれば、上記した本発明の目的を悉く達成し得ること。
(iv)さらに、硫黄−リン系極圧剤を含む場合においては、(a)〜(c)成分との相乗作用により、金属腐食、スラッジの生成を引き起こすことなく、優れた耐ピッチング性能を維持し、高い極圧性を得ることができること。
【0009】
本発明のギヤ油組成物は、以上の知見に基づくもので、
〔1〕100℃で2〜50cStの粘度を有する鉱油および合成油から選ばれる1種以上を基油とし、これに、
(A)アルキルジチオリン酸亜鉛0.5〜3.0重量%、
(B)塩基価200mgKOH/g以上を有するアルカリ土類金属型清浄分散剤1.2〜4.0重量%、
(C)平均分子量が2000〜5000のポリブテニル基を有するビスタイプのアルケニルこはく酸イミド、その誘導体4〜15重量%、
を含有してなること、または
〔2〕上記基油に、上記(A)〜(C)成分とともに、(D)硫黄−リン系極圧剤2〜10重量%を含有してなること、
を特徴とする。
【0010】
以上の成分からなる本発明のギヤ油組成物は、マニュアルトランスミッション油として具備すべき特性、すなわち、
1)シンクロナイザーリングとギヤコーン部分で適切な摩擦係数を有する、
2)この摩擦係数を長期にわたって維持する、
3)極圧性、耐摩耗性に優れる、
4)酸化安定性に優れる、
5)耐ピッチング性に優れる、
を有している。
【0011】
本発明のギヤ油に使用される基油は、100℃における粘度が2〜50cStの鉱物性潤滑油あるいはその精製品、および100℃における粘度が2〜50cStの合成潤滑油のなかから選ばれる1種以上である。
【0012】
上記の基油に配合される(A)成分のジアルキルジチオリン酸亜鉛は、化1の一般式(1)で表される。
【0013】
【化1】
【0014】
一般式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または相異なる炭素数10以上のアルキル基が好ましい。
炭素数10未満のアルキル基のものは、耐摩耗性、耐酸化性が小さく、炭素数が多すぎるアルキル基のものでも、同様に、耐摩耗性、耐酸化性が小さくなるため、アルキル基の炭素数の上限は20程度とすることが適している。
アルキル基の好ましい炭素数は10〜18、より好ましくは11〜14であり、例えば、デシル基、ドデシル基、テトラシル基、ヘキサデシル基などが挙げられる。
【0015】
上記のジアルキルジチオリン酸亜鉛は、単独でまたは2種以上を混合して使用でき、その配合割合は、0.5〜3.0重量%、好ましくは1.0〜2.0重量%である。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛が少なすぎると、耐ピッチング性、シンクロ特性および極圧性が低下し、多すぎてもこの効果は飽和し、経済的に不利である。
【0016】
(B)成分の塩基価が200mgKOH/g以上のアルカリ土類金属型清浄分散剤は、従来よりエンジン油に使用されている公知のものを使用することができる。
塩基価が200mgKOH/g未満のものであると、耐ピッチング性を優れたものとすることができず、また硫黄−リン系極圧剤を配合する場合においては、金属腐食,スラッジの生成を抑制し、耐ピッチング性を向上させることができない。
【0017】
なお、塩基価の上限は、特に限定しないが、あまり高すぎると分散性に悪影響を及ぼすため、600mgKOH/g程度を上限とするのが好ましい。
好ましい塩基価は、250〜450mgKOH/g、より好ましくは300〜450mgKOH/gである。
【0018】
このようなアルカリ土類金属型清浄分散剤の具体例としては、スルフォネート、フェネート、サリチレート、ホスフォネートなどと、Ca、Mg、Baなどとの金属塩形になっているものが挙げられる。
また、Ca、Mg、Baなどの水酸化物や炭酸塩を過剰に含有させた超塩基性清浄分散剤も使用できる。
好ましくはスルフォネートとCa、Mg、Baなどとの金属塩であり、より好ましくはMgスルフォネートであり、特に好ましくはCaスルフォネートとMgスルフォネートを重量比で1:0.8〜1:10、好ましくは1:1〜1:8、より好ましくは1:2〜1:6の割合で併用したものである。
【0019】
上記のアルカリ土類金属型清浄分散剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用でき、その配合割合は、1.2〜4.0重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%である。
アルカリ土類金属型清浄分散剤が少なすぎると、耐ピッチング性および清浄性が低下し、多すぎてもこの効果は飽和し、経済的に不利である。
【0020】
(C)成分のアルケニルこはく酸イミドまたはその誘導体は、平均分子量が2000〜5000、好ましくは2000〜3000、さらに好ましくは2300〜2500のポリブテニル基を有するビスタイプのものであり、化2の一般式(2)で表される。なお、(C)成分の平均分子量は、2000未満であると充分な耐ピッチング性が得られず、5000を超えると油への溶解性が悪くなる。
