JP3559770B2 - 脂肪族ポリエステルの製造方法およびセルロースの再資源化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪族ポリエステルの製造方法およびセルロースの再資源化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは、年間に109〜1011トンが生産され、構造材料、充填剤、食品添加物、更には、接着剤等の広範囲の用途で大量に利用されている。それに伴い、廃セルロースの量もまた、年々増加している。
【0003】
廃セルロースを分解して再利用する技術として、例えば、セルロースからメタン、エタン等の炭化水素を取出す方法(特開平5−213778号公報)、微生物によってセルロースからアルコールを生産する方法(特開平11−299479号公報)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、廃セルロース量の今後の更なる増加に対処するためには、より効率的にセルロースを再資源化し得る新規な技術開発が必要である。そこで、本発明者は、廃セルロースを出発原料として、脂肪族ポリエステルを製造することを検討した。
【0005】
ところで、脂肪族ポリエステルの有用な製造方法の1つに、カプロラクトン類をモノマーとして、これを開環重合する方法がある。
【0006】
カプロラクトン類の例として、δ−カプロラクトンは、容易に開環重合して脂肪族ポリエステルを与える。このような脂肪族ポリエステルは、プラスチック成形品、フィルム、ホットメルト接着剤等として、産業上の多くの分野で利用できる。
【0007】
カプロラクトン類はカプロン酸類を環化することによって得られる。よって、廃セルロースを出発原料として脂肪族ポリエステルを製造する場合、廃セルロースを効率的にカプロン酸類に誘導する必要がある。
【0008】
しかしながら、脂肪族ポリエステルのモノマーとして使用可能な程度に高純度で効率的にカプロン酸類を廃セルロースから誘導することは、あまり知られていない。
【0009】
以上の様な状況に鑑み、本発明の目的は、セルロースからグルコースを経て得られるところのカプロン酸を用いて、脂肪族ポリエステルを製造すること、即ち、セルロースを出発物質として高品質なプラスチックを得ることである。本発明により、セルロースを原料として得られる脂肪族ポリエステルを製造することが可能となり、セルロースを再資源化することができる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明によれば、下記式(I)で示される脂肪族ポリエステルの製造方法であって、
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、nは10〜6000の整数を示す。)
セルロースを加水分解してグルコースを得る工程と、
該グルコースを酸化してグルコノラクトンを得る工程と、
該グルコノラクトンを還元してカプロン酸を得る工程と、
該カプロン酸を塩素化して5−クロロカプロン酸を得る工程と、
該5−クロロカプロン酸を環化してδ−カプロラクトンを得る工程と、
該δ−カプロラクトンを開環重合せしめる工程と、
を含むことを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法が提供される。
【0013】
また、下記式(I)で示される脂肪族ポリエステルの製造方法であって、
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、nは10〜6000の整数を示す。)
セルロースを加水分解してグルコースを得る工程と、
該グルコースを酸化してグルコン酸を得る工程と、
該グルコン酸を還元してカプロン酸を得る工程と、
該カプロン酸を塩素化して5−クロロカプロン酸を得る工程と、
該5−クロロカプロン酸を環化してδ−カプロラクトンを得る工程と、
該δ−カプロラクトンを開環重合せしめる工程と、
を有することを特徴とする脂肪族ポリエステルの製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明においては、グルコノラクトンが脂肪族ポリエステルのモノマーとして使用可能な程度に高純度で効率的にカプロン酸に誘導される。また、グルコン酸が脂肪族ポリエステルのモノマーとして使用可能な程度に高純度で効率的にカプロン酸に誘導される。この結果、セルロースからグルコースを経て得られるところのカプロン酸を用いて、脂肪族ポリエステルを製造すること、即ち、セルロースを出発物質として高品質なプラスチックを得ることが可能となる。よって、廃セルロースを原料として得られる脂肪族ポリエステルを製造することが可能となり、セルロースを再資源化することができる。
【0017】
なお、セルロースからグルコースを得る際の、原料としてのセルロースとしては、市販のセルロースを使用できることは勿論のこと、古紙類、廃材等の木材類を適宜処理して得られた廃セルロースも使用することができる。従って、本発明によれば、廃セルロース等の再資源化への新たな道筋を開くことができる。
【0018】
以下に各工程を説明する。
【0019】
(セルロースからグルコース)
