JP4409055B2 - ギヤ油組成物 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、ギヤ油組成物に関するものであり、特に、乗用車用手動変速機、4WD車のトランスファ装置、終減速機などを共通に潤滑でき、オイルシール適合性に優れたギヤ油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ギヤ油は、手動変速機と終減速機で、あるいは乗用車と大型車などで、要求される性能が異なるため、それぞれ別々のギヤ油が使用されている。例えば、高い極圧性が要求されるハイポイドギヤを用いた終減速機やトランスファ装置などには、比較的活性の高い硫黄−リン系極圧剤を含有する極圧レベルがAPI GL-5以上のギヤ油が使用される。一方、ハイポイドギヤを用いない手動変速機などは、マイルドな硫黄−リン系極圧剤を含有する極圧レベルがGL-3あるいはGL-4のマルチグレードギヤ油や、シンクロ摩擦・摩耗特性向上のために、エンジン油系添加剤(ZnDTP、金属系清浄剤等)を応用したものなどが使用されている。
【0003】
API GL-5以上のハイポイドギヤ油を、手動変速機に使用すると、シフトフィーリングを左右するシンクロナイザーリングとギヤコーンの摩擦・摩耗特性に悪影響を及ぼし、早期にシフトフィーリングが悪化することがある。また、熱安定性及び酸化安定性にも問題がある。反対に手動変速機用のギヤ油をハイポイドギヤに用いると、極圧性不足による歯車の焼付きや過度の摩耗が発生する。
【0004】
最近、ユーザーから油管理の簡素化の要求が強く、上記要求性能が異なる全ての駆動系装置を、1種類のギヤ油で潤滑できる兼用ギヤ油が望まれている。この要求に対し、これまでに、次のような組成物が提案されている。
特許第2670669号公報には、基油に、硫化オレフィン、リン酸エステル化合物、金属系清浄剤、ジチオリン酸亜鉛を配合したギヤ油が開示されている。このギヤ油は、自動車の変速機ギヤ、センターディファレンシャルギヤ、ハイポイドギヤなどを共通潤滑している。
特許第2705815号公報には、基油に、硫化油脂及び硫化オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上の硫黄系化合物、塩基価200 mgKOH/g以上の金属系清浄分散剤、ソルビタンの部分エステルを配合してなる動力制御用潤滑油組成物が開示されている。この組成物は摩擦特性、極圧性及び耐摩耗性に優れ、自動車の変速機ギヤ、ディファレンシャルギヤ、ハイポイドギヤ等の潤滑油として好適であると記されている。
【0005】
特開平9−132790号公報には、基油に、硫黄−リン系極圧剤、アルカリ金属ホウ酸塩水和物、アルキルジチオリン酸亜鉛を含有したギヤ油が開示されている。このギヤ油は、優れた極圧性、耐ピッチング性、シンクロ特性、酸化安定性、耐スラッジ性及び貯蔵安定性を有し、手動変速機と終減速機とを共通に潤滑できると記されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の組成物では、酸化安定性、極圧性、貯蔵安定性、オイルシール適合性などが問題となる場合があり、さらなる改良が望まれている。
本発明は、極圧性、耐摩耗性、シンクロ摩擦特性、酸化安定性はもとより、オイルシール適合性に優れ、更に、乗用車用手動変速機、4WD車のトランスファ装置及び終減速機を共通に潤滑できるギヤ油組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、100℃における動粘度が2〜50 mm2/sの基油に、
(A)リン系及び/又は硫黄系の極圧剤を2〜10質量%、
(B)ホウ酸変成されたコハク酸イミドを、ホウ素量で100〜500質量ppm、
(C)塩基価が100 mgKOH/g以上のアルカリ土類金属系清浄剤をアルカリ土類金属で100〜1000質量ppm、及び
(D)アルキル基の炭素数が3〜30のプライマリーアルキルジチオリン酸亜鉛を亜鉛量で150〜1500質量ppm
配合してなるギヤ油組成物である。