【0021】
【化2】
【0022】
化2の一般式(2)中、R5はアルケニル基であるポリブテニル基で、上記した平均分子量のものを表し、R6は炭素数2〜5の2価の飽和脂肪族炭化水素を表し、xは0〜10の整数を表す。
【0023】
一般式(2)で表されるビスタイプのアルケニルこはく酸イミドまたはその誘導体は、一般には、ポリブテンと無水マレイン酸との反応で得られるポリブテニルコハク酸無水物と、ポリアミンとの反応によって合成される。
このポリアミンの例としては、単一ジアミン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミンなど;ポリアルキレンポリアミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、ペンタペンチレンヘキサミンなど、が挙げられる。
【0024】
また、ビスタイプのアルケニルこはく酸イミドのホウ素化合物誘導体、有機ホスフォネート誘導体等、あるいはビスタイプのアルケニルこはく酸イミドをアルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、アルキレンオキシド、硫黄等と反応させたビスタイプのアルケニルこはく酸イミドの誘導体も使用できる。
【0025】
上記のビスタイプのアルケニルこはく酸イミド、その誘導体は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を混合して使用することができ、その配合割合は、4〜15重量%、好ましくは5〜10重量%である。
ビスタイプのアルケニルこはく酸イミド、その誘導体が少なすぎると、耐ピッチング性が低下し、多すぎても、この効果は飽和し、経済的に不利となる。
【0026】
以上の(A)〜(C)成分とともに、配合される任意成分である(D)成分の硫黄−リン系極圧剤は、1つの化合物中に硫黄とリンとを含むものであってもよいし、いずれか一方を含むいわゆる硫黄系極圧剤とリン系極圧剤とを混合したものであってもよい。
【0027】
上記の硫黄系極圧剤としては、化3の一般式(3)で表される炭化水素硫化物、硫化テルペン、油脂と硫黄との反応生成物である硫化油脂などが使用される。
【0028】
【化3】
一般式(3)
R7−Sy−(R9−Sy)n−R8
【0029】
化3の一般式(3)中、R7、R8は一価の炭化水素基で、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R9は二価の炭化水素基、yは1以上の整数で、好ましくは1〜8で、繰り返し単位中においてそれぞれのyが同一または異なる数であることもあり、nは0または1以上の整数である。
【0030】
上記R7、R8の一価の炭化水素基としては、炭素数2〜20の直鎖または分枝の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)、炭素数6〜26の芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ノニル基、ドデシル基、プロペニル基、ブテニル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ヘキシルフェニル基などが挙げられる。
【0031】
上記R9の二価の炭化水素基としても、炭素数2〜20の直鎖または分枝の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜26の芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基などが挙げられる。
【0032】
化(3)の一般式(3)で表される炭化水素硫化物の代表的なものは、硫黄オレフィンおよび一般式R7−Sy−R8(yは2以上の整数)で示されるポリサルファイド化合物である。
具体的には、ジイソブチルジサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジターシャリーノニルポリサルファイド、ジターシャリーブチルポリサルファイド、ジターシャリーベンジルポリサルファイド、あるいはポリイソブチレンやテルペン類などのオレフィン類を硫黄などの硫化剤で硫化した硫化オレフィン類などが挙げられる。
【0033】
油脂と硫黄との反応生成物である硫化油脂は、油脂としてラード、牛脂、鯨油、パーム油、ヤシ油、なたね油などの動植物油脂を使用したものであり、この反応生成物は、化学構造が単一ではなく、種々の混合物であり、化学構造そのものは明確ではない。
【0034】
また、リン系極圧剤または、硫黄−リン系極圧剤(1つの化合物中に硫黄とリンとを含むもの)としては、化4の硫黄−リン系極圧剤(4)で表されるリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、ジチオリン酸エステルなどが挙げられる。