セルロースからグルコースへの変換は、例えば、セルラーゼなどの酵素による分解方法、硫酸や塩酸などの酸による分解方法、あるいは、超臨界水による分解方法等が挙げられる。
【0020】
(グルコースからグルコノラクトン又はグルコン酸)
グルコースからグルコノラクトンへの変換は、グルコースを臭素酸化する方法やグルコース酸化酵素であるノタチンを用いる方法等が挙げられる。
【0021】
また、グルコースからグルコン酸への変換は、臭素を飽和させた硫酸中でグルコースを酸化、加水分解して得る方法、グルコース溶液の電解酸化による方法、あるいはペニシリウム属の細菌を用いたグルコン酸発酵による方法等が挙げられる。
【0022】
(グルコノラクトン又はグルコン酸からカプロン酸)
グルコノラクトン又はグルコン酸をカプロン酸へ変換する工程は、本発明において重要であり、この工程をヨウ化水素酸および赤リンによる還元で行うことが、収率および選択率などの観点から好ましい。この際、実質的に、グルコノラクトン又はグルコン酸の水酸基のみが還元される。
【0023】
この工程の反応条件は、得られるカプロン酸の収量および純度などを考慮して注意深く選択される。
【0024】
具体的には、還元に用いる赤リンの量は、十分な収率を確保する観点から、グルコノラクトン又はグルコン酸に対して1.5モル倍以上が好ましく、1.7モル倍以上がより好ましく、1.8モル倍以上が更に好ましい。一方、副反応物を抑制する観点から、3.0モル倍以下が好ましく、2.7モル倍以下がより好ましく、2.4モル倍以下が更に好ましい。
【0025】
また、還元に用いるヨウ化水素酸は、十分な収率を確保する観点から、濃度が50質量%以上60質量%以下のものをグルコノラクトン又はグルコン酸に対して好ましくは30質量倍以上、より好ましくは35質量倍以上、更に好ましくは40質量倍以上を使用する。一方、副反応物を抑制する観点から、70質量倍以下が好ましく、65質量倍以下がより好ましく、60質量倍以下が更に好ましい。
【0026】
グルコノラクトン又はグルコン酸と、赤リンと、ヨウ化水素酸とを含有する混合物は還流するまで加熱され、還元反応が完了するまで還流状態を維持する。還流時間は、十分な収率を確保する観点から、10時間以上が好ましく、13時間以上がより好ましく、15時間以上が更に好ましい。一方、副反応物を抑制する観点から、30時間以下が好ましく、27時間以下が好ましく、25時間以下が更に好ましい。
【0027】
(カプロン酸から5−クロロカプロン酸)
カプロン酸から5−クロロカプロン酸への変換は、カプロン酸を濃硫酸中でN−クロロジイソプロピルアミンと反応させて塩素化する方法が挙げられる。この反応については、N.C.Denoら、J.Am.Chem.Soc.誌、第93号、第438〜440頁、1971年刊に記載されている。
【0028】
(5−クロロカプロン酸からδ−カプロラクトン)
5−クロロカプロン酸から、下記式(II)で表されるδ−カプロラクトンへの変換は、5−クロロカプロン酸を水酸化ナトリウム水溶液中で煮沸する方法が挙げられる。
【0029】
【化5】
【0030】
(δ−カプロラクトンから脂肪族ポリエステル;開環重合)
本発明では、δ−カプロラクトンの開環重合に際し、重合触媒としては、公知の開環重合触媒を用いることができる。例えば、二塩化スズ、四塩化スズ、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−iso−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−iso−ブトキシアルミニウム、塩化アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、ジ−iso−プロピル亜鉛、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、塩化亜鉛、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラメトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−iso−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、La、Nd、Sm、Er、Tm、Yb、Lu等の有機希土類化合物等を用いることができる。
【0031】
重合触媒の使用量は、δ−カプロラクトンと重合開始剤の合計量に対し、0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%である。
【0032】
本発明では、δ−カプロラクトンの開環重合に際し、重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパンール、各種ブタノール、フェノール等のモノオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等のジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール等のポリオールを用いることができる。また、これらは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0033】