【0008】
【好ましい実施の態様】
本発明で用いる基油は、100℃における動粘度が2〜50 mm2/sであれば、鉱油系潤滑油、合成潤滑油を問わず各種のものが使用できる。鉱油系潤滑油としては、パラフィン基系原油、中間基系原油、ナフテン系原油を常圧蒸留して、あるいは常圧蒸留の残渣油を更に減圧蒸留して得られる留出油を、溶剤精製、水素化処理などの常法に従って精製した潤滑油用の精製鉱油が挙げられる。また、合成潤滑油としては、ポリ−α−オレフィン、アルキルベンゼン、多価アルコールのカルボン酸エステル、ジカルボン酸のエステル、ポリアルキレングリコール及びこれらの混合物などを挙げることができる。更に、基油として、鉱油系潤滑油及び合成潤滑油は、それぞれ単独であるいはそれらを混合して使用することもできる。
【0009】
本発明で(A)成分として用いるリン系及び/又は硫黄系の極圧剤は、API GL-5レベルの極圧性を確保するために必要な成分である。
硫黄系極圧剤としては、硫化オレフィン、硫化油脂、ジフェニルジサルファイド、ジベンジルジサルファイドなどが挙げられ、それぞれ単独で、若しくはそれらを混合して使用することができる。硫化オレフィンとして、具体的には、ジイソブチルジサルファイド、ジイソブチルジサルファイド、ジオクチチルポリサルファイド、ジターシャリーノニルポリサルファイド、ジターシャリーブチルポリサルファイド、ジターシャリーベンジルポリサルファイド及ポリイソブチレンやテルペン等のオレフィン類を硫黄や硫化水素等の硫化剤で硫化したものなどが挙げられる。硫化油脂は、ラード、牛脂、あるいはパーム油、ヤシ油などの植物油を、硫化して得ることができる。
【0010】
リン系極圧剤は、リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、ジチオリン酸エステルなどであり、具体的には、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリオクチル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸トリオクチル、チオリン酸ジオクチル、チオリン酸トリオクチル、リン酸ジデシル、亜リン酸ジデシル、リン酸ジドデシル、リン酸トリドデシル、亜リン酸ジドデシル、亜リン酸トリドデシル、チオリン酸トリドデシル、リン酸トリヘキサドデシル、亜リン酸トリヘキサドデシル、チオリン酸トリヘキサドデシル、リン酸トリオクタデセニル、亜リン酸トリオクタデセニル、チオリン酸トリオクタデセニル、リン酸トリ(オクチルフェニル)、リン酸トリ(オクチルシクロヘキシル)、ジチオリン酸トリデシル、酸性リン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、酸性ジチオリン酸エステルなどが挙げられる。更に、上記化合物のうち、部分エステルになっているもののアルキルアミン塩等も挙げられる。
【0011】
これらの極圧剤は、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。極圧剤の配合量としては、ギヤ油全量に対して、2〜10質量%含有されるように配合する。少なすぎると、一般的にギヤ油に必要とされる境界潤滑性が不足し、多すぎると添加量に見合う極圧効果が得られないばかりでなく、かえって熱安定性、酸化安定性などの性能を悪化する。配合量は、3〜9質量%が好ましく、4〜9質量%がより好ましい。
【0012】
本発明に用いる(B)成分のホウ酸変成されたコハク酸イミドは、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素酸、ホウ素酸エステル、ホウ素酸アンモウニウム塩などのホウ素化合物と、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピルトリアミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアミンとの反応生成物を、分子量300〜3500のポリオレフィンと無水マレイン酸とを反応して得られたモノアルケニル無水コハク酸とを反応させてイミド化することによって得ることができる。ホウ酸変成されたコハク酸イミドは、モノイミド、ビスイミドなどがあり、いずれもまた2種以上の混合物も使用することができる。