【0035】
【化4】
一般式(4)
(R10)aH3−aX3PXb
【0036】
化4の一般式(4)中、R10は一価の炭化水素基、Xは酸素原子または硫黄原子、aは1,2または3、bは0または1である。
【0037】
上記R10としては、炭素数5〜20の直鎖または分枝の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)、炭素数6〜26の芳香族炭化水素基、シクロアルキル基が挙げられる。
【0038】
化(4)の一般式(4)で表されるエステル硫化物の具体例としては、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリオクチル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸トリオクチル、チオリン酸ジオクチル、チオリン酸トリオクチル、リン酸ジデシル、亜リン酸ジデシル、リン酸ジドデシル、リン酸トリドデシル、亜リン酸ジドデシル、亜リン酸トリドデシル、チオリン酸トリドデシル、リン酸トリヘキサデシル、亜リン酸トリヘキサデシル、チオリン酸トリヘキサデシル、リン酸トリオクタデセニル、亜リン酸トリオクタデセニル、チオリン酸トリオクタデセニル、リン酸トリ(オクチルフェニル)、リン酸トリ(オクチルシクロヘキシル)、ジチオリン酸トリデシルなどが挙げられる。
【0039】
また、リン系極圧剤は、化4の一般式(4)で表される酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、酸性ジチオリン酸エステル、のアルキルアミン塩なども使用することができる。
【0040】
これらのアルキルアミン塩の具体例としては、酸性エステルとして、ブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、トリールアシッドホスフェートなどが挙げられる。
これらを中和するためのアルキルアミンとしては、一般式NR11R12R13(式中、R11、R12およびR13は一価の炭化水素基または水素原子であり、そのうち少なくとも1つは炭化水素基である)で表され、具体的には、ジブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、ココナッツアミン、牛脂アミンなどが挙げられる。
【0041】
以上(D)成分である硫黄−リン系極圧剤の配合割合は、2〜10重量%、好ましくは3〜7重量%である。
硫黄−リン系極圧剤が少なすぎると、ハイポイドギヤを装着したトランスアクスルに使用する場合、極圧性が低く、ギヤの損傷、焼き付きなどを引き起こし、多すぎると、シンクロ特性および酸化安定性に悪影響を及ぼす。
【0042】
上記した(A)〜(C)成分、または(A)〜(D)成分の他に、本発明のギヤ油組成物においては、目的に応じて、通常使用されている(A)〜(D)成分以外の公知の添加剤、例えば、無灰型分散剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤などを配合することもできる。
【0043】
このうち無灰型分散剤としては、アルケニルこはく酸エステル、長鎖脂肪酸とポリアミンとのアミド(アミノアミド型)などが、摩擦調整剤としては、脂肪酸、有機モリブデン化合物などが、酸化防止剤としては、アミン系、フェノール系のものなどが、腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール、アルケニルこはく酸エステルなどが、粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート、オレフィンコポリマーなどが、流動点降下剤としては、ポリメタクリレートなどが、消泡剤としては、シリコン化合物、エステル系のものなど、がそれぞれ使用できる。
【0044】
以上詳述した本発明のギヤ油組成物は、(A)〜(C)成分の相互作用により耐ピッチング性、シンクロ特性、極圧性、酸化安定性に優れたものとなり、またこれら(A)〜(C)成分と(D)成分とを配合すると、(D)成分による金属腐食に起因するトランスミッションのトラブル、スラッジの生成を抑制し、優れた極圧性を得ることができる。
【0045】
【実施例】
実施例1〜6、比較例1〜12
パラフィン系基油(80ニュートラル)に、表1〜6に示す各成分を同表に示す割合で配合して、本発明のギヤ油組成物を調製し、これらのギヤ油組成物につき、次の性能試験を行った。この結果を、表1〜6に合わせて示す。
【0046】
〔耐ピッチング性試験〕
耐ピッチング性の評価として、四円筒試験を行った。四円筒試験の試験条件および疲労寿命の判定法は、次の通りとした。
【0047】
(試験条件)
回転数:1000rpm
滑り率:30%
接触圧力:65kg/mm2
油温:80℃
【0048】
(疲労寿命の判定法)