本発明で使用する重合開始剤とδ−カプロラクトンとのモル比は、目的とする脂肪族ポリエステルの重合率に応じて適宜選択することができる。重合開始剤とδ−カプロラクトンとのモル比は、1:1〜1:5000モル比、好ましくは、1:1〜1:2000モル比である。
【0034】
δ−カプロラクトンの開環重合は、δ−カプロラクトンに重合触媒と重合開始剤を添加して不活性ガスの存在下、あるいは、減圧下で重合反応させる。好ましくは、簡便さから窒素雰囲気下の常圧で行うのがよい。
【0035】
δ−カプロラクトンの開環重合の反応温度及び時間は、任意に選択できる。反応温度は、好ましくは、50〜200℃、より好ましくは、100〜180℃の範囲である。50℃以上であれば、反応速度は十分速い。また、200℃以下であれば、酸化反応による脂肪族ポリエステルの着色や生成する脂肪族ポリエステルの分解反応等が抑制される。反応時間も任意に選択できるが、生成する脂肪族ポリエステルの品質に影響を与えない範囲で行うことができる。
【0036】
δ−カプロラクトンの開環重合は、溶媒中で行うことができる。溶媒は、δ−カプロラクトン、重合触媒、重合開始剤と反応しない不活性溶媒であり、好ましくは、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素を用いることができる。これらの溶媒は、実質的には、無水のものが望ましい。
【0037】
δ−カプロラクトンの開環重合によって得られる脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で1000〜1000000、好ましくは、30000〜500000である。
【0038】
この様にして得られる脂肪族ポリエステルは、これまで種々の分野で用いられているプラスチック材料を代替するプラスチック材料として用いることができる。そして重量平均分子量や含まれる官能基等を変化させることによって、産業上の多くの分野に適用することができる。例えば、グリコールを重合開始剤とした重量平均分子量1000〜5000の脂肪族ポリエステルは、水酸基を有することを活かして、例えば、ポリウレタンの原料や、塗料等の材料として非常に有用である。更に、重量平均分子量が50000を超える脂肪族ポリエステルは、実用的な機械的強度を持ち、プラスチック成形品、フィルム、ホットメルト接着剤等に用いることができる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また、特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を使用した。
【0040】
(実施例1)
セルロース(日本製紙製、KCフロックW−100)500質量部を酵素溶液15050質量部に投入し、45℃で8時間攪拌した。酵素溶液は、セルラーゼ(明治製菓製、メイセラーゼTP60)50質量部を酢酸/酢酸ナトリウム水溶液(pH4.5)15000質量部に溶解したものを用いた。反応後、メタノール1000質量部を加え、水溶性残さを濾別し、更にイオン交換樹脂カラム(オルガノ社製、アンバライトIR−120B)を通過させ、溶媒留去した。そして、反応混合物を分離精製し、グルコース300質量部を得た。
【0041】
得られたグルコースを、FT−NMR DPX400(Bruker製)を用い、13C―NMR(100MHz、DMSO−d6)を測定した。その結果、α型グルコースに由来するピークのδ値として92.12ppm、73.04ppm、72.29ppm、71.80ppm、70.58ppm、61.20ppmを確認した。また、β型グルコースに由来するピークのδ値として96.79ppm、76.70ppm、76.59ppm、74.78ppm、70.30ppm、61.00ppmを確認した。
【0042】
次に、12質量%の炭酸バリウム水溶液8000質量部に二酸化炭素を飽和した後、これに臭素330質量部と、上で得られたグルコース300質量部とを加え、25℃で30分間攪拌して、下記化学式(III)で表わされるグルコノラクトン250質量部を得た。
【0043】
【化6】
【0044】
得られたグルコノラクトンの13C―NMR(100MHz、DMSO−d6)を測定したところ、δ値として171.88ppm、81.23ppm、73.79ppm、71.43ppm、67.82ppm、60.14ppmを確認した。
【0045】
このグルコノラクトン250質量部と赤リン87質量部をヨウ化水素酸(55質量%)12000質量部に加え、20時間加熱還流を行った。そして、反応混合物を濾過し、濾液をエーテル抽出した後、5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。その後、エーテルを留去し、減圧蒸留してカプロン酸147質量部を得た。このカプロン酸の13C−NMR(100MHz、CDCl3)を測定したところ、δ値として13.90ppm、22.42ppm、24.51ppm、31.36ppm、34.22ppm、180.79ppmを確認した。
【0046】
得られたカプロン酸147質量部と当量のN−クロロジイソプロピルアミンを84%硫酸1000質量部に加え、25℃、5時間反応させて、5−クロロカプロン酸177質量部を得た。その後、この5−クロロカプロン酸177質量部を当量の水酸化ナトリウム水溶液と煮沸して、δ−カプロラクトン129質量部を得た。得られたδ−カプロラクトンの13C−NMR(100MHz、CDCl3)を測定したところ、δ値として19.90ppm、20.88ppm、34.27ppm、35.31ppm、70.44ppm、172.84ppmを確認した。