【0013】
ホウ酸変成されたコハク酸イミドは、ホウ素量として100〜500質量ppm含有されるように配合する。少なすぎると目的の性能である清浄性やオイルシールゴム適合性が得られず、逆に多すぎると酸化安定性、境界潤滑性が悪化する。好ましくは100〜300質量ppmである。
また、ホウ酸変成されたコハク酸イミドは、それを単独で添加することも、他の添加剤と予めギヤ油用に調合されたパッケージタイプの添加剤に含まれている形で添加することもできる。
【0014】
(C)成分として用いるアルカリ土類金属系清浄剤としては、スルホネート、フェネート、サリシレート、ホスホネートなどのアルカリ土類金属塩が挙げられる。中でも、好ましいものはスルホネートであり、また、好ましいアルカリ土類金属は、Mg、Ca、Baである。特に好ましいものはCaスルホネートである。
また、上記アルカリ土類金属系清浄剤は、100 mgKOH/g以上の塩基価を有するものを使用する。塩基価が、小さいと、目的の性能が得られなかったり、必要な添加量が多くなりすぎ、また、大きいと、酸化安定性が悪化する場合がある。塩基価は、通常鉱油などで2〜10倍に希釈されて取り扱われ、希釈の度合いによって塩基価は変化するが、添加剤として販売されている状態で100〜400 mgKOH/g、特には200〜400 mgKOH/gのものが好ましく使用することができる。
【0015】
アルカリ土類金属系清浄剤は、ギヤ油にアルカリ土類金属成分として、100〜1000質量ppm、好ましくは200〜800質量ppm、より好ましくは200〜500質量ppm含有されるように添加する。少なすぎると清浄性が不足し、シンクロ摩擦摩耗特性も良くならないなど、期待される性能が得られない場合があり、一方、多すぎると熱安定性、酸化安定性が悪化する。
【0016】
本発明のギヤ油には、(D)成分として炭素数は3〜30のプライマリーアルキル基を有するアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を用いる。プライマリーアルキル以外のもの、例えば、セカンダリータイプあるいはアリールタイプのものは、境界潤滑性には優れるが、酸化安定性が悪化する場合がある。更に、オイルシールゴム、とりわけニトリル−ブタジエンゴムの引っ張り強度に悪影響を及ぼし、伸び率が低下する。
ZnDTPの配合量は、亜鉛量で150〜1500質量ppmとし、好ましくは300〜1500質量ppm、更に好ましくは500〜1000質量ppmである。亜鉛量が少ないと、所望のシンクロ摩擦摩耗特性、極圧性が得られなかったり、多すぎると熱安定性、酸化安定性が悪化する場合がある。
【0017】
本発明は、上記のように100℃における動粘度が2〜50 mm2/sの基油に(A)〜(D)の成分をそれぞれ特定量配合し、所望の効果を得ることができるギヤ油組成物である。更に、必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、消泡剤などの添加剤を適宜配合することができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0019】
実施例1〜2、比較例1〜4
各実施例及び各比較例のギヤ油組成物の調製に用いた基油、(A)〜(D)の成分及びその他の添加剤は次とおりである。
基油:100℃における動粘度が4.2 mm2/sの鉱油
(A)成分
・硫化オレフィン:硫黄を40%含有
・SP系極圧剤:GL-5リコメンド量6.5%のパッケージ添加剤
(B)成分
・コハク酸イミド分散剤:窒素分1.4%、全塩基価19 mgKOH/g
・ホウ酸変成コハク酸イミド分散剤:窒素分2.3%、ホウ素分1.8%、全塩基価65 mgKOH/g
【0020】
(C)成分
・Caスルホネート:有効成分を20%含有、塩基価300 mgKOH/g