運転開始から10万サイクル毎に試験機を停止し、肉眼で観察できる損傷(ピッチング)が発生するまでのサイクル数を疲労寿命とした。すなわち、サイクル数が多いほど疲労寿命が長く、かつ耐ピッチング性も優れることになる。
本試験では、疲労寿命70万サイクル以上を合格とした。
【0049】
〔シンクロ特性試験〕
先ず、シンクロナイザーリングとギヤコーンを台上に設置し、ギヤコーンの回転数をモーターにより1200rpmに維持する。
次いで、シンクロナイザーリングを40kgfの荷重にて押し付ける。
その後、シンクロナイザーリングの荷重を取り除き、ギヤコーンからシンクロナイザーリングを切り離す。
このシンクロナイザーリングの押し付けと切り離しとからなるパターンを、10000サイクル繰り返す。
【0050】
上記の繰り返しにおいて、シンクロナイザーリングを押し付けた時に発生するトルクを測定し、摩擦係数を求めた。
この摩擦係数を、100サイクルと10000サイクルとで比較し、摩擦係数の高低で評価した。すなわち、摩擦係数が高く、かつ10000サイクル後でもこの高い摩擦係数を維持できるものをシンクロ特性が優れるものとした。
本試験では、10000サイクル後の摩擦係数が0.100以上を有するものを合格とした。
【0051】
〔極圧性試験〕
次の試験条件にてギヤ試験を行った。なお、IAEギヤ試験は、IP(イギリス石油協会規格)法のIP166/68に従って行い、焼き付き限界荷重を測定した。
【0052】
(試験条件)
小歯車回転数:6000rpm
給油温度:110℃
給油方法:強制給油
給油量:0.56リットル/分
運転方法:5分毎のステップ荷重増加法(すなわち、10ポンドの荷重で運転を開始し、5分毎に5ポンドづつ荷重を増加させた。)
【0053】
〔酸化安定性試験〕
内燃機関用潤滑油安定度試験法(JIS K 2541)に準拠し、150℃、96hrの条件で行った。
評価は、粘度増加、全酸価増加およびスラッジの有無で行った。
【0054】
なお、表1〜6中の*1〜*11は、次の意味を有する。
*1:第2級アルキル基を有するアルキルジチオリン酸亜鉛
*2:塩基価398mgKOH/gのMgスルフォネート
*3:塩基価300mgKOH/gのCaスルフォネート
*4:塩基価29mgKOH/gのCaスルフォネート
*5:ポリブテニル基の平均分子量が2400のビスタイプアルケニルこはく酸イミド
*6:ポリブテニル基の平均分子量が1900のビスタイプアルケニルこはく酸イミド
*7:ポリブテニル基の平均分子量が700のモノタイプアルケニルこはく酸イミド
*8:硫化油脂、硫化オレフィン、リン酸エステルアミン塩からなる極圧剤(S=22.9重量%、P=1.4重量%)
*9:その他の添加剤
*10:硫黄系極圧剤を含まない市販のトランスミッションギヤ油(GL−3 75W85)
*11:硫黄−リン系極圧剤を含む市販のトランスミッションギヤ油(GL−3 90)
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
なお、以上の結果から、硫黄−リン系極圧剤を配合した実施例6(表2)において、シンクロ特性を損なうことなく、しかもスラッジの生成を抑えて、優れた極圧性を示すことが分かる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のギヤ油組成物は、優れた極圧性、酸化安定性、シンクロ特性を有するとともに、耐ピッチング性にも優れ、長い疲労寿命を有するものである。
したがって、本発明のギヤ油組成物は、最近の高トルク化に伴い大きな負荷がかかり、優れた耐ピッチング性、シンクロ特性、極圧性、酸化安定性の要求される自動車用マニュアルトランスミッションギヤ用として好適であり、また硫黄−リン系極圧剤を配合した組成のものについては、これらの特性の他にさらに高い極圧性が要求されるハイポイドギヤを装着したトランスアクスル用のギヤ油として好適である。
Claims (2)
- 100℃で2〜50cStの粘度を有する鉱油および合成油から選ばれる1種以上を基油とし、これに、
(A)アルキルジチオリン酸亜鉛0.5〜3.0重量%、
(B)塩基価200mgKOH/g以上を有するアルカリ土類金属型清浄分散剤1.2〜4.0重量%、
(C)平均分子量が2000〜5000のポリブテニル基を有するビスタイプのアルケニルこはく酸イミド、その誘導体4〜15重量%、
を含有してなることを特徴とするギヤ油組成物。 - 100℃で2〜50cStの粘度を有する鉱油および合成油から選ばれる1種以上を基油とし、これに、
(A)アルキルジチオリン酸亜鉛0.5〜3.0重量%、
(B)塩基価200mgKOH/g以上を有するアルカリ土類金属型清浄分散剤1.2〜4.0重量%、
(C)平均分子量が2000〜5000のポリブテニル基を有するビスタイプのアルケニルこはく酸イミド、その誘導体4〜15重量%、
(D)硫黄−リン系極圧剤2〜10重量%、
を含有してなることを特徴とするギヤ油組成物。
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