【0047】
このδ−カプロラクトン129質量部を窒素雰囲気下、155℃まで加熱し、これにトリ−iso−プロポキシアルミニウム0.39質量部、ジエチレングリコール0.77質量部を添加し、開環重合して脂肪族ポリエステルを得た。重合時間は10時間であり、得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は29万であった。
【0048】
得られた脂肪族ポリエステルの13C―NMR(100MHz、CDCl3)を測定したところ、δ値として19.95ppm、20.82ppm、34.46ppm、35.26ppm、70.31ppm、173.37ppmを観測し、目的の脂肪族ポリエステルが合成されたことを確認した。
【0049】
(実施例2)
実施例1と同様にして得たグルコース300質量部を臭素で飽和させた13.5モル/lの硫酸2500質量部中で酸化、加水分解して下記化学式(IV)で表わされるグルコン酸290質量部を得た。
【0050】
【化7】
【0051】
次に、得られたグルコン酸290質量部と赤リン100質量部をヨウ化水素酸(55質量%)14000質量部に加え、20時間加熱還流を行た。その後、実施例1と同様の処理を行い、カプロン酸155質量部を得た。
【0052】
その後、84%硫酸1000質量部にカプロン酸155質量部と当量のN−クロロジイソプロピルアミンを加え、25℃、5時間反応させて、5−クロロカプロン酸187質量部を得た。この5−クロロカプロン酸187質量部を当量の水酸化ナトリウム水溶液と煮沸して、δ−カプロラクトン136質量部を得た。
【0053】
得られたδ−カプロラクトン136質量部を窒素雰囲気下、160℃まで加熱し、これに、ジ−iso−プロピル亜鉛0.41質量部、1,4−ブタンジオール0.82質量部を添加し、開環重合して脂肪族ポリエステルを得た。重合時間は10時間であり、得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は22万であった。また、13C―NMRを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られ、目的の脂肪族ポリエステルが合成されたことを確認した。
【0054】
(実施例3)
PPC用再生紙(キヤノン販売会社、EN−500、A4)の使用済みのもの(片面に複写機でコピー)を5mm角に裁断し、この500質量部を酵素溶液15050質量部に投入し、45℃で10時間攪拌した。酵素溶液は、セルラーゼ(明治製菓製、メイセラーゼTP60)50質量部を酢酸/酢酸ナトリウム水溶液(pH4.5)15000質量部に溶解したものを用いた。反応後、メタノール1000質量部を加え、水溶性残さを濾別し、更にイオン交換樹脂カラム(オルガノ社製、アンバライトIR−120B)を通過させ、溶媒留去した。そして、反応混合物を分離精製し、グルコース280質量部を得た。
【0055】
次に、12質量%炭酸バリウム水溶液7500質量部に二酸化炭素を飽和した後、上で得られたグルコース280質量部と、臭素300質量部とを加え、25℃で30分間攪拌して、グルコノラクトン230質量部を得た。
【0056】
得られたグルコノラクトン230質量部を赤リン80質量部とヨウ化水素酸(55質量%)11000質量部に加え、実施例1と同様の後処理を行い、カプロン酸135質量部を得た。
【0057】
このカプロン酸135質量部と84%硫酸1000質量部に当量のN−クロロジイソプロピルアミンを加え、25℃、5時間反応させて、5−クロロカプロン酸163質量部を得た。
【0058】
次に、得られた5−クロロカプロン酸163質量部を当量の水酸化ナトリウム水溶液と煮沸して、δ−カプロラクトン118質量部を得た。
【0059】
その後、得られたδ−カプロラクトン118質量部を窒素雰囲気下、150℃まで加熱し、これにテトラ−n−ブトキシチタン0.36質量部、1,8−オクタンジオール0.71質量部を添加し、開環重合して脂肪族ポリエステルを得た。重合時間は10時間であり、得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は26万であった。また、13C―NMRを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られ、目的の脂肪族ポリエステルが合成されたことを確認した。
【0060】
(実施例4)
実施例3と同様にして得たグルコース280質量部を臭素で飽和させた13.5モル/lの硫酸2300質量部中で酸化、加水分解してグルコン酸270質量部を得た。
【0061】
このグルコン酸270質量部を赤リン95質量部とヨウ化水素酸(55質量%)13000質量部に加え、20時間加熱還流を行った。その後、実施例1と同様の後処理を行い、カプロン酸144質量部を得た。
【0062】
得られたカプロン酸144質量部と84質量%硫酸1000質量部に当量のN−クロロジイソプロピルアミンを加え、25℃、5時間反応させて、5−クロロカプロン酸173質量部を得た。