(D)成分
・ZnDTP-1:炭素数8個のプライマリーアルキル基を有する
・ZnDTP-2:炭素数3個と6個のセカンダリーアルキル基を有する
その他、酸化防止剤、金属不活性化剤及び粘度指数向上剤を添加剤として用いた。これらを、表1に示す割合で配合して、実施例1〜2、比較例1〜4のギヤ油組成物を調製した。
【0021】
【表1】
【0022】
上記のようにして調製した実施例1〜2、比較例1〜4のギヤ油組成物について、以下に示す性能試験を行い、それぞれの性能を評価した。
極圧剤レベル
極圧剤の添加量を相当するAPIグレードで表現した。
清浄性
JIS K2514に従って、ISOT酸化安定性試験を、135℃、96時間の条件で行った。その際ワニス棒に堆積するスラッジの有無を目視で観察し、無い場合を合格(○)、有る場合を不合格(×)と判定した。
【0023】
シンクロ摩擦摩耗特性
油温80℃において、1200 rpmで回転するコーンに黄銅リングを40 kgfで0.5秒間押し付けて離す操作を10000回繰り返す試験を行い、試験後、黄銅リングの摩耗量を測定した。摩耗量が30 mg以下を合格(○)とし、それを超える場合、不合格(×)とした。
【0024】
ゴム浸漬試験
JIS K6258に規定された手順に従って、ゴム浸漬試験を行い、試験前後におけるゴム試験片の性状変化(体積変化率、硬さ変化、引っ張り強度変化率及び破断時伸び変化率)を求めた。なお、ゴム浸漬試験は次の条件で行った。
ゴム試験片:ニトリル−ブタジエンゴム
浸漬条件:120℃、70 hr
シェル四球摩耗試験
1500 rpm、40 kgf、80℃、1 hrの条件で試験を行い、固定球についた摩耗痕径の平均を求めた。
【0025】
上記の評価試験の結果を表2に示す。
表2によると、本発明のギヤ油(実施例1及び2)は、API GL−5の極圧レベルを有し、清浄性、シンクロ摩擦摩耗特性、ゴム浸漬試験後の性状変化及び耐摩耗性の特性に関して、総合的に優れたバランスの良い性能を示している。一方、セカンダリーアルキル基を有するZnDTPを用いる比較例1及び2のギヤ油は、他の添加剤の配合は実質的に実施例のギヤ油と同じ程度であるが、清浄性として示す酸化安定度試験においてスラッジの堆積が認められ、更にゴム浸漬試験後の性状変化が特に大きく、酸化安定性及びオイルシール適合性に欠けている。また、ホウ酸変成コハク酸イミド分散剤の配合量が少ない比較例3及び4のギヤ油は、比較例1及び2ほどではないが、ゴム浸漬試験後の性状変化が大きく、オイルシール適合性に欠けていることが分かる。
【0026】
【表2】
【0027】
【発明の効果】
本発明は、基油に、(A)リン系及び/又は硫黄系の極圧剤、(B)ホウ酸変成されたコハク酸イミド、(C)塩基価が100 mgKOH/g以上のアルカリ土類金属系清浄剤、及び(D)特定のプライマリーアルキルジチオリン酸亜鉛をそれぞれ特定量配合してなるギヤ油組成物であるから、清浄性、シンクロ摩擦摩耗特性、及び耐摩耗性等の特性に関して、総合的に優れたバランスの良い性能を有し、特に、ゴム浸漬試験後の性状変化が小さく、オイルシール適合性に優れる等格別の効果を有する。したがって、乗用車用手動変速機、4WD車のトランスファ装置及び終減速機などの複数のギヤを1種類のギヤ油で潤滑することできるなど実用的に極めて有用である。
Claims (3)
(A)リン系及び/又は硫黄系の極圧剤を2〜10質量%、
(B)ホウ酸変成されたコハク酸イミドをホウ素量で100〜300質量ppm、
(C)塩基価が100 mgKOH/g以上のアルカリ土類金属系清浄剤をアルカリ土類金属で200〜800質量ppm、及び
(D)アルキル基の炭素数が3〜30のプライマリーアルキルジチオリン酸亜鉛を亜鉛量で150〜1500質量ppm
配合してなること特徴とするギヤ油組成物。
(C)塩基価が200〜400mgKOH/gのアルカリ土類金属系清浄剤をアルカリ土類金属で200〜500質量ppm配合してなる請求項1記載のギヤ油組成物。
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