【0063】
この5−クロロカプロン酸173質量部を当量の水酸化ナトリウム水溶液と煮沸して、δ−カプロラクトン126質量部を得た。
【0064】
その後、得られたδ−カプロラクトン126質量部を窒素雰囲気下、155℃まで加熱し、これにテトラ−t−ブトキシジルコニウム0.37質量部、メタノール0.74質量部を添加し、開環重合して脂肪族ポリエステルを得た。重合時間は9時間であり、得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は18万であった。また、13C―NMRを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られ、目的の脂肪族ポリエステルが合成されたことを確認した。
【0065】
(物性評価)
実施例1〜4で合成した脂肪族ポリエステルを用い、表1に示す物性評価を行った。また、比較例1として、セルグリーン(ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトン系プラスチック、P−H7)の物性も評価した。
【0066】
【表1】
【0067】
以上の結果から、実施例1〜4で合成した各々の脂肪族ポリエステルは、比較例1に用いた、強度および伸度に優れたダイセル化学製の脂肪族ポリエステル(P−H7)と同等もしくはそれ以上の物性を有しており、従来のプラスチック成形品の代替品として十分に利用が可能であることが分かった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、セルロースからグルコースを経て得られるδ−カプロラクトンを開環重合する事によって脂肪族ポリエステルを製造することができ、その機械的強度等の物性も充分であり、プラスチック成形品として利用が可能である。更に、このことは、セルロースを出発原料として高品質なプラスチックを得るという、セルロースの効率的な資源化の確立に道を開くものである。
Claims (16)
- セルロースからグルコースを得る工程が、酵素による加水分解であることを特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコースからグルコノラクトンを得る工程が、臭素酸化であることを特徴とする請求項1又は2記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコノラクトンからカプロン酸を得る工程が、少なくともヨウ化水素酸および赤リンを用いた還元反応であることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- カプロン酸から5−クロロカプロン酸を得る工程が、少なくともN−クロロジイソプロピルアミン及び濃硫酸を用いた塩素化反応であることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 5−クロロカプロン酸からδ−カプロラクトンを得る工程が、少なくとも水酸化ナトリウム水溶液を用いた環化反応であることを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- δ−カプロラクトンから脂肪族ポリエステルを得る工程が、少なくとも重合触媒および重合開始剤を用いた開環重合であることを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 請求項1乃至7何れかに記載の方法によるセルロースの再資源化方法。
- セルロースからグルコースを得る工程が、酵素による加水分解であることを特徴とする請求項9記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコースからグルコン酸を得る工程が、少なくとも臭素および濃硫酸を用いた酸化反応であることを特徴とする請求項9又は10記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- グルコン酸からカプロン酸を得る工程が、少なくともヨウ化水素酸および赤リンを用いた還元反応であることを特徴とする請求項9乃至11何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- カプロン酸から5−クロロカプロン酸を得る工程が、少なくともN−クロロジイソプロピルアミン及び濃硫酸を用いた塩素化反応であることを特徴とする請求項9乃至12何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 5−クロロカプロン酸からδ−カプロラクトンを得る工程が、少なくとも水酸化ナトリウム水溶液を用いた環化反応であることを特徴とする請求項9乃至13何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- δ−カプロラクトンから脂肪族ポリエステルを得る工程が、少なくとも重合触媒および重合開始剤を用いた開環重合であることを特徴とする請求項9乃至14何れかに記載の脂肪族ポリエステルの製造方法。
- 請求項9乃至15何れかに記載の方法によるセルロースの再資源化方法。